説明

煙感知器の作動試験器

【目的】ガスボンベをカバーから分離配置した作動試験装置において、煙感知器の作動試験の作業性を向上させ、且つ試験用ガスの消費量を低減することのできる煙感知器の作動試験器を提供することである。
【構成】作業者が操作杆用パイプ2を持ってカバー1で、天井面61に据え付けられた煙感知器52を覆う。そのカバー状態において、操作杆用パイプ2下部の鉤部4を引いて操作すると、ガスボンベ5の試験用ガスが噴射される。噴射ガスは、貫通孔44に連通したインナーチューブ11の始端からチューブ内を通過し、上方の開放端59から噴出する。勢いよく噴出したガスは煙感知器52を覆う密閉空間内に即座に充満し、作動試験を速やかに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井等に設置されている煙感知器(あるいは煙報知器、煙センサー)の作動試験を試験用ガスを用いて行う、煙感知器の作動試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の煙感知器には、火災により発生する煙粒子を早期に感知し、火災の発生を検出する光電式煙感知器やイオン式煙感知器が使用されている。かかる煙感知器の作動試験のためには、フロンガス等の煙感知器試験用ガスが充填されたボンベガスが使用される。
【0003】
作動試験装置は、特許文献1、2又は3に示されるように、一般的に、煙感知器をカバーで覆い、ガスボンベの噴射ノズルから噴射された試験用ガスを、煙感知器周辺を密封したカバー内に放散させる構造を備える。煙感知器は通常、天井又はその付近の壁面の高い設置位置に取り付けられるため、床面上の点検作業者が該カバーを設置位置まで届かせるように、長手状の操作杆が取り付けられている。
【特許文献1】特開平8−77472号公報
【特許文献2】実公昭60−5437号
【特許文献2】特開平11−224386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作動試験装置では、操作杆の先端に蛇腹状カバーが取着され、そのカバー下部にガスボンベが設置されている。操作杆を突き上げて、蛇腹状カバーを縮小変形させて、その変形により、ガスボンベより突出した押圧レバーを天井面に押し当ててガスを噴射させる。
【0005】
しかしながら、この特許文献1の場合には、操作杆の先端に取着した蛇腹状カバー下部にガスボンベが設置するため、操作杆の上部に重量が偏り、床面上で作業する点検作業者が持ち上げている際のバランスがくずれやすく、作業性が低下する問題があった。
【0006】
特許文献2の作動試験器では、ガスボンベはカバーを含む本体部から分離して作業者の手元に置かれている。操作杆の先端側にカバーが取り付けられ、煙感知器に当接することにより開くバルブを本体部内に設けている。バルブ下部から引き出されたホースを通じて、ガスボンベの噴射ノズルに接続されている。
【0007】
この作動試験器においては、ガスボンベはカバーを含む本体部から分離しており、操作杆の上部での重量の偏りを生じない。しかしながら、この場合には噴射ノズルを開くためのバルブを本体部内に設けているため、床面上で作業する点検作業者が、バルブを煙感知器に適切に当接するように操作杆を持ち上げて作業する必要があり、作業性が向上しなかった。
【0008】
特許文献3の作動試験器では、煙感知器を覆うカバーが中空パイプ(操作杆)の上端側に取着され、ガスボンベの噴射ノズルから噴射された試験用ガスをパイプ内を通じてカバー内に放散させる構造を備える。ガスボンベはパイプ後端のガスボンベ収納部内に取り付けられ、しかも作業者が片手で試験器を保持できる取手部が設けられ、取手内部にはガスボンベのノズルを開くための操作レバーを配置している。このため、ガスボンベ収納部内にガスボンベを収納した状態で取手部を持って操作レバーを操作することにより簡易にガス噴射を行うことができる。
【0009】
しかしながら、特許文献3の作動試験器においては、ガスボンベを噴射作動させるための操作機構を操作杆の後端に、遠隔的に配置しているため、ガス流通経路としての中空パイプの距離が長くなってしまい、カバー内に十分に到達する量を噴出させて送出する必要があった。このため、試験の度に余分のガス量を使用することになって、ガスボンベの消耗が早くなる問題を生じた。
【0010】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、ガスボンベをカバーから分離配置した作動試験装置において、煙感知器の作動試験の作業性を向上させ、且つ試験用ガスの消費量を低減することのできる煙感知器の作動試験器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の形態は、煙感知器を覆うカバーが一端側に取着されたパイプと、試験用ガスを充填したガスボンベが前記パイプの後端に着脱自在に取着される着脱機構とからなり、前記ガスボンベの噴射ノズルから噴射された前記試験用ガスを前記カバー内に放散させる作動試験装置において、前記パイプに挿通されるインナーチューブを有し、チューブの始端を前記噴射ノズルに連通させて前記インナーチューブを前記パイプ内部に取着し、チューブの開放端を前記パイプの所定位置に配置し、前記試験用ガスを前記始端より導入して前記開放端より前記カバー内に向けて放出する、煙感知器の作動試験装置である。
【0012】
本発明の第2の形態は、前記第1の形態において、前記カバーを取り付けた状態のまま、前記パイプのカバー取着部に払拭具を取着可能にした、煙感知器の作動試験装置である。
【0013】
本発明の第3の形態は、前記第1の形態において、前記カバーを取り外したとき、前記パイプのカバー取着部に払拭具を取着可能にした、煙感知器の作動試験装置である。
【0014】
本発明の第4の形態は、前記第1、第2又は第3の形態において、前記パイプの前記一端側を、パイプ先端部と、前記パイプに交差する交差部との2方向に分岐させ、夫々の分岐端に前記カバー取着部により前記カバーを着脱自在に取着した、煙感知器の作動試験装置である。
【0015】
本発明の第5の形態は、前記第4の形態において、前記パイプ先端部と前記交差部の分岐点より前記ガスボンベ側下方に、前記インナーチューブの前記開放端を配置した、煙感知器の作動試験装置である。
【0016】
本発明の第6の形態は、前記第4又は第5のいずれかの形態において、前記パイプ先端部と前記交差部のいずれか一方に前記カバーを、他方に払拭具を取着した、煙感知器の作動試験装置である。
【0017】
本発明の第7の形態は、前記第4、第5又は第6の形態において、前記パイプ先端部と前記交差部のいずれか一方に前記カバーを取着したとき、他方を封止した、煙感知器の作動試験装置である。
【0018】
本発明の第8の形態は、前記第1〜第7のいずれかの形態において、前記噴射ノズルを押圧して前記試験用ガスを噴射させるノズル押圧部材が前記パイプの軸方向に沿って移動自在に前記パイプ内に収設され、前記噴射ノズルと前記パイプを連通させる貫通孔が前記ノズル押圧部材に穿設され、前記貫通孔に連通させて前記インナーチューブの始端を前記ノズル押圧部材に固着し、前記貫通孔を通じて噴射された前記試験用ガスを前記インナーチューブに送り出す、煙感知器の作動試験装置である。
【0019】
本発明の第9の形態は、前記第8の形態において、所定長さの縦溝を前記パイプの側面に前記パイプの軸方向に沿って切り欠き形成し、鉤部を前記縦溝より外部に突出させて前記ノズル押圧部材に突設し、前記鉤部を前記縦溝に沿って移動させることにより、前記ノズル押圧部材が前記噴射ノズルを押圧して前記試験用ガスを噴射させる、煙感知器の作動試験装置である。
【0020】
本発明の第10の形態は、前記第1〜第9のいずれかの形態において、前記着脱機構は、前記ガスボンベの頭部を把持してロックするボンベ取付ロック部材と、前記ボンベ取付ロック部材に外嵌され、螺着される筒状ボンベカバーとからなり、前記ボンベ取付ロック部材は、パイプ後端に収納、固着された中空軸部と、前記中空軸部の後端に放射状に形成された複数のボンベ把持爪とを有し、前記ボンベカバーは、前記中空軸部に螺着される先端部と、開放形成された後端部とから構成され、前記筒状ボンベカバー内部に前記後端部より前記噴射ノズルを挿入して前記ガスボンベの頭部を収納したとき、前記筒状ボンベカバーを前記ボンベ取付ロック部材に外嵌して螺着し、その螺着により前記複数のボンベ把持爪を内向きに押圧して前記ガスボンベの頭部を把持した、煙感知器の作動試験装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の形態によれば、操作杆としての前記パイプに挿通される前記インナーチューブの始端を前記噴射ノズルに連通させて前記インナーチューブを前記パイプ内部に取着し、チューブの開放端を前記パイプの所定位置に配置して、前記カバーと前記ガスボンベの噴射ノズルとの間のガス流通経路を前記インナーチューブにより形成し、前記試験用ガスを前記始端より導入して前記開放端より前記カバー内に向けて放出するので、前記ガスボンベを前記カバーから分離配置した状態において、ガス噴射操作を簡易に行えて作動試験の作業性を向上させることができる。しかも、ガス流通経路としての前記インナーチューブは操作杆としての前記パイプより断面積小の細管で構成できるため、前記インナーチューブの開放端より勢いよく試験用ガスを前記カバーに向けて放出でき、試験に使用するガスが少量で済む。
【0022】
本発明に係る前記カバーは、前記試験用ガスを煙感知器の周囲に充満させる形態であればよく、例えば、椀型ないし漏斗型形状が好ましい。また、前記カバーの上縁部は天井面等に密着して押し当てやすいように、蛇腹状にしてもよい。更に、煙感知器を覆う際、点検作業者が見やすいように、前記カバーを透明又は半透明にするのが好ましい。
【0023】
また、前記ガスボンベは、一般的な殺虫剤用噴霧器等に使用される噴霧ノズル付きボンベを使用できる。前記試験用ガスにはフロンガスに限らず、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン等のガス又は混合ガスを使用することができる。
【0024】
実際の煙感知器の点検作業では、天井等が汚れていたり、煙感知器に油汚れ等が付着したりしているため、良好な試験環境を作るために清掃作業を行う必要を生ずる。しかし、点検作業者が天井に届くような大型の清掃用具を携行しながら移動するのは極めて作業効率が悪く、不便さを生じていた。
【0025】
そこで、本発明の第2の形態によれば、前記カバーを取り付けた状態のまま、前記パイプのカバー取着部に払拭具を取着可能にしたので、大型の清掃用具を携行することなく、作動試験に先立ち、前記カバーを取り付けた状態で前記パイプに清掃用払拭具を取着して、前記パイプを清掃具の一部に利用して簡便に清掃作業することができ、作業効率を向上させることができる。前記カバー取着部を螺合又は嵌合構造にすることにより、前記カバーを取り付けた状態のままで前記払拭具をワンタッチで螺着又は嵌着させることができる。
【0026】
また、本発明の第3の形態によれば、前記カバーを取り外したとき、前記パイプのカバー取着部に、払拭具を取着可能にしたので、大型の清掃用具を携行することなく、作動試験に先立ち、前記カバーを取り外して前記パイプにモップ清掃具を取着して、前記パイプを清掃具の一部に利用して簡便に清掃作業することができ、作業効率を向上させることができる。前記カバー取着部を螺合又は嵌合構造にすることにより、前記カバーを取り外した状態で前記払拭具をワンタッチで螺着又は嵌着させることができる。
【0027】
なお、本発明における前記払拭具には、携行に嵩張らないハンディ型形態のモップ清掃具等を使用することができる。
【0028】
実際の煙感知器の設置状況は、天井面に限られず、屋内の側壁面に設置される場合もある。このため、操作杆の先端にカバーを取着した作動試験器では側壁面の煙感知器を覆う作業に困難さを伴い、また、横向きにカバーを取着した作動試験器も特別に用意する必要も生ずる。
【0029】
そこで、本発明の第4の形態によれば、前記パイプの前記一端側を、パイプ先端部と、前記パイプに交差する交差部との2方向に分岐させ、夫々の分岐端に前記カバー取着部により前記カバーを着脱自在に取着したので、天井面あるいは側壁面の煙感知器の設置状況に応じて、夫々の分岐端に前記カバーを取着して、1台で2役の作動試験作業が可能となり、作業性及び利便性の向上を図ることができる。
【0030】
前記第4の形態において、前記パイプの前記一端側を2方向に分岐させた場合には、記インナーチューブの前記開放端を前記パイプ先端部と前記交差部の分岐点より上方に配置すると、前記交差部へのガス流通量が低下するおそれがある。 そこで、本発明の第5の形態によれば、前記パイプ先端部と前記交差部の分岐点より前記ガスボンベ側下方に、前記インナーチューブの前記開放端を配置したので、前記パイプ先端部側を封止し、前記交差部に前記カバーを取着して前記試験用ガスを放出させる場合にあっても、円滑に噴出ガスを前記交差部に導出させることができ、前記交差部へのガス流通量の低下を生じさせることなく、作動試験作業を行うことができる。
【0031】
本発明の第6の形態によれば、前記パイプ先端部と前記交差部のいずれか一方に前記カバーを、他方に払拭具を取着可能にしたので、天井面あるいは側壁面の煙感知器の設置状況に応じて、夫々の分岐端に前記カバーを取着して、利便性の向上を図ることができると共に、前記パイプを清掃具の一部に利用して簡便に清掃作業することができ、作業効率を向上させることができる。
【0032】
本発明の第7の形態によれば、前記パイプ先端部と前記交差部のいずれか一方に前記カバーを取着したとき、他方を封止したので、前記インナーチューブの前記開放端より噴出したガスが前記他方に流出させずに、低ガス消費量での作動試験作業を行うことができる。なお、前記封止は、前記分岐端を封止する封止キャップを螺着又は嵌着等により行うことができ、特に、前記カバーと併用して、残りの分岐端に前記払拭具を取着する場合には、前記払拭具の取着部を封止構造にすることにより前記払拭具を封止材に兼用するようにしてもよい。
【0033】
本発明の第8の形態によれば、前記噴射ノズルを押圧して前記試験用ガスを噴射させるノズル押圧部材が前記パイプの軸方向に沿って移動自在に前記パイプ内に収設され、前記噴射ノズルと前記パイプを連通させる貫通孔が前記ノズル押圧部材に穿設され、前記貫通孔に連通させて前記インナーチューブの始端を前記ノズル押圧部材に固着し、前記貫通孔を通じて噴射された前記試験用ガスを前記インナーチューブに送り出すので、前記ノズル押圧部材を前記パイプの下端側で移動操作することにより、ガス噴射の調整作業を簡易に行え、作動試験の作業性を向上させることができる。
【0034】
本発明の第9の形態によれば、引鉄状に突出させた前記鉤部を前記パイプの側面の前記縦溝に沿って移動させることにより、前記試験用ガスを噴射させるので、前記ノズル押圧部材による前記噴射ノズルの押圧操作を簡便に行うことができ、作動試験の作業性を向上させることができる。
【0035】
本発明の第10形態によれば、前記着脱機構は、前記ガスボンベの頭部を把持してロックするボンベ取付ロック部材と、前記ボンベ取付ロック部材に外嵌され、螺着される筒状ボンベカバーとからなり、前記ボンベ取付ロック部材は、パイプ後端に収納、固着された中空軸部と、前記中空軸部の後端に放射状に形成された複数のボンベ把持爪とを有し、前記ボンベカバーは、前記中空軸部に螺着される先端部と、開放形成された後端部とから構成され、前記筒状ボンベカバー内部に前記後端部より前記噴射ノズルを挿入して前記ガスボンベの頭部を収納したとき、前記筒状ボンベカバーを前記ボンベ取付ロック部材に外嵌して螺着し、その螺着により前記複数のボンベ把持爪を内向きに押圧して前記ガスボンベの頭部を把持したので、前記ガスボンベの装着ないし取り外しの作業を面倒な操作を伴うことなく前記ボンベ取付ロック部材の螺着操作のみでワンタッチで簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施形態に係る作動試験装置を図面を参照して以下に説明する。
【0037】
図1は本実施形態の作動試験装置の全体構成を示す。この作動試験装置は、煙感知器を覆うためのカバー1と、伸縮自在に構成された操作杆用パイプ2と、試験用ガスを充填したガスボンベ5を着脱自在に取着する着脱機構部3からなる。図1はガスボンベ5を装填した状態を示す。
【0038】
操作杆用パイプ2は先端側の小径パイプ7と後端側の大径パイプ9からなる2重管構造を有し、小径パイプ7は大径パイプ9に内挿され、大径パイプ9の先端側に設けた締付部材8によって、所定長さに締着、保持される。小径パイプ7及び大径パイプ9の内部には、後述するように、ガスボンベ5の噴射ノズル53からの噴射ガスを導入するためのインナーチューブ10が挿通されている。小径パイプ7、大径パイプ9及びインナーチューブ10の外径は夫々、16mm、17mm、3mmである。インナーチューブ10の内径は1mmである。カバー材やパイプ材にはABS樹脂等を使用して軽量且つ安価に構成することができる。
【0039】
図2はカバー1を示す分解構造図である。カバー1は天井面等に据え付けられた煙感知器を覆う大きさの椀型カップ形態を有する。カバー1の底部には、T字形ジョイント部材6に螺着して取着するためのジョイントナット11がビス止めされている。ジョイントナット11は中空部19とフランジ部20を有する。フランジ部20には4個のビス孔22が穿設されている。カバー1の底部には貫通孔17が穿設され、その孔周囲に各ビス孔22に対応する、4個のビス孔18が形成されている。各ビス孔18と各ビス孔22にカバー1の開放側からビスを投入して、カバー1にジョイントナット11がビス止めされる。このビス止め状態において、ジョイントナット11の中空部19は貫通孔17を通じてカバー1内側に連通する。
【0040】
図14はジョイントナット11の縦断面図である。ジョイントナット11の中空部19内部には、払拭具54を螺着するためのねじ部21aと、ジョイント部材6と螺合するためのねじ部21bが形成されている。
【0041】
図15は本実施形態において着脱自在に装着される払拭具54の一例を示す。払拭具54は、払拭素材62を多数本、植設した連結軸部55からなり、連結軸部55は中空部19を封止する中実体からなり、ねじ部21aと螺合するためのねじ部56が形成されている。払拭素材62は合成繊維で形成されており、各繊維には電荷(エレクトット)が固定処理されている。この固定電荷により、清掃面上の塵埃を吸着して払拭、清掃することができる。繊維素材に静電気を発生させて、塵埃を静電気で吸着させる払拭素材を使用してもよい。特に、固定電荷方式によれば、静電気の発生しにくい夏場や湿気の多い環境下においても、常時、安定して電荷を保持するため、払拭効率を一定に保持して、清掃能率を向上させることができる。
【0042】
図3はジョイント部材6の側面図である。ジョイント部材6は、鉛直方向と、その直交方向にカバー1等を取着可能にするためのT字形中空管からなり、操作杆用パイプ2の先端部を形成する、直進方向の開放端23と、開放端23の向きに対して直交して交差する交差部に別の開放端24とを有する。開放端23及び開放端24の夫々の根元には、ジョイントナット11あるいは後述の封止キャップ12と螺合するためのねじ部25、26が形成されている。ジョイント部材6の直進部の内径はテーパ状に縮径されており、図中の破線で示すように、そのテーパー部57に小径パイプ7の頭部が圧入されて結合される。
【0043】
着脱機構部3は、ガスボンベ5の頭部を把持してロックするボンベ取付ロック部材28と、ボンベ取付ロック部材28に外嵌され、螺着される筒状ボンベカバー27からなる。
【0044】
図4はボンベ取付ロック部材28の外観図である。図5はボンベ取付ロック部材28の部分断面図である。図6はボンベ取付ロック部材28の一部縦断面図である。ボンベ取付ロック部材28は、中空軸部30と、中空軸部の根元に設けたねじ部34と、ねじ部34の後部に設けた台座部29と、台座部29に外向けに
放射状に形成された4個のボンベ把持爪32を有する。中空軸部30は、中空部37と、その側部に軸方向に縦溝状に形成された切り欠き溝31を有する。ボンベ把持爪32はボンベ頭部を締め付けるための鉤状のフック形状を有する。
【0045】
図6に示すように、中空部37はねじ部34及び台座部29の貫通孔33に連通している。ねじ部34には中空軸部30の外周に沿ったパイプ挿入溝36が形成されている。中空軸部30の先端側には大径パイプ9にビス止めするための取付孔35が2個穿設されている。図1に示すように、大径パイプ9の端部には、各取付孔35に対応してビス孔15、16が穿設されている。大径パイプ9の端部をパイプ挿入溝36に挿入し、各取付孔35にビス孔15、16を位置合わせしてビス止めすることにより、ボンベ取付ロック部材28を大径パイプ9に固着することができる。大径パイプ9の端部にも、切り欠き溝31に対応した縦溝58が軸方向に沿って切り欠き形成されている。
【0046】
図7の(7A)、(7B)は夫々、ボンベカバー27の外観と縦断面を示す。ボンベカバー27は底部38が開放された筒形状を有する。ボンベカバー27の頭部40には手で締め付けるための凹凸部13が形成されている。頭部40の先端側には縮径部41が形成され、縮径部41内側には、ボンベ取付ロック部材28のねじ部34と螺合するねじ部39が螺設されている。頭部40の下端側にはボンベ把持爪32に当接して押圧する傾斜部42が形成されている。
【0047】
図8はボンベカバー27とボンベ取付ロック部材28の螺着状態を示す。ボンベカバー27の底部38を中空軸部30より被せて、ボンベ取付ロック部材28に外嵌し、ねじ部34をねじ部39に螺合することにより、互いに螺着される。ガスボンベ5の頭部はボンベカバー27の底部38から挿入されて、ボンベ取付ロック部材28のボンベ把持爪32に引っ掛けられ、ねじ部34とねじ部39の螺合を進めると、傾斜部42がボンベ把持爪32をボンベ本体に向けて押圧していきボンベ本体を締着、保持することができる。
【0048】
図9はガスボンベ5の噴射ノズル53(後述の図11参照)を押圧して充填ガスを放出させるためのノズル押圧部材14を示す。図10はノズル押圧部材14の一部断面図である。ノズル押圧部材14は、大径パイプ9に固着されたボンベ取付ロック部材28の中空部37に収設される円筒状ノズル押圧部14と、ノズル押圧部14の側面下方に延設されたスライド板部45と、スライド板部45に突設された引鉄状の鉤部4からなる。ノズル押圧部材14は、スライド板部45を中空部37に形成された切り欠き溝31にスライド自在に挿着してボンベ取付ロック部材28に収設される。
【0049】
図10に示すように、ノズル押圧部14には軸方向に沿って貫通孔44が形成されている。貫通孔44の一端部43の内側はテーパー状に形成され、更に内側には噴射ノズル53の形状に沿うように段差状に内径の異なる貫通孔部46、47が形成されている。
【0050】
端部43と反対側の端部には、インナーチューブ10の一端が挿入され、その始端50は貫通孔44の内部に挿入されている。インナーチューブ10は細管径の中空チューブからなる。インナーチューブ10は貫通孔44の端部出口にて接着剤49で固着され、その中空部48は貫通孔44と連通している。
【0051】
図3に示すように、インナーチューブ10の開放端59は、ジョイント部材6の分岐点51、つまりジョイント部材6の直進方向の開放端23の中心軸と、前記交差部の開放端2の中心軸との交点の位置より下方に位置している。従って、前記パイプ先端部の開放端23を封止し、前記交差部にカバー1を取着して試験用ガスを開放端59から放出させる場合にあっても、円滑に噴出ガスを前記交差部に導出させることができ、前記交差部へのガス流通量の低下を生じさせることなく、作動試験作業を行うことができる。
【0052】
図11はガスボンベ5を装着したときのノズル押圧部材14周辺を示す縦断面図である。同図において、ガスボンベ5がボンベカバー27の底部38から挿入され、その頭部53がボンベ把持爪32によって締め付けられた締着状態を示す。図中の符号60は、ボンベ取付ロック部材28を大径パイプ9に固着するための、取付孔35とビス孔16に挿入されたビスを示す。前述のように、円筒状ノズル押圧部14のスライド板部45は、ボンベ取付ロック部材28の中空部37に収設され、切り欠き溝31にスライド自在に挿着されると共に、大径パイプ9端部の縦溝58にもスライド自在に挿着される。鉤部4も縦溝58を貫通して外部に突出している。引鉄状に突出させた鉤部4を大径パイプ9の縦溝58に沿って引き寄せて移動させると、ノズル押圧部14の先端部の貫通孔部46、47が噴射ノズル53に当接し、押圧して、ガスボンベ5に充填されている試験用ガスを噴射させることができる。上記構成のノズル押圧部14による噴射操作機構により、噴射ノズル53の押圧操作を簡便に行うことができ、作動試験の作業性を向上させることができる。
【0053】
図12は本実施形態の作動試験器の使用状態の一例を示す。この使用例は、図1に示すように、カバー1をジョイント部材6の開放端23に取着した場合である。開放端24には、有底状の封止キャップ12がねじ部26に螺着されて封止されている。点検作業者が操作杆用パイプ2を持ってカバー1で、天井面61に据え付けられた煙感知器52を覆う。そのカバー状態において、操作杆用パイプ2下部の鉤部4を引いて操作すると、ガスボンベ5の試験用ガスが噴射される。噴射ガスは、貫通孔44を通じて、それに連通したインナーチューブ11の始端からチューブ内を通過し、上方の開放端59から噴出する。勢いよく噴出したガスは煙感知器52を覆う密閉空間内に放散されて、即座に充満し、作動試験を速やかに行うことができる。
【0054】
本実施形態に係る作動試験器においては、小径パイプ7及び大径パイプ9を挿通するインナーチューブ10の始端をノズル押圧部14を介して噴射ノズル53に連通させ、試験用ガスを該始端より導入して開放端59よりカバー1内に向けて放出する。従って、ガスボンベ5をカバー1から分離して遠隔配置した状態において、ガス噴射操作を簡易に行えて作動試験の作業性を向上させることができる。しかも、ガス流通経路としてのインナーチューブは操作杆としてのパイプ79より断面積小の細管で構成でき、開放端59より勢いよく試験用ガスをカバー1に向けて放出できるため、試験に使用するガスが少量で済む。
【0055】
図13は本実施形態の作動試験器の別の使用状態を示す。この使用例は、カバー1をジョイントナット11を介してジョイント部材6横の開放端24に螺着、取着した場合である。開放端23には、上記封止キャップ12がねじ部25に螺着されて封止されている。点検作業者が操作杆用パイプ2を持ってカバー1で、鉛直方向とは異なる側壁面等に据え付けられた煙感知器を覆い、図12の場合と同様にガス噴射操作を行うことができる。従って、本実施形態においては、二股状に分岐したジョイント部材6を用いて、鉛直方向又はその直交方向にカバー1を取着できるので、天井面や屋内の側壁面等の煙感知器の設置状況に応じて、1台で2役の作動試験作業を行うことができ、作業性及び利便性の向上を図ることができる。
【0056】
図16は本実施形態の作動試験器の更に別の使用状態を示す。この使用例はカバー1をジョイント部材6の開放端23、24のいずれか一方に取着した状態のままで払拭具54を取着した清掃使用形態である。例えば、天井面に設置されている煙感知器又はその周辺が汚れており、清掃する必要のある場合には、図16の実線で示すように、ジョイント部材6の開放端23に取着した、カバー1のジョイントナット11のねじ部21aに払拭具54のねじ部56を螺着することにより、操作杆用パイプ2の鉛直方向の先端に払拭具54を取着し、操作杆用パイプ2を把持して該天井面のモップ清掃を円滑に行うことができる。なお、図16の実線の図面において、払拭具54を明確にするためにカバー1の一部を切り欠いて図示している。
【0057】
また、側壁面に設置されている煙感知器又はその周辺が汚れており、清掃する必要のある場合には、図16の破線で示すように、ジョイント部材6の開放端24に取着した、カバー1のジョイントナット11のねじ部21aに払拭具54のねじ部56を螺着することにより、操作杆用パイプ2の直交交差方向の先端に払拭具54を取着し、操作杆用パイプ2を把持して該側壁面のモップ清掃を円滑に行うことができる。
【0058】
図16の使用例に示すように、本実施形態に係る作動試験器においては、ジョイント部材6の各分岐端に、カバー1を取り外すことなく払拭具54を取着可能にしたので、清掃具の一部に利用して簡便に清掃作業することができ、清掃具を別途、持ち歩く必要がなく、点検作業効率を向上させることができる。
【0059】
払拭具54は、上述のようにジョイントナット11との螺合により中空部19を封止する中実体からなるので、本実施形態に係る作動試験器の使用態様としては、ジョイント部材6の開放端23、24のいずれかにカバー1を取着し、他方を封止キャップ12で封着するだけでなく、他方に払拭具54を取着して併用することができる。また、払拭具54は、ねじ部56をジョイントナット11に挿入して螺合させる着脱構造を備えるが、ジョイントナット11の螺合を解除してカバー1を取り外した状態で、ジョイント部材6のねじ部25又は26に外嵌して螺合させる着脱構造を払拭具54の連結軸部55に形成するようにしてもよい。
【0060】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、煙感知器の作動試験に使用するガス消費量を節減して、試験コストの低減を図ることができる煙感知器の作動試験器を提供することができる。また、ガスボンベをカバーから操作杆用パイプを介して分離して、遠隔配置した構成における作業性を向上させることができる作動試験装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態である作動試験装置の全体構成図である。
【図2】前記作動試験装置に用いるカバー1を示す分解構造図である。
【図3】前記作動試験装置に用いるジョイント部材6の側面図である。
【図4】前記作動試験装置に用いるボンベカバー27の外観斜視図である。
【図5】ボンベカバー27の部分断面図である。
【図6】ボンベカバー27の一部縦断面図である。
【図7】ボンベカバー27の外観図と縦断面図である。
【図8】ボンベカバー27とボンベ取付ロック部材28の螺着状態を示す断面図である。
【図9】前記作動試験装置に用いるノズル押圧部材14の外観斜視図である。
【図10】ノズル押圧部材14の一部断面図である。
【図11】ガスボンベ5を装着したときのノズル押圧部材14周辺の縦断面図である。
【図12】前記作動試験装置の作動試験時の使用状態例を示す断面説明図である。
【図13】前記作動試験装置の別の使用状態を示す全体構成図である。
【図14】前記作動試験装置に用いるジョイントナット11の縦断面図である。
【図15】前記作動試験装置において着脱自在に装着される払拭具54の外観図である。
【図16】前記作動試験装置の更に別の使用状態を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0063】
1 カバー
2 操作杆用パイプ
3 着脱機構部
4 鉤部
5 ガスボンベ
6 T字形ジョイント部材
7 小径パイプ
8 締付部材
9 大径パイプ
10 インナーチューブ
11 ジョイントナット
12 封止キャップ
13 凹凸部
14 ノズル押圧部材
15 ビス孔
16 ビス孔
17 貫通孔
18 ビス孔
19 中空部
20 フランジ部
21 ねじ部
22 ビス孔
23 開放端
24 開放端
25 ねじ部
26 ねじ部
27 ボンベカバー
28 ボンベ取付ロック部材
29 台座部
30 中空軸部
31 切り欠き溝
32 ボンベ把持爪
33 貫通孔
34 ねじ部
35 取付孔
36 パイプ挿入溝
37 中空部
38 底部
39 ねじ部
40 頭部
41 縮径部
42 傾斜部
43 端部
44 貫通孔
45 スライド板部
46 貫通孔部
47 貫通孔部
48 中空部
49 接着剤
50 始端
51 分岐点
52 煙感知器
53 噴射ノズル
54 払拭具
55 連結軸部
56 ねじ部
57 テーパー部
58 縦溝
59 開放端
60 ビス
61 天井面
62 払拭素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙感知器を覆うカバーが一端側に取着されたパイプと、試験用ガスを充填したガスボンベが前記パイプの後端に着脱自在に取着される着脱機構とからなり、前記ガスボンベの噴射ノズルから噴射された前記試験用ガスを前記カバー内に放散させる作動試験装置において、前記パイプに挿通されるインナーチューブを有し、チューブの始端を前記噴射ノズルに連通させて前記インナーチューブを前記パイプ内部に取着し、チューブの開放端を前記パイプの所定位置に配置し、前記試験用ガスを前記始端より導入して前記開放端より前記カバー内に向けて放出することを特徴とする煙感知器の作動試験装置。
【請求項2】
前記カバーを取り付けた状態のまま、前記パイプのカバー取着部に払拭具を取着可能にした請求項1に記載の煙感知器の作動試験装置。
【請求項3】
前記カバーを取り外したとき、前記パイプのカバー取着部に払拭具を取着可能にした請求項1に記載の煙感知器の作動試験装置。
【請求項4】
前記パイプの前記一端側を、パイプ先端部と、前記パイプに交差する交差部との2方向に分岐させ、夫々の分岐端に前記カバー取着部により前記カバーを着脱自在に取着した請求項1、2又は3に記載の煙感知器の作動試験装置。
【請求項5】
前記パイプ先端部と前記交差部の分岐点より前記ガスボンベ側下方に、前記インナーチューブの前記開放端を配置した請求項4に記載の煙感知器の作動試験装置。
【請求項6】
前記パイプ先端部と前記交差部のいずれか一方に前記カバーを、他方に払拭具を取着した請求項4又は5に記載の煙感知器の作動試験装置。
【請求項7】
前記パイプ先端部と前記交差部のいずれか一方に前記カバーを取着したとき、他方を封止した請求項4、5又は6に記載の煙感知器の作動試験装置。
【請求項8】
前記噴射ノズルを押圧して前記試験用ガスを噴射させるノズル押圧部材が前記パイプの軸方向に沿って移動自在に前記パイプ内に収設され、前記噴射ノズルと前記パイプを連通させる貫通孔が前記ノズル押圧部材に穿設され、前記貫通孔に連通させて前記インナーチューブの始端を前記ノズル押圧部材に固着し、前記貫通孔を通じて噴射された前記試験用ガスを前記インナーチューブに送り出す請求項1〜7のいずれかに記載の、煙感知器の作動試験装置。
【請求項9】
所定長さの縦溝を前記パイプの側面に前記パイプの軸方向に沿って切り欠き形成し、鉤部を前記縦溝より外部に突出させて前記ノズル押圧部材に突設し、前記鉤部を前記縦溝に沿って移動させることにより、前記ノズル押圧部材が前記噴射ノズルを押圧して前記試験用ガスを噴射させる請求項8に記載の、煙感知器の作動試験装置。
【請求項10】
前記着脱機構は、前記ガスボンベの頭部を把持してロックするボンベ取付ロック部材と、前記ボンベ取付ロック部材に外嵌され、螺着される筒状ボンベカバーとからなり、前記ボンベ取付ロック部材は、パイプ後端に収納、固着された中空軸部と、前記中空軸部の後端に放射状に形成された複数のボンベ把持爪とを有し、前記ボンベカバーは、前記中空軸部に螺着される先端部と、開放形成された後端部とから構成され、前記筒状ボンベカバー内部に前記後端部より前記噴射ノズルを挿入して前記ガスボンベの頭部を収納したとき、前記筒状ボンベカバーを前記ボンベ取付ロック部材に外嵌して螺着し、その螺着により前記複数のボンベ把持爪を内向きに押圧して前記ガスボンベの頭部を把持した、請求項1〜9のいずれかに記載の、煙感知器の作動試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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