照明光学装置
【課題】標本上に照射する光の範囲およびスポットサイズを変更する。
【解決手段】光源11から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段2と、該光束偏向手段2に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子4と、該波面変調素子4から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系5と、該フーリエ変換光学系5から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系7と、該逆フーリエ変換光学系7から射出された照明光を被写体Aに集光させる対物光学系8とを備え、フーリエ変換光学系5が、その逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構5cを備える照明光学装置1を提供する。
【解決手段】光源11から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段2と、該光束偏向手段2に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子4と、該波面変調素子4から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系5と、該フーリエ変換光学系5から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系7と、該逆フーリエ変換光学系7から射出された照明光を被写体Aに集光させる対物光学系8とを備え、フーリエ変換光学系5が、その逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構5cを備える照明光学装置1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡による蛍光観察において、標本上の複数箇所に同時に光を照射し、その標本の反応を観察する照明光学装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
この照明光学装置は、複数箇所に同時に光を照射するために、ホログラムを利用している。すなわち、予め設定された標本上の複数の注目位置にスポットが形成されるような照明パターンを元にホログラムの位相パターンを作成し、その位相パターンを付与した波面変調素子によって光の波面を変調することにより、標本上にホログラム像を投影するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−72279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の照明光学装置では、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチおよび光学系の制限によって、標本上に生成されるホログラム像により光を一度に照射できる範囲とスポットの大きさが制限されてしまうという不都合がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、標本上に照射する光の範囲およびスポットサイズを変更することができる照明光学装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系、前記逆フーリエ変換光学系または前記対物光学系において、該対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備える照明光学装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、光源からの照明光の波面が波面変調素子によって変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0007】
この場合において、本発明によれば、可変機構を作動させてフーリエ変換光学系、逆フーリエ変換光学系または対物光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、対物光学系による照明光の焦点位置が変化しないので、同一位置に配される被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0008】
上記発明においては、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系または前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えていてもよい。
このようにすることで、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、照明光のケラレを防止しつつ、所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させてもよい。
このようにすることで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレを、集光補正機構によって対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させて簡易に補正することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節してもよい。
このようにすることで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレ分だけフーリエ変換光学系の焦点位置を戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子によって照明光の光束に追加して付与することにより、光学的に共役な位置関係を崩すことなく、最もコンパクトに装置を構成することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記波面変調素子に対して光学的に共役な位置に配置され、前記光源から射出された照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段を備えていてもよい。
このようにすることで、光源からの照明光を光束偏向手段により任意の方向に偏向して、所望のパターンで被写体の所望の位置に照射することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を備え、前記可変機構が、前記レンズ群を切り替えてもよい。
このようにすることで、可変機構によって、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を切り替えることにより、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離を変更可能な液体レンズを含み、前記可変機構が、焦点距離を変化させるように前記液体レンズを駆動してもよい。
このようにすることで、可変機構が液体レンズを駆動して、対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更し、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、ズーム光学系により構成されていてもよい。
このようにすることで、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系を構成するズーム光学系により、対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更し、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記ズーム光学系が、相互の間隔を調節可能な正のレンズ群および負のレンズ群を備えていてもよい。
このようにすることで、ズーム光学系を構成する正のレンズ群と負のレンズ群の間隔を広げたときに、前側焦点位置を後側焦点位置をレンズ端面に近接させることができ、装置をコンパクトに構成することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記焦点位置に配置された視野絞りを有していてもよい。
このようにすることで、視野絞りにより、周辺光を制限し、迷光の発生を防止することができる。
【0017】
また、本発明の参考例においては、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系とを備え、前記フーリエ変換光学系が、その前記逆フーリエ変換光学系側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構を備える照明光学装置を提供する。
【0018】
本参考例によれば、光源からの照明光が光束偏向手段により任意の方向に偏向され、波面変調素子によって波面が変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0019】
この場合において、本参考例によれば、可変機構を作動させてフーリエ変換光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、フーリエ変換光学系の逆フーリエ変換光学系側の焦点位置が変化しないので、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0020】
また、本発明の参考例は、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系とを備え、前記逆フーリエ変換光学系が、その前記フーリエ変換光学系側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構を備える照明光学装置を提供する。
【0021】
本参考例によれば、光源からの照明光が光束偏向手段により任意の方向に偏向され、波面変調素子によって波面が変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0022】
この場合において、本参考例によれば、可変機構を作動させて逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、逆フーリエ変換光学系のフーリエ変換光学系側の焦点位置が変化しないので、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0023】
また、本参考例は、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変化させるとともに、前記波面変調素子により前記フーリエ変換光学系によるレーザ光の焦点位置が前記逆フーリエ変換光学系の前記フーリエ変換光学系側の焦点位置に略一致するような波面を付与する可変機構とを備える照明光学装置を提供する。
【0024】
本参考例によれば、可変機構を作動させて逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更し、波面変調素子によりフーリエ変換光学系の焦点位置を逆フーリエ変換光学系のフーリエ変換光学系側の焦点位置に略一致させるような位相パターンを付与するので、フーリエ変換光学系の焦点位置における像の大きさを変化させて、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲の大きさを変更することができる。
【0025】
また、逆フーリエ変換光学系から射出されるレーザ光の光束径を変化させて、標本に照射されるスポットの大きさを変更することができる。
そして、この場合に、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0026】
また、上記参考例においては、前記光束偏向手段と前記波面変調素子との間に配置されたリレー光学系を備え、前記フーリエ変換光学系が、前記リレー光学系の一部を含んでいてもよい。
このようにすることで、リレー光学系によって、光束径を増大させずに像をリレーすることができ、また、フーリエ変換光学系とリレー光学系とを部分的に共有することにより、構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、標本上に照射する光の範囲およびスポットサイズを変更することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明光学装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の照明光学装置の動作を説明する拡大図であり、(a)フーリエ変換光学系の焦点距離を長くした場合、(b)フーリエ変換光学系の焦点距離を短くした場合をそれぞれ示す図である。
【図3】図1の照明光学装置の変形例であって、反射型の波面変調素子を使用した例を示す全体構成図である。
【図4】図1の照明光学装置の変形例であって、複数の切替レンズを切り替えるターレットを示す(a)縦断面図および(b)正面図である。
【図5】図1の照明光学装置の変形例であって、リレー光学系のレンズとフーリエ変換光学系のレンズを部分的に共有させた例を示す全体構成図である。
【図6】図5の逆フーリエ変換光学系として採用した液体レンズの動作を説明する図であり、(a)焦点距離が長い場合、(b)焦点位置を変化させずに焦点距離を短くした場合、(c)焦点位置を変化させて焦点距離を短くした場合をそれぞれ示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る照明光学装置を示す全体構成図である。
【図8】図7の照明光学装置におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図9】図7の照明光学装置の第1の変形例を示す全体構成図である。
【図10】図7の照明光学装置の第2の変形例を示す全体構成図である。
【図11】図7の照明光学装置の第3の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図12】図7の照明光学装置の第4の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図13】図7の照明光学装置の第5の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図14】図7の照明光学装置の第6の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図15】図7の照明光学装置の第7の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図16】図7の照明光学装置の第8の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図17】図7の照明光学装置の第9の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る照明光学装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る照明光学装置1は、図1に示されるように、光束偏向手段2と、リレー光学系3と、波面変調素子4と、フーリエ変換光学系5と、視野絞り6と、逆フーリエ変換光学系7と、対物光学系8とを備えている。また、図1には、ダイクロイックミラー9および撮像素子10が設けられ、標本(被写体)Aから戻る蛍光を撮影することができるようになっている。
【0030】
光束偏向手段2は、対向して配置された2枚のガルバノミラー(図示略)を備えている。2枚のガルバノミラーは相互にねじれの位置関係に配置された軸線回りに揺動可能に設けられ、レーザ光源11から入射されて来た略平行光束からなるレーザ光の光束の偏光方向を2次元的に変化させることができるようになっている。
【0031】
リレー光学系3は、2以上の集光レンズ3a,3bからなり、平行光束からなるレーザ光を入射させて、その光束径を増大させて平行光束として射出させるようになっている。これにより、光束偏向手段2と波面変調素子4とを光学的に共役な位置関係としている。
【0032】
波面変調素子4は、例えば、液晶素子からなり、レーザ光の光束を透過させる際に、その波面に所望の変調を施すことができるようになっている。レーザ光の波面に付与する変調は、例えば、予め標本Aの画像を取得し、取得された画像においてレーザ光を照射すべき複数の注目部位を特定することにより照射パターンを生成し、その照射パターンを基に作成したホログラムの位相パターンを液晶素子で発生させることにより行われる。これにより、波面変調素子4を透過するレーザ光の波面は、液晶素子に発生させたホログラムの位相パターンに従って変調させられるようになっている。
【0033】
フーリエ変換光学系5は、波面変調素子4により波面が変調されたレーザ光を集光してその焦点面において、レーザ光の光束にフーリエ変換を施すようになっている。
本実施形態において、フーリエ変換光学系5は、複数のレンズ5a,5bとを組み合わせて構成され、その少なくとも1つを光軸方向に移動可能にして、焦点距離を連続的に変化させる可変機構5cが構成されている。
【0034】
さらに、フーリエ変換光学系5は、可変機構5cの作動によるレンズ5a,5bの移動によって焦点距離を変化させた際に、図2に示されるように、その逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置(前側焦点位置)を変化させることなく焦点距離を変化させるように構成されている。すなわち、フーリエ変換光学系5は、この可変機構5cによりズーム光学系として構成されている。
【0035】
視野絞り6は、レーザ光の光束の周辺光を遮断して、迷光の発生を防止するようになっている。
ダイクロイックミラー9は、レーザ光を透過して蛍光を反射する波長特性を有している。
【0036】
逆フーリエ変換光学系7は、フーリエ変換光学系5により集光されたレーザ光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にするようになっている。
対物光学系8は、略平行光束とされたレーザ光を標本Aに照射する一方、標本Aにおいて発生した蛍光を集光するようになっている。
【0037】
フーリエ変換光学系5の前側焦点位置と、逆フーリエ変換光学系7のフーリエ変換光学系5側の焦点位置(後側焦点位置)とは常に一致しているので、これらの光学系5,7によってリレー光学系が構成され、対物光学系8の瞳位置は、波面変調素子4と光学的に共役な位置関係に配されている。
撮像素子10は、対物光学系8により集光され、ダイクロイックミラー9において反射された蛍光を撮影するようになっている。
【0038】
このように構成された本実施形態に係る照明光学装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る照明光学装置1を用いて、レーザ光を標本Aに照射するには、予め設定された照射パターンに基づいて、光束偏向手段2による光束の偏向方向を調節し、波面変調素子4に所望の位相パターンを発生させ、かつ、フーリエ変換光学系5の可変機構5cの作動によりフーリエ変換光学系5の焦点距離を変化させる。
【0039】
光束偏向手段2により光束の偏向方向を調節することによって、標本A上におけるレーザ光の照射位置を調節することができる。
波面変調素子4に位相パターンを発生させることにより、対物光学系8の焦点面に、設定された照射パターンでレーザ光を照射することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、図2(a)および図2(b)に示されるように、フーリエ変換光学系5の可変機構5cを作動させることにより、フーリエ変換光学系5の焦点距離を変化させるので、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置に構成される像の大きさを変化させることができる。さらに、可変機構5cによって、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置と逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置とを一致させた状態に維持するので、逆フーリエ変換光学系7から射出されるレーザ光の光束径を変化させることができる。
【0041】
すなわち、本実施形態に係る照明光学装置1によれば、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させて、一度に照射可能なレーザ光の照射範囲を変化させることができるとともに、対物光学系8に入射させるレーザ光の光束径を変化させて、標本Aに集光される最小スポットサイズを変化させることができるという利点がある。
【0042】
なお、本実施形態においては、光束偏向手段2によって、光束の偏向方向を設定した後に波面変調素子4において波面を変調することとしたが、これに代えて、光束偏向手段2と波面変調素子4とを入れ替えてもよい。
【0043】
また、波面変調素子4として、レーザ光を透過させる液晶型の波面変調素子4を例示して説明したが、これに代えて、図3に示されるように、反射型の波面変調素子4’を採用してもよい。この場合には、波面変調素子4’へのレーザ光の入射角度を波面変調素子4’の法線方向に近づけるために、図3に示されるような折り返しミラー12を設けることが好ましい。図中符号13は結像レンズである。
【0044】
また、本実施形態においては、可変機構5cとして、フーリエ変換光学系5を構成するレンズ5a,5bの少なくとも1つを光軸方向に移動させるものを例示したが、これに代えて、図4に示されるように、焦点距離が異なり、かつ、同一の前側焦点位置にレーザ光を集光させることが可能な複数の切替レンズ14a〜14dをターレット15に取り付けて、必要に応じてターレット15を、その回転軸15a回りに回転させることにより切り替えることにしてもよい。
さらに、液体レンズ(図6参照。)16を採用して焦点距離を変化させ、かつ液体レンズ16を光軸方向に移動させてその前側焦点位置を一定位置に維持するようにしてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態においては、可変機構5cとして、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させるものを例示したが、これに代えて、図3に示されるように、逆フーリエ変換光学系7の1以上のレンズ7a,7bを光軸方向に移動させて、後側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させる可変機構7cを採用してもよい。
また、その場合に、ズーム光学系に代えて、切替レンズまたは液体レンズのいずれを採用してもよい。
【0046】
逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変化させる場合には、図3に示されるように、ダイクロイックミラー9を逆フーリエ変換光学系7と対物光学系8との間に配置するとともに、ダイクロイックミラー9と撮像素子10との間に結像レンズ13を設けることが好ましい。このようにすることで、逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変化させても、撮影の倍率を変化させることなく撮影を行うことができるという利点がある。
【0047】
また、逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させる場合には、図5に示されるように、リレー光学系3を構成する一部のレンズ3bと、フーリエ変換光学系5を構成するレンズとを共用させてもよい。このようにすることで、レンズ数を減らして構成を簡易にすることができる。図5に示す例では、逆フーリエ変換光学系7として焦点距離を変更可能な液体レンズ16を使用している。
【0048】
また、図5に示す例では、逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変更可能としているので、図6に示されるように、焦点距離を変更すると、逆フーリエ変換光学系7の焦点位置が移動する。そこで、その移動分だけフーリエ変換光学系5の焦点位置を移動させるような波面を波面変調素子4’によってレーザ光束に追加して付与することにしている。このように、逆フーリエ変換光学系7と波面変調素子4’とにより可変機構17を構成することで、可動部を少なくして装置を簡素化することができるという利点がある。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明光学装置20について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る照明光学装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態に係る照明光学装置20は、図7に示されるように、光束偏向手段2を有しないとともに、フーリエ変換光学系21として、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを、波面変調素子4’側から順に、光軸方向に配列したものを採用している。また本実施形態に係る照明光学装置20は、可変機構21cとして、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bの光軸方向の間隔および位置を調節可能にしたものを採用している。
図中、符号22は、観察光学系を示し、観察用光源23、スキャナ24、瞳投影レンズ25、結像レンズ26、ダイクロイックミラー27、集光レンズ28および光検出器29を備えている。
【0051】
このように構成された本実施形態に係る照明光学装置20によれば、図8(a)に示される状態から、図8(b)に示されるように、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを近接させると、末端のレンズ面から焦点位置までの距離が伸びる。すなわち、波面変調素子4’の像の倍率を大きくするために、図8(a)に示されるように、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとの間隔を広げると、末端のレンズ面から焦点位置までの距離が縮むので、フーリエ変換光学系21の占める寸法が相殺されて、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0052】
図8に示される例では、負のレンズ群21bの末端のレンズ面側に結ばれる焦点位置Bを移動させないように負のレンズ群21bおよび正のレンズ群21aを光軸方向に移動させているので、対物光学系8の前方における照明光の焦点位置は略一定の位置に維持される。
このように、本実施形態に係る照明光学装置20によれば、可変機構21cによって、フーリエ変換光学系21の前側焦点位置と逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置とを一致させた状態に維持するので、逆フーリエ変換光学系7から射出されるレーザ光の光束径を変化させることができる。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る照明光学装置20によれば、装置のコンパクト化を図りつつ、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させて、一度に照射可能なレーザ光の照射範囲を変化させることができるとともに、対物光学系8に入射させるレーザ光の光束径を変化させて、標本Aに集光される最小スポットサイズを変化させることができるという利点がある。
【0054】
なお、本実施形態においては、照明光学装置20が光束偏向手段を有しない場合について説明したが、第1の実施形態のように、波面変調素子4よりも光源11側に配置されていてもよいし、図9に示されるように、光束偏向手段2を、リレー光学系30とともに逆フーリエ変換光学系7よりも標本A側に配置することにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、逆フーリエ変換光学系7として、固定されたレンズを採用したが、これに代えて、図10に示されるように、フーリエ変換光学系21に代えて逆フーリエ変換光学系31を可変機構31cを有するズーム光学系によって構成してもよいし、図11〜図14に示されるように、フーリエ変換光学系21および逆フーリエ変換光学系31の両方ともズーム光学系によって構成してもよい。このようにすることで、逆フーリエ変換光学系31においても、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させる効果を持たせることができる。
【0056】
また、本構成を採用することにより、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系31側の焦点位置Bを略一定に維持することで、その焦点位置Bと波面変調素子4’との光学的に共役な位置関係が崩れることによる焦点位置におけるテレセントリック性のズレを逆フーリエ変換光学系31によって補償することができる。
また、フーリエ変換光学系21および逆フーリエ変換光学系31を構成している正のレンズ群21a,31aと負のレンズ群21b,31bとの位置関係は図11〜図14に示されるように、任意に選択することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置を略一定に維持することとしたが、これに代えて、図15に示されるように、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aおよび負のレンズ群21bの移動に伴い、焦点位置Bを移動させて、焦点位置Bと波面変調素子4’との光学的に共役な位置関係を維持することにしてもよい。
そして、この場合には、対物光学系8の標本A側に形成される焦点位置が光軸方向に移動することとなるので、対物光学系8に、該対物光学系8を構成する1以上のレンズ(図示略)を光軸方向に移動させる補正環32を設け、該補正環32を調節することによって、対物レンズ8の標本A側の焦点位置を略一定に維持することにしてもよい。
【0058】
また、この場合に、逆フーリエ変換光学系7としては、図15に示されるように固定のレンズを採用してもよいし、図16に示されるように、ズーム光学系31を採用してもよい。
また、図17に示すように、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系31側の焦点位置Bを略一定に維持し、それによってズレてしまう光学的に共役な位置関係を、波面変調素子4’によって補償することにしてもよい。
【0059】
すなわち、フーリエ変換光学系21の後側焦点位置を波面変調素子4’上に維持したままで、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを移動させることにより、焦点距離の変化によって、逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置が移動する。そこで、その移動分だけフーリエ変換光学系21の焦点位置Bを戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子4’によってレーザ光束に追加して付与することにより、光学的に共役な位置関係を崩すことなく、最もコンパクトに装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,20 照明光学装置
2 光束偏向手段
4,4’ 波面変調素子
5,21 フーリエ変換光学系
5c、7c,21c,31c 可変機構
6 視野絞り
7,31 逆フーリエ変換光学系
8 対物光学系
11 レーザ光源(光源)
14a〜14d 切替レンズ(レンズ群)
15 ターレット(可変機構)
16 液体レンズ
17 可変機構
21a,31a 正のレンズ群
21b,31b 負のレンズ群
32 補正環(可変機構)
【技術分野】
【0001】
本発明は照明光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡による蛍光観察において、標本上の複数箇所に同時に光を照射し、その標本の反応を観察する照明光学装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
この照明光学装置は、複数箇所に同時に光を照射するために、ホログラムを利用している。すなわち、予め設定された標本上の複数の注目位置にスポットが形成されるような照明パターンを元にホログラムの位相パターンを作成し、その位相パターンを付与した波面変調素子によって光の波面を変調することにより、標本上にホログラム像を投影するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−72279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の照明光学装置では、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチおよび光学系の制限によって、標本上に生成されるホログラム像により光を一度に照射できる範囲とスポットの大きさが制限されてしまうという不都合がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、標本上に照射する光の範囲およびスポットサイズを変更することができる照明光学装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系、前記逆フーリエ変換光学系または前記対物光学系において、該対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備える照明光学装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、光源からの照明光の波面が波面変調素子によって変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0007】
この場合において、本発明によれば、可変機構を作動させてフーリエ変換光学系、逆フーリエ変換光学系または対物光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、対物光学系による照明光の焦点位置が変化しないので、同一位置に配される被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0008】
上記発明においては、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系または前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えていてもよい。
このようにすることで、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、照明光のケラレを防止しつつ、所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させてもよい。
このようにすることで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレを、集光補正機構によって対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させて簡易に補正することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節してもよい。
このようにすることで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレ分だけフーリエ変換光学系の焦点位置を戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子によって照明光の光束に追加して付与することにより、光学的に共役な位置関係を崩すことなく、最もコンパクトに装置を構成することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記波面変調素子に対して光学的に共役な位置に配置され、前記光源から射出された照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段を備えていてもよい。
このようにすることで、光源からの照明光を光束偏向手段により任意の方向に偏向して、所望のパターンで被写体の所望の位置に照射することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を備え、前記可変機構が、前記レンズ群を切り替えてもよい。
このようにすることで、可変機構によって、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を切り替えることにより、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離を変更可能な液体レンズを含み、前記可変機構が、焦点距離を変化させるように前記液体レンズを駆動してもよい。
このようにすることで、可変機構が液体レンズを駆動して、対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更し、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、ズーム光学系により構成されていてもよい。
このようにすることで、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系を構成するズーム光学系により、対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更し、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記ズーム光学系が、相互の間隔を調節可能な正のレンズ群および負のレンズ群を備えていてもよい。
このようにすることで、ズーム光学系を構成する正のレンズ群と負のレンズ群の間隔を広げたときに、前側焦点位置を後側焦点位置をレンズ端面に近接させることができ、装置をコンパクトに構成することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記焦点位置に配置された視野絞りを有していてもよい。
このようにすることで、視野絞りにより、周辺光を制限し、迷光の発生を防止することができる。
【0017】
また、本発明の参考例においては、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系とを備え、前記フーリエ変換光学系が、その前記逆フーリエ変換光学系側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構を備える照明光学装置を提供する。
【0018】
本参考例によれば、光源からの照明光が光束偏向手段により任意の方向に偏向され、波面変調素子によって波面が変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0019】
この場合において、本参考例によれば、可変機構を作動させてフーリエ変換光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、フーリエ変換光学系の逆フーリエ変換光学系側の焦点位置が変化しないので、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0020】
また、本発明の参考例は、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系とを備え、前記逆フーリエ変換光学系が、その前記フーリエ変換光学系側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構を備える照明光学装置を提供する。
【0021】
本参考例によれば、光源からの照明光が光束偏向手段により任意の方向に偏向され、波面変調素子によって波面が変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0022】
この場合において、本参考例によれば、可変機構を作動させて逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、逆フーリエ変換光学系のフーリエ変換光学系側の焦点位置が変化しないので、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0023】
また、本参考例は、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変化させるとともに、前記波面変調素子により前記フーリエ変換光学系によるレーザ光の焦点位置が前記逆フーリエ変換光学系の前記フーリエ変換光学系側の焦点位置に略一致するような波面を付与する可変機構とを備える照明光学装置を提供する。
【0024】
本参考例によれば、可変機構を作動させて逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更し、波面変調素子によりフーリエ変換光学系の焦点位置を逆フーリエ変換光学系のフーリエ変換光学系側の焦点位置に略一致させるような位相パターンを付与するので、フーリエ変換光学系の焦点位置における像の大きさを変化させて、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲の大きさを変更することができる。
【0025】
また、逆フーリエ変換光学系から射出されるレーザ光の光束径を変化させて、標本に照射されるスポットの大きさを変更することができる。
そして、この場合に、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0026】
また、上記参考例においては、前記光束偏向手段と前記波面変調素子との間に配置されたリレー光学系を備え、前記フーリエ変換光学系が、前記リレー光学系の一部を含んでいてもよい。
このようにすることで、リレー光学系によって、光束径を増大させずに像をリレーすることができ、また、フーリエ変換光学系とリレー光学系とを部分的に共有することにより、構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、標本上に照射する光の範囲およびスポットサイズを変更することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明光学装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の照明光学装置の動作を説明する拡大図であり、(a)フーリエ変換光学系の焦点距離を長くした場合、(b)フーリエ変換光学系の焦点距離を短くした場合をそれぞれ示す図である。
【図3】図1の照明光学装置の変形例であって、反射型の波面変調素子を使用した例を示す全体構成図である。
【図4】図1の照明光学装置の変形例であって、複数の切替レンズを切り替えるターレットを示す(a)縦断面図および(b)正面図である。
【図5】図1の照明光学装置の変形例であって、リレー光学系のレンズとフーリエ変換光学系のレンズを部分的に共有させた例を示す全体構成図である。
【図6】図5の逆フーリエ変換光学系として採用した液体レンズの動作を説明する図であり、(a)焦点距離が長い場合、(b)焦点位置を変化させずに焦点距離を短くした場合、(c)焦点位置を変化させて焦点距離を短くした場合をそれぞれ示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る照明光学装置を示す全体構成図である。
【図8】図7の照明光学装置におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図9】図7の照明光学装置の第1の変形例を示す全体構成図である。
【図10】図7の照明光学装置の第2の変形例を示す全体構成図である。
【図11】図7の照明光学装置の第3の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図12】図7の照明光学装置の第4の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図13】図7の照明光学装置の第5の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図14】図7の照明光学装置の第6の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図15】図7の照明光学装置の第7の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図16】図7の照明光学装置の第8の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図17】図7の照明光学装置の第9の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る照明光学装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る照明光学装置1は、図1に示されるように、光束偏向手段2と、リレー光学系3と、波面変調素子4と、フーリエ変換光学系5と、視野絞り6と、逆フーリエ変換光学系7と、対物光学系8とを備えている。また、図1には、ダイクロイックミラー9および撮像素子10が設けられ、標本(被写体)Aから戻る蛍光を撮影することができるようになっている。
【0030】
光束偏向手段2は、対向して配置された2枚のガルバノミラー(図示略)を備えている。2枚のガルバノミラーは相互にねじれの位置関係に配置された軸線回りに揺動可能に設けられ、レーザ光源11から入射されて来た略平行光束からなるレーザ光の光束の偏光方向を2次元的に変化させることができるようになっている。
【0031】
リレー光学系3は、2以上の集光レンズ3a,3bからなり、平行光束からなるレーザ光を入射させて、その光束径を増大させて平行光束として射出させるようになっている。これにより、光束偏向手段2と波面変調素子4とを光学的に共役な位置関係としている。
【0032】
波面変調素子4は、例えば、液晶素子からなり、レーザ光の光束を透過させる際に、その波面に所望の変調を施すことができるようになっている。レーザ光の波面に付与する変調は、例えば、予め標本Aの画像を取得し、取得された画像においてレーザ光を照射すべき複数の注目部位を特定することにより照射パターンを生成し、その照射パターンを基に作成したホログラムの位相パターンを液晶素子で発生させることにより行われる。これにより、波面変調素子4を透過するレーザ光の波面は、液晶素子に発生させたホログラムの位相パターンに従って変調させられるようになっている。
【0033】
フーリエ変換光学系5は、波面変調素子4により波面が変調されたレーザ光を集光してその焦点面において、レーザ光の光束にフーリエ変換を施すようになっている。
本実施形態において、フーリエ変換光学系5は、複数のレンズ5a,5bとを組み合わせて構成され、その少なくとも1つを光軸方向に移動可能にして、焦点距離を連続的に変化させる可変機構5cが構成されている。
【0034】
さらに、フーリエ変換光学系5は、可変機構5cの作動によるレンズ5a,5bの移動によって焦点距離を変化させた際に、図2に示されるように、その逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置(前側焦点位置)を変化させることなく焦点距離を変化させるように構成されている。すなわち、フーリエ変換光学系5は、この可変機構5cによりズーム光学系として構成されている。
【0035】
視野絞り6は、レーザ光の光束の周辺光を遮断して、迷光の発生を防止するようになっている。
ダイクロイックミラー9は、レーザ光を透過して蛍光を反射する波長特性を有している。
【0036】
逆フーリエ変換光学系7は、フーリエ変換光学系5により集光されたレーザ光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にするようになっている。
対物光学系8は、略平行光束とされたレーザ光を標本Aに照射する一方、標本Aにおいて発生した蛍光を集光するようになっている。
【0037】
フーリエ変換光学系5の前側焦点位置と、逆フーリエ変換光学系7のフーリエ変換光学系5側の焦点位置(後側焦点位置)とは常に一致しているので、これらの光学系5,7によってリレー光学系が構成され、対物光学系8の瞳位置は、波面変調素子4と光学的に共役な位置関係に配されている。
撮像素子10は、対物光学系8により集光され、ダイクロイックミラー9において反射された蛍光を撮影するようになっている。
【0038】
このように構成された本実施形態に係る照明光学装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る照明光学装置1を用いて、レーザ光を標本Aに照射するには、予め設定された照射パターンに基づいて、光束偏向手段2による光束の偏向方向を調節し、波面変調素子4に所望の位相パターンを発生させ、かつ、フーリエ変換光学系5の可変機構5cの作動によりフーリエ変換光学系5の焦点距離を変化させる。
【0039】
光束偏向手段2により光束の偏向方向を調節することによって、標本A上におけるレーザ光の照射位置を調節することができる。
波面変調素子4に位相パターンを発生させることにより、対物光学系8の焦点面に、設定された照射パターンでレーザ光を照射することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、図2(a)および図2(b)に示されるように、フーリエ変換光学系5の可変機構5cを作動させることにより、フーリエ変換光学系5の焦点距離を変化させるので、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置に構成される像の大きさを変化させることができる。さらに、可変機構5cによって、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置と逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置とを一致させた状態に維持するので、逆フーリエ変換光学系7から射出されるレーザ光の光束径を変化させることができる。
【0041】
すなわち、本実施形態に係る照明光学装置1によれば、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させて、一度に照射可能なレーザ光の照射範囲を変化させることができるとともに、対物光学系8に入射させるレーザ光の光束径を変化させて、標本Aに集光される最小スポットサイズを変化させることができるという利点がある。
【0042】
なお、本実施形態においては、光束偏向手段2によって、光束の偏向方向を設定した後に波面変調素子4において波面を変調することとしたが、これに代えて、光束偏向手段2と波面変調素子4とを入れ替えてもよい。
【0043】
また、波面変調素子4として、レーザ光を透過させる液晶型の波面変調素子4を例示して説明したが、これに代えて、図3に示されるように、反射型の波面変調素子4’を採用してもよい。この場合には、波面変調素子4’へのレーザ光の入射角度を波面変調素子4’の法線方向に近づけるために、図3に示されるような折り返しミラー12を設けることが好ましい。図中符号13は結像レンズである。
【0044】
また、本実施形態においては、可変機構5cとして、フーリエ変換光学系5を構成するレンズ5a,5bの少なくとも1つを光軸方向に移動させるものを例示したが、これに代えて、図4に示されるように、焦点距離が異なり、かつ、同一の前側焦点位置にレーザ光を集光させることが可能な複数の切替レンズ14a〜14dをターレット15に取り付けて、必要に応じてターレット15を、その回転軸15a回りに回転させることにより切り替えることにしてもよい。
さらに、液体レンズ(図6参照。)16を採用して焦点距離を変化させ、かつ液体レンズ16を光軸方向に移動させてその前側焦点位置を一定位置に維持するようにしてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態においては、可変機構5cとして、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させるものを例示したが、これに代えて、図3に示されるように、逆フーリエ変換光学系7の1以上のレンズ7a,7bを光軸方向に移動させて、後側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させる可変機構7cを採用してもよい。
また、その場合に、ズーム光学系に代えて、切替レンズまたは液体レンズのいずれを採用してもよい。
【0046】
逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変化させる場合には、図3に示されるように、ダイクロイックミラー9を逆フーリエ変換光学系7と対物光学系8との間に配置するとともに、ダイクロイックミラー9と撮像素子10との間に結像レンズ13を設けることが好ましい。このようにすることで、逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変化させても、撮影の倍率を変化させることなく撮影を行うことができるという利点がある。
【0047】
また、逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させる場合には、図5に示されるように、リレー光学系3を構成する一部のレンズ3bと、フーリエ変換光学系5を構成するレンズとを共用させてもよい。このようにすることで、レンズ数を減らして構成を簡易にすることができる。図5に示す例では、逆フーリエ変換光学系7として焦点距離を変更可能な液体レンズ16を使用している。
【0048】
また、図5に示す例では、逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変更可能としているので、図6に示されるように、焦点距離を変更すると、逆フーリエ変換光学系7の焦点位置が移動する。そこで、その移動分だけフーリエ変換光学系5の焦点位置を移動させるような波面を波面変調素子4’によってレーザ光束に追加して付与することにしている。このように、逆フーリエ変換光学系7と波面変調素子4’とにより可変機構17を構成することで、可動部を少なくして装置を簡素化することができるという利点がある。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明光学装置20について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る照明光学装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態に係る照明光学装置20は、図7に示されるように、光束偏向手段2を有しないとともに、フーリエ変換光学系21として、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを、波面変調素子4’側から順に、光軸方向に配列したものを採用している。また本実施形態に係る照明光学装置20は、可変機構21cとして、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bの光軸方向の間隔および位置を調節可能にしたものを採用している。
図中、符号22は、観察光学系を示し、観察用光源23、スキャナ24、瞳投影レンズ25、結像レンズ26、ダイクロイックミラー27、集光レンズ28および光検出器29を備えている。
【0051】
このように構成された本実施形態に係る照明光学装置20によれば、図8(a)に示される状態から、図8(b)に示されるように、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを近接させると、末端のレンズ面から焦点位置までの距離が伸びる。すなわち、波面変調素子4’の像の倍率を大きくするために、図8(a)に示されるように、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとの間隔を広げると、末端のレンズ面から焦点位置までの距離が縮むので、フーリエ変換光学系21の占める寸法が相殺されて、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0052】
図8に示される例では、負のレンズ群21bの末端のレンズ面側に結ばれる焦点位置Bを移動させないように負のレンズ群21bおよび正のレンズ群21aを光軸方向に移動させているので、対物光学系8の前方における照明光の焦点位置は略一定の位置に維持される。
このように、本実施形態に係る照明光学装置20によれば、可変機構21cによって、フーリエ変換光学系21の前側焦点位置と逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置とを一致させた状態に維持するので、逆フーリエ変換光学系7から射出されるレーザ光の光束径を変化させることができる。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る照明光学装置20によれば、装置のコンパクト化を図りつつ、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させて、一度に照射可能なレーザ光の照射範囲を変化させることができるとともに、対物光学系8に入射させるレーザ光の光束径を変化させて、標本Aに集光される最小スポットサイズを変化させることができるという利点がある。
【0054】
なお、本実施形態においては、照明光学装置20が光束偏向手段を有しない場合について説明したが、第1の実施形態のように、波面変調素子4よりも光源11側に配置されていてもよいし、図9に示されるように、光束偏向手段2を、リレー光学系30とともに逆フーリエ変換光学系7よりも標本A側に配置することにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、逆フーリエ変換光学系7として、固定されたレンズを採用したが、これに代えて、図10に示されるように、フーリエ変換光学系21に代えて逆フーリエ変換光学系31を可変機構31cを有するズーム光学系によって構成してもよいし、図11〜図14に示されるように、フーリエ変換光学系21および逆フーリエ変換光学系31の両方ともズーム光学系によって構成してもよい。このようにすることで、逆フーリエ変換光学系31においても、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させる効果を持たせることができる。
【0056】
また、本構成を採用することにより、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系31側の焦点位置Bを略一定に維持することで、その焦点位置Bと波面変調素子4’との光学的に共役な位置関係が崩れることによる焦点位置におけるテレセントリック性のズレを逆フーリエ変換光学系31によって補償することができる。
また、フーリエ変換光学系21および逆フーリエ変換光学系31を構成している正のレンズ群21a,31aと負のレンズ群21b,31bとの位置関係は図11〜図14に示されるように、任意に選択することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置を略一定に維持することとしたが、これに代えて、図15に示されるように、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aおよび負のレンズ群21bの移動に伴い、焦点位置Bを移動させて、焦点位置Bと波面変調素子4’との光学的に共役な位置関係を維持することにしてもよい。
そして、この場合には、対物光学系8の標本A側に形成される焦点位置が光軸方向に移動することとなるので、対物光学系8に、該対物光学系8を構成する1以上のレンズ(図示略)を光軸方向に移動させる補正環32を設け、該補正環32を調節することによって、対物レンズ8の標本A側の焦点位置を略一定に維持することにしてもよい。
【0058】
また、この場合に、逆フーリエ変換光学系7としては、図15に示されるように固定のレンズを採用してもよいし、図16に示されるように、ズーム光学系31を採用してもよい。
また、図17に示すように、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系31側の焦点位置Bを略一定に維持し、それによってズレてしまう光学的に共役な位置関係を、波面変調素子4’によって補償することにしてもよい。
【0059】
すなわち、フーリエ変換光学系21の後側焦点位置を波面変調素子4’上に維持したままで、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを移動させることにより、焦点距離の変化によって、逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置が移動する。そこで、その移動分だけフーリエ変換光学系21の焦点位置Bを戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子4’によってレーザ光束に追加して付与することにより、光学的に共役な位置関係を崩すことなく、最もコンパクトに装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,20 照明光学装置
2 光束偏向手段
4,4’ 波面変調素子
5,21 フーリエ変換光学系
5c、7c,21c,31c 可変機構
6 視野絞り
7,31 逆フーリエ変換光学系
8 対物光学系
11 レーザ光源(光源)
14a〜14d 切替レンズ(レンズ群)
15 ターレット(可変機構)
16 液体レンズ
17 可変機構
21a,31a 正のレンズ群
21b,31b 負のレンズ群
32 補正環(可変機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記フーリエ変換光学系、前記逆フーリエ変換光学系または前記対物光学系において、該対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備える照明光学装置。
【請求項2】
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系または前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備える請求項1に記載の照明光学装置。
【請求項3】
前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる請求項2に記載の照明光学装置。
【請求項4】
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節する請求項2に記載の照明光学装置。
【請求項5】
前記波面変調素子に対して光学的に共役な位置に配置され、前記光源から射出された照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項6】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を備え、
前記可変機構が、前記レンズ群を切り替える請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項7】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離を変更可能な液体レンズを含み、
前記可変機構が、焦点距離を変化させるように前記液体レンズを駆動する請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項8】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、ズーム光学系により構成されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項9】
前記ズーム光学系が、相互の間隔を調節可能な正のレンズ群および負のレンズ群を備える請求項8に記載の照明光学装置。
【請求項10】
前記焦点位置に配置された視野絞りを有する請求項1から請求項9のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項1】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記フーリエ変換光学系、前記逆フーリエ変換光学系または前記対物光学系において、該対物光学系による前記照明光の集光位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備える照明光学装置。
【請求項2】
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系または前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備える請求項1に記載の照明光学装置。
【請求項3】
前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる請求項2に記載の照明光学装置。
【請求項4】
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節する請求項2に記載の照明光学装置。
【請求項5】
前記波面変調素子に対して光学的に共役な位置に配置され、前記光源から射出された照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項6】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を備え、
前記可変機構が、前記レンズ群を切り替える請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項7】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、焦点距離を変更可能な液体レンズを含み、
前記可変機構が、焦点距離を変化させるように前記液体レンズを駆動する請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項8】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系の少なくとも一方が、ズーム光学系により構成されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項9】
前記ズーム光学系が、相互の間隔を調節可能な正のレンズ群および負のレンズ群を備える請求項8に記載の照明光学装置。
【請求項10】
前記焦点位置に配置された視野絞りを有する請求項1から請求項9のいずれかに記載の照明光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−123385(P2012−123385A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250689(P2011−250689)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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