照明光学系およびそれを用いた画像投射装置
【課題】 被照射面を光量損失の少ない明るく効率良く照明することができる照明光学系を得ること。
【解決手段】 被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該第2光学手段は、該光源手段から出射した光束が該第1光学手段と該正レンズにより集光される集光点よりも光軸方向において該光源手段側に配置されていること。
【解決手段】 被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該第2光学手段は、該光源手段から出射した光束が該第1光学手段と該正レンズにより集光される集光点よりも光軸方向において該光源手段側に配置されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源手段から射出された光束を用いて被照明面を照明する照明光学系に関する。さらにはその照明光学系を用いて被照明面に設けた液晶パネル等の画像表示素子を照明し、画像表示素子からの光をスクリーン等の被投影面に投影する画像投射装置(液晶プロジェクター等)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子などの画像表示素子を用いて画像情報に対応して変調された光束を投射レンズによってスクリーンなどに拡大投射する構成のプロジェクター(画像投射装置)が種々提案されている(特許文献1)。この特許文献1で開示されている画像投射装置においては、楕円鏡の一方の焦点の位置に配置されたランプから発した光束を他方の焦点の位置に集光しており、その他方の焦点位置よりもランプ側に負レンズが配置している。この特許文献1では、負レンズが楕円鏡の直後に配置されており、この負レンズの作用によって光束を発散光束として後続の正レンズ、偏光変換素子に導かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−321005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1のような構成にすると、ランプの発光部の光軸方向の両先端部から発せられる2つの光線は、楕円鏡で反射された後、負レンズによって互いの成す角度が拡大される。この両者の角度が大きくなることは、偏光変換素子への入射角のバラツキに直結してしまうため、偏光変換素子での光量損失の大きな原因となる。
【0005】
そこで、本発明は被照射面を光量損失が少なく、明るくしかも効率良く照明することができる照明光学系の提供を目的とする。この他、本発明は明るく高いコントラストを有する画像を投射することができる画像投射装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明光学系は、被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該第2光学手段は、該光源手段から出射した光束が該第1光学手段と該正レンズにより集光される集光点よりも光軸方向において該光源手段側に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被照射面を光量損失が少なく、明るくしかも効率良く照明することができる照明光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1のxz断面の構成図
【図2】本発明の実施例1のyz断面の構成図
【図3】本発明の実施例1での楕円リフレクターと正レンズの距離Lに対するパネル上での明るさ・コントラストの相関図
【図4】本発明の実施例1での楕円リフレクターから第1フライアイレンズまでの光学作用説明図
【図5】本発明の実施例1での楕円リフレクターから第1フライアイレンズ出射後における光学作用説明図
【図6】本発明の実施例1での楕円リフレクターから第1フライアイレンズ出射後における光学作用説明図
【図7】本発明の実施例1の第1フライアイレンズ入射面位置での輝度分布説明図
【図8】本発明の実施例1におけるリフレクターから第1フライアイレンズまでの光学作用の説明図
【図9】本発明の実施例2のxz断面の構成図
【図10】本発明の実施例2のyz断面の構成図
【図11】本発明の実施例2の第1フライアイレンズの斜視図
【図12】本発明の実施例2の第2フライアイレンズの斜視図
【図13】本発明の実施例2の光学素子のxz断面の光路図
【図14】本発明の実施例3のxz断面の構成図
【図15】本発明の実施例3のyz断面の構成図
【図16】本発明の実施例4のxz断面の構成図
【図17】本発明の実施例4のyz断面の構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明の被照明面を照明する照明光学系は、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する楕円リフレクターや放物リフレクター等の曲面反射面を含む第1光学手段を有している。第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズ(正の屈折力のレンズ)と、正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の球面又は非球面等の第2光学手段を有している。第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段(第1フライアイレンズ)と、光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子とを有している。更に、偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光するコンデンサーレンズから成る集光手段とを有している。このとき、第2光学手段は、光源手段から出射した光束が第1光学手段と正レンズにより集光される集光点(実際には集光点は存在しない)よりも、光軸方向において光源手段側に配置されている。つまり、この負の屈折力を持つ第2光学手段は、第1光学手段と正レンズとによって集光されつつある光束(集光点に集光する前の段階で)を、略平行な光束に変換している。この他、正レンズは、光源手段から出射した光束であって、第1光学手段により集光される光束が光軸を横切る位置よりも光源手段側に配置されている。
【0010】
[実施例1]
図1は、本発明の照明光学系を有する画像投射装置の実施例1の中心軸O(光軸OLa)を含むXZ断面における要部概略図である。図2は図1の中心軸Oの(光軸OLa)を含み紙面に直交するYZ断面内の要部概略図である。高圧水銀ランプ等の白色光を放射する光源手段1から発せられた光は、第1の光学手段を構成する反射面が楕円面形状のリフレクター(曲面反射面)2により反射され、収束光として正の屈折力の正レンズ3に入射する。正レンズ3に入射した光は、収束され、収束光として光学素子4に入射する。光学素子4は入射側(光入射側)の面が負の屈折力の第2光学手段4aより成り、出射側(光出射側)の面が複数のレンズセルが2次元的に配列された第1のフライアイレンズ(光束分割手段)4bより成る。光学素子4に入射した光は、入射側の面の負の屈折力の第2光学手段4aにより平行化される。その後、出射側の面の複数のレンズセルより成る第1フライアイレンズ4bによって複数の光束に分割される。その後、第2のフライアイレンズ(光束分割主端)5と偏光変換素子6の近傍に複数の2次光源像を形成する。第2のフライアイレンズ5を通過した複数の集光された光束は、偏光変換素子6を透過し、所定の偏光方向に偏光が揃えられ、第1のコンデンサーレンズ7及び第2のコンデンサーレンズ8より成る集光手段で集光される。その後、偏光分離プリズム9の偏光分離面11を透過し、パネル(被照射面)10面において複数の光束は重ね合わされる。これによってパネル10を均一に照明している。パネル(画像表示素子)10に基づく画像からの光束は偏光分離面11で反射され、投射光学系Prに入射する。投射光学系Prは、パネル10に基づく画像情報をスクリーン(所定面上)Sに投射している。第2光学手段4aとパネル10面は共役又は略共役関係にある。
【0011】
図1、図2のx、y、z軸の方向について説明する。偏光分離プリズム9に関し、偏光分離面11の法線と照明光束の中心軸0によって規定される面が第1平面(第1断面、yz平面)であり、図2に示す断面である。この第1平面と平行で中心軸0と直交する方向をy軸方向とする。y軸と中心軸0の両方に直交する方向をx軸方向とする。前記照明光束の中心軸0をz軸方向とする。x軸方向と中心軸0を含む面は第2平面(第2断面)である。図1は、実施例1のxz断面(第2平面、第2断面)における構成図であり、図2はyz断面(第1断面)における構成図である。パネル10が長方形状のときは、x軸方向が長辺方向、y軸方向が短辺方向である。
【0012】
光学素子4は、入射面側がxz断面において負の屈折力を有したシリンドリカルレンズ等の第2光学手段4aより成り、出射面側が第1フライアイレンズ4bより成っている。このように、第2光学手段4aと第1フライアイレンズ4bを一体化することで、部品点数を減らし、製造を容易にしている。出射面側の光束分割部用の第1フライアイレンズ4bは、複数のレンズセルが2次元的に平面上に配置されて構成されている。第2のフライアイレンズ(光束分割手段)5は、入射面側がyz断面において負の屈折力を有したシリンドリカルレンズより成っている。そして出射面側が光束分割手段として複数のレンズセルが2次元的に平面上に配置されて構成されている。
【0013】
図3は、楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3の光軸方向の距離Lに対する、パネル10面上での明るさ及びコントラストの関係の説明図である。図3において点線が明るさ、実線がコントラストを示している。図3に示すように、距離Lを変化させたとき、明るさは所定位置で最大となり、コントラストは距離Lを大きくするほど高くなる。パネル10面上のコントラストの変化について説明する。楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3との距離Lを大きくするほど、光学素子4に入射する光束径が小さくなっていくために、パネル10に入射する光の角度範囲が狭まっていく。このため、偏光分離手段9の偏光分離膜11に入射する光について、偏光分離膜11に対する光線入射角範囲が狭まるため、偏光分離特性が高まり、画像のコントラスト特性が改善できる。
【0014】
次に、パネル10面上の明るさ変化について説明する。まず、楕円リフレクター2のパネル10側に正レンズ3を設けていることの光学作用について説明する。図4は、光源手段1から発せられた光で、正レンズ3の出射前後の光線の広がり角度を説明した図である。光源手段1の発光部1aのZ軸方向(光軸方向)のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の成す広がり角度において説明する。楕円リフレクター2の発光部から遠い側(図のA)で反射する光について、正レンズ3の入射前の広がり角度をθ1、正レンズ3の出射後の広がり角度をθ1’とする。このとき、正レンズ3の正の屈折力と正レンズ3に入射する光線高さの関係から、
θ1> θ1’
である。同様に、楕円リフレクター2の発光部1aに近い側(図の B)で反射する光について、正レンズ3の入射前の広がり角度をθ2、正レンズ3の出射後の広がり角度をθ2’とする。このとき、
θ2>θ2’
である。このため、楕円リフレクター2の出射側に正レンズ3を設けることにより、第1及び第2のフライアイレンズ4b、5に入射する光線角度範囲が狭まるため、偏光変換素子6近傍での光量損失が少なくなる。
【0015】
次に楕円リフレクター2と正レンズ3との距離Lとパネル10面上の明るさとの関係について説明する。光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の成す角度について説明する。図4の広がり角度θ1’、θ2’は、正レンズ3の正の屈折力と正レンズ3に入射する光線高さの関係から、距離Lを大きくしたときに、共に小さくなる。このため、距離Lを大きくしていくと、パネル10面上での明るさは上昇する。一方、距離Lを大きくしすぎた場合は、逆にパネル10上の明るさは低下してくる。
【0016】
図5及び図6は、光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の、第2光学手段4aを透過した後の光線角度の広がり(図の角度α、角度α’)の説明図である。図5は、楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3の距離Lが大きいときの図である。このとき、光源手段1の発光部1aのZ軸方向(光軸OLa方向)のパネル10側の先端部から発せられた光は、楕円リフレクター2で反射された後、正レンズ3で屈折し、図の点Cで光軸を横切り、第2光学手段4aに入射する。第2光学手段4aは、負の屈折力を有しているため、第2光学手段4aに入射する前に光軸OLaを跨いだ光線Lcは屈折角度が大きくなる。このため、光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の成す角度は、第2光学手段4a(光学素子4)の出射後において大きくなる。このため、図1、図2に示す偏光変換素子6近傍での光量損失が大きくなる。
【0017】
図6は、距離Lが小さいときの説明図である。このとき光束は正レンズ3の光入射側で光軸を跨がない。このため、光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の、第2光学手段4a(光学素子4)を透過した後の光線角度の広がり角α’は、図5の広がり角αよりも小さくなる。従って、図5のときよりも明るさが向上する。光源手段1から発せられ楕円リフレクター2と正レンズ3で屈折した光が光軸OLaを跨ぐか、跨がないかは、次のとおりである。光源手段1からの光が、楕円リフレクター2と正レンズ3によって集光される光軸方向の位置よりも、第2光学手段4aが光源手段1側か、パネル10側か、に位置することに相当する。したがって、明るさの低下を防ぐためには、光源手段1から光軸OLaに対し垂直方向に発せられた光が、楕円リフレクター2と正レンズ3によって集光される光軸方向の位置よりも、第2光学手段4aが光源手段1側に配置されることが必要である。
【0018】
上記明るさ変化についての光学作用は、パネル10と共役関係にある第2光学手段4a面上における輝度分布から説明できる。第2光学手段4aの入射面位置での輝度分布の断面図を、図7に示す。図7の曲線1から曲線3への変化は、距離Lの小さい状態から大きい状態への変化を示している。横軸はx方向(光軸OLaの直交する方向)の光軸OLaからの距離、縦軸は輝度である。楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3の距離Lが大きい場合(図の点線3の場合)は、光源手段1からの光線が第2光学手段4aに入射する前に光軸を横切る。このため、第2光学手段4aの入射面での輝度分布は、中央部の輝度が高くなる。一方、距離Lが小さい場合は、楕円リフレクター2の根元における発光管を通すために設けた穴部が、正レンズ3の光軸OLa上にあるため、光源手段1からの光で、楕円リフレクター2の光軸近傍で反射する成分がない。このため、第2光学手段4aの入射面での光軸近傍の光線成分はわずかである。このため、距離Lが小さいときの第2光学手段4aの入射面での輝度分布は、中央部の輝度が低くなる(図の一点破線1)。また、この輝度分布の距離Lを変化させても変化しない分布の箇所(図中、a、b)は、図7に示すように、光源手段1の発光部1aから正レンズ3の光軸OLaに垂直な方向に出射した光が作る分布である。
【0019】
図8は、光源手段1から正レンズ3の光軸OLaに対し垂直方向に出射した光束の楕円リフレクター(曲面反射面)2での反射光路の説明図である。図8に示すように、発光部1aからy方向に出射した光が楕円リフレクター2と反射する位置(反射点)をDとする。反射点Dよりも光軸OLa側では、距離Lが変化して大きくなると、光源手段1からの光で、正レンズ3を出射した光が、第2光学手段4aに入射する前に、光軸OLaを跨いでしまう。このため、輝度分布が変化する。楕円リフレクター2の位置Dよりも光軸OLaよりも上側で反射する光は、光軸OLaから遠く、また、楕円リフレクター2の上側で反射する光のほうが下側で反射する光よりも光線出射角度の範囲が狭まる。このため、楕円リフレクター2と正レンズ3の距離Lの影響をほとんど受けない輝度分布となる。楕円リフレクター2のうち楕円リフレクター2の反射点Dよりも光軸OLaから遠い領域に入射し、反射した光束による第2光学手段4aの入射面における輝度の最大値と最小値をEa、Ebとする。楕円リフレクター2のうち、楕円リフレクター2の反射点Dよりも光軸に近い領域に入射し反射した光束による第2光学手段4aの入射面における輝度の最大値と最小値をIa、Ibとする。このとき、
0<(Ia−Ib)/(Ea−Eb)<0.5 ・・・(1)
なる条件を満足するようにしている。条件式(1)の上限又は下限を超えるときは、輝度分布の中央部が局所的に低くなる、又は、局所的に高くなるため、前述した光線作用の説明から、明るさが低下してしまうので良くない。
【0020】
次に本実施例における正レンズ3の光学作用効果を、実施例との比較から説明する。本実施例では、正レンズ3を設けることで、楕円リフレクター2の出射後の光束の光束幅を狭められるため、正レンズ3を有さない構成に対して、明るさの点について有利である。楕円リフレクター2から第2光学手段4aまでの距離Lを長くすれば、光束の光束幅を狭め、コントラストを高めることができる。しかしながらこの場合、発光部1aの光軸方向の先端部から発せられる光が光軸を跨いでしまい、光量損失が大きくなってしまう。そこで、本実施例では、正レンズ3と楕円リフレクター2の開口部2aの距離Lを適切に設定することで、コントラストを改善するとともに、明るさの低下を抑えている。
【0021】
[実施例2]
図9及び図10は、本発明の実施例2のXZ断面とYZ断面の構成図である。実施例2は実施例1に比べて光学素子12と第2のフライアイレンズ13の構成が異なっているだけである。1は光源手段、2は光源手段1からの光を反射して集光する第1光学手段としての楕円リフレクター、3は正レンズ、12は光学素子であり、負の屈折力を有する第2光学手段12a及び光束分割手段としての第1のフライアイレンズ12bを有している。13は第2のフライアイレンズである。6は偏光変換素子、7は第1のコンデンサーレンズ、8は第2のコンデンサーレンズ、9は偏光分離プリズム、10はパネルである。光学素子12は、フライアイレンズセルの曲率中心の偏心によって負の屈折力を持たせた第2光学手段12aと光束分割手段としての第1のフライアイレンズ12bを一体化している。また、第2のフライアイレンズ13も光学素子12と同様である。第1、第2のフライアイレンズ12b、13は、それぞれにおいて複数のレンズセルが2次元的に配置されて構成されている。
【0022】
図11は光学素子12の斜視図、図12は第2フライアイレンズ13の斜視図を示している。光学素子12を構成する第1フライアイレンズ12bはx方向に関して、各セルの曲率中心位置が外側に偏心している。第2フライアイレンズ13はy方向に関して、各セルの曲率中心位置が外側に偏心している。図9は、本発明の実施例2の光学素子12のxz断面における光路図を示している。図10は本発明の実施例2のyz断面における光路を示している。実施例1とほぼ同等の光学作用であるが、本実施例では、第1フライアイレンズ12bの光束分割手段と負の屈折力を有する第2光学手段12aが、同一面であるため、その箇所での光路図のみ異なる。第1、第2フライアイレンズ12b、13の光学作用について説明する。図9、図10に示すように光源手段1から発せられ、楕円リフレクター2で反射した光は正レンズ3に入射し、正レンズ3に入射した光は、収束光となり、光学素子12に入射する。図13は、第1フライアイレンズ12bの光学作用の説明図である。
【0023】
図13を用いて、正レンズ3を出射した光のうち第1フライアイレンズ12bにおけるセル21の中心部Aに入射する光線L0について説明する。光線L0は、該セルの曲率中心Pが点線O1上にあり、セル21中心部Aに対してx軸方向に外側へ偏心している。この偏心によって、光学素子12の出射後の光はxz断面において照明系の光軸Oに略平行な光線L1となる。同様にして、第2フライアイレンズ13についても、第2フライアイレンズ13を透過後、yz断面において照明系の光軸Oに略平行な光線となる。したがって、第1、第2フライアイレンズ12b、13は楕円リフレクター2からの収束光を光軸に対する平行光にするため、それぞれ、x方向及びy方向に負の屈折力を有した光束分割手段として作用する。本実施例においても、楕円リフレクター2と正レンズ3の距離Lに関し、条件式(1)を満足するようにしている。これにより、実施例1で述べたと同様の効果を得ている。
【0024】
[実施例3]
図14及び図15は、本発明の実施例3のXZ断面図とYZ断面図である。本実施例は実施例1に比べて第1光学手段2を放物リフレクター(放物面鏡)20と第1の正レンズ21より構成した点が異なっているだけである。1は光源手段、20は放物リフレクターである。21は正の屈折力の正レンズ、3は正レンズ、4は光学素子であり、負の屈折力を有する第2光学手段4aと光束分割手段としての第1のフライアイレンズ4bを有している。5は第2のフライアイレンズ、6は偏光変換素子、7は第1のコンデンサーレンズ、8は第2のコンデンサーレンズである。9は偏光分離プリズム、10はパネルである。放物リフレクター20と、正レンズ21以外の構成は、実施例2と同一である。本実施例では、実施例1における楕円リフレクター2の替わりに、放物リフレクター20と正レンズ21を用いており、これにより光源手段1からの光を反射して集光し、正レンズ3に入射させている。光源手段1から発せられた光は、放物リフレクター20によって反射され、平行光となり、正レンズ21に入射する。正レンズ21に入射した光は、収束光となり、正レンズ3に入射し、屈折して光学素子4に入射する。それ以降の光学作用は実施例1と同様である。本実施例では、第1の正レンズ21と正レンズ3との距離Lに関し、条件式(1)を満足するようにしている。これにより、実施例1で述べたと同様の効果を得ている。本実施例において放物リフレクター20の代わりに楕円リフレクターを用いても良い。
【0025】
[実施例4]
図16及び図17は、本発明の実施例4のXZ断面図とYZ断面図である。本実施例は実施例1に比べて光学素子23と第2のフライアイレンズ24の構成が異なっているだけである。1は光源手段、2は光源手段1からの光を反射して集光する第1光学手段としての楕円リフレクターである。3は正レンズ、23は光学素子であり、負の屈折力を有する第2光学手段23aと光束分割手段としての第1のフライアイレンズ23bを有している。24は第2のフライアイレンズ、6は偏光変換素子、7は第1のコンデンサーレンズ、8は第2のコンデンサーレンズ、9は偏光分離プリズム、10はパネルである。第1フライアイレンズ23bと第2フライアイレンズ24以外の構成は実施例1と同一である。光学素子23は、入射面が負の屈折力を有した球面形状の第2光学手段23aと、出射面が光束を分割する複数の微小レンズから成る第1フライアイレンズ23bより成っている。第2フライアイレンズ24は、平板状のフライアイレンズより成っている。
【0026】
本実施例では、楕円リフレクター2と正レンズ3の距離Lに関し、条件式(1)を満足するようにしている。これにより、実施例1で述べたと同様の効果を得ている。また、本実施例では、x方向とy方向でパネル10への入射角度を同一にしたまま小さくすることができるので、偏光分離手段6を用いない透過型液晶パネルを用いた構成についても有効である。また、実施例1から4においては、パネル10として単板式の構成図を用いて説明したが、勿論、パネル3枚構成としても良い。また、各実施例において第1の光学手段は、楕円リフレクターと正の屈折力のレンズから構成しても良い。以上のように各実施例によれば、明るさとコントラストを同時に改善できる液晶プロジェクターなどに好適な照明光学系が得られる。
【符号の説明】
【0027】
1 光源手段、1a 発光部、2 第1光学手段、3 正レンズ、4 光学素子、4a 第2光学手段、4b 第1フライアイレンズ、5 第2フライアイレンズ、6 偏光変換素子、7 第1のコンデンサーレンズ、8 第2のコンデンサーレンズ、9 偏光分離プリズム、10 画像表示素子、Pr 投射光学系、OLa 光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源手段から射出された光束を用いて被照明面を照明する照明光学系に関する。さらにはその照明光学系を用いて被照明面に設けた液晶パネル等の画像表示素子を照明し、画像表示素子からの光をスクリーン等の被投影面に投影する画像投射装置(液晶プロジェクター等)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子などの画像表示素子を用いて画像情報に対応して変調された光束を投射レンズによってスクリーンなどに拡大投射する構成のプロジェクター(画像投射装置)が種々提案されている(特許文献1)。この特許文献1で開示されている画像投射装置においては、楕円鏡の一方の焦点の位置に配置されたランプから発した光束を他方の焦点の位置に集光しており、その他方の焦点位置よりもランプ側に負レンズが配置している。この特許文献1では、負レンズが楕円鏡の直後に配置されており、この負レンズの作用によって光束を発散光束として後続の正レンズ、偏光変換素子に導かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−321005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1のような構成にすると、ランプの発光部の光軸方向の両先端部から発せられる2つの光線は、楕円鏡で反射された後、負レンズによって互いの成す角度が拡大される。この両者の角度が大きくなることは、偏光変換素子への入射角のバラツキに直結してしまうため、偏光変換素子での光量損失の大きな原因となる。
【0005】
そこで、本発明は被照射面を光量損失が少なく、明るくしかも効率良く照明することができる照明光学系の提供を目的とする。この他、本発明は明るく高いコントラストを有する画像を投射することができる画像投射装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明光学系は、被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該第2光学手段は、該光源手段から出射した光束が該第1光学手段と該正レンズにより集光される集光点よりも光軸方向において該光源手段側に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被照射面を光量損失が少なく、明るくしかも効率良く照明することができる照明光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1のxz断面の構成図
【図2】本発明の実施例1のyz断面の構成図
【図3】本発明の実施例1での楕円リフレクターと正レンズの距離Lに対するパネル上での明るさ・コントラストの相関図
【図4】本発明の実施例1での楕円リフレクターから第1フライアイレンズまでの光学作用説明図
【図5】本発明の実施例1での楕円リフレクターから第1フライアイレンズ出射後における光学作用説明図
【図6】本発明の実施例1での楕円リフレクターから第1フライアイレンズ出射後における光学作用説明図
【図7】本発明の実施例1の第1フライアイレンズ入射面位置での輝度分布説明図
【図8】本発明の実施例1におけるリフレクターから第1フライアイレンズまでの光学作用の説明図
【図9】本発明の実施例2のxz断面の構成図
【図10】本発明の実施例2のyz断面の構成図
【図11】本発明の実施例2の第1フライアイレンズの斜視図
【図12】本発明の実施例2の第2フライアイレンズの斜視図
【図13】本発明の実施例2の光学素子のxz断面の光路図
【図14】本発明の実施例3のxz断面の構成図
【図15】本発明の実施例3のyz断面の構成図
【図16】本発明の実施例4のxz断面の構成図
【図17】本発明の実施例4のyz断面の構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明の被照明面を照明する照明光学系は、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する楕円リフレクターや放物リフレクター等の曲面反射面を含む第1光学手段を有している。第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズ(正の屈折力のレンズ)と、正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の球面又は非球面等の第2光学手段を有している。第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段(第1フライアイレンズ)と、光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子とを有している。更に、偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光するコンデンサーレンズから成る集光手段とを有している。このとき、第2光学手段は、光源手段から出射した光束が第1光学手段と正レンズにより集光される集光点(実際には集光点は存在しない)よりも、光軸方向において光源手段側に配置されている。つまり、この負の屈折力を持つ第2光学手段は、第1光学手段と正レンズとによって集光されつつある光束(集光点に集光する前の段階で)を、略平行な光束に変換している。この他、正レンズは、光源手段から出射した光束であって、第1光学手段により集光される光束が光軸を横切る位置よりも光源手段側に配置されている。
【0010】
[実施例1]
図1は、本発明の照明光学系を有する画像投射装置の実施例1の中心軸O(光軸OLa)を含むXZ断面における要部概略図である。図2は図1の中心軸Oの(光軸OLa)を含み紙面に直交するYZ断面内の要部概略図である。高圧水銀ランプ等の白色光を放射する光源手段1から発せられた光は、第1の光学手段を構成する反射面が楕円面形状のリフレクター(曲面反射面)2により反射され、収束光として正の屈折力の正レンズ3に入射する。正レンズ3に入射した光は、収束され、収束光として光学素子4に入射する。光学素子4は入射側(光入射側)の面が負の屈折力の第2光学手段4aより成り、出射側(光出射側)の面が複数のレンズセルが2次元的に配列された第1のフライアイレンズ(光束分割手段)4bより成る。光学素子4に入射した光は、入射側の面の負の屈折力の第2光学手段4aにより平行化される。その後、出射側の面の複数のレンズセルより成る第1フライアイレンズ4bによって複数の光束に分割される。その後、第2のフライアイレンズ(光束分割主端)5と偏光変換素子6の近傍に複数の2次光源像を形成する。第2のフライアイレンズ5を通過した複数の集光された光束は、偏光変換素子6を透過し、所定の偏光方向に偏光が揃えられ、第1のコンデンサーレンズ7及び第2のコンデンサーレンズ8より成る集光手段で集光される。その後、偏光分離プリズム9の偏光分離面11を透過し、パネル(被照射面)10面において複数の光束は重ね合わされる。これによってパネル10を均一に照明している。パネル(画像表示素子)10に基づく画像からの光束は偏光分離面11で反射され、投射光学系Prに入射する。投射光学系Prは、パネル10に基づく画像情報をスクリーン(所定面上)Sに投射している。第2光学手段4aとパネル10面は共役又は略共役関係にある。
【0011】
図1、図2のx、y、z軸の方向について説明する。偏光分離プリズム9に関し、偏光分離面11の法線と照明光束の中心軸0によって規定される面が第1平面(第1断面、yz平面)であり、図2に示す断面である。この第1平面と平行で中心軸0と直交する方向をy軸方向とする。y軸と中心軸0の両方に直交する方向をx軸方向とする。前記照明光束の中心軸0をz軸方向とする。x軸方向と中心軸0を含む面は第2平面(第2断面)である。図1は、実施例1のxz断面(第2平面、第2断面)における構成図であり、図2はyz断面(第1断面)における構成図である。パネル10が長方形状のときは、x軸方向が長辺方向、y軸方向が短辺方向である。
【0012】
光学素子4は、入射面側がxz断面において負の屈折力を有したシリンドリカルレンズ等の第2光学手段4aより成り、出射面側が第1フライアイレンズ4bより成っている。このように、第2光学手段4aと第1フライアイレンズ4bを一体化することで、部品点数を減らし、製造を容易にしている。出射面側の光束分割部用の第1フライアイレンズ4bは、複数のレンズセルが2次元的に平面上に配置されて構成されている。第2のフライアイレンズ(光束分割手段)5は、入射面側がyz断面において負の屈折力を有したシリンドリカルレンズより成っている。そして出射面側が光束分割手段として複数のレンズセルが2次元的に平面上に配置されて構成されている。
【0013】
図3は、楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3の光軸方向の距離Lに対する、パネル10面上での明るさ及びコントラストの関係の説明図である。図3において点線が明るさ、実線がコントラストを示している。図3に示すように、距離Lを変化させたとき、明るさは所定位置で最大となり、コントラストは距離Lを大きくするほど高くなる。パネル10面上のコントラストの変化について説明する。楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3との距離Lを大きくするほど、光学素子4に入射する光束径が小さくなっていくために、パネル10に入射する光の角度範囲が狭まっていく。このため、偏光分離手段9の偏光分離膜11に入射する光について、偏光分離膜11に対する光線入射角範囲が狭まるため、偏光分離特性が高まり、画像のコントラスト特性が改善できる。
【0014】
次に、パネル10面上の明るさ変化について説明する。まず、楕円リフレクター2のパネル10側に正レンズ3を設けていることの光学作用について説明する。図4は、光源手段1から発せられた光で、正レンズ3の出射前後の光線の広がり角度を説明した図である。光源手段1の発光部1aのZ軸方向(光軸方向)のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の成す広がり角度において説明する。楕円リフレクター2の発光部から遠い側(図のA)で反射する光について、正レンズ3の入射前の広がり角度をθ1、正レンズ3の出射後の広がり角度をθ1’とする。このとき、正レンズ3の正の屈折力と正レンズ3に入射する光線高さの関係から、
θ1> θ1’
である。同様に、楕円リフレクター2の発光部1aに近い側(図の B)で反射する光について、正レンズ3の入射前の広がり角度をθ2、正レンズ3の出射後の広がり角度をθ2’とする。このとき、
θ2>θ2’
である。このため、楕円リフレクター2の出射側に正レンズ3を設けることにより、第1及び第2のフライアイレンズ4b、5に入射する光線角度範囲が狭まるため、偏光変換素子6近傍での光量損失が少なくなる。
【0015】
次に楕円リフレクター2と正レンズ3との距離Lとパネル10面上の明るさとの関係について説明する。光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の成す角度について説明する。図4の広がり角度θ1’、θ2’は、正レンズ3の正の屈折力と正レンズ3に入射する光線高さの関係から、距離Lを大きくしたときに、共に小さくなる。このため、距離Lを大きくしていくと、パネル10面上での明るさは上昇する。一方、距離Lを大きくしすぎた場合は、逆にパネル10上の明るさは低下してくる。
【0016】
図5及び図6は、光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の、第2光学手段4aを透過した後の光線角度の広がり(図の角度α、角度α’)の説明図である。図5は、楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3の距離Lが大きいときの図である。このとき、光源手段1の発光部1aのZ軸方向(光軸OLa方向)のパネル10側の先端部から発せられた光は、楕円リフレクター2で反射された後、正レンズ3で屈折し、図の点Cで光軸を横切り、第2光学手段4aに入射する。第2光学手段4aは、負の屈折力を有しているため、第2光学手段4aに入射する前に光軸OLaを跨いだ光線Lcは屈折角度が大きくなる。このため、光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の成す角度は、第2光学手段4a(光学素子4)の出射後において大きくなる。このため、図1、図2に示す偏光変換素子6近傍での光量損失が大きくなる。
【0017】
図6は、距離Lが小さいときの説明図である。このとき光束は正レンズ3の光入射側で光軸を跨がない。このため、光源手段1の発光部1aのZ軸方向のパネル10側の先端部と楕円リフレクター2の根元側先端部からの光の、第2光学手段4a(光学素子4)を透過した後の光線角度の広がり角α’は、図5の広がり角αよりも小さくなる。従って、図5のときよりも明るさが向上する。光源手段1から発せられ楕円リフレクター2と正レンズ3で屈折した光が光軸OLaを跨ぐか、跨がないかは、次のとおりである。光源手段1からの光が、楕円リフレクター2と正レンズ3によって集光される光軸方向の位置よりも、第2光学手段4aが光源手段1側か、パネル10側か、に位置することに相当する。したがって、明るさの低下を防ぐためには、光源手段1から光軸OLaに対し垂直方向に発せられた光が、楕円リフレクター2と正レンズ3によって集光される光軸方向の位置よりも、第2光学手段4aが光源手段1側に配置されることが必要である。
【0018】
上記明るさ変化についての光学作用は、パネル10と共役関係にある第2光学手段4a面上における輝度分布から説明できる。第2光学手段4aの入射面位置での輝度分布の断面図を、図7に示す。図7の曲線1から曲線3への変化は、距離Lの小さい状態から大きい状態への変化を示している。横軸はx方向(光軸OLaの直交する方向)の光軸OLaからの距離、縦軸は輝度である。楕円リフレクター2の開口部2aと正レンズ3の距離Lが大きい場合(図の点線3の場合)は、光源手段1からの光線が第2光学手段4aに入射する前に光軸を横切る。このため、第2光学手段4aの入射面での輝度分布は、中央部の輝度が高くなる。一方、距離Lが小さい場合は、楕円リフレクター2の根元における発光管を通すために設けた穴部が、正レンズ3の光軸OLa上にあるため、光源手段1からの光で、楕円リフレクター2の光軸近傍で反射する成分がない。このため、第2光学手段4aの入射面での光軸近傍の光線成分はわずかである。このため、距離Lが小さいときの第2光学手段4aの入射面での輝度分布は、中央部の輝度が低くなる(図の一点破線1)。また、この輝度分布の距離Lを変化させても変化しない分布の箇所(図中、a、b)は、図7に示すように、光源手段1の発光部1aから正レンズ3の光軸OLaに垂直な方向に出射した光が作る分布である。
【0019】
図8は、光源手段1から正レンズ3の光軸OLaに対し垂直方向に出射した光束の楕円リフレクター(曲面反射面)2での反射光路の説明図である。図8に示すように、発光部1aからy方向に出射した光が楕円リフレクター2と反射する位置(反射点)をDとする。反射点Dよりも光軸OLa側では、距離Lが変化して大きくなると、光源手段1からの光で、正レンズ3を出射した光が、第2光学手段4aに入射する前に、光軸OLaを跨いでしまう。このため、輝度分布が変化する。楕円リフレクター2の位置Dよりも光軸OLaよりも上側で反射する光は、光軸OLaから遠く、また、楕円リフレクター2の上側で反射する光のほうが下側で反射する光よりも光線出射角度の範囲が狭まる。このため、楕円リフレクター2と正レンズ3の距離Lの影響をほとんど受けない輝度分布となる。楕円リフレクター2のうち楕円リフレクター2の反射点Dよりも光軸OLaから遠い領域に入射し、反射した光束による第2光学手段4aの入射面における輝度の最大値と最小値をEa、Ebとする。楕円リフレクター2のうち、楕円リフレクター2の反射点Dよりも光軸に近い領域に入射し反射した光束による第2光学手段4aの入射面における輝度の最大値と最小値をIa、Ibとする。このとき、
0<(Ia−Ib)/(Ea−Eb)<0.5 ・・・(1)
なる条件を満足するようにしている。条件式(1)の上限又は下限を超えるときは、輝度分布の中央部が局所的に低くなる、又は、局所的に高くなるため、前述した光線作用の説明から、明るさが低下してしまうので良くない。
【0020】
次に本実施例における正レンズ3の光学作用効果を、実施例との比較から説明する。本実施例では、正レンズ3を設けることで、楕円リフレクター2の出射後の光束の光束幅を狭められるため、正レンズ3を有さない構成に対して、明るさの点について有利である。楕円リフレクター2から第2光学手段4aまでの距離Lを長くすれば、光束の光束幅を狭め、コントラストを高めることができる。しかしながらこの場合、発光部1aの光軸方向の先端部から発せられる光が光軸を跨いでしまい、光量損失が大きくなってしまう。そこで、本実施例では、正レンズ3と楕円リフレクター2の開口部2aの距離Lを適切に設定することで、コントラストを改善するとともに、明るさの低下を抑えている。
【0021】
[実施例2]
図9及び図10は、本発明の実施例2のXZ断面とYZ断面の構成図である。実施例2は実施例1に比べて光学素子12と第2のフライアイレンズ13の構成が異なっているだけである。1は光源手段、2は光源手段1からの光を反射して集光する第1光学手段としての楕円リフレクター、3は正レンズ、12は光学素子であり、負の屈折力を有する第2光学手段12a及び光束分割手段としての第1のフライアイレンズ12bを有している。13は第2のフライアイレンズである。6は偏光変換素子、7は第1のコンデンサーレンズ、8は第2のコンデンサーレンズ、9は偏光分離プリズム、10はパネルである。光学素子12は、フライアイレンズセルの曲率中心の偏心によって負の屈折力を持たせた第2光学手段12aと光束分割手段としての第1のフライアイレンズ12bを一体化している。また、第2のフライアイレンズ13も光学素子12と同様である。第1、第2のフライアイレンズ12b、13は、それぞれにおいて複数のレンズセルが2次元的に配置されて構成されている。
【0022】
図11は光学素子12の斜視図、図12は第2フライアイレンズ13の斜視図を示している。光学素子12を構成する第1フライアイレンズ12bはx方向に関して、各セルの曲率中心位置が外側に偏心している。第2フライアイレンズ13はy方向に関して、各セルの曲率中心位置が外側に偏心している。図9は、本発明の実施例2の光学素子12のxz断面における光路図を示している。図10は本発明の実施例2のyz断面における光路を示している。実施例1とほぼ同等の光学作用であるが、本実施例では、第1フライアイレンズ12bの光束分割手段と負の屈折力を有する第2光学手段12aが、同一面であるため、その箇所での光路図のみ異なる。第1、第2フライアイレンズ12b、13の光学作用について説明する。図9、図10に示すように光源手段1から発せられ、楕円リフレクター2で反射した光は正レンズ3に入射し、正レンズ3に入射した光は、収束光となり、光学素子12に入射する。図13は、第1フライアイレンズ12bの光学作用の説明図である。
【0023】
図13を用いて、正レンズ3を出射した光のうち第1フライアイレンズ12bにおけるセル21の中心部Aに入射する光線L0について説明する。光線L0は、該セルの曲率中心Pが点線O1上にあり、セル21中心部Aに対してx軸方向に外側へ偏心している。この偏心によって、光学素子12の出射後の光はxz断面において照明系の光軸Oに略平行な光線L1となる。同様にして、第2フライアイレンズ13についても、第2フライアイレンズ13を透過後、yz断面において照明系の光軸Oに略平行な光線となる。したがって、第1、第2フライアイレンズ12b、13は楕円リフレクター2からの収束光を光軸に対する平行光にするため、それぞれ、x方向及びy方向に負の屈折力を有した光束分割手段として作用する。本実施例においても、楕円リフレクター2と正レンズ3の距離Lに関し、条件式(1)を満足するようにしている。これにより、実施例1で述べたと同様の効果を得ている。
【0024】
[実施例3]
図14及び図15は、本発明の実施例3のXZ断面図とYZ断面図である。本実施例は実施例1に比べて第1光学手段2を放物リフレクター(放物面鏡)20と第1の正レンズ21より構成した点が異なっているだけである。1は光源手段、20は放物リフレクターである。21は正の屈折力の正レンズ、3は正レンズ、4は光学素子であり、負の屈折力を有する第2光学手段4aと光束分割手段としての第1のフライアイレンズ4bを有している。5は第2のフライアイレンズ、6は偏光変換素子、7は第1のコンデンサーレンズ、8は第2のコンデンサーレンズである。9は偏光分離プリズム、10はパネルである。放物リフレクター20と、正レンズ21以外の構成は、実施例2と同一である。本実施例では、実施例1における楕円リフレクター2の替わりに、放物リフレクター20と正レンズ21を用いており、これにより光源手段1からの光を反射して集光し、正レンズ3に入射させている。光源手段1から発せられた光は、放物リフレクター20によって反射され、平行光となり、正レンズ21に入射する。正レンズ21に入射した光は、収束光となり、正レンズ3に入射し、屈折して光学素子4に入射する。それ以降の光学作用は実施例1と同様である。本実施例では、第1の正レンズ21と正レンズ3との距離Lに関し、条件式(1)を満足するようにしている。これにより、実施例1で述べたと同様の効果を得ている。本実施例において放物リフレクター20の代わりに楕円リフレクターを用いても良い。
【0025】
[実施例4]
図16及び図17は、本発明の実施例4のXZ断面図とYZ断面図である。本実施例は実施例1に比べて光学素子23と第2のフライアイレンズ24の構成が異なっているだけである。1は光源手段、2は光源手段1からの光を反射して集光する第1光学手段としての楕円リフレクターである。3は正レンズ、23は光学素子であり、負の屈折力を有する第2光学手段23aと光束分割手段としての第1のフライアイレンズ23bを有している。24は第2のフライアイレンズ、6は偏光変換素子、7は第1のコンデンサーレンズ、8は第2のコンデンサーレンズ、9は偏光分離プリズム、10はパネルである。第1フライアイレンズ23bと第2フライアイレンズ24以外の構成は実施例1と同一である。光学素子23は、入射面が負の屈折力を有した球面形状の第2光学手段23aと、出射面が光束を分割する複数の微小レンズから成る第1フライアイレンズ23bより成っている。第2フライアイレンズ24は、平板状のフライアイレンズより成っている。
【0026】
本実施例では、楕円リフレクター2と正レンズ3の距離Lに関し、条件式(1)を満足するようにしている。これにより、実施例1で述べたと同様の効果を得ている。また、本実施例では、x方向とy方向でパネル10への入射角度を同一にしたまま小さくすることができるので、偏光分離手段6を用いない透過型液晶パネルを用いた構成についても有効である。また、実施例1から4においては、パネル10として単板式の構成図を用いて説明したが、勿論、パネル3枚構成としても良い。また、各実施例において第1の光学手段は、楕円リフレクターと正の屈折力のレンズから構成しても良い。以上のように各実施例によれば、明るさとコントラストを同時に改善できる液晶プロジェクターなどに好適な照明光学系が得られる。
【符号の説明】
【0027】
1 光源手段、1a 発光部、2 第1光学手段、3 正レンズ、4 光学素子、4a 第2光学手段、4b 第1フライアイレンズ、5 第2フライアイレンズ、6 偏光変換素子、7 第1のコンデンサーレンズ、8 第2のコンデンサーレンズ、9 偏光分離プリズム、10 画像表示素子、Pr 投射光学系、OLa 光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該第2光学手段は、該光源手段から出射した光束が該第1光学手段と該正レンズにより集光される集光点よりも、光軸方向において該光源手段側に配置されていることを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該正レンズは、該第1光学手段により集光される光束が光軸を横切る位置よりも該光源手段側に配置されていることを特徴とする照明光学系。
【請求項3】
前記光源手段から出射した光束は、光軸と垂直方向に出射した光束であることを特徴とする請求項2の照明光学系。
【請求項4】
前記光源手段から前記正レンズの光軸に対し垂直方向に出射した光束の前記曲面反射面での反射点をDとし、該曲面反射面のうち該曲面反射面の反射点Dよりも光軸から遠い領域に入射し、反射した光束による前記第2光学手段の入射面における輝度の最大値と最小値をEa、Eb、該曲面反射面のうち、該曲面反射面の反射点Dよりも光軸に近い領域に入射し反射した光束による該第2光学手段の入射面における輝度の最大値と最小値をIa、Ibとするとき、
0<(Ia−Ib)/(Ea−Eb)<0.5
なる条件を満足することを特徴とする請求項1、2又は3の照明光学系。
【請求項5】
前記第1光学手段は、楕円リフレクターより成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の照明光学系。
【請求項6】
前記第1光学手段は、放物リフレクターと正の屈折力の正レンズから成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の照明光学系。
【請求項7】
前記第2光学手段と前記光束分割手段は、一体化された光学素子より成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項の照明光学系。
【請求項8】
前記光束分割手段の光出射側に複数のレンズセルより成るフライアイレンズが配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項の照明光学系。
【請求項9】
画像表示素子と、前記画像表示素子を照明する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明光学系と、前記画像表示素子の画像を投射する投射光学系とを有することを特徴とする画像投射装置。
【請求項1】
被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該第2光学手段は、該光源手段から出射した光束が該第1光学手段と該正レンズにより集光される集光点よりも、光軸方向において該光源手段側に配置されていることを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
被照明面を照明する照明光学系であって、光源手段から出射した光束を収斂光として出射する、曲面反射面を含む第1光学手段と、該第1光学手段から出射した光束を集光する正レンズと、該正レンズから出射した光束の集光状態を変える負の屈折力の第2光学手段と、該第2光学手段から出射した光束を複数の光束に分割する光束分割手段と、該光束分割手段から出射した光束の偏光方向を揃えて出射する偏光変換素子と、該偏光変換手段から出射した光束を被照射面に導光する集光手段と、を有し、該正レンズは、該第1光学手段により集光される光束が光軸を横切る位置よりも該光源手段側に配置されていることを特徴とする照明光学系。
【請求項3】
前記光源手段から出射した光束は、光軸と垂直方向に出射した光束であることを特徴とする請求項2の照明光学系。
【請求項4】
前記光源手段から前記正レンズの光軸に対し垂直方向に出射した光束の前記曲面反射面での反射点をDとし、該曲面反射面のうち該曲面反射面の反射点Dよりも光軸から遠い領域に入射し、反射した光束による前記第2光学手段の入射面における輝度の最大値と最小値をEa、Eb、該曲面反射面のうち、該曲面反射面の反射点Dよりも光軸に近い領域に入射し反射した光束による該第2光学手段の入射面における輝度の最大値と最小値をIa、Ibとするとき、
0<(Ia−Ib)/(Ea−Eb)<0.5
なる条件を満足することを特徴とする請求項1、2又は3の照明光学系。
【請求項5】
前記第1光学手段は、楕円リフレクターより成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の照明光学系。
【請求項6】
前記第1光学手段は、放物リフレクターと正の屈折力の正レンズから成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の照明光学系。
【請求項7】
前記第2光学手段と前記光束分割手段は、一体化された光学素子より成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項の照明光学系。
【請求項8】
前記光束分割手段の光出射側に複数のレンズセルより成るフライアイレンズが配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項の照明光学系。
【請求項9】
画像表示素子と、前記画像表示素子を照明する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明光学系と、前記画像表示素子の画像を投射する投射光学系とを有することを特徴とする画像投射装置。
【図6】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
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【図17】
【公開番号】特開2010−197963(P2010−197963A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45891(P2009−45891)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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