説明

照明装置および表示装置

【課題】光学素子の過大な振動振幅に起因した悪影響を回避しつつ、干渉パターンの発生を低減することが可能な照明装置および表示装置を提供する。
【解決手段】照明装置は、レーザ光源を含む光源部と、レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子と、この光学素子を振動させる駆動部と、この駆動部による駆動動作の際に、起動期間における光学素子の振動振幅値がその後の定常動作期間における振動振幅値以下となるように、駆動動作を制御する制御部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光を含む照明光を出射する照明装置、およびそのような照明光を用いて映像表示を行う表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ(投射型表示装置)の主要部品の1つである光学モジュールは、一般に、光源を含む照明光学系(照明装置)と、光変調素子を含む投射光学系(投影光学系)とから構成されている。このようなプロジェクタの分野では、近年、マイクロプロジェクタと呼ばれる小型(手のひらサイズ)かつ軽量な携帯型プロジェクタが普及し始めている。このマイクロプロジェクタでは、従来、照明装置の光源として主にLED(Light Emitting Diode)が使用されている。
【0003】
一方で、最近では照明装置の新たな光源として、レーザが注目されている。例えば、赤(R),緑(G),青(B)の3原色のレーザ光を用いたプロジェクタとして、従来から気体レーザを用いたものが知られている。このように、レーザを光源として用いたプロジェクタは、例えば特許文献1において提案されている。光源としてレーザを用いることにより、色再現範囲が広く、かつ消費電力も小さいプロジェクタを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−301164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ光のようなコヒーレント光を拡散面に照射すると、通常の光では見られない斑点上の模様が観察される。このような模様は、スペックル模様と呼ばれている。このスペックル模様は、拡散面の各点で散乱された光が、面上の微視的な凹凸に応じたランダムな位相関係で干渉し合うために生じるものである。
【0006】
ここで、上記したレーザを光源として用いたプロジェクタでは、スクリーン上において、このようなスペックル模様(干渉パターン)が表示画像に重畳される。このため、人間の眼には強度のランダムノイズとして認識され、表示画質が低下してしまうことになる。
【0007】
そこで、レーザを光源として用いたプロジェクタにおいて、このようなスペックル模様(スペックルノイズ)の発生を低減する手法として、プロジェクタ内でレーザ光が通過する所定の光学素子やスクリーンを微小振動させるようにしたものが提案されている。一般に、人間の眼および脳は、約20〜50ms内の画像のちらつきは判別できない。つまり、その時間内の画像は眼の中で積分され、平均化されている。したがって、この時間内に、スクリーン上において独立のスペックルパターンを多数重量させることにより、スペックルノイズを人間の眼の中で気にならない程度に平均化しようとするものである。この手法を用いることにより、レーザ光に起因した干渉パターンの発生を低減することが可能となる。
【0008】
ここで、このような光学素子の振動の際に、その振幅(振動振幅値)が過大となる現象が生じてしまう場合がある。そのような場合、光学素子が周囲の部材(例えば、光学素子の保持部材や装置の筺体など)に衝突してしまうことから、異音が発生したり、光学素子やその周囲の部材等が故障してしまうなどのおそれがある。このことから、光学素子の過大な振動振幅に起因した悪影響を抑えつつ、上記した干渉パターンの発生を低減することを可能とする手法の提案が望まれる。
【0009】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光学素子の過大な振動振幅に起因した悪影響を回避しつつ、干渉パターンの発生を低減することが可能な照明装置および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の照明装置は、レーザ光源を含む光源部と、レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子と、この光学素子を振動させる駆動部と、この駆動部による駆動動作の際に、起動期間における光学素子の振動振幅値がその後の定常動作期間における振動振幅値以下となるように、駆動動作を制御する制御部とを備えたものである。
【0011】
本開示の表示装置は、照明光を出射する上記本開示の照明装置と、照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子とを備えたものである。
【0012】
本開示の照明装置および表示装置では、レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子が振動することにより、レーザ光に起因した干渉パターンの発生が低減する。また、起動期間における光学素子の振動振幅値がその後の定常動作期間における振動振幅値以下となるように、光学素子に対する駆動動作(光学素子の振動動作)が制御される。これにより、光学素子の起動期間において、過渡応答現象に起因した過大な振動振幅が抑えられる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の照明装置および表示装置によれば、レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子を振動させると共に、この光学素子に対する駆動動作の際に、起動期間における光学素子の振動振幅値がその後の定常動作期間における振動振幅値以下となるようにしたので、起動期間において過渡応答現象に起因した過大な振動振幅を抑えることができる。よって、光学素子の過大な振動振幅に起因した悪影響(例えば、異音が発生したり、光学素子やその周囲の部材等が故障してしまうおそれなど)を回避しつつ、干渉パターンの発生を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の概略構成を表す図である。
【図2】図1に示した光学装置の詳細構成例を表す斜視図である。
【図3】図1に示した光学装置の他の詳細構成例を表す斜視図である。
【図4】光学素子に対する駆動部の要部構成例を制御部とともに表す模式図である。
【図5】比較例1に係る表示装置の全体構成を表す斜視図である。
【図6】被投射面上で発生する干渉パターンの一例を表す図である。
【図7】フレミング左手の法則の概要を説明するための模式図である。
【図8】固有振動周波数と光学素子の振動の際の振動振幅値および位相との関係の一例を表す特性図である。
【図9】比較例2に係る駆動電流の振幅値および光学素子の振動振幅値と動作時間との関係を表すタイミング波形図である。
【図10】第1の実施の形態に係る駆動電流の振幅値および光学素子の振動振幅値と動作時間との関係の一例を表すタイミング波形図である。
【図11】第2の実施の形態に係る駆動周波数の制御手法の概要を説明するための特性図である。
【図12】第2の実施の形態に係る駆動電流の振幅値、駆動周波数および光学素子の振動振幅値と動作時間との関係の一例を表すタイミング波形図である。
【図13】第2の実施の形態に係る駆動電流の振幅値、駆動周波数および光学素子の振動振幅値と動作時間との関係の他の例を表すタイミング波形図である。
【図14】変形例に係る光学素子の振動振幅値の制御手法例を模式的に表すタイミング波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(信号振幅値を制御して、光学素子の振動振幅値を制御する例)
2.第2の実施の形態(信号周波数を制御して、光学素子の振動振幅値を制御する例)
3.第1,第2の実施の形態に共通の変形例(振動振幅値を制御する他の手法の例)
4.その他の変形例
【0016】
<第1の実施の形態>
[表示装置1の概略構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の概略構成(断面構成)を斜視図で表すものである。表示装置1は、図示しないスクリーン(被投射面)に対して映像(映像光)を投射する投射型の表示装置である。この表示装置1は、筐体10内に、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、コリメータレンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学装置14およびフライアイレンズ15を備えている。表示装置1はまた、偏光ビームスプリッタ(PBS;Polarization Beam Splitter)16、反射型液晶素子17、投射レンズ18(投射光学系)および制御部19を備えている。これらのうち、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、コリメータレンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学装置14、フライアイレンズ15および制御部19が、本開示の一実施の形態に係る照明装置(照明装置2)を構成している。なお、図中に示したZ1は光軸を表している。
【0017】
赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、赤色レーザ光、緑色レーザ光または青色レーザ光を発する3種類の光源である。これらのレーザ光源により光源部が構成されており、ここでは、これら3種類の光源がいずれもレーザ光源となっている。赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば半導体レーザや固体レーザ等からなる。
【0018】
コリメータレンズ12R,12G,12Bは、赤色レーザ11Rから出射された赤色レーザ光、緑色レーザ11Gから出射された緑色レーザ光、青色レーザ11Bから出射されたレーザ光をそれぞれ、コリメートして平行光とするためのレンズである。
【0019】
ダイクロイックプリズム131は、コリメータレンズ12Bにより平行光とされた青色レーザ光を選択的に透過させる一方、コリメータレンズ12Rにより平行光とされた赤色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。ダイクロイックプリズム132は、ダイクロイックプリズム131から出射した青色レーザ光および赤色レーザ光を選択的に透過させる一方、コリメータレンズ12Gにより平行光とされた緑色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。これにより、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光に対する色合成(光路合成)がなされるようになっている。
【0020】
光学装置14は、上記した光源部(赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11B)と、反射型液晶素子17との間(ここでは、ダイクロイックプリズム132とフライアイレンズ15との間の光路上)に配置されている。この光学装置14は、後述するスペックルノイズ(干渉パターン)を低減するための光学素子(光学素子140)を有するものである。なお、この光学装置14の詳細構成については後述する(図2,図3)。
【0021】
フライアイレンズ15は、基板上に複数のレンズが2次元配置されたものであり、これらのレンズの配列に応じて入射光束を空間的に分割して出射させるものである。これにより、このフライアイレンズ15からの出射光が均一化され(面内の強度分布が均一化され)、照明装置2からの照明光として出射されるようになっている。
【0022】
偏光ビームスプリッタ16は、特定の偏光(例えばp偏光)を選択的に透過させると共に、他方の偏光(例えばs偏光)を選択的に反射させる光学部材である。これにより、フライアイレンズ15から出射した照明光(例えばs偏光)が選択的に反射されて反射型液晶素子17へ入射すると共に、この反射型液晶素子17から出射した映像光(例えばp偏光)が選択的に透過し、投射レンズ18へ入射するようになっている。
【0023】
反射型液晶素子17は、光源部(赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11B)からの光(照明装置2からの照明光)を、図示しない表示制御部から供給される映像信号に基づいて変調しつつ反射させることにより、映像光を出射する光変調素子である。このとき、反射型液晶素子17では、入射時と出射時とにおける各偏光(例えば、s偏光またはp偏光)が異なるものとなるように、反射がなされる。このような反射型液晶素子17は、例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の液晶素子からなる。
【0024】
投射レンズ18は、反射型液晶素子17により変調された光(映像光)を、図示しないスクリーンに対して投射(拡大投射)するためのレンズである。これにより、投射光Loutがスクリーン上へ投射されるようになっている。
【0025】
制御部19は、光学装置14内の後述する光学素子140(干渉パターンの発生を低減するための光学素子)に対する駆動部による駆動動作を制御するものである。具体的には、この駆動動作の際に、光学素子140の起動期間(後述する駆動期間T0)における光学素子140の振動振幅値(後述する振動振幅値Aact)が、その後の定常動作期間(後述する定常動作期間T1)における振動振幅値以下となるように、駆動動作を制御するようになっている。このような制御部19は、例えばマイクロコンピュータなどにより構成されている。なお、制御部19の詳細については後述する。
【0026】
[光学装置14の詳細構成]
次に、図2および図3を参照して、上記した光学装置14の詳細構成について説明する。図2および図3はそれぞれ、光学装置14の詳細構成例を斜視図で表わしたものである。この光学装置14は、光学素子140、固定部ホルダ141、コイル142、磁石143、ヨーク144、可動部ホルダ145および板バネ146(保持部材)を有している。これらのうち、コイル142および固定部ホルダ141が「固定部」を構成し、光学素子140、磁石143、ヨーク144および板バネ146が、「可動部」を構成している。
【0027】
光学素子140は、前述したようにスペックルノイズを低減するための素子であり、図中に示した光軸Z1上を進行するレーザ光がこの光学素子140を通過するようになっている。この光学素子140は、例えばプリズムアレイ、回折素子またはレンズからなり、ここでは矩形状となっている。
【0028】
固定部ホルダ141は、上記した固定部であるコイル142を保持するためのホルダであり、例えばポリカーボネートや液晶ポリマー等の材料からなる。
【0029】
コイル142は、例えば巻き線コイルからなる。磁石143は、例えばネオジム(Nd)や鉄(Fe)、ホウ素(ボロン;B)等の材料からなる永久磁石である。これらコイル142および磁石143は、電磁力を用いて、光学素子140をレーザ光の光路(図中の光軸Z1に対応)と直交する面内の所定方向(1方向,2方向,回転方向など)、またはこの光路(光軸Z1)に沿って振動(微小振動)させるようになっている。具体的には、ここでは光学素子140を、光軸Z1と直交する面内における所定の1方向(図中の振動方向P1;Y軸方向)に沿って振動させるようになっている。なお、この微小振動の振動量(振幅量)は、例えば±0.5mm程度である。
【0030】
ヨーク144は、磁石143から出力される磁束の方向を制御するための部材であり、例えば鉄(Fe)等の透磁率が高い材料からなる。また、このヨーク144は、ここでは磁石143からの磁束が装置外部(光学装置14の外部)へ出力されないように、磁石143の周囲に配置されている。具体的には、矩形状の磁石143における、コイル142側の面の対向面(光学素子140側の面)(Y−Z面)およびこれらの面の側面(Z−X面)をそれぞれ取り囲むように、ヨーク144が配置されている。
【0031】
可動部ホルダ145は、上記した可動部としての光学素子140、磁石143、ヨーク144および板バネ146を保持するためのホルダであり、ここでは、光学素子140とヨーク144との間に配置されている。可動部ホルダ145は、例えばポリカーボネートや液晶ポリマー等の材料からなる。
【0032】
板バネ146は光学素子140を保持する保持部材であり、ここでは、矩形状の光学素子140における対向する一対の側面(Z−X面)側にそれぞれ配置されている。この板バネ146は弾性部材であり、例えばSUS301−CSP等のバネ材料からなる。また、板バネ146では、光反射率を低減するための表面処理(例えば、黒色塗装、艶消し処理、またはブラスト処理(サンドブラスト等)など)が施されているようにするのが望ましい。具体的には、板バネ146の表面は黒色となっているのが望ましく、例えば、400〜700nmの波長帯域の光に対する反射率が10%以下となるような表面処理が施されていることが望ましい。これにより、板バネ146が金属製である場合に、この表面での乱反射光に起因した表示画質の低下を低減することができるからである。
【0033】
ここで、特に図3に示した光学素子140の例では、この板バネ146に、振動の際に光学素子140が通過する(通過することが可能な,挿入される,挿入可能な)開口H1,H2が設けられている。すなわち、板バネ146における一方側の側面(Z−X面)には開口H1が設けられ、他方側の側面(Z−X面)には開口H2(図3中には図示せず)が設けられている。具体的には、これらの開口H1,H2はそれぞれ、ここでは矩形状(スリット状)となっており、光学素子140の振動時にこの光学素子140と板バネ146とが互いに接触(衝突)しないようになっている。したがって、このような開口H1,H2を形成するようにした場合には、光学素子140と板バネ146との間に振動時用の空間を設けずに、後述する干渉パターン(スペックルノイズ)の発生を低減することができる。よって、小型化を図りつつ干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となっている。なお、開口H1,H2の大きさは、例えば1mm×10mm程度である。
【0034】
[光学素子140に対する駆動部の要部構成]
次に、図4を参照して、上記した光学素子140に対する駆動部の要部構成について説明する。図4は、光学素子140に対する駆動部の要部構成例を、前述した制御部19とともに模式的に表わしたものである。この光学素子140に対する駆動部は、上記したコイル142および磁石143等に加え、例えば図4に示した信号発生器147を有している。ここで、信号発生器147の一端はコイル142の一端に接続され、他端は接地されている(グランドに接続されている)。
【0035】
信号発生器147は、光学素子140を駆動する(振動させる)際に用いる交流電圧を発生する電源である。これにより、図4中に示した交流の駆動電流Id(振幅値:Ad,周波数(駆動周波数):fd)がコイル142を流れ、その結果、駆動する際の電磁力が発生するようになっている。ここで、時間をtとすると、駆動電流Idの時間tに対する変化を表すId(t)は、以下の(1)式のように規定される。なお、詳細は後述するが、このときの駆動電流Id(駆動信号)における上記した振幅値Adおよび駆動周波数fdはそれぞれ、前述した制御部19によって制御されるようになっている。
Id(t)=Ad×Sin(2×π×fd×t) ……(1)
【0036】
[表示装置1の作用・効果]
(1.表示動作)
この表示装置1では、まず、照明装置2から以下のようにして照明光が出射される。すなわち、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bからそれぞれ出射された光(レーザ光)が、コリメータレンズ12R,12G,12Bによってそれぞれコリメートされ、平行光となる。次いで、このようにして平行光とされた各レーザ光(赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光)は、ダイクロイックプリズム131,132によって色合成(光路合成)がなされる。光路合成がなされた各レーザ光は、光学装置14を通過したのち、フライアイレンズ15へ入射する。この入射光はフライアイレンズ15によって均一化(面内の強度分布の均一化)がなされ、照明光として出射される。
【0037】
次いで、このフライアイレンズ15からの出射光(照明装置2からの照明光)は、偏光ビームスプリッタ16によって選択的に反射され、反射型液晶素子17へ入射する。反射型液晶素子17では、この入射光が映像信号に基づいて変調されつつ反射されることにより、映像光として出射する。ここで、この反射型液晶素子17では、入射時と出射時とにおける各偏光が異なるものとなるため、反射型液晶素子17から出射した映像光は選択的に偏光ビームスプリッタ16を透過し、投射レンズ18へと入射する。そして、この入射光(映像光)は、投射レンズ18によって、図示しないスクリーンに対して投射(拡大投射)される。
【0038】
この際、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、時分割的に順次発光(パルス発光)し、各レーザ光(赤色レーザ光,緑色レーザ光,青色レーザ光)を出射する。そして、反射型液晶素子17では、各色成分(赤色成分、緑色成分、青色成分)の映像信号に基づいて、対応する色のレーザ光が時分割的に順次変調される。これにより、映像信号に基づくカラー映像表示が表示装置1においてなされる。
【0039】
(2.干渉パターンの低減動作)
次に、本開示の特徴的部分の1つである、後述する干渉パターンの低減動作について、比較例(比較例1)と比較しつつ詳細に説明する。
【0040】
(2−1.比較例1)
図5は、比較例1に係る表示装置(表示装置100)の全体構成を表したものである。この比較例1の表示装置100は、本実施の形態の表示装置1と同様に、スクリーン(ここではスクリーン107)に対して映像光を投射する投射型の表示装置である。表示装置100は、赤色レーザ101R、緑色レーザ101G、青色レーザ101B、光強度変調器102R,102G,102B、ダイクロイックミラー103R,103G,103B、ポリゴンミラー104、カルバノミラー105およびf−θレンズ106を備えている。
【0041】
この表示装置100では、赤色レーザ101Rから出射されたレーザ光は、光強度変調器102Rにおいて映像信号に基づいて変調されつつ透過し、映像光として出射する。同様に、緑色レーザ101Gから出射されたレーザ光は、光強度変調器102Gにおいて映像信号に基づいて変調されつつ透過し、映像光として出射する。また、青色レーザ101Bから出射されたレーザ光は、光強度変調器102Bにおいて映像信号に基づいて変調されつつ透過し、映像光として出射する。このようにして光強度変調器102R,102G,102Bからそれぞれ出射された各色の映像光は、ダイクロイックミラー103R,103G,103Bにおいて色合成(光路合成)がなされ、カラー映像に対応する映像光としてポリゴンミラー104へ入射する。この入射光は、水平同期信号に同期して高速回転(図中の矢印P101参照)するポリゴンミラー104によって、水平方向に偏向される。また、このようにして水平方向に偏向された光は、更に、垂直同期信号に同期して反射角を変化させる(図中の矢印P102参照)ガルバノミラー105によって、垂直方向に偏向される。そして、このようにして2次元に偏向されたレーザ光は、f−θレンズ106によってスクリーン107に対して投射(拡大投射)され、これにより映像信号に基づくカラー映像表示が表示装置100においてなされる。
【0042】
ところで、レーザ光のようなコヒーレント光を拡散面に照射すると、例えば図6に示した写真のように、通常の光では見られない斑点上の模様が観察される。このような模様は、スペックル模様と呼ばれている。このスペックル模様は、拡散面の各点で散乱された光が、面上の微視的な凹凸に応じたランダムな位相関係で干渉し合うために生じるものである。なお、このようなスペックル模様は、一般には2種類に大別される。1つ目は、結像系を通さないで観察されるものであり、回折界スペックルと呼ばれている。この回折界スペックルは、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラに対してレンズを付けずに拡散光をみたときに観察される。回折界スペックルでは、拡散面上の光の当たっている全ての点が干渉に寄与することになる。2つ目は、結像系を介して観察したときにみられるものであり、眼で拡散面をみたときに見えるスペックルがこれに相当する。このようなスペックルは、像界スペックルと呼ばれている。
【0043】
ここで、上記比較例1の表示装置100のようにレーザ光源を用いたプロジェクタでは、スクリーン上において、このようなスペックル模様(干渉パターン)が表示画像に重畳される。このため、人間の眼には強度のランダムノイズとして認識され、表示画質が低下してしまうことになる。
【0044】
そこで、レーザ光源を用いたプロジェクタにおいて、このようなスペックル模様(スペックルノイズ)の発生を低減するため、プロジェクタ内でレーザ光が通過する所定の光学素子やスクリーンを、微小振動させる手法が考えられる。一般に、人間の眼および脳は、約20〜50ms内の画像のちらつきは判別できない。つまり、その時間内の画像は眼の中で積分され、平均化されている。したがって、この時間内に、スクリーン上において独立のスペックルパターンを多数重量させることにより、スペックルノイズを人間の眼の中で気にならない程度に平均化しようとするものである。
【0045】
(2−2.本実施の形態)
そこで、本実施の形態の光学装置14においても、図1〜図3に示したように、レーザ光が通過する光学素子140が、このレーザ光の光路(光軸Z1)と直交する面内(XY面内;ここではY軸方向に沿った振動方向P1)で振動(微小振動)する。具体的には、コイル142および磁石143を含む駆動部によって、電磁力を用いてそのような振動がなされるように、光学素子140が駆動される。
【0046】
詳細には、例えば図7に示したように、コイル142に電流(駆動電流Id)が流れ、その電流の流れる方向と直交する方向に磁束が発生しているときには、これらの方向のいずれとも直交する方向に沿って、コイル142に力が働く(フレミング左手の法則)。このような力がコイル142に働くことを利用して、駆動部によって光学素子140を振動させている。
【0047】
このようにして光学素子140を振動させることにより、本実施の形態では、上記した原理によって、レーザ光に起因したスペックルノイズ(干渉パターン)の発生が低減する。
【0048】
(3.過渡応答現象に起因した過大な振動振幅の抑制動作)
ところで、上記のようにして光学素子140を振動させた場合、この光学素子140振動動作の際の(振動振幅値Aact/駆動電流Id)および位相θの周波数特性はそれぞれ、例えば図8に示したボード線図のようになる。つまり、この光学素子140の振動動作には、例えば前述した板バネ146およびバネ剛性と可動部の重量とに依存して定まる固有振動周波数f0(この例では、f0=110Hz)が存在する。そして、この固有振動周波数f0付近の周波数領域では、ある固定の駆動電流Idにより振動させたときの振動振幅値Aactが急激に増加する特性を示すことから、より少ない駆動電流Idによって振動動作を行うことができ、低消費電力化を図ることが可能となる。このため、図8中に示したように、固有振動周波数f0の近傍の周波数領域内で駆動周波数fdを設定することが望ましいと言えるが、その場合、以下の問題が生じるおそれがある。
【0049】
(3−1.比較例2)
すなわち、例えば図9(A),(B)に示した比較例2における光学素子140の動作特性(光学素子140の動作時間tと、駆動電流Idの振幅値Adおよび光学素子140の振動振幅値Aactとの関係を示す特性)のようになるおそれがある。具体的には、この光学素子140の起動期間T0において、過渡応答現象に起因して、振動振幅値Aactが過大となる現象(オーバーシュート現象)が生じてしまう場合がある。なお、図9(B)に示した動作特性は、図9(A)に示した動作特性のうちの一部の期間(0≦t≦0.1秒の期間)を、拡大して示したものである。
【0050】
詳細には、この比較例2では、駆動周波数fd=90Hz,駆動電流Idの振幅値Ad=±0.2A,振動振幅値Aact=±0.3mmとなるように設定されている。そして、定常動作期間(安定動作期間)T1(この例では、t≧0.3秒の動作期間)では、設定値通り、振動振幅値Aact=±0.3mm程度となっている。ところが、振動開始(駆動開始)段階である起動期間T0(この例では、0≦t≦0.3秒の期間)では、過渡応答の影響により、その後の定常動作期間T1と比べ、振動振幅値Aacが過大(絶対値が0.3mmよりも大きく)となってしまっている(図9(A)中の破線の矢印参照)。具体的には、起動期間T0および定常動作期間T1ではそれぞれ、駆動電流Idの振幅値Ad=±0.2A程度でほぼ一定であるにも関わらず、起動期間T0における振動振幅値Aactは、最大で±0.6mm程度(定常動作期間T1での振動振幅値Aactの約2倍)となっている。このようにして振動振幅値Aactが過大となってしまうのは、過渡状態(起動期間T0)では、駆動周波数fdに、設定値である90Hzよりも高い周波数成分(固有振動周波数f0近傍の周波数成分)が一時的に含まれているためであると考えられる。つまり、図8を用いて前述したように、固有振動周波数f0の近傍の周波数領域では振動振幅値Aactが急激に大きくなることから、そのような高い周波数成分を駆動周波数fdとして含む起動期間T0では、振動振幅値Aactが過大となってしまうのである。
【0051】
このように、光学素子140の振動振幅値Aactが設定値よりも過大となってしまうと、特に照明装置2および表示装置1の小型化(部材の高密度配置化)を図る場合に、以下の問題が生ずる。すなわち、光学素子140が振動する際に、その周囲の部材(例えば、光学素子140の保持部材の1つである板バネ146や、装置の筺体10など:図1〜図3参照)に衝突してしまい、異音が発生したり、光学素子140自体やその周囲の部材等が故障してしまうなどのおそれがある。これは、照明装置2および表示装置1の小型化(部材の高密度配置化)を図ろうとした場合には、光学素子140とその周囲の部材との隙間が小さくなるように設定される傾向にあることに起因している。以上のようにして、この比較例2では、光学素子140の過大な振動振幅に起因した悪影響を抑えつつ、上記した干渉パターンの発生を低減することが困難である。
【0052】
(3−2.本実施の形態)
そこで、本実施の形態の照明装置2では、光学素子140の駆動動作の際に、制御部19において、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactが、その後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下となるように、駆動動作を制御する。具体的には、制御部19は、この駆動動作の際に用いられる駆動信号(駆動電流Id)の振幅値Adを制御する(信号発生器147の動作を制御する)ことにより、これら起動期間T0および定常動作期間T1における振動振幅値Aactを制御する。
【0053】
詳細には、本実施の形態では例えば図10(A)に示したように、制御部19は、起動期間T0(ここでは、0≦t≦0.2秒の期間)での駆動電流Idの振幅値Adが、定常動作期間T1(ここでは、t≧0.2秒の期間)での振幅値Adよりも小さくなるように制御する。また、特にこの例では、起動期間T0において、振幅値Adが定常動作期間T1での値まで徐々に増加するように制御している(図10(A)中の破線の矢印参照)。なお、本実施の形態では、起動期間T0および定常動作期間T1のいずれにおいても、駆動電流Idの駆動周波数fdは固定値(一定値)となっている。
【0054】
これにより、例えば図10(B)に示したように、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactが、その後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下(ここでは未満)となる。したがって、起動期間T0における上記した過渡応答現象に起因した過大な振動振幅が抑えられる(図10(B)中の破線の矢印参照)。
【0055】
このとき、制御部19はまた、起動期間T0において、レーザ光源(赤色レーザ11R,緑色レーザ11G,青色レーザ11B)からのレーザ光の出射が停止するように、これらのレーザ光源を制御するのが望ましい(図10(B)中の記載参照)。これは、この起動期間T0では、上記したように光学素子140の振動振幅値Aactが設定値(定常動作期間T1での値)に達していないことから、干渉パターン発生の低減効果が不十分となってしまうおそれがあるからである。
【0056】
以上のように本実施の形態では、レーザ光源(赤色レーザ11R,緑色レーザ11G,青色レーザ11B)からのレーザ光が通過する光学素子140を振動させると共に、この光学素子140に対する駆動動作の際に、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactがその後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下となるようにしたので、起動期間T0において過渡応答現象に起因した過大な振動振幅を抑えることができる。よって、光学素子140の過大な振動振幅に起因した悪影響(例えば、異音が発生したり、光学素子140自体やその周囲の部材等が故障してしまうおそれなど)を回避しつつ、干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
【0057】
<第2の実施の形態>
続いて、本開示の第2の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態では、駆動信号(駆動電流Id)の信号振幅値(振幅値Ad)を制御することにより、光学素子140の振動振幅値Aactを制御する手法としている。これに対して本実施の形態では、以下説明するように、駆動信号(駆動電流Id)の信号周波数(駆動周波数fd)を制御することにより、光学素子140の振動振幅値Aactを制御する手法としている。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0058】
本実施の形態では、具体的には例えば図11(A),(B)に中の矢印で示したように、制御部19が、初期駆動周波数fd0から最終的な駆動周波数fdへと変化するように、駆動周波数fdを制御する。このような制御により、第1の実施の形態と同様に、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactがその後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下となるように制御している。
【0059】
より具体的には、制御部19は、起動期間T0において、駆動周波数fdが前述した固有振動周波数f0へ向けて徐々に近づいていくように制御する。ただし、定常動作期間T1における駆動周波数fd(最終的な設定周波数)が、固有振動周波数f0から、この固有振動周波数f0の変動特性を考慮した所定の周波数分(ギャップ周波数Δf;例えば、±10Hz程度)だけずらして設定されているのが望ましい。これは、定常動作期間T1での駆動周波数fdを固有振動周波数f0と完全に一致させた場合、最も大きな振動振幅値Aactが得られるものの、この固有振動周波数f0の値が、温度変化に応じて変動したり個体ばらつきによって変動することを考慮すると、振動振幅値Aactが急激に変動してしまうためである。つまり、前述したように固有振動周波数f0付近では振動振幅値Aactが急激に変化することと、一般に板バネのバネ剛性は温度が上昇すると下がる性質を示すため、固有振動周波数f0も温度が上昇すると下がる傾向にあることとに起因している。
【0060】
ここで、図11(A)に示した例では、制御部19は、駆動周波数fdが、固有振動周波数f0よりも低周波側の周波数から徐々に増加していくように制御している(初期駆動周波数fd0から最終的な駆動周波数fdまで、徐々に増加させている)。つまり、この例では、駆動周波数fd<固有振動周波数f0となっていることから、起動期間T0内で振動振幅値Aactを徐々に増加させていることに相当する(図11(A)中の破線の矢印参照)。
【0061】
詳細には、この例では例えば図12(A)に示したように、制御部19は、起動期間T0(ここでは、0≦t≦0.5秒の期間)において、駆動周波数fdが定常動作期間T1(ここでは、t≧0.5秒の期間)での駆動周波数fdの値まで徐々に増加するように制御している。つまり、この例では、fd=30Hzからfd=90Hzまで徐々に増加するように制御する。なお、本実施の形態では、起動期間T0および定常動作期間T1のいずれにおいても、駆動電流Idの振幅値Adは固定値(一定値)となっている。
【0062】
これにより、例えば図12(B)に示したように、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactが、その後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下(ここでは未満)となる。したがって、この例でも第1の実施の形態と同様に、起動期間T0における過渡応答現象に起因した過大な振動振幅が抑えられる(図12(B)中の破線の矢印参照)。なお、このときも第1の実施の形態と同様に、起動期間T0において、レーザ光源からのレーザ光の出射が停止するように、これらのレーザ光源を制御するのが望ましい(図12(B)中の記載参照)。
【0063】
一方、図11(B)に示した例では、制御部19は、駆動周波数fdが、固有振動周波数f0よりも高周波側の周波数から徐々に低下(減少)していくように制御している(初期駆動周波数fd0から最終的な駆動周波数fdまで、徐々に低下させている)。つまり、この例では、固有振動周波数f0<駆動周波数fdとなっていることから、起動期間T0内で振動振幅値Aactを徐々に増加させていることに相当する(図11(B)中の破線の矢印参照)。
【0064】
詳細には、この例では例えば図13(A)に示したように、制御部19は、起動期間T0(ここでは、0≦t≦0.5秒の期間)において、駆動周波数fdが定常動作期間T1(ここでは、t≧0.5秒の期間)での駆動周波数fdの値まで徐々に低下するように制御している。つまり、この例では、fd=200Hzからfd=130Hzまで徐々に低下するように制御する。なお、この例でも、起動期間T0および定常動作期間T1のいずれにおいても、駆動電流Idの振幅値Adは固定値(一定値)となっている。
【0065】
これにより、この例でも例えば図13(B)に示したように、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactが、その後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下(ここでは未満)となる。したがって、この例でも第1の実施の形態と同様に、起動期間T0における過渡応答現象に起因した過大な振動振幅が抑えられる(図13(B)中の破線の矢印参照)。なお、このときも第1の実施の形態と同様に、起動期間T0において、レーザ光源からのレーザ光の出射が停止するように、これらのレーザ光源を制御するのが望ましい(図13(B)中の記載参照)。
【0066】
以上のように本実施の形態では、駆動電流Idの駆動周波数fdを制御することによって、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactがその後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下となるようにしたので、第1の実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることが可能である。すなわち、光学素子140の過大な振動振幅に起因した悪影響を回避しつつ、干渉パターンの発生を低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
【0067】
また、駆動周波数fdが固有振動周波数f0よりも低周波側の周波数から徐々に増加していくように制御する場合(前者)には、逆に、固有振動周波数f0よりも高周波側の周波数から徐々に低下していくように制御する場合(後者)と比べ、特に以下の効果も得ることが可能である。すなわち、まず一般的に、より周波数の高い信号のほうがノイズに弱い。したがって、前者の手法と比べて後者の手法のほうが、光学素子140の駆動波形にノイズが乗って乱れが生ずるおそれが高いと言える。しかしながら、駆動周波数fdを非常に高く設定したい場合には、前者の手法では、固有振動周波数f0を非常に高く設定する必要がある。そのためには、例えば板バネを厚くするなどしてバネ剛性を上げる必要が生じるが、その場合、駆動電流Idが多く必要になるといったデメリットがある。そこで、例えば駆動周波数fdをある程度以上に高くしたい場合などには、後者の手法よりも前者の手法を用いて、できるだけ駆動周波数fdを低く抑えるほうが望ましいと言える。
【0068】
<変形例>
続いて、上記第1,第2の実施の形態に共通の変形例について説明する。なお、これらの実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0069】
上記第1,第2の実施の形態では、例えば図14(A)に模式的に示したように、駆動期間T0において振動振幅値Aactが線形的に増加していくことによって、この振動振幅値Aactが徐々に増加していくように制御している。ただし、振動振幅値Aactの制御手法としてはこれには限られず、以下のように制御してもよい。
【0070】
具体的には、例えば図14(B)に示したように、制御部19は、駆動期間T0において振動振幅値Aactが段階的(ここでは多段的)に増加していくことによって、この振動振幅値Aactが徐々に増加していくように制御してもよい。
【0071】
また、例えば図14(C)に示したように、制御部19は、起動期間T0における振動振幅値Aactが、その後の定常動作期間T1における振動振幅値Aactよりも小さい固定値(一定値)となるように制御してもよい。
【0072】
あるいは、例えば図14(D)に示したように、制御部19は、起動期間T0における振動振幅値Aactが、定常動作期間T1における振動振幅値Aactと略等しい(望ましくは等しい)固定値(一定値)となるように制御してもよい。
【0073】
このように、起動期間T0における光学素子140の振動振幅値Aactが、その後の定常動作期間T1における振動振幅値Aact以下となるように制御するのであれば、制御部19による制御手法としては種々の手法を採用することが可能である。換言すると、起動期間T0において、駆動信号(駆動電流Id)に含まれる固有振動周波数f0付近の周波数成分がより低減するように制御すればよく、これまで挙げた手法の他にも他の手法を採用するようにしてもよい。
【0074】
<その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態等では、光学素子140に対する駆動信号の一例としてとして駆動電流Idを挙げて説明したが、これには限られず、例えば駆動電圧の信号振幅値や信号周波数を制御するようにしてもよい。また、この駆動信号の波形としても、上記実施の形態等で挙げた正弦波には限られず、例えば矩形波や三角波等の他の波形であってもよい。
【0076】
また、上記実施の形態等では、光学素子を、レーザ光の光路と直交する面内の所定方向、またはこの光路に沿った方向に振動させる場合について説明したが、この場合には限られない。すなわち、光学素子を振動(微小振動)させるのであれば、他の方向に沿って光学素子を振動させるようにしてもよい。
【0077】
更に、上記実施の形等態では、複数種類(赤色用,緑色用,青色用)の光源がいずれもレーザ光源である場合について説明したが、この場合には限られず、複数種類の光源のうちの少なくとも1つがレーザ光源であればよい。すなわち、光源部内に、レーザ光源と他の光源(例えばLED等)とを組み合わせて設けるようにしてもよい。
【0078】
加えて、上記実施の形態等では、光変調素子が反射型の液晶素子である場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られず、例えば透過型の液晶素子であってもよく、更には、液晶素子以外の光変調素子であってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態等では、異なる波長の光を発する3種類の光源を用いた場合について説明したが、例えば3種類の光源ではなく、1種類や2種類,4種類以上の光源を用いるようにしてもよい。
【0080】
更に、上記実施の形態等では、光学装置、照明装置および表示装置の各構成要素(光学系)を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。具体的には、例えば上記実施の形態では、制御部19が筺体10内に収容されている場合を例に挙げて説明したが、そのような場合には限られず、制御部19が筺体10の外部に配置されているようにしてもよい。
【0081】
加えて、上記実施の形態等では、光変調素子により変調された光をスクリーンに投射する投射光学系(投影レンズ)を備え、投射型の表示装置として構成されている場合について説明したが、本技術は、直視型の表示装置などにも適用することが可能である。
【0082】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子と、
前記光学素子を振動させる駆動部と、
前記駆動部による駆動動作の際に、起動期間における前記光学素子の振動振幅値が、その後の定常動作期間における振動振幅値以下となるように、前記駆動動作を制御する制御部と
を備えた照明装置。
(2)
前記制御部は、前記駆動動作の際に用いられる駆動信号の信号振幅値を制御することにより、前記起動期間および前記定常動作期間における前記振動振幅値を制御する
上記(1)に記載の照明装置。
(3)
前記制御部は、前記起動期間での前記信号振幅値が、前記定常動作期間での前記信号振幅値よりも小さくなるように制御する
上記(2)に記載の照明装置。
(4)
前記制御部は、前記起動期間において、前記信号振幅値が徐々に増加するように制御する
上記(3)に記載の照明装置。
(5)
前記制御部は、前記駆動動作の際に用いられる駆動信号の信号周波数を制御することにより、前記起動期間および前記定常動作期間における前記振動振幅値を制御する
上記(1)に記載の照明装置。
(6)
前記制御部は、前記起動期間において、前記信号周波数が前記駆動部の固有振動周波数へ向けて徐々に近づいていくように制御する
上記(5)に記載の照明装置。
(7)
前記制御部は、前記信号周波数が、前記固有振動周波数よりも低周波側の周波数から徐々に増加していくように制御する
上記(6)に記載の照明装置。
(8)
前記制御部は、前記信号周波数が、前記固有振動周波数よりも高周波側の周波数から徐々に低下していくように制御する
上記(6)に記載の照明装置。
(9)
前記定常動作期間における前記信号周波数が、前記駆動部の固有振動周波数から、この固有振動周波数の変動特性を考慮した所定の周波数分だけずらして設定されている
上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の照明装置。
(10)
前記制御部は、前記起動期間において、前記駆動動作の際に用いられる駆動信号に含まれる前記駆動部の固有振動周波数付近の周波数成分が、より低減するように制御する
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の照明装置。
(11)
前記制御部は、前記起動期間では、前記レーザ光源からのレーザ光の出射を停止させる
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の照明装置。
(12)
前記制御部は、前記起動期間において、前記振動振幅値が徐々に増加していくように制御する
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の照明装置。
(13)
前記制御部は、前記起動期間において、前記振動振幅値が線形的または段階的に増加していくように制御する
上記(12)に記載の照明装置。
(14)
前記光学素子が、プリズムアレイ、回折素子またはレンズである
上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の照明装置。
(15)
前記光源部は、赤色光、緑色光または青色光を発する3種類の光源を有する
上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の照明装置。
(16)
前記3種類の光源のうちの少なくとも1つが、前記レーザ光源である
上記(15)に記載の照明装置。
(17)
照明光を出射する照明装置と、
前記照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と
を備え、
前記照明装置は、
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子と、
前記光学素子を振動させる駆動部と、
前記駆動部による駆動動作の際に、起動期間における前記光学素子の振動振幅値が、その後の定常動作期間における振動振幅値以下となるように、前記駆動動作を制御する制御部と
を有する表示装置。
(18)
前記光変調素子により変調された照明光を被投射面に対して投射する投射光学系を更に備えた
上記(17)に記載の表示装置。
(19)
前記光変調素子が液晶素子である
上記(17)または(18)に記載の表示装置。
【符号の説明】
【0083】
1…表示装置、10…筐体、11R…赤色レーザ、11G…緑色レーザ、11B…青色レーザ、12R,12G,12B…コリメータレンズ、131,132…ダイクロイックプリズム、14…光学装置、140…光学素子、141…固定部ホルダ、142…コイル、143…磁石、144…ヨーク、145…可動部ホルダ、146…板バネ、147…信号発生器、15…フライアイレンズ、16…偏光ビームスプリッタ、17…反射型液晶素子、18…投射レンズ、19…制御部、2…照明装置、Z1…光軸、P1…振動方向、H1,H2…開口、Lout…投射光、CTL…制御信号、Id…駆動電流、Ad…振幅値、Aact…振動振幅値、f0…固有振動周波数、fd…駆動周波数、fd0…初期駆動周波数、Δf…周波数差(ギャップ周波数)、θ…位相、t…動作時間、T0…起動期間、T1…定常動作期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子と、
前記光学素子を振動させる駆動部と、
前記駆動部による駆動動作の際に、起動期間における前記光学素子の振動振幅値が、その後の定常動作期間における振動振幅値以下となるように、前記駆動動作を制御する制御部と
を備えた照明装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記駆動動作の際に用いられる駆動信号の信号振幅値を制御することにより、前記起動期間および前記定常動作期間における前記振動振幅値を制御する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記起動期間での前記信号振幅値が、前記定常動作期間での前記信号振幅値よりも小さくなるように制御する
請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記起動期間において、前記信号振幅値が徐々に増加するように制御する
請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記駆動動作の際に用いられる駆動信号の信号周波数を制御することにより、前記起動期間および前記定常動作期間における前記振動振幅値を制御する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記起動期間において、前記信号周波数が前記駆動部の固有振動周波数へ向けて徐々に近づいていくように制御する
請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記信号周波数が、前記固有振動周波数よりも低周波側の周波数から徐々に増加していくように制御する
請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記信号周波数が、前記固有振動周波数よりも高周波側の周波数から徐々に低下していくように制御する
請求項6に記載の照明装置。
【請求項9】
前記定常動作期間における前記信号周波数が、前記駆動部の固有振動周波数から、この固有振動周波数の変動特性を考慮した所定の周波数分だけずらして設定されている
請求項5に記載の照明装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記起動期間において、前記駆動動作の際に用いられる駆動信号に含まれる前記駆動部の固有振動周波数付近の周波数成分が、より低減するように制御する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記起動期間では、前記レーザ光源からのレーザ光の出射を停止させる
請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記起動期間において、前記振動振幅値が徐々に増加していくように制御する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記起動期間において、前記振動振幅値が線形的または段階的に増加していくように制御する
請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
前記光学素子が、プリズムアレイ、回折素子またはレンズである
請求項1に記載の照明装置。
【請求項15】
前記光源部は、赤色光、緑色光または青色光を発する3種類の光源を有する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項16】
前記3種類の光源のうちの少なくとも1つが、前記レーザ光源である
請求項15に記載の照明装置。
【請求項17】
照明光を出射する照明装置と、
前記照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と
を備え、
前記照明装置は、
レーザ光源を含む光源部と、
前記レーザ光源からのレーザ光が通過する光学素子と、
前記光学素子を振動させる駆動部と、
前記駆動部による駆動動作の際に、起動期間における前記光学素子の振動振幅値が、その後の定常動作期間における振動振幅値以下となるように、前記駆動動作を制御する制御部と
を有する表示装置。
【請求項18】
前記光変調素子により変調された照明光を被投射面に対して投射する投射光学系を更に備えた
請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
前記光変調素子が液晶素子である
請求項17に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−68907(P2013−68907A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209253(P2011−209253)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】