説明

照射を使用してハイドロゲルを結合させるまたは改質する方法

本発明は、照射技法を使用してハイドロゲルを適当な表面に付着または結合させる方法および工程を提供し、かつこれらの照射技法を使用してハイドロゲル物品中に架橋された領域を創生する方法および工程をも提供する。具体的には、ヒドロキシル基、カルボン酸基または水の照射吸収帯域に同調させた波長のレーザーを使用してハイドロゲルを軟部組織およびハイドロゲル表面などの表面に付着または結合させる、またはハイドロゲル物品中の領域を架橋することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、現在継続中であり、参照によりその全体が本明細書に明確に組み込まれる、2005年12月7日に出願した米国仮出願第60/748,293号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ハイドロゲルを、軟部組織、エラストマー、およびハイドロゲル表面などの適当な材料に、照射技法を使用して付着または結合させる方法を提供する。本発明はまた、ハイドロゲル物品を、これらの照射技法を使用してこれらのハイドロゲル中に架橋された領域を作ることによって、改質する方法および工程をも提供する。具体的には、化学基の吸収帯域に同調させたレーザーは、ハイドロゲルを軟部組織、エラストマー、およびハイドロゲルなどの適当な材料に付着または結合させて、架橋領域を創るまたはハイドロゲル物品を改質するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
ハイドロゲルは、その構造が通常親水性ホモポリマーまたはコポリマーの架橋されたまたは相互貫入したネットワークによって規定される水膨潤性または水で膨潤させた材料である。親水性ホモポリマーまたはコポリマーは、フリーの形態では水溶性であるが、ハイドロゲルでは、これらは一般に共有結合、イオン性結合、または物理的架橋が存在するので不溶性化できる。物理的架橋の場合は、これらの連結はからみ合い、微結晶、または水素結合構造の形態を取ることができる。ハイドロゲル中の架橋は、ポリマーネットワークに構造および物理的一体性を与える。
【0004】
ハイドロゲルは、無定形、半結晶性、水素結合構造、超分子構造、またはハイドロコロイド状凝集体に分類することができる。多数のパラメーターが、多孔率、細孔のサイズ、ゲルポリマーの性質、ゲルポリマーの分子量、および架橋密度を含むハイドロゲルの物理的性質に影響を及ぼす。架橋密度は、平衡膨潤容積比、圧縮率、またはメッシュサイズなどの巨視的性質に影響を及ぼす。細孔のサイズおよび形状、細孔密度などの要因は、ハイドロゲルの表面の性質、光学的性質、および力学的性質に影響を与えうる。
【0005】
ハイドロゲルは幅広い範囲の力学的性質を有することができる。しかし、一般には、ハイドロゲルは柔軟性またはゴム状で滑らかな表面を有すると観察される。ハイドロゲルは一般に、水含有量および表面の水放出性による低い摩擦係数によって特徴付けられる。ハイドロゲルの摩擦挙動は、摩擦力が法線(すなわち運動面に対して直交する)力に比例するという、アモントンの法則には従わない。ハイドロゲルの摩擦係数については特異な荷重依存性が観察され、加重が増加するにつれて摩擦係数が減少する。ハイドロゲルが荷重下で変形すると、水の一部がゲルの塊から絞り出されて潤滑剤として働き、境界潤滑または流体潤滑に至る。
【0006】
ハイドロゲルは、様々な親水性ポリマーまたはコポリマーから作られてきた。ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアクリルアミド、およびポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ならびにこれらのコポリマーが、それらからハイドロゲルが作られてきたポリマーの例である。
【0007】
ハイドロゲルは、ポリマー鎖上の任意の懸垂基の電荷の種類に基づいて中性またはイオン性でありうる。ハイドロゲルは、外部環境に依存しかつ応答する膨潤挙動を示すことがある。環境にまたは生理的に応答性のハイドロゲルは、「インテリジェント(intelligent)」ハイドロゲルと呼ばれることがあり、外部のpH、温度、イオン強度、膨潤剤の性質、および電磁放射への暴露の変化によって膨潤比の大幅な変化を示しうる。pH依存性の膨潤挙動を示すハイドロゲルは、一般に酸性または塩基性の懸垂基を含有している。適切なpHおよびイオン強度の水性媒体中では、懸垂基がイオン化し、ゲル上に固定電荷を生じうる。
【特許文献1】米国特許第5047055号
【特許文献2】米国特許第6733533号
【非特許文献1】Peppasら、Ann.Rev.Biomed.Eng.2、9頁(2000)
【非特許文献2】Peppasら、Adv.Polymer Sci.153、37頁(2000)
【非特許文献3】Noguchiら、J.Appl.Biomat.2、101頁(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過去30年ないし40年にわたって、ハイドロゲルは、主に自然組織を模倣することができる高い水含有量およびゴム状または柔軟な性質の故に、生物医学上および薬剤としての用途のための将来性を示してきた。生体適合性のハイドロゲルは、分解性または分解抵抗性のいずれにでも設計することができる。最近になってようやく真価を認められるようになったハイドロゲルのさらなる利点は、これらが薬剤、ペプチド、および特にタンパク質に、放出部位近辺の厳しい可能性がある環境からの、望ましい保護を提供することができることである。したがって、かかるハイドロゲルは、経口、腸内、またはin situ留置を含む様々な手段による、タンパク質またはペプチドの送達のための担体として使用することができる可能性がある。ハイドロゲルを通過するまたはハイドロゲルからの溶離液の輸送は、細孔のサイズおよび形状、細孔密度、ポリマーの性質、水和度などの因子によって影響される。ハイドロゲルは、サイズ排除現象による輸送のバリアとしても働くことがある。一部のイオン性またはイオン化可能ポリマーのハイドロゲルが示すような、pHおよびイオン強度敏感性も薬物送達用途に関係する。
【0009】
ハイドロゲルは、幅広い種類の生物医学および薬物送達用途のために使用されかつ提案されてきた。例えばハイドロゲルは、制御放出装置において、薬剤またはタンパク質の時間をかけた送達を達成するために使用されてきており、またハイドロゲルはコンタクトレンズの製作において幅広く使用されてきた。ハイドロゲルは、軟骨に似た性質を有するように作ることができ、半月板および関節軟骨の代用品のための最も将来性のある材料の1つである。ハイドロゲルの生物学および医学用途のための考慮の概説はPeppasら、Ann.Rev.Biomed.Eng.2、9頁(2000)で見出すことができ、その全体を参照により組み入れる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、本発明はハイドロゲル成分を、適当な表面または材料、特に軟部組織表面、エラストマー、またはハイドロゲル表面に結合させる方法を提供する。この方法は、軟部組織表面、エラストマー、またはハイドロゲル表面などの表面を、ハイドロゲル成分と接触させる段階に続いて、ハイドロゲル成分と表面との界面領域を照射してハイドロゲル成分を表面に共有結合させる段階を含む。この方法は、例えば、ハイドロゲル成分を様々な軟部組織部位にインプラントするために適当であり、特にハイドロゲル成分をコラーゲン部位、または軟部組織表面が関節表面もしくは荷重受け表面に隣接している、関節部位にインプラントするために適当である。この結合方法は、ハイドロゲルの表面と軟部組織の間に、望ましい隙間のない界面を提供することができる。本発明の実施形態においては、ハイドロゲル成分は、あらかじめ形成されたハイドロゲルもしくはリオゲル(このハイドロゲル前駆体が表面に結合された後に水を、該成分に取り込むかまたは組み込む)などのハイドロゲル前駆体であるかまたはそれを含むことができる。ある種のハイドロゲルブレンドの熱可塑性の特徴のために、ハイドロゲル成分は流動性の形態であってもよいことがある。
【0011】
他の実施形態において、本発明は改質されたハイドロゲル物品を作る方法を提供し、この方法は、ハイドロゲル前駆体またはハイドロゲル物品を、軟部組織部位、エラストマー、もしくはハイドロゲル成分などの他の表面に、ハイドロゲル前駆体またはハイドロゲル物品と表面との界面の領域を照射してハイドロゲルを表面に結合させることによって、付着する段階と、ハイドロゲル前駆体またはハイドロゲル物品の所定の領域を選択的に照射して、所定の照射された領域中により高い濃度の架橋を提供する段階とを含む。ハイドロゲルを別のハイドロゲルに結合させる場合は、複数層ハイドロゲル物品すなわち複数の薄層を含むハイドロゲル物品が得られる。
【0012】
他の実施形態において、本発明は連続するハイドロゲル物品の薄層の所定の領域を選択的に照射して、照射された領域中に、より高濃度の架橋を提供することによって、ハイドロゲル物品中に勾配を作る方法を提供する。適当な照射源としてのレーザーの使用によって、ハイドロゲル物品中に特別な要求に合わせたまたは入り組んだ補強体系をもたらすように調整された架橋パターンの創生または生成に、かなりのフレキシビリティをもたらしうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
照射源
ハイドロゲルの照射は、共有結合の形成によるポリマー鎖の化学的架橋を生じる。架橋はそれによって個々のポリマー鎖が互いに不可逆的に連結される過程であり、照射による共有結合または反応剤を使用する化学結合のいずれかに起因しうる。可逆的な物理的結合力または相互作用が化学的な架橋と合わせてハイドロゲル中に生じることもある。詳しくは、一実施形態では、照射架橋のためには、ポリマーのヒドロキシル基またはカルボン酸基の吸収帯域に同調させたレーザーを使用して、ハイドロゲルを軟部組織およびハイドロゲル表面などの適当な材料に付着もしくは結合形成し、架橋された領域を創生し、またはハイドロゲル物品を改質することができる。共有架橋結合を創生するための照射の使用は、化学反応剤による架橋を超える利点を有し、この利点としては、反応位置の特定を含む反応の制御性の増加、および、反応剤に由来する残留物(この残留物は、ハイドロゲルの生体適合性を低減しうる)が存在しないことが含まれる。
【0014】
近赤外スペクトル領域のレーザー光は、ハイドロゲルを軟部組織および他のハイドロゲル物品などの表面への付着もしくは結合形成のための、またはハイドロゲル物品を改質するための熱エネルギー源として魅力のあるものとする独特の性質を有する。レーザー光は、他の光源と比較して高度の輝度および指向性を有する。このことは、レーザー光を使用すると他の光源からの光よりも高い位置決めの精度を有するより収束した焦点が形成されることを意味する。約800nm〜3000nmの近赤外スペクトル領域にわたって同調させることができる強い光の単一光源を用いて操作することが望ましい。適当な照射源は、ホストマトリックス中の活性イオンに基づくレーザー、固体半導体レーザー、ダイオードポンプレーザー、およびファイバーレーザーである。ホスト材料のための適当なイオンには、Er3+、Cr4+、Dy3+、Nd3+、Pr3+、Ho3+、またはTm3+が含まれる。適当な半導体レーザーには、InGaAs、InGaAlAs、およびInGaAsP合金半導体レーザー、ならびにAlGaAs量子井戸(QW)帯域内遷移半導体レーザーが含まれる。適当なファイバーレーザーには、Yb(イッテルビウム)ドープファイバーレーザーおよびEr(エルビウム)ドープファイバーレーザーが含まれる。その他のレーザー光源には、HeNe、アルゴン、クリプトン、およびフッ素などのガスレーザーが含まれうる。これらのレーザーは、ポリマーのヒドロキシル、ヒドロキシル、アミン、スルホン酸、スルフィン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、アミノ、アルコール、ニトリル、ニトロ、スルフィド、スルホン、チオ、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボン酸の基などの所望の官能基または水の吸収帯域に相当するスペクトル範囲に同調させることができ、ハイドロゲルを軟部組織へ、追加の組織接合剤、UV開始剤、もしくは色素を用いることなく、または他のハイドロゲル表面へ付着または結合形成することを可能にする。
【0015】
本発明は、部分的に、照射に基づくハイドロゲル-組織結合形成などの付着または結合形成手順において使用される光源の選択が、実用的なハイドロゲル-組織結合を達成する技法の有効性においてある役割を果たすという前提に基づいている。ハイドロゲルまたは軟部組織と光の相互作用は、散乱および吸収を含むハイドロゲルまたは組織の光学パラメーターによって支配され、これらのパラメーターは入射光の波長に依存する。適切な状況下では、ハイドロゲルまたは組織中で熱に転換された光エネルギーは、ハイドロゲルの隣接するハイドロゲルおよび/または組織ならびにコラーゲンなどの他の成分への結合形成の原因となり、それによって所望の付着または結合形成を達成する。この過程は、当該部位の特定のハイドロゲルおよび軟部組織に最良に適合された適切な光源、焦点距離、パルス幅、非パルス光源および送達システムを使用することによって精緻化されうる。
【0016】
体内には吸収、散乱および反射率などの光学的性質が異なる様々な種類の軟部組織がある。特定のハイドロゲルまたは組織と入射した照射線との相互作用は、ハイドロゲル-組織の結合形成操作の有効性において重要である。処理されるハイドロゲルまたは組織の特定の種類および厚さに適するように修正することができる、広帯域の光源を使用することが望ましいことがある。特に、ハイドロゲル中のヒドロキシルまたはカルボン酸基または組織中の水の吸収スペクトル中の共鳴と一致する近赤外スペクトル領域内の光が、ハイドロゲル-組織の結合形成過程のためには好都合であることが確認されている。水は生体組織の大きなパーセンテージを成しており、したがって組織の吸収性において重要な役割を有している。貫通深さの変動は、光源の同調範囲にわたる吸収の最大から最小までの変化の関数である。
【0017】
ヒドロキシル基、カルボン酸基または水の吸収のスペクトル領域にわたって同調可能な光源を備えることによって、入射光が組織を貫通しうる深さを選択することができる。ハイドロゲル-組織の結合形成用途のためには900〜2000nmの波長範囲が、この領域内ではエネルギー吸収の大きな変化が見られるので、特に魅力的である。1430nm〜1470nm領域などの1400nm領域の強い吸収は、約0.1mmの組織貫通深さを有し、1300nmの光は組織中により深く約5mmまで貫通することができる。この貫通深さの大きさは幅広い種類の組織の付着または結合形成の過程を最適化することを実現可能にする。ヒドロキシル含有ポリマーに適当な波長は1280〜1400nmの間である。Cunyiteおよびフォステライトレーザーはヒドロキシルポリマーに適当な供給源である。CO結合を含有するポリマーについては、適当な波長範囲は1450〜1600nmの間である。
【0018】
加えて、適切な波長を利用することによって、組織の吸収および散乱の性質を、ハイドロゲルの軟部組織への強い結合をもたらすために活用することができる。例えば、組織によって強く吸収される波長の光が、光の大きなパーセンテージが結合形成領域の組織中に吸収され、他の領域中に吸収される光を最小限にし、それによって背後の組織への意図されないいかなる障害をも低減するので好ましい。この操作のためには近赤外スペクトル領域の光が、この領域の波長は組織中の貫通深さ約0.1mm〜約5mmの範囲にわたって連続的に同調させることができるので、特に望ましい。
【0019】
一部の実施形態では、Cr4+活性イオンに基づく同調可能な近赤外レーザー、例えば約1150〜約1350nmの同調可能波長を有するCr:フォルステライトレーザー、約1350〜約1500nmで同調可能なCunyite Cr:Ca2GeO4レーザー、または約1370〜1600nmで同調可能なCr4+YAGレーザー(組織溶接法で使用されてきた)などを使用する。これらのレーザーの独特の同調範囲は、これらの操作の単純さが他のレーザーから光を発生させるために必要な波長変換法によって追加される複雑さの必要性を否定するので、これらをハイドロゲル-組織の結合形成法のための照射源としてこれらのレーザーを魅力的にする。さらに、結合形成は1150〜1600nmのスペクトル領域にあるヒドロキシル基、カルボン酸基または水の吸収帯を使用して追加の色素を用いずに可能でありうる。色素の例には、ADS1075A(American Dye Source、Quebec、CA)、ADS1060WS(American Dye Source)、およびClearWeld(登録商標)(Cambridge、UK)が含まれる。Cr4+レーザーからの同調可能な波長はまた、この光源からの波長がポリマーヒドロキシル基およびコラーゲンを含むヒドロキシル含有種によって強く吸収されるので、レーザー照射のための正確な深さの貫通の選択におけるより多くの多様性を提供する。
【0020】
Cr4+レーザーは、アルゴンレーザー(1〜2mm)ならびにNd:YAGレーザー(3〜4mm)およびCO2レーザー(0.02mm)を含む他のレーザーなどの可視光よりも少ない散乱および深い貫通がある近赤外スペクトル範囲で照射を行う。これらのCr4+レーザー光線はそれらの波長に依存して約2〜約5mmで変化する貫通深さを有し、組織中の水および脂肪を加熱してハイドロゲルの組織への付着および結合形成を誘導することができる。これらのCr4+レーザーは、適切な波長が選択された場合は、薄い壁を有する組織にも厚い壁を有する組織と同様に適当でありうる。これらの同調可能なレーザーの出力は、単波長レーザーを超えるいくつかの重要な利点を有する。照射は様々な組織成分の吸収帯、例えば脂肪に対しては1203nm、および水に対しては1350nmなどに同調させればよい。種類の異なる組織は異なる波長を選択することによって処置することができる。これらのレーザーの使用におけるさらなる利点は、光線を送達するために医師が容易に操作しうる石英ファイバー光学を利用することである。Cr4+レーザーからの同調可能な波長はまた、ハイドロゲル-組織の結合形成のための正確な深さの貫通の選択におけるより多くの多様性を提供する。
【0021】
単一の理論には拘束されないが、それによってレーザーを用いる組織-ハイドロゲルの結合形成が機能する1つの機序は、ハイドロゲルおよび軟部組織中の水の吸収帯に起因して、レーザー光線がまず組織を加熱することである可能性がある。この加熱は自然組織のコラーゲンなどのタンパク質中の分子とハイドロゲル分子との、結合の切断および再形成による、結合形成を促進させる。ハイドロゲルとハイドロゲルとの結合形成の場合は、ハイドロゲル中で熱に転換される光エネルギーは、隣接するハイドロゲル同士の結合形成を起こさせ、それによって所望の付着または結合を達成する。この過程の一例は、エーテル結合を生成するレーザーによって誘導されるヒドロキシル基同士の熱脱水である。この過程は、特定のハイドロゲルに適合させた適切な光源および送達システムの使用によって精緻化することができる。
【0022】
ハイドロゲルの架橋
本発明の一実施形態では、照射を使用してハイドロゲルの領域を様々な形状、パターン、または勾配で選択的に架橋することができる。この選択的架橋は、ハイドロゲル物品の力学的および物理的特徴を、特別な要求に合わせて調整するために使用することができる。レーザーは、物品の表面においてより高い濃度のレーザーエネルギーが存在し、したがってその領域にはより高濃度の架橋が存在することになるので、成形されたハイドロゲル物品中に勾配を創るために使用することができる。加えて、図1に示すようなラスタライジング手法または方法を使用してハイドロゲル物品中に特定の架橋された形状を創るために使用することができる。ラスタライジングは、画像またはパターンを創るために、電子線、照射、レーザーまたは他の波長の源によって創られた、水平線からなるパターンである。この場合、ラスタライジングは所望の物品中に架橋パターンを創る。この架橋方法は物品自体の製造の間に使用することができ、あるいは物品が腰、膝、脊椎、指もしくは肩の関節修復部位などの所望の部位または位置の軟部組織と接触させて設置された後にin situで使用することもできる。この架橋方法は、続けて一緒に結合される別々のハイドロゲル成分に対して使用することもできる。レーザーをハイドロゲルの架橋のために使用する場合は、ポリマーの分子量の低下はまったくまたはわずかにしかなく、したがって、ハイドロゲル物品の力学的または物理的性質に有害な変化はない。架橋はネットワークに補強をもたらし、かつより小さいクリープ変形、より高い引裂き抵抗性、および増大した剛性を作り出すことができる。
【0023】
他の実施形態において、本発明は、ハイドロゲル物品の所定の領域を選択的に照射して照射された領域により高濃度の架橋をもたらす段階を含む、ハイドロゲル物品中に架橋された勾配またはパターンを作る方法を提供する。一部の実施形態においては、所定の領域はラスタライズされたパターンである。他の実施形態においては、所定の領域は幾何学的パターンである。さらに他の実施形態においては、所定の領域は三次元パターンである。
【0024】
他の実施形態において、本発明は多層ハイドロゲル物品を作る方法を提供する。この実施形態においては、勾配またはパターンは積層手法を利用して創られる。第1段階では、ハイドロゲルまたはハイドロゲル前駆体が所定のパターンで照射されて、パターン化された第1のハイドロゲル層を提供する。次いで同じまたは異なるハイドロゲルまたはハイドロゲル前駆体の第2の層を、パターン化された第1のハイドロゲル層に接触させて第2のハイドロゲル層を創る。次いでこの第2の層を、第1の層を照射するために使用したものと同じでも異なっていてもよい所定のパターンで、照射する。この工程を任意の回数実施して所望の多層ハイドロゲル物品を得ることができる。これらのハイドロゲル層は、互いにそれらの間の界面を照射することによって結合する。
【0025】
他の実施形態では、ハイドロゲル物品と軟部組織の界面の領域を照射してハイドロゲル物品を軟部組織に結合させることによってハイドロゲル物品を軟部組織に結合させる第1段階、およびハイドロゲル物品の所定の領域を選択的に照射して所定の照射領域中のより高い架橋の濃度を提供する第2段階の2つの段階を含む、改質されたハイドロゲル物品を作成する方法が提供される。この方法の1つの変形は、これらの2つの段階を上記の積層工程と組み合わせることである。この工程の組合せは、例えば物品のそれぞれの層中に創られる架橋パターンによって物品の力学的性質および物理的特徴が制御された積層物品を組織部位で構築する方法を提供する。
【0026】
結合形成表面
様々な表面、あらかじめ成形されたハイドロゲル成分、ハイドロゲル前駆体、リオゲルまたはハイドロゲル物品が、本発明の方法および工程を使用するハイドロゲルの結合形成のために適当である。
【0027】
一実施形態においては、表面は、ポリマー構造中に適当なハイドロゲルまたはハイドロゲル成分のヒドロキシル基もしくはカルボン酸基と相互作用または結合形成する適切な化学部分を有するポリマーの表面でよい。適切な化学部分には、これらだけには限定されないが、ヒドロキシル、エーテル、エステル、カルボン酸、アミン、アミド、またはシリル部分が含まれる。ヒドロキシルもしくはカルボン酸基と共有結合または他の化学結合を形成することができる他の化学部分も、本発明の方法または工程における使用に適当である。
【0028】
本発明の他の実施形態においては、表面は軟部組織でよい。軟部組織は、その周囲の構造を接続、包含、支持および/または動かす身体の構造のことを指す用語である。軟部組織の例には、筋肉、腱、靭帯、滑膜組織、筋骨格要素を取り巻く筋膜、ならびに神経、血管および脂肪などの他の構造を含む。一部の実施形態においては、軟部組織は図2に概略的に示す軟骨、半月板または腰、膝、脊柱、指、肘または肩の関節などの関節部位にある他の軟部組織である。
【0029】
ハイドロゲル
本発明で使用することができる水膨潤性物品およびハイドロゲルは、通常親水性ポリマーを含む。一実施形態では、親水性ポリマーはポリ(ビニルアルコール)(PVA)、またはその誘導体でよい。例示にすぎないが、適当でありうる他の親水性ポリマーには、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、加水分解ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(エチレンイミン)、エポキシ化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アリルアミン)、またはポリ(グリコール)ならびにこれらの親水性ポリマーの任意のブレンドまたは混合物が含まれる。
【0030】
ある種の実施形態においては、ハイドロゲルの少なくとも1つの成分は親水性ポリマーとしてのPVAである。商業的使用のためのPVAは、一般に、ポリ(酢酸ビニル)を形成するための酢酸ビニルのフリーラジカル重合に続くPVAを得るための加水分解によって製造される。加水分解反応は完了には至らず、ポリマー鎖に沿って一部の位置には懸垂酢酸基が残っている。したがって実際には、PVAは部分的に酢酸ビニルとビニルアルコールのコポリマーと考えることができる。加水反応の程度はPVAの加水分解度を決定する。市販のPVAは、一部の事例では98%を超える加水分解度を有することがある。
【0031】
(残留している懸垂酢酸基の数を示す)加水分解度は、PVAの溶解性、化学的性質、および結晶化能に影響を及ぼす。非常に高い加水分解度(95%超)を有するPVAは、ヒドロキシル基による高度の鎖内水素結合形成に起因して、より低い加水分解度を有するPVAよりも実際に水溶性が低い。より低い加水分解度を有するPVAについては、残留酢酸基が分子内および分子間の水素結合を弱めて水による溶媒和を可能にする。
【0032】
同様に、残留酢酸基の存在は、PVAの結晶化能にも影響を及ぼす。高い加水分解度を有するPVAはより低い加水分解度を有するPVAよりも結晶化しにくい。結晶性PVAは約85℃のガラス転移温度を有すると報告されており、かつ220℃〜240℃の範囲内で溶融する。結晶性PVA中の水または他の溶媒の存在は、ガラス転移温度を純粋なPVAのガラス転移温度から顕著に下げる。Peppasら、Adv.Polymer Sci.153、37頁(2000)を参照されたい。
【0033】
市販のPVAは一般にかなり広い分子量分布によって特徴付けられる。市販のPVAについては2〜2.5の多分散性指数が普通であり、5までの多分散性指数も稀ではない。多分散性指数、すなわちPDIは、所与のポリマーサンプルの分子量分布の目安である。PVAの分子量分布は、結晶化能、接着、力学的強度、および拡散性に影響を及ぼす。
【0034】
本発明における使用のためには、PVAは50kDaを超える平均分子量および70%を超える加水分解度を有することが望まれる。より普通には、PVAは80kDaを超える平均分子量および90%を超える加水分解度を有する。一実施形態では、PVAは約86kDa〜186kDaの範囲内の平均分子量によって特徴付けられる。
【0035】
本発明の一部の実施形態では、親水性ポリマーはPVAおよび疎水性の反復単位および親水性の反復単位を有する第2のポリマーを含むハイドロゲルブレンドでよい。この第2のポリマーは、例えばポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)でよい。非限定的な例として、他の適当なポリマーには、ジオール末端を有するポリ(ヘキサメチレンフタレート)およびポリ(スチレン-co-アリルアルコール)が含まれる。
【0036】
前記ブレンドは、約5重量%〜約95重量%の親水性ポリマー、および約5重量%〜約95重量%の第2のポリマーを含むことができる。より適当には、ブレンドは約30重量%〜約95重量%の親水性ポリマー、および約5重量%〜約70重量%の第2のポリマーを含む。一部の実施形態では、ブレンドは約50重量%〜約95重量%の親水性ポリマー、および約5重量%〜約50重量%の第2のポリマーを含む。
【0037】
一実施形態では、ブレンドは約5重量%〜約95重量%のPVA、および約5重量%〜約95重量%のポリ(エチレン-ビニルアルコール)を含むことができる。他の実施形態では、ブレンドは約30重量%〜約95重量%のPVA、および約5重量%〜約70重量%のポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)を含む。
【0038】
一実施形態では、ブレンドは約5重量%〜約95重量%のPVA、および約5重量%〜約95重量%のポリ(スチレン-co-アリルアルコール)を第2のポリマーとして含むまたは本質的にこれらから成る。他の実施形態では、ブレンドは約5重量%〜約95重量%のPVA、および約5重量%〜約95重量%のジオール末端を有するポリ(ヘキサメチレンフタレート)を第2のポリマーとして含むまたは本質的にこれらから成る。
【0039】
ある種の実施形態では、第2のポリマーは疎水性および親水性の両方の性格を有する。一般には、第2のポリマーは疎水性の反復単位および親水性の反復単位を含む。ポリマーは、例えばコポリマーであってもよい。水和の結果生じる水膨潤性物品またはハイドロゲルの「剛性」を変えるまたは調節することが、ポリマーの全体的な疎水性または親水性を変えることによって可能であろう。これは架橋部位の数が多いか少ないかによるものであることがある。
【0040】
一部の実施形態では、疎水性反復単位は脂肪族炭化水素セグメントを含む。脂肪族炭化水素反復単位は、例えば-[CH2CH2-]または-[CH2CH(CH3)-]の形態を取ってよい。他の実施形態では、疎水性反復単位は脂肪族、環状、もしくは芳香族炭化水素の懸垂基(例えば懸垂フェニル基)、またはヘテロ環状もしくはヘテロ芳香族懸垂基を含むことができる。例にすぎないが、疎水性領域はフルオロカーボンセグメント、シアノ懸垂基を含むセグメント、またはイミド基を含むセグメントを含むこともできる。
【0041】
一実施形態では、疎水性反復単位の過半は-[CH2CH2-]形態の単位である。本明細書で使用する「過半」という用語は少なくとも50%を意味する。他の実施形態では、疎水性反復単位は圧倒的に-[CH2CH2-]形態の単位である。本明細書で使用する「圧倒的に」という用語は高い比率を、一般には少なくとも90%を意味する。
【0042】
ポリマーの親水性反復単位には、ポリマー骨格中の、または懸垂基としてのヒドロキシル懸垂基、カルボン酸もしくはスルホン酸懸垂基などの親水性の基、ピロリドン懸垂基などの親水性へテロ環状基、またはアルキレンオキシド基(例えば(C1〜C6)アルキレンオキシド基、より通常には(C1〜C3)アルキレンオキシド基、例えば、-[CH2O-]、-[CH2CH2O-1、-[CH(CH3)O-1、-[CH2CH2CH2O-1、-[CH(CH3)CH2O-1、-[CH2CH(CH3)O-]など)を有する反復単位が含まれる。
【0043】
一実施形態では親水性反復単位の過半は懸垂ヒドロキシル基(-OH)を含む。他の実施形態では、親水性反復単位は圧倒的に懸垂-OH基を含む。一実施形態では、親水性反復単位は-[CH2CH(OH)-]形態の単位である。他の実施形態では、親水性反復単位は圧倒的に-[CH2CH(OH)-]形態の単位である。
【0044】
疎水性モノマーおよび親水性モノマーから得られるコポリマーは、例えばポリマーとして適当でありうる。1つの適当なコポリマーは、例えば-[CH2CH2-]形態の反復単位および-[CH2CH(OH)-]形態の反復単位を含む。一実施形態では、コポリマーは-[CH2CH2-]形態の反復単位および-[CH2CH(OH)-]形態の反復単位を約1:1〜約1:3の範囲の比率で含む。
【0045】
コポリマーの一例はポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)であり、「EVAL」、「PEVAL」または「EVOH」としても知られている。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)は、硬い、結晶性固体を形成させることができ、食品包装およびその他の用途で商業的に使用されている。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)の市販等級品はハイドロゲル調製において使用するのに適当である。市販等級品はモルパーセントで表現したエチレン含有量26%、27%、28%、29%、32%、35%、44%、および48%を有するものが入手可能である。
【0046】
親水性反復単位および疎水性反復単位を有する適当でありうる他のコポリマーには、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)およびポリ(エチレン-co-メタクリル酸)が含まれる。一実施形態では、コポリマーは平均分子量1600のポリ(スチレン-co-アリルアルコール)である。
【0047】
疎水性ブロックおよび親水性ブロックを有するブロックコポリマーもポリマーとして適当でありうる。例えば、ブロックコポリマーは、疎水性および親水性のセグメントを有するオリゴマーまたはプレポリマーから得られることもありうる。プレポリマーは比較的低い分子量、普通はモノマーと最終ポリマーまたは樹脂の分子量の中間のポリマーであり、配合添加物と混合されてもよく、かつ成形工程中またはその後さらなる重合によって硬化させることができる。
【0048】
親水性の両末端基を有する疎水性のポリマーまたはオリゴマーも、コポリマー実施形態における第2のポリマーとして適当でありうる。親水性の両末端基を有するオリゴマーの一例はジオール末端を有する平均分子量1000のポリ(ヘキサメチレンフタレート)である。
【0049】
例示の目的にすぎないが、使用することができる親水性および疎水性の特徴を有する他のポリマーには、ジカルボキシ末端を有するポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン)、ポリ(3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物-co-1,4-フェニレンジアミン)アミド酸、ポリ(3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物-co-4,4'-オキシジアニリン/1,3-フェニレンジアミン)アミド酸、ポリ(ビスフェノールA-co-4-ニトロフタル酸無水物-co-1,3-フェニレンジアミン)、ポリブタジエンエポキシ/ヒドロキシル官能性、ヒドロキシル末端を有するポリブタジエン、ポリ(エチレン-co-1,2-ブチレン)ジオール、ヒドロキシル末端を有するポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)、およびグリシジルエンドキャップドポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)が含まれる。
【0050】
適当な水膨潤性またはハイドロゲル物品は、親水性ポリマーおよびパーフルオロシクロブタンの架橋セグメントを含むことができる。例示にすぎないが、適当でありうる親水性ポリマーには、PVA、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、加水分解されたポリ(アクリロニトリル)、ポリ(エチレンイミン)、エトキシ化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アリルアミン)、およびポリ(グリコール)が含まれる。
【0051】
一実施形態では、適当な水膨潤性物品には、ポリ(ビニルアルコール)を含むハイドロゲルブレンドならびに疎水性反復単位および親水性反復単位を有する第2のポリマーが含まれる。一部の実施形態では、水膨潤性物品は熱可塑性物質である。
【0052】
水膨潤性物品は、追加のポリマー、ペプチドおよびコラーゲンなどのタンパク質、または可塑剤、亀裂の形成もしくは成長を防止もしくは軽減する成分、クリープを防止もしくは軽減する成分、または物品に放射線不透過性を与えるための微粒子もしくは他の添加物などの従来の添加物をも含むことができる。例示にすぎないが、放射線不透過性を与えるための添加物は、金属酸化物、金属リン酸塩、および硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、フッ化イッテルビウム、リン酸バリウム、および酸化イッテルビウムを含むことができる。
【0053】
上記で報告した親水性ポリマーは、適当な担体の存在下で架橋されたポリマーファイバーと組み合わせることができる。適当なポリマーファイバーには、様々な供給源から市販されている不織短ファイバーが含まれる。適当な合成ファイバーの例には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が含まれる。適当な天然ファイバーは、コラーゲン、キチン、キトサンなどから形成させることができる。適当な生物分解性ファイバーには、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコリド)(PLG)コポリマー、ポリ(グリコリド-co-ラクチド)(PGL)コポリマー、ポリジオキサノンなどが含まれる。適当な無機ファイバーには、例えば、カーボンファイバー、セラミックファイバー、ヒドロキシアパタイト、ポリシロキサンファイバーなどが含まれる。クラレ株式会社(日本)から入手可能なKuralon(登録商標)RECなどの市販のPVAファイバーは、一部の実施形態で使用するのに適当であり、0.014〜0.66mmの平均直径と4〜30mmの平均長さを有する。
【0054】
親水性ポリマーと組み合わせる前に、ポリマーファイバーは照射またはその他の従来法を使用して架橋することができる。一実施形態では、例えば、ポリマーファイバーを親水性ポリマーと組み合わせる前に25kGyでガンマ線照射してもよい。他の実施形態では、ポリマーファイバーは50kGyでガンマ線照射してもよい。かかる架橋は、その後の加工段階中のファイバーの耐久性を向上させ、結晶性を保存し、かつ溶解を防止することができ、特に高温条件におけるファイバーの崩壊を防止または軽減することができる。
【0055】
ある実施形態では、ポリマーファイバーは親水性ポリマーを得たものと同じポリマー材料から形成される。例えば、親水性ポリマーおよびポリマーファイバーの両方をポリ(ビニル)アルコールから形成させるまたは得ることができる。
【0056】
ハイドロゲルの成形
所望の形状またはサイズの水膨潤性物品を得る加工方法は、溶液キャスティング、射出成形、または圧縮成形を含むことができる。一般には、これらの方法は架橋および/または表面への結合形成の前でも後でも、同様に物品が水和される前でも後でも使用することができる。
【0057】
ハイドロゲルは、様々な三次元形態、例えば円筒形の派生物またはセグメント、球の派生物またはセグメント、多面体の派生物またはセグメントなどに成形することができる。適当なハイドロゲル形状は、円筒形、球形または多面体セグメントの少なくとも1つを含むことができる。例えば、適当な円筒形の派生物には、棒状物品、角のある、尖ったもしくは曲がった先端の棒状物品、馬蹄形、ソーセージもしくはドーナッツ様形状の物品、または何か盛り上がった部分がある他の形状が含まれうる。球形状または多面体形状に基づくさらなる代わりの形状ならびに円筒形、球形および/または多面体形状の組合せを含みうる複雑な形状も本発明の範囲内である。
【0058】
一部の実施形態では、水膨潤性物品はリオゲル形態では熱可塑性であり、リオゲルはハイドロゲル材料を調製するために使用された溶媒が水で置換される前のハイドロゲル材料または物品の物理的状態を記載するために一般に使用される用語である。熱可塑性リオゲルは、その水膨潤性を失うことなく溶融および再固化させることができる。リオゲルとしての水膨潤性物品の熱可塑性は、容易な加工性および最終使用を可能にする。溶融すると、リオゲルは流動性となり、したがって、押出し成形、射出成形、プレス成形または金型成形することができる。
【0059】
コーティングでの使用のための溶液を調製するためには、適切なポリマー(および任意選択でいかなる添加物も)を溶媒に溶解させる。溶媒を加熱することはポリマーの溶解を容易にしうる。ポリマーと溶媒の比率は幅広く変わりうる。例として、PVAハイドロゲルは、2〜50重量%のポリマー濃度を使用して調製されてきたと報告されている。本方法の一実施形態では、溶液は溶媒1重量部当たりに約0.5重量部のポリマーブレンドを含む。
【0060】
圧縮成形または射出成形用の材料を調製するためには、適切なポリマー(および任意選択でいかなる添加物も)を、加熱された二軸混練機などの混合装置中で適切な希釈剤または可塑剤を用いて配合することができる。混合装置を加熱することは加工処理を助けることができる。適当な温度は希釈剤または可塑剤および選択されたポリマー系に依存する。ポリマーと希釈剤の比率は幅広く変わりうる。本方法の一実施形態では、ブレンドされるハイドロゲル材料は、溶媒1重量部当たり約0.5重量部のポリマーブレンドを含む。
【0061】
熱可塑性水膨潤性材料のin vivo送達
上記で論じた通り、リオゲル状態にある一部の実施形態の水膨潤性およびハイドロゲル物品は熱可塑性であり、それらの水膨潤可能な性質または特性を保持しつつ溶融および再固化させることができる。溶媒が水で置換される前の水膨潤性材料の熱可塑性は、容易な加工性を可能にする。溶融させると、この材料は流動性となり、所望の形状に押出し成形、プレス成形、または金型成形することができる。
【0062】
一部の実施形態では、水膨潤性材料はまた、低い熱容量または乏しい熱伝導度のいずれかによって特徴付けられ、かつ加熱された流動性の状態でも特別な用心をすることなく手で取り扱うことができる。溶融加工性は、in situ送達および成形を完遂しうるように、水膨潤性材料を操作することを可能にする。したがって、この熱可塑性水膨潤性材料は、直接患者の体内に注入することができて、in situでのリオゲル材料の成形を可能にし、次いでそれを本発明の方法によって注入部位で付着または結合させることができる。かかる技法は、以下に詳しく記載するいくつかの最小限度で侵襲的な外科的手法において実用的な用途を有することができる。
【0063】
他の実施形態では、本発明は、加熱の段階およびin vivo送達の段階に連結した熱可塑性水膨潤性材料の使用を提供する。加熱段階は、水膨潤性材料をそれが流動しうる温度まで加熱することを可能にする従来のどの熱源であってもよい。加熱のための適当な手段の一例はホットガンである。in vivo送達の段階は、導管または針などの適当ないかなる機器によってでもよい。一部の実施形態では、加熱の手段および送達の手段を組み合わせて一体の機器にすることができる。例としては、加熱された導管は両方の機能を果たす可能性がある。
【0064】
水膨潤性物品およびハイドロゲルのin vivo使用
PVAハイドロゲルを含むハイドロゲルは、軟骨代用品もしくは増強および脊椎円板代用品、増強、またはリハビリテーションを含むいくつかの生物医学用途における使用のために使用されまたは提案されてきた。
【0065】
ハイドロゲルは、独特な一連の力学的性質を有する。上記のブレンドされたハイドロゲルなどの特定の実施形態では、これらの材料は、柔軟性および低い弾性係数を維持しながら、PVAに基づくハイドロゲルを含む他のハイドロゲルと同等またはこれらを超える強靭性を示す。これらの向上した性質の例は、増大した引張り強度、増大したせん断抵抗、および向上した弾性である。さらに、ブレンドされたハイドロゲルの性質は、特定の使用法に関する要求を満たすように調整することができる。
【0066】
ブレンドされたハイドロゲルは、一部の実施形態における通常のPVAハイドロゲルと比較して、より高い強度および引裂き抵抗を示す。これらのハイドロゲルは、組織様の構造および性質を示すように工夫することができる。例えば、これらのハイドロゲルは、材料の破断伸び特性を大幅に増大させるように工夫して、材料の増大した強靭性を提供することができる。
【0067】
したがって、これらのハイドロゲルは生物医学用途で適切に使用することができる。水膨潤性ハイドロゲル材料が熱可塑性物質である場合は、上記の通りin situの成形可能性の利点を利用することができる。そうした用途のためには、水膨潤性材料を送達および成形後にin vivoで水和させてハイドロゲルを提供することができる。水膨潤性材料を外部で成形することができる用途のためには、水膨潤性材料はin vivoまたはex vivo/in vitroのいずれかで水和させることができる。
【0068】
生物医学用途のための1つの考慮は、材料は一般に体内で有害な反応の原因となる可能性がある望ましくない物質、例えば溶媒、未架橋のポリマー束、架橋剤などを含むべきではない。本発明の水膨潤性材料は、望ましくない成分を除去するための処理を施すことができる。さらに、水膨潤性材料およびハイドロゲルは、いかなる溶媒などの存在に対する有害反応をも無効にする阻害剤を含むことができる。
【0069】
ハイドロゲル材料は、当分野で知られている通り、最小限度で侵襲的な外科的手法を含む様々な用途で使用することができる。例として、ハイドロゲルは、例えばNoguchiら、J.Appl.Biomat.2、101頁(1991)によって記載されている通り、人工関節用軟骨を提供するために使用することができる。ハイドロゲルは人工半月または関節の荷重受け成分としても使用されうる。ハイドロゲルは、顎関節、近位指節間関節、中手指節関節、中足骨関節、または股関節の修復において使用することもできる。
【0070】
本発明の水膨潤性材料またはハイドロゲルは、椎間板の髄核を置換するまたは回復させるために使用することもできる。腰椎中の変性性椎間板疾患は、椎間板の脱水および脊柱の生化学的機能の喪失によって特徴付けられる。最近の手法は髄核と呼ばれる円板の中心部分だけを置換することであった。この手法は低侵襲性の背部手術を伴うが、割合迅速に行うことができる。BaoおよびHighamは、米国特許第5047055号に記載されている通り、髄核置換に適当なPVAハイドロゲルを開発した。約70%の水を含有しているハイドロゲル材料は、掛けられた荷重に応じて水を吸収および放出するという点で、自然の核と同様に振る舞う。
【0071】
ハイドロゲルは、この特許においてまたは当分野で知られている他の用途において記載されている仕方で同様に使用することができる。本発明の水膨潤性材料は置換法において使用することもできる。水膨潤性材料が熱可塑性物質である場合は、in situでの成形可能性を上記の通りに利用することができる。かかる用途のためには、リオゲル形態の水膨潤性物品を、送達および成形の後で、既知の溶媒交換法によってin vivoで水和させてハイドロゲルをもたらすことができる。
【0072】
ハイドロゲルは、自然のヒト椎間板の部分または全体を置換するために使用する人工椎間板中で使用することもできる。例としては、人工椎間板は柔軟性の核、柔軟な三つ編みにしたファイバーの輪、および終板を含むことができる。ハイドロゲルは例えば柔軟な核中で使用することができる。人工椎間板は、例えばLozierの米国特許第6733533号に記載されている。
【0073】
ハイドロゲルの治療薬剤または他の活性薬剤を放出する能力が報告されてきた。ハイドロゲルは、ハイドロゲル中に含浸させたまたはハイドロゲルの表面上に置かれたタンパク質、薬剤、または他の薬理作用物質の溶出をもたらすためにin vivoで適切に使用することができる。
【0074】
本発明で使用することができるハイドロゲルブレンドの様々な実施形態を以下の実施例で説明する。
【0075】
ブレンドの合成実施例1
機械式攪拌機を備えた2000mLのビーカーに、ポリ(ビニルアルコール)100g、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)100g、およびDMSO 1100mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量(Mw)は124kDa〜186kDaであり、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO)から受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは44モルパーセントのエチレンを含有している。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水<0.4%を含有している。溶液を90℃まで3時間加熱した。
【0076】
3時間後、溶液を80℃に加熱した9"×13"のPYREX(登録商標)皿に注ぎ入れた。溶液を室温までゆっくり冷まし、次いで皿を-30℃の冷凍庫に3時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0077】
得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するために試薬等級のアルコール(エタノール)700mLを得られた材料に加えた。次いで材料を室温までゆっくり温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0078】
ブレンドの合成実施例2
機械式攪拌機を備えた2000mLのビーカーに、ジオール末端を有するポリ(ヘキサメチレンフタレート)100g、ポリ(ビニルアルコール)100g、およびDMSO 1100mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は124kDa〜186kDaであり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。重量平均分子量1000Daを有するジオール末端を有するポリ(ヘキサメチレンフタレート)はSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。溶液を90℃まで1.5時間加熱した。
【0079】
1.5時間後、溶液を9"×13"のPYREX(登録商標)皿に注ぎ入れ、覆いをかけ、60℃のオーブンに12時間入れた。次いで皿を-30℃の冷凍庫に3時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0080】
得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するために試薬等級のアルコール(エタノール)700mLを得られた材料に加えた。次いで材料を室温までゆっくり温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0081】
ブレンドの合成実施例3
機械式攪拌機を備えた2000mLのビーカーに、ポリ(スチレン-co-アリルアルコール)100g、ポリ(ビニルアルコール)100g、およびDMSO 1100mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は124kDa〜186kDaであり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。重量平均分子量1200Daを有するポリ(スチレン-co-アリルアルコール)はSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。溶液を90℃まで3時間加熱した。
【0082】
3時間後、溶液を9"×13"のPYREX(登録商標)皿に注ぎ入れ、室温まで冷ました。次いで皿を-30℃の冷凍庫に24時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0083】
得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するために試薬等級のアルコール(エタノール)700mLを得られた材料に加えた。次いで材料を室温までゆっくり温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0084】
ブレンドの合成実施例4
機械式攪拌機を備えた2000mLのビーカーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)100g、ポリ(ビニルアルコール)100g、およびDMSO 1100mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は124kDa〜186kDaであり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。エチレン含有量27モルパーセントのポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。溶液を90℃まで3時間加熱した。
【0085】
3時間後、溶液を9"×13"のPYREX(登録商標)皿に注ぎ入れ、室温まで冷ました。次いで皿を-30℃の冷凍庫に12時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0086】
得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するために試薬等級のアルコール(エタノール)700mLを得られた材料に加えた。次いで材料を室温までゆっくり温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0087】
ブレンドの合成実施例5
機械式攪拌機を備えた2000mLのビーカーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)100g、ポリ(ビニルアルコール)200g、脱イオン水200mL、およびDMSO 800mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は86kDaである。これはAcros Organics(New Jersey)から受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はエチレン含有量27モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水50.4%を含有している。溶液を90℃まで3時間加熱した。
【0088】
3時間後、溶液を9"×13"のPYREX(登録商標)皿および28mmの股関節臼蓋金型に注ぎ入れた。材料を室温まで冷ました。次いで皿を-30℃の冷凍庫に12時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0089】
材料を室温まで温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するためにメタノール700mLを得られた材料に加えた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0090】
ブレンドの合成実施例6
機械式攪拌機を備えた1000mLのビーカーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)[エチレン44モル%]10g、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)[エチレン27モル%]10g、ポリ(ビニルアルコール)20g、NANODENT 3.8g、およびDMSO 220mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は86,000であり、Acrosから受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)は示した通りエチレン含有量27モルパーセントおよび44モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水<0.4%を含有している。NANODENTは放射線不透過剤であり、NanoSolutions(Hamburg、Germany)から受け入れたままで使用した。溶液を90℃まで3時間加熱した。
【0091】
3時間後、溶液を9"×13"のPYREX(登録商標)皿および28mmの股関節臼蓋金型に注ぎ入れた。材料を室温まで冷ました。次いで皿を-30℃の冷凍庫に12時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0092】
材料を室温まで温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するためにプロパノール700mLを得られた材料に加えた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0093】
ブレンドの合成実施例7
圧縮成形機/射出成形機用の材料を調製するために、RheoMixを備えたHAAKE Polylab(登録商標)装置を115℃に加熱した。この装置にDMSO 45mL、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)17.5g、およびポリ(ビニルアルコール)17.5gを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146kDa〜186kDaであり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はエチレン含有量44モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。
【0094】
このブレンドを10分間混合した。ブレンドをミキサーから取り出し、室温まで冷まして切り刻んだ。得られた材料は半透明であり、曲げやすかった。
【0095】
ブレンドの合成実施例8
ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)がエチレン含有量27モルパーセントを有していたこと以外はブレンドの合成実施例7の通りにブレンドを調製した。
【0096】
このブレンドを10分間混合した。ブレンドをミキサーから取り出し、室温まで冷まして切り刻んだ。得られた材料は半透明であり、曲げやすかった。
【0097】
ブレンドの合成実施例9
機械式攪拌機を備えた2000mLのビーカーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)100gおよびDMSO 700mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146kDa〜186kDaであり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はエチレン含有量44モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。溶液を90℃まで12時間加熱した。
【0098】
ポリ(ビニルアルコール)100g、DMSO 200mL、およびpH調節剤としてのp-トルエンスルホン酸一水和物5gを溶液に加えた。p-トルエンスルホン酸一水和物は純度98.5%のACS試薬等級であり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。溶液は90℃まで3時間加熱した。
【0099】
3時間後、溶液を5"のポリエチレンボウルに注ぎ、メタノール/液体窒素のスラッシュ浴を使用して-55℃まで約30分間冷却した。白色の凍結材料を得た。
【0100】
ブレンドの合成実施例10
機械式攪拌機を備えた2000mLのビーカーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)150g、ポリ(ビニルアルコール)50g、脱イオン水200mL、およびDMSO 800mLを加えた。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146,000〜186,000であり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はエチレン含有量44モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水50.4%を含有している。溶液を90℃まで3時間加熱した。
【0101】
3時間後、溶液を9"×13"のPYREX(登録商標)皿および股関節臼蓋金型に注ぎ入れた。材料を室温まで冷ました。次いで皿を-30℃の冷凍庫に12時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0102】
材料を室温まで温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するためにメタノール700mLを得られた材料に加えた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0103】
ブレンドの合成実施例11
機械式攪拌機を備えた1000mLのビーカーに、ポリ(ビニルアルコール)20g、ジメチルスルホキシド175mL、および水10mLを加えた。溶液を80℃まで2時間加熱した。溶液に、ポリ(トリメリット酸無水物酸塩化物-co-4,4'メチレンジアニリン)20gを加え、120℃で1時間攪拌した。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146,000〜186,000であり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。ポリ(トリメリット酸無水物酸塩化物-co-4,4'メチレンジアニリン)はSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは<1.0%の4,4-メチレンジアニリンを含有していた。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。溶液を90℃まで3時間加熱した。
【0104】
溶液を2枚の8"×8"×0.05"のガラス板の間に注いだ。材料を室温まで冷ました。次いで皿を-30℃の冷凍庫に12時間入れた。皿を冷凍庫から取り出した。
【0105】
材料を室温まで温まらせた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすかった。DMSOを抽出するためにメタノール700mLを得られた材料に加えた。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0106】
ブレンドの合成実施例12
3mmのファイバー成形金型を備えたJaygo(Union、New Jersey)の1ガロンシグマミキサー/エクストルーダーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)625.89g、水100mL、ジメチルスルホキシド1350g、およびポリ(ビニルアルコール)626.79gを加えた。材料を240°Fで70分間混合した。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146,000〜186,000であり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はエチレン含有量44モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。
【0107】
70分後、サンプルを3mmのファイバー形成金型を通して、延伸速度4Xで、アルコール50%/水50%の冷却浴中へ滞留時間1〜3秒で押出成形した。ファイバーを冷まして、ファイバーチョッパーを使用して細かいペレットに切断した。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0108】
ブレンドの合成実施例13
3mmのファイバー成形金型を備えたJaygoの1ガロンシグマミキサー/エクストルーダーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)626.66g、水128.2mL、ジメチルスルホキシド1438.2g、およびポリ(ビニルアルコール)625.73gを加えた。材料を228°Fで90分間混合した。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146,000〜186,000であり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はエチレン含有量32モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。
【0109】
90分後、サンプルを3mmのファイバー形成金型を通して、延伸速度4Xで、アルコール50%/水50%の冷却浴中へ滞留時間1〜3秒で押出成形した。ファイバーを冷まして、ファイバーチョッパーを使用して細かいペレットに切断した。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0110】
ブレンドの合成実施例14
3mmのファイバー成形金型を備えたJaygoの1ガロンシグマミキサー/エクストルーダーに、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)402.44g、水97.84mL、ジメチルスルホキシド1400g、およびポリ(ビニルアルコール)850.02gを加えた。材料を228°Fで50分間混合した。ポリ(ビニルアルコール)は99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146,000〜186,000であり、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はエチレン含有量32モルパーセントを有し、Sigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。DMSOはSigma-Aldrichから受け入れたままで使用した。これは水≦0.4%を含有している。
【0111】
50分後、サンプルを3mmのファイバー形成金型を通して、延伸速度4Xで、アルコール50%/水50%の冷却浴中へ滞留時間1〜3秒で押出成形した。ファイバーを冷まして、ファイバーチョッパーを使用して細かいペレットに切断した。得られた材料は半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0112】
ブレンドされたハイドロゲルの力学的性質
ブレンド合成実施例1〜6、9、10、および11から得た水膨潤性材料を水に浸漬した。ブレンド合成実施例9からの水膨潤性材料については、凍結している材料を冷たい間に水に浸漬し、他のものは室温で浸漬した。それぞれの場合において、材料は水をかぶると白く、不透明で、柔軟性のハイドロゲルになった。
【0113】
ブレンド合成実施例12〜14から得た水膨潤性材料は、ノズル温度が240゜Fから280゜Fの間であり、金型は室温のBattenfeld BA 100 CD射出成形機で加工した。射出成形機からのサンプルはアルコール中に最低でも20分間浸漬し、続いて水中に浸漬した。それぞれの場合において、水をかぶった材料は白く、不透明で、柔軟性のハイドロゲルになった。
【0114】
得られたハイドロゲル中の水の濃度は、TA Instruments 2950 TGA機器での熱重量分析によって決定した。例えば、ブレンド合成実施例1からの材料を使用して得たハイドロゲルは固形分15重量%/水分85重量%であった。
【0115】
選択されたハイドロゲルについての力学的性能特性は、ASTM D638 Type IV試料として、従来の技法を使用してInstron CorporationのModel 3345計器で測定した。測定値は表1および2に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
照射はサンプルを架橋するための手段として使用することができる。ブレンド14から射出成形された2組の引張り試料を26.3〜34.0kGyの間の線量でガンマ線照射した。照射されたサンプルの強度を表3に示す。
【0119】
【表3】

【0120】
キャラクタリゼーション
ブレンド合成実施例1および10からの材料を使用して調製されたハイドロゲルを、標準ショルダーヘッドを備えたMATCOロードフレームで試験した。ハイドロゲルは175lbの荷重下でせん断について試験した。
【0121】
ブレンド合成1からのハイドロゲルを模擬の1年間の期間および2mmの変位について試験したが、せん断変形の兆候は示さなかった。多少のクリープは観察された。
【0122】
ブレンド10からのハイドロゲルを模擬の7.5年の期間および1mmの変位について試験したが、やはりせん断変形の兆候を示さなかった。多少のクリープは観察された。
【0123】
レオロジーの試験は、TA Instruments AR-1000レオメーターで、平行板配列および直径25mm、厚さ1.5mmの膨潤ハイドロゲル円板を使用して行った。別途に表示しない限りすべての試験は室温で行った。1〜2Nの法線力を加えた。まず、線形領域(0.01〜0.03%)を見つけるためにひずみ掃引試験を実施し、次いで0.01%のひずみで周波数走査(1〜50Hz)を行った。表4に示す通り、ブレンド合成1は髄核よりも高いが、関節軟骨よりも低い剛性率(G*)を有する。
【0124】
【表4】

【0125】
結晶化度および相分離はTA Instruments DSC Q1000計器で圧力鍋および加熱速度10℃/分を利用して分析した。分析は、ブレンドは均質であり、ただ1つのガラス転移ピークを有し、結晶化度ピークはないことを示している。水和後には、ブレンドは結晶化度ピークを示す。例えば、ブレンド合成1は、乾燥状態で48℃のTgを有し、はっきりした結晶化度ピークはない。水和された状態で、ブレンド合成1は、溶融ピークを98℃に有し、発熱面積は2.03%の結晶化度を表す。98℃の融点は、ポリエチレンの融点に相当する。
【0126】
熱可塑性材料の使用
ブレンド合成実施例1で提示した手順に従って得た水膨潤性材料を成形してADHESIVE TECH(登録商標)Model 229 Low Temp Glue Gunに入れた。グルーガンの作業温度は127℃であった。材料を、ガンから紙の上、オープンエア中、および水中を含む様々な基材および環境(室温)へ押し出した。
【0127】
この材料は、100℃を超える温度で押し出したが、特別な注意を払わなくても、手で取り扱うことができた。この材料は迅速に室温近くまで冷めた。
【0128】
押出し直後のまだ熱い間、材料は半透明の無色であり、材料を拡げる手段として例えばスパチュラを使用して形状を変更することができる。押出し物は続いて水と接触させるまたは水または水溶液中に浸漬することによって、水和させることができる。この材料を水和させると、徐々に半透明から乳白色に変わる。白色の展開は結晶領域の形成を示すものと考えられている。
【0129】
分割可能なマイクロファイバー
ブレンド12〜14から得られる水膨潤性材料は、押出し工程中に自然発生的に分割可能なマイクロファイバーを形成した。この房は直径が2〜4mmであり、走査型電子顕微鏡法で決定した直径2〜9nmを有する個々のファイバーで構成されている。個々のファイバー房は機械的または熱的処理を使用して分離することができる。さらに、房に、アルコール処理に続いて水交換を利用する加工を行ってハイドロゲルマイクロファイバーを創ることができた。
【0130】
ファイバー補強ハイドロゲルの実施例
ファイバー補強ハイドロゲル(実施例1〜23)を作製する手順および方法を以下に記載する。表5はこれらの実施例中で使用したそれぞれの材料の量を示す。PVAおよびPVAファイバーの量はグラムで、水とDMSOはミリリットルで、およびファイバーの直径はデニールで、長さはミリメートルで記載されている。ファイバーはSterigenics(Charlotte、NC)においてガンマ線照射を使用して25±3kGyまたは50±3kGyのいずれかの線量で照射した。
【0131】
Haake Polylab(登録商標)二軸レオメーターに、PVA、水、DMSO、およびPVAファイバーを加えた。材料を120℃で5分間混合した。Sigma-Aldrichから得たPVAは99%以上加水分解されており、重量平均分子量は146,000〜186,000kDaである。ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)はSigma-Aldrichから受け入れたままで使用し、44%のエチレンを含有していた。使用したPVAファイバーはクラレ株式会社(日本)から入手可能なKuralon(登録商標)RECシリーズであった。このPVAファイバーは使用前に照射した。Sigma-Aldrichから得たDMSOは水≦0.4%を含有していた。
【0132】
5分間混合後に、サンプルを取り出して、室温まで冷却し、Battenfeld BA 100 CD射出成形機での使用のためにフレーク形態に切り刻んだ。得られた材料は、半透明、柔軟で、曲げやすいままであった。
【0133】
【表5】

【0134】
(実施例)
(実施例1〜14)
実施例1〜10から得た半透明、柔軟で、曲げやすい材料は、ノズル温度が240°F〜280°Fおよび金型が室温のBattenfeld BA 100 CD射出成形機でさらに加工した。射出成形からのサンプルは、まずアルコール中に最短で20分間浸漬し、続いて水中に浸漬した。サンプル1〜10は80℃の水中に20分間、続いて室温の水に2日間浸漬した。サンプル11〜14は室温の水だけに2日間浸漬した。ファイバーは肉眼で見えた。ファイバーの配列の一部は溶融物の流れの方向にあった。図3および4は、本発明の2つの実施形態におけるゲルマトリックス中へのファイバーの組込みを示している。図3は、実施例2の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示し、残りのファイバーは加工後もそのままであることを示している。同様に、図4は、実施例9のSEM写真を示し、やはり残りのファイバーが加工後もそのままであることを示している。
【0135】
(実施例15)
実施例2から得られた水膨潤性材料をBattenfeld BA 100 CD射出成形機で加工して引張りバーおよび圧縮成形したサンプル試料を成形した。試料はアルコール中に最短で20分間浸漬させ、続いて80℃の水に20分間浸漬した。次いでサンプルは、室温の脱イオン水中で2日間溶媒交換させた。サンプルは3回反復する凍結-解凍サイクルを受けた。このサイクル中に、サンプルは-30℃の冷凍庫中に入れることによって凍結し、続いて室温で12時間解凍した。
【0136】
(実施例16)
実施例3から得た水膨潤性材料を実施例15で記載した通りに加工した。
【0137】
(実施例17)
実施例1から得た水膨潤性材料を窒素で包み、Charlotte、North CarolinaのSterigenicsにおいて、75kGyで照射した。次いでサンプルは試験前に脱イオン水中で1日間再水和させた。
【0138】
(実施例18)
実施例2から得た水膨潤性材料を実施例17で記載した通りに加工した。
【0139】
(実施例19)
実施例3から得た水膨潤性材料を実施例17で記載した通りに加工した。
【0140】
(実施例20)
実施例4から得た水膨潤性材料を実施例17で記載した通りに加工した。
【0141】
(実施例21)
実施例6から得た水膨潤性材料を実施例17で記載した通りに加工した。
【0142】
(実施例22)
実施例7から得た水膨潤性材料を実施例17で記載した通りに加工した。
【0143】
(実施例23)
実施例8から得た水膨潤性材料を実施例17で記載した通りに加工した。
【0144】
選択されたハイドロゲルについての力学的性能特性はAmerican Society of Testing Materials standards(ASTM D638 Type IV試料)を使用し、従来の技法を使用してInstron CorporationのModel 3345で測定した。引張り試料は試験の間中、蠕動ポンプを毎秒60滴の速度で使用して水和させたままにした。圧縮試験はInstron CorporationのModel 3345で、室温の水浴中で行った。圧縮サンプルは0.25×0.25インチの円筒形であった。引張り特性についての測定値は表6に示す。圧縮特性についての測定値は表7に示す。
【0145】
【表6】

【0146】
【表7】

【0147】
【表8】

【0148】
表6、7、および8に提示した結果は、架橋ファイバーを含有するサンプルが、対照サンプルを超える一定の向上した力学的特徴を有することを示している。これらのデータは材料が後照射後にはより堅くなっていて、より少ない伸びを示し、かつより多く架橋されていたことを示した。
【0149】
本発明を添付の特許請求の範囲においてさらに説明する。本発明はその趣旨および範囲を逸脱することなく様々な改変および変更を取り入れることができる。本発明の実施形態を記載するに当たっては、明快さのために特定の用語を使用した。しかし、本発明はこうして選択された特定の用語に限定されることを意図されるものではなく、こうして選択されたそれぞれの用語は同様に機能するすべての技術的等価物を包含するものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】ハイドロゲル物品中に様々な勾配を創生する方法を表す説明図である。
【図2】ハイドロゲル成分を軟部組織に付着する方法を表す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるハイドロゲルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の他の実施形態におけるハイドロゲルの走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面をハイドロゲル成分と接触させる段階と、
前記ハイドロゲル成分と表面との界面の領域を照射してハイドロゲル成分を表面に結合させる段階
とを含む、ハイドロゲル成分を表面に結合させる方法。
【請求項2】
ハイドロゲル成分が、ヒドロキシル基またはカルボン酸基を含有する少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハイドロゲル成分が、ポリ(ビニルアルコール)またはその誘導体である少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ハイドロゲル成分が、ポリマーのブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表面をハイドロゲル成分と接触させる段階の前に、関節修復のためのハイドロゲル物品を提供するために、ハイドロゲル成分を成形する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ハイドロゲル成分を、少なくとも1つの円筒形、球形または多面体セグメントとして、成形する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
表面が、軟部組織表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
軟部組織表面が、コラーゲン部位、関節部位、関節面部位または荷重受け面部位にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
表面が、ハイドロゲル物品の表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ハイドロゲル成分が、あらかじめ形成されたハイドロゲルまたはハイドロゲル前駆体のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ハイドロゲル成分が、ポリマーのブレンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ハイドロゲル成分が、ファイバーで補強されている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ハイドロゲル成分が、流動性である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
照射段階が、レーザーを使用する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
レーザーが、900〜1600nmの範囲の波長で照射される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
レーザーが、1430〜1470nmの範囲の波長で照射される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ハイドロゲル物品と軟部組織表面との界面の領域を照射して、ハイドロゲル物品を軟部組織表面に結合させることによって、ハイドロゲル物品を軟部組織表面に付着させる段階
を含む、ハイドロゲル物品をインプラントする方法。
【請求項18】
ハイドロゲル成分が、あらかじめ形成されたハイドロゲルまたはハイドロゲル前駆体のいずれかである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ハイドロゲル成分が、ポリマーのブレンドである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ハイドロゲル成分が、ファイバーで補強されている、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ハイドロゲル成分が、流動性である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
軟部組織表面が、関節軟骨を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
軟部組織表面が、半月板を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
インプラントするハイドロゲル物品が、ポリ(ビニルアルコール)またはその誘導体を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
インプラントするハイドロゲル物品が、ポリマーのブレンドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
インプラントするハイドロゲル物品が、関節のために使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
ハイドロゲル物品の所定の領域を選択的に照射して、照射された領域中により高い架橋の濃度をもたらす段階を含む、ハイドロゲル物品中に架橋された勾配を作る方法。
【請求項28】
所定の領域が、少なくとも1つのラスタライズされたパターンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
所定の領域が、少なくとも1つの幾何学的パターンである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
レーザーを、ハイドロゲル物品を選択的に照射するために使用する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
架橋された勾配が、少なくとも三次元パターンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
架橋された勾配が、
第1のハイドロゲル成分を第1の所定のパターンで照射して第1のパターン化された層をもたらす段階と、
第1のパターン化された層をハイドロゲル成分の第2の層と接触させる段階と、
ハイドロゲル成分の第2の層を、前記第1の所定のパターンと同じまたは異なる第2の所定のパターンで照射する段階と
を含む積層方法を使用して創生される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
積層方法を、所定の回数繰り返す、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第1の層の少なくとも1つの表面を、第2の層の接触表面に結合させる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
ハイドロゲル物品と軟部組織との界面の領域を照射して、ハイドロゲル物品を軟部組織に結合させることによって、ハイドロゲル物品を軟部組織部位に付着させる段階と、
ハイドロゲル物品の所定の領域を選択的に照射して、所定の照射された領域中により高い架橋の濃度をもたらす段階
とを含む、改質されたハイドロゲル物品を作製する方法。
【請求項36】
ハイドロゲル物品が、あらかじめ形成されたハイドロゲルまたはハイドロゲル前駆体のいずれかである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ハイドロゲル物品が、ポリマーのブレンドである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
ハイドロゲル物品が、ファイバーで補強されている、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
ハイドロゲル物品が、流動性である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
(a)第1のハイドロゲル成分を照射して第1の架橋された薄層をもたらす段階と、
(b)第1の架橋された薄層の上に第2のハイドロゲル成分を形成する段階と、
(c)第2のハイドロゲル成分を照射して、前記第1の架橋された薄層に結合された第2の架橋された薄層を形成する段階と、
(d)(b)および(c)を繰り返して、複数の順次結合された薄層を形成する段階と、
(e)複数の結合された薄層を水和させて、多層ハイドロゲル物品を形成する段階
とを含む、多層ハイドロゲル物品を創生する方法。
【請求項41】
ハイドロゲル成分が、あらかじめ形成されたハイドロゲルまたはハイドロゲル前駆体のいずれかである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ハイドロゲル成分が、ポリマーのブレンドである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
ハイドロゲル成分が、ファイバーで補強されている、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
ハイドロゲル成分が、流動性である、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−518135(P2009−518135A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544510(P2008−544510)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046725
【国際公開番号】WO2007/067697
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506364352)ズィマー・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】