説明

照明制御システム

【課題】画像処理に係る処理負荷を軽減しながらも、人体の検出精度を高く維持することができる照明制御システムを提供する。
【解決手段】間引き手段は、画像Imに対し、それぞれ間引き処理後に残る有効画素P1のカメラの視野内での分布が異なる複数の間引きパターンのいずれかを適用して間引き処理を行う。照明器具が消灯しているときには、カメラの視野内への人体の進入を検出する必要があるので、カメラの視野の外周部分を重点的に監視するため、外周部分に集中して有効画素P1が分布する間引きパターンを適用する。一方、照明器具が点灯しているときには、カメラの視野内の人体の存否を検出する必要があるので、カメラの視野の全域に亘って監視するため、カメラの視野全域に有効画素P1が分布する間引きパターンを適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラで撮影された画像を用いて人体を検出して照明器具の点灯制御を行う照明制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどを応用した画像センサによる人体検知技術が様々な分野で用いられている。照明の技術分野においては、天井等に設けられたカメラを用いて人の存否を検出する人体検知部を備え、人体検知部の検出結果に従って照明器具を点灯制御する照明制御システムが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
人体検知部は、たとえばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子を具備するカメラを用いた画像センサと、画像センサで得られた画像から人体の存否を判断する制御部と、カメラの視野内に人がない時点での画像を背景画像として予め記憶する記憶部とを有する。
【0004】
ここにおいて、画像センサは周期的に画像を取得しており、随時、後段の制御部へ画像データを伝送する。制御部では、画像センサから随時伝送される画像データを現在画像として、記憶部内の背景画像と比較することで人体の存否を判断する。その結果、人体が存在すると判断されれば、制御部は照明制御部へ検知信号を伝達し、検知信号を受けた照明制御部は、後段の照明器具に電力を供給して照明器具を点灯させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−238454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人体の検出精度の面では、画像センサから制御部に出力される画像は高精細(つまり高解像度)とすることが望ましいが、画像が高精細になると、画像センサの後段の制御部や記憶部で扱うデータ量が膨大となり、画像処理に係る処理負荷が大きくなる。そのため、制御部の処理速度の高速化や記憶部の大容量化などが必要となって、照明制御システムの規模が大きくなり、当該照明制御システムを一般住宅等へ導入することが困難になるとう問題がある。一方で、画像処理に係る処理負荷を軽減するために、カメラで得られた画像に対し画素の間引き処理を行って画像センサの後段で扱うデータ量を少なくすることも考えられるが、間引き処理により画像の解像度が低くなると、人体の検出精度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、画像処理に係る処理負荷を軽減しながらも、人体の検出精度を高く維持することができる照明制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明では、照明器具と、カメラで撮像した画像から人体の存否を検出する人体検知部と、人体検知部の検出結果によって点灯状態が切り替わるように照明器具を制御する照明制御部とを備え、人体検知部は、前記画像に対して一部の画素のみを人体の検出に用いる有効画素として残すように間引き処理を行う間引き手段と、間引き処理後の有効画素の画素値を用いて人体の存否を判定し照明器具の点灯状態を決定する判定手段とを有し、間引き手段は、それぞれ間引き処理後に残る有効画素のカメラの視野内での分布が異なる複数の間引きパターンのいずれかを適用して間引き処理を行っており、判定手段は、予め定められている間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係に従って、間引き手段で適用する間引きパターンを照明器具の点灯状態とともに切り替えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、間引き手段が、カメラで得られた画像に対して一部の画素のみを人体の検出に用いる有効画素として残すように間引き処理を行うので、間引き処理後の有効画素の画素値を用いて人体の存否を判定する画像処理に係る処理負荷を軽減することができる。ここで、間引き手段は、それぞれ間引き処理後に残る有効画素のカメラの視野内での分布が異なる複数の間引きパターンのいずれかを適用して間引き処理を行っており、適用される間引きパターンは照明器具の点灯状態とともに切り替わる。したがって、照明器具の点灯状態に合わせて、カメラの視野内で重点的に人体の存否を検出する部分を切り替えることができ、必要な部分について重点的に人体の存否を検出するような適用パターンを用いることで、人体の検出精度を高く維持できる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記カメラが人体を上方から撮像可能な位置に設置され、前記照明制御部が、カメラの視野内に人体が存在する場合に前記照明器具が点灯し、人体が存在しない場合に照明器具が消灯するように照明器具を制御しており、前記間引き手段では、照明器具が消灯しているときに、間引き処理後に残る前記有効画素がカメラの視野の外周部分を中心に分布する前記間引きパターンを適用するように、間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係が定められていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、照明器具が消灯しているときには、カメラの視野の外周部分を中心に有効画素を分布させることで、カメラの視野の外周部分における人体の存否を重点的に検出可能になる。ここで、照明器具が消灯しているときにはカメラの視野内に人体が存在しないので、その外周部分で重点的に人体の存否を検出することにより、カメラの視野内に外部から進入する人体を精度よく検出することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記カメラが人体を上方から撮像可能な位置に設置され、前記照明制御部が、カメラの視野内に人体が存在する場合に前記照明器具が点灯し、人体が存在しない場合に照明器具が消灯するように照明器具を制御しており、前記間引き手段では、照明器具が点灯しているときに、間引き処理後に残る前記有効画素がカメラの視野の全域に亘って人体の存否を検出可能な分布となる前記間引きパターンを適用するように、間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係が定められていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、照明器具が点灯しているときには、カメラの視野の全域に亘って人体の存否を検出可能となるように有効画素を分布させることになる。ここで、照明器具が点灯しているときにはカメラの視野内に人体が存在するので、当該人体がカメラの視野内に留まっているか否かを判定できれば足り、間引き処理を行っても人体の存否を精度よく検出することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記カメラが鉛直下方を視野の中心とする向きに設置され、前記間引き手段では、前記照明器具が点灯しているときに、間引き処理後に残る前記有効画素がカメラの視野の外周部分に比べて中央部分で密となる前記間引きパターンを適用するように、間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係が定められていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、照明器具が点灯しているときには、カメラの視野の中央部分を中心に有効画素を分布させることになる。ここで、カメラの視野内では外側の有効画素ほど、鉛直方向に対する視野の傾きが大きくなって広い範囲での人体検知が可能であるから、カメラの視野の中央部分を中心に有効画素を分布させることで、カメラの視野の全域に亘って略均一に人体を検知可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、間引き手段がカメラで得られた画像に対して間引き処理を行うことで画像処理に係る処理負荷を軽減しながらも、間引き手段で適用する間引きパターンは照明器具の点灯状態とともに切り替えられるので、必要な部分について重点的に人体の存否を検出するような適用パターンを用いることで、人体の検出精度を高く維持できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1で用いる画像の説明図である。
【図2】同上の照明制御システムの設置例を示す概略図である。
【図3】同上の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】同上で用いる画像の説明図である。
【図5】同上の要部の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】同上の動作を示すタイムチャートである。
【図7】同上の間引き処理時の動作を示すタイムチャートである。
【図8】同上の人体検出動作を示す概略図である。
【図9】同上の人体検出動作を示す概略図である。
【図10】(a)は同上の人体検出動作を示す概略図、(b)は(a)に対応する画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本実施形態の照明制御システムは、図2に示すように建物の天井に取り付けられた照明器具1と、カメラ23を具備する画像センサ20(図3参照)を用いてカメラ23の視野A1内の人体10の存否を検出する人体検知部2(図3参照)と、人体検知部2の検出結果に従って照明器具1を制御する照明制御部3(図3参照)とを備えている。ここで、画像センサ20は照明器具1と共に建物の天井に取り付けられており、カメラ23が鉛直下方(カメラ23の真下)を視野A1の中心とする向きで設置され、照明器具1の照射領域と略一致するようにカメラ23の視野A1が設定される。つまり、建物内の部屋全体を照明する照明器具1がある場合、この部屋全体がカメラ23の視野A1に収まるように部屋の天井の中央部分にカメラ23を設置することになる。
【0019】
この照明制御システムは、人体検知部2のカメラ23の視野A1内に人が進入したことを検知して照明器具1を自動点灯させる。これにより、カメラ23の視野A1内に人体10が存在する間のみ照明器具1を点灯させることができ、省エネルギ化や防犯といった効果が期待できる。
【0020】
人体検知部2は、図3に示すように、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子を具備するカメラ23を用いた画像センサ20と、DSP(Digital Signal Processor)やイメージプロセッサなど高度な処理が可能な処理装置を主構成とする制御部21と、DRAMなどの揮発性大容量メモリからなる記憶部22とを有する。天井に設けたカメラ23で取得される画像は、人体10を頭上から見下ろすように撮像したイメージとなる。画像センサ20は、カメラ23にて取得されるアナログデータを内部(後述のADコンバータ)でデジタル化し、画像データとして後段の制御部21へ伝送する。
【0021】
本実施形態では、画像センサ20は周期的に(たとえば毎秒30枚程度の周期で)画像を取得しており、随時、制御部21へデータ伝送する。ここで、カメラ23の視野A1内に人体10が存在しない時点での画像を背景画像として予め記憶部22に記憶しておき、制御部21では、画像センサ20から随時伝送される画像データを現在画像として、背景画像と比較することで人体10の存否を検出する。
【0022】
具体的に説明すると、制御部21は、図4に示すように現在画像Im1と背景画像Im2との間で画素ごとの差分をとり、差分画像Im3を生成する。このとき、現在画像Im1と背景画像Im2との間で変化がない画素は、差分画像Im3での画素値(輝度信号値)がゼロとなるが、現在画像Im1と背景画像Im2との間で変化があった画素は、差分画像Im3で一定の画素値を持つ(図中の斜線部)ことになる。図4の例では、現在画像Im1に人体10および背景の物体11が写っており、差分画像Im3においては人体10部分のみが画素値を持つ。なお、ここでは、人体10が存在しない状態で予め撮像された画像を固定的に背景画像Im2として用いるが、これに限らず、時系列で1つ手前の現在画像Im1を新たな背景画像Im2とするように背景画像Im2を逐次更新するようにしてもよい。
【0023】
制御部21では、差分画像Im3において所定値以上の画素値を持つ画素の合計数や連続・隣接する画素集合の大きさなどを求め、これらの値が予め設定された閾値を超えていれば、人体10が存在すると判断して照明制御部3へ検知信号を出力する。検知信号を受けた照明制御部3は、後段の照明器具1に電力を供給して照明器具1を点灯させる。
【0024】
ただし、詳しくは後述するが、本実施形態ではカメラ23で得られた画像に対して間引き処理を施しているので、実際には、図4のようにカメラ23で撮像した画像そのものから体10の存否を判断するのではなく、間引き処理後に残る有効画素の画素値を用いて人体10の存否を判断することになる。すなわち、現在画像Im1、背景画像Im2、差分画像Im3のいずれについても、間引き処理後に残る有効画素以外の画素の画素値は無効なものとして扱われることになる。なお、間引き処理後の有効画素から、所定値以上の画素値を持つ連続・隣接する画素集合の大きさを求める場合、所定値以上の画素値を持つ有効画素の集合を抽出し、当該集合の重心位置などより求めることが可能である。
【0025】
次に、画像センサ20と制御部21との間で行われる信号の授受について、図5のブロック図を参照して説明する。
【0026】
画像センサ20は、カメラ23からのアナログ信号をADコンバータ24にてデジタル信号に変換し、当該デジタル信号をISP(Image Signal Processor)25にて既定のデータフォーマットに適合する画像データとして、後段の制御部21へ伝送する。このとき、画像センサ20から制御部21へは主に垂直同期信号、水平同期信号、ピクセルクロック、画像データの4つの信号が並列的に伝送される。
【0027】
図6にはこれらの信号のタイムチャートを示す。垂直同期信号は図6(a)に示すようにHレベルとLレベルとの2値信号からなり、この信号がHレベルにある一定時間が1画面を構成する画像データを伝送する時間に相当する。水平同期信号は図6(b)に示すようにHレベルとLレベルとの2値信号からなり、この信号がHレベルにある一定時間が画像を構成する水平方向の1行分の画像データを伝送する時間に相当する。たとえば640列×480行の画素からなるVGA(Video Graphics Array)画像を例にとると、水平同期信号がHレベルの間に1行つまり640画素分の画像データが出力され、垂直同期信号がHレベルの間に水平同期信号が480行分繰り返されることになる。なお、図6(c)では、図6(b)の水平同期信号を時間軸方向に引き伸ばして示してある。
【0028】
ピクセルクロックは図6(d)に示すように一定周波数の矩形波であり、このピクセルクロックで画像データを出力するタイミングを決定する。たとえば図6ではYUVフォーマットによる画像データの伝送例を示しており、YUVフォーマットでは図6(e)に示すように各画素が色情報と輝度情報との2つの情報で表されるため、ピクセルクロックの2クロック分で1画素分の画像データを伝送することができる。すなわち、水平同期信号がHレベルの間に640画素分のデータを伝送する場合、水平同期信号がHレベルの間に1280クロックのピクセルクロックを生じさせることになる。このように、ある時点で得られた画像を画像データとして伝送する場合、画像データは、垂直同期信号、水平同期信号、ピクセルクロックの各信号によりそれぞれ画面、行、画素ごとのタイミングをとって制御部21へ伝送されることになる。
【0029】
ところで、本実施形態では、図3に示すように、カメラ23で得られた画像に対して画素の間引き処理を行う間引き手段26と、間引き処理後に残る画素(以下、「有効画素」という)の画素値から人体10の存否を判定し照明器具1の点灯状態を決定する判定手段27との機能を制御部21に設けてある。
【0030】
ここでは画像センサ20から制御部21へのデータ伝送時に画素を間引く間引き処理を行うため、一例として、ピクセルクロックのクロック数をカウントするカウンタを用いている。図7の例では、制御部21内のダウンカウンタを用いており、ピクセルクロックの1クロックごとにカウント値をn=5から1ずつ減少させる。制御部21は、カウントダウン中においては画像センサ20からの一切の画像データを無視し、カウントダウンが完了する(カウント値n=0になる)と、直後のピクセルクロックから1画素分の画像データ(図7中の斜線部)のみ読み込むものとする。制御部21は、カウント値n=0になると再びカウント値n=5に戻して同様の動作を繰り返す。これにより、制御部21は、画素を一定間隔で間引いて(図7の例では4クロック=2画素分ずつ飛ばして)画像データの読み込みを行うことができる。なお、間引かれた画素の画像データは破棄される。
【0031】
しかして、制御部21で扱われる画像データは画像センサ20で得られた画像そのものに比べて画素数の少ないものとなり、制御部21での画像処理に係る処理負荷を軽減することができる。その結果、画像センサ20の後段に設けられている制御部21や記憶部22で扱うデータ量を大幅に少なくすることができ、制御部21の処理速度の高速化や記憶部22の大容量化などに伴い照明制御システムの規模が大きくなることを回避できる。したがって、照明制御システムを一般住宅等へ導入することも容易になり、人体検知部2や照明制御部3の機能を一般家電に組み込むことも可能になる。
【0032】
また、間引き処理の具体的な方法は、上述したようにカウンタを用いた方法に限るものではない。たとえば、有効画素と破棄する画素との画像内での位置(座標)を示すテーブルを予め記憶部22に記憶させておいて、制御部21で当該テーブルに従って画像データの読み込みを行うことで、画像内で任意の画素を不規則に間引いて画像データを読み込むことも可能である。なお、上述のようにカウンタを用いて間引きを行う場合でも、複数のカウンタを組み合わせて用いることにより不規則に間引くことが可能である。
【0033】
照明制御部3は、人体検知部2からの検知信号に従って照明器具1の点灯状態を切り替える。ここでは、照明制御部3は、人体10がカメラ23の視野A1内に存在する間、および人体10がカメラ23の視野A1外に出てから一定のタイマ時間にのみ照明器具1を点灯させるものとする。つまり、カメラ23の視野A1内に人体10が存在しない状態では照明器具1を消灯させておいて、カメラ23の視野A1内に人が進入して人体検知部2が人体10の存在を検知すると速やかに照明器具1を点灯させ、人がカメラ23の視野A1内にいる間は照明器具1を点灯状態に維持する。人がカメラ23の視野A1内から退出し、人体検知部2にて人体10が検知されなくなってからタイマ時間が経過すると、照明制御部3は照明器具1を消灯させる。
【0034】
ところで、本実施形態の照明制御システムにおいては、間引き手段26は、それぞれ間引き処理後に残る有効画素のカメラ23の視野A1内での分布が異なる複数の間引きパターンのいずれかを適用して間引き処理を行っている。さらに、間引き手段26がいずれの間引きパターンを適用するかは、判定手段27が、予め定められている間引きパターンと照明器具1の点灯状態との対応関係に従って照明器具1の点灯状態とともに決定する。これにより、カメラ23の視野A1内での有効画素の分布が照明器具1の点灯状態に合わせて変化することとなり、画素を間引いて画像処理に係る処理負荷を軽減しながらも、人体10検出のための精度を維持することが可能となる。
【0035】
すなわち、人がカメラ23の視野A1内に進入するときには必ずカメラ23の視野A1の外側から進入することになるので、カメラ23の視野A1の中央部分を監視する必要はなく、カメラ23の視野A1の外周部分のみを監視すれば十分である。一方、人がカメラ23の視野A1内に一旦進入してカメラ23の視野A内に停滞している場合は、カメラ23の視野A1の中央付近を重点的に視野A1全域に亘って監視することが効率的である。要するに、人体10の検出精度を高く維持するためにはカメラ23の視野A1全体について高精細とする必要はなく、重点的に監視する部分に有効画素の分布を集中させることで、人体10の検出精度を高くすることができる。
【0036】
そこで、本実施形態では、カメラ23の視野A1内への人の進入を検知するのか、既にカメラ23の視野A1内に居る人の存在を検知するのかによって間引き処理時の有効画素の分布が異なるように、間引きパターンと照明器具1の点灯状態との対応関係を定めてある。つまり、照明器具1が消灯しているときには、カメラ23の視野A1内への人体10の進入を検出する必要があるので、カメラ23の視野A1の外周部分を重点的に監視するため、図1(a)のように画像Imの外周部分に集中して有効画素(図中の斜線部)P1が分布する間引きパターン(以下、「外周重視パターン」という)を適用する。一方、照明器具1が点灯しているときには、カメラ23の視野A1内の人体10の存否を検出する必要があるので、カメラ23の視野A1の中央部分を重点的に視野A1全域に亘って監視するため、図1(b)のように画像Imの中央部分に集中しつつ全体に有効画素P1が分布する間引きパターン(以下、「中央重視パターン」という)を適用する。
【0037】
以下、人体検知部2の制御部21の動作例について図8、9を参照して説明する。なお、図8、9では、カメラ23の視野A1のうち有効画素P1により重点的に監視される範囲(監視対象エリア)を斜線部で表す。
【0038】
人体検知部2の制御部21は、カメラ23の視野A1内に人体10が存在しない状態では照明器具1を消灯させ、図1(a)の外周重視パターンを用いて間引き処理を行う。ここで、図8(a)に示すように人がカメラ23の視野A1内に進入し当該視野A1内で人体10の存在が検知されると、制御部21は、照明制御部3を介して照明器具1を点灯させ、図8(b)に示すように、間引きパターンを図1(b)の中央重視パターンに切り替えて間引き処理を行う。さらに、図9(a)に示すように人がカメラ23の視野A1内から退出し、人体10が検知されなくなってからタイマ時間が経過すると、制御部21は、照明制御部3を介して照明器具1を消灯させ、図9(b)に示すように、間引きパターンを図1(a)の外周重視パターンに切り替えて間引き処理を行う。このように制御部21が照明器具1の点灯状態(点灯・消灯)に応じて間引きパターンを切り替えながら間引き処理を行うことで、間引き処理によって制御部21での処理負荷を軽減しながらも、それぞれの場合に必要な範囲については精度よく人体10検出ができるという利点がある。
【0039】
また、カメラ23の視野A1の全域に亘って均等に間引くことも考えられる。ただし、カメラ23を天井に設けた場合に、図10に示すように1画素当たりの視野P1a’,P1b’,P1c’の広さは、床面においてはカメラ23の視野A1内のどの場所でも大差はないが、カメラ23と床面との間の3次元空間に着目すると、外側の画素ほど広くなる。つまり、外側の画素ほど、鉛直方向に対する視野の傾きが大きくなるため、広い範囲で人体10の存在を検知可能となる。たとえば図10の例では、中央付近の有効画素P1a,P1bが中央の人体10aのみ視野P1a’,P1b’に含むのに対し、最外郭の有効画素P1cは人体10bと人体10cとを視野P1c’に含む。このことからも、カメラ23の視野A1の全域に亘って略均一に人体10の検知精度を維持するためには、上述したように照明器具1の点灯中には間引きパターンを図1(b)の中央重視パターンにして、中央付近の解像度を高めることが望ましい。
【0040】
ところで、上記実施形態では、人体検知部2の検出結果(人体10の存否)に応じて照明器具1の点灯・消灯を切り替える例を示したが、この例に限らず、たとえば人体検知部2の検出結果に応じて照明器具1の調光レベルが変化するように点灯状態を変化させることも可能である。すなわち、照明制御部3が人体検知部2の検出結果に応じて調光信号を生成し、当該調光信号により照明器具1の調光レベルを制御できるようにすることで、たとえば定常時は照明器具1を低い調光レベルで調光点灯させ、人がカメラ23の視野A1内に進入したときに全点灯させることが可能となる。
【0041】
この場合、判定手段27は、照明器具1の点灯状態(調光点灯・全点灯の別)に合わせて間引きパターンを選択する。つまり、照明器具1が調光点灯しているときには、カメラ23の視野A1内への人体H1の進入を検出する必要があるので、間引き手段26では外周重視パターンを適用する。一方、照明器具1が全点灯しているときには、カメラ23の視野A1内の人体H1の存否を検出する必要があるので、間引き手段26では中央重視パターンを適用する。
【0042】
また、照明制御システムを構成する照明器具1は複数台設けられていてもよく、この場合に、人体検知部2はカメラ23の視野A1内の人体10の存否だけでなく、カメラ23の視野A1内での人体10の位置についても画像から検出できるようにすることが望ましい。これにより、照明制御部3ではカメラ23の視野A1内に人体が存在する場合に常に全ての照明器具1を点灯(あるいは全点灯)させるのではなく、人体10の位置に応じて点灯(あるいは全点灯)させる照明器具1を決定することが可能となる。その結果、複数台の照明器具1のうち必要なものだけを点灯(あるいは全点灯)させることができ、省エネルギ化を図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 照明器具
2 人体検知部
3 照明制御部
10 人体
20 画像センサ
21 制御部
23 カメラ
26 間引き手段
27 判定手段
A1 カメラの視野
P1 有効画素
Im 画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具と、カメラで撮像した画像から人体の存否を検出する人体検知部と、人体検知部の検出結果によって点灯状態が切り替わるように照明器具を制御する照明制御部とを備え、人体検知部は、前記画像に対して一部の画素のみを人体の検出に用いる有効画素として残すように間引き処理を行う間引き手段と、間引き処理後の有効画素の画素値を用いて人体の存否を判定し照明器具の点灯状態を決定する判定手段とを有し、間引き手段は、それぞれ間引き処理後に残る有効画素のカメラの視野内での分布が異なる複数の間引きパターンのいずれかを適用して間引き処理を行っており、判定手段は、予め定められている間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係に従って、間引き手段で適用する間引きパターンを照明器具の点灯状態とともに切り替えることを特徴とする照明制御システム。
【請求項2】
前記カメラは人体を上方から撮像可能な位置に設置され、前記照明制御部は、カメラの視野内に人体が存在する場合に前記照明器具が点灯し、人体が存在しない場合に照明器具が消灯するように照明器具を制御しており、前記間引き手段では、照明器具が消灯しているときに、間引き処理後に残る前記有効画素がカメラの視野の外周部分を中心に分布する前記間引きパターンを適用するように、間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係が定められていることを特徴とする請求項1記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記カメラは人体を上方から撮像可能な位置に設置され、前記照明制御部は、カメラの視野内に人体が存在する場合に前記照明器具が点灯し、人体が存在しない場合に照明器具が消灯するように照明器具を制御しており、前記間引き手段では、照明器具が点灯しているときに、間引き処理後に残る前記有効画素がカメラの視野の全域に亘って人体の存否を検出可能な分布となる前記間引きパターンを適用するように、間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係が定められていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記カメラは鉛直下方を視野の中心とする向きに設置され、前記間引き手段では、前記照明器具が点灯しているときに、間引き処理後に残る前記有効画素がカメラの視野の外周部分に比べて中央部分で密となる前記間引きパターンを適用するように、間引きパターンと照明器具の点灯状態との対応関係が定められていることを特徴とする請求項3記載の照明制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−108417(P2011−108417A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260176(P2009−260176)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】