説明

照射中に線量付与を制御する方法及び装置

本発明は、可動標的ボリュームを走査するのに利用するエネルギービーム、特に細針状イオンビームによる体内の標的ボリュームの照射中に線量付与を制御する方法に関する。更に本発明は、方法を実現する構成要素を備える照射装置に関する。i番目のグリッド位置を照射する前に、照射プロセス中の線量が移動データを使用して判定され、この線量は既に前のグリッド位置(1<=k<i)の照射中のi番目のグリッド位置を含んでいる。その後、前のグリッド位置(1<=k<i)の照射中にi番目のグリッド位置を既に含む判定された線量に依存してi番目のグリッド位置に対する補償値が算出され、i番目のグリッド位置について決定された補償された粒子フルエンス(Fcomp)によりi番目のグリッド位置を照射するために、i番目のグリッド位置に対する補償値及び公称粒子フルエンスに依存してi番目のグリッド位置についての補償された粒子フルエンス(Fcomp)が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する標的ボリュームを走査するのに利用するエネルギービーム、特に細針状イオンビームによる体内の標的ボリュームの照射中に線量付与を制御する方法及び対応する照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に腫瘍は、切除術、放射線療法及び化学療法又はそれらの方法の組合せを使用して治療される。放射線療法において、治療の目的は、周囲の正常な組織に対する悪影響を最小限にしつつ、腫瘍への局所的に高い線量を得ることである。この目的のため、エネルギー付与又は線量付与は、可能な限り腫瘍の形状に一致するように制御される。最近、侵入深さの関数としてのエネルギー付与又は線量付与が非常にシャープな最大値(ブラッグピークと呼ばれる)を有するために、光子の代わりにイオンを照射することによって良好な治療結果が得られている。そのような方法の1つは、ビームが専用のコリメータにより形成される、受動的ビーム付与として既知である。しかし、代わりに、高精度にイオンビームを収束し、細針状ビーム、すなわちいわゆる「ペンシルビーム」を使用して3次元的に腫瘍を走査すること(ラスタ走査法、スポット走査法、継続走査法)もまた可能である。ラスタ走査法において、ビームは、規定の期間の間グリッド位置上にあり、次のグリッド位置に移る間もオン状態に維持される。これに対して、スポット走査法において、ビームはグリッド位置間ではオフ状態にされる。継続走査法において、ビームは、グリッド位置上で静止することなくグリッド位置間を継続的に移動する。
【0003】
陽子以外では、他のイオン、特に炭素イオンが現在使用されている。場合によっては、ネオンイオンが更に採用される。これらのイオンを使用することにより、光子と比較して、細胞の不活性化に関してより高い生物学的効果比(RBE)を提供する。線量レベル、組織の種類、並びに何より粒子の種類及び粒子エネルギーに対する依存のために、深い腫瘍領域におけるRBEは一般に入口チャネルより高く、これは更なる治療上の利点を提供する。
【0004】
近年、出願人は、 University of Heidelberg、German Cancer Research Center及びDresden−Rossendorf Research Centerと協力して、炭素イオン及び専用の照射計画を使用するラスタ走査照射に関して大きな臨床的成功を収めた。この方法の利点は、2次的な粒子の生成を阻止するための吸収体材料の必要性を事実上除去することにあり、何より受動ビーム照射と比較して、特に腫瘍近辺で、生成された線量分布が良好に一致することである。
【0005】
最初に、主に治療された腫瘍は、頭蓋底の領域における腫瘍及び脊柱に沿った腫瘍であった。それらの腫瘍の動きは、定位固定により無視しても構わないほど最小に軽減される。しかし、種々の療法センターにおいてラスタ走査法をより広範に臨床的に適用する計画は、ラスタ走査法を使用してイオンビーム、特に炭素イオンビームにより他の腫瘍も照射することを想定する。しかし、身体の胴領域の腫瘍は、特に患者の呼吸のためにより動きやすい。そのため、胸部全体及び腹部の一部は、場合によっては患者の心拍によっても移動し且つ形状が変化する。移動する腫瘍、一般に移動する標的ボリュームが走査法を使用して治療される場合、この動きがエネルギー付与の均一性に悪影響を及ぼす可能性があるという問題に直面する。模型を用いた実験は、走査ビームの照射中に標的ボリュームにおいて過剰付与及び過少付与が発生する可能性があるため、受動ビーム照射の際に採用されるように動きの大きさにより標的ボリュームを単に拡大しても最適な治療とはならないことを示している。
【0006】
走査ビームの照射中の動きの影響を補正するため、現在、安全余裕、複数回照射(「再走査」と呼ばれる)、動きの様相に依存した中断を含む照射(「ゲーティング」と呼ばれる)、能動ビーム適応による動き補償照射(「トラッキング」と呼ばれる)又は上述の方法/技術の組合せを利用する分割照射法が前臨床試験で研究され且つ使用されている。能動ビーム適応による動き補償照射(トラッキング)中、ビーム位置は、腫瘍の動きに合わせて継続的に調整される。この処理において、ビーム方向に関する横(ラテラル)位置と、粒子の範囲とは、腫瘍の動きに合わせて継続的に調整される。これに関連して、全ての内容が参考として本明細書に取り入れられるS. O. Groetzinger 「Volume Conformal Irradiation of Moving Target Volumes with scnanned ion beams(走査イオンビームでの移動する標的ボリュームの体積等角照射)」、Technical University of Darmstadt、Germany、2004年の学位論文及びC. Bert、「Bestrahlungsplanung fuer bewegte Zielvolumina in der Tumortherapie mit gescanntem Kohlenstoffstrahl」、(Irradiation Planning for Moving Target Volumes in Tumor Therapy with a Scanned Ion Beam(走査イオンビームによる腫瘍治療における移動する標的ボリュームの照射計画))、Technical University of Darmstadt、Germany、2006年の学位論文を参照する。いずれの場合も、動き補償ラスタ走査イオンビーム照射は、本質的に粒子ビーム腫瘍療法の当業者に既知である。
【0007】
従って、対策(「動きの緩和」)が取られない場合、走査粒子ビームによる移動する腫瘍の治療は、基本的に動的照射と運動する構造との相互作用により線量誤差を招く可能性がある。能動ビーム適応(トラッキング)等の上述の方法が使用される場合でも、例えば単純な並進によって腫瘍の動きが記述できない場合、組織における粒子ビームの経路は、ビームの適応にもかかわらず変化するだろう。実際に、例えば胸郭の動きは回転要素及び/又は組織の変形を含みうるため、これは多くの場合に当てはまる。能動ビーム適応(トラッキング)により、ブラッグピーク、すなわち粒子線量の大部分の位置を解剖学的に正確な位置に移動できるが、ビーム経路が変化する結果、特に隣接領域、すなわちブラッグピークが存在するグリッド位置の上流にある、残りの組織への線量寄与が変化する。これにより、計画された線量付与と比較して局所的な過少付与及び過剰付与が生じるため、これは欠点となりうる。測定された肺腫瘍データに基づく治療シミュレーションにおいて、本発明者は、上述した線量変化を考慮しないことには、仮想上の静止した肺腫瘍のシミュレーション照射(線量変化が全く起こらない静的照射)と比較して、線量付与範囲が実質的に劣ることが分かった。
【0008】
本発明は、特にこれらの問題を解決することを目的とする。
【0009】
独国特許出願公開第10 2005 063 220 A1号明細書は、照射の時間経過を改善する手段を記載しているが、これは、上述の課題に関してさらに改善されることが可能である。
【発明の概要】
【0010】
上記を鑑みて、本発明の目的は、移動する標的ボリュームへの照射の品質を向上させ、且つ動きにもかかわらず照射中の実際の線量分布と所定の所望の線量分布との間での適切な一致を実現する線量付与の方法及び装置を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、照射手順を最適化する線量付与の方法及び装置を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、独立請求項の主題により実現される。本発明の有利な改良点は、従属請求項において特定される。
【0013】
本発明によると、体内の移動する標的ボリュームは、走査法を使用してエネルギービームにより照射される。身体は、腫瘍を治療するために照射される人間又は動物の生体、患者の照射を検査するためのモデル(動物モデル、細胞培養又は他の模型)、あるいは別の非生体のいずれかであってもよい。ビームは、特に、粒子ビーム、好ましくは例えば高エネルギー炭素イオンビーム等のイオンビームである。本発明は、特に、例えばビーム照射の品質及び精度、並びに必要な演算能力の態様が標的ボリュームの動きにもかかわらず考慮されるように照射装置を制御することに関する。本発明によると、標的ボリュームが複数のグリッド位置に3次元的に分割され、且つこれらのグリッド位置が高精度の細針状イオンビームにより連続して走査される走査法が使用される。この方法は、「走査法」として当業者に既知である。本明細書において上述したように、ある特定の放射線量を受ける複数のグリッド位置(例えば、ビーム経路に配置されたグリッド位置)が常に存在するが、「i番目のグリッド位置の照射」という用語がブラッグピークが置かれる位置、すなわち最大線量を受けるグリッド位置を示すことは、当業者には明らかとなるだろう。従って、走査法において、加速器制御装置は、グリッド位置の関数として制御される粒子エネルギー及び粒子フルエンス(単位面積毎の粒子の数)を含むイオンビームにより個々のグリッド位置が連続して走査されるようにイオンビームを制御するため、グリッド位置に依存する線量は対応するグリッド位置において付与される。本発明は、特に背景技術において詳細に説明されたラスタ走査法及びスポット走査法に適している。
【0014】
これらの走査法において、最初に、照射される身体の、より具体的には標的ボリューム(例えば、腫瘍)の時間分解構造が、呼吸等により発生する可能性のある身体の動きの影響下で記録される。記録は、例えば時間分解3次元コンピュータ断層撮影システム(4D−CTとして既知である)、時間分解3次元磁気共鳴断層撮影システム(4D−MRTとして既知である)又は時間分解3次元ポジトロン放出断層撮影システム(4D−PETとして既知である)等の時間分解3次元撮影できる診断システムを使用して照射前に実行される。これに関連して、以下の手順が使用されてもよい。
【0015】
1)4D−CTスキャン(すなわち、動きの代わりとの時間的な相関によって、呼吸サイクルにおいて時間に従って並べられた複数の3D−CTスキャン(動き相M))を実行する手順
【0016】
2)必要に応じて、4D−MRT/4D−PET走査(分割、ステージング)を実行する手順
【0017】
3)特に呼気中に、基準動き相を規定する手順
【0018】
4)(非剛体)変換により、M−1個の動き相を基準動き相に登録する手順(例えばいわゆる「正規化された相互情報」が最小化される最適化処理)。結果として得られるM−1個の変換(及びそれらの逆)は、腫瘍の3D動きを説明できる。
【0019】
5)4D−CTスキャンの(3次元)基準相、並びに、(4D)−MRスキャン、コントラストCTスキャン、又は4D−CTスキャンから区切られたボリューム(腫瘍及びリスク臓器(OAR))を使用して準静的照射計画を最適化する手順。一般にこれは、例えばKraemer他の「Treatment planning for heavy−ion radiotherapy: physical beam model and dose optimation(重イオン放射線治療のための治療計画:物理ビームモデル及び線量最適化)」Phys Med Biol 2000年、45:33299−3317、Kraemer他の「Treatment planning for heavy−ion radiotherapy: calculation and optimization of biologically effective dose(重イオン放射線治療のための治療計画:生物学的有効線量の算出及び最適化)」Phys Med Biol 2000年、45:3319−3330、Jaekel及びKraemerの「Treatment planning for heavy ion Iraddiation(重イオン照射のための治療計画)」、Phys. Med. 14 53−62により当業者に既知である。
【0020】
6)全てのグリッド点及び全ての相に対して適応パラメータdx、dy、dEを判定するように、基準照射計画と、変換パラメータと、4D−CT相とを組み合わせる手順
【0021】
7)以下においてDikと示される、動き相mの関数としてのグリッド点i〜グリッド点kの線量寄与を判定する手順
【0022】
8)以下において更に詳細に説明される照射方法を使用して照射を開始する手順
【0023】
当業者には既知であるように、照射前に、コンピュータを含む照射計画装置を使用していわゆる照射計画が作成される。この目的のため、少なくとも4つの要素、すなわちx位置、y位置、粒子エネルギー及び粒子フルエンスを含むデータタプルは、動き相ごとに分解された方法で、1つ以上の照射サイクルにわたりグリッド位置毎に生成される。複数のグリッド位置及び問題の複雑さにより、生成処理に相対的に長い時間かかる可能性があるため、一般に照射計画は、場合によっては照射の数時間又は数日前に、全体が作成され且つ格納される。既知の方法において、一般に患者は、所定の照射計画からの値を使用して照射される。
【0024】
4Dデータに基づいて、当業者に既知である登録アルゴリズム(上記の4の説明を参照)を使用して個々の動き相間の(非剛体)変換、すなわち動きデータを判定することが可能である。換言すると、4DCT動き相に基づいて、パラメータを基準動き相に変換することが判定され且つ位置適応パラメータの形式で格納される複数の時間間隔が規定される。これらの時間間隔は、(M−1)個の動き相により規定される間隔と同一であってもよい。更なる時間間隔を導入することが更に考えられる。従って、動き相は、4D−CT/4D−MRTデータから取得される。その後登録は、例えば呼気から吸気に変化する変換を最適化する。
【0025】
このデータに基づいて、後で実行される照射中、動きの影響下でブラッグピークにより実際に到達される標的ボリュームのグリッド位置は、身体の動き測定値に基づいてリアルタイムで判定される。その後、使用可能になった補償パラメータにより、「正しい」位置に到達することが可能になる。
【0026】
本発明によると、照射計画は照射前に更に作成される。これに関連して、データタプルのデータセットは基準データセットに対応し、基準データセットにおいては、本発明に従って、照射計画における粒子フルエンスが、後で照射手順に従う照射中にリアルタイムで変更される公称粒子フルエンスに対応する。従って、標的ボリュームの複数のグリッド位置i、1<=i<=Nを含む照射計画が作成され且つ格納される。照射計画は、各グリッド位置iの照射に対してそれぞれのグリッド位置及びグリッド位置に依存する公称粒子フルエンスを含む基準データセットを含む。
【0027】
照射中、照射時間中のあらゆる時間において、どの動き相が存在するのかを判定するために、身体の動きは、動き感知装置により継続的に捕捉される。これに基づいて、グリッド位置の実際の動きは、4D−CT又は4D−MRTの実験等から取得された位置適応パラメータに基づいて照射中に連続して3次元的に判定される。
【0028】
この目的のため、本発明は、照射中、照射前に格納されたデータセットを読み出し、且つ、変更された値で、特に変更された粒子フルエンスで、迅速に後続して照射を実行するように、リアルタイムで前記データセットを変更させる演算装置を含む。
【0029】
一般に照射計画はN個のグリッド位置を含み、数Nは数千〜数万又はそれ以上でもよい。本発明によると、以下において更に詳細に説明されるように、他の照射中のi番目のグリッド位置、グリッド位置kの照射中に判定された動き相において、前に照射された他のk番目のグリッド位置1<=k<iの照射中にi番目のグリッド位置によって受け取られた、実際に付与された粒子フルエンスが、i番目のグリッド位置1<=i<=N毎に判定され且つ処理される。本発明によると、オンライン、すなわちリアルタイムでこれらの計算を実行できるように、以下のステップi1)〜i4)がi番目のグリッド位置毎に実行され、この場合1<=i<=Nである。一方、一般に1つのグリッド位置の照射は、数ミリ秒しかかからない。従って、データが多次元であるため、高い計算能力が必要なのは明らかである。
【0030】
i1)前のグリッド位置(1<=k<i)の照射中にi番目の位置により既に受けた線量が、相互線量寄与を含む、以前に(すなわち、オフラインで)作成されたデータベース及び動きデータを使用して、照射サイクル中にリアルタイムで演算装置により算出される。
【0031】
i2)ステップi1)の後及び特にi番目のグリッド位置の照射の直前、i番目のグリッド位置に対する補償値が、i番目のグリッド位置が前のグリッド位置(1<=k<i)の照射中に既に受けていると判定される線量に基づいて演算装置により算出される。
【0032】
i3)i2)の後及びi番目のグリッド位置の照射の直前、補償された粒子フルエンスFcompを含む変化したデータタプルは、i番目のグリッド位置に対する補償値、及び照射計画においてi番目のグリッド位置に対して規定された公称粒子フルエンスnomを含む基準データタプルに基づいて、i番目のグリッド位置に対して算出される。
【0033】
i4)その後、i番目のグリッド位置は、リアルタイムで算出される補償粒子フルエンスFcompにより照射される。
【0034】
本発明の方法を使用して、標的ボリュームの動きにもかかわらず十分な線量有効範囲を実現でき、所望の値からの局所的な偏差を減少できることにより実際に付与された線量分布に対する動きの影響を軽減することが可能になる。
【0035】
特に、i番目のグリッド位置に対する補償値の計算は、i−1番目のグリッド位置の照射中に実行される。
【0036】
照射中、前に照射された全てのグリッド位置kの照射中にi番目のグリッド位置が受けた線量変化が全てのk<iにわたり合計され、且つi番目のグリッド位置の照射に対する補償値が、線量変化(実際の線量と基準線量との差)の合計から、i−1番目のグリッド位置の照射中に算出されるのが好ましい。
【0037】
本発明の好適な一実施形態によると、i番目のグリッド位置に対する補償値は、全ての前のk番目のグリッド位置の照射中にi番目のグリッド位置が受けた合計線量変化がi番目のグリッド位置に対する特定の基準線量で正規化された相対補正係数として演算装置により算出されるため、無次元補正係数である。この補償係数は、治療制御システムのサブシステム、すなわちSKTと呼ばれる粒子フルエンス制御サブシステムに格納され、その後照射が実行されるi番目のグリッド位置に対して補償された粒子フルエンス(Fcomp)を算出するために、i番目のグリッド位置の照射に先立って、i番目のグリッド位置に対する補償値として粒子フルエンス制御サブシステムのメモリに読み込まれ、且つその後、依然としてi番目のグリッド位置の照射前に、照射計画においてi番目のグリッド位置に対して規定された公称粒子フルエンスによりリアルタイムで乗算される。このことは、補償値を、線量測定等のために日常的に変化する校正係数とは独立とすることができるために有利である。
【0038】
i番目のグリッド位置の照射の直前に粒子フルエンス制御サブシステムによりi番目のグリッド位置に対する補償値をメモリからロードできるように、粒子フルエンス制御サブシステムSKTが全てのグリッド位置について適用された粒子フルエンスを制御し、且つ演算装置がi−1番目のグリッド位置の照射中にi番目のグリッド位置についての補償値を粒子フルエンス制御サブシステムSKTのメモリに格納するのが有利である。次にサブシステムSKTは、i番目のグリッド位置に対する補償された粒子フルエンスによりi番目のグリッド位置を後続して照射するように、照射計画においてi番目のグリッド位置に対して規定された公称粒子フルエンスにリアルタイムで補償値を適用する。
【0039】
i番目のグリッド位置の照射計画の開始時に、i番目のグリッド位置に対する補償値がサブシステムのメモリにまだ格納されていない場合、i番目のグリッド位置が不正確な粒子フルエンスにより照射されるのを阻止するように、少なくともi番目のグリッド位置に対する補償値が格納されるまで、ビーム強度を変動するかあるいはビーム休止を導入することが可能だろう。
【0040】
i番目のグリッド位置の照射中、線量変化は全ての後続のグリッド位置o、i<o<=Nに対して同時に算出されないが、線量変化及び補償値は、計算能力を最適に利用し且つ補償値が可能な限り早く使用可能であることを保証するように、最初にi+1番目のグリッド位置のみに対して算出されるのが好ましい。後続のグリッド位置i+1<o<=Nに対する線量変化及び補償値は、i番目のグリッド位置に対する補償値がサブシステムのメモリに格納されるまで算出されない。
【0041】
あるいは、i番目のグリッド位置の照射中、i番目のグリッド位置に配置される等エネルギー層のグリッド位置に対する線量変化を算出し、且つ等エネルギー層間の照射のビーム休止(いわゆる「スピル休止」)中に、後続の等エネルギー層のグリッド位置に対する線量変化を算出するのが好都合だろう。
【0042】
前のk番目のグリッド位置の照射中に、既に照射計画においてi番目のグリッド位置に対して規定された基準線量以上の線量変化をi番目のグリッド位置が既に受けている場合がある。この場合、i番目のグリッド位置の照射は、スキップされるかあるいは照射前に決定された最小線量で実行される。後者は、ビーム位置を継続的に制御する場合に有利だろう。この目的のため、最小線量は、基準線量の1%以上及び30%以下であるのが好ましい。
【0043】
また、照射中、グリッド位置に依存してビームの強度を各グリッド位置に適用される粒子フルエンスへと調整するのが有利である。これにより、可能な限り高速な照射、すなわち低い誤り率を有し且つ緩やかな照射を実現するように補償を算出するのに使用可能な時間が可能な限りバランスを保ち且つ/あるいは最小値へと近づけられるように、グリッド位置の照射時間を等しくすることが可能になる。
【0044】
一般に、等エネルギー層の照射はビームパケット(いわゆる「スピル」)により実行され、次の等エネルギー層は、次のビームパケット(スピル)のみにより照射される。この点に関して、品質指標Qを規定するのが有利である。品質指標Qに基づいて、次のビームパケット(スピル)の開始は自動的に最適な動き相と同期される。この目的のため、演算装置は、種々の動き相に対する次のビームパケット(スピル)についての後続するグリッド位置に対する、グリッド位置に依存する粒子フルエンスの分布を算出し、例えば以下の評価基準に基づいて品質指標を利用して同期化を自動的に評価する。
【0045】
以下の評価基準又はこれらの基準の(場合によっては重み付き)組合せのうちの少なくとも1つは、品質指標Qに含まれるのが好ましい。
【0046】
i)各グリッド位置についての補償された粒子フルエンスの類似度。各グリッド点の照射回数が可能な限り類似していることはこの場合の優位性であり、これは利用可能な演算時間に関してもその通りである。
【0047】
ii)基準線量の粒子フルエンスからの補償された粒子フルエンスの偏差は可能な限り小さい。従って、必要に応じて干渉による影響が軽減されるだろう。
【0048】
iii)後続のグリッド位置への潜在的な過剰付与が減少する。これにより、可能な限り基準値に近接する線量をグリッド位置毎に実現することが可能になる。
【0049】
iv)関連付けられた動き相に到達することが予想されるまでの時間。一般に、グリッド位置の平均照射時間はミリ秒の範囲であり、層の平均照射時間は秒の範囲であり、断片の平均照射時間は分の範囲である。従って、動き相は、グリッド位置を照射する時間より大幅に長くてもよい。従って、次のビームパケット(スピル)による照射の開始が非常に長く遅延する場合、これは品質指標に対する更なる重み係数となるだろう。
【0050】
本発明は、ビームを動きに能動適応すること(トラッキング)と組み合わされてもよいが、これはまたより複雑でない代替案である。本発明の好適な一使用例において、能動ビーム適応(トラッキング)は長さ方向ではなく横(ラテラル)方向に実行される。これは、グリッド位置に依存する補償値が動きの代わりの測定により判定された動き相及び照射計画中に判定されたパラメータに基づいて判定されることを意味する。しかし、横方向ビーム位置のみが能動的に適応され、これは走査磁石対を使用して相対的に容易に達成される。これに対して、ビームエネルギーは能動的に適応されないが、本発明の方法は、長さ方向次元での能動適応がないことを補償する。
【0051】
本発明の効果は、1つの断片におけるグリッド位置が連続して複数回走査される(再走査)複数回照射技術に類似する、複数のサイクルにおいて実行された照射と組み合わせることにより更に向上する。従って、各照射サイクルにおいて、照射は僅かな基準線量で実行される。この方法において、前回の照射サイクルにおいてi番目のグリッド位置が受けた線量変化及び現在の照射サイクルにおいて前のグリッド位置の照射中にi番目のグリッド位置が受けた線量変化は、照射サイクルにおいてi番目のグリッド位置に対する補償係数を算出する際に考慮される。このように、実際の線量分布は所望の線量分布へとより適切に適応される。例えば断片毎に計画された線量の0.1%、1%又は10%の線量許容誤差を受け入れること等により、照射サイクルの数は、集合的なデータ及び動きパラメータに基づいて事前に最適化されるか、患者特有のものであるか、あるいは照射中に判定されうる。許容量がこの値を下回ると、照射は終了する。終了するための他の決定的な要因は、不均一なグリッド(等エネルギー層毎の、複数の隔離されたグリッド点)を照射する機能等の技術的な限界条件であってもよい。
【0052】
以下において、例示的な実施形態に基づいて且つ図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。同一の部分又は同様の部分は部分的に同一の図中符号を提供され、種々の例示的な実施形態の特徴は互いに組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図面において、
【図1】種々のビームの種類及びエネルギーに対する侵入深さの関数としての相対線量を示す図である。
【図2】加速器及び3つの照射ステーションを含む照射装置を示す概略図である。
【図3】位置適応パラメータを判定するシステムを示す概略図である。
【図4】3次元能動ビーム適応(トラッキング)の装置を示す概略図である。
【図5】照射ステーションにおいて照射される患者を示す図である。
【図6a】細針状イオンビームによるビーム位置の照射を示す概略図である。
【図6b】動きの影響下での、細針状イオンビームによるビーム位置の照射を示す概略図である。
【図6c】能動ビーム適応後の、動きの影響下での、細針状イオンビームによるビーム位置の照射を示す概略図である。
【図7】制御要素を含む照射装置を示す概略図である。
【図8】補償値の計算を示す図である。
【図9】補償値の計算を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1を参照すると、種々のビームに対する深部線量分布が示される。ビルドアップ効果後に線量が深さに関して指数関数的低下を示す光子(曲線12)とは異なり、イオンは、ビーム範囲の端部でブラッグピーク又はブラッグ最大値と呼ばれる顕著な線量最大値を示す。この最大値は、エネルギーを変動させることにより深さをシフトすることができる。ブラッグピークは、陽子(曲線18)の場合よりも炭素イオン(曲線14及び16)の場合により急峻であることが分かる。
【0055】
図2は、身体において標的ボリュームに照射する例示的な照射装置20の設計を示す概略図である。照射装置は、この例において2つの粒子源又はイオン源22a、22bを有する加速器21を含む。2つの粒子源又はイオン源22a、22bは種々のイオンを生成し、その低エネルギー中間イオンビーム23は、磁石24を切り替えることにより、線形前段加速器25に注入される。中間イオンビーム23は、線形前段加速器25により前段加速され、例えばシンクロトロン等の円形加速器26に注入される。あるいは、サイクロトロン、すなわちいわゆる「誘電体壁加速器」又はレーザベースの加速器を使用することも可能である。いくつかの加速器は、例えばガントリ上の照射室に直接設置することも可能であるため、別個のビームガイダンスシステムは必要ない。
【0056】
円形加速器26は、最後にイオンを治療エネルギーと等しいか又はそれより僅かに高い所望のエネルギーに加速する。次に、イオンビーム又は治療ビーム27は、円形加速器26から抽出され、ビーム案内手段28により照射室29a、29b、29cに入射される。照射室29a、29b、29cの各々において、イオンビーム27により身体30を照射できる。炭素イオンにより照射する場合、治療ビーム27の粒子エネルギーは約80〜50MeV/uの範囲である。2つの左の照射室29a、29bにおいて、身体30の標的ボリューム32は、ほぼイオンビーム27が照射室29a、29bに入射する方向に照射される。右の照射室29cは回転ガントリ29dと呼ばれるものを備え、これは標的ボリューム32を種々方向から照射することを可能とする(アイソセントリック照射)。身体30は患者等であり、標的ボリューム32は治療目的で照射される腫瘍である。しかし、更に身体は、腫瘍照射を検査するための模型であってもよく、例えば標的ボリュームは、照射される検出器又は異なる物質であってもよい。
【0057】
図3は、動きセンサ及び演算装置を含む時間分解3次元撮影断層撮影システム42、例えばいわゆる4D−CTシステム又は4D−MRTシステムを示す。断層診断システムは、患者の呼吸等の身体30の動きの影響下で腫瘍等の標的ボリューム32の3次元の動きを記録し、動きデータをM個の動き相に分割する。次にコンピュータ44は、照射前に、付与される所望の合計線量に基づいて照射計画46を作成する。照射計画は、照射されるグリッド位置毎に位置及び公称粒子フルエンスのデータを含む。
【0058】
更にコンピュータ44は、動き相m(1<=m<=M)毎に3次元位置適応パラメータ(Δx、Δy、ΔE)を含む位置適応テーブルを作成するため、この位置適応テーブルに基づき且つ身体の動きを認識することにより、それぞれの個々のグリッド位置の実際の位置及び/又は基準動き相m=refにおける基準位置からの実際の位置の偏差を算出することが可能である。これに関連して、Δxは、基準相m=refにおけるグリッド位置iのx位置からの、動き相mにおけるグリッド位置iの横方向(ラテラル)x位置の偏差を表す。同様に、Δyは、他の横(ラテラル)方向、すなわちy方向の偏差を規定する。ΔEは、ブラッグピークをグリッド位置iの基準位置から実際の位置へとシフトさせる、イオンエネルギーの偏差、すなわち長さ方向の位置適応パラメータを規定する。
【0059】
図4は、能動動き補償を含む照射を示す簡略化された概略図である。加速器21は、2つの対の走査磁石52、54を利用して標的ボリューム32にわたり横方向(ラテラル)に走査される治療ビーム27を提供する。標的ボリュームは、連続して走査される複数の等エネルギー層に分割され、ここでは318〜324に分割される。一般に、遠位の等エネルギー層から近位の等エネルギー層へと走査する、すなわち最も高いエネルギーから開始するのが好都合である。図4に示された時点で、等エネルギー層322は横方向(ラテラル)に走査されている。標的ボリューム32が矢印33により表されるように移動し且つ現在照射されているグリッド位置iの動きが既知である場合、ビーム位置は、標的ボリューム32の動きにもかかわらず意図したグリッド位置iに到達するために、走査磁石52、54を利用して横方向(ラテラル)に且つダブルウェッジシステム56を利用して長さ方向に、標的ボリューム32の動きに能動的に適応される。現在照射されているグリッド位置iの実際の位置は、身体30の動きを捕捉する動き感知装置58及び治療制御システム70に格納された位置適応テーブルを利用して判定される。
【0060】
図5は、照射室29a等における患者台36上の患者34を示す。あるいは、患者34ではなく模型等の異なる身体30が照射されてもよい。
【0061】
図6aにおいて、グリッド位置iが現在照射されている。これは、ビームが横方向(ラテラル)にはグリッド位置iへ(x、y)に入射され、現在のグリッド位置iが配置される等エネルギー層322にブラッグピークが配置されるように粒子エネルギー(E)が選択されることを意味する。この範囲で、図6aは静止した標的ボリューム32の照射を示す。
【0062】
急峻なブラッグピーク19aにもかかわらず、線量付与は、グリッド位置i以外のグリッド位置によっても受け取られ、特に、ビーム経路におけるブラッグピーク19aの上流の平坦域19bのグリッド位置によって受け取られ、より少ない量だが、グリッド位置iのブラッグピーク19aのビーム軸上の下流の位置、すなわちブラッグピーク19a背後の領域19cによっても受け取られることが、侵入深さzの関数としての線量付与19から明らかである。静止した標的ボリューム32の他のグリッド位置k、k及びk〜kにおけるこれらの線量付与は、(「静的」)基準照射計画46において既に考慮されている。特に、照射前に作成された照射計画46は、グリッド位置毎に所定の線量付与を実現するために各グリッド位置において付与される粒子の数を規定するテーブルを含む。ブラッグピーク19aの上流の平坦域19b等のために他の全てのグリッド位置kの照射中にグリッド位置iが受けた線量付与は、標的ボリューム32が静止しているという仮定の下ではあるがこの照射計画46において既に考慮されている。
【0063】
標的ボリュームが例えば図6bに示されるように移動するため、照射されることを実際に意図するグリッド位置iが上方向に移動し且つ標的ボリュームが傾斜する場合、これにより、2つの悪影響が生じる。すなわち、2つの悪影響は、第1にブラッグピークが実際に照射されることを意図するグリッド位置iに到達しないこと、第2に標的ボリューム32を介するビーム経路が標的ボリュームの傾斜等により変化することである。また、標的ボリューム32が更に変形する可能性があるため、ビーム経路は更に変化する。
【0064】
図6cに示されるように、ビーム位置の能動適応により、ブラッグピーク19aをグリッド位置iに再度移すことが可能である。ビーム27を能動的に適応するこの方法は、一般に、当業者により既知であり、「トラッキング」と呼ばれる。また、図6cに更に示されるように、ビームは、図6aに係る静止した標的ボリュームの仮定の下に作成された照射計画における経路とは異なる標的ボリュームを介した経路を取るため、平坦域19b等の線量付与は、ビームが標的ボリューム32の動きに能動的に適応される場合であっても、静止した標的ボリュームの場合とは異なるグリッド位置kにおいて行われる。これらの付与誤差は、ビーム27の能動適応だけでは除去されず、静的照射計画46において考慮されない。これは、本発明が効果を示す点である。
【0065】
以下において、本発明は、i、k等の変数により示される個々のグリッド位置又はそれらを互いに関連させるための他のプレースホルダーを参照して説明される。これらのプレースホルダーは、例えば1<=i<=N等の全てのグリッド位置を示すために変数として使用されることが明らかである。
【0066】
照射計画は、Nグリッド位置から構成され、M個の動き相を含む。図8に示された図を参照すると、動き相mにおいてグリッド位置iの照射中にグリッド位置kにおいて付与された線量は、照射前に事前に算出され、Dikにより示される。これに関連して、グリッド位置iにおいて、照射計画に係る線量が付与されると仮定する。グリッド位置i毎に、これらの値は、依然として照射される全てのグリッド位置kについての照射前に、全ての可能な動き相1≦m≦Mについて算出される。図4を参照して説明されるように、遠位のグリッド位置の照射中に近位に発生する変化を、後続する近位のグリッド位置の照射中に補正できるように、一般に照射は、遠位から近位に実行される。
【0067】
グリッド位置iの照射中、これによって後続して照射される全てのグリッド位置k(線量が依然として能動的に変化できる)に発生した線量変化Δdikm(i)は、以下の式を使用してそれぞれの個々のグリッド位置の動きの関数として本発明に従って算出される。
【0068】
【数1】

【0069】
式中、m(i)は、グリッド位置iの照射中に測定された動き相を示し、ΔDは、照射方法において現時点までのグリッド位置iに対する累積線量変化を示す。累積線量変化は、グリッド位置iの前に照射された全てのグリッド位置の個々の寄与を合計することにより、照射中にリアルタイムで算出される。
【0070】
【数2】

【0071】
従って、ΔDはグリッド位置iにおける線量変化に関連し、補償値として使用できる。
【0072】
式(1)の項ΔD/Diirefにおいて、累積線量は、グリッド位置iが照射計画に従ってグリッド位置iの照射中に受けるはずの線量Diirefで正規化される。指標「ref」は基準相m=refを表す。動き相mの各々における各グリッド位置の実際の瞬間位置は、照射計画中に照射前に(オフラインで)作成された位置適応テーブルに基づいて算出される。
【0073】
グリッド位置iの照射中、次のグリッド位置の正規化された、すなわち相対的な線量変化ΔDi+1/D(i+1)(i+1)refは、粒子フルエンス制御サブシステム(SKT)72に送信される(図7及び図9を参照)。照射制御システムにおいて、SKT72及び他の全てのサブシステム71、73、74、75の双方からアクセス可能なSKT72の通信メモリは、照射の進行中にこの目的のために使用される。他の加速器は、他の通信プロトコル及びリアルタイム通信対応の装置を更に使用してもよい。
【0074】
無次元の相対線量変化ΔD/Diirefを補償値として使用することにより、SKT72は、線量単位を機械パラメータに変換する必要なく線量変化を適用できるのが有利である。更にこの相対量は、線量を監視するために使用されたイオン化室64の校正係数を日常的に変更することに左右されない。しかし、相対線量変化ではなく、線量変化ΔDをSKTの対応する単位(機械パラメータ)に変換し且つこの絶対量を送信することが更に可能である。
【0075】
照射計画からの公称粒子フルエンスFnomは、補償係数(1−ΔD/Diiref)により乗算される。すなわち、累積線量変化により補償された粒子フルエンスFi+1comp=Fi+1nom(1−ΔDi+1/D(i+1)(i+1)ref)が、次のグリッド位置i+1に適用される。
【0076】
従って、補償された粒子フルエンスは、グリッド位置i+1が照射計画において規定された基準線量を少なくとも受けるために依然として必要な線量寄与を高精度に反映し、動き及びビーム経路の変化にもかかわらずこれを行う。それに応じて、式(1)の補償係数は、グリッド位置iの照射が基準線量ではなく、補償係数(1−ΔD/Diiref)により変化された線量で実行されることを反映する。
【0077】
図9に示されるフローチャートを参照すると、手順は以下の通りである。
【0078】
ブロック1:時間分解断層撮影走査(例えば4D CTスキャン等のいわゆる4D診断走査)が実行されるか、あるいは時間分解断層撮影データが3DCTスキャン及び患者特有のデータ又は集団的動きデータに基づいて算出される。
【0079】
ブロック2:照射前に、以下の手順に係る時間分解断層撮影走査のデータに基づく動き相m(いわゆる4D照射計画)を考慮して照射計画が実行される。
【0080】
ブロック2a:データタプル(x、y、E、T)は、グリッド位置1<=i<=N毎に規定される。式中、x及びyは横方向(ラテラル)位置であり、Eは粒子エネルギーであり、Tはi番目のグリッド位置において付与される粒子の数である。粒子の数及び粒子フルエンスが交換可能な量であることは明らかである。それぞれN個のグリッド位置を含む1つ又はJ個の照射サイクルについて、照射前にこの規定が行われ、この結果は一般に照射計画と呼ばれる。
【0081】
ブロック2b:位置適応パラメータは、時間分解断層撮影のデータに基づいてグリッド位置i及び動き相m(Δx、Δy、ΔE)毎に規定される。これにより、動きの際のグリッド位置の実際の場所が、仮定的な休止状態に対応する、基準相m=refにおける基準位置にさかのぼって計算されることが可能となる。
【0082】
ブロック2c:線量補償パラメータDikは、全ての組合せi、k=1...N及び全ての動き相m=1...Mに対して規定される。
【0083】
この目的のため、以下のステップを実行する。
【0084】
必要に応じて、4D−MRT/4D−PET走査(分割、ステージング)を実行するステップ;
【0085】
特に呼気中に基準動き相を規定するステップ;
【0086】
4D−CTスキャンを使用できない場合、4D−CTスキャンを実行するステップ;
【0087】
(非剛体)変換により、M−1個の動き相を基準動き相に対して表すステップ(例えばいわゆる「正規化された相互情報」が最小化されるような最適化処理)、結果として得られるM−1個の変換(及びそれらの逆)は、腫瘍の3D動きを説明できる;
【0088】
4D−CTスキャンの(3次元)基準相、及び(4D)−MRスキャン、コントラストCTスキャン又は4D−CTスキャンからの部分ボリューム(腫瘍及びリスク臓器(OAR))を使用して、準静的基準照射計画を最適化するステップ、一般にこれは、例えばKraemer他の「Treatment planning for heavy−ion radiotherapy: physical beam model and dose optimation(重イオン放射線治療のための治療計画:物理ビームモデル及び線量最適化)」Phys Med Biol 2000年、45:3329.9−3317、Kraemer他の「Treatment planning for heavy−ion radiotherapy: calculation and optimization of biologically effective dose(重イオン放射線治療のための治療計画:生物学的有効線量の算出及び最適化)」Phys Med Biol 2000年、45:3319−3330、Jaekel及びKraemer「Treatment planning for heavy ion Iraddiation(重イオン照射のための治療計画)」、Phys. Med. 14 53−62から当業者に既知であるれ
【0089】
全てのグリッド点及び全ての相に対して適応パラメータdx、dy、dEを決定するように、基準照射計画と、変換パラメータと、4D−CT相とを組み合わせるステップ;
【0090】
動き相mの関数として、以下においてDikと示されるグリッド点iからグリッド点kの線量寄与を判定するステップ。
【0091】
ブロック3:照射中、ステップ3a〜3dは、全ての1<=i<=Nにわたる全てのグリッド位置、及び当てはまるのであれば全ての照射サイクル1<=j<=Jに対して、位置4と5とを組み合わせてリアルタイムに実行される。
【0092】
ブロック3a:Δd(i)(i+1)m(i)は、ブロック2cからの線量補償パラメータに基づいて、且つ動き感知装置により捕捉されるブロック4からの動きデータの関数として算出される。
【0093】
ブロック3b:無次元の相対的補償係数ΔDi+1/D(i+1)(i+1)refが算出される。
【0094】
ブロック3c:無次元の相対的補償係数ΔDi+1/D(i+1)(i+1)refは、粒子フルエンス制御サブシステムSKTに送信され、位置5に係るSKTの通信メモリに格納される。
【0095】
ブロック3d:Δdikm(i)は、さらに照射される全てのk>i+1に対して、ブロック2cからの線量補償パラメータDikに基づいて、且つ動き感知装置により捕捉されるブロック4からの動きデータの関数として、算出される、
【0096】
ブロック4:動きデータは、動き感知装置により捕捉される。
【0097】
ブロック5:粒子フルエンスは、粒子フルエンス制御サブシステムSKT72により制御される。
【0098】
ブロック5a:線量変化ΔDi+1/D(i+1)(i+1)refは、SKTのメモリから読み出される。
【0099】
ブロック5b:補償された粒子フルエンスFcompは、SKT72より算出される。
【0100】
ブロック5c:グリッド位置i+1は、補償された粒子フルエンスFcompを用いて照射される。
【0101】
従って、要約すると、補償値は、照射中にリアルタイムで算出され、照射計画において規定された公称粒子フルエンスの代わりに照射のために使用される補償された粒子フルエンスを取得するために、公称粒子フルエンスに適用される。補償値は、グリッド位置に固有の様式での動きの下で実際に適用された線量に依存し、こうしてグリッド位置依存しかつ動きに依存する。
【0102】
本発明は、好ましくはグリッド位置iの照射中に、SKTが補償値を適用する前に後続のグリッド位置i+1に対する補償値がSKTに送信されることを保証することにより、相対的に複雑な線量補償処理の時間経過を制御する解決方法を更に提供する。
【0103】
図7は、本発明を実現できる方法の一例を示す。加速器21により生成されたイオンビーム27は、ここでは等エネルギー層320〜324に分割されている標的ボリューム32に向けられ、矢印33により示されるように照射中に断片内を移動する。ビーム27は、走査磁石対52、54を用いて、標的ボリューム32にわたり横方向(ラテラル)に、すなわちx方向及びy方向に走査される。図示された時点で、ビームは等エネルギー層322にわたり走査されている。
【0104】
実際のビーム位置は、少なくとも1つの、この例においては2つの、マルチワイヤチャンバ62により監視され、位置データは、横方向(ラテラル)ビーム位置LSP73を監視するサブシステムに送信される。ビーム27の横方向(ラテラル)位置が十分な精度で照射計画46に係る位置に一致しない場合、LSP73はインターロックを発生させる。
【0105】
走査磁石SSM71を制御するサブシステムは、走査磁石を制御し、こうしてx方向及びy方向の横方向(ラテラル)グリッド位置を制御する。
【0106】
粒子フルエンス制御サブシステムSKT72は、実際に付与された粒子数又は粒子フルエンスをチェックし、3倍に冗長となっていてもよいイオン化室64の援助により、照射計画46及び補償値に基づいて、現在のグリッド位置iが十分な粒子を受けており且つシステムが次のグリッド位置i+1に切り替えられる場合を判断する。切り替えコマンドは、モジュールSKT72により、特にモジュールSSM71に通信され、モジュールSSM71はそれに応じて走査磁石を制御する。モジュールSKT72はまた、等エネルギー層の終点を更に通信する。
【0107】
加速器KMB74を監視するサブシステムは、加速器21に対する制御装置82と通信する。この通信により、例えば治療制御システム70は、現在の等エネルギー層に対する粒子エネルギー、ビーム収束及びビーム強度を含む、現在必要とされるパラメータを有する次のビームパケット(スピル)についての要求を行う。本明細書において、サブシステム71から74に加え、治療制御システム70は、文書化のためのサブシステムDOK75、並びに照射計画46及び演算装置84を更に含む。
【0108】
等エネルギー層322の照射中、動き感知装置58は、身体30の動きを捕捉し、補償値を算出するためにこのデータを演算装置84に送信する。現在のグリッド位置iの照射中、次に演算装置84は、図3に従って作成された位置適応テーブル及び(「静的」)基準線量補償パラメータDikに基づいてリアルタイムに、動きに依存する補償値ΔDi+1/D(i+1)(i+1)refを算出する。演算装置84は、照射計画46から線量補償パラメータDikを取得する。演算装置84は、リアルタイムに、グリッド位置i毎に動きに依存する補償値ΔDi+1/D(i+1)(i+1)refをモジュールSKT72に転送する。照射計画46からの公称粒子フルエンス及び演算装置84からの補償値に基づいて、モジュールSKT72は、リアルタイムで補償された粒子フルエンスを算出してモジュールSSM71と通信し、これにより補償された粒子フルエンスが付与された際に次のグリッド位置i+1へと切り替わるようにビーム27を制御する。
【0109】
本発明の例において、ビームを横方向(ラテラル)方向に適応させるためにΔx及びΔyを提供することにより、演算装置84がモジュールSSM71を制御し、且つモジュールSSM71が続けて走査磁石52及び54を制御するように、本発明に係る線量補償は、3次元能動ビーム適応と組み合わされる。更に演算装置84は、長さ方向ビーム適応を実行するために使用されるダブルウェッジシステム56又は能動エネルギー適応のための他の何らかのシステムを制御する。
【0110】
本発明の例において、治療制御システム70はVME−BUSシステム76を含むため、モジュール71〜75は、VME−BUSバスを介して互いに通信できる。
【0111】
有利な実施形態
本発明は、以下のように更に改良される。
【0112】
a)グリッド位置iの照射中、全ての後続のグリッド位置k>iに対する線量変化を算出し、次のグリッド位置i+1に対して累積された補償値をSKT72に後続して送信してそれをそこに格納するのではなく、最初に、次のグリッド位置i+1に対する線量変化寄与だけが算出され、このグリッド位置i+1について累積された補償値が続けて送信される。残りの全てのグリッド位置i+2<=k<=Nへの寄与が算出されるのはその後である。
【0113】
これは、次のグリッド位置、この場合はi+1、の照射に対する補償値が、SKT72の通信メモリにおいて可能な限り早く使用可能であることを保証する。
【0114】
b)グリッド位置iの照射中、同一の等エネルギー層のグリッド位置に対する線量変化のみが算出される。照射計画46における他の等エネルギー層における残りのグリッド位置への線量変化寄与は、後に遅くとも等エネルギー層についての完了の際に行われる照射休止(スピル休止)の間までは処理されない。この方法は、能動エネルギー変動を採用する加速器等に適している。この一例はシンクロトロンを含む加速器であり、照射される等エネルギー層を規定するビームエネルギーは、シンクロトロンにおいて能動的に変動する。これは、新しいビームパケット(スピル)の生成と関連付けられるため、ビーム休止は、いずれにしても等エネルギー層の照射の間に起こる。
【0115】
サイクロトロンを有する加速器等の他の加速器は、吸収プレートを利用してビームを規定する(受動エネルギー変動)。同様に、この場合、エネルギーを変動させるために吸収プレートを挿入及び/又は除去することは、ビーム休止と関連付けられる。このビーム休止は、照射計画における他の等エネルギー層において残りのグリッド位置への線量変化寄与を算出するために更に使用されてもよい。
【0116】
他の等エネルギー層における残りのグリッド位置の線量変化寄与の算出を遅らせることにより、1つの等エネルギー層内のグリッド位置の連続照射の時間厳守局面の間の演算時間が短縮するため、必要な計算がグリッド位置の照射より長くかかる可能性が低下する。
【0117】
オプションとして、全ての後続のグリッド位置の線量変化寄与を算出するための十分な時間が依然としてない場合、次のグリッド位置の照射は、計算が終わるまでビームを中断することにより遅延されてもよく、また、ビーム強度が低下させられてもよい。
【0118】
c)また、補償値のための記憶位置がグリッド位置毎に確保されるメモリアレイを作成するのが有利である。すると補償値は、全てのグリッド位置についてメモリの同一の場所に書き込まれるのではなく、アレイにおけるグリッド位置毎の事前定義された記憶位置に書き込まれる。これにより、i番目のグリッド位置に対する補償値がメモリに書き込まれる前に読み出される場合に、これは例えば計算のための十分な時間がなく且つ計算のための更なる休止が望ましくない時に起こる可能性があるが、「0」(すなわち、補償なし、従って通常の粒子フルエンスの適用)が、i+1番目のグリッド位置の照射のために、前のグリッド位置iの補償値の代わりに読み出されてもよいことが可能となる。
【0119】
d)グリッド位置iの累積線量変化ΔDがグリッド位置iの所望の線量Diiref以上である場合、これは相対線量変化が≧1であることに対応する。この場合、グリッド位置iは、前のグリッド位置k<iの照射中に少なくとも十分な線量を既に受けている。この場合、技術的に可能であればこのグリッド位置iはスキップされてもよい。例えばこれは、ビームを一時的に中断すること、又は位置測定中のエラーメッセージにもかかわらず照射計画を継続すること等により実行されてもよい。しかし、代わりとして、少なくとも事前定義された最小の線量が使用される。最小線量は照射前に選択され、且つ例えばDiirefの1%、5%又は30%に達してもよい。最小線量による照射により、制御システムにおける不整合性を阻止することが可能になる。例えばこれは、線量付与がこのグリッド位置に更に提供され、そしてこれが横方向(ラテラル)ビーム位置を判定するためにマルチワイヤチャンバにより使用されてもよいことを保証する。また、最小線量を使用することにより、グリッド位置において線量分布の交互の変動が発生するのを減らすことが可能になる。すなわち、グリッド位置iにおける基準線量と比較して増加した線量により、隣接グリッド位置i+1に対して過剰付与となり、グリッド位置i+1において付与される線量が大幅に減少する場合、これによりグリッド位置i+2等において過少付与となる。最小線量を使用することにより、この相互自己強化効果を軽減できる。
【0120】
e)例えば「ノックアウト抽出」と呼ばれるものにより、加速器が照射を一時的に中断できる場合、ビーム、すなわち照射は、グリッド位置の照射中により多くの演算時間が必要な場合に中断されてもよい。
【0121】
これらの措置により、補償係数の複雑な計算の時間経過を最適化し、且つ時間経過におけるエラーの可能性を低下させることが可能になる。
【0122】
本発明の方法は、種々の照射方法に対して使用されてもよい。特に、
【0123】
2a)単一の照射サイクル
照射計画に係る照射は1つの照射サイクルのみを含む。すなわち、全てのグリッド位置は1回だけ走査される。この場合、グリッド位置iの照射後にはグリッド位置k>iの粒子フルエンスのみが能動的に変化できるため、照射前であるi≦k≦Nについて値Dikを算出するので十分である。特にこの場合、照射は遠位から近位へと実行される。
【0124】
2b)複数の照射サイクル
照射計画に係る照射は複数の照射サイクル1<=j<=Jを含む。すなわち、従来の複数回照射技術(再走査)に類似して、全てのグリッド位置は続けて複数回走査される。
【0125】
しかし、現在までに、従来の複数回照射技術(再走査)は、移動する腫瘍を照射するための能動ビーム適応(トラッキング)とは別の方法として使用されている。そのような処理において、標的ボリュームは、複数の走査により統計的平均化を実現するために、毎回、(一般には拡張された安全域を使用して)計画された合計線量の1/JをJ回照射される。本発明によると、照射サイクルjについての補償値は、前の照射サイクルの線量変化を更に考慮するのが好ましい。例えば、j番目の照射サイクルにおけるi番目のグリッド位置に対する補償値は、1<p<jである前の照射サイクルpにおける全てのグリッド位置の照射中のi番目のグリッド位置の線量変化、及び現在の照射サイクルjにおいて1<=k<iである前のグリッド位置kの照射中のi番目のグリッドの線量変化に基づいて判定される。
【0126】
従って、本発明の方法を使用することにより、計画された全ての線量が場合によっては最初の照射中に既に付与されいるかもしれず、その後の照射中に動きに関連した線量変化だけが補償される。しかし、各照射サイクルにおいて計画された合計線量の一部を付与することが更に可能である。これにより、過剰付与の発生を減らす。更なる照射サイクルが実行されるか、又は既に付与された線量が計画された線量に十分に近接しているかを、照射中に判断することも可能である。複数の照射サイクルの場合、第2の照射サイクルを開始する際に、グリッド位置k<iにおける線量変化がまた能動的に変更されうるため、全ての1≦k≦Nに対する値Dikは照射前に算出される。
【0127】
本発明の方法は、動き補償の種々の方法と更に組み合わされてもよい。「能動動き補償」は、ビームを標的ボリュームの動きに能動的に適応すること(トラッキング)を意味するものとして理解される。例えば本発明の方法は、以下のものと組み合わされてもよい。
【0128】
3.a)能動動き補償なし
本発明の方法は、場合によっては3次元の全てにおいて能動動き補償を置き換えてもよい。
【0129】
3.b)長さ方向能動動き補償
長さ方向能動動き補償(エネルギー適応)が、横方向(ラテラル)能動動き補償なしで実行される。
【0130】
3.c)横方向(ラテラル)能動動き補償
横方向(ラテラル)能動動き補償(1次元又は2次元)が、長さ方向能動動き補償なしで実行される。ビームエネルギーを能動的に適応するのは相対的に複雑であるため、これは特に有利である。
【0131】
全ての動き補償が実行されない(変形例3.a)〜3.c)場合、ブラッグピークが照射計画において規定されたグリッド位置以外のグリッド位置にあるかもしれないため、線量の大部分は「誤った」グリッド位置に付与される。本発明によると、これは照射前に算出されたDikにおいて考慮される。線量の主な部分が付与されるグリッド位置は、この目的のために作成されたテーブルから照射中に検索される。その後、このグリッド位置の補償線量変化が適用される。
【0132】
特に、変形例3.cにおいては、技術的に複雑なエネルギー適応が使用されないが、それにもかかわらず発生する線量変化は横方向(ラテラル)能動動き補償と本発明のグリッド位置に依存する粒子フルエンスに対する補償値との組合せを使用して補償されるため、この変形例は臨床的に適切である。
【0133】
3.d)3次元能動動き補償
これは、例えば能動的に制御されたダブルウェッジシステムを利用して、ビームが横方向(ラテラル)方向次元x、yの双方で標的ボリュームの横方向(ラテラル)の動きに能動的に適応され、且つビームエネルギーが長さ方向の動きに能動的に適応されることを意味する。この場合、本発明の方法は、移動する標的ボリュームに対する照射を更に改善する。
【0134】
照射サイクルの数及び能動動き補償の程度に対して使用可能な種々のオプションは、互いに組み合わせることができる。
【0135】
3.e)本発明の方法はゲーティングと組み合わせることができる。動き相の一部分のみ、例えば呼気を中心とした30%等を考慮すること、又は不安定な腫瘍の動き相を除く全ての相を考慮すること等が可能である。
【0136】
4.更なる実施形態
線量補償に必要な精度で腫瘍の動きパターンを高精度に予測することは、長期間、すなわち治療前且つ治療処理全体に対しては可能ではない。しかし、種々の方法は、標的ボリュームのグリッド位置の短期の動きパターンを予測し、且つそれに応答して照射手順を改善するために、ビーム休止(スピル休止)において使用されてもよい。動き相において、次のビームパケット(スピル)の開始時に照射されることが予期される複数のグリッド位置に対して、グリッド位置についての補償された粒子フルエンスは、発生する線量変化を考慮して算出される。動きのばらつきのせいで動きサイクル間の遷移を高精度に予測できないため、一般にいくつかの動きサイクルにわたりフルエンス分布を予測することは可能ではないが、可能な動き相mに基づいて少なくともいくつかのグリッド位置iに対して線量変化を予測できる。種々の方法は、技術的基準及び医学的基準に従って照射手順を改善するために使用されてもよい。
【0137】
4.a)順序の変更
グリッド位置が照射される順序を変更する。例えば、ビームパケット(スピル)内の強度の変化と組み合わせて、グリッド位置の照射順序はそれらの粒子フルエンスに従って選択されてもよい。例えばこれは、ノックアウト抽出の場合に可能である。
【0138】
4.b)次のグリッド位置に対する粒子フルエンスの分布は、いくつかの動き相mに対して事前に算出され、品質指標Qを利用して評価される。従って、照射は最も好ましい動き相のみにおいて再開される。以下の評価基準は品質指標Qに含まれてもよい。
【0139】
i)グリッド位置についての補償された粒子フルエンスは可能な限り類似する。
【0140】
ii)照射計画からの公称粒子フルエンスからの補償された粒子フルエンスの偏差は、可能な限り小さい。
【0141】
iii)過剰付与は最小限にされる。この点に関して、遠位の線量、すなわち既に照射されたグリッド位置はこれ以上能動的に変化できないが、近位、すなわち後続して照射されるグリッド位置における、潜在的な過剰付与を減少又は阻止することが依然として可能である。潜在的な過剰付与は、重み係数により異なる方法で更に重み付けされてもよい。
【0142】
iv)関連付けられた動き相に到達すると予想されるまでの時間。
【0143】
4.c)好適な一実施形態によると、ビーム強度は、グリッド位置に依存して粒子フルエンスに応答して調整される。特に、低い粒子フルエンスを含むグリッド位置は低い強度で照射され、高い粒子フルエンスを含むグリッド位置は高い強度で照射される。これにより、グリッド位置の照射回数が等しくなるため、照射の持続時間を短縮することが可能になる。また、グリッド位置の照射回数が等しくなることにより、全てのグリッド位置の照射が、例えばビーム位置の測定等の適切なシステム機能を保証するのに十分なほど長くかかり、且つ補償値を算出するために使用可能な時間が更にバランスを保たれるため、補償値が遅れずに算出されず格納されないリスクが減少することを確認できる。
【0144】
4.a)〜4.c)の下の措置は、互いに組み合わせ可能であり、1.2.及び3.の下で上述された措置とそれぞれ組み合わされてもよい。
【0145】
要約すると、本発明に係るグリッド位置に依存するリアルタイムの線量補償を使用することにより、能動ビーム適応(トラッキング)中に発生する過剰付与を減少し且つ過少付与を阻止することが可能になる。2つの方法を組み合わせる場合、中断する照射(ゲーティング)又は従来の多照射(再走査)による線量分布よりも優れた線量分布が期待されるだろう。しかし、場合によっては、技術的に複雑なエネルギー適応(長さ方向能動ビーム補償)を省くことも可能である。
【0146】
上述の実施形態は例示的なものであることを意図し、且つ本発明は、実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱せずに多くの方法で変動してもよいことが当業者には容易に明らかとなるだろう。特徴は、本明細書、請求の範囲、図面又は他の場所において開示されるかに関係なく、他の特徴と共に説明される場合でも本発明の重要な要素を更に個々に構成することが更に明らかとなるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体(30)中の移動する標的ボリューム(32)への、走査法を用いたエネルギビーム(27)の照射中に、線量付与を制御する方法であって、
前記標的ボリューム(32)の複数のグリッド位置(i,1≦i≦N)を含む照射計画(46)が、1以上の照射サイクル(j,1≦j≦J)について作成されており、
グリッド位置に依存する公称粒子フルエンスが、前記グリッド位置のそれぞれの前記照射について、前記照射計画(46)において定義されており、
前記身体(30)の動き(33)が、前記照射中のグリッド位置の動きを決定するために、前記照射中に捕捉され、
グリッド位置に依存する線量が対応するグリッド位置に付与されるように、グリッド位置の関数として制御された粒子エネルギー及び粒子フルエンスを備える前記ビーム(27)によって、それぞれの前記グリッド位置が走査され、
前記走査は、
i1)前記複数のグリッド位置のうちのi番目のグリッド位置の照射に先立って、前のグリッド位置(k,1≦k<i)の照射中にi番目の位置で既に受け取られている線量が、前記動きのデータを用いて、前記照射サイクル中に算出される工程と、
i2)i番目のグリッド位置の照射に先立って、前記前のグリッド位置(k,1≦k<i)の照射中にi番目のグリッド位置が既に受け取ったと判定された前記線量に基づいて、i番目のグリッド位置についての補償値(ΔD)が算出される工程と、
i3)i番目のグリッド位置の照射に先立って、i番目のグリッド位置についての前記補償値(ΔD)及びi番目のグリッド位置についての前記公称粒子フルエンス(Fnom)に基づいて、補償された粒子フルエンス(Fcomp)がi番目のグリッド位置について算出される工程と、
i4)i番目のグリッド位置が、i番目のグリッド位置について決定された前記補償された粒子フルエンス(Fcomp)で照射される工程と、を含み、
前記工程i1)からi4)が、前記複数のグリッド位置(1≦i≦N)について実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
i番目のグリッド位置についての前記補償値(ΔD)の算出は、i−1番目のグリッド位置の照射中に少なくとも部分的に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射中に、i番目のグリッド位置についての前記補償値(ΔD)を算出するために、全ての以前に照射されたグリッド位置lの照射中にi番目のグリッド位置によって受け取られた線量変化が、1からi−1まで全てのlにわたって合計され、
i番目のグリッド位置の照射についての前記補償値は、i−1番目のグリッド位置の照射中に、前記線量変化の合計から算出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
i番目のグリッド位置についての前記補償値は、i番目のグリッド位置についての基準線量(Diiref)によって正規化された、i番目のグリッド位置についての相対的な補正係数ΔD/Diirefであり、
前記補正係数は、i番目のグリッド位置についての前記補償された粒子フルエンス(Fcomp)を算出するように、前記照射計画(46)においてi番目のグリッド位置について定義されている前記公称粒子フルエンス(Fnom)に適用されることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
加速器(21)の制御装置(82)と通信し、全てのグリッド位置について適用される粒子フルエンスを制御する粒子フルエンス制御サブシステム(72)を有する、治療制御システム(70,72,84)が含まれ、
i番目のグリッド位置についての前記補償値は、i−1番目のグリッド位置の照射中に前記粒子フルエンス制御サブシステム(72)のメモリに格納され、続けて前記粒子フルエンス制御サブシステム(72)は前記メモリからi番目のグリッド位置についての前記補償値を読み出し、続けてi番目のグリッド位置についての前記補償された粒子フルエンスでi番目のグリッド位置を照射するために、該読み出した補償値を前記照射計画(46)においてi番目のグリッド位置について定義されている前記公称粒子フルエンスに適用する
ことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
i番目のグリッド位置の照射中に、線量変化は続くグリッド位置(≧i+1)の全てについては同時に算出されないが、代わりに前記線量変化及び前記補償値はまずi+1番目のグリッド位置について算出され、続くグリッド位置(≧i+2)についての前記線量変化及び前記補償値の算出は後に行われることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
i番目のグリッド位置の照射中に、線量変化は続くグリッド位置(≧i+1)の全てについては同時に算出されないが、代わりに前記線量変化はまずi番目のグリッド位置が位置する等エネルギー層(320−329)のグリッド位置についてのみ算出され、
続く等エネルギー層のグリッド位置についての前記線量変化は、等エネルギー層の照射の間のビーム停止中に少なくとも部分的に算出されることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
i番目のグリッド位置の照射前のi番目のグリッド位置の線量変化が、前記照射計画(46)においてi番目のグリッド位置について定義された基準線量以上である場合、i番目のグリッド位置は、スキップされるか又は前記照射に先立って定められた最小線量で照射されることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記照射中に、前記ビーム(27)の強度が、それぞれのグリッド位置に適用される粒子フルエンスへと調整されることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
照射の停止に続くグリッド位置についての、グリッド位置に依存する粒子フルエンスの分布が、いくつかの動き相(m)について算出されかつ品質指標(Q)を用いて評価され、2つの等エネルギー層の照射の間のビーム停止の後の次の等エネルギー層の照射が前記品質指標(Q)に基づいて開始されることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも以下の評価基準、
i)各グリッド位置についての前記補償された粒子フルエンスの類似性、
ii)基準線量の粒子フルエンスからの、前記補償された粒子フルエンスの偏差、
iii)続くグリッド位置に対する過剰付与の削減、及び
iv)関連付けられた動き相に達すると予想されるまでの時間、
のうちの少なくとも1つが前記品質指標(Q)に含まれていることを特徴とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記照射は、前記標的ボリューム(32)で現在照射されているグリッド位置の少なくとも1つの次元(x,y,z)における動きを補償するために、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数として、前記少なくとも1つの次元において前記ビーム(27)を動的に適応させることを含むことを特徴とする、請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
長さ方向(z)におけるグリッド位置の動きが、前記グリッド位置に依存する補償値の算出を可能とするために決定されるが、前記照射は、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数としての、前記ビームのエネルギー(E)の動的な適応を含まないことを特徴とする、請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記照射は、前記標的ボリューム(32)で現在照射されているグリッド位置の少なくとも1つの横方向次元(x,y)における動きを補償するために、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数として、前記少なくとも1つの横方向位置を動的に適応させることを含み、
長さ方向(z)のグリッド位置の動きが、前記動きにもかかわらず前記グリッド位置に依存する補償値が算出されることを可能とするために捕捉されるが、前記照射は、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数としての、前記ビームのエネルギーの動的な適応を含まないことを特徴とする、請求項1乃至13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記照射は、それぞれが基準線量の一部を有する複数の照射サイクル(j,1≦j≦J)に分割され、
前の照射サイクル(<j)においてi番目のグリッド位置によって受け取られた線量変化、及び現在の照射サイクル(j)において前のグリッド位置の照射の間にi番目のグリッド位置によって受けとられた前記線量変化が、照射サイクル(j)におけるi番目のグリッド位置についての前記補正係数の算出において考慮されることを特徴とする、請求項1乃至14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
走査法を用いた、特に請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法を用いた、身体中の移動する標的ボリュームへのエネルギビーム(27)の照射のための照射装置であって、
時間分解撮影システム(42)からのデータを処理し、該データに基づいて、1以上の照射サイクルについての前記標的ボリューム(32)の複数のグリッド位置(1≦i≦N)を含む照射計画(46)を作成及び格納するように構成された照射計画装置(42,44)を備え、
前記照射計画(46)は、前記グリッド位置のそれぞれの位置データと、適用される、グリッド位置に依存する公称粒子フルエンス(Fnom)とを少なくとも含む、それぞれの前記グリッド位置の照射のための基準データセットを含み、
前記照射装置はさらに、
前記照射中のグリッド位置の動きを決定するために、前記身体(30)の動き(33)を前記照射中に捕捉することが可能な動き感知装置(58)と、
グリッド位置に依存する線量が対応するグリッド位置に付与されるように、それぞれの前記グリッド位置が順に、該グリッド位置の関数として制御される粒子エネルギー及び粒子フルエンスを有する前記ビーム(27)によって走査されるように、前記照射装置を制御し、及び前記照射中に、該照射に先立って格納された前記照射計画の前記データセットを読み出しかつ変更するように構成された、治療制御システム(70,72,84)と、を備え、
前記治療制御システム(70,72,84)はさらに、
i1)前記複数のグリッド位置のうちのi番目のグリッド位置の照射に先立って、前のグリッド位置(k,1≦k<i)の照射中にi番目の位置で既に受け取られている線量が、前記動きのデータを用いて前記照射サイクル中に算出され、
i2)i番目のグリッド位置の照射に先立って、前記前のグリッド位置(k,1≦k<i)の照射中にi番目のグリッド位置が既に受け取ったと判定された前記線量に基づいて、i番目のグリッド位置についての補償値が算出され、
i3)i番目のグリッド位置の照射に先立って、i番目のグリッド位置についての前記補償値及びi番目のグリッド位置について前記照射計画(46)において定義された基準データセットに基づいて、補償された粒子フルエンス(Fcomp)を有する変更されたデータセットがi番目のグリッド位置について算出され、
i4)前記照射装置が、i番目のグリッド位置が、算出された前記補償された粒子フルエンス(Fcomp)で照射されるように制御される
ように構成され、
前記治療制御システム(70,72,84)はさらに、前記工程i1)からi4)を前記複数のグリッド位置(1≦i≦N)について順に実行するように構成されている
ことを特徴とする照射装置。
【請求項17】
前記治療制御システム(70,72,84)はさらに、i番目のグリッド位置についての前記補償値の算出が、i−1番目のグリッド位置の照射中に少なくとも部分的に行われるように構成されていることを特徴とする、請求項16に記載の照射装置。
【請求項18】
前記治療制御システム(70,72,84)はさらに、
前記照射中に、i番目のグリッド位置についての前記補償値を算出するために、全ての以前に照射されたグリッド位置lの照射中にi番目のグリッド位置によって受け取られた線量変化が、1からi−1まで全てのlにわたって合計され、
i番目のグリッド位置の照射についての前記補償値は、i−1番目のグリッド位置の照射中に、前記線量変化の合計から算出される
ように構成されていることを特徴とする、請求項16又は17に記載の照射装置。
【請求項19】
前記治療制御システム(70,72,84)はさらに、
i番目のグリッド位置についての前記補償値が、i番目のグリッド位置についての基準線量によって正規化された、i番目のグリッド位置についての相対的な補正係数として算出され、
前記補正係数は、i番目のグリッド位置についての前記補償された粒子フルエンス(Fcomp)を算出するように、前記照射計画においてi番目のグリッド位置について定義されている前記公称粒子フルエンス(Fnom)に適用される
ように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至18の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項20】
前記治療制御システム(70,72,84)は、
全てのグリッド位置について適用される粒子フルエンスを制御する粒子フルエンス制御サブシステム(72)と、
i番目のグリッド位置の照射直前に、前記粒子フルエンス制御サブシステム(72)によってi番目のグリッド位置についての前記補償値が前記粒子フルエンス制御サブシステム(72)のメモリから読み出されるように利用可能であるように、i−1番目のグリッド位置の照射中にi番目のグリッド位置についての前記補償値を算出しかつ該補償値を前記粒子フルエンス制御サブシステム(72)のメモリに格納する、演算装置(84)と、を含み、
前記サブシステム(72)は、続けてi番目のグリッド位置についての前記補償された粒子フルエンスでi番目のグリッド位置を照射するために、前記照射計画(46)においてi番目のグリッド位置について定義されている前記公称粒子フルエンスに、前記読み出された補償値を適用する
ことを特徴とする、請求項16乃至19の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項21】
前記治療制御システム(70,72,84)は、
i番目のグリッド位置の照射中に、線量変化は続くグリッド位置の全てについては同時に算出されないが、代わりに前記線量変化及び前記補償値はまずi+1番目のグリッド位置について算出され、続くグリッド位置についての前記線量変化及び前記補償値の算出は後に行われる
ように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至20の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項22】
前記治療制御システム(70,72,84)は、
i番目のグリッド位置の照射中に、線量変化は続くグリッド位置(i<o≦N)の全てについては同時に算出されないが、代わりに前記線量変化はまずi番目のグリッド位置が位置する等エネルギー層のグリッド位置についてのみ算出され、続く等エネルギー層のグリッド位置についての前記線量変化は、等エネルギー層の照射の間のビーム停止中に算出される
ように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至21の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項23】
前記治療制御システム(70,72,84)は、i番目のグリッド位置の照射前のi番目のグリッド位置の線量変化が、前記照射計画においてi番目のグリッド位置について定義された基準線量以上である場合、i番目のグリッド位置は、スキップされるか又は前記照射に先立って定められた最小線量で照射されるように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至22の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項24】
前記治療制御システム(70,72,84)は、前記照射中に、前記加速器からの、それぞれのグリッド位置に適用される粒子フルエンスへと調整されたビームの強度を要求するように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至23の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項25】
前記治療制御システム(70,72,84)は、照射の停止に続くグリッド位置についての、グリッド位置に依存する粒子フルエンスの分布が、いくつかの動き相(m)について算出されかつ品質指標(Q)を用いて評価され、2つの等エネルギー層の照射の間のビーム停止の後の次の等エネルギー層の照射が前記品質指標(Q)に基づいて開始されるように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至24の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項26】
少なくとも以下の評価基準、
i)各グリッド位置についての前記補償された粒子フルエンスの類似性、
ii)基準線量の粒子フルエンスからの、前記補償された粒子フルエンスの偏差、
iii)続くグリッド位置に対する過剰付与の削減、及び
iv)関連付けられた動き相に達すると予想されるまでの時間、
のうちの少なくとも1つが前記品質指標(Q)に含まれていることを特徴とする、請求項16乃至25の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項27】
前記治療制御システム(70,72,84)は、前記標的ボリューム(32)で現在照射されているグリッド位置の少なくとも1つの次元における動きを補償するために、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数として、前記少なくとも1つの次元において前記ビームが前記標的ボリューム(32)の現在照射されているグリッド位置の動きに動的に適応するように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至26の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項28】
前記動き感知装置(58)は、前記動きにもかかわらず前記グリッド位置に依存する補償値の算出を可能とするように、長さ方向におけるグリッド位置の動きを捕捉するように構成されるが、前記治療制御システム(70,72,84)は、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数としての、前記ビームのエネルギーの動的な適応を行わないことを特徴とする、請求項16乃至27の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項29】
前記治療制御システム(70,72,84)は、前記標的ボリューム(32)で現在照射されているグリッド位置の少なくとも1つの横方向次元(x,y)における動きを補償するために、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数として、前記ビームが前記少なくとも1つの横方向次元において前記標的ボリュームの現在照射されているグリッド位置の前記動きに動的に適応されるように構成され、
前記動き感知装置(58)はまた、長さ方向(z)のグリッド位置の動きを、前記グリッド位置に依存する補償値が算出されることを可能とするために捕捉するように構成されるが、前記治療制御システム(70,72,84)は、前記標的ボリューム(32)のグリッド位置の前記決定された動きのデータの関数としての、前記ビームのエネルギーの動的な適応を行わないことを特徴とする、請求項16乃至28の何れか1項に記載の照射装置。
【請求項30】
前記照射計画装置(42,44)は、前記照射が、それぞれが基準線量の一部を有する複数の照射サイクルに分割されるように構成され、
前記治療制御システム(70,72,84)は、前の照射サイクルにおいてi番目のグリッド位置によって受け取られた線量変化、及び現在の照射サイクルにおいて前のグリッド位置の照射の間にi番目のグリッド位置によって受けとられた前記線量変化が、照射サイクルにおけるi番目のグリッド位置についての前記補正係数の算出において考慮されるように構成されていることを特徴とする、請求項16乃至29の何れか1項に記載の照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−512014(P2013−512014A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540330(P2012−540330)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062737
【国際公開番号】WO2011/064004
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509255749)ジーエスアイ ヘルムホルツツェントゥルム フュア シュヴェリオーネンフォルシュング ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】GSI Helmholtzzentrum fur Schwerionenforschung GmbH
【住所又は居所原語表記】Planckstrasse 1 64291 Darmstadt GERMANY
【Fターム(参考)】