説明

照明用発光ダイオードの制御回路、制御方法及びそれを用いた電子内視鏡装置

【課題】内視鏡画像の色再現性を高めるために、より連続スペクトルに近いスペクトルが得られるように照明用発光ダイオードを制御する。
【解決手段】単色光を発光する少なくとも1つの発光素子を備え、離散的なスペクトルからなる白色光を出射する照明用発光ダイオードと、該白色光によって照明された被写体を撮像する撮像素子とを有するシステムにおいて、前記発光素子の発光を制御する照明用発光ダイオードの制御回路が、発光素子に駆動電流を供給する駆動回路を有し、駆動回路は、撮像素子の蓄積時間内に駆動電流を所定の電流範囲内で且つ所定の一定周期で変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用発光ダイオードの制御回路及び制御方法に関し、特に、電子内視鏡装置に組み込まれる照明用発光ダイオードの制御回路、制御方法及びそれを用いた電子内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入管の先端部に対物光学系及び撮像素子を内蔵した電子内視鏡と、該電子内視鏡から出力される映像信号を処理してモニタに表示可能なビデオ信号を生成する電子内視鏡用プロセッサとを備えた電子内視鏡装置が、体腔内の診断等に広く利用されている。そして、その電子内視鏡装置に組み込まれる光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等比較的消費電力が大きい白色のランプが使用されてきた。
【0003】
近年は、環境保護などの観点から、低消費電力化の要請があり、白色発光ダイオード等の半導体発光素子を光源に用いる電子内視鏡装置も開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−175433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白色発光ダイオード(照明用発光ダイオード)は、一般に、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光ダイオード組み合わせて白色光を得る構成、或いは、特許文献1に記載のように青色発光ダイオードの光を蛍光部材に照射して緑色から赤色の成分を有する蛍光を発生させ、これらを組み合わせて白色光を得る構成が採られている。しかしながら、このような構成により得られる白色光は、人間の視覚上、白色と感じられるものであって、実際は比較的狭いスペクトルの組み合わせ(すなわち、離散的なスペクトルの組み合わせ)による照明光でしかなく、ハロゲンランプやキセノンランプ等の従来の白色光源のような連続したスペクトルとはならない。そして、このような離散的なスペクトルを有する白色光を電子内視鏡のような反射光を利用する用途に用いた場合には、本来患者の体内の組織で反射されるべき波長の光が観察されず、実際とは異なる色で観察されてしまうといった問題が生じる。実際とは異なる色の内視鏡画像が提供された場合、医師は、病変部と健常部とを誤って認識するといった恐れもある。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、内視鏡画像のような反射光によって得られる画像の色再現性を高めるために、より連続スペクトルに近いスペクトルの白色光を出射するように照明用発光ダイオードを制御する制御回路、制御方法及びそれを用いた電子内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の照明用発光ダイオードの制御回路は、単色光を発光する少なくとも1つの発光素子を備え、離散的なスペクトルからなる白色光を出射する照明用発光ダイオードと、該白色光によって照明された被写体を撮像する撮像素子とを有するシステムにおいて、発光素子の発光を制御する照明用発光ダイオードの制御回路であって、発光素子に駆動電流を供給する駆動回路を有し、駆動回路は、撮像素子の蓄積時間内に駆動電流を所定の電流範囲内で且つ所定の一定周期で変化させることを特徴とする。
【0008】
このような構成により、単色光を波長シフトさせながら発光素子を駆動することで、照明用発光ダイオードからは、より連続スペクトルに近いスペクトルの白色光が出射される。被写体を照明する照明光が幅広のスペクトルを有すると、その反射光のスペクトルも幅広のスペクトルとなるため、このような白色光の反射光によって得られる画像は色再現性の高いものとなる。
【0009】
また、単色光の波長と発光強度は、所定の電流範囲内の駆動電流によって変化し、駆動回路は、所定の電流範囲内の駆動電流によって変化する単色光の各波長において、発光強度と発光時間とによる積分値が略一定となるように該発光時間を制御する構成とすることができる。また、このような構成においては、駆動回路は、駆動電流が少なくなるにつれて、発光時間が長くなるように発光時間を制御することが好ましい。このような構成により、波長シフトの範囲内の各波長において発光強度がフラットとなり、理想的な白色光源に近づけることが可能となる。
【0010】
また、駆動回路は、所定の一定周期が蓄積時間の整数分の1となるように発光時間を制御することが好ましい。
【0011】
また、駆動回路は、駆動電流をステップ状に変化させる構成としてもよく、また、駆動回路は、駆動電流を連続的に変化させる構成としてもよい。
【0012】
また、駆動回路は、撮像素子の転送時間に同期して、駆動電流をゼロとする構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、撮像素子の転送時間に撮像素子を遮光する必要がなくなる。
【0013】
また、発光素子は、主に赤色の成分からなる単色光を発光する赤色発光ダイオードと、主に緑色の成分からなる単色光を出射する緑色発光ダイオードと、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードであり、駆動回路は、赤色発光ダイオードに駆動電流を供給する第1の電流供給回路と、緑色発光ダイオードに駆動電流を供給する第2の電流供給回路と、青色発光ダイオードに駆動電流を供給する第3の電流供給回路とを有する構成とすることができる。
【0014】
また、発光素子は、主に赤色の成分からなる単色光を発光する赤色発光ダイオードと、主に緑色の成分からなる単色光を発光する緑色発光ダイオードと、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードと、主にシアン色の成分からなる単色光を発光するシアン色発光ダイオードであり、駆動回路は、赤色発光ダイオードに駆動電流を供給する第1の電流供給回路と、緑色発光ダイオードに駆動電流を供給する第2の電流供給回路と、青色発光ダイオードに駆動電流を供給する第3の電流供給回路と、シアン色発光ダイオードに駆動電流を供給する第4の電流供給回路とを有する構成とすることができる。
【0015】
また、発光素子は、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードであり、照明用発光ダイオードは、青色の単色光が入射することによって緑色から赤色の成分を有する蛍光を発する蛍光体を備え、駆動回路は、青色発光ダイオードに駆動電流を供給する第1の電流供給回路を有する構成とすることができる。
【0016】
また、別の観点からは、本発明の照明用発光ダイオードの制御方法は、単色光を発光する少なくとも1つの発光素子を備え、離散的なスペクトルからなる白色光を出射する照明用発光ダイオードと、該白色光によって照明された被写体を撮像する撮像素子とを有するシステムにおいて、発光素子の発光を制御する照明用発光ダイオードの制御方法であって、発光素子に供給される駆動電流を撮像素子の蓄積時間内に所定の電流範囲内で且つ所定の一定周期で変化させることを特徴とする。
【0017】
また、さらに別の観点からは、本発明の電子内視鏡装置は、体腔内の被写体を撮像素子によって撮像し該撮像素子からの内視鏡画像を映像信号として出力する電子内視鏡と、モニタと、映像信号を処理してモニタに表示可能なビデオ信号を生成する電子内視鏡用プロセッサとを備えた電子内視鏡装置であって、単色光を発光する少なくとも1つの発光素子を備え、離散的なスペクトルからなる白色光を出射し、被写体を照明する照明用発光ダイオードと、発光素子に駆動電流を供給する駆動回路とを有し、駆動回路は、撮像素子の蓄積時間に同期して、該蓄積時間内に駆動電流を所定の電流範囲内で且つ所定の一定周期で変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の照明用発光ダイオードの制御回路及び制御方法によれば、より連続スペクトルに近いスペクトルの白色光が得られる。そして、これらを電子内視鏡装置等の反射光を利用する用途に適用することにより、色再現性の高い画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る電子内視鏡装置1のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る電子内視鏡装置1に内蔵されるLED208とLED駆動回路206の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本実施形態の電子内視鏡装置1に内蔵されるLED208の発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】図4は、本実施形態の電子内視鏡装置1に内蔵される青色発光ダイオード208cの順方向電流と波長との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本実施形態の電子内視鏡装置1に内蔵される青色発光ダイオード208cの波長シフトを説明する発光スペクトルのグラフである。
【図6】図6は、本実施形態の電子内視鏡装置1で実行される青色発光ダイオード208cの波長シフト駆動について説明するタイミングチャートである。
【図7】図7は、本実施形態の電子内視鏡装置1で実行される波長シフト駆動の変形例について説明するタイミングチャートである。
【図8】図8は、本実施形態の電子内視鏡装置1で実行される波長シフト駆動の変形例について説明するタイミングチャートである。
【図9】図9は、本実施形態の電子内視鏡装置1で実行される波長シフト駆動の変形例について説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の電子内視鏡装置1のブロック図である。また、図2は、本実施形態の電子内視鏡装置1に内蔵される発光ダイオード(LED)208とLED駆動回路206の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態の電子内視鏡装置1は、電子内視鏡100と、電子内視鏡用プロセッサ200と、モニタ300とを有する。
【0021】
プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、電子内視鏡装置1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡装置1内の各種回路に出力する。
【0022】
LED208は、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b、青色発光ダイオード208cより構成され(図2)、発光ダイオードそれぞれにLED駆動回路206から電流が供給されることによって、電流に応じた光量の白色光を出射する。LED208から出射された白色光(照明光)は、集光レンズ210によって集光されつつ絞り212を介して適正な光量に制限されて、LCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射する。
【0023】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤ等の伝達機構を介してモータ214が機械的に連結している。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216の制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214の駆動によって開度が変化するように構成されており、LED208から出射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218の輝度調節操作に応じて設定変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
【0024】
LED駆動回路206は、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cを駆動するための電圧―電流変換回路(V−I変換回路)206a、206b、206cによって構成され(図2)、システムコントローラ202からV−I変換回路206a、206b、206cに入力される電圧(LED駆動電圧)に応じた電流をLED208(すなわち、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208c)に供給する。詳細は後述するが、システムコントローラ202は、LED駆動回路206を制御し、モニタ300に表示される映像が適正な明るさとなるようにLED208を駆動すると共に、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cのそれぞれから出射される光の波長がシフトするように駆動する(波長シフト駆動)。
【0025】
LCB102の入射端に入射した照明光は、LCB102内を全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB102内を伝播した照明光は、電子内視鏡100の先端に配されたLCB102の出射端から出射する。LCB102の出射端から出射した照明光は、配光レンズ104を介して被写体を照明する。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0026】
固体撮像素子108は、IR(InfraRed)カットフィルタ108a、ベイヤ配列カラーフィルタ108bの各種フィルタが受光面前面に配置された単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた撮像信号に変換する。変換された撮像信号は、ドライバ信号処理回路112に入力されAD変換、信号増幅等の処理後、信号処理回路220に出力される。なお、別の実施形態では、固体撮像素子108は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。
【0027】
ドライバ信号処理回路112は、メモリ114にアクセスして電子内視鏡100の固有情報を読み出す。電子内視鏡100の固有情報には、例えば固体撮像素子108の画素数や感度、対応可能なレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路112は、メモリ114から読み出した固有情報をシステムコントローラ202に出力する。
【0028】
システムコントローラ202は、電子内視鏡100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続中の電子内視鏡100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。なお、システムコントローラ202は、電子内視鏡100の型番と、この型番の電子内視鏡100に適した制御情報とを対応付けたテーブルを有した構成としてもよい。この場合、システムコントローラ202は、対応テーブルの制御情報を参照して、プロセッサ200に接続中の電子内視鏡100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0029】
タイミングコントローラ204は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従って、ドライバ信号処理回路112にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路112は、タイミングコントローラ204から供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0030】
信号処理回路220は、ドライバ信号処理回路112から出力されるデジタルの画像データを画像メモリ222に記憶する。また、信号処理回路220は、画像メモリ222に記憶された画像データを所定の(すなわち、モニタ300の水平及び垂直同期周波数に対応した)タイミングで読み出し、読み出した画像データに所定の画像処理(例えば、エンハンス処理など)を行い、画像処理が行われた後の画像データを、所定の形式のビデオ信号(例えば、NTSC形式)に変換し、モニタ300に出力する。この結果、電子内視鏡100の固体撮像素子108によって撮像された被写体の内視鏡画像が、モニタ300に表示されることになる。なお、上述の信号処理回路220の各動作は、タイミングコントローラ204及びシステムコントローラ202の制御によって行われる。
【0031】
次に、本実施形態の電子内視鏡装置1で実行されるLED208の波長シフト駆動について説明する。図3は、本実施形態の電子内視鏡装置1のLED208の発光スペクトルを示すグラフである。
【0032】
上述したように、LED208は、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cにより構成されているため、LED208の発光スペクトルは、波長約460nmにピークを有する青色発光ダイオード208cのスペクトルと、波長約560nmにピークを有する緑色発光ダイオード208bのスペクトルと、波長約610nmにピークを有する赤色発光ダイオード208aのスペクトルとが組み合わされた離散的なスペクトルとなる。そして、システムコントローラ202が、赤色発光ダイオード208aから出射される赤色光(R)、緑色発光ダイオード208bから出射される緑色光(G)及び青色発光ダイオード208cから出射される青色光(B)の発光強度が略等しくなるように(すなわち、R、G、Bの発光強度が1:1:1となるように)LED駆動回路206を制御することによって、LED208からは所定光量の白色光が出射される。
【0033】
次に、本実施形態の青色発光ダイオード208cの特性を示し、波長シフトについて、図4と図5を参照しながら説明する。なお、本実施形態の赤色発光ダイオード208a及び緑色発光ダイオード208bも青色発光ダイオード208cと同様の特性を示し、波長シフトするが、説明の重複を避けるため、以下、青色発光ダイオード208cについてのみ説明する。図4は、本実施形態の青色発光ダイオード208cの順方向電流と波長との関係を示すグラフである。また、図5は、本実施形態の青色発光ダイオード208cの波長シフトを説明する発光スペクトルのグラフである。なお、図4のAの動作点における発光スペクトルが図5のAのスペクトルに対応し、図4のBの動作点における発光スペクトルが図5のBのスペクトルに対応している。
【0034】
LED駆動回路206から青色発光ダイオード208cに供給される駆動電流(順方向電流)が増加すると、発光強度が増加すると共に、発光波長は高波長から低波長にシフトする。本実施形態の青色発光ダイオード208cにおいては、順方向電流が2mA(A)から35mA(B)まで変化することにより、波長は472nm(A)から469nm(B)に変化することとなる。これを波長と発光強度の関係で示したのが図5であり、順方向電流が2mA(A)から35mA(B)まで変化すると、波長が472nm(A)から469nm(B)に変化し、発光強度が大きくなるのが分かる。
【0035】
本発明は、このように各発光ダイオードに供給される駆動電流によって波長がシフトすることを利用するものである。すなわち、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cの発光ダイオードに供給される駆動電流を変化(変調)させることによって、R、G、Bの各光の波長をシフトさせ、離散的な発光スペクトルを連続スペクトルに近づけるように各発光ダイオードを駆動(波長シフト駆動)させるものである。
【0036】
図6は、本実施形態の電子内視鏡装置1で実行される青色発光ダイオード208cの波長シフト駆動について説明するタイミングチャートである。図6の横軸は時間であり、固体撮像素子108の蓄積時間及び転送時間との関係を示している。また、縦軸は青色発光ダイオード208cに供給されるLED駆動電流を示している。上述したように、LED208を構成する赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cは、システムコントローラ202からLED駆動回路206に入力されるLED駆動電圧に応じたLED駆動電流がLED駆動回路206から各発光ダイオードに供給されることによって駆動される。なお、本実施形態の赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cは、同様に駆動されるため、以下、青色発光ダイオード208cについてのみ説明する。
【0037】
本実施形態においては、固体撮像素子108はCCDであり、1フレームの撮像時間(1フレーム時間)内に、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積する蓄積時間と、蓄積された電荷を転送するための転送時間を有する。本実施形態においては、固体撮像素子108の転送時間に固体撮像素子108の受光面上の各画素に光が入射しないように、システムコントローラ202がLED駆動回路206を制御し、青色発光ダイオード208cのLED駆動電流をゼロにする。そして、固体撮像素子108の蓄積時間においては、システムコントローラ202はLED駆動回路206を制御し、青色発光ダイオード208cのLED駆動電流が階段状に徐々に増加するように駆動する。LED駆動電流が階段状に徐々に増加することによって、上述したように、青色発光ダイオード208cの発光波長は階段状に徐々に短くなり、発光強度は階段状に徐々に大きくなることとなる。ここで、固体撮像素子108は蓄積時間内に入射される光量を電荷として蓄積するため、蓄積される電荷は蓄積時間内に入射される光量の積分値(すなわち、エネルギー)であると考えられる。そこで、本実施形態においては、蓄積時間内にLED駆動電流を階段状に徐々に増加させることによって青色発光ダイオード208cから出射される各波長の光が、波長毎に同一のエネルギーとなるように制御している。すなわち、LED駆動電流が低い場合(すなわち、発光波長が長い場合)、比較的長時間の発光を行い、LED駆動電流が高くなるにつれて(すなわち、発光波長が短くなるにつれて)、比較的短時間の発光となるように制御される。この結果、発光波長が変化する範囲内において、発光エネルギーとしてフラットな特性を得ることが可能となる。なお、青色発光ダイオード208cから出射される各波長の光と発光時間との関係は、例えば、LED駆動電流と発光時間との関係を予めテーブルとして不図示のメモリに格納しておき、波長シフト駆動時にこのテーブルを参照することによって行われ、蓄積時間内に入射される光量の積分値は、モニタ300に表示される映像が適正な明るさとなるような光量に制御される。
【0038】
以上のような、波長シフト駆動を赤色発光ダイオード208a及び緑色発光ダイオード208bについても同様に行うことにより、図3に示した各スペクトルは、それぞれ幅広のスペクトルを有することとなるため、図3の離散的な発光スペクトルは、連続スペクトルに近づく(すなわち、各スペクトル間の溝が埋まる)こととなる。LCB102の出射端から出射し被写体を照明する照明光が幅広のスペクトルを有すると、患者の体内の組織で反射された反射光のスペクトルも幅広のスペクトルとなるため、患者の体内の組織の色が正常に観察されることとなる。すなわち、本実施形態の電子内視鏡装置1によって取得される内視鏡画像は、色再現性が高いものとなり、医師が病変部と健常部とを誤って認識するといった恐れもなくなる。
【0039】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。例えば、本実施形態の波長シフト駆動においては、固体撮像素子108の蓄積時間内にLED駆動電流を階段状に徐々に増加させる構成としたが、この構成に限定されるものではない。上述のように、固体撮像素子108に蓄積される電荷は蓄積時間内に入射される光量の積分値(すなわち、エネルギー)であると考えられるため、例えば、図7に示すように、蓄積時間内で所定の一定周期で複数回にわたってLED駆動電流を階段状に変化させる構成としてもよい。このような構成にすれば、1フレーム内で複数回の波長シフトが行われるため、被写体が声帯のように振動(移動)しているものである場合でもフレーム毎の色の違いが抑えられる。
【0040】
また、波長シフト駆動においては、LED駆動電流を階段状に徐々に増加させる構成として説明したが、階段状である必要はなく、アナログ的に徐々に増加する構成としてもよく、また、LED駆動電流を増減させる構成としてもよい。また、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cを駆動するプロファイル(LED駆動電流の波形)は、同一である必要はなく、各LEDのスペクトルの光量の積分値が固体撮像素子108の蓄積時間内において所定の値となれば、それぞれ異なるプロファイルで駆動してもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、固体撮像素子108の転送時間においてLED208を消灯させる構成としたが、例えば、固体撮像素子108の前面に図示しないシャッタ機構等があり、該シャッタ機構等によって転送時間中に遮光される構成である場合には、図8又は図9の構成のように、転送時間中もLED208を発光させる構成とすることもできる。また、固体撮像素子108の転送時間においてLED208が発光しない程度にバイアス電流を流す構成とすることも可能である。このような構成にすれば、LED208の動作温度の変化が少なくなりLED駆動電流と発光強度の関係が安定するため、より正確に発光強度の制御を行うことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態においては、LED208は、赤色発光ダイオード208a、緑色発光ダイオード208b及び青色発光ダイオード208cにより構成されるとしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードからの光が入射することによって緑色から赤色の成分を有する蛍光を発する蛍光部材とを備え、青色発光ダイオードからの光と蛍光部材からの蛍光との組み合わせによって白色光を得る構成のLEDであってもよい。また、LED208は、シアン色発光ダイオードを更に備え、4色の光の組み合わせによって白色光を得る構成のLEDであってもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、LED208がLED駆動回路206から供給されるLED駆動電流によって駆動される構成としたが、この構成に限定されるものではなく、LED208はシステムコントローラ202から供給されるLED駆動電圧によって駆動される構成としてもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、LED208が電子内視鏡用プロセッサ200に内蔵される構成として説明したが、LED208が電子内視鏡100に内蔵される構成としてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、電子内視鏡装置1に用いられるLED208について波長シフト駆動する構成としたが、この用途に限定されるものではなく、本実施形態の波長シフト駆動は、撮像素子で被写体を観察するシステムに幅広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 電子内視鏡装置
100 電子内視鏡
200 電子内視鏡用プロセッサ
202 システムコントローラ
206 LED駆動回路
208 発光ダイオード(LED)
208a 赤色発光ダイオード
208b 緑色発光ダイオード
208c 青色発光ダイオード
212 絞り
214 モータ
216 ドライバ
220 信号処理回路
300 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色光を発光する少なくとも1つの発光素子を備え、離散的なスペクトルからなる白色光を出射する照明用発光ダイオードと、該白色光によって照明された被写体を撮像する撮像素子とを有するシステムにおいて、前記発光素子の発光を制御する照明用発光ダイオードの制御回路であって、
前記発光素子に駆動電流を供給する駆動回路を有し、
前記駆動回路は、前記撮像素子の蓄積時間内に前記駆動電流を所定の電流範囲内で且つ所定の一定周期で変化させることを特徴とする照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項2】
前記単色光の波長と発光強度は、前記所定の電流範囲内の前記駆動電流によって変化し、
前記駆動回路は、前記所定の電流範囲内の前記駆動電流によって変化する前記単色光の各波長において、前記発光強度と発光時間とによる積分値が略一定となるように該発光時間を制御することを特徴とする請求項1に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記駆動電流が少なくなるにつれて、前記発光時間が長くなるように前記発光時間を制御することを特徴とする請求項2に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記所定の一定周期が前記蓄積時間の整数分の1となるように前記発光時間を制御することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項5】
前記駆動回路は、前記駆動電流をステップ状に変化させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記駆動電流を連続的に変化させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記撮像素子の転送時間に同期して、前記駆動電流をゼロとすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項8】
前記発光素子は、主に赤色の成分からなる単色光を発光する赤色発光ダイオードと、主に緑色の成分からなる単色光を発光する緑色発光ダイオードと、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードであり、
前記駆動回路は、前記赤色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第1の電流供給回路と、前記緑色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第2の電流供給回路と、前記青色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第3の電流供給回路と、を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項9】
前記発光素子は、主に赤色の成分からなる単色光を発光する赤色発光ダイオードと、主に緑色の成分からなる単色光を発光する緑色発光ダイオードと、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードと、主にシアン色の成分からなる単色光を発光するシアン色発光ダイオードであり、
前記駆動回路は、前記赤色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第1の電流供給回路と、前記緑色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第2の電流供給回路と、前記青色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第3の電流供給回路と、シアン色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第4の電流供給回路と、を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項10】
前記発光素子は、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードであり、
前記照明用発光ダイオードは、前記青色の単色光が入射することによって緑色から赤色の成分を有する蛍光を発する蛍光体を備え、
前記駆動回路は、前記青色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第1の電流供給回路を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御回路。
【請求項11】
単色光を発光する少なくとも1つの発光素子を備え、離散的なスペクトルからなる白色光を出射する照明用発光ダイオードと、該白色光によって照明された被写体を撮像する撮像素子とを有するシステムにおいて、前記発光素子の発光を制御する照明用発光ダイオードの制御方法であって、
前記発光素子に供給される駆動電流を前記撮像素子の蓄積時間内に所定の電流範囲内で且つ所定の一定周期で変化させることを特徴とする照明用発光ダイオードの制御方法。
【請求項12】
前記単色光の波長と発光強度は、前記所定の電流範囲内の前記駆動電流によって変化し、
前記所定の電流範囲内の前記駆動電流によって変化する前記単色光の各波長において、前記発光強度と発光時間とによる積分値が略一定となるように該発光時間を制御することを特徴とする請求項11に記載の照明用発光ダイオードの制御方法。
【請求項13】
前記駆動電流が少なくなるにつれて、前記発光時間が長くなるように前記発光時間を制御することを特徴とする請求項12に記載の照明用発光ダイオードの制御方法。
【請求項14】
前記所定の一定周期が前記蓄積時間の整数分の1となるように前記発光時間を制御することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の照明用発光ダイオードの制御方法。
【請求項15】
前記駆動電流をステップ状に変化させることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御方法。
【請求項16】
前記駆動電流を連続的に変化させることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御方法。
【請求項17】
前記撮像素子の転送時間に同期して、前記駆動電流をゼロとすることを特徴とする請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の照明用発光ダイオードの制御方法。
【請求項18】
体腔内の被写体を撮像素子によって撮像し該撮像素子からの内視鏡画像を映像信号として出力する電子内視鏡と、モニタと、前記映像信号を処理して前記モニタに表示可能なビデオ信号を生成する電子内視鏡用プロセッサと、を備えた電子内視鏡装置であって、
単色光を発光する少なくとも1つの発光素子を備え、離散的なスペクトルからなる白色光を出射し、前記被写体を照明する照明用発光ダイオードと、
前記発光素子に駆動電流を供給する駆動回路と、
を有し、
前記駆動回路は、前記撮像素子の蓄積時間に同期して、該蓄積時間内に前記駆動電流を所定の電流範囲内で且つ所定の一定周期で変化させることを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項19】
前記単色光の波長と発光強度は、前記所定の電流範囲内の前記駆動電流によって変化し、
前記駆動回路は、前記所定の電流範囲内の前記駆動電流によって変化する前記単色光の各波長において、前記発光強度と発光時間とによる積分値が略一定となるように該発光時間を制御することを特徴とする請求項18に記載の電子内視鏡装置。
【請求項20】
前記駆動回路は、前記駆動電流が少なくなるにつれて、前記発光時間が長くなるように前記発光時間を制御することを特徴とする請求項19に記載の電子内視鏡装置。
【請求項21】
前記駆動回路は、前記所定の一定周期が前記蓄積時間の整数分の1となるように前記発光時間を制御することを特徴とする請求項19又は請求項20に記載の電子内視鏡装置。
【請求項22】
前記駆動回路は、前記駆動電流をステップ状に変化させることを特徴とする請求項18から請求項21のいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項23】
前記駆動回路は、前記駆動電流を連続的に変化させることを特徴とする請求項18から請求項21のいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項24】
前記駆動回路は、前記撮像素子の転送時間に同期して、前記駆動電流をゼロとすることを特徴とする請求項18から請求項23のいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項25】
前記発光素子は、主に赤色の成分からなる単色光を発光する赤色発光ダイオードと、主に緑色の成分からなる単色光を発光する緑色発光ダイオードと、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードであり、
前記駆動回路は、前記赤色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第1の電流供給回路と、前記緑色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第2の電流供給回路と、前記青色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第3の電流供給回路と、を有することを特徴とする請求項18から請求項24のいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項26】
前記発光素子は、主に赤色の成分からなる単色光を発光する赤色発光ダイオードと、主に緑色の成分からなる単色光を発光する緑色発光ダイオードと、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードと、主にシアン色の成分からなる単色光を発光するシアン色発光ダイオードであり、
前記駆動回路は、前記赤色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第1の電流供給回路と、前記緑色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第2の電流供給回路と、前記青色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第3の電流供給回路と、シアン色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第4の電流供給回路と、を有することを特徴とする請求項18から請求項24のいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項27】
前記発光素子は、主に青色の成分からなる単色光を発光する青色発光ダイオードであり、
前記照明用発光ダイオードは、前記青色の単色光が入射することによって緑色から赤色の成分を有する蛍光を発する蛍光体を備え、
前記駆動回路は、前記青色発光ダイオードに前記駆動電流を供給する第1の電流供給回路を有することを特徴とする請求項18から請求項24のいずれか一項に記載の電子内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−223376(P2012−223376A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93783(P2011−93783)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】