照明装置の制御方法
【課題】有機EL素子の故障を的確に検出すると共に照明装置の品質を向上することの可能な照明装置の制御方法を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性に基づき、有機エレクトロルミネッセンス素子の故障を検出する故障検出ステップ(S1)と、短絡故障と判定された素子に所定のパルス幅の短絡故障修復パルスを印加する短絡故障修復ステップ(S172)と、短絡故障と判定された素子が修復されたか否かを判定する短絡故障修復判定ステップ(S174)と、短絡故障と判定された素子が修復されないと故障素子として該当素子の識別情報を含む個体情報を記憶手段に記憶する故障素子判定ステップ(S175)と、故障検出ステップで故障が検出された有機エレクトロルミネッセンス素子の分布状況に基づき発光面の点灯状態を制御する点灯制御ステップ(S2)とを備える。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性に基づき、有機エレクトロルミネッセンス素子の故障を検出する故障検出ステップ(S1)と、短絡故障と判定された素子に所定のパルス幅の短絡故障修復パルスを印加する短絡故障修復ステップ(S172)と、短絡故障と判定された素子が修復されたか否かを判定する短絡故障修復判定ステップ(S174)と、短絡故障と判定された素子が修復されないと故障素子として該当素子の識別情報を含む個体情報を記憶手段に記憶する故障素子判定ステップ(S175)と、故障検出ステップで故障が検出された有機エレクトロルミネッセンス素子の分布状況に基づき発光面の点灯状態を制御する点灯制御ステップ(S2)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置の制御方法に係り、詳しくは有機エレクトロルミネッセンス素子から構成される照明装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)は、基板上に発光層を含む有機EL層と、有機EL層を挟み込むように対向して配置された陽極、陰極からなる電極とが積層されて構成される。このように構成された有機EL素子の点灯時において、製造時の有機層への異物の混入や有機層の形成むらにより、電極間での短絡現象等の不良が発生するおそれがある。
【0003】
このような不良に対処するために、製造時の製品チェック時に短絡等の不良が発見された場合には、不良の素子を除外または修復するようにしている。しかしながら、有機EL素子は有機材料から形成されるために、熱による分解等の変質を引き起こしたり、点灯時に印加される電界により有機分子の電気泳動等の分子拡散を起こしたりすることがある。このため、製品として出荷された後、使用中の有機EL素子の電極間に短絡等の不良が発生することがある。
【0004】
有機EL素子から構成される照明装置において、有機EL素子に短絡故障が発生すると短絡箇所が点灯しないばかりでなく、短絡箇所に大電流が流れるため同じ給電部から電力が供給される他の有機EL素子の発光状態が暗くなったり点灯しなくなったりする。この結果、広範囲にわたり照明装置の輝度等の発光状態にむらが発生するほか、特定の素子の温度上昇により有機EL素子や配線が断線する非導通故障が発生し、品質が低下してしまうという問題がある。
【0005】
特に、発光色の異なる複数の有機EL素子を配置して照明装置の発光面が形成される場合、特定の発光色の有機EL素子が点灯しなくなると照明色が変化したり、照明色に色むらが生じたりするほか、特定の素子の温度上昇により非導通故障が発生し、品質が低下してしまい、さらに非点灯となる素子が増え、照明装置の見栄えが悪くなるという問題がある。
【0006】
このような短絡故障を修復する手法として、短絡箇所に逆方向の電圧パルスを印加して短絡箇所に過電流を流すことでジュール熱を発生させ、この熱によって短絡箇所を切断して修復する方法(特許文献1)、逆バイアス電圧を短絡箇所に印加することにより短絡箇所を切断して修復する方法(特許文献2)が知られており、診断用デバイスで有機EL素子ユニットの故障状態を診断する方法も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−162637号公報
【特許文献2】特開2007−207703号公報
【特許文献3】特表2010−524151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記各文献に開示された従来技術では、有機EL素子の故障検出において故障か否かを精度良く判定するための明確な判断基準がないため、確実な故障の見極めが難しいという問題が依然として残っている。さらに、故障素子の点灯時の発光状態のむらや照明色の色むらの発生による特定素子の温度上昇や非導通故障という問題が依然として残っている。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、有機EL素子の故障を的確に検出すると共に照明装置の品質を向上することの可能な照明装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するべく、本発明の照明装置の制御方法は、発光色の異なる複数の有機エレクトロルミネッセンス素子をストライプ状に並べた単数または複数の発光パネルによって発光面を形成した照明装置の制御方法であって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性に基づき、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障を検出する故障検出ステップと、前記故障検出ステップで短絡故障と判定された素子に短絡故障修復処理を行う短絡故障修復ステップと、前記短絡故障と判定された素子が前記短絡故障修復ステップの後に修復されたか否かを判定する短絡故障修復判定ステップと、前記短絡故障と判定された素子が修復されていないと前記短絡故障修復判定ステップで判定された場合に、前記短絡故障修復ステップ及び前記短絡故障修復判定ステップを繰り返し、前記短絡故障と判定された素子が修復されていないとの判定回数が所定回数を超えた場合には故障素子として該当素子の識別情報を含む個体情報を記憶手段に記憶する故障素子判定ステップと、前記故障素子判定ステップで個体情報が記憶された故障素子の分布状況に基づき、前記発光面の点灯状態を制御する点灯制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
このような照明装置の制御方法において、前記故障検出ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動している駆動状態で、該有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性を測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定する電気的特性に対して基準範囲を設定する基準範囲設定ステップと、前記測定ステップで測定された電気的特性が、前記基準範囲設定ステップで設定された該基準範囲から外れる場合に前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障と判定する故障判定ステップと、を備えていてもよい。
【0012】
このような照明装置の制御方法において、前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯状態で駆動する点灯駆動ステップを含み、前記故障判定ステップは、前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップを含むのが好ましい。
【0013】
また、前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯状態で駆動する非点灯駆動ステップを含み、前記故障判定ステップは、前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップを含むようにしてもよい。
【0014】
さらに、前記測定ステップの前に前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップを備え、前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯する駆動状態で駆動する点灯駆動ステップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯となる駆動状態で駆動する非点灯駆動ステップとを含み、前記故障判定ステップは、前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップと、前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップとを含み、前記第1の故障判定ステップで短絡故障と判定された後に前記第2の故障判定ステップを行うようにしてもよい。
【0015】
前記基準範囲設定ステップでは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電流−電圧特性における温度に依存する変化と、点灯時間の積算時間に依存変化及びマイグレーション等による初期変動とのうち、少なくともいずれか1つに対応して前記所定の基準電圧範囲を補正するようにしてもよい。
【0016】
前記所定の基準電圧範囲の補正において、前記温度に依存する変化に対応する前記所定の基準電圧範囲の補正は、予め定められた温度補正係数を使用して行われてもよい。
【0017】
前記所定の基準電圧範囲の補正において、前記点灯時間の積算時間に依存する変化及び前記初期変動に対応する前記所定の基準電圧範囲の補正は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の経時変化及び初期変動に対応して設定される経時補正係数を使用して行われてもよい。
【0018】
前記所定の電圧範囲の補正において、前記初期変動に対応する前記所定の基準電圧範囲の補正は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯時間の積算時間が初期の通電開始から10〜40時間以内である場合に行われてもよい。
【0019】
前記所定の基準電圧範囲は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の個体差を包含して設定されてもよい。
【0020】
前記所定の基準電圧範囲は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光色により異なる範囲に設定されてもよい。
【0021】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記エレクトロルミネッセンス素子に供給する電流が、前記有機エレクトロルミネッセンスを構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnと電荷素量eとから(φp−φn)/eで求められるビルドイン・ポテンシャルの電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.0倍以上1.8倍以下とするのが好ましい。
【0022】
前記第2の故障判定ステップでの前記電気的特性は電圧値であり、前記基準範囲は所定の電圧値以上の範囲であり、該所定の電圧値は前記ビルドイン・ポテンシャルの0.5倍以上1.0倍以下であってもよい。
【0023】
或いは、前記第2の故障判定ステップでの前記駆動状態において前記エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnと電荷素量eとから(φp−φn)/eで求められるビルドイン・ポテンシャルの0.7倍以上1.0倍以下であってもよい。
【0024】
この場合、前記第2の故障判定ステップでの前記電気的特性は電流値であり、前記基準範囲は所定の電流値以下の範囲であり、該所定の電流値は、正常な有機エレクトロルミネッセンス素子に前記ビルドイン・ポテンシャルに等しい電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.5倍以上8倍以下であってもよい。
【0025】
前記第2の故障判定ステップを実行する場合では、前記駆動状態において前記有機エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は、0.1〜4Vであってもよい。
【0026】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は逆電圧方向の電圧であるのが好ましい。
【0027】
前記駆動状態は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に定電圧を印加する定電圧駆動または前記有機エレクトロルミネッセンス素子に定電流を流す定電流駆動であるようにしてもよい。
【0028】
このような照明装置の制御方法において、前記点灯駆動ステップまたは前記非点灯駆動ステップの前に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の前記所定の基準電圧範囲に用いる基準電圧範囲マップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧に対する温度変化に対応した補償に用いる温度補償係数マップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧に対する点灯時間の積算時間に対応した補償及び前記有機エレクトロルミネッセンス素子の初期の点灯における電圧変動に対応した補償に用いる経時補償係数マップとを記憶手段に予め登録しておくようにしてもよい。
【0029】
照明装置の制御方法において、前記短絡故障修復判定ステップは、前記第1の故障判定ステップの後に前記短絡故障修復ステップが行われた場合、前記点灯駆動ステップ、前記測定ステップ、前記基準範囲設定ステップ、及び前記第1の故障判定ステップを行うものであり、前記第2の故障判定ステップの後に前記短絡故障修復ステップが行われた場合、前記非点灯駆動ステップ、前記測定ステップ、前記基準範囲設定ステップ、及び前記第2の故障判定ステップを行うものであるのが好ましい。
【0030】
ここで、第1の故障判定及び第2の故障判定で短絡故障と判定された場合に短絡故障修復処理を行うのが好ましい。
【0031】
前記短絡故障修復処理は、短絡故障修復パルスを印加するのが好ましく、短絡故障修復パルスは、逆方向の電圧パルス、順方向の前記駆動状態の電圧より大きな過電圧パルス、または順方向の前記駆動状態の電流より大きな過電流パルスから選択されるようにしてもよい。
【0032】
より具体的には、前記短絡故障修復パルスで使用される前記逆方向の電圧パルスの大きさは10V以上50V以下であってもよい。
【0033】
或いは、前記短絡故障修復パルスで使用される前記順方向の過電圧パルスの大きさは8V以上20V以下であってもよい。
【0034】
または、前記短絡故障修復パルスで使用される前記順方向の過電流パルスの大きさは通常点灯時の電流の3倍以上20倍以下であってもよい。
【0035】
また、前記所定回数は2回以上10回以下であってもよい。
【0036】
また、非導通故障と判定された有機EL素子が故障素子と判定される前記所定回数は2回以上10回以下であってもよい。
【0037】
さらに、照明装置の制御方法において、前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御するのが好ましい。
【0038】
ここで、正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子について、故障素子からの距離に応じた勾配をもたせることで、発光パターンを規則的に制御するようにしてもよい。例えば、故障素子に近い素子ほど輝度が低く、故障素子から離れるにつれて輝度が高くなるように調整するようにしてもよい。
【0039】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子への給電を停止するようにしてもよい。
【0040】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整を行うようにしてもよい。
【0041】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子の短径の1/5角のエリア内における輝度の偏差が15%以内となるように制御するようにしてもよい。なお、短径とは、発光素子が長方形の場合には短手方向の長さ、円形の場合には直径、楕円形の場合には短径のことをそれぞれ表す。
【0042】
ここで、前記輝度調整は、前記故障素子を含む所定領域内にある前記故障素子の発光色と同色の前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げるとともに、前記所定領域内にある前記故障素子の発光色とは異なる色の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げるようにしてもよい。
【0043】
このように発光色毎に調整する場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子の短径の1/5角のエリア内における色差が標準値に対してMacAdam3Stepに収まるように制御するようにしてもよい。
【0044】
ここで、前記輝度調整点灯は、前記故障素子を含む所定領域内にある正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度をそれぞれ上げる作動、及び所定領域外にある正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度をそれぞれ下げる作動のうち、少なくともいずれか一方であってもよい。
【0045】
さらに、前記輝度調整点灯は、所定時間毎に前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度をそれぞれ変更するようにしてもよい。
【0046】
さらに、前記点灯状態は、前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子をそれぞれ点灯または非点灯にして、前記発光面に所定の点灯パターンを形成するパターン点灯であってもよい。
【0047】
さらに、前記パターン点灯は、前記所定時間毎に前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯及び非点灯をそれぞれ切り替えるようにしてもよい。
【0048】
前記点灯制御ステップでは、前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整してもよい。
【0049】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子の短径の1/5角のエリア内における温度のばらつきが10℃以内となるように制御するようにしてもよい。
【0050】
さらに、前記温度調整点灯は、所定時間毎に前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度をそれぞれ変更するようにしてもよい。
【0051】
さらに、前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御する点灯状態制御、前記故障素子への給電を停止する給電停止制御、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整、及び前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整する温度調整のうち少なくとも2つを組み合わせて行うようにしてもよい。
【0052】
さらに、前記点灯制御ステップは、前記点灯状態制御、前記給電停止制御、前記輝度調整、及び前記温度調整の少なくともいずれかを所定時間毎に行うようにしてもよい。
【0053】
前記点灯制御ステップの前に前記記憶手段に予め点灯制御情報を登録しておき、前記点灯制御情報には、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電流−輝度特性マップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発熱パラメータと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の各色の特性バランスデータと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の最大電流値と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度に対する視覚度補正マップとの少なくともいずれか1つを含み、前記点灯制御情報に基づき前記点灯制御ステップを行うようにしてもよい。
【0054】
一方、このように構成された照明装置の制御方法において、前記故障検出ステップと前記点灯制御ステップとはコンピューターユニットで行ってもよい。
【0055】
また、照明装置の制御方法において、前記照明装置は通信手段を備え、該通信手段を外部機器の通信手段に接続して該外部機器の通信手段と通信する通信ステップをさらに備えるようにしてもよい。
【0056】
ここで、前記通信ステップでは、前記記憶手段に記憶されているデータの読み込みまたは書き込みを行うようにしてもよい。
【0057】
また、前記通信ステップにより、前記通信手段を介して前記外部機器からの情報に基づき前記点灯制御ステップを行うようにしてもよい。
【0058】
このように構成された照明装置の制御方法において、前記第1の故障判定ステップ、第2の故障判定ステップ、及び前記点灯制御ステップは、前記記憶装置に記憶されているプログラムにより実行されるようにしてもよい。この場合、該プログラムを書き換えるプログラム変更ステップを含むようにしてもよい。
【0059】
さらに、前記外部機器はもう1つの照明装置であって、前記通信手段により前記通信ステップを行うようにしてもよい。
【0060】
また、前記外部機器はシステムコントローラであるようにしてもよい。
【0061】
また、前記外部機器は、前記照明装置以外の照明装置であるようにしてもよい。
【0062】
照明装置が通信手段を有する場合、前記照明装置が複数設けられ、前記照明装置の少なくとも1つが外部機器であり、前記通信手段により複数の照明装置間で相互に前記通信ステップを行うようにしてもよい。
【0063】
また、前記通信ステップでは、前記記憶手段に故障素子として記憶された前記個体情報から、該当する発光パネルの交換時期を通知する交換時期通知ステップをさらに備えるようにしてもよい。
【0064】
前記交換時期通知ステップは、前記記憶手段に記憶された前記故障素子の数が交換時期として設定された所定個数を超えた場合に交換時期と判定する交換時期判定ステップを含むようにしてもよい。
【0065】
前記交換時期通知ステップにおいて、交換時期として設定される前記所定個数は前記照明装置における有機エレクトロルミネッセンス素子の全個数の0.5%以上25%以下がさらに好ましい。
【発明の効果】
【0066】
本発明の照明装置の制御方法によれば、有機EL素子の電気的特性に基づいて有機EL素子の故障を検出し、その故障素子の分布状況に基づいて照明装置の発光面の点灯状態を制御するので、有機EL素子の故障を的確に検出すると共に有機EL素子の故障を目立たなくして照明装置の品質を向上させることができる。
【0067】
また、短絡故障と判定された場合、短絡故障と判定された有機EL素子に所定のパルス幅の短絡故障修復パルスを印加するようにするので、短絡故障と判定された有機EL素子の短絡箇所が切断されて有機EL素子を修復することが可能となる。
【0068】
また、短絡箇所が修復されていないと判定された回数が所定回数を超えたときに、該当する有機EL素子の個体情報を故障素子として記憶手段に記憶するようにするので、故障素子を確実に把握すると共に明確に区別することができる。
【0069】
また、上述した有機EL素子の故障検出方法において、有機EL素子が点灯する駆動状態で測定した電圧値が所定の電圧範囲から外れる場合に有機EL素子の故障と判定するようにすれば、容易に且つ的確に故障判定を行うことができる。
【0070】
また、測定された電圧値が所定の電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、測定された電圧値が所定の電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定すれば、故障状態をより的確に把握することができる。さらに、有機EL素子が非点灯となる駆動状態での電気的特性が基準範囲から外れる場合に短絡故障と判定するようにすれば、より的確な故障判定を行うことができる。
【0071】
また、上述した基準範囲である所定の電圧範囲は、有機EL素子の電流−電圧特性における温度に依存する変化と、点灯時間の積算時間及び初期変動とのうち、少なくともいずれか1つに対応して補正すれば、有機EL素子の故障の検出精度を向上させることができる。
【0072】
特に、初期変動に対応する補正は、有機EL素子の点灯時間の積算時間が通電開始から10〜40時間以内の初期変動が生じ易い時期に行うようにすると、有機EL素子の故障検出精度をより向上させることができる。
【0073】
さらに、上述した所定の電圧範囲を有機EL素子の個体差が包含されるように設定すれば、有機EL素子の電気的特性に個々のばらつきがある場合でも有機EL素子の故障をより的確に検出することができる。
【0074】
また、上述した所定の電圧範囲は有機EL素子の発光色により異なる範囲に設定すれば、発光色の異なる有機EL素子の電気的特性に違いがあっても有機EL素子の故障をより的確に検出することができる。
【0075】
有機EL素子を点灯させて故障判定したときに短絡故障と判定され、その後この有機EL素子を非点灯にして故障判定するようにすれば、短絡故障している有機EL素子をより確実に検出することができる。
【0076】
一方、有機EL素子が非点灯で故障判定するときに、測定された電圧値が上述した基準範囲である正負電極の仕事関数から求められるビルドイン・ポテンシャルの1.0倍以上1.8倍以下の電圧値以上の範囲にない場合に短絡故障と判定するようにすれば、短絡故障に生じる大きな電圧値に基づき故障か否かがより明確に区別されるので、有機EL素子の短絡故障を精度よく検出することができる。
【0077】
また、測定された電圧値が上述した基準範囲である正負電極の仕事関数から求められるビルドイン・ポテンシャルの0.5倍以上1.0倍以下の電圧値以上の範囲にない場合に短絡故障と判定するようにすれば、短絡故障に生じる大きな電圧値に基づき故障か否かがより明確に区別されるので、短絡故障の検出精度をより向上させることができる。
【0078】
或いは、有機EL素子が非点灯で故障判定するときに、測定された電流値が正常な有機EL素子に正負電極の仕事関数から求められるビルドイン・ポテンシャルに等しい電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.5倍以上8倍以下の電流値以下の範囲にない場合に短絡故障と判定するようにすれば、短絡故障に生じる大きな電流値に基づき故障か否かがより明確に区別されるので、短絡故障の検出精度を向上させることができる。また、過大な電流を流さずに故障判定をすることができる。
【0079】
また、有機EL素子の非点灯となる駆動状態で有機EL素子に印加する電圧を逆電圧方向の電圧とすれば、正常な素子の場合には流れない電流が短絡故障素子では流れるので、確実に故障を検出することができ、短絡故障の検出精度をより向上させることができる。
【0080】
有機EL素子の点灯駆動または非点灯駆動の前に、有機EL素子の基準電圧範囲マップ、温度補償係数マップ、及び経時補償係数マップを記憶手段に予め登録しておけば、上述した所定の電圧範囲の補正を迅速に行うことができる。
【0081】
有機EL素子を点灯駆動させて故障判定した後に短絡箇所を修復した場合、有機EL素子を点灯駆動させて電圧値を測定して有機EL素子の短絡箇所が修復されたか否かの判定を行うようにすれば、故障していると判定した時と同じ判定をしているので、より確実に故障修復したか否かを判定できる。一方、有機EL素子を非点灯駆動させて故障判定した後に短絡箇所を修復した場合、有機EL素子を非点灯駆動させて電流値を測定して有機EL素子の短絡箇所が修復されたか否かの判定を行うようにすれば、故障していると判定した時と同じ判定をしているので、より確実に故障修復したか否かを判定することができる。
【0082】
また、上述した短絡故障修復パルスは、逆方向の電圧パルス、順方向の駆動状態の電圧より大きな過電圧パルス、または順方向の駆動状態の電流より大きな過電流パルスから選択するようにすれば、短絡箇所をより確実に修復することができる。特に、逆方向の電圧パルスの場合には該当する有機EL素子が非点灯のままで短絡故障から修復させることが可能となる。
【0083】
以上のような故障判定により故障素子が存在する場合、故障素子と判定されて記憶手段に記憶された故障素子情報に基づいて発光パネルでの故障素子の分布情報を求め、分布情報から発光面の発光パターンが規則的になるように正常な有機EL素子を点灯制御すれば、有機EL素子の故障を目立たなくすることができると共に、正常な有機EL素子の発熱の偏りを低減できるので、正常な有機EL素子の素子寿命を延ばすことが可能となる。
【0084】
また、記憶手段に記憶された故障素子への給電を停止すれば、無駄な電流の供給を防止すると共に故障素子のさらなる非導通故障の発生を抑制することができる。
【0085】
また、正常な各有機EL素子の輝度を前記発光面における輝度が略均一になるように調整すれば、故障素子が目立たないようにすることができる。
【0086】
さらに、故障素子を含む所定領域内にある、故障素子の発光色と同色の正常な各有機EL素子の輝度を上げることにより照明光の色の変化を補償すると共に、所定領域内にある故障素子の発光色とは異なる色の正常な各有機EL素子の輝度を下げて輝度の変化を補償することにより、輝度むらをなくすことができる。
【0087】
また、上述した点灯制御は、故障素子を含む所定領域内にある正常な各有機EL素子の輝度をそれぞれ上げる作動、及び所定領域外にある正常な各有機EL素子の輝度をそれぞれ下げる作動の少なくともいずれか一方を行うようにしても、輝度を調整することで発光面を調光して故障素子が目立たないようにすることができる。
【0088】
また、所定時間毎に正常な各有機EL素子の輝度を変更することにより、各有機EL素子の点灯、非点灯や輝度が所定時間毎に切り替わるようにすれば、有機EL素子の発熱の偏りを低減して非導通故障の発生を低減させるので、素子寿命をより延ばすことが可能となる。
【0089】
また、正常な各有機EL素子の点灯、非点灯を制御して発光面に所定の点灯パターンを形成すれば、故障素子が目立たないように点灯パターンを形成することができる。特に装飾として使用する場合に有効である。
【0090】
各発光面の表面温度が略均一になるように正常な有機EL素子の表面温度をそれぞれ調整すれば、有機EL素子の表面温度の偏りがなくなることにより非導通故障の発生を低減させるので、さらに素子寿命を延ばすことができる。
【0091】
また、有機EL素子の点灯状態、故障素子への給電停止、輝度の調整、及び表面温度の調整から少なくとも2つを組み合わせて行うようにすれば、各有機EL素子の非導通故障の発生を低減させるので、さらに素子寿命を延ばすことができる。
【0092】
また、所定時間毎に正常な各有機EL素子の点灯状態、故障素子への給電停止、輝度の調整、及び表面温度をそれぞれ変更すれば、各有機EL素子の非導通故障の発生を低減させるので、さらに素子寿命を延ばすことができる。
【0093】
照明装置の通信手段と外部機器の通信手段とで通信するようにすれば、照明装置を外部機器から制御することができ、照明装置の管理及び操作を容易に行うことができる。
【0094】
照明装置の記憶手段に記憶されているデータの読み込みまたは書き込みを外部機器の通信手段から照明装置の通信手段を介して行うようにすれば、照明装置の管理を容易に行うことができる。
【0095】
通信手段を介して故障検出及び点灯制御を行うプログラムを書き換えるようにすれば、故障検出や点灯制御の改善やさらなる機能の追加が可能であり、照明装置の管理を容易に行うことができる。
【0096】
また、照明装置と他の照明装置とで相互に通信して点灯制御及び記憶手段に記憶されているデータの読み書きを行うようにすれば、故障素子が生じても他の照明装置と協調して適正な照明光を確保することができる。
【0097】
さらに、このような照明装置を外部機器として複数の照明装置と通信するので、大規模な照明システムを構築可能である。
【0098】
また、記憶手段に記憶された故障素子の個体情報から、通信手段を介して発光パネルの交換時期が通知するようにすれば、発光パネルの交換時期が自動で通知されるので、照明装置の管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1実施例に係る有機EL発光パネルの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した有機EL発光パネルの概略平面図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る照明装置の概略構成図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る照明装置の回路図の一部を抜粋した電気回路図である。
【図6】本発明の第1実施例に係る照明装置の制御を示すフローチャートである。
【図7】照明装置の制御における故障検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図7に示す故障検出ルーチンにおいて行われる第1の故障判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】図4の回路構成において各スイッチに印加する制御信号の一例を示すタイミングチャートである。
【図10】第1の故障判定ルーチンで使用される基準電圧範囲マップの基になる素子電圧と供給電流との関係の一例を示すグラフである。
【図11】第1の故障判定ルーチンで使用される温度補償係数マップの基になる素子電圧と素子温度との関係の一例を示すグラフである。
【図12】第1の故障判定ルーチンで使用される有機EL素子の経時補償係数マップの基になる素子電圧と点灯時間の積算時間と関係の一例を示すグラフである。
【図13】第1の故障判定ルーチンで使用される経時補償係数マップの基になる素子電圧と点灯時間の積算時間との関係の一例を示すグラフである。
【図14】正常な有機EL素子に電圧を印加した場合の電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図15】正常な有機EL素子及び短絡故障した有機EL素子の電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図16】図7に示す故障検出ルーチンにおいて行われる第2の故障判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図17】図7に示す故障検出ルーチンにおいて行われる短絡故障修復ルーチンを示すフローチャートである。
【図18】照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図19】図18に示す点灯制御ルーチンにおいて行われるパターン点灯ルーチンを示すフローチャートである。
【図20】(A)は故障した有機EL素子を含む所定の発光エリアにおける故障パターンの一例を模式的に示す平面図であり、(B)はパターン点灯ルーチンを実行した場合の所定の発光エリアの一例を模式的に示す平面図である。
【図21】照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【図22】点灯制御ルーチンの変形例である輝度調整点灯ルーチンを示すフローチャートである。
【図23】(A)は故障した有機EL素子を含む発光面の所定エリアにおける故障パターンの一例を模式的に示す平面図であり、(B)は(A)を輝度調整点灯で制御した一例を模式的に示す平面図である。
【図24】照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンの他の変形例を示すフローチャートである。
【図25】点灯制御ルーチンの他の変形例である温度調整ルーチンを示すフローチャートである。
【図26】第1実施例の図7に示す故障検出ルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【図27】第1実施例の図7に示す故障検出ルーチンの他の変形例を示すフローチャートである。
【図28】本発明の第2実施例に係る照明装置を含むネットワークを模式的に示す構成図である。
【図29】第2実施例の変形例を示すネットワークを模式的に示す構成図である。
【図30】本発明の第3実施例に係る照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図31】図30に示す点灯制御ルーチンにおいて行われる交換時期検出ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、本発明の実施形態について、いくつかの実施例に基づいて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に記載する内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、以下の説明に用いる図面は、何れも本発明に係る照明装置等を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っている場合があり、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていないことがある。さらに、以下の説明で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0101】
<第1実施例>
図1は、本発明の第1実施例に係る照明装置1を構成する有機EL発光パネル2の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、有機EL発光パネル2は基板6上に異なる発光色の複数の有機EL素子4がストライプ状に並べられて構成されている。換言すると、棒状の有機EL素子4が複数、隣り合う2つの有機EL素子が略平行に、且つ等間隔に離間した状態で基板6に配置されている。有機EL素子4は、発光色が赤色の有機EL素子4R、発光色が緑色の有機EL素子4G、及び発光色が青色の有機EL素子4Bからなり、基板6上にはこの記載の順で繰り返し配置されている。なお、発光色に関わらず照明装置1の有機EL素子全般について述べる場合には有機EL素子4と記載し、発光色毎に有機EL素子を区別して述べる場合には有機EL素子4R、有機EL素子4G、有機EL素子4Bと記載することとする。
【0102】
図2に、図1に示した有機EL発光パネル2の概略平面図を示す。有機EL発光パネル2は、後述する点灯制御に対応して複数の発光エリアA1〜Akに区別されている。本実施例では有機EL発光パネル2が1つで構成されており、有機EL発光パネル2の発光色と照明色とは同色になる。なお、有機EL発光パネル2が複数で構成される場合、個々の有機EL発光パネル2の発光色が合成されて照明色となる。
【0103】
(基板)
本実施例において基板6は、ガラス製で板状の透明基板である。なお、基板6には金属板やセラミックス、プラスチックフィルム等が用いられてもよい。特に、本実施例で使用するガラス製の透明基板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、またはポリスルホン等の透明な樹脂基板が望ましい。
【0104】
(有機EL素子)
本実施例において有機EL素子4は、上述したように発光色が赤色の有機EL素子4R、発光色が緑色の有機EL素子4G、及び発光色が青色の有機EL素子4Bがこの記載の順に平行に等間隔で繰り返し基板6上に配置される。
【0105】
図3は図2中のIII−III線に沿う断面図である。各有機EL素子4R、4G、4Bは基板6上に電極層として陽極4aが形成され、電荷輸送層として有機層4bが陽極4aに積層され、陽極4aと一対となる陰極4cが有機層4bに積層されて構成される。
【0106】
陽極4aは有機層4bに正孔を注入する機能を有しており、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物等の金属酸化物、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール等の導電性高分子等により構成される。陽極4aの形成はスパッタリング法や真空蒸着法等により行われる。陽極4aを形成した後に陽極4aに付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させるために紫外線照射やオゾン処理をすることが好ましい。
【0107】
有機層4bは通常、発光層、または正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層から構成されてもよく、さらにそれ以外の層から構成されてもよい。正孔注入層は陽極4aからの正孔注入を容易にするものであり、正孔輸送層は発光層へ正孔を輸送する機能を有している。正孔輸送層は、例えば芳香族アミン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体等の正孔輸送材料から形成される。
【0108】
電子注入層は陰極4cからの電子の注入を容易にするものであり、電子輸送層は発光層へ電子を輸送する機能を有している。電子輸送層は、例えばオキサジアゾール誘導体等の電子輸送材料から形成される。
【0109】
発光層は陽極4a及び陰極4cからそれぞれ注入された正孔及び電子を再結合させて蛍光を放射する。このような発光層を形成するための発光材料は、例えばポリフルオレン誘導体、ポリスピロフルオレン誘導体等である。この発光材料を変えることにより発光層から放射される光は、赤、緑、または青の異なる発光色となる。
【0110】
有機層4bを構成するこれらの層の膜厚は、それぞれ100nm以下であることが望ましい。
【0111】
そして、従来から一般的に行われているように、各有機EL素子4の陽極4aは通常、基板6に形成された透明な電極パターン(図示省略)に沿って電気的に接合され、図示しない透明電極(図示省略)が各有機EL素子4の陰極4cに電気的に接合されることにより、各有機EL素子4を駆動するための電流を供給することができるように構成されている。
【0112】
このように構成された各有機EL素子4R、4G、4Bの配置間隔dは通常、数百μm〜数cmである。このように有機EL素子4R、4G、4Bを配置することにより、有機EL発光パネル2では、各有機EL素子4R、4G、4Bが発した赤、緑、青のそれぞれの光が合成され、有機EL素子4の装着面とは反対側となる基板6の発光面7から照射される合成光は白色光に見える。
【0113】
(照明装置の構成)
図4は、本発明の第1実施例に係る照明装置1の概略を示す概略構成図である。このような照明装置1は、後述するような各有機EL素子4の故障検出及び点灯制御を行うように構成されている。
【0114】
図4に示すように、有機EL素子4は1つの発光色、例えば赤色の発光色の有機EL素子4Rが複数並列に接続されて1つの素子グループ4Rgを構成する。同様に発光色が緑色の有機EL素子4Gも複数並列に接続されて素子グループ4Gg、発光色が青色の有機EL素子4Bが複数並列に接続されて素子グループ4Bgをそれぞれ構成する。このように構成された素子グループ4Rg、4Gg、4Bgのそれぞれに対し、定電流源回路CA1〜CAmが1つずつ配置される。1つの有機EL発光パネル2は上述した各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgを有する発光エリアA1〜Akが複数配置されて形成される。ここで、発光エリアA1は1番目の発光エリアであり、発光エリアAkはk番目の発光エリアである。
【0115】
各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgは素子切り替え回路8に接続されている。素子切り替え回路8は、プロセッサ(コンピューターユニット)10から入力される信号により故障検出及び点灯制御の対象となる有機EL素子4を切り替えて、対象となる有機EL素子4を、対応する定電流源回路CA1〜CAmに接続する。対象として選択された有機EL素子4と、これに対応した定電流源回路とが接続されると、この定電流源回路を介して対象の有機EL素子4に電源回路14から電流が流れ、このときの電流が対象の有機EL素子4に接続されている定電流源回路で所定の電流値に調整される。また、電源回路14はプロセッサ10に接続されており、プロセッサ10により出力電圧が制御される。ここで、定電流源回路CA1は1番目の定電流源回路、定電流源回路CAmはm番目の定電流源回路である。さらに、対象として選択された有機EL素子4に対応して設けられている定電流源回路を定電流源回路CAjとする。
【0116】
素子切り替え回路8には各有機EL素子4の陽極側が接続されており、各有機EL素子4の陽極側の電圧(以下、有機EL素子4の電圧という)が切り替え回路8における有機EL素子4の選択に対応し、A/D変換器20を介してプロセッサ10に入力される。詳しくは、図示しないが素子切り替え回路8内で対象となる各有機EL素子4の切り替えに対応して、検出素子として選択された各有機EL素子4の電圧がプロセッサ10により測定されるようになっている。
【0117】
温度センサ22は各有機EL発光パネル2または各有機EL素子4にそれぞれ設けられ、各有機EL発光パネル2または各有機EL素子4の温度を測定する。測定された温度はA/D変換器24を介してプロセッサ10に各有機EL発光パネル2または各有機EL素子4の温度情報の計算用パラメータとして入力される。プロセッサ10は中央演算処理装置(以下、CPU)やメモリ等を含んで構成され、入力された電圧値や温度等から制御量を算出し、素子切り替え回路8を介して有機EL素子4を制御したり電源回路14や定電流源回路CA1〜CAmを制御したりする。また、プロセッサ10にはメモリ26が接続されており、メモリ26に対してデータの読み書きを行う。メモリ26は不揮発性メモリからなり、例えばROMやRAM等から構成される。
【0118】
(照明装置の電気回路構成)
図5は、本実施例の照明装置1における1つの発光エリアの回路を一部を抜粋した電気回路図である。図5に示すように、発光色が赤色の有機EL素子4R1の陽極側はスイッチSW1を介して、有機EL素子4R2の陽極側がスイッチSW4を介して定電流源回路CA1にそれぞれ接続されている。従って、有機EL素子4R1と有機EL素子4R2とは同じ素子グループ4Rgを形成している。発光色が緑色の有機EL素子4G1の陽極側はスイッチSW2を介して、有機EL素子4G2の陽極側はスイッチSW5を介して定電流源回路CA2にそれぞれ接続されている。従って、有機EL素子4G1と有機EL素子4G2とは同じ素子グループ4Ggを形成している。発光色が青色の有機EL素子4B1の陽極側はスイッチSW3を介して、有機EL素子4B2の陽極側はスイッチSW6を介して定電流源回路CA3にそれぞれ接続されている。従って、有機EL素子4B1と有機EL素子4B2とは、同じ素子グループ4Bgを形成している。そして、各定電流源回路CA1〜6は電源回路14に接続されている。なお、図5では、説明の便宜上2つずつの有機EL素子4で各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgを構成しているが、各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgにおける有機EL素子4の数はこれに限定されるものではなく、より多くの有機EL素子4で各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgを構成してもよい。
【0119】
なお、図示しないが、素子切り替え回路8内ではプロセッサ10からの制御信号で各スイッチSWのON/OFFを切り替えて、電流を供給する有機EL素子4を選択する。後述するように、制御信号が各スイッチSW1〜SWnに所定の時間ずつずらして順次印加されることにより、スイッチSW1〜SWnのON/OFFが順次切り替えられる。このようなスイッチSW1〜SWnが有機EL素子4と、これに対応する定電流源回路との間に介装されている。ここで、スイッチSW1は1番目のスイッチ、スイッチSWnはn番目のスイッチを示す。さらに、対象として選択された有機EL素子4に対応するスイッチをスイッチSWiとする。なお、上記の制御例は定電流値の制御を主とした制御方式例であるが、図5において各スイッチSW1からスイッチSW12を周期的にON/OFFさせ、DUTYを可変するPWM制御としてもよい。
【0120】
(照明装置の制御)
このように構成された本発明の第1実施例に係る照明装置1の制御について、以下に説明する。図6は、照明装置1の制御を示すフローチャートである。以下に述べる処理は、メモリ26に格納されている当該フローチャートに従って構成された各プログラムをプロセッサ10で所定の周期毎に実行することにより行われる。
【0121】
(有機EL素子の故障検出)
ステップS1では、照明装置1における全ての有機EL素子4の電圧を順次測定し、故障の検出を行う(故障検出ステップ)。詳しくは、図7に故障検出ルーチンのフローチャートを示しており、同フローチャートに従い、図面を参照しながら説明する。
【0122】
ステップS11では、プロセッサ10から検出の対象となる素子として選択された有機EL素子4の数iが、有機EL素子4の全総数n以下か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には全ての有機EL素子4の故障検出が完了していないのでステップS12へ進み、当該判定結果が偽(No)と判定された場合には全ての有機EL素子4の故障検出が終了したとして、当該故障検出ルーチンを終了してステップS2へ進む。
【0123】
ステップS12では、検出対象の有機EL素子4に対して第1の故障判定を行う。この際に、プロセッサ10は所定の電流値を指令値として検出対象の有機EL素子4に対応して設けられている定電流源回路CAjに出力する。指令値を受け取った定電流源回路CAjは、電源回路14から各有機EL素子4に流れる電流をプロセッサ10から指令された所定の電流値となるように調整する。各有機EL素子4は、このような電流の供給により駆動され、点灯状態となる。第1の故障判定は、このような状態の下で行われる。
【0124】
詳しくは、図8に第1の故障判定ルーチンのフローチャートを示しており、同フローチャートに基づき説明する。ステップS121では、検出対象の有機EL素子4を指定する。
【0125】
詳しくは、図5での電気回路図においてスイッチSW1〜SWnに印加する制御信号のタイミングチャートの一例を図9に示す。図9に示すように、制御信号はパルス電圧であり、ステップS12の第1の故障判定を行う度にパルス電圧を所定の時間ずつずらしてスイッチSW1〜SWnへ順次印加することにより、パルス電圧が印加されたスイッチSWiが閉じる。スイッチSWiが閉じることにより、検出対象の有機EL素子4が選択され、選択された有機EL素子4に電流が流れる。これにより、スイッチSWiに接続されている有機EL素子4の電圧測定が可能な状態となる。
【0126】
続くステップS122では、スイッチSWiの接続に対応して電圧の検出対象を選択された有機EL素子4に切り替えることにより、検出対象の有機EL素子4の電圧Viを測定する(測定ステップ)。こうして測定された有機EL素子4の電圧Viは、A/D変換器20でA/D変換した後にプロセッサ10へ入力される。
【0127】
ステップS123では、検出対象の有機EL素子4を流れる電流値に対応し、故障判定に用いる基準電圧範囲を予めメモリ26に登録されている基準電圧範囲マップから読み込む。上述したように、検出対象の有機EL素子4は所定の定電流で駆動されているので、電流値は既定値となる。
【0128】
当該ステップS123で使用する基準電圧範囲マップの基となる有機EL素子4の電圧と電流との関係を示すグラフの一例を図10に示す。このグラフには、有機EL素子4での標準的な電流−電圧特性を示す特性曲線IV1、有機EL素子4の製造ばらつきに起因した電気的特性の上限を示す特性曲線IV2、及び有機EL素子4の製造ばらつきに起因した電気的特性の下限を示す特性曲線IV3が示されている。ここで、ある電流値における特性曲線IV2、IV3間の電圧範囲は、当該電流値に対応した特性曲線IV1上の標準的な電圧値に、各有機EL素子4の電気的特性の個体差を加味したものとなる。ステップS123で用いる基準電圧範囲マップには、このような特性曲線に基づいて有機EL素子4に流れる電流を様々に変化させた時の特性曲線IV2と特性曲線IV3とによって定まる電圧範囲が基準電圧範囲として定められている。
【0129】
ステップS124では、検出対象の有機EL素子4の温度Tiを温度センサ22により検出してA/D変換器24を介してA/D変換した後にプロセッサ10へ入力する。プロセッサ10は、予めメモリ26に登録されている温度補償係数マップを使用して、検出された温度Tiに対応する温度補償係数を求める。
【0130】
詳しくは、図10、11を使用して説明する。図11は、当該ステップS124で使用する温度補償係数マップの基になる素子電圧と素子温度との関係を示すグラフの一例である。ここで、素子温度とは有機EL素子4の表面温度である。なお、図11の例では、有機EL素子4に流す電流を10mAとしている。図11に示すように、有機EL素子4の素子電圧は素子温度により変化するため、図10に示す標準的な特性曲線IV1の10mAにおける電圧値と異なる場合がある。そこで、これを補償するための温度補償係数を求める必要がある。従って温度補償係数は、例えば図10の関係から駆動電流10mAで有機EL素子4の素子温度25℃のときの標準的な素子電圧が7.5Vであるとすると、素子温度が70℃に変化したときには図11の関係から測定される素子電圧が6.0Vになる。従って、この場合の温度補償係数は6.0/7.5=0.8となる。このように温度補償係数を各素子温度に対して計算し、予め温度補償係数マップとしてメモリ26に登録しておく。ステップS124では、このようにしてメモリ26に登録された温度補償係数マップから温度補償係数を求める。
【0131】
プロセッサ10は有機EL素子4毎に点灯時間を積算しており、次のステップS125では、検出対象の有機EL素子4における点灯時間の積算時間をプロセッサ10から取得する。取得した点灯時間の積算時間を、予めメモリ26に登録されている点灯時間の積算時間用の経時補償係数マップから経時補償係数を求める。経時補償係数は、当該点灯時間の積算時間に対応した補償と、初期の電源投入時から所定期間に対応した補償とを含む。
【0132】
経時補償係数について、詳しくは図10、図12、及び図13を使用して説明する。図12は、当該ステップS125で使用する点灯時間の積算時間に対応する経時変化の補償の基となる素子電圧と点灯時間との関係の一例を示すグラフであり、有機EL素子4を駆動電流10mAで駆動する場合の素子電圧の経時変化を示している。図12に示すように、有機EL素子4の点灯時間の積算時間が増加するにつれて、有機EL素子4の非導通故障に伴い素子電圧が上昇する傾向にある。
【0133】
従って経時補償係数は、例えば駆動電流10mAで有機EL素子4の点灯時間の積算時間が0時間のときの標準的な素子電圧が7.5Vであるとすれば、点灯時間の積算時間が600時間になると素子電圧が9.0Vになる。この場合の経時補償係数Ctは、9.0/7.5=1.2となる。
【0134】
一方、初期の電源投入時においては特に、有機EL素子4の電流−電圧特性が不安定であるため、このような特性の初期変動についても考慮する必要がある。図13は、当該ステップS125で使用する経時変化補償係数マップの基になる素子電圧と点灯時間の積算時間との関係の一例を示すグラフである。図13の例では、有機EL素子4を3個サンプルとして選択し、選択した各有機EL素子4を駆動電流10mAで駆動する場合の素子電圧の初期変動を示している。図13に示すように、素子電圧は有機EL素子4への電源投入時から20時間辺りをピークに電圧値が下がり、40時間以上経過後に電源投入時の電圧値に戻る傾向にある。ここで、20時間辺りをピークに素子電圧が下がる現象は、通電により有機EL素子4内の不純物に起因して点灯に寄与しない電流が流れてリーク電流が増加するために発生する。
【0135】
従って経時補償係数には、初期変動特性に対する補正も加えられている。初期変動は初期不良の発生と関連があり、特に有機EL素子の場合には、点灯時間が短いと有機EL素子を構成する層同士のマイグレーションが発生し、電流が流れやすくなる傾向にある。しかし、これは点灯時間の積算時間が40時間付近で安定し、この傾向はなくなる。このような初期変動特性として、例えば、駆動電流10mAで有機EL素子4の点灯時間の積算時間が0時間のときの標準的な電圧が7.5Vであるとすれば、点灯時間の積算時間が20時間になる場合の素子電圧は3つの有機EL素子4の各素子電圧の平均値とみなすことができるので、7.4Vとなる。従って、この場合の経時補償係数はCt×7.4/7.5≒0.987Ctとなる。このように、初期変動に対する補償を含めた経時補償係数を各積算時間に対して計算し、経時補償係数マップとしてメモリ26に予め登録しておく。当該ステップS125では、このようにしてメモリ26に登録した経時補償係数マップから経時補償係数を求める。
【0136】
続くステップS126では、上記ステップS124、S125で求めた温度補償係数及び経時補償係数を上記ステップS123で読み込んだ基準電圧範囲に乗算して、有機EL素子4の温度特性と、点灯時間の積算時間に対する電圧変化特性及び初期変動とが反映された基準電圧範囲Vmin〜Vmaxを求める(基準範囲設定ステップ)。なお、基準電圧範囲Vmin〜Vmaxは有機EL素子4の発光色毎に異なる範囲とするのが好ましい。これにより、発光色の異なる有機EL素子4の電気的特性の違いがある場合でもそれに対応して有機EL素子4の故障をより的確に検出することができるようになる。
【0137】
このような基準電圧範囲の補正を行うことにより、有機EL素子4の使用状態や周囲の環境による影響がある場合でも的確に有機EL素子4の故障を検出することができ、故障の検出精度を向上させることができる。特に、有機EL素子4の初期変動は、初期の使用から40時間以内に生じやすいので、40時間以内の場合に対応して基準電圧範囲の補正を行うことにより、故障の検出精度を向上させることができる。また、基準電圧範囲Vmin〜Vmaxは、有機EL素子4の図10に示すような電流−電圧特性に生じうる電気的特性の個体差を含んで設定されるので、有機EL素子4に製造時の電気的特性のばらつきがある場合でも的確に故障を検出することができる。
【0138】
ステップS127では、上記ステップS122で測定した電圧Viが上記ステップS126で補正した基準電圧範囲Vmin〜Vmax以内にあるか否かを判定する(第1の故障判定ステップ)。当該判定が真(Yes)の場合にはステップS128で正常と判定して第1の故障判定ルーチンを終了してステップS13へ進み、当該判定結果が偽(No)と判定された場合にはステップS129へ進む。
【0139】
ステップS129では、上記ステップS122で測定した電圧Viが上記ステップS126で補正した基準電圧範囲の下限値Vminより小さいか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS130で短絡故障と判定し、当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS131で非導通故障(例えば、断線、電荷の蓄積等)と判定して、第1の故障判定ルーチンを終了してステップS13へ進む。これにより、故障状態をより的確に把握することができる。
【0140】
図7に戻り、ステップS13では、上記ステップS12の第1の故障判定ルーチンで検出対象の有機EL素子4が正常か否かを判定する。当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS14へ進み、当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS19へ進む。
【0141】
ステップS14では、上記ステップS12の判定結果が短絡故障であったか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS15へ進む。
【0142】
ステップS15では、検出対象の有機EL素子4に対して第2の故障判定を行う。ここで、図14に正常な有機EL素子に電圧を印加した場合のグラフを示す。図14に示すグラフは、正常な有機EL素子のV−I特性の近似式で表される。詳しくは、有機EL素子両端の電圧をVd、有機EL素子に流れる電流をId、A、Rは定数、eを電荷素量とし、有機EL素子を構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnとの差に基づき、ビルドイン・ポテンシャルVbiが、Vbi=(φp−φn)/eで求められるとすると、Vd≦Vbiの場合、有機EL素子に流れる電流はId≒Vd/Rで表され、Vd>Vbiの場合にはId≒Vd/R+A・(Vd−Vbi)2で表される。
【0143】
図14に示す特性に対し、上述した近似式ではビルドイン・ポテンシャルVbiの近傍ではやや精度が落ちるものの、おおよその有機EL素子の特性と合致したものとなっている。例えば、正極に使用される電極材料の仕事関数は、ITOでは4.8eV、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)では5.1eVとなる。また、負極に使用される電極材料の仕事関数は、Caで3.0eV、MgをMg−Ag合金として使用した場合には3.7eV、LiをAl−Li合金として使用した場合には2.9eVとなる。従って、有機EL素子で実際に使用される電極材料の仕事関数からビルドイン・ポテンシャルVbiを計算するとおおよそ1.1〜2.2Vの範囲になる。
【0144】
有機EL素子では、有機EL素子を構成する正負の電極間の仕事関数の差よりも大きなエネルギーを加えることで、初めて点灯可能となる電荷の移動が始まり、印加電圧の上昇と共に大きな電荷の流れが発生する。この際の動作抵抗は、素子電圧が0からVbiまでの間で電圧依存性のないほぼ一定の特性となる。ビルドイン・ポテンシャルVbiよりも高い電圧領域では、有機EL素子に流れる電流が印加電圧Vdに対し(Vd−Vbi)の2乗特性で急激に増加する。図14に示した素子電圧Vdと素子電流Idとの関係を、I−V特性で表したグラフの一例を図15に示す。曲線IVnmlが正常な有機EL素子のI−V特性であり、直線IVabnが短絡故障した有機EL素子のI−V特性である。
【0145】
第2の故障判定を定電流駆動とする場合、図15に示すように正常時と短絡故障時とにおける有機EL素子4の電圧の差が大きくなるということから、有機EL素子4に流す電流は、正常な有機EL素子4の両端に印加される電圧が正負電極の仕事関数から求められる上述したビルドイン・ポテンシャルVbiとなるときの電流値がよい。但し、有機EL素子4が正常であるか否かを正確に判定するためには、ビルドイン・ポテンシャルVbiよりも若干高めの電圧値に対応する電流値を流すようにするのがよい。より詳しくは、有機EL素子4に供給する電流は、有機EL素子4に印加する電圧をビルドイン・ポテンシャルVbiと等しくした場合に流れる標準電流の1倍以上1.8倍以下、電流値や検出回路の精度に余裕を持たせるためには1.2倍以上1.8倍以下とするのが好ましい。これをビルドイン・ポテンシャルVbiから計算すると、第2の故障判定で有機EL素子4に印加する電圧は1.1〜4Vの範囲となる。
【0146】
また、定電流駆動とする場合に第2の故障判定で使用する基準電圧はビルドイン・ポテンシャルVbi以下の電圧とするが、正常な有機EL素子4を正確に判定するためにビルドイン・ポテンシャルVbiよりも低い電圧値とするのが好ましい。一方、短絡故障した有機EL素子4を正確に判定するためにはビルドイン・ポテンシャルVbiよりも高い電圧値がよい。但し、定電流駆動とする場合に供給する電流は短絡故障と正常な有機EL素子4との特性差が大きくなる電流領域としているため、基準電圧はビルドイン・ポテンシャルVbiの半分まで下げてもよい。即ち、基準電圧はビルドイン・ポテンシャルVbiの0.5倍から1倍の電圧値が好ましい。これにより、判定電圧の高い検出が不要となる簡易な回路で高精度な判定が可能となる。
【0147】
なお、当該ステップS15の第2の故障判定は検出対象の有機EL素子4が非点灯となるような定電圧駆動で行ってもよく、逆方向の電圧を印加して行ってもよい。この際に、プロセッサ10は電源回路14の出力電圧を有機EL素子4が点灯しない所定の一定値まで下げると共に検出対象の有機EL素子4に対応して設けられている定電流源回路CAjはバイパスし、有機EL素子4が非点灯となる定電圧駆動とする。このときの所定の電圧値は、有機EL素子4の短絡故障と非短絡故障との特性差が明確になる0.1〜4V程度が好ましい。
【0148】
定電圧駆動により第2の故障判定を行う場合について、以下に説明する。ここで、有機EL素子4に印加する電圧は、故障判定が容易なビルドイン・ポテンシャルVbiが好ましいが、有機EL素子4の製造ばらつきを考慮するとビルドイン・ポテンシャルVbiより低い電圧とするのがよい。しかし、回路の設計の容易さを考慮すると有機EL素子4の点灯時に近い電流を流すようにする回路構成の方が故障判定を行いやすいため、印加する電圧は高い方がよい。従って、有機EL素子4に印加する電圧値は、ビルドイン・ポテンシャルVbiの0.7から1.0倍とするのが好ましい。この場合の基準電流値Ibは、有機EL素子4が正常な場合にビルドイン・ポテンシャルVbiに等しい電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.5から8倍とするのが好ましい。より好ましくは、2から4倍である。有機EL素子4の測定値がこの基準電流値Ib以下の場合に、有機EL素子4は正常と判定される。
【0149】
本実施例では、前述したように定電流駆動を採用しており、ステップS15の第2の故障判定について、詳しくは、図16の第2の故障判定ルーチンのフローチャートから説明する。ステップS151では、上記ステップS121で指定された検出対象の有機EL素子4に印加される電圧Viを測定し、A/D変換器20を介してA/D変換した後にプロセッサ10へ入力する(測定ステップ)。
【0150】
ステップS152では、検出対象の有機EL素子4に供給される電流に対する基準電圧値Vbを、予めメモリ26から読み込む(基準範囲設定ステップ)。上述したように、検出対象の有機EL素子4は所定の定電流で駆動されているので、電流値は既定値となる。
【0151】
ステップS153では、上記ステップS151で測定した電圧Viが上記ステップS152で読み込んだ基準電圧値Vb以下か否かを判定する(第2の故障判定ステップ)。当該判定結果が真(Yes)の場合には続くステップS154で正常と判定し、当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS155で短絡故障と判定し、第2の故障判定ルーチンを終了してステップS16へ進む。これにより、短絡箇所がある場合には大きな電流が流れることからより明確に故障か否かを区別することができるので、短絡故障の検出精度を向上させることができる。また、故障検出対象の有機EL素子4を点灯するように駆動させて測定した電圧値Viから短絡故障と判定された有機EL素子4を対象として、さらに当該有機EL素子4を非点灯駆動させて測定した電圧値Viから、より精度の高い短絡故障の判定を行うことにより、故障判定を効率的に進めながら精度の高い検出を行うことができる。
【0152】
図7に戻り、ステップS16では上記ステップS15で短絡故障が検出されたか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS17へ進み、当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS19へ進む。
【0153】
(有機EL素子の短絡故障修復)
ステップS17では、短絡故障と判定された検出対象の有機EL素子4に対して短絡故障箇所の修復を行う(短絡故障修復ステップ)。当該短絡故障修復は、上記ステップS16で短絡故障と判定された有機EL素子4にパルス状の電圧を印加することにより、短絡箇所を修復するものである。詳しくは、図17に示す短絡故障修復ルーチンのフローチャートから説明する。
【0154】
ステップS171では、予めメモリ26に登録された電圧パルス印加の規定回数(所定回数)Psmaxを読み込む。短絡箇所を確実に切断するためには短絡箇所が切断するまで何回も印加するのが好ましいが、印加回数の増加により著しく故障回復が増すわけではない。そのため、正常な有機EL素子4の非導通故障を防ぐためには少ない印加回数とするのが好ましい。従って、規定回数Psmaxは2回以上10回以下が好ましい。
【0155】
ステップS172では、修復対象の有機EL素子4に所定のパルス幅の電圧パルスを印加し、短絡箇所を切断する。これにより、修復対象の有機EL素子4を修復することが可能となる。なお、短絡箇所に印加する電圧パルスは、確実に短絡箇所を切断するためには高い電圧であることが好ましいが、電圧パルスを印加することで有機EL素子4の非導通故障が発生する可能性があることから低い電圧であることが好ましい。具体的には、例えば大きさが10V以上50V以下の逆方向の電圧パルスが望ましい。より好ましくは、12V以上30V以下の逆方向の電圧パルスである。このように逆方向の電圧パルスを印加することにより、修復対象の有機EL素子4を非点灯のまま修復することができるので、修復に伴う不要な点灯を無くして目立たずに修復させることが可能となる。
【0156】
また、有機EL素子4を点灯駆動させる電圧より大きい、例えば8V以上20V以下、好ましくは10V以上16V以下の順方向の過電圧パルス、または有機EL素子4を点灯駆動させる電流より大きい、例えば通常点灯時の電流の3倍以上20倍以下の過電流パルスでもよい。過電流パルスを短絡箇所に流す場合、過電流パルスの大きさは短絡箇所を確実に切断するために大きい電流値が好ましいが、過電流パルスにより有機EL素子4の非導通故障が発生する可能性があることから小さい電流値であることが好ましい。
【0157】
順方向の過電圧パルスを印加する場合、過電圧パルスの大きさは短絡箇所を確実に切断するために高い方が好ましいが、有機EL素子4の非導通故障が発生するためにより低い電圧であることが好ましい。通常の点灯時よりも順方向電圧を上げて過電圧パルスを印加する場合、正常な有機EL素子4の点灯電流が急増するため、有機EL素子4の発熱が増加し短絡箇所の切断が行いやすくなるものの、有機EL素子4の温度が上昇するために非導通故障が発生する。従って、短時間のパルスを使用して短絡箇所の切断を行う。ここで、過電圧パルスの印加時間は、有機EL素子4が持つ荷電容量に電荷を蓄積して得られる発熱により短絡箇所を切断するため、切断に必要な有機EL素子4の温度を得るために十分長い時間とするのが好ましいが、有機EL素子4全体の温度が過剰に上昇すると有機EL素子4の非導通故障を招く可能性があるため短い方が好ましく、印加電圧が高いほど短い時間とするのがよい。詳しくは、0.5ms以上500ms以下とするのが好ましい。このようなパルスでも短絡箇所を切断することが可能である。続くステップS173では、電圧パルスの印加回数Psiをインクリメントする。
【0158】
ステップS174では、上記ステップS173でインクリメントした電圧パルスの印加回数Psiが上記ステップS171で読み込んだ規定回数Psmaxより小さいか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には短絡故障修復ルーチンを終了し、上記ステップS15へ戻り第2の故障判定ルーチンを実行する。第2の故障判定ルーチンでは上述した第2の故障判定を再度行うので、上記ステップS172で修復対象の有機EL素子4に印加した電圧パルスにより、短絡箇所を切断することができたか否かを的確に判定することができる。
【0159】
一方、上記ステップS174から図7に示す上記ステップS15に戻り第2の故障判定ルーチンを実行し依然として短絡箇所が修復されていないと判定された場合には、再度ステップS17の短絡故障修復ルーチンを実行して短絡箇所の修復を行う。このように、規定回数Psmaxに達するまで短絡箇所の修復と短絡箇所の修復判定を繰り返して行うことで、短絡箇所をより確実に修復することが可能となる。また、短絡故障したと判定された時と同じ判定をするので、より確実に短絡故障箇所が修復したか否かを判定することができる。
【0160】
一方、上記ステップS174で偽(No)と判定された場合には、ステップS175へ進む。ステップS175では、パルスの印加回数を規定回数Psmax印加しても短絡箇所の修復ができなかったとして、修復対象の有機EL素子4を修復困難な素子と判断し、識別情報を含む素子情報(個体情報)をメモリ26に登録して、短絡故障修復ルーチンを終了し、ステップS19へ進む。これにより、故障素子を明確に区別することができる。
【0161】
このように、第1の故障判定で短絡故障と判定された後に第2の故障判定を行い、この故障判定で短絡故障と判定と判定された後に短絡故障修復を行うようにすれば、より確実に短絡故障している有機EL素子を検出することができる。
【0162】
(照明装置の点灯制御)
次に、図6に示したステップS2では、上記ステップS1での故障検出結果に基づき、正常な各有機EL素子4に対応する素子切り替え回路8のスイッチSWを全てON状態にして点灯制御を行う(点灯制御ステップ)。当該点灯制御は、図18に示す点灯制御ルーチンのフローチャートに従って行われる。以下、同フローチャートに従い、図面を参照しながら説明する。
【0163】
ステップS21では、上記ステップS175及びステップS185の少なくともいずれか一方でメモリ26に登録された故障素子情報を読み込む。当該故障素子情報には、故障と判定された有機EL素子4の位置情報が含まれている。
【0164】
ステップS22では、点灯モードがONであるか否かを判定する。ここで点灯モードとは照明装置1の作動・停止切り替え用スイッチ(図示省略)がONされている状態でもよく、または他の方法でプロセッサ10に照明装置1をONする信号が入力されている状態でもよい。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS23へ進み、当該判定結果が偽(No)の場合には点灯モードがOFFになったと判定して点灯制御ルーチンを終了する。なお、当該ステップS22で点灯モードの判定を行っているが、以下に述べるステップS23〜S25の実行中に点灯モードがOFFになった場合にはその時点で点灯制御ルーチンを終了するものとする。従って、点灯モードがOFFの場合は、ONとなるまで上記ステップS1の故障検出が繰り返されることになる。
【0165】
また、以下に述べるステップS23〜S25では、点灯制御を行うために予めメモリ26に登録された有機EL素子4の電流値に対する有機EL素子4の輝度を定義した電流−輝度特性マップ、有機EL素子4の電流値または電圧値と電流値の積に対する表面温度を定義した発熱パラメータ、有機EL発光パネル2の発光色に対する各有機EL素子4の輝度を定義した各発光色の特性バランスデータ、有機EL素子4に流すことのできる最大電流値、及び有機EL素子4の発光輝度に対する視覚度補正マップ等を使用する。
【0166】
ステップS23では、分割された発光エリア毎にパターン点灯を行う。なお、当該ステップS23において、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障と判定された有機EL素子4に対応する素子切り替え回路8のスイッチSWをOFFにして給電を停止するのが好ましい。給電を停止することにより、無駄な電流の供給を停止することができると共に、故障と判定された有機EL素子4のさらなる故障や非導通故障が発生することを防ぐことができる。詳しくは、図19に示したパターン点灯ルーチンのフローチャートから説明する。
【0167】
ステップS231では、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障した有機EL素子4の位置情報を取得して故障した有機EL素子4の分布状況を求め、上述したような故障素子分布マップや電圧パラメータ、電流パラメータ、または電流パラメータを使用して求められる温度パラメータを使用して、故障した有機EL素子4を消灯した状態で正常な各有機EL素子4のみを使用して有機EL発光パネル2全体として規則的な点灯パターンになるような点灯パターンを発光エリア毎に求める。
【0168】
ステップS232では、上記ステップS231で求めた点灯パターンを形成するように発光エリア毎に正常な各有機EL素子4を点灯/非点灯にして、上記ステップS231で求めた点灯パターンを形成し、パターン点灯ルーチンを終了して上記ステップS22へ戻る。なお、当該ステップS23を繰り返す度に点灯パターンを変更するようにしてもよい。これにより、発光エリア毎の各有機EL素子4の発熱の偏りを低減して非導通故障を防ぐことができるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0169】
上述したパターン点灯ルーチンによる点灯制御の一例を図20に示す。図20(A)にはパターン点灯ルーチンを実行しない場合の1つの発光エリアの故障パターンの一例を示す。発光エリアA1において緑色の発光色の有機EL素子4G2が故障して非点灯となる場合、有機EL発光パネル2を見たときに発光エリアA1に黒い線が入り見栄えが悪く、発光エリアA1において各有機EL素子4の光を合成して得られる合成光も白色ではなくなり、照明光の色に偏りが出てしまう。一方、パターン点灯ルーチンを実行すると図20(B)のように、故障した有機EL素子4G2と同じ発光色の有機EL素子4G1を意図的に非点灯とする。この点灯パターンを全ての発光エリアA1〜Akで行うことにより、各有機EL発光パネル2に所定の規則的な点灯パターンが形成される。パターン点灯で制御する場合には照明装置1の照明光の色が部分的に白色ではなくなるものの、装飾照明として照明光の色の偏りがなくなって違和感なく見栄えがよくなる。また、照明装置1の照明光の品質を維持することができる。
【0170】
このようなパターン点灯ルーチンに代えて、点灯制御の変形例として図21にフローチャートを示す点灯制御ルーチンにより発光エリア毎に発光面における輝度を略均一にする輝度調整点灯を行ってもよい。図21のフローチャートでは図18のフローチャートにおけるステップS23のパターン点灯ルーチンがステップS24の輝度調整点灯ルーチンに置き換えられている。このステップS24について、詳しくは図22に示す輝度調整点灯ルーチンのフローチャートから以下に説明する。
【0171】
ステップS241では、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障した有機EL素子4の位置情報を取得して故障した有機EL素子4の分布状況を求め、上述したような電流−輝度特性マップや発光輝度に対する視覚度補正マップを使用して、照明装置1全体の輝度が平均化されるように、故障した有機EL素子4を含む発光エリア内で故障した有機EL素子4と同じ発光色の輝度を上げて当該発光エリアで得られる合成光の色を他の発光エリアで得られる合成光の色に近づけると共に、同じ所定エリアで故障した有機EL素子4と異なる発光色の輝度を下げることにより輝度のむらをなくす。このときこれらの輝度の調整のため、電流−輝度特性マップから電流の変化量を求め、さらに視覚度補正マップを使用して求めた電流の変化量を補正し、プロセッサ10から該当する定電流源回路に指令する。
【0172】
ステップS242では、上記ステップS241で求めた電流の変化量から、該当する発光エリアの正常な各有機EL素子4の電流を調整し、輝度調整点灯ルーチンを終了する。なお、当該輝度調整点灯ルーチンを繰り返して実行する度に、輝度の調整量を所定時間毎に変更するようにしてもよい。これにより、有機EL発光パネル2全体の発熱の偏りを低減して非導通故障を防ぐことができるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0173】
図23に上述した輝度調整点灯ルーチンによる点灯制御の一例を示す。図23(A)に輝度調整点灯ルーチンを実行しない場合の1つの発光エリアの故障パターンの一例を示す。発光エリアA1において緑色の発光色の有機EL素子4G2が故障して非点灯となる場合、図20(A)と同様に局部的に色むらが観察される。これを輝度調整点灯で制御する場合には、図23(B)に示すように、発光エリアA1内で故障した有機EL素子4G2と同色の有機EL素子4G1の輝度を上記ステップS241で求めた輝度上昇量だけ上げる。このような輝度の調整により、発光エリアA1の輝度が上昇するので、故障した有機EL素子4G2とは異なる発光色の各有機EL素子4R1、4R2、4B1、4B2の輝度を上記ステップS241で求めた輝度下降量だけ下げてこれを補償する。輝度調整点灯ルーチンを実行した場合には、故障した有機EL素子4G2周辺の正常な各有機EL素子4R1、4R2、4G1、4B1、4B2の輝度を調整することにより発光面7に故障素子を含む局所的な部分では色むらが発生するものの、発光エリアA1全体としては合成光の輝度が略平均化される。
【0174】
上述した輝度調整点灯では、有機EL素子の短径の1/5角のエリア内における輝度の偏差が15%以内となるように制御する。ここで短径とは、有機EL素子が長方形の場合は短手方向の長さ、円形の場合は直径、楕円形の場合は短径のことを示している。また、有機EL素子の輝度を発光色毎に調整するために、有機EL素子の短径の1/5角のエリアにおける色差が標準値に対してMacAdam3Stepに収まるように制御する。なお、輝度調整点灯はこれに限られず、例えば故障素子からの距離に応じて正常素子の輝度に勾配を持たせるようにしてもよい。詳しくは、故障素子に近い正常素子ほど輝度を低くし、故障素子から離れるほど輝度を高くしてもよいし、故障素子に近い正常素子ほど輝度を高くし、故障素子から離れるほど輝度を低くなるように制御してもよい。
【0175】
このような輝度調整点灯ルーチンに変えて、点灯制御の他の変形例として図24にフローチャートを示す点灯制御ルーチンにより発光エリア毎に温度調整点灯を行ってもよい。図24のフローチャートでは、図21のフローチャートにおけるステップS24の輝度調整点灯ルーチンがステップS25の温度調整点灯ルーチンに置き換えられている。このステップS25について、詳しくは図25に示す温度調整点灯ルーチンのフローチャートから以下に説明する。
【0176】
ステップS251では、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障した有機EL素子4の位置情報を取得して故障した有機EL素子4の分布状況を求め、各有機EL素子4に印加する電圧と電流の積と輝度効率パラメータとを使用して算出される発熱量から求められる各有機EL素子4の上昇分の温度に基づき、各有機EL素子4の表面温度が略均一になるように各発光色毎に電流の供給量を算出し、プロセッサ10から各定電流源回路CA1〜CAmに指令する。ここで有機EL素子の短径の1/5角のエリア内における温度のばらつきが10℃以内となるように制御する。
【0177】
ステップS252では、各定電流源回路CA1〜CAmは、上記ステップS251で求めた電流の供給量から正常な各有機EL素子4へ供給される電流値を調整し、温度調整点灯ルーチンを終了する。なお、当該温度調整点灯ルーチンを繰り返して実行する度に、発光面7の表面温度を所定時間毎に変更するようにしてもよい。これにより、発熱の偏りを低減して非導通故障を抑制させることができるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0178】
このように、本実施例によれば、照明装置1を構成する全ての有機EL素子4に対して故障検出を行い、故障検出で検出された故障した有機EL素子4の分布状況に基づいて正常な各有機EL素子4を使用して発光面7の点灯制御を行う。このような故障検出及び点灯制御を実行することにより、故障した有機EL素子4を的確に検出することができると共に、故障による非点灯状態を目立たなくすることができる。
【0179】
さらに、有機EL素子4の故障検出前に、予め基準電圧範囲マップ、温度補償係数マップ、点灯時間の積算時間に対する補償及び初期変動に対する補償を含む経時補償係数マップを予めメモリ26に登録しておくことにより、プロセッサ10の演算負荷を低減して迅速に基準電圧範囲を補正することができる。
【0180】
(故障検出の変形例)
さらに、上記第1実施例の変形例について以下に説明する。この変形例では、故障検出ルーチンにおいて、ステップS15の第2の故障判定ルーチンを除いたものであり、図26に故障検出ルーチンの変形例のフローチャートを示す。
【0181】
図26に示すように、ステップS12で第1の故障判定ルーチンにおいて検出対象の有機EL素子4を点灯駆動させて故障判定し、故障を検出した場合にはステップS14で短絡故障か非導通故障かを判定する。短絡故障の場合にはステップS17の短絡故障修復ルーチンで該当する有機EL素子4の短絡箇所を修復する。ステップS17で該当する有機EL素子4の短絡箇所を修復した後に当該短絡箇所が修復したか否かを判定するために、ステップS17の短絡故障修復ルーチンを行った後に再度ステップS12へ戻る。
【0182】
このように、短絡箇所を修復した後に故障と判定された時と同じ駆動方法で、該当する有機EL素子4を点灯駆動にして故障判定を行うことにより、短絡故障箇所が修復したか否かをより確実に判定することができる。
【0183】
また、上記第1実施例の他の変形例について説明する。この変形例では、故障検出ルーチンにおいて、ステップS12の第1の故障判定ルーチンを除いたものであり、図27に故障検出ルーチンの他の変形例のフローチャートを示す。なお、この変形例では第2の故障判定のみを実施するので、後述するように短絡故障でないと判定された場合には非導通故障と判定するものとする。
【0184】
図27に示すように、ステップS15の第2の故障判定ルーチンにおいて検出対象の有機EL素子4を非点灯駆動させて故障判定し、ステップS16で短絡故障が検出された場合にはステップS17で短絡箇所の修復を行う。そして、短絡箇所が修復したか否かを判定するために、再度ステップS15へ戻る。一方、ステップS16で短絡故障が検出されなかった場合には、正常と判定してステップS19へ進む。このように短絡箇所の修復判定を行うことにより、上記変形例と同様の効果を得ることができる。
【0185】
(点灯制御の変形例)
点灯制御のさらに他の変形例として、所定時間毎にパターン点灯、輝度調整点灯、及び温度調整点灯のうち少なくとも2つ組み合わせて行うようにしてもよい。これにより、正常な各有機EL素子4の発熱の偏りを低減し非導通故障を抑制させるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0186】
<第2実施例>
次に、第2実施例に係る照明装置の制御方法について以下に説明する。本実施例に係る照明装置の制御方法では、第1実施例に対して、照明装置1に通信手段を設けた点が異なり、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
【0187】
(照明装置のネットワーク構成)
図28に、本発明の第2実施例に係る外部機器を含む照明装置のネットワーク構成を示す。照明装置1はインタフェース(通信手段)32を有しており、複数の照明装置1がこのインタフェース32を介してネットワーク30にそれぞれ接続されている。ネットワーク30にはインタフェース33を介して外部機器34が接続されており、大規模な照明システム40を構成している。外部機器34はメモリ36や図示しないプロセッサ等から構成され、ネットワーク30を介して各照明装置1との通信や制御を行う。外部機器34はシステムコントローラやパーソナルコンピュータ等から構成されてもよい。また、ネットワーク30は、LAN、WAN、MAN等である。照明装置1は、第1実施例と同じく図4に示すように構成される。
【0188】
照明システム40を構成する各照明装置1は、各照明装置1を識別する識別情報を保持しており、この識別情報により外部機器34は各照明装置1を識別し、データの読み書き及び点灯制御を実行する。
【0189】
(外部機器による照明装置の制御)
このように構成された照明装置1の制御について、以下に説明する。第1実施例で述べた故障検出ルーチンは各照明装置1が個別に行い、検出結果をネットワーク30を介して外部機器34に送信する。外部機器34は送信された検出結果をメモリ36に登録すると共に、各照明装置1の検出結果に応じて点灯制御を行う。外部機器34が読み込んだ照明装置1のデータは、図示しないが外部機器34の出力装置(例えば、モニタ、プリンタ等)に出力されるようにしてもよい。外部機器34は、各照明装置1で行う故障検出に必要なデータをメモリ36に登録しており、当該故障検出に必要なデータを各照明装置1のメモリ26に書き込む。
【0190】
また、外部機器34によりメモリ26に登録されているデータのうち読み込み及び書き込み可能なデータとして、上述した基準電圧範囲マップ、基準電圧範囲を補正するために使用する温度補償係数マップ、点灯時間の積算時間に対応する補償及び初期の点灯における電圧の変動に対応する補償を含む経時補償係数マップ等がある。また、有機EL素子4の発熱パラメータ、各発光色の特性バランスデータ、最大電流値、発光輝度に対する視覚度補正マップ等もある。さらに、制御上の各種設定値、例えば逆方向の電圧パルスの印加電圧の大きさ、過電圧パルスの大きさ、過電流パルスの大きさ、パルスの印加回数を規定する規定回数Psmax、Pdmax等もある。そして、上述したステップS175、S185で登録された有機EL素子4の故障素子情報、及び照明装置1の制御方法を構成する上記ステップS1の故障検出ルーチン及び上記ステップS2の点灯制御ルーチンを構成するプログラムの読み込み及び書き込みが可能である。
【0191】
(照明装置の点灯制御)
外部機器34は、ネットワーク30に接続されている任意の1台または複数台の各照明装置1の点灯制御を行う。当該点灯制御は、上述した第1実施例の図6に示したステップS2の点灯制御ルーチンのみを実行するものである。
【0192】
詳しくは、外部機器34が図18に示した上記ステップS23のパターン点灯ルーチン、図21に示した上記ステップS24の輝度調整点灯ルーチン、または図24に示した上記ステップS25の温度調整ルーチンを、ネットワーク30に接続されている照明装置1のそれぞれに対して実行して各有機EL素子4の点灯制御を行う。なお、上述した第1実施例でさらに他の変形例として説明したように、上記ステップS23のパターン点灯ルーチン、上記ステップS24の輝度調整点灯ルーチン、及び上記ステップS25の温度調整ルーチンを組み合わせて点灯制御を行うようにしてもよい。
【0193】
上述したステップS23のパターン点灯について、第1実施例と同様に図18、20から説明する。なお、第1実施例と共通するステップの説明は省略する。
【0194】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0195】
ステップS231では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から各照明装置1での故障素子の分布状況を求め、照明システム40の点灯パターンを求める。当該ステップS231で求める点灯パターンは、照明システム40全体として規則的となる点灯パターンである。
【0196】
ステップS232では、外部機器34は、上記ステップS231で求めた点灯パターンを各照明装置1にネットワーク30を介して送信する。各照明装置1のプロセッサ10は、外部機器34から送信された点灯パターンに基づいて、各発光エリア毎に各有機EL素子4のON/OFFを切り替えて点灯パターンを形成する。そして、照明システム40として上記ステップS231で求めた規則的な点灯パターンが形成される。これにより、照明システム40全体として統一性のある点灯パターンが形成されて装飾照明として見栄えがよくなり、適正な照明光を確保することができる。また、正常な各有機EL素子4の発熱の偏りを低減するので、正常な各有機EL素子4の素子寿命を延ばすことができる。
【0197】
次に、点灯制御の変形例として上述したステップS24の輝度調整点灯について、第1実施例と同様に図21、22から説明する。なお、ここでも第1実施例と共通するステップの説明は省略する。
【0198】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0199】
ステップS241では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から、各照明装置1での故障素子の分布状況を求め、上述したような各照明装置1に対応する電流−輝度特性マップや発光輝度に対する視覚度補正マップを使用して、照明システム40全体の輝度が平均化されるように、各照明装置1を構成する各有機EL4に供給される電流の変化量をそれぞれ求める。なお、電流−輝度特性マップや発光輝度に対する視覚度補正マップによる電流の変化量の求め方は、第1実施例で上述した内容と同様である。
【0200】
ステップS242では、外部機器34は、上記ステップS241で求めた電流値をネットワーク30を介して各照明装置1に送信する。各照明装置1のプロセッサ10は、外部機器34から送信された電流値に基づいて各発光エリア毎に各有機EL素子4に供給する電流値を調整する。そして、照明システム40として色むらは発生するものの輝度が略平均化された照明となる。これにより、照明システム40全体として統一性のある適正な照明光を確保することができる。
【0201】
さらに、点灯制御の他の変形例として述べた温度調整点灯について、図24、25を使用して以下に説明する。なお、ここでも上記第1実施例と共通するステップについては説明を省略する。
【0202】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0203】
ステップS251では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から各照明装置1における故障素子の分布状況を求め、求めた分布状況から有機EL素子4の電気特性と発熱特性とに基づき、各有機EL素子4の表面温度が略均一になるように各発光色毎に電流の供給量を算出する。
【0204】
ステップS252では、外部機器34は、上記ステップS251で求めた電流の供給量を各照明装置1に送信する。各照明装置1のプロセッサ10は、外部機器34から送信された各発光色毎の電流の供給量になるよう定電流源回路CA1〜CAmに指令を出し、定電流源回路CA1〜CAmにより各有機EL素子4の温度が調整される。これにより、照明システム40として輝度むらは発生してしまうが、各照明装置1の表面温度が略均一化されるので、照明システム40として適正な照明光を確保することができる。
【0205】
上述したような点灯制御を行うことにより、故障した有機EL素子4の非点灯状態を目立たなくすることができるので、照明装置1の品質を向上させることができる。
【0206】
このように、本実施例によれば、ネットワーク30にインタフェース32を備えた1台または複数台の照明装置1及び外部機器34を接続し、外部機器34から照明装置1のメモリ26に登録されているデータの読み込み及び書き込みや、照明装置1の点灯制御を行うことにより、照明装置1のメモリ26に登録されているデータの管理を容易に行うことができると共に、照明装置1の管理や操作を容易に行うことができる。
【0207】
また、外部機器34からメモリ26に格納されているプログラムを書き換えることにより、一括して故障検出や点灯制御の改善を行うことができ、さらに機能を追加することができるので、照明装置1の故障検出や点灯制御における拡張性が向上する。
【0208】
さらに、大規模な照明システム40を構成して、外部機器34が各照明装置1のメモリ26に登録されているデータの読み込み及び書き込みや各照明装置1の点灯制御をすることにより、大規模な照明システムを構築することができる。
【0209】
そして、故障した有機EL素子4がある場合でも、外部機器34から各照明装置1の点灯制御を行うことにより、各照明装置1の故障状況に応じて全ての照明装置1の照明光が適正に制御されるので、照明システム40全体として統一性のある照明光となり、照明光の品質を維持することができる。
【0210】
また、各照明装置1を外部機器34で集中管理することができるので、各照明装置1の管理を容易に行うことができる。
【0211】
(照明装置のネットワーク構成の変形例)
さらに、上記第2実施例のネットワーク構成の変形例について以下に説明する。この変形例は、照明システム40が照明装置1のみで構成されるものであり、ネットワーク構成図を図29に示す。
【0212】
図29に示すように、ネットワーク30に各照明装置1がインタフェース32を介してそれぞれ接続されて大規模な照明システム40を構成している。このように構成された各照明装置1a1〜1atは、ネットワーク30を介して相互に通信することが可能となる。各照明装置1で通信により読み込み及び書き換え可能なデータは上述した第2実施例と同様である。
【0213】
一例として、各照明装置1のメモリ26に登録された故障素子情報、各照明装置1を構成する発光エリアの表面温度情報、各有機EL素子4の輝度情報、有機EL発光パネル2の発光色情報、及び各照明装置1の電源回路14への出力情報等を相互に通信して取得することにより、周囲に配置された各照明装置1の故障情報に合わせて照明装置1の点灯制御を行うことが可能となり、照明システム40全体の点灯制御を行うことが可能となる。
【0214】
このように構成された照明システム40では、例えば、照明装置1a1を主の照明装置(以下、マスタ照明装置とする)、それ以外の各照明装置1a2〜1atを従の照明装置(以下、スレーブ照明装置とする)とすると、マスタ照明装置1a1が上述した外部機器34と同様に機能することによりスレーブ照明装置1a2〜1atのデータの読み書き及び点灯制御を行う。これにより、マスタ照明装置1a1によりスレーブ照明装置1a2〜1atを集中管理することができるので、各照明装置1a1〜1atの管理を容易に行うことができる。
【0215】
<第3実施例>
次に、第3実施例に係る照明装置の制御方法について以下に説明する。本実施例に係る照明装置の制御方法では、照明装置1に通信手段を設けた点で構成が第2実施例と同じである。本実施例では、この通信手段を使用して照明装置1の交換時期を通知するようにした場合の照明装置の制御について以下に説明する。
【0216】
(照明装置のネットワーク構成)
第2実施例で述べたように、本実施例の照明装置のネットワーク構成は、図28に示すとおり、単数または複数の照明装置1と外部機器34とが同じネットワーク30に接続され、照明システム40を構成している。
【0217】
(外部機器による照明装置の制御)
本実施例における外部機器34による照明装置1の制御について説明する。本実施例の照明装置1の制御では、上記第2実施例と同様に外部機器34が各照明装置1と通信して、各照明装置1のメモリ26に登録されているデータ及びプログラムの読み書きと、各照明装置1の点灯制御を行う。読み込み及び書き込み可能なデータは第2実施例と同様である。また、各照明装置1の構成は第1実施例と同じく図4に示すように構成される。なお、故障検出は、第2実施例と同じく各照明装置1で行う。
【0218】
(照明装置の点灯制御)
本実施例における照明装置の点灯制御は、第2実施例と同じように図30に示す点灯制御ルーチンを外部機器34が統括して行うが、この点灯制御ルーチンで各照明装置1の交換時期を判定することが相違している。なお、図30は外部機器34が照明装置1のそれぞれに対して行う点灯制御であり、照明装置1が複数配置されている場合には各照明装置1を対象として行う。詳しくは、図30に示す点灯制御ルーチンのフローチャートから説明する。
【0219】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0220】
ステップS210では、外部機器34は上記ステップS21で取得した故障素子情報から故障した有機EL素子4の分布状況を求め、求めた分布状況から各照明装置1の交換時期を判定する。詳しくは、図31に示す交換時期判定ルーチンのフローチャートから説明する。
【0221】
ステップS211では、外部機器34は、外部機器34のメモリ36に予め登録されている照明装置1の交換時期の目安となる故障素子数(所定個数)xを取得する。故障素子数xは、例えば照明装置1に配置されている有機EL素子4の数の0.5%以上25%以下が好ましい。さらに好ましくは5%以上20%以下である。
【0222】
ステップS212では、交換時期の判定を行った照明装置の数uが、照明システム40を構成する全ての照明装置1の数t以下か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には全ての照明装置1の交換時期判定が終わっていないのでステップS213へ進み、当該判定結果が偽(No)と判定された場合には、全ての照明装置の交換時期判定が終了したと判断してステップS217へ進む。
【0223】
ステップS213では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から、u番目の照明装置1における故障した有機EL素子4の分布状況を求め、故障した有機EL素子4の故障素子数yを取得する。
【0224】
ステップS214では、上記ステップS213で取得したu番目の照明装置1の故障素子数yが上記ステップS211で取得した交換時期の目安となる故障素子数x以上か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には照明装置1の交換時期と判定してステップS214へ進み、当該判定結果が偽(No)の場合にはまだ交換時期ではないと判断して交換時期検出ルーチンを終了する。
【0225】
ステップS215では、上記ステップS214における照明装置1の交換時期であるとの判断に基づき、外部機器34にu番目の照明装置1は交換時期であるとして情報を例えばメモリ36等に蓄積し、ステップS216へ進む。続くステップS216では、照明装置の数uをインクリメントする。
【0226】
一方、ステップS217では、外部機器34は、メモリ36等に蓄積された交換が必要と判断された照明装置1を例えば図示しないモニタやプリンタ等の外部出力装置へ出力して交換時期判定ルーチンを終了し、ステップS22へ進む。通知するデータとして、照明装置1を識別する識別情報と交換時期を示すフラグ等としてもよい。出力装置に出力する際には、照明装置1の識別情報と共に交換時期である旨を出力するようにしてもよい。
【0227】
ステップS22以降の処理は上述した第1実施例と同様であり、説明は省略する。
【0228】
このように、本実施例によれば、構成された照明装置の制御方法では、外部機器34で各照明装置1を集中管理し、各照明装置1の交換時期を外部機器34に自動で通知するようにしており、照明装置1の交換時期を的確に知ることができるので、照明装置1の管理を容易に行うことができる。
【0229】
上記照明装置1の交換時期判定の変形例として、上述したように図29に示す第2実施例の変形例であるマスタ照明装置1a1と複数のスレーブ照明装置1a2〜1atから構成される照明システム40への適用も可能である。マスタ照明装置1a1がマスタ照明装置1a1を含め複数のスレーブ照明装置1a2〜1atの交換の必要の有無を上記ステップS210の交換時期判定ルーチンを実行することにより、各照明装置1の交換時期を判定することができる。
【0230】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0231】
例えば、上記各実施例及び変形例では、照明装置1は1つの有機EL発光パネル2から構成されているが、これに限られず、複数の有機EL発光パネル2から構成されるようにしてもよい。これに伴い、上述した第3実施例では照明装置1の交換時期を判定するとしたが、これに限定されるものではなく、照明装置1が複数の有機EL発光パネル2から構成されるときは、各有機EL発光パネル2に対して上述の交換時期判定ルーチンを実行し、交換時期と判定された有機EL発光パネル2を外部出力装置等に出力するようにしてもよい。
【0232】
また、上記各実施例及び変形例では、基準電圧範囲Vmin〜Vmaxは温度補償係数マップや経時補償係数マップから補正したものであるが、これに限られるものではなく、温度補償係数マップ及び経時補償係数マップのうち少なくともいずれか1つから選択された特性マップを使用して基準電圧範囲を補正するようにしてもよい。
【0233】
また、上記各実施例及び変形例では、点灯制御ルーチンにおいてパターン点灯ルーチンを実行し、変形例として輝度調整点灯ルーチン及び温度調整点灯ルーチンを行うように記載したが、これに限られるものではなく、パターン点灯ルーチン、輝度調整点灯ルーチン、及び温度調整点灯ルーチンを所定時間毎に切り替えて行ってもよく、また様々な組み合わせが可能である。即ち、一例としてパターン点灯ルーチンを行いながら輝度調整点灯ルーチンを行うようにしてもよい。これにより、発光面7に発生する発熱及び表面温度の偏りを低減して各有機EL素子4の非導通故障を抑制させるので、正常な各有機EL素子4の素子寿命を延ばすことが可能になる。
【0234】
また、上述した点灯制御ルーチンにおいて、パターン点灯ルーチン、輝度調整点灯ルーチン、及び温度調整点灯ルーチンのうち、少なくともいずれか1つを選択して点灯制御を行うようにしてもよい。
【0235】
また、上記各実施例では、輝度調整点灯ルーチンにおいて、所定のエリア内にある故障した有機EL素子4の周辺にある故障した有機EL素子4と同じ発光色の正常な各有機EL素子4の輝度を上げると共に、故障した有機EL素子4とは異なる発光色の正常な各有機EL素子4の輝度を下げるようにしているが、輝度の調整はこれに限定されるものではない。例えば、故障した有機EL素子4を含む所定のエリア内にある正常な各有機EL素子4の輝度をそれぞれ上げる作動、及び故障した有機EL素子4を含む所定のエリア内にある正常な各有機EL素子4の輝度をそれぞれ上げる作動のうち、少なくともいずれか一方の作動としてもよい。これにより発光面7に色むらが生じるが、故障した有機EL素子4が目立たなくすることができる。
【符号の説明】
【0236】
1 照明装置
2 有機EL発光パネル
4 有機EL素子
7 発光面
10 プロセッサ
26 メモリ
34 外部機器
40 照明システム
CA1〜CAm 定電流源回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置の制御方法に係り、詳しくは有機エレクトロルミネッセンス素子から構成される照明装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)は、基板上に発光層を含む有機EL層と、有機EL層を挟み込むように対向して配置された陽極、陰極からなる電極とが積層されて構成される。このように構成された有機EL素子の点灯時において、製造時の有機層への異物の混入や有機層の形成むらにより、電極間での短絡現象等の不良が発生するおそれがある。
【0003】
このような不良に対処するために、製造時の製品チェック時に短絡等の不良が発見された場合には、不良の素子を除外または修復するようにしている。しかしながら、有機EL素子は有機材料から形成されるために、熱による分解等の変質を引き起こしたり、点灯時に印加される電界により有機分子の電気泳動等の分子拡散を起こしたりすることがある。このため、製品として出荷された後、使用中の有機EL素子の電極間に短絡等の不良が発生することがある。
【0004】
有機EL素子から構成される照明装置において、有機EL素子に短絡故障が発生すると短絡箇所が点灯しないばかりでなく、短絡箇所に大電流が流れるため同じ給電部から電力が供給される他の有機EL素子の発光状態が暗くなったり点灯しなくなったりする。この結果、広範囲にわたり照明装置の輝度等の発光状態にむらが発生するほか、特定の素子の温度上昇により有機EL素子や配線が断線する非導通故障が発生し、品質が低下してしまうという問題がある。
【0005】
特に、発光色の異なる複数の有機EL素子を配置して照明装置の発光面が形成される場合、特定の発光色の有機EL素子が点灯しなくなると照明色が変化したり、照明色に色むらが生じたりするほか、特定の素子の温度上昇により非導通故障が発生し、品質が低下してしまい、さらに非点灯となる素子が増え、照明装置の見栄えが悪くなるという問題がある。
【0006】
このような短絡故障を修復する手法として、短絡箇所に逆方向の電圧パルスを印加して短絡箇所に過電流を流すことでジュール熱を発生させ、この熱によって短絡箇所を切断して修復する方法(特許文献1)、逆バイアス電圧を短絡箇所に印加することにより短絡箇所を切断して修復する方法(特許文献2)が知られており、診断用デバイスで有機EL素子ユニットの故障状態を診断する方法も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−162637号公報
【特許文献2】特開2007−207703号公報
【特許文献3】特表2010−524151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記各文献に開示された従来技術では、有機EL素子の故障検出において故障か否かを精度良く判定するための明確な判断基準がないため、確実な故障の見極めが難しいという問題が依然として残っている。さらに、故障素子の点灯時の発光状態のむらや照明色の色むらの発生による特定素子の温度上昇や非導通故障という問題が依然として残っている。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、有機EL素子の故障を的確に検出すると共に照明装置の品質を向上することの可能な照明装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するべく、本発明の照明装置の制御方法は、発光色の異なる複数の有機エレクトロルミネッセンス素子をストライプ状に並べた単数または複数の発光パネルによって発光面を形成した照明装置の制御方法であって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性に基づき、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障を検出する故障検出ステップと、前記故障検出ステップで短絡故障と判定された素子に短絡故障修復処理を行う短絡故障修復ステップと、前記短絡故障と判定された素子が前記短絡故障修復ステップの後に修復されたか否かを判定する短絡故障修復判定ステップと、前記短絡故障と判定された素子が修復されていないと前記短絡故障修復判定ステップで判定された場合に、前記短絡故障修復ステップ及び前記短絡故障修復判定ステップを繰り返し、前記短絡故障と判定された素子が修復されていないとの判定回数が所定回数を超えた場合には故障素子として該当素子の識別情報を含む個体情報を記憶手段に記憶する故障素子判定ステップと、前記故障素子判定ステップで個体情報が記憶された故障素子の分布状況に基づき、前記発光面の点灯状態を制御する点灯制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
このような照明装置の制御方法において、前記故障検出ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動している駆動状態で、該有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性を測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定する電気的特性に対して基準範囲を設定する基準範囲設定ステップと、前記測定ステップで測定された電気的特性が、前記基準範囲設定ステップで設定された該基準範囲から外れる場合に前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障と判定する故障判定ステップと、を備えていてもよい。
【0012】
このような照明装置の制御方法において、前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯状態で駆動する点灯駆動ステップを含み、前記故障判定ステップは、前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップを含むのが好ましい。
【0013】
また、前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯状態で駆動する非点灯駆動ステップを含み、前記故障判定ステップは、前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップを含むようにしてもよい。
【0014】
さらに、前記測定ステップの前に前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップを備え、前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯する駆動状態で駆動する点灯駆動ステップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯となる駆動状態で駆動する非点灯駆動ステップとを含み、前記故障判定ステップは、前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップと、前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップとを含み、前記第1の故障判定ステップで短絡故障と判定された後に前記第2の故障判定ステップを行うようにしてもよい。
【0015】
前記基準範囲設定ステップでは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電流−電圧特性における温度に依存する変化と、点灯時間の積算時間に依存変化及びマイグレーション等による初期変動とのうち、少なくともいずれか1つに対応して前記所定の基準電圧範囲を補正するようにしてもよい。
【0016】
前記所定の基準電圧範囲の補正において、前記温度に依存する変化に対応する前記所定の基準電圧範囲の補正は、予め定められた温度補正係数を使用して行われてもよい。
【0017】
前記所定の基準電圧範囲の補正において、前記点灯時間の積算時間に依存する変化及び前記初期変動に対応する前記所定の基準電圧範囲の補正は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の経時変化及び初期変動に対応して設定される経時補正係数を使用して行われてもよい。
【0018】
前記所定の電圧範囲の補正において、前記初期変動に対応する前記所定の基準電圧範囲の補正は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯時間の積算時間が初期の通電開始から10〜40時間以内である場合に行われてもよい。
【0019】
前記所定の基準電圧範囲は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の個体差を包含して設定されてもよい。
【0020】
前記所定の基準電圧範囲は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光色により異なる範囲に設定されてもよい。
【0021】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記エレクトロルミネッセンス素子に供給する電流が、前記有機エレクトロルミネッセンスを構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnと電荷素量eとから(φp−φn)/eで求められるビルドイン・ポテンシャルの電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.0倍以上1.8倍以下とするのが好ましい。
【0022】
前記第2の故障判定ステップでの前記電気的特性は電圧値であり、前記基準範囲は所定の電圧値以上の範囲であり、該所定の電圧値は前記ビルドイン・ポテンシャルの0.5倍以上1.0倍以下であってもよい。
【0023】
或いは、前記第2の故障判定ステップでの前記駆動状態において前記エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnと電荷素量eとから(φp−φn)/eで求められるビルドイン・ポテンシャルの0.7倍以上1.0倍以下であってもよい。
【0024】
この場合、前記第2の故障判定ステップでの前記電気的特性は電流値であり、前記基準範囲は所定の電流値以下の範囲であり、該所定の電流値は、正常な有機エレクトロルミネッセンス素子に前記ビルドイン・ポテンシャルに等しい電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.5倍以上8倍以下であってもよい。
【0025】
前記第2の故障判定ステップを実行する場合では、前記駆動状態において前記有機エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は、0.1〜4Vであってもよい。
【0026】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は逆電圧方向の電圧であるのが好ましい。
【0027】
前記駆動状態は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に定電圧を印加する定電圧駆動または前記有機エレクトロルミネッセンス素子に定電流を流す定電流駆動であるようにしてもよい。
【0028】
このような照明装置の制御方法において、前記点灯駆動ステップまたは前記非点灯駆動ステップの前に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の前記所定の基準電圧範囲に用いる基準電圧範囲マップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧に対する温度変化に対応した補償に用いる温度補償係数マップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧に対する点灯時間の積算時間に対応した補償及び前記有機エレクトロルミネッセンス素子の初期の点灯における電圧変動に対応した補償に用いる経時補償係数マップとを記憶手段に予め登録しておくようにしてもよい。
【0029】
照明装置の制御方法において、前記短絡故障修復判定ステップは、前記第1の故障判定ステップの後に前記短絡故障修復ステップが行われた場合、前記点灯駆動ステップ、前記測定ステップ、前記基準範囲設定ステップ、及び前記第1の故障判定ステップを行うものであり、前記第2の故障判定ステップの後に前記短絡故障修復ステップが行われた場合、前記非点灯駆動ステップ、前記測定ステップ、前記基準範囲設定ステップ、及び前記第2の故障判定ステップを行うものであるのが好ましい。
【0030】
ここで、第1の故障判定及び第2の故障判定で短絡故障と判定された場合に短絡故障修復処理を行うのが好ましい。
【0031】
前記短絡故障修復処理は、短絡故障修復パルスを印加するのが好ましく、短絡故障修復パルスは、逆方向の電圧パルス、順方向の前記駆動状態の電圧より大きな過電圧パルス、または順方向の前記駆動状態の電流より大きな過電流パルスから選択されるようにしてもよい。
【0032】
より具体的には、前記短絡故障修復パルスで使用される前記逆方向の電圧パルスの大きさは10V以上50V以下であってもよい。
【0033】
或いは、前記短絡故障修復パルスで使用される前記順方向の過電圧パルスの大きさは8V以上20V以下であってもよい。
【0034】
または、前記短絡故障修復パルスで使用される前記順方向の過電流パルスの大きさは通常点灯時の電流の3倍以上20倍以下であってもよい。
【0035】
また、前記所定回数は2回以上10回以下であってもよい。
【0036】
また、非導通故障と判定された有機EL素子が故障素子と判定される前記所定回数は2回以上10回以下であってもよい。
【0037】
さらに、照明装置の制御方法において、前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御するのが好ましい。
【0038】
ここで、正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子について、故障素子からの距離に応じた勾配をもたせることで、発光パターンを規則的に制御するようにしてもよい。例えば、故障素子に近い素子ほど輝度が低く、故障素子から離れるにつれて輝度が高くなるように調整するようにしてもよい。
【0039】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子への給電を停止するようにしてもよい。
【0040】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整を行うようにしてもよい。
【0041】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子の短径の1/5角のエリア内における輝度の偏差が15%以内となるように制御するようにしてもよい。なお、短径とは、発光素子が長方形の場合には短手方向の長さ、円形の場合には直径、楕円形の場合には短径のことをそれぞれ表す。
【0042】
ここで、前記輝度調整は、前記故障素子を含む所定領域内にある前記故障素子の発光色と同色の前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げるとともに、前記所定領域内にある前記故障素子の発光色とは異なる色の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げるようにしてもよい。
【0043】
このように発光色毎に調整する場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子の短径の1/5角のエリア内における色差が標準値に対してMacAdam3Stepに収まるように制御するようにしてもよい。
【0044】
ここで、前記輝度調整点灯は、前記故障素子を含む所定領域内にある正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度をそれぞれ上げる作動、及び所定領域外にある正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度をそれぞれ下げる作動のうち、少なくともいずれか一方であってもよい。
【0045】
さらに、前記輝度調整点灯は、所定時間毎に前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度をそれぞれ変更するようにしてもよい。
【0046】
さらに、前記点灯状態は、前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子をそれぞれ点灯または非点灯にして、前記発光面に所定の点灯パターンを形成するパターン点灯であってもよい。
【0047】
さらに、前記パターン点灯は、前記所定時間毎に前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯及び非点灯をそれぞれ切り替えるようにしてもよい。
【0048】
前記点灯制御ステップでは、前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整してもよい。
【0049】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子の短径の1/5角のエリア内における温度のばらつきが10℃以内となるように制御するようにしてもよい。
【0050】
さらに、前記温度調整点灯は、所定時間毎に前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度をそれぞれ変更するようにしてもよい。
【0051】
さらに、前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御する点灯状態制御、前記故障素子への給電を停止する給電停止制御、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整、及び前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整する温度調整のうち少なくとも2つを組み合わせて行うようにしてもよい。
【0052】
さらに、前記点灯制御ステップは、前記点灯状態制御、前記給電停止制御、前記輝度調整、及び前記温度調整の少なくともいずれかを所定時間毎に行うようにしてもよい。
【0053】
前記点灯制御ステップの前に前記記憶手段に予め点灯制御情報を登録しておき、前記点灯制御情報には、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電流−輝度特性マップと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発熱パラメータと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の各色の特性バランスデータと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の最大電流値と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度に対する視覚度補正マップとの少なくともいずれか1つを含み、前記点灯制御情報に基づき前記点灯制御ステップを行うようにしてもよい。
【0054】
一方、このように構成された照明装置の制御方法において、前記故障検出ステップと前記点灯制御ステップとはコンピューターユニットで行ってもよい。
【0055】
また、照明装置の制御方法において、前記照明装置は通信手段を備え、該通信手段を外部機器の通信手段に接続して該外部機器の通信手段と通信する通信ステップをさらに備えるようにしてもよい。
【0056】
ここで、前記通信ステップでは、前記記憶手段に記憶されているデータの読み込みまたは書き込みを行うようにしてもよい。
【0057】
また、前記通信ステップにより、前記通信手段を介して前記外部機器からの情報に基づき前記点灯制御ステップを行うようにしてもよい。
【0058】
このように構成された照明装置の制御方法において、前記第1の故障判定ステップ、第2の故障判定ステップ、及び前記点灯制御ステップは、前記記憶装置に記憶されているプログラムにより実行されるようにしてもよい。この場合、該プログラムを書き換えるプログラム変更ステップを含むようにしてもよい。
【0059】
さらに、前記外部機器はもう1つの照明装置であって、前記通信手段により前記通信ステップを行うようにしてもよい。
【0060】
また、前記外部機器はシステムコントローラであるようにしてもよい。
【0061】
また、前記外部機器は、前記照明装置以外の照明装置であるようにしてもよい。
【0062】
照明装置が通信手段を有する場合、前記照明装置が複数設けられ、前記照明装置の少なくとも1つが外部機器であり、前記通信手段により複数の照明装置間で相互に前記通信ステップを行うようにしてもよい。
【0063】
また、前記通信ステップでは、前記記憶手段に故障素子として記憶された前記個体情報から、該当する発光パネルの交換時期を通知する交換時期通知ステップをさらに備えるようにしてもよい。
【0064】
前記交換時期通知ステップは、前記記憶手段に記憶された前記故障素子の数が交換時期として設定された所定個数を超えた場合に交換時期と判定する交換時期判定ステップを含むようにしてもよい。
【0065】
前記交換時期通知ステップにおいて、交換時期として設定される前記所定個数は前記照明装置における有機エレクトロルミネッセンス素子の全個数の0.5%以上25%以下がさらに好ましい。
【発明の効果】
【0066】
本発明の照明装置の制御方法によれば、有機EL素子の電気的特性に基づいて有機EL素子の故障を検出し、その故障素子の分布状況に基づいて照明装置の発光面の点灯状態を制御するので、有機EL素子の故障を的確に検出すると共に有機EL素子の故障を目立たなくして照明装置の品質を向上させることができる。
【0067】
また、短絡故障と判定された場合、短絡故障と判定された有機EL素子に所定のパルス幅の短絡故障修復パルスを印加するようにするので、短絡故障と判定された有機EL素子の短絡箇所が切断されて有機EL素子を修復することが可能となる。
【0068】
また、短絡箇所が修復されていないと判定された回数が所定回数を超えたときに、該当する有機EL素子の個体情報を故障素子として記憶手段に記憶するようにするので、故障素子を確実に把握すると共に明確に区別することができる。
【0069】
また、上述した有機EL素子の故障検出方法において、有機EL素子が点灯する駆動状態で測定した電圧値が所定の電圧範囲から外れる場合に有機EL素子の故障と判定するようにすれば、容易に且つ的確に故障判定を行うことができる。
【0070】
また、測定された電圧値が所定の電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、測定された電圧値が所定の電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定すれば、故障状態をより的確に把握することができる。さらに、有機EL素子が非点灯となる駆動状態での電気的特性が基準範囲から外れる場合に短絡故障と判定するようにすれば、より的確な故障判定を行うことができる。
【0071】
また、上述した基準範囲である所定の電圧範囲は、有機EL素子の電流−電圧特性における温度に依存する変化と、点灯時間の積算時間及び初期変動とのうち、少なくともいずれか1つに対応して補正すれば、有機EL素子の故障の検出精度を向上させることができる。
【0072】
特に、初期変動に対応する補正は、有機EL素子の点灯時間の積算時間が通電開始から10〜40時間以内の初期変動が生じ易い時期に行うようにすると、有機EL素子の故障検出精度をより向上させることができる。
【0073】
さらに、上述した所定の電圧範囲を有機EL素子の個体差が包含されるように設定すれば、有機EL素子の電気的特性に個々のばらつきがある場合でも有機EL素子の故障をより的確に検出することができる。
【0074】
また、上述した所定の電圧範囲は有機EL素子の発光色により異なる範囲に設定すれば、発光色の異なる有機EL素子の電気的特性に違いがあっても有機EL素子の故障をより的確に検出することができる。
【0075】
有機EL素子を点灯させて故障判定したときに短絡故障と判定され、その後この有機EL素子を非点灯にして故障判定するようにすれば、短絡故障している有機EL素子をより確実に検出することができる。
【0076】
一方、有機EL素子が非点灯で故障判定するときに、測定された電圧値が上述した基準範囲である正負電極の仕事関数から求められるビルドイン・ポテンシャルの1.0倍以上1.8倍以下の電圧値以上の範囲にない場合に短絡故障と判定するようにすれば、短絡故障に生じる大きな電圧値に基づき故障か否かがより明確に区別されるので、有機EL素子の短絡故障を精度よく検出することができる。
【0077】
また、測定された電圧値が上述した基準範囲である正負電極の仕事関数から求められるビルドイン・ポテンシャルの0.5倍以上1.0倍以下の電圧値以上の範囲にない場合に短絡故障と判定するようにすれば、短絡故障に生じる大きな電圧値に基づき故障か否かがより明確に区別されるので、短絡故障の検出精度をより向上させることができる。
【0078】
或いは、有機EL素子が非点灯で故障判定するときに、測定された電流値が正常な有機EL素子に正負電極の仕事関数から求められるビルドイン・ポテンシャルに等しい電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.5倍以上8倍以下の電流値以下の範囲にない場合に短絡故障と判定するようにすれば、短絡故障に生じる大きな電流値に基づき故障か否かがより明確に区別されるので、短絡故障の検出精度を向上させることができる。また、過大な電流を流さずに故障判定をすることができる。
【0079】
また、有機EL素子の非点灯となる駆動状態で有機EL素子に印加する電圧を逆電圧方向の電圧とすれば、正常な素子の場合には流れない電流が短絡故障素子では流れるので、確実に故障を検出することができ、短絡故障の検出精度をより向上させることができる。
【0080】
有機EL素子の点灯駆動または非点灯駆動の前に、有機EL素子の基準電圧範囲マップ、温度補償係数マップ、及び経時補償係数マップを記憶手段に予め登録しておけば、上述した所定の電圧範囲の補正を迅速に行うことができる。
【0081】
有機EL素子を点灯駆動させて故障判定した後に短絡箇所を修復した場合、有機EL素子を点灯駆動させて電圧値を測定して有機EL素子の短絡箇所が修復されたか否かの判定を行うようにすれば、故障していると判定した時と同じ判定をしているので、より確実に故障修復したか否かを判定できる。一方、有機EL素子を非点灯駆動させて故障判定した後に短絡箇所を修復した場合、有機EL素子を非点灯駆動させて電流値を測定して有機EL素子の短絡箇所が修復されたか否かの判定を行うようにすれば、故障していると判定した時と同じ判定をしているので、より確実に故障修復したか否かを判定することができる。
【0082】
また、上述した短絡故障修復パルスは、逆方向の電圧パルス、順方向の駆動状態の電圧より大きな過電圧パルス、または順方向の駆動状態の電流より大きな過電流パルスから選択するようにすれば、短絡箇所をより確実に修復することができる。特に、逆方向の電圧パルスの場合には該当する有機EL素子が非点灯のままで短絡故障から修復させることが可能となる。
【0083】
以上のような故障判定により故障素子が存在する場合、故障素子と判定されて記憶手段に記憶された故障素子情報に基づいて発光パネルでの故障素子の分布情報を求め、分布情報から発光面の発光パターンが規則的になるように正常な有機EL素子を点灯制御すれば、有機EL素子の故障を目立たなくすることができると共に、正常な有機EL素子の発熱の偏りを低減できるので、正常な有機EL素子の素子寿命を延ばすことが可能となる。
【0084】
また、記憶手段に記憶された故障素子への給電を停止すれば、無駄な電流の供給を防止すると共に故障素子のさらなる非導通故障の発生を抑制することができる。
【0085】
また、正常な各有機EL素子の輝度を前記発光面における輝度が略均一になるように調整すれば、故障素子が目立たないようにすることができる。
【0086】
さらに、故障素子を含む所定領域内にある、故障素子の発光色と同色の正常な各有機EL素子の輝度を上げることにより照明光の色の変化を補償すると共に、所定領域内にある故障素子の発光色とは異なる色の正常な各有機EL素子の輝度を下げて輝度の変化を補償することにより、輝度むらをなくすことができる。
【0087】
また、上述した点灯制御は、故障素子を含む所定領域内にある正常な各有機EL素子の輝度をそれぞれ上げる作動、及び所定領域外にある正常な各有機EL素子の輝度をそれぞれ下げる作動の少なくともいずれか一方を行うようにしても、輝度を調整することで発光面を調光して故障素子が目立たないようにすることができる。
【0088】
また、所定時間毎に正常な各有機EL素子の輝度を変更することにより、各有機EL素子の点灯、非点灯や輝度が所定時間毎に切り替わるようにすれば、有機EL素子の発熱の偏りを低減して非導通故障の発生を低減させるので、素子寿命をより延ばすことが可能となる。
【0089】
また、正常な各有機EL素子の点灯、非点灯を制御して発光面に所定の点灯パターンを形成すれば、故障素子が目立たないように点灯パターンを形成することができる。特に装飾として使用する場合に有効である。
【0090】
各発光面の表面温度が略均一になるように正常な有機EL素子の表面温度をそれぞれ調整すれば、有機EL素子の表面温度の偏りがなくなることにより非導通故障の発生を低減させるので、さらに素子寿命を延ばすことができる。
【0091】
また、有機EL素子の点灯状態、故障素子への給電停止、輝度の調整、及び表面温度の調整から少なくとも2つを組み合わせて行うようにすれば、各有機EL素子の非導通故障の発生を低減させるので、さらに素子寿命を延ばすことができる。
【0092】
また、所定時間毎に正常な各有機EL素子の点灯状態、故障素子への給電停止、輝度の調整、及び表面温度をそれぞれ変更すれば、各有機EL素子の非導通故障の発生を低減させるので、さらに素子寿命を延ばすことができる。
【0093】
照明装置の通信手段と外部機器の通信手段とで通信するようにすれば、照明装置を外部機器から制御することができ、照明装置の管理及び操作を容易に行うことができる。
【0094】
照明装置の記憶手段に記憶されているデータの読み込みまたは書き込みを外部機器の通信手段から照明装置の通信手段を介して行うようにすれば、照明装置の管理を容易に行うことができる。
【0095】
通信手段を介して故障検出及び点灯制御を行うプログラムを書き換えるようにすれば、故障検出や点灯制御の改善やさらなる機能の追加が可能であり、照明装置の管理を容易に行うことができる。
【0096】
また、照明装置と他の照明装置とで相互に通信して点灯制御及び記憶手段に記憶されているデータの読み書きを行うようにすれば、故障素子が生じても他の照明装置と協調して適正な照明光を確保することができる。
【0097】
さらに、このような照明装置を外部機器として複数の照明装置と通信するので、大規模な照明システムを構築可能である。
【0098】
また、記憶手段に記憶された故障素子の個体情報から、通信手段を介して発光パネルの交換時期が通知するようにすれば、発光パネルの交換時期が自動で通知されるので、照明装置の管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1実施例に係る有機EL発光パネルの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した有機EL発光パネルの概略平面図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る照明装置の概略構成図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る照明装置の回路図の一部を抜粋した電気回路図である。
【図6】本発明の第1実施例に係る照明装置の制御を示すフローチャートである。
【図7】照明装置の制御における故障検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図7に示す故障検出ルーチンにおいて行われる第1の故障判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】図4の回路構成において各スイッチに印加する制御信号の一例を示すタイミングチャートである。
【図10】第1の故障判定ルーチンで使用される基準電圧範囲マップの基になる素子電圧と供給電流との関係の一例を示すグラフである。
【図11】第1の故障判定ルーチンで使用される温度補償係数マップの基になる素子電圧と素子温度との関係の一例を示すグラフである。
【図12】第1の故障判定ルーチンで使用される有機EL素子の経時補償係数マップの基になる素子電圧と点灯時間の積算時間と関係の一例を示すグラフである。
【図13】第1の故障判定ルーチンで使用される経時補償係数マップの基になる素子電圧と点灯時間の積算時間との関係の一例を示すグラフである。
【図14】正常な有機EL素子に電圧を印加した場合の電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図15】正常な有機EL素子及び短絡故障した有機EL素子の電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図16】図7に示す故障検出ルーチンにおいて行われる第2の故障判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図17】図7に示す故障検出ルーチンにおいて行われる短絡故障修復ルーチンを示すフローチャートである。
【図18】照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図19】図18に示す点灯制御ルーチンにおいて行われるパターン点灯ルーチンを示すフローチャートである。
【図20】(A)は故障した有機EL素子を含む所定の発光エリアにおける故障パターンの一例を模式的に示す平面図であり、(B)はパターン点灯ルーチンを実行した場合の所定の発光エリアの一例を模式的に示す平面図である。
【図21】照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【図22】点灯制御ルーチンの変形例である輝度調整点灯ルーチンを示すフローチャートである。
【図23】(A)は故障した有機EL素子を含む発光面の所定エリアにおける故障パターンの一例を模式的に示す平面図であり、(B)は(A)を輝度調整点灯で制御した一例を模式的に示す平面図である。
【図24】照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンの他の変形例を示すフローチャートである。
【図25】点灯制御ルーチンの他の変形例である温度調整ルーチンを示すフローチャートである。
【図26】第1実施例の図7に示す故障検出ルーチンの変形例を示すフローチャートである。
【図27】第1実施例の図7に示す故障検出ルーチンの他の変形例を示すフローチャートである。
【図28】本発明の第2実施例に係る照明装置を含むネットワークを模式的に示す構成図である。
【図29】第2実施例の変形例を示すネットワークを模式的に示す構成図である。
【図30】本発明の第3実施例に係る照明装置の制御方法における点灯制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図31】図30に示す点灯制御ルーチンにおいて行われる交換時期検出ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、本発明の実施形態について、いくつかの実施例に基づいて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に記載する内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、以下の説明に用いる図面は、何れも本発明に係る照明装置等を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っている場合があり、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていないことがある。さらに、以下の説明で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0101】
<第1実施例>
図1は、本発明の第1実施例に係る照明装置1を構成する有機EL発光パネル2の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、有機EL発光パネル2は基板6上に異なる発光色の複数の有機EL素子4がストライプ状に並べられて構成されている。換言すると、棒状の有機EL素子4が複数、隣り合う2つの有機EL素子が略平行に、且つ等間隔に離間した状態で基板6に配置されている。有機EL素子4は、発光色が赤色の有機EL素子4R、発光色が緑色の有機EL素子4G、及び発光色が青色の有機EL素子4Bからなり、基板6上にはこの記載の順で繰り返し配置されている。なお、発光色に関わらず照明装置1の有機EL素子全般について述べる場合には有機EL素子4と記載し、発光色毎に有機EL素子を区別して述べる場合には有機EL素子4R、有機EL素子4G、有機EL素子4Bと記載することとする。
【0102】
図2に、図1に示した有機EL発光パネル2の概略平面図を示す。有機EL発光パネル2は、後述する点灯制御に対応して複数の発光エリアA1〜Akに区別されている。本実施例では有機EL発光パネル2が1つで構成されており、有機EL発光パネル2の発光色と照明色とは同色になる。なお、有機EL発光パネル2が複数で構成される場合、個々の有機EL発光パネル2の発光色が合成されて照明色となる。
【0103】
(基板)
本実施例において基板6は、ガラス製で板状の透明基板である。なお、基板6には金属板やセラミックス、プラスチックフィルム等が用いられてもよい。特に、本実施例で使用するガラス製の透明基板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、またはポリスルホン等の透明な樹脂基板が望ましい。
【0104】
(有機EL素子)
本実施例において有機EL素子4は、上述したように発光色が赤色の有機EL素子4R、発光色が緑色の有機EL素子4G、及び発光色が青色の有機EL素子4Bがこの記載の順に平行に等間隔で繰り返し基板6上に配置される。
【0105】
図3は図2中のIII−III線に沿う断面図である。各有機EL素子4R、4G、4Bは基板6上に電極層として陽極4aが形成され、電荷輸送層として有機層4bが陽極4aに積層され、陽極4aと一対となる陰極4cが有機層4bに積層されて構成される。
【0106】
陽極4aは有機層4bに正孔を注入する機能を有しており、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物等の金属酸化物、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール等の導電性高分子等により構成される。陽極4aの形成はスパッタリング法や真空蒸着法等により行われる。陽極4aを形成した後に陽極4aに付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させるために紫外線照射やオゾン処理をすることが好ましい。
【0107】
有機層4bは通常、発光層、または正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層から構成されてもよく、さらにそれ以外の層から構成されてもよい。正孔注入層は陽極4aからの正孔注入を容易にするものであり、正孔輸送層は発光層へ正孔を輸送する機能を有している。正孔輸送層は、例えば芳香族アミン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体等の正孔輸送材料から形成される。
【0108】
電子注入層は陰極4cからの電子の注入を容易にするものであり、電子輸送層は発光層へ電子を輸送する機能を有している。電子輸送層は、例えばオキサジアゾール誘導体等の電子輸送材料から形成される。
【0109】
発光層は陽極4a及び陰極4cからそれぞれ注入された正孔及び電子を再結合させて蛍光を放射する。このような発光層を形成するための発光材料は、例えばポリフルオレン誘導体、ポリスピロフルオレン誘導体等である。この発光材料を変えることにより発光層から放射される光は、赤、緑、または青の異なる発光色となる。
【0110】
有機層4bを構成するこれらの層の膜厚は、それぞれ100nm以下であることが望ましい。
【0111】
そして、従来から一般的に行われているように、各有機EL素子4の陽極4aは通常、基板6に形成された透明な電極パターン(図示省略)に沿って電気的に接合され、図示しない透明電極(図示省略)が各有機EL素子4の陰極4cに電気的に接合されることにより、各有機EL素子4を駆動するための電流を供給することができるように構成されている。
【0112】
このように構成された各有機EL素子4R、4G、4Bの配置間隔dは通常、数百μm〜数cmである。このように有機EL素子4R、4G、4Bを配置することにより、有機EL発光パネル2では、各有機EL素子4R、4G、4Bが発した赤、緑、青のそれぞれの光が合成され、有機EL素子4の装着面とは反対側となる基板6の発光面7から照射される合成光は白色光に見える。
【0113】
(照明装置の構成)
図4は、本発明の第1実施例に係る照明装置1の概略を示す概略構成図である。このような照明装置1は、後述するような各有機EL素子4の故障検出及び点灯制御を行うように構成されている。
【0114】
図4に示すように、有機EL素子4は1つの発光色、例えば赤色の発光色の有機EL素子4Rが複数並列に接続されて1つの素子グループ4Rgを構成する。同様に発光色が緑色の有機EL素子4Gも複数並列に接続されて素子グループ4Gg、発光色が青色の有機EL素子4Bが複数並列に接続されて素子グループ4Bgをそれぞれ構成する。このように構成された素子グループ4Rg、4Gg、4Bgのそれぞれに対し、定電流源回路CA1〜CAmが1つずつ配置される。1つの有機EL発光パネル2は上述した各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgを有する発光エリアA1〜Akが複数配置されて形成される。ここで、発光エリアA1は1番目の発光エリアであり、発光エリアAkはk番目の発光エリアである。
【0115】
各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgは素子切り替え回路8に接続されている。素子切り替え回路8は、プロセッサ(コンピューターユニット)10から入力される信号により故障検出及び点灯制御の対象となる有機EL素子4を切り替えて、対象となる有機EL素子4を、対応する定電流源回路CA1〜CAmに接続する。対象として選択された有機EL素子4と、これに対応した定電流源回路とが接続されると、この定電流源回路を介して対象の有機EL素子4に電源回路14から電流が流れ、このときの電流が対象の有機EL素子4に接続されている定電流源回路で所定の電流値に調整される。また、電源回路14はプロセッサ10に接続されており、プロセッサ10により出力電圧が制御される。ここで、定電流源回路CA1は1番目の定電流源回路、定電流源回路CAmはm番目の定電流源回路である。さらに、対象として選択された有機EL素子4に対応して設けられている定電流源回路を定電流源回路CAjとする。
【0116】
素子切り替え回路8には各有機EL素子4の陽極側が接続されており、各有機EL素子4の陽極側の電圧(以下、有機EL素子4の電圧という)が切り替え回路8における有機EL素子4の選択に対応し、A/D変換器20を介してプロセッサ10に入力される。詳しくは、図示しないが素子切り替え回路8内で対象となる各有機EL素子4の切り替えに対応して、検出素子として選択された各有機EL素子4の電圧がプロセッサ10により測定されるようになっている。
【0117】
温度センサ22は各有機EL発光パネル2または各有機EL素子4にそれぞれ設けられ、各有機EL発光パネル2または各有機EL素子4の温度を測定する。測定された温度はA/D変換器24を介してプロセッサ10に各有機EL発光パネル2または各有機EL素子4の温度情報の計算用パラメータとして入力される。プロセッサ10は中央演算処理装置(以下、CPU)やメモリ等を含んで構成され、入力された電圧値や温度等から制御量を算出し、素子切り替え回路8を介して有機EL素子4を制御したり電源回路14や定電流源回路CA1〜CAmを制御したりする。また、プロセッサ10にはメモリ26が接続されており、メモリ26に対してデータの読み書きを行う。メモリ26は不揮発性メモリからなり、例えばROMやRAM等から構成される。
【0118】
(照明装置の電気回路構成)
図5は、本実施例の照明装置1における1つの発光エリアの回路を一部を抜粋した電気回路図である。図5に示すように、発光色が赤色の有機EL素子4R1の陽極側はスイッチSW1を介して、有機EL素子4R2の陽極側がスイッチSW4を介して定電流源回路CA1にそれぞれ接続されている。従って、有機EL素子4R1と有機EL素子4R2とは同じ素子グループ4Rgを形成している。発光色が緑色の有機EL素子4G1の陽極側はスイッチSW2を介して、有機EL素子4G2の陽極側はスイッチSW5を介して定電流源回路CA2にそれぞれ接続されている。従って、有機EL素子4G1と有機EL素子4G2とは同じ素子グループ4Ggを形成している。発光色が青色の有機EL素子4B1の陽極側はスイッチSW3を介して、有機EL素子4B2の陽極側はスイッチSW6を介して定電流源回路CA3にそれぞれ接続されている。従って、有機EL素子4B1と有機EL素子4B2とは、同じ素子グループ4Bgを形成している。そして、各定電流源回路CA1〜6は電源回路14に接続されている。なお、図5では、説明の便宜上2つずつの有機EL素子4で各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgを構成しているが、各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgにおける有機EL素子4の数はこれに限定されるものではなく、より多くの有機EL素子4で各素子グループ4Rg、4Gg、4Bgを構成してもよい。
【0119】
なお、図示しないが、素子切り替え回路8内ではプロセッサ10からの制御信号で各スイッチSWのON/OFFを切り替えて、電流を供給する有機EL素子4を選択する。後述するように、制御信号が各スイッチSW1〜SWnに所定の時間ずつずらして順次印加されることにより、スイッチSW1〜SWnのON/OFFが順次切り替えられる。このようなスイッチSW1〜SWnが有機EL素子4と、これに対応する定電流源回路との間に介装されている。ここで、スイッチSW1は1番目のスイッチ、スイッチSWnはn番目のスイッチを示す。さらに、対象として選択された有機EL素子4に対応するスイッチをスイッチSWiとする。なお、上記の制御例は定電流値の制御を主とした制御方式例であるが、図5において各スイッチSW1からスイッチSW12を周期的にON/OFFさせ、DUTYを可変するPWM制御としてもよい。
【0120】
(照明装置の制御)
このように構成された本発明の第1実施例に係る照明装置1の制御について、以下に説明する。図6は、照明装置1の制御を示すフローチャートである。以下に述べる処理は、メモリ26に格納されている当該フローチャートに従って構成された各プログラムをプロセッサ10で所定の周期毎に実行することにより行われる。
【0121】
(有機EL素子の故障検出)
ステップS1では、照明装置1における全ての有機EL素子4の電圧を順次測定し、故障の検出を行う(故障検出ステップ)。詳しくは、図7に故障検出ルーチンのフローチャートを示しており、同フローチャートに従い、図面を参照しながら説明する。
【0122】
ステップS11では、プロセッサ10から検出の対象となる素子として選択された有機EL素子4の数iが、有機EL素子4の全総数n以下か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には全ての有機EL素子4の故障検出が完了していないのでステップS12へ進み、当該判定結果が偽(No)と判定された場合には全ての有機EL素子4の故障検出が終了したとして、当該故障検出ルーチンを終了してステップS2へ進む。
【0123】
ステップS12では、検出対象の有機EL素子4に対して第1の故障判定を行う。この際に、プロセッサ10は所定の電流値を指令値として検出対象の有機EL素子4に対応して設けられている定電流源回路CAjに出力する。指令値を受け取った定電流源回路CAjは、電源回路14から各有機EL素子4に流れる電流をプロセッサ10から指令された所定の電流値となるように調整する。各有機EL素子4は、このような電流の供給により駆動され、点灯状態となる。第1の故障判定は、このような状態の下で行われる。
【0124】
詳しくは、図8に第1の故障判定ルーチンのフローチャートを示しており、同フローチャートに基づき説明する。ステップS121では、検出対象の有機EL素子4を指定する。
【0125】
詳しくは、図5での電気回路図においてスイッチSW1〜SWnに印加する制御信号のタイミングチャートの一例を図9に示す。図9に示すように、制御信号はパルス電圧であり、ステップS12の第1の故障判定を行う度にパルス電圧を所定の時間ずつずらしてスイッチSW1〜SWnへ順次印加することにより、パルス電圧が印加されたスイッチSWiが閉じる。スイッチSWiが閉じることにより、検出対象の有機EL素子4が選択され、選択された有機EL素子4に電流が流れる。これにより、スイッチSWiに接続されている有機EL素子4の電圧測定が可能な状態となる。
【0126】
続くステップS122では、スイッチSWiの接続に対応して電圧の検出対象を選択された有機EL素子4に切り替えることにより、検出対象の有機EL素子4の電圧Viを測定する(測定ステップ)。こうして測定された有機EL素子4の電圧Viは、A/D変換器20でA/D変換した後にプロセッサ10へ入力される。
【0127】
ステップS123では、検出対象の有機EL素子4を流れる電流値に対応し、故障判定に用いる基準電圧範囲を予めメモリ26に登録されている基準電圧範囲マップから読み込む。上述したように、検出対象の有機EL素子4は所定の定電流で駆動されているので、電流値は既定値となる。
【0128】
当該ステップS123で使用する基準電圧範囲マップの基となる有機EL素子4の電圧と電流との関係を示すグラフの一例を図10に示す。このグラフには、有機EL素子4での標準的な電流−電圧特性を示す特性曲線IV1、有機EL素子4の製造ばらつきに起因した電気的特性の上限を示す特性曲線IV2、及び有機EL素子4の製造ばらつきに起因した電気的特性の下限を示す特性曲線IV3が示されている。ここで、ある電流値における特性曲線IV2、IV3間の電圧範囲は、当該電流値に対応した特性曲線IV1上の標準的な電圧値に、各有機EL素子4の電気的特性の個体差を加味したものとなる。ステップS123で用いる基準電圧範囲マップには、このような特性曲線に基づいて有機EL素子4に流れる電流を様々に変化させた時の特性曲線IV2と特性曲線IV3とによって定まる電圧範囲が基準電圧範囲として定められている。
【0129】
ステップS124では、検出対象の有機EL素子4の温度Tiを温度センサ22により検出してA/D変換器24を介してA/D変換した後にプロセッサ10へ入力する。プロセッサ10は、予めメモリ26に登録されている温度補償係数マップを使用して、検出された温度Tiに対応する温度補償係数を求める。
【0130】
詳しくは、図10、11を使用して説明する。図11は、当該ステップS124で使用する温度補償係数マップの基になる素子電圧と素子温度との関係を示すグラフの一例である。ここで、素子温度とは有機EL素子4の表面温度である。なお、図11の例では、有機EL素子4に流す電流を10mAとしている。図11に示すように、有機EL素子4の素子電圧は素子温度により変化するため、図10に示す標準的な特性曲線IV1の10mAにおける電圧値と異なる場合がある。そこで、これを補償するための温度補償係数を求める必要がある。従って温度補償係数は、例えば図10の関係から駆動電流10mAで有機EL素子4の素子温度25℃のときの標準的な素子電圧が7.5Vであるとすると、素子温度が70℃に変化したときには図11の関係から測定される素子電圧が6.0Vになる。従って、この場合の温度補償係数は6.0/7.5=0.8となる。このように温度補償係数を各素子温度に対して計算し、予め温度補償係数マップとしてメモリ26に登録しておく。ステップS124では、このようにしてメモリ26に登録された温度補償係数マップから温度補償係数を求める。
【0131】
プロセッサ10は有機EL素子4毎に点灯時間を積算しており、次のステップS125では、検出対象の有機EL素子4における点灯時間の積算時間をプロセッサ10から取得する。取得した点灯時間の積算時間を、予めメモリ26に登録されている点灯時間の積算時間用の経時補償係数マップから経時補償係数を求める。経時補償係数は、当該点灯時間の積算時間に対応した補償と、初期の電源投入時から所定期間に対応した補償とを含む。
【0132】
経時補償係数について、詳しくは図10、図12、及び図13を使用して説明する。図12は、当該ステップS125で使用する点灯時間の積算時間に対応する経時変化の補償の基となる素子電圧と点灯時間との関係の一例を示すグラフであり、有機EL素子4を駆動電流10mAで駆動する場合の素子電圧の経時変化を示している。図12に示すように、有機EL素子4の点灯時間の積算時間が増加するにつれて、有機EL素子4の非導通故障に伴い素子電圧が上昇する傾向にある。
【0133】
従って経時補償係数は、例えば駆動電流10mAで有機EL素子4の点灯時間の積算時間が0時間のときの標準的な素子電圧が7.5Vであるとすれば、点灯時間の積算時間が600時間になると素子電圧が9.0Vになる。この場合の経時補償係数Ctは、9.0/7.5=1.2となる。
【0134】
一方、初期の電源投入時においては特に、有機EL素子4の電流−電圧特性が不安定であるため、このような特性の初期変動についても考慮する必要がある。図13は、当該ステップS125で使用する経時変化補償係数マップの基になる素子電圧と点灯時間の積算時間との関係の一例を示すグラフである。図13の例では、有機EL素子4を3個サンプルとして選択し、選択した各有機EL素子4を駆動電流10mAで駆動する場合の素子電圧の初期変動を示している。図13に示すように、素子電圧は有機EL素子4への電源投入時から20時間辺りをピークに電圧値が下がり、40時間以上経過後に電源投入時の電圧値に戻る傾向にある。ここで、20時間辺りをピークに素子電圧が下がる現象は、通電により有機EL素子4内の不純物に起因して点灯に寄与しない電流が流れてリーク電流が増加するために発生する。
【0135】
従って経時補償係数には、初期変動特性に対する補正も加えられている。初期変動は初期不良の発生と関連があり、特に有機EL素子の場合には、点灯時間が短いと有機EL素子を構成する層同士のマイグレーションが発生し、電流が流れやすくなる傾向にある。しかし、これは点灯時間の積算時間が40時間付近で安定し、この傾向はなくなる。このような初期変動特性として、例えば、駆動電流10mAで有機EL素子4の点灯時間の積算時間が0時間のときの標準的な電圧が7.5Vであるとすれば、点灯時間の積算時間が20時間になる場合の素子電圧は3つの有機EL素子4の各素子電圧の平均値とみなすことができるので、7.4Vとなる。従って、この場合の経時補償係数はCt×7.4/7.5≒0.987Ctとなる。このように、初期変動に対する補償を含めた経時補償係数を各積算時間に対して計算し、経時補償係数マップとしてメモリ26に予め登録しておく。当該ステップS125では、このようにしてメモリ26に登録した経時補償係数マップから経時補償係数を求める。
【0136】
続くステップS126では、上記ステップS124、S125で求めた温度補償係数及び経時補償係数を上記ステップS123で読み込んだ基準電圧範囲に乗算して、有機EL素子4の温度特性と、点灯時間の積算時間に対する電圧変化特性及び初期変動とが反映された基準電圧範囲Vmin〜Vmaxを求める(基準範囲設定ステップ)。なお、基準電圧範囲Vmin〜Vmaxは有機EL素子4の発光色毎に異なる範囲とするのが好ましい。これにより、発光色の異なる有機EL素子4の電気的特性の違いがある場合でもそれに対応して有機EL素子4の故障をより的確に検出することができるようになる。
【0137】
このような基準電圧範囲の補正を行うことにより、有機EL素子4の使用状態や周囲の環境による影響がある場合でも的確に有機EL素子4の故障を検出することができ、故障の検出精度を向上させることができる。特に、有機EL素子4の初期変動は、初期の使用から40時間以内に生じやすいので、40時間以内の場合に対応して基準電圧範囲の補正を行うことにより、故障の検出精度を向上させることができる。また、基準電圧範囲Vmin〜Vmaxは、有機EL素子4の図10に示すような電流−電圧特性に生じうる電気的特性の個体差を含んで設定されるので、有機EL素子4に製造時の電気的特性のばらつきがある場合でも的確に故障を検出することができる。
【0138】
ステップS127では、上記ステップS122で測定した電圧Viが上記ステップS126で補正した基準電圧範囲Vmin〜Vmax以内にあるか否かを判定する(第1の故障判定ステップ)。当該判定が真(Yes)の場合にはステップS128で正常と判定して第1の故障判定ルーチンを終了してステップS13へ進み、当該判定結果が偽(No)と判定された場合にはステップS129へ進む。
【0139】
ステップS129では、上記ステップS122で測定した電圧Viが上記ステップS126で補正した基準電圧範囲の下限値Vminより小さいか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS130で短絡故障と判定し、当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS131で非導通故障(例えば、断線、電荷の蓄積等)と判定して、第1の故障判定ルーチンを終了してステップS13へ進む。これにより、故障状態をより的確に把握することができる。
【0140】
図7に戻り、ステップS13では、上記ステップS12の第1の故障判定ルーチンで検出対象の有機EL素子4が正常か否かを判定する。当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS14へ進み、当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS19へ進む。
【0141】
ステップS14では、上記ステップS12の判定結果が短絡故障であったか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS15へ進む。
【0142】
ステップS15では、検出対象の有機EL素子4に対して第2の故障判定を行う。ここで、図14に正常な有機EL素子に電圧を印加した場合のグラフを示す。図14に示すグラフは、正常な有機EL素子のV−I特性の近似式で表される。詳しくは、有機EL素子両端の電圧をVd、有機EL素子に流れる電流をId、A、Rは定数、eを電荷素量とし、有機EL素子を構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnとの差に基づき、ビルドイン・ポテンシャルVbiが、Vbi=(φp−φn)/eで求められるとすると、Vd≦Vbiの場合、有機EL素子に流れる電流はId≒Vd/Rで表され、Vd>Vbiの場合にはId≒Vd/R+A・(Vd−Vbi)2で表される。
【0143】
図14に示す特性に対し、上述した近似式ではビルドイン・ポテンシャルVbiの近傍ではやや精度が落ちるものの、おおよその有機EL素子の特性と合致したものとなっている。例えば、正極に使用される電極材料の仕事関数は、ITOでは4.8eV、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)では5.1eVとなる。また、負極に使用される電極材料の仕事関数は、Caで3.0eV、MgをMg−Ag合金として使用した場合には3.7eV、LiをAl−Li合金として使用した場合には2.9eVとなる。従って、有機EL素子で実際に使用される電極材料の仕事関数からビルドイン・ポテンシャルVbiを計算するとおおよそ1.1〜2.2Vの範囲になる。
【0144】
有機EL素子では、有機EL素子を構成する正負の電極間の仕事関数の差よりも大きなエネルギーを加えることで、初めて点灯可能となる電荷の移動が始まり、印加電圧の上昇と共に大きな電荷の流れが発生する。この際の動作抵抗は、素子電圧が0からVbiまでの間で電圧依存性のないほぼ一定の特性となる。ビルドイン・ポテンシャルVbiよりも高い電圧領域では、有機EL素子に流れる電流が印加電圧Vdに対し(Vd−Vbi)の2乗特性で急激に増加する。図14に示した素子電圧Vdと素子電流Idとの関係を、I−V特性で表したグラフの一例を図15に示す。曲線IVnmlが正常な有機EL素子のI−V特性であり、直線IVabnが短絡故障した有機EL素子のI−V特性である。
【0145】
第2の故障判定を定電流駆動とする場合、図15に示すように正常時と短絡故障時とにおける有機EL素子4の電圧の差が大きくなるということから、有機EL素子4に流す電流は、正常な有機EL素子4の両端に印加される電圧が正負電極の仕事関数から求められる上述したビルドイン・ポテンシャルVbiとなるときの電流値がよい。但し、有機EL素子4が正常であるか否かを正確に判定するためには、ビルドイン・ポテンシャルVbiよりも若干高めの電圧値に対応する電流値を流すようにするのがよい。より詳しくは、有機EL素子4に供給する電流は、有機EL素子4に印加する電圧をビルドイン・ポテンシャルVbiと等しくした場合に流れる標準電流の1倍以上1.8倍以下、電流値や検出回路の精度に余裕を持たせるためには1.2倍以上1.8倍以下とするのが好ましい。これをビルドイン・ポテンシャルVbiから計算すると、第2の故障判定で有機EL素子4に印加する電圧は1.1〜4Vの範囲となる。
【0146】
また、定電流駆動とする場合に第2の故障判定で使用する基準電圧はビルドイン・ポテンシャルVbi以下の電圧とするが、正常な有機EL素子4を正確に判定するためにビルドイン・ポテンシャルVbiよりも低い電圧値とするのが好ましい。一方、短絡故障した有機EL素子4を正確に判定するためにはビルドイン・ポテンシャルVbiよりも高い電圧値がよい。但し、定電流駆動とする場合に供給する電流は短絡故障と正常な有機EL素子4との特性差が大きくなる電流領域としているため、基準電圧はビルドイン・ポテンシャルVbiの半分まで下げてもよい。即ち、基準電圧はビルドイン・ポテンシャルVbiの0.5倍から1倍の電圧値が好ましい。これにより、判定電圧の高い検出が不要となる簡易な回路で高精度な判定が可能となる。
【0147】
なお、当該ステップS15の第2の故障判定は検出対象の有機EL素子4が非点灯となるような定電圧駆動で行ってもよく、逆方向の電圧を印加して行ってもよい。この際に、プロセッサ10は電源回路14の出力電圧を有機EL素子4が点灯しない所定の一定値まで下げると共に検出対象の有機EL素子4に対応して設けられている定電流源回路CAjはバイパスし、有機EL素子4が非点灯となる定電圧駆動とする。このときの所定の電圧値は、有機EL素子4の短絡故障と非短絡故障との特性差が明確になる0.1〜4V程度が好ましい。
【0148】
定電圧駆動により第2の故障判定を行う場合について、以下に説明する。ここで、有機EL素子4に印加する電圧は、故障判定が容易なビルドイン・ポテンシャルVbiが好ましいが、有機EL素子4の製造ばらつきを考慮するとビルドイン・ポテンシャルVbiより低い電圧とするのがよい。しかし、回路の設計の容易さを考慮すると有機EL素子4の点灯時に近い電流を流すようにする回路構成の方が故障判定を行いやすいため、印加する電圧は高い方がよい。従って、有機EL素子4に印加する電圧値は、ビルドイン・ポテンシャルVbiの0.7から1.0倍とするのが好ましい。この場合の基準電流値Ibは、有機EL素子4が正常な場合にビルドイン・ポテンシャルVbiに等しい電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.5から8倍とするのが好ましい。より好ましくは、2から4倍である。有機EL素子4の測定値がこの基準電流値Ib以下の場合に、有機EL素子4は正常と判定される。
【0149】
本実施例では、前述したように定電流駆動を採用しており、ステップS15の第2の故障判定について、詳しくは、図16の第2の故障判定ルーチンのフローチャートから説明する。ステップS151では、上記ステップS121で指定された検出対象の有機EL素子4に印加される電圧Viを測定し、A/D変換器20を介してA/D変換した後にプロセッサ10へ入力する(測定ステップ)。
【0150】
ステップS152では、検出対象の有機EL素子4に供給される電流に対する基準電圧値Vbを、予めメモリ26から読み込む(基準範囲設定ステップ)。上述したように、検出対象の有機EL素子4は所定の定電流で駆動されているので、電流値は既定値となる。
【0151】
ステップS153では、上記ステップS151で測定した電圧Viが上記ステップS152で読み込んだ基準電圧値Vb以下か否かを判定する(第2の故障判定ステップ)。当該判定結果が真(Yes)の場合には続くステップS154で正常と判定し、当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS155で短絡故障と判定し、第2の故障判定ルーチンを終了してステップS16へ進む。これにより、短絡箇所がある場合には大きな電流が流れることからより明確に故障か否かを区別することができるので、短絡故障の検出精度を向上させることができる。また、故障検出対象の有機EL素子4を点灯するように駆動させて測定した電圧値Viから短絡故障と判定された有機EL素子4を対象として、さらに当該有機EL素子4を非点灯駆動させて測定した電圧値Viから、より精度の高い短絡故障の判定を行うことにより、故障判定を効率的に進めながら精度の高い検出を行うことができる。
【0152】
図7に戻り、ステップS16では上記ステップS15で短絡故障が検出されたか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS17へ進み、当該判定結果が偽(No)の場合にはステップS19へ進む。
【0153】
(有機EL素子の短絡故障修復)
ステップS17では、短絡故障と判定された検出対象の有機EL素子4に対して短絡故障箇所の修復を行う(短絡故障修復ステップ)。当該短絡故障修復は、上記ステップS16で短絡故障と判定された有機EL素子4にパルス状の電圧を印加することにより、短絡箇所を修復するものである。詳しくは、図17に示す短絡故障修復ルーチンのフローチャートから説明する。
【0154】
ステップS171では、予めメモリ26に登録された電圧パルス印加の規定回数(所定回数)Psmaxを読み込む。短絡箇所を確実に切断するためには短絡箇所が切断するまで何回も印加するのが好ましいが、印加回数の増加により著しく故障回復が増すわけではない。そのため、正常な有機EL素子4の非導通故障を防ぐためには少ない印加回数とするのが好ましい。従って、規定回数Psmaxは2回以上10回以下が好ましい。
【0155】
ステップS172では、修復対象の有機EL素子4に所定のパルス幅の電圧パルスを印加し、短絡箇所を切断する。これにより、修復対象の有機EL素子4を修復することが可能となる。なお、短絡箇所に印加する電圧パルスは、確実に短絡箇所を切断するためには高い電圧であることが好ましいが、電圧パルスを印加することで有機EL素子4の非導通故障が発生する可能性があることから低い電圧であることが好ましい。具体的には、例えば大きさが10V以上50V以下の逆方向の電圧パルスが望ましい。より好ましくは、12V以上30V以下の逆方向の電圧パルスである。このように逆方向の電圧パルスを印加することにより、修復対象の有機EL素子4を非点灯のまま修復することができるので、修復に伴う不要な点灯を無くして目立たずに修復させることが可能となる。
【0156】
また、有機EL素子4を点灯駆動させる電圧より大きい、例えば8V以上20V以下、好ましくは10V以上16V以下の順方向の過電圧パルス、または有機EL素子4を点灯駆動させる電流より大きい、例えば通常点灯時の電流の3倍以上20倍以下の過電流パルスでもよい。過電流パルスを短絡箇所に流す場合、過電流パルスの大きさは短絡箇所を確実に切断するために大きい電流値が好ましいが、過電流パルスにより有機EL素子4の非導通故障が発生する可能性があることから小さい電流値であることが好ましい。
【0157】
順方向の過電圧パルスを印加する場合、過電圧パルスの大きさは短絡箇所を確実に切断するために高い方が好ましいが、有機EL素子4の非導通故障が発生するためにより低い電圧であることが好ましい。通常の点灯時よりも順方向電圧を上げて過電圧パルスを印加する場合、正常な有機EL素子4の点灯電流が急増するため、有機EL素子4の発熱が増加し短絡箇所の切断が行いやすくなるものの、有機EL素子4の温度が上昇するために非導通故障が発生する。従って、短時間のパルスを使用して短絡箇所の切断を行う。ここで、過電圧パルスの印加時間は、有機EL素子4が持つ荷電容量に電荷を蓄積して得られる発熱により短絡箇所を切断するため、切断に必要な有機EL素子4の温度を得るために十分長い時間とするのが好ましいが、有機EL素子4全体の温度が過剰に上昇すると有機EL素子4の非導通故障を招く可能性があるため短い方が好ましく、印加電圧が高いほど短い時間とするのがよい。詳しくは、0.5ms以上500ms以下とするのが好ましい。このようなパルスでも短絡箇所を切断することが可能である。続くステップS173では、電圧パルスの印加回数Psiをインクリメントする。
【0158】
ステップS174では、上記ステップS173でインクリメントした電圧パルスの印加回数Psiが上記ステップS171で読み込んだ規定回数Psmaxより小さいか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には短絡故障修復ルーチンを終了し、上記ステップS15へ戻り第2の故障判定ルーチンを実行する。第2の故障判定ルーチンでは上述した第2の故障判定を再度行うので、上記ステップS172で修復対象の有機EL素子4に印加した電圧パルスにより、短絡箇所を切断することができたか否かを的確に判定することができる。
【0159】
一方、上記ステップS174から図7に示す上記ステップS15に戻り第2の故障判定ルーチンを実行し依然として短絡箇所が修復されていないと判定された場合には、再度ステップS17の短絡故障修復ルーチンを実行して短絡箇所の修復を行う。このように、規定回数Psmaxに達するまで短絡箇所の修復と短絡箇所の修復判定を繰り返して行うことで、短絡箇所をより確実に修復することが可能となる。また、短絡故障したと判定された時と同じ判定をするので、より確実に短絡故障箇所が修復したか否かを判定することができる。
【0160】
一方、上記ステップS174で偽(No)と判定された場合には、ステップS175へ進む。ステップS175では、パルスの印加回数を規定回数Psmax印加しても短絡箇所の修復ができなかったとして、修復対象の有機EL素子4を修復困難な素子と判断し、識別情報を含む素子情報(個体情報)をメモリ26に登録して、短絡故障修復ルーチンを終了し、ステップS19へ進む。これにより、故障素子を明確に区別することができる。
【0161】
このように、第1の故障判定で短絡故障と判定された後に第2の故障判定を行い、この故障判定で短絡故障と判定と判定された後に短絡故障修復を行うようにすれば、より確実に短絡故障している有機EL素子を検出することができる。
【0162】
(照明装置の点灯制御)
次に、図6に示したステップS2では、上記ステップS1での故障検出結果に基づき、正常な各有機EL素子4に対応する素子切り替え回路8のスイッチSWを全てON状態にして点灯制御を行う(点灯制御ステップ)。当該点灯制御は、図18に示す点灯制御ルーチンのフローチャートに従って行われる。以下、同フローチャートに従い、図面を参照しながら説明する。
【0163】
ステップS21では、上記ステップS175及びステップS185の少なくともいずれか一方でメモリ26に登録された故障素子情報を読み込む。当該故障素子情報には、故障と判定された有機EL素子4の位置情報が含まれている。
【0164】
ステップS22では、点灯モードがONであるか否かを判定する。ここで点灯モードとは照明装置1の作動・停止切り替え用スイッチ(図示省略)がONされている状態でもよく、または他の方法でプロセッサ10に照明装置1をONする信号が入力されている状態でもよい。当該判定結果が真(Yes)の場合にはステップS23へ進み、当該判定結果が偽(No)の場合には点灯モードがOFFになったと判定して点灯制御ルーチンを終了する。なお、当該ステップS22で点灯モードの判定を行っているが、以下に述べるステップS23〜S25の実行中に点灯モードがOFFになった場合にはその時点で点灯制御ルーチンを終了するものとする。従って、点灯モードがOFFの場合は、ONとなるまで上記ステップS1の故障検出が繰り返されることになる。
【0165】
また、以下に述べるステップS23〜S25では、点灯制御を行うために予めメモリ26に登録された有機EL素子4の電流値に対する有機EL素子4の輝度を定義した電流−輝度特性マップ、有機EL素子4の電流値または電圧値と電流値の積に対する表面温度を定義した発熱パラメータ、有機EL発光パネル2の発光色に対する各有機EL素子4の輝度を定義した各発光色の特性バランスデータ、有機EL素子4に流すことのできる最大電流値、及び有機EL素子4の発光輝度に対する視覚度補正マップ等を使用する。
【0166】
ステップS23では、分割された発光エリア毎にパターン点灯を行う。なお、当該ステップS23において、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障と判定された有機EL素子4に対応する素子切り替え回路8のスイッチSWをOFFにして給電を停止するのが好ましい。給電を停止することにより、無駄な電流の供給を停止することができると共に、故障と判定された有機EL素子4のさらなる故障や非導通故障が発生することを防ぐことができる。詳しくは、図19に示したパターン点灯ルーチンのフローチャートから説明する。
【0167】
ステップS231では、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障した有機EL素子4の位置情報を取得して故障した有機EL素子4の分布状況を求め、上述したような故障素子分布マップや電圧パラメータ、電流パラメータ、または電流パラメータを使用して求められる温度パラメータを使用して、故障した有機EL素子4を消灯した状態で正常な各有機EL素子4のみを使用して有機EL発光パネル2全体として規則的な点灯パターンになるような点灯パターンを発光エリア毎に求める。
【0168】
ステップS232では、上記ステップS231で求めた点灯パターンを形成するように発光エリア毎に正常な各有機EL素子4を点灯/非点灯にして、上記ステップS231で求めた点灯パターンを形成し、パターン点灯ルーチンを終了して上記ステップS22へ戻る。なお、当該ステップS23を繰り返す度に点灯パターンを変更するようにしてもよい。これにより、発光エリア毎の各有機EL素子4の発熱の偏りを低減して非導通故障を防ぐことができるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0169】
上述したパターン点灯ルーチンによる点灯制御の一例を図20に示す。図20(A)にはパターン点灯ルーチンを実行しない場合の1つの発光エリアの故障パターンの一例を示す。発光エリアA1において緑色の発光色の有機EL素子4G2が故障して非点灯となる場合、有機EL発光パネル2を見たときに発光エリアA1に黒い線が入り見栄えが悪く、発光エリアA1において各有機EL素子4の光を合成して得られる合成光も白色ではなくなり、照明光の色に偏りが出てしまう。一方、パターン点灯ルーチンを実行すると図20(B)のように、故障した有機EL素子4G2と同じ発光色の有機EL素子4G1を意図的に非点灯とする。この点灯パターンを全ての発光エリアA1〜Akで行うことにより、各有機EL発光パネル2に所定の規則的な点灯パターンが形成される。パターン点灯で制御する場合には照明装置1の照明光の色が部分的に白色ではなくなるものの、装飾照明として照明光の色の偏りがなくなって違和感なく見栄えがよくなる。また、照明装置1の照明光の品質を維持することができる。
【0170】
このようなパターン点灯ルーチンに代えて、点灯制御の変形例として図21にフローチャートを示す点灯制御ルーチンにより発光エリア毎に発光面における輝度を略均一にする輝度調整点灯を行ってもよい。図21のフローチャートでは図18のフローチャートにおけるステップS23のパターン点灯ルーチンがステップS24の輝度調整点灯ルーチンに置き換えられている。このステップS24について、詳しくは図22に示す輝度調整点灯ルーチンのフローチャートから以下に説明する。
【0171】
ステップS241では、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障した有機EL素子4の位置情報を取得して故障した有機EL素子4の分布状況を求め、上述したような電流−輝度特性マップや発光輝度に対する視覚度補正マップを使用して、照明装置1全体の輝度が平均化されるように、故障した有機EL素子4を含む発光エリア内で故障した有機EL素子4と同じ発光色の輝度を上げて当該発光エリアで得られる合成光の色を他の発光エリアで得られる合成光の色に近づけると共に、同じ所定エリアで故障した有機EL素子4と異なる発光色の輝度を下げることにより輝度のむらをなくす。このときこれらの輝度の調整のため、電流−輝度特性マップから電流の変化量を求め、さらに視覚度補正マップを使用して求めた電流の変化量を補正し、プロセッサ10から該当する定電流源回路に指令する。
【0172】
ステップS242では、上記ステップS241で求めた電流の変化量から、該当する発光エリアの正常な各有機EL素子4の電流を調整し、輝度調整点灯ルーチンを終了する。なお、当該輝度調整点灯ルーチンを繰り返して実行する度に、輝度の調整量を所定時間毎に変更するようにしてもよい。これにより、有機EL発光パネル2全体の発熱の偏りを低減して非導通故障を防ぐことができるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0173】
図23に上述した輝度調整点灯ルーチンによる点灯制御の一例を示す。図23(A)に輝度調整点灯ルーチンを実行しない場合の1つの発光エリアの故障パターンの一例を示す。発光エリアA1において緑色の発光色の有機EL素子4G2が故障して非点灯となる場合、図20(A)と同様に局部的に色むらが観察される。これを輝度調整点灯で制御する場合には、図23(B)に示すように、発光エリアA1内で故障した有機EL素子4G2と同色の有機EL素子4G1の輝度を上記ステップS241で求めた輝度上昇量だけ上げる。このような輝度の調整により、発光エリアA1の輝度が上昇するので、故障した有機EL素子4G2とは異なる発光色の各有機EL素子4R1、4R2、4B1、4B2の輝度を上記ステップS241で求めた輝度下降量だけ下げてこれを補償する。輝度調整点灯ルーチンを実行した場合には、故障した有機EL素子4G2周辺の正常な各有機EL素子4R1、4R2、4G1、4B1、4B2の輝度を調整することにより発光面7に故障素子を含む局所的な部分では色むらが発生するものの、発光エリアA1全体としては合成光の輝度が略平均化される。
【0174】
上述した輝度調整点灯では、有機EL素子の短径の1/5角のエリア内における輝度の偏差が15%以内となるように制御する。ここで短径とは、有機EL素子が長方形の場合は短手方向の長さ、円形の場合は直径、楕円形の場合は短径のことを示している。また、有機EL素子の輝度を発光色毎に調整するために、有機EL素子の短径の1/5角のエリアにおける色差が標準値に対してMacAdam3Stepに収まるように制御する。なお、輝度調整点灯はこれに限られず、例えば故障素子からの距離に応じて正常素子の輝度に勾配を持たせるようにしてもよい。詳しくは、故障素子に近い正常素子ほど輝度を低くし、故障素子から離れるほど輝度を高くしてもよいし、故障素子に近い正常素子ほど輝度を高くし、故障素子から離れるほど輝度を低くなるように制御してもよい。
【0175】
このような輝度調整点灯ルーチンに変えて、点灯制御の他の変形例として図24にフローチャートを示す点灯制御ルーチンにより発光エリア毎に温度調整点灯を行ってもよい。図24のフローチャートでは、図21のフローチャートにおけるステップS24の輝度調整点灯ルーチンがステップS25の温度調整点灯ルーチンに置き換えられている。このステップS25について、詳しくは図25に示す温度調整点灯ルーチンのフローチャートから以下に説明する。
【0176】
ステップS251では、上記ステップS21で読み込んだ故障素子情報から故障した有機EL素子4の位置情報を取得して故障した有機EL素子4の分布状況を求め、各有機EL素子4に印加する電圧と電流の積と輝度効率パラメータとを使用して算出される発熱量から求められる各有機EL素子4の上昇分の温度に基づき、各有機EL素子4の表面温度が略均一になるように各発光色毎に電流の供給量を算出し、プロセッサ10から各定電流源回路CA1〜CAmに指令する。ここで有機EL素子の短径の1/5角のエリア内における温度のばらつきが10℃以内となるように制御する。
【0177】
ステップS252では、各定電流源回路CA1〜CAmは、上記ステップS251で求めた電流の供給量から正常な各有機EL素子4へ供給される電流値を調整し、温度調整点灯ルーチンを終了する。なお、当該温度調整点灯ルーチンを繰り返して実行する度に、発光面7の表面温度を所定時間毎に変更するようにしてもよい。これにより、発熱の偏りを低減して非導通故障を抑制させることができるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0178】
このように、本実施例によれば、照明装置1を構成する全ての有機EL素子4に対して故障検出を行い、故障検出で検出された故障した有機EL素子4の分布状況に基づいて正常な各有機EL素子4を使用して発光面7の点灯制御を行う。このような故障検出及び点灯制御を実行することにより、故障した有機EL素子4を的確に検出することができると共に、故障による非点灯状態を目立たなくすることができる。
【0179】
さらに、有機EL素子4の故障検出前に、予め基準電圧範囲マップ、温度補償係数マップ、点灯時間の積算時間に対する補償及び初期変動に対する補償を含む経時補償係数マップを予めメモリ26に登録しておくことにより、プロセッサ10の演算負荷を低減して迅速に基準電圧範囲を補正することができる。
【0180】
(故障検出の変形例)
さらに、上記第1実施例の変形例について以下に説明する。この変形例では、故障検出ルーチンにおいて、ステップS15の第2の故障判定ルーチンを除いたものであり、図26に故障検出ルーチンの変形例のフローチャートを示す。
【0181】
図26に示すように、ステップS12で第1の故障判定ルーチンにおいて検出対象の有機EL素子4を点灯駆動させて故障判定し、故障を検出した場合にはステップS14で短絡故障か非導通故障かを判定する。短絡故障の場合にはステップS17の短絡故障修復ルーチンで該当する有機EL素子4の短絡箇所を修復する。ステップS17で該当する有機EL素子4の短絡箇所を修復した後に当該短絡箇所が修復したか否かを判定するために、ステップS17の短絡故障修復ルーチンを行った後に再度ステップS12へ戻る。
【0182】
このように、短絡箇所を修復した後に故障と判定された時と同じ駆動方法で、該当する有機EL素子4を点灯駆動にして故障判定を行うことにより、短絡故障箇所が修復したか否かをより確実に判定することができる。
【0183】
また、上記第1実施例の他の変形例について説明する。この変形例では、故障検出ルーチンにおいて、ステップS12の第1の故障判定ルーチンを除いたものであり、図27に故障検出ルーチンの他の変形例のフローチャートを示す。なお、この変形例では第2の故障判定のみを実施するので、後述するように短絡故障でないと判定された場合には非導通故障と判定するものとする。
【0184】
図27に示すように、ステップS15の第2の故障判定ルーチンにおいて検出対象の有機EL素子4を非点灯駆動させて故障判定し、ステップS16で短絡故障が検出された場合にはステップS17で短絡箇所の修復を行う。そして、短絡箇所が修復したか否かを判定するために、再度ステップS15へ戻る。一方、ステップS16で短絡故障が検出されなかった場合には、正常と判定してステップS19へ進む。このように短絡箇所の修復判定を行うことにより、上記変形例と同様の効果を得ることができる。
【0185】
(点灯制御の変形例)
点灯制御のさらに他の変形例として、所定時間毎にパターン点灯、輝度調整点灯、及び温度調整点灯のうち少なくとも2つ組み合わせて行うようにしてもよい。これにより、正常な各有機EL素子4の発熱の偏りを低減し非導通故障を抑制させるので、素子寿命を延ばすことができる。
【0186】
<第2実施例>
次に、第2実施例に係る照明装置の制御方法について以下に説明する。本実施例に係る照明装置の制御方法では、第1実施例に対して、照明装置1に通信手段を設けた点が異なり、その他の構成は共通している。従って、共通箇所の説明は省略し、相違点について説明する。
【0187】
(照明装置のネットワーク構成)
図28に、本発明の第2実施例に係る外部機器を含む照明装置のネットワーク構成を示す。照明装置1はインタフェース(通信手段)32を有しており、複数の照明装置1がこのインタフェース32を介してネットワーク30にそれぞれ接続されている。ネットワーク30にはインタフェース33を介して外部機器34が接続されており、大規模な照明システム40を構成している。外部機器34はメモリ36や図示しないプロセッサ等から構成され、ネットワーク30を介して各照明装置1との通信や制御を行う。外部機器34はシステムコントローラやパーソナルコンピュータ等から構成されてもよい。また、ネットワーク30は、LAN、WAN、MAN等である。照明装置1は、第1実施例と同じく図4に示すように構成される。
【0188】
照明システム40を構成する各照明装置1は、各照明装置1を識別する識別情報を保持しており、この識別情報により外部機器34は各照明装置1を識別し、データの読み書き及び点灯制御を実行する。
【0189】
(外部機器による照明装置の制御)
このように構成された照明装置1の制御について、以下に説明する。第1実施例で述べた故障検出ルーチンは各照明装置1が個別に行い、検出結果をネットワーク30を介して外部機器34に送信する。外部機器34は送信された検出結果をメモリ36に登録すると共に、各照明装置1の検出結果に応じて点灯制御を行う。外部機器34が読み込んだ照明装置1のデータは、図示しないが外部機器34の出力装置(例えば、モニタ、プリンタ等)に出力されるようにしてもよい。外部機器34は、各照明装置1で行う故障検出に必要なデータをメモリ36に登録しており、当該故障検出に必要なデータを各照明装置1のメモリ26に書き込む。
【0190】
また、外部機器34によりメモリ26に登録されているデータのうち読み込み及び書き込み可能なデータとして、上述した基準電圧範囲マップ、基準電圧範囲を補正するために使用する温度補償係数マップ、点灯時間の積算時間に対応する補償及び初期の点灯における電圧の変動に対応する補償を含む経時補償係数マップ等がある。また、有機EL素子4の発熱パラメータ、各発光色の特性バランスデータ、最大電流値、発光輝度に対する視覚度補正マップ等もある。さらに、制御上の各種設定値、例えば逆方向の電圧パルスの印加電圧の大きさ、過電圧パルスの大きさ、過電流パルスの大きさ、パルスの印加回数を規定する規定回数Psmax、Pdmax等もある。そして、上述したステップS175、S185で登録された有機EL素子4の故障素子情報、及び照明装置1の制御方法を構成する上記ステップS1の故障検出ルーチン及び上記ステップS2の点灯制御ルーチンを構成するプログラムの読み込み及び書き込みが可能である。
【0191】
(照明装置の点灯制御)
外部機器34は、ネットワーク30に接続されている任意の1台または複数台の各照明装置1の点灯制御を行う。当該点灯制御は、上述した第1実施例の図6に示したステップS2の点灯制御ルーチンのみを実行するものである。
【0192】
詳しくは、外部機器34が図18に示した上記ステップS23のパターン点灯ルーチン、図21に示した上記ステップS24の輝度調整点灯ルーチン、または図24に示した上記ステップS25の温度調整ルーチンを、ネットワーク30に接続されている照明装置1のそれぞれに対して実行して各有機EL素子4の点灯制御を行う。なお、上述した第1実施例でさらに他の変形例として説明したように、上記ステップS23のパターン点灯ルーチン、上記ステップS24の輝度調整点灯ルーチン、及び上記ステップS25の温度調整ルーチンを組み合わせて点灯制御を行うようにしてもよい。
【0193】
上述したステップS23のパターン点灯について、第1実施例と同様に図18、20から説明する。なお、第1実施例と共通するステップの説明は省略する。
【0194】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0195】
ステップS231では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から各照明装置1での故障素子の分布状況を求め、照明システム40の点灯パターンを求める。当該ステップS231で求める点灯パターンは、照明システム40全体として規則的となる点灯パターンである。
【0196】
ステップS232では、外部機器34は、上記ステップS231で求めた点灯パターンを各照明装置1にネットワーク30を介して送信する。各照明装置1のプロセッサ10は、外部機器34から送信された点灯パターンに基づいて、各発光エリア毎に各有機EL素子4のON/OFFを切り替えて点灯パターンを形成する。そして、照明システム40として上記ステップS231で求めた規則的な点灯パターンが形成される。これにより、照明システム40全体として統一性のある点灯パターンが形成されて装飾照明として見栄えがよくなり、適正な照明光を確保することができる。また、正常な各有機EL素子4の発熱の偏りを低減するので、正常な各有機EL素子4の素子寿命を延ばすことができる。
【0197】
次に、点灯制御の変形例として上述したステップS24の輝度調整点灯について、第1実施例と同様に図21、22から説明する。なお、ここでも第1実施例と共通するステップの説明は省略する。
【0198】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0199】
ステップS241では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から、各照明装置1での故障素子の分布状況を求め、上述したような各照明装置1に対応する電流−輝度特性マップや発光輝度に対する視覚度補正マップを使用して、照明システム40全体の輝度が平均化されるように、各照明装置1を構成する各有機EL4に供給される電流の変化量をそれぞれ求める。なお、電流−輝度特性マップや発光輝度に対する視覚度補正マップによる電流の変化量の求め方は、第1実施例で上述した内容と同様である。
【0200】
ステップS242では、外部機器34は、上記ステップS241で求めた電流値をネットワーク30を介して各照明装置1に送信する。各照明装置1のプロセッサ10は、外部機器34から送信された電流値に基づいて各発光エリア毎に各有機EL素子4に供給する電流値を調整する。そして、照明システム40として色むらは発生するものの輝度が略平均化された照明となる。これにより、照明システム40全体として統一性のある適正な照明光を確保することができる。
【0201】
さらに、点灯制御の他の変形例として述べた温度調整点灯について、図24、25を使用して以下に説明する。なお、ここでも上記第1実施例と共通するステップについては説明を省略する。
【0202】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0203】
ステップS251では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から各照明装置1における故障素子の分布状況を求め、求めた分布状況から有機EL素子4の電気特性と発熱特性とに基づき、各有機EL素子4の表面温度が略均一になるように各発光色毎に電流の供給量を算出する。
【0204】
ステップS252では、外部機器34は、上記ステップS251で求めた電流の供給量を各照明装置1に送信する。各照明装置1のプロセッサ10は、外部機器34から送信された各発光色毎の電流の供給量になるよう定電流源回路CA1〜CAmに指令を出し、定電流源回路CA1〜CAmにより各有機EL素子4の温度が調整される。これにより、照明システム40として輝度むらは発生してしまうが、各照明装置1の表面温度が略均一化されるので、照明システム40として適正な照明光を確保することができる。
【0205】
上述したような点灯制御を行うことにより、故障した有機EL素子4の非点灯状態を目立たなくすることができるので、照明装置1の品質を向上させることができる。
【0206】
このように、本実施例によれば、ネットワーク30にインタフェース32を備えた1台または複数台の照明装置1及び外部機器34を接続し、外部機器34から照明装置1のメモリ26に登録されているデータの読み込み及び書き込みや、照明装置1の点灯制御を行うことにより、照明装置1のメモリ26に登録されているデータの管理を容易に行うことができると共に、照明装置1の管理や操作を容易に行うことができる。
【0207】
また、外部機器34からメモリ26に格納されているプログラムを書き換えることにより、一括して故障検出や点灯制御の改善を行うことができ、さらに機能を追加することができるので、照明装置1の故障検出や点灯制御における拡張性が向上する。
【0208】
さらに、大規模な照明システム40を構成して、外部機器34が各照明装置1のメモリ26に登録されているデータの読み込み及び書き込みや各照明装置1の点灯制御をすることにより、大規模な照明システムを構築することができる。
【0209】
そして、故障した有機EL素子4がある場合でも、外部機器34から各照明装置1の点灯制御を行うことにより、各照明装置1の故障状況に応じて全ての照明装置1の照明光が適正に制御されるので、照明システム40全体として統一性のある照明光となり、照明光の品質を維持することができる。
【0210】
また、各照明装置1を外部機器34で集中管理することができるので、各照明装置1の管理を容易に行うことができる。
【0211】
(照明装置のネットワーク構成の変形例)
さらに、上記第2実施例のネットワーク構成の変形例について以下に説明する。この変形例は、照明システム40が照明装置1のみで構成されるものであり、ネットワーク構成図を図29に示す。
【0212】
図29に示すように、ネットワーク30に各照明装置1がインタフェース32を介してそれぞれ接続されて大規模な照明システム40を構成している。このように構成された各照明装置1a1〜1atは、ネットワーク30を介して相互に通信することが可能となる。各照明装置1で通信により読み込み及び書き換え可能なデータは上述した第2実施例と同様である。
【0213】
一例として、各照明装置1のメモリ26に登録された故障素子情報、各照明装置1を構成する発光エリアの表面温度情報、各有機EL素子4の輝度情報、有機EL発光パネル2の発光色情報、及び各照明装置1の電源回路14への出力情報等を相互に通信して取得することにより、周囲に配置された各照明装置1の故障情報に合わせて照明装置1の点灯制御を行うことが可能となり、照明システム40全体の点灯制御を行うことが可能となる。
【0214】
このように構成された照明システム40では、例えば、照明装置1a1を主の照明装置(以下、マスタ照明装置とする)、それ以外の各照明装置1a2〜1atを従の照明装置(以下、スレーブ照明装置とする)とすると、マスタ照明装置1a1が上述した外部機器34と同様に機能することによりスレーブ照明装置1a2〜1atのデータの読み書き及び点灯制御を行う。これにより、マスタ照明装置1a1によりスレーブ照明装置1a2〜1atを集中管理することができるので、各照明装置1a1〜1atの管理を容易に行うことができる。
【0215】
<第3実施例>
次に、第3実施例に係る照明装置の制御方法について以下に説明する。本実施例に係る照明装置の制御方法では、照明装置1に通信手段を設けた点で構成が第2実施例と同じである。本実施例では、この通信手段を使用して照明装置1の交換時期を通知するようにした場合の照明装置の制御について以下に説明する。
【0216】
(照明装置のネットワーク構成)
第2実施例で述べたように、本実施例の照明装置のネットワーク構成は、図28に示すとおり、単数または複数の照明装置1と外部機器34とが同じネットワーク30に接続され、照明システム40を構成している。
【0217】
(外部機器による照明装置の制御)
本実施例における外部機器34による照明装置1の制御について説明する。本実施例の照明装置1の制御では、上記第2実施例と同様に外部機器34が各照明装置1と通信して、各照明装置1のメモリ26に登録されているデータ及びプログラムの読み書きと、各照明装置1の点灯制御を行う。読み込み及び書き込み可能なデータは第2実施例と同様である。また、各照明装置1の構成は第1実施例と同じく図4に示すように構成される。なお、故障検出は、第2実施例と同じく各照明装置1で行う。
【0218】
(照明装置の点灯制御)
本実施例における照明装置の点灯制御は、第2実施例と同じように図30に示す点灯制御ルーチンを外部機器34が統括して行うが、この点灯制御ルーチンで各照明装置1の交換時期を判定することが相違している。なお、図30は外部機器34が照明装置1のそれぞれに対して行う点灯制御であり、照明装置1が複数配置されている場合には各照明装置1を対象として行う。詳しくは、図30に示す点灯制御ルーチンのフローチャートから説明する。
【0219】
ステップS21では、外部機器34は、各照明装置1のメモリ26に登録されている故障素子情報をネットワーク30を介して取得する。
【0220】
ステップS210では、外部機器34は上記ステップS21で取得した故障素子情報から故障した有機EL素子4の分布状況を求め、求めた分布状況から各照明装置1の交換時期を判定する。詳しくは、図31に示す交換時期判定ルーチンのフローチャートから説明する。
【0221】
ステップS211では、外部機器34は、外部機器34のメモリ36に予め登録されている照明装置1の交換時期の目安となる故障素子数(所定個数)xを取得する。故障素子数xは、例えば照明装置1に配置されている有機EL素子4の数の0.5%以上25%以下が好ましい。さらに好ましくは5%以上20%以下である。
【0222】
ステップS212では、交換時期の判定を行った照明装置の数uが、照明システム40を構成する全ての照明装置1の数t以下か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には全ての照明装置1の交換時期判定が終わっていないのでステップS213へ進み、当該判定結果が偽(No)と判定された場合には、全ての照明装置の交換時期判定が終了したと判断してステップS217へ進む。
【0223】
ステップS213では、外部機器34は、上記ステップS21で取得した各照明装置1の故障素子情報から、u番目の照明装置1における故障した有機EL素子4の分布状況を求め、故障した有機EL素子4の故障素子数yを取得する。
【0224】
ステップS214では、上記ステップS213で取得したu番目の照明装置1の故障素子数yが上記ステップS211で取得した交換時期の目安となる故障素子数x以上か否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)の場合には照明装置1の交換時期と判定してステップS214へ進み、当該判定結果が偽(No)の場合にはまだ交換時期ではないと判断して交換時期検出ルーチンを終了する。
【0225】
ステップS215では、上記ステップS214における照明装置1の交換時期であるとの判断に基づき、外部機器34にu番目の照明装置1は交換時期であるとして情報を例えばメモリ36等に蓄積し、ステップS216へ進む。続くステップS216では、照明装置の数uをインクリメントする。
【0226】
一方、ステップS217では、外部機器34は、メモリ36等に蓄積された交換が必要と判断された照明装置1を例えば図示しないモニタやプリンタ等の外部出力装置へ出力して交換時期判定ルーチンを終了し、ステップS22へ進む。通知するデータとして、照明装置1を識別する識別情報と交換時期を示すフラグ等としてもよい。出力装置に出力する際には、照明装置1の識別情報と共に交換時期である旨を出力するようにしてもよい。
【0227】
ステップS22以降の処理は上述した第1実施例と同様であり、説明は省略する。
【0228】
このように、本実施例によれば、構成された照明装置の制御方法では、外部機器34で各照明装置1を集中管理し、各照明装置1の交換時期を外部機器34に自動で通知するようにしており、照明装置1の交換時期を的確に知ることができるので、照明装置1の管理を容易に行うことができる。
【0229】
上記照明装置1の交換時期判定の変形例として、上述したように図29に示す第2実施例の変形例であるマスタ照明装置1a1と複数のスレーブ照明装置1a2〜1atから構成される照明システム40への適用も可能である。マスタ照明装置1a1がマスタ照明装置1a1を含め複数のスレーブ照明装置1a2〜1atの交換の必要の有無を上記ステップS210の交換時期判定ルーチンを実行することにより、各照明装置1の交換時期を判定することができる。
【0230】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0231】
例えば、上記各実施例及び変形例では、照明装置1は1つの有機EL発光パネル2から構成されているが、これに限られず、複数の有機EL発光パネル2から構成されるようにしてもよい。これに伴い、上述した第3実施例では照明装置1の交換時期を判定するとしたが、これに限定されるものではなく、照明装置1が複数の有機EL発光パネル2から構成されるときは、各有機EL発光パネル2に対して上述の交換時期判定ルーチンを実行し、交換時期と判定された有機EL発光パネル2を外部出力装置等に出力するようにしてもよい。
【0232】
また、上記各実施例及び変形例では、基準電圧範囲Vmin〜Vmaxは温度補償係数マップや経時補償係数マップから補正したものであるが、これに限られるものではなく、温度補償係数マップ及び経時補償係数マップのうち少なくともいずれか1つから選択された特性マップを使用して基準電圧範囲を補正するようにしてもよい。
【0233】
また、上記各実施例及び変形例では、点灯制御ルーチンにおいてパターン点灯ルーチンを実行し、変形例として輝度調整点灯ルーチン及び温度調整点灯ルーチンを行うように記載したが、これに限られるものではなく、パターン点灯ルーチン、輝度調整点灯ルーチン、及び温度調整点灯ルーチンを所定時間毎に切り替えて行ってもよく、また様々な組み合わせが可能である。即ち、一例としてパターン点灯ルーチンを行いながら輝度調整点灯ルーチンを行うようにしてもよい。これにより、発光面7に発生する発熱及び表面温度の偏りを低減して各有機EL素子4の非導通故障を抑制させるので、正常な各有機EL素子4の素子寿命を延ばすことが可能になる。
【0234】
また、上述した点灯制御ルーチンにおいて、パターン点灯ルーチン、輝度調整点灯ルーチン、及び温度調整点灯ルーチンのうち、少なくともいずれか1つを選択して点灯制御を行うようにしてもよい。
【0235】
また、上記各実施例では、輝度調整点灯ルーチンにおいて、所定のエリア内にある故障した有機EL素子4の周辺にある故障した有機EL素子4と同じ発光色の正常な各有機EL素子4の輝度を上げると共に、故障した有機EL素子4とは異なる発光色の正常な各有機EL素子4の輝度を下げるようにしているが、輝度の調整はこれに限定されるものではない。例えば、故障した有機EL素子4を含む所定のエリア内にある正常な各有機EL素子4の輝度をそれぞれ上げる作動、及び故障した有機EL素子4を含む所定のエリア内にある正常な各有機EL素子4の輝度をそれぞれ上げる作動のうち、少なくともいずれか一方の作動としてもよい。これにより発光面7に色むらが生じるが、故障した有機EL素子4が目立たなくすることができる。
【符号の説明】
【0236】
1 照明装置
2 有機EL発光パネル
4 有機EL素子
7 発光面
10 プロセッサ
26 メモリ
34 外部機器
40 照明システム
CA1〜CAm 定電流源回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色の異なる複数の有機エレクトロルミネッセンス素子をストライプ状に並べた単数または複数の発光パネルによって発光面を形成した照明装置の制御方法であって、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性に基づき、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障を検出する故障検出ステップと、
前記故障検出ステップで短絡故障と判定された素子に短絡故障修復処理を行う短絡故障修復ステップと、
前記短絡故障と判定された素子が前記短絡故障修復ステップの後に修復されたか否かを判定する短絡故障修復判定ステップと、
前記短絡故障と判定された素子が修復されていないと前記短絡故障修復判定ステップで判定された場合に、前記短絡故障修復ステップ及び前記短絡故障修復判定ステップを繰り返し、前記短絡故障と判定された素子が修復されていないとの判定回数が所定回数を超えた場合には故障素子として該当素子の識別情報を含む個体情報を記憶手段に記憶する故障素子判定ステップと、
前記故障素子判定ステップで個体情報が記憶された故障素子の分布状況に基づき、前記発光面の点灯状態を制御する点灯制御ステップと、
を備えることを特徴とする照明装置の制御方法。
【請求項2】
前記故障検出ステップは、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動している駆動状態で、該有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定する電気的特性に対して基準範囲を設定する基準範囲設定ステップと、
前記測定ステップで測定された電気的特性が、前記基準範囲設定ステップで設定された該基準範囲から外れる場合に前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障と判定する故障判定ステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の照明装置の制御方法。
【請求項3】
前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯状態で駆動する点灯駆動ステップを含み、
前記故障判定ステップは、前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の照明装置の制御方法。
【請求項4】
前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯状態で駆動する非点灯駆動ステップを含み、
前記故障判定ステップは、前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップを含むことを特徴とする請求項2または3に記載の照明装置の制御方法。
【請求項5】
前記測定ステップの前に前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップを備え、
前記駆動ステップは、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯する駆動状態で駆動する点灯駆動ステップと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯となる駆動状態で駆動する非点灯駆動ステップとを含み、
前記故障判定ステップは、
前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップと、
前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップとを含み、
前記第1の故障判定ステップで短絡故障と判定された後に前記第2の故障判定ステップを行うことを特徴とする請求項2に記載の照明装置の制御方法。
【請求項6】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記エレクトロルミネッセンス素子に供給する電流が、前記有機エレクトロルミネッセンスを構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnと電荷素量eとから(φp−φn)/eで求められるビルドイン・ポテンシャルの電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.0倍以上1.8倍以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の照明装置の制御方法。
【請求項7】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は逆電圧方向の電圧であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項8】
前記所定回数は2回以上10回以下であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項9】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項10】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子への給電を停止することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項11】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整を行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項12】
前記輝度調整は、前記故障素子を含む所定領域内にある前記故障素子の発光色と同色の前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げるとともに、前記所定領域内にある前記故障素子の発光色とは異なる色の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げることを特徴とする請求項11に記載の照明装置の制御方法。
【請求項13】
前記点灯制御ステップでは、前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項14】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御する点灯状態制御、前記故障素子への給電を停止する給電停止制御、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整、及び前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整する温度調整のうち少なくとも2つを組み合わせて行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項15】
前記点灯制御ステップは、前記点灯状態制御、前記給電停止制御、前記輝度調整、及び前記温度調整の少なくともいずれかを所定時間毎に行うことを特徴とする請求項14に記載の照明装置の制御方法。
【請求項16】
前記点灯制御ステップの前に前記記憶手段に予め点灯制御情報を登録しておき、
前記点灯制御情報には、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電流−輝度特性マップと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発熱パラメータと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の各色の特性バランスデータと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の最大電流値と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度に対する視覚度補正マップとの少なくともいずれか1つを含み、
前記点灯制御情報に基づき前記点灯制御ステップを行うことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項17】
前記照明装置は通信手段を備え、
該通信手段を外部機器の通信手段に接続して該外部機器の通信手段と通信する通信ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項18】
前記外部機器はシステムコントローラであることを特徴とする請求項17に記載の照明装置の制御方法。
【請求項19】
前記外部機器は、前記照明装置以外の照明装置であることを特徴とする請求項17または18に記載の照明装置の制御方法。
【請求項20】
前記通信ステップでは、前記記憶手段に故障素子として記憶された前記個体情報から、該当する発光パネルの交換時期を通知する交換時期通知ステップをさらに備えることを特徴とする請求項17乃至19のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項1】
発光色の異なる複数の有機エレクトロルミネッセンス素子をストライプ状に並べた単数または複数の発光パネルによって発光面を形成した照明装置の制御方法であって、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性に基づき、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障を検出する故障検出ステップと、
前記故障検出ステップで短絡故障と判定された素子に短絡故障修復処理を行う短絡故障修復ステップと、
前記短絡故障と判定された素子が前記短絡故障修復ステップの後に修復されたか否かを判定する短絡故障修復判定ステップと、
前記短絡故障と判定された素子が修復されていないと前記短絡故障修復判定ステップで判定された場合に、前記短絡故障修復ステップ及び前記短絡故障修復判定ステップを繰り返し、前記短絡故障と判定された素子が修復されていないとの判定回数が所定回数を超えた場合には故障素子として該当素子の識別情報を含む個体情報を記憶手段に記憶する故障素子判定ステップと、
前記故障素子判定ステップで個体情報が記憶された故障素子の分布状況に基づき、前記発光面の点灯状態を制御する点灯制御ステップと、
を備えることを特徴とする照明装置の制御方法。
【請求項2】
前記故障検出ステップは、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動している駆動状態で、該有機エレクトロルミネッセンス素子の電気的特性を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定する電気的特性に対して基準範囲を設定する基準範囲設定ステップと、
前記測定ステップで測定された電気的特性が、前記基準範囲設定ステップで設定された該基準範囲から外れる場合に前記有機エレクトロルミネッセンス素子の故障と判定する故障判定ステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の照明装置の制御方法。
【請求項3】
前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯状態で駆動する点灯駆動ステップを含み、
前記故障判定ステップは、前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の照明装置の制御方法。
【請求項4】
前記駆動ステップは、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯状態で駆動する非点灯駆動ステップを含み、
前記故障判定ステップは、前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップを含むことを特徴とする請求項2または3に記載の照明装置の制御方法。
【請求項5】
前記測定ステップの前に前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する駆動ステップを備え、
前記駆動ステップは、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が点灯する駆動状態で駆動する点灯駆動ステップと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が非点灯となる駆動状態で駆動する非点灯駆動ステップとを含み、
前記故障判定ステップは、
前記点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで電気的特性として測定された電圧値が前記基準範囲である所定の基準電圧範囲より大きい場合に非導通故障と判定し、前記測定された電圧値が前記所定の基準電圧範囲より小さい場合に短絡故障と判定する第1の故障判定ステップと、
前記非点灯駆動ステップで素子が駆動されている場合に、前記測定ステップで測定された電気的特性が前記基準範囲にない場合に短絡故障と判定する第2の故障判定ステップとを含み、
前記第1の故障判定ステップで短絡故障と判定された後に前記第2の故障判定ステップを行うことを特徴とする請求項2に記載の照明装置の制御方法。
【請求項6】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記エレクトロルミネッセンス素子に供給する電流が、前記有機エレクトロルミネッセンスを構成する正極の電極材料の仕事関数φpと負極の電極材料の仕事関数φnと電荷素量eとから(φp−φn)/eで求められるビルドイン・ポテンシャルの電圧を印加した場合に流れる標準電流の1.0倍以上1.8倍以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の照明装置の制御方法。
【請求項7】
前記非点灯駆動ステップにおいて、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧は逆電圧方向の電圧であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項8】
前記所定回数は2回以上10回以下であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項9】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項10】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子への給電を停止することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項11】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整を行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項12】
前記輝度調整は、前記故障素子を含む所定領域内にある前記故障素子の発光色と同色の前記正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げるとともに、前記所定領域内にある前記故障素子の発光色とは異なる色の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げることを特徴とする請求項11に記載の照明装置の制御方法。
【請求項13】
前記点灯制御ステップでは、前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項14】
前記点灯制御ステップでは、前記故障素子判定ステップで個体情報を記憶された故障素子の分布情報を求め、該分布情報に基づいて前記発光面における発光パターンが規則的になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯状態を制御する点灯状態制御、前記故障素子への給電を停止する給電停止制御、前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を、前記発光面における輝度が略均一になるように調整する輝度調整、及び前記発光面の表面温度が略均一になるように前記故障素子以外の正常な各有機エレクトロルミネッセンス素子の表面温度を調整する温度調整のうち少なくとも2つを組み合わせて行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項15】
前記点灯制御ステップは、前記点灯状態制御、前記給電停止制御、前記輝度調整、及び前記温度調整の少なくともいずれかを所定時間毎に行うことを特徴とする請求項14に記載の照明装置の制御方法。
【請求項16】
前記点灯制御ステップの前に前記記憶手段に予め点灯制御情報を登録しておき、
前記点灯制御情報には、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の電流−輝度特性マップと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発熱パラメータと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の各色の特性バランスデータと、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の最大電流値と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度に対する視覚度補正マップとの少なくともいずれか1つを含み、
前記点灯制御情報に基づき前記点灯制御ステップを行うことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項17】
前記照明装置は通信手段を備え、
該通信手段を外部機器の通信手段に接続して該外部機器の通信手段と通信する通信ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【請求項18】
前記外部機器はシステムコントローラであることを特徴とする請求項17に記載の照明装置の制御方法。
【請求項19】
前記外部機器は、前記照明装置以外の照明装置であることを特徴とする請求項17または18に記載の照明装置の制御方法。
【請求項20】
前記通信ステップでは、前記記憶手段に故障素子として記憶された前記個体情報から、該当する発光パネルの交換時期を通知する交換時期通知ステップをさらに備えることを特徴とする請求項17乃至19のいずれか1項に記載の照明装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2012−99472(P2012−99472A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221934(P2011−221934)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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