説明

照明装置及びプロジェクター

【課題】従来よりも光利用効率を一層高くすることが可能な照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光を射出する光源装置110と、複数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレイ130と、第2レンズアレイ130からの光を重畳させる重畳レンズ150とを備える照明装置100であって、第1小レンズ122を通過した光が最も集まる点を集束点とするとき、第1小レンズ122の曲率は、集束点が第1レンズアレイ120より後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するように、各第1小レンズ122ごとに設定されていることを特徴とする照明装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を射出する光源装置と、複数の第1小レンズを有する第1レンズアレイと、複数の第1小レンズに対応する複数の第2小レンズを有する第2レンズアレイと、第2レンズアレイからの光を重畳させる重畳レンズとを備える照明装置が知られている。また、このような照明装置を備えるプロジェクターが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の照明装置によれば、複数の第1小レンズを有する第1レンズアレイ、複数の第1小レンズに対応する複数の第2小レンズを有する第2レンズアレイ及び第2レンズアレイからの光を重畳させる重畳レンズを備えるため、光源装置からの光の面内光強度分布を均一化することが可能となり、その結果、明るさむらの少ない照明光を射出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−219442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、照明装置の技術分野においては、常に、光利用効率を一層高くすることが求められている。しかしながら、従来の照明装置においては、光利用効率を高くすることが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、従来よりも光利用効率を一層高くすることが可能な照明装置を提供することを目的とする。また、上記のような照明装置を備え、光利用効率を一層高くすることが可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、鋭意研究を重ねた結果、従来の照明装置において光利用効率を高くすることが困難である原因のひとつとして、第1小レンズを通過した光が最も集まる点を集束点とするとき、従来の照明装置においては当該集束点が各第1小レンズを通過した光ごとに大きく離れた位置にあるため、第1小レンズからの光が後段の光学要素(第2レンズアレイ等)を通過する際に当該光の一部が失われる事があることを見出した(後述する比較例参照。)。これは、従来の照明装置においては、設計及び製造の容易さの観点から、全ての第1小レンズで同様の曲率を採用することが一般的であるためである。
【0008】
そして、さらなる研究を重ねた結果、集束点が第1レンズアレイより後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するように、各第1小レンズの曲率を設定することに想到し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下の事項により構成される。
【0009】
[1]本発明の照明装置は、光を射出する光源装置と、複数の第1小レンズを有する第1レンズアレイと、複数の前記第1小レンズに対応する複数の第2小レンズを有する第2レンズアレイと、前記第2レンズアレイからの光を重畳させる重畳レンズとを備える照明装置であって、前記第1小レンズを通過した光が最も集まる点を集束点とするとき、前記第1小レンズの曲率は、前記集束点が前記第1レンズアレイより後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するように、各前記第1小レンズごとに設定されていることを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の照明装置によれば、第1小レンズの曲率は、集束点が第1レンズアレイより後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するように、各第1小レンズごとに設定されているため、光が所定の光学要素を通過する際に当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、その結果、従来よりも光利用効率を一層高くすることが可能となる(後述する実施形態参照。)。
【0011】
また、本発明の照明装置によれば、第1レンズアレイと、第2レンズアレイと、重畳レンズとを備えるため、従来の照明装置と同様に、光源装置からの光の面内光強度分布を均一化することが可能となり、その結果、明るさむらの少ない照明光を射出することが可能となる。
【0012】
[2]本発明の照明装置においては、前記第1小レンズは、前記第1小レンズに対応する前記第2小レンズよりも小さいことが好ましい。
【0013】
このような構成とすることにより、射出する光の照明可能面積に比して小型の光源装置を用いることが可能となり、その結果、照明装置の小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0014】
なお、上記[2]のような照明装置においては、第1レンズアレイから第2レンズアレイに向かって光軸を拡げているため、光が拡がるように第1レンズアレイに入射することになる。このため、第1レンズアレイにおける中心部分の第1小レンズに入射する光の拡がりと、第1レンズアレイにおける周辺部分の第1小レンズに入射する光の拡がりとが異なるようになる。したがって、第1小レンズの曲率が一定である場合には、集束点が光学要素から離れた位置になる(後述する実施形態及び比較例参照。)。よって、本発明は、上記[2]のような照明装置について特に好適に適用することができる。
【0015】
[3]本発明の照明装置においては、前記第2レンズアレイと前記重畳レンズとの間に配置され、前記第2レンズアレイからの光を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光からなる光として射出する偏光変換素子をさらに備えることが好ましい。
【0016】
このような構成とすることにより、照明装置から偏光方向の揃った略1種類の直線偏光からなる光を射出することが可能となり、直線偏向からなる光を用いる機器(例えば、液晶光変調装置を備えるプロジェクター)に用いるのに適した照明装置とすることが可能となる。
【0017】
[4]本発明の照明装置においては、前記所定の光学要素は、第2レンズアレイであることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、第1小レンズからの光が第2レンズアレイを通過する際に、当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。
【0019】
[5]本発明の照明装置においては、前記所定の光学要素は、偏光変換素子であることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、第1小レンズからの光が偏光変換素子を通過する際に、当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。
【0021】
[6]本発明の照明装置においては、前記所定の光学要素は、第2レンズアレイ及び偏光変換素子であり、前記集束点が第2レンズアレイから偏光変換素子までにあることが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、第1小レンズからの光が第2レンズアレイと偏光変換素子との両方を通過する際に、当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。
【0023】
なお、この場合、第1小レンズの曲率は、集束点が第2レンズアレイと偏光変換素子との両方の光学要素近傍に位置するように、各第1小レンズごとに設定されている。
【0024】
[7]本発明の照明装置においては、前記第1小レンズは、曲面が球面の平凸レンズからなることが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、他形状の第1小レンズ(例えば、両凸レンズからなる第1小レンズや曲面が非球面の平凸レンズからなる第1小レンズ)を用いるよりも第1レンズアレイの設計を容易なものとすることが可能となる。
【0026】
[8]本発明の照明装置においては、前記第1小レンズは、平凸レンズからなり、複数の前記第1小レンズは、行列状に配列され、前記平凸レンズの曲面は、行方向の曲率と、列方向の曲率とが別々に設定された曲面からなることが好ましい。
【0027】
このような構成とすることにより、縦横両方の方向について曲率を設定することにより集束点の位置を調整することが可能となり、その結果、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。
【0028】
[9]本発明のプロジェクターは、本発明の照明装置と、前記照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置からの光を投写対象に投写する投写光学系とを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明のプロジェクターによれば、従来よりも光利用効率を一層高くすることが可能な本発明の照明装置を備えるため、プロジェクター全体としても、光利用効率を一層高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係るプロジェクター1000の光学系を示す平面図。
【図2】実施形態における第1レンズアレイ120を第2レンズアレイ130側から見た図。
【図3】実施形態に係る照明装置100における光の様子を示す図。
【図4】比較例に係る照明装置100aにおける光の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の照明装置及びプロジェクターについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0032】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロジェクター1000の光学系を示す平面図である。なお、図1を含む各図面においては、光源装置110については断面図として表示している。また、図1及び図2は模式図であり、図中の光学要素の形状は必ずしも現実に則したものではない。
図2は、実施形態における第1レンズアレイ120を第2レンズアレイ130側から見た図である。図2の各第1小レンズ122(符号を図示せず。)に表示されているA−1〜D−6の数字(小レンズ番号)は、各第1小レンズ122を区別するための符号であり、数字が現実に付されていることを示すものではない。
図3は、実施形態に係る照明装置100における光の様子を示す図である。なお、図3に示す光の様子は、シミュレーションにより得たものである。このため、光源装置110に関しては発光部13及びリフレクター20以外の記載は省略する。後述する図4に関しても同様である。
【0033】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸方向(図1における照明光軸100ax方向)、x軸方向(図1における紙面に平行かつz軸に垂直な方向)及びy軸方向(図1における紙面に垂直かつz軸に垂直な方向)とする。
【0034】
実施形態1に係るプロジェクター1000は、図1に示すように、照明装置100と、色分離導光光学系200と、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ変調する3つの液晶光変調装置400R,400G,400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投写光学系600とを備える。
照明装置100は、光源装置110と、凹レンズ90と、第1レンズアレイ120と、第2レンズアレイ130と、偏光変換素子140と、重畳レンズ150とを備える。照明装置100は、照明光として赤色光、緑色光及び青色光を含む光(つまり、白色光として用いることができる光)を、照明光軸100axに沿うように射出する。
【0035】
光源装置110は、図1に示すように、発光管10と、リフレクター20とを備える。光源装置110は、照明光軸100axを中心軸とする集束光を被照明領域側に射出する。
【0036】
発光管10は、発光部13を内包する管球部12、管球部12の両側に伸びる一対の封止部14,16、照明光軸100axに沿って配置された一対の電極、一対の封止部14,16内にそれぞれ封止された一対の金属箔及び一対の金属箔にそれぞれ電気的に接続された一対のリード線を有する。発光管10としては、高輝度発光する種々の発光管を採用でき、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を採用できる。発光部13は、後述する反射面24の第1焦点近傍に位置している。発光部13は、赤色光、緑色光及び青色光を含む光を射出する。
【0037】
発光管10の構成要素の条件等を例示的に示すと、管球部12及び封止部14,16は、例えば石英ガラスからなり、管球部12内には、水銀、希ガス及び少量のハロゲンが封入されている。電極は、例えばタングステン電極であり、金属箔は、例えばモリブデン箔である。リード線は、例えばモリブデン又はタングステンから構成されている。
【0038】
リフレクター20は、一対の封止部14,16のうち一方の封止部である第1封止部14に配設され、発光部13から射出される光を被照明領域に向けて反射する。リフレクター20は、発光管10の第1封止部14を挿通・固定するための開口部22と、光を被照明領域側へ向けて反射する反射面24とを有する。反射面24は楕円面であり、第1焦点近傍に位置している発光部13から射出される光を被照明領域側の第2焦点近傍に集まる集束光として反射する。リフレクター20は、開口部22に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって第1封止部14に配設されている。
【0039】
反射面24を構成する基材の材料としては、例えば、結晶化ガラスやアルミナ(Al)などを好適に用いることができる。反射面24の内面には、例えば、酸化チタン(TiO)と酸化シリコン(SiO)との誘電体多層膜からなる可視光反射層が形成されている。
【0040】
凹レンズ90は、図1に示すように、リフレクター20の被照明領域側に配置され、リフレクター20からの光を第1レンズアレイ120に向けて射出するように構成されている。凹レンズ90は、光が拡がるように当該光を第1レンズアレイ120に入射させる。
【0041】
第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び重畳レンズ150は、光変調装置に入射する光の面内光強度分布を均一化する光均一化光学系(いわゆるレンズインテグレーター光学系)を構成する。
【0042】
第1レンズアレイ120は、図1〜図3に示すように、凹レンズ90からの光を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する。第1レンズアレイ120は、光源装置110からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に6行4列のマトリクス状に配列された構成を有する(図2参照。)。詳しい説明は省略するが、第1小レンズ122の外形形状(横:縦=4:3の長方形)は、液晶光変調装置400R,400G,400Bの画像形成領域の外形形状に関して略相似形である。
【0043】
実施形態に係る照明装置100においては、第1小レンズ122を通過した光が最も集まる点を集束点とするとき、第1小レンズ122の曲率は、集束点が第1レンズアレイ120より後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するように、各第1小レンズ122ごと(A−1〜D−6ごと)に設定されている。当該実施形態においては、図3に示すように、所定の光学要素は第2レンズアレイ130であり、集束点は第2レンズアレイ130の射出面近傍にある。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、集束点が第2レンズアレイ中や第2レンズアレイの入射面近傍等にあるようにしてもよい。第1小レンズ122は、曲面が球面の平凸レンズからなる。
【0044】
各第1小レンズ122の曲率は、例えば、シミュレーションを行って、集束点が所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するようになる各第1小レンズ122の曲率を割り出し、その結果に基づいて設定することができる。なお、本発明においては、第1小レンズの曲率が全て異なってもよいし、曲率が同一の2つ以上の第1小レンズを備えていてもよい。
【0045】
第1小レンズ122は、図1に示すように、第1小レンズ122に対応する第2小レンズ132(後述。)よりも小さい。このため、第1レンズアレイ120は第2レンズアレイ130よりも小さくなっており、第1レンズアレイ120から第2レンズアレイ130に向かって光軸を拡げていることになる。
いる。第1レンズアレイ120は、図3に示すように、第1小レンズ122を通過する光の光軸を拡げるように屈折させ、第1小レンズ122を通過する光を対応する第2小レンズ132に入射させる。
【0046】
第2レンズアレイ130は、複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する。第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、各第1小レンズ122の像を液晶光変調装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に6行4列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0047】
偏光変換素子140は、第2レンズアレイ130からの光(第1レンズアレイ120により分割された各部分光束)を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光からなる光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの光に含まれる偏光成分のうち一方の直線偏光成分をそのまま透過し、他方の直線偏光成分を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する位相差板とを有している。
【0048】
重畳レンズ150は、偏光変換素子140からの各部分光束(もとは第2レンズアレイ130からの光)を集光して液晶光変調装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150は、重畳レンズ150の光軸と照明光軸100axとが略一致するように配置されている。なお、重畳レンズは、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。
【0049】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210,220、反射ミラー230,240,250及びリレーレンズ260,270を備える。色分離導光光学系200は、照明装置100からの光を赤色光、緑色光及び青色光に分離するとともに、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ照明対象となる液晶光変調装置400R,400G,400Bに導光する。
色分離導光光学系200と、液晶光変調装置400R,400G,400Bとの間には、集光レンズ300R,300G,300Bが配置されている。
【0050】
ダイクロイックミラー210,220においては、基板上に、所定の波長領域の光を反射して、他の波長領域の光を通過させる波長選択透過膜が形成されている。
ダイクロイックミラー210は、赤色光成分を反射して、緑色光及び青色光成分を通過させる。
ダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射して、青色光成分を通過させる。
【0051】
ダイクロイックミラー210で反射された赤色光は、反射ミラー230でさらに反射され、集光レンズ300Rを通過して赤色光用の液晶光変調装置400Rの画像形成領域に入射する。
ダイクロイックミラー210を青色光とともに通過した緑色光は、ダイクロイックミラー220で反射され、集光レンズ300Gを通過して緑色光用の液晶光変調装置400Gの画像形成領域に入射する。
ダイクロイックミラー220を通過した青色光は、リレーレンズ260、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ270、射出側の反射ミラー250、集光レンズ300Bを経て青色光用の液晶光変調装置400Bの画像形成領域に入射する。リレーレンズ260,270及び反射ミラー240,250は、ダイクロイックミラー220を通過した青色光を液晶光変調装置400Bまで導く機能を有する。
【0052】
なお、青色光の光路にこのようなリレーレンズ260,270が設けられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の発散等による光利用効率の低下を防止するためである。実施形態に係るプロジェクター1000においては、青色光の光路の長さが長いのでこのような構成をとったが、例えば、赤色光の光路の長さを長くして、リレーレンズ及び反射ミラーを赤色光の光路に用いる構成としてもよい。
【0053】
液晶光変調装置400R,400G,400Bは、照明装置100からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置であり、入射された色光を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものである。なお、図示を省略したが、集光レンズ300R,300G,300Bと液晶光変調装置400R,400G,400Bとの間には、それぞれ入射側偏光板が介在配置され、液晶光変調装置400R,400G,400Bとクロスダイクロイックプリズム500との間には、それぞれ射出側偏光板が介在配置されている。これら入射側偏光板、各液晶光変調装置及び射出側偏光板によって、入射された各色光の光変調が行われる。
各液晶光変調装置は、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像信号に応じて、入射側偏光板から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。各液晶光変調装置における画像形成領域の外径形状は、横:縦=4:3の長方形形状からなる。
【0054】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、y軸方向から見て、4つの直角プリズムを貼り合わせた略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0055】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって投写され、投写対象であるスクリーンSCR上で画像を形成する。
【0056】
次に、実施形態に係る照明装置100及びプロジェクター1000の効果を説明する。
【0057】
実施形態に係る照明装置100によれば、第1小レンズ122の曲率は、集束点が第1レンズアレイ120より後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍(第2レンズアレイ130の入射面近傍)に位置するように、各第1小レンズごとに設定されているため、光が所定の光学要素(第2レンズアレイ120)を通過する際に当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、その結果、従来よりも光利用効率を一層高くすることが可能となる。
【0058】
実施形態に係る照明装置100によれば、第1レンズアレイ120と、第2レンズアレイ130と、重畳レンズ150とを備えるため、従来の照明装置と同様に、光源装置からの光の面内光強度分布を均一化することが可能となり、その結果、明るさむらの少ない照明光を射出することが可能となる。
【0059】
また、実施形態に係る照明装置100によれば、第1小レンズ122は、第1小レンズ122に対応する第2小レンズ132よりも小さいため、射出する光の照明可能面積に比して小型の光源装置を用いることが可能となり、その結果、照明装置の小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0060】
また、実施形態に係る照明装置100によれば、偏光変換素子140を備えるため、照明装置から偏光方向の揃った略1種類の直線偏光からなる光を射出することが可能となり、直線偏向からなる光を用いる機器に用いるのに適した照明装置とすることが可能となる。
【0061】
また、実施形態に係る照明装置100によれば、所定の光学要素が第2レンズアレイ120であるため、第1小レンズからの光が第2レンズアレイを通過する際に、当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。
【0062】
また、実施形態に係る照明装置100によれば、第1小レンズ122は、曲面が球面の平凸レンズからなるため、他形状の第1小レンズ(例えば、両凸レンズからなる第1小レンズや曲面が非球面の平凸レンズからなる第1小レンズ)を用いるよりも第1レンズアレイの設計を容易なものとすることが可能となる。
【0063】
実施形態に係るプロジェクター1000によれば、実施形態1に係る照明装置100を備えるため、従来よりも光利用効率を一層高くすることが可能な実施形態1に係る照明装置100を備えるため、プロジェクター全体としても、光利用効率を一層高くすることが可能となる。
【0064】
[比較例]
図4は、比較例に係る照明装置100aにおける光の様子を示す図である。
比較例として、従来の照明装置と同様の構成を有する照明装置100aについて、集束点の位置を確認するためのシミュレーションを行った。
照明装置100aについては、第1小レンズの曲率以外は実施形態に係る照明装置100と同様の構成を有するものとして上記シミュレーションを行った。すなわち、比較例に係る照明装置100aにおいては、第1レンズアレイ120aにおける第1小レンズ122aの曲率が全て等しく設定されている。
【0065】
シミュレーションの結果として、図4に示すように、従来の照明装置と同様の構成を有する照明装置100aにおいては、実施形態1に係る照明装置100と同様に、第1レンズアレイ120aから第2レンズアレイ130に向かって光軸を拡げているため、光が拡がるように第1レンズアレイ120aに入射することになる。このため、第1レンズアレイ120aにおける中心部分の第1小レンズ122aに入射する光の拡がりと、第1レンズアレイ120aにおける周辺部分の第1小レンズ122aに入射する光の拡がりとが異なるようになる。すなわち、中心付近の第1小レンズ122aにおいては、入射する光の入射角の差が周辺部分の第1小レンズ122aに比べて大きくなるために集束点の位置が遠くになり、周辺部分の第1小レンズ122aにおいては、入射する光の入射角の差が中心部分の第1小レンズに比べて小さくなるために集束点の位置が近くになり、その結果、集束点が各第1小レンズ122aを通過した光ごとに大きく離れた位置(この場合、第2レンズアレイ130の前段及び偏光変換素子140の後段)に位置することがわかった。このため、第1小レンズ122aからの光が第2レンズアレイ130を通過する際に当該光の一部が失われる事があり、従来の照明装置と同様の構成を有する照明装置100aにおいては、光利用効率を高くすることが困難となる。
【0066】
一方、本発明に係る照明装置においては、上記した実施形態に示したように、第1小レンズの曲率は、集束点が前記第1レンズアレイより後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するように、各第1小レンズごとに設定されている(図3参照。)。このため、光利用効率を高くすることが可能となる。
【0067】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0068】
(1)上記実施形態において記載した各構成要素の寸法、個数、材質及び形状は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0069】
(2)上記実施形態においては、曲面が球面の平凸レンズからなる第1小レンズ122を備える照明装置100を例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1小レンズが平凸レンズからなり、複数の第1小レンズが行列状に配列され、平凸レンズの曲面が行方向の曲率と、列方向の曲率とが別々に設定された曲面からなるものを備える照明装置としてもよい。このような構成とすることにより、縦横両方の方向について曲率を設定することにより集束点の位置を調整することが可能となり、その結果、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。
【0070】
(3)上記実施形態においては、光変調装置として、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ変調する液晶光変調装置400R,400G,400Bを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。他の色光(黄色光等)を変調する液晶光変調装置を用いてもよい。
【0071】
(4)上記実施形態においては、発光部から射出される光のうち、リフレクターには直接入射しない光の一部又は全部を反射する副鏡をさらに備える光源装置を用いてもよい。
【0072】
(5)上記実施形態においては、反射面が楕円面からなるリフレクターを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、反射面が放物面からなるリフレクターを用いてもよい。この場合、リフレクターから平行光を射出することが可能であるため、実施形態における凹レンズ90に該当する光学要素は備えなくてもよい。
【0073】
(6)上記実施形態においては、透過型のプロジェクターを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、反射型のプロジェクターを用いてもよい。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶光変調装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶光変調装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクターにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を得ることができる。
【0074】
(7)上記実施形態においては、プロジェクターの光変調装置として液晶光変調装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。光変調装置としては、一般に、画像情報に応じて入射光を変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調装置等を用いてもよい。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(TI社の商標)を用いることができる。
【0075】
(8)上記実施形態においては、3つの液晶光変調装置を用いたプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。1つ、2つ又は4つ以上の液晶光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0076】
(9)上記実施形態においては、所定の光学要素が第2レンズアレイであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、所定の光学要素が偏光変換素子であってもよい。このような構成とすることにより、第1小レンズからの光が偏光変換素子を通過する際に、当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。さらに詳しくいえば、偏光変換素子の反射層に対応する入射側に遮光膜が形成されている場合は、第1小レンズからの光が偏光変換素子に入射する際に、偏光分離層に対応する部分へ入射するのではなく反射層に対応する部分へ入射する光が発生し、当該遮光膜により遮光されて当該光の一部が失われることを抑制することが可能となる。また、反射層に対応する入射側に遮光膜が形成されていない場合は、反射層に入射した光が偏光分離層に入射した光と異なる偏光となって偏光変換素子より射出され、当該光の一部の偏光方向が異なる偏光となることを抑制し、ひいては、異なる偏光となった光が失われることを抑制することが可能となる。
【0077】
(10)上記実施形態においては、所定の光学要素が第2レンズアレイであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、所定の光学要素は、第2レンズアレイ及び偏光変換素子であってもよい。この場合には、集束点が第2レンズアレイから偏光変換素子までにあるようにすればよい。このような構成とすることにより、第1小レンズからの光が第2レンズアレイと偏光変換素子との両方を通過する際に、当該光の一部が失われることを抑制することが可能となり、光利用効率をより一層高くすることが可能となる。
【0078】
(11)上記実施形態においては、光源装置として発光管を有するものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光源装置として固体光源(発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)等)を有するものを用いてもよい。
【0079】
(12)上記各実施形態においては、本発明の照明装置をプロジェクターに適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の照明装置を他の光学機器(例えば、光ディスク装置、自動車のヘッドランプ、照明機器等。)に適用することもできる。
【0080】
(13)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも可能である。
【符号の説明】
【0081】
10…発光管、12…管球部、13…発光部、14…第1封止部、16…第2封止部、20…リフレクター、22…開口部、24…反射面、90…凹レンズ、100,100a…照明装置、100ax…照明光軸、110…光源装置、120,120a…第1レンズアレイ、122,122a…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラー、260,270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集光レンズ、400R,400G,400B…液晶光変調装置、500…クロスダイクロイックプリズム、600…投写光学系、1000…プロジェクター、SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する光源装置と、複数の第1小レンズを有する第1レンズアレイと、複数の前記第1小レンズに対応する複数の第2小レンズを有する第2レンズアレイと、前記第2レンズアレイからの光を重畳させる重畳レンズとを備える照明装置であって、
前記第1小レンズを通過した光が最も集まる点を集束点とするとき、
前記第1小レンズの曲率は、前記集束点が前記第1レンズアレイより後段にある所定の光学要素中又は当該所定の光学要素近傍に位置するように、各前記第1小レンズごとに設定されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記第1小レンズは、前記第1小レンズに対応する前記第2小レンズよりも小さいことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の照明装置において、
前記第2レンズアレイと前記重畳レンズとの間に配置され、前記第2レンズアレイからの光を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光からなる光として射出する偏光変換素子をさらに備えることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の照明装置において、
前記所定の光学要素は、第2レンズアレイであることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項3に記載の照明装置において、
前記所定の光学要素は、偏光変換素子であることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項3に記載の照明装置において、
前記所定の光学要素は、第2レンズアレイ及び偏光変換素子であり、
前記集束点が第2レンズアレイから偏光変換素子までにあることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の照明装置において、
前記第1小レンズは、曲面が球面の平凸レンズからなることを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の照明装置において、
前記第1小レンズは、平凸レンズからなり、
複数の前記第1小レンズは、行列状に配列され、
前記平凸レンズの曲面は、行方向の曲率と、列方向の曲率とが別々に設定された曲面からなることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の照明装置と、
前記照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置からの光を投写対象に投写する投写光学系とを備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−41760(P2013−41760A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178272(P2011−178272)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】