説明

照明装置

【課題】LED光源を用いた照明装置であって、小型で光束のロスの少なく、照明均一性の高いものを提供する。
【解決手段】照明装置は、LED11と、コリメータ15、フライアイインテグレータ(オプティカルインテグレータ)30により構成される光源部A、コレクタレンズ20、視野絞り50、リレーレンズ40、開口絞り60、コンデンサレンズ70からなる光学系を用いている。平行化素子であるコリメータ15は、LED11を保護する封止材を兼ねており、LED11から放出される光束を略平行光束に変換する平行化素子である。このように、LED11を保護する封止材に平行化素子の役割を兼用させることにより、平行化素子を大型化することなく、LED11からの光束を有効に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡照明光学系において照度ムラを低減した照明方法として、ケーラー照明と称される照明方法が広く知られている。図11にケーラー照明法による顕微鏡透過照明の構成図を示す。なお、以下の各図において互いに同一あるいは相当する構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略することがある。
【0003】
ケーラー照明は、光源10と、コレクタレンズ20、視野絞り50、リレーレンズ40、開口絞り60、コンデンサレンズ70からなる光学系を用いる。
【0004】
コレクタレンズ20は、前側焦点位置に光源10を配置し、光源10から発せられた光束を略平行光に変換する。コレクタレンズ20の後側焦点位置には視野絞り50が配置される。この視野絞り50が配置される面は、光源10から発せられた光が均一に拡散されることにより照度ムラが最も少なくなる位置となる。
【0005】
更に、コレクタレンズ20の後側焦点位置が、前側焦点位置となるようにリレーレンズ40を配置し、このリレーレンズ40の後側焦点位置に開口絞り60を配置する。この開口絞り60の配置される面においては拡大された光源像が結像する。
【0006】
また、リレーレンズ40の後側焦点位置が、前側焦点位置となるようにコンデンサレンズ70を配置し、このコンデンサレンズ70の後側焦点位置を視野面80とする。
【0007】
上述したリレーレンズ40とコンデンサレンズ70とにより、視野絞り50の像は、視野面80上に結像する。即ち、視野絞り50と視野面80とは共役の関係にあり、視野絞り50を小さくしたときには、視野面80における照明領域を定めることができる。
【0008】
また、光源10はコレクタレンズ20とリレーレンズ40とにより、開口絞り60の面において結像する。これにより開口絞り60は視野面80に照射される光の角度、即ち照明開口数(NA)を定めることができる。
【0009】
しかしながら、上述のケーラー照明を用いた場合であっても光源の発光角度特性の影響により照射領域の中央部は明るく照射され、照射領域の端部は暗く照射される傾向が残り、均一な明るさで照射することが困難であった。
【0010】
特に近年、小型化、長寿命化の観点から光源に発光ダイオード(LED)を用いることが提案されているが、従来のハロゲンランプに比べ発光面積の小さいLEDを光源に用いてハロゲンランプと同等の照明NAを実現するために開口絞り上の光源像倍率を大きくすると、光源からコレクタレンズによって取り込まれる光束の取り込み角が増大し、照射領域の不均一がより顕著に現れるようになる。
【0011】
このような光源の発光角度特性の影響による照明ムラを改善するために例えば特開2002−40327号公報(特許文献1)のようにオプティカルインテグレータ(フライアイインテグレータ)を用いた照明用装置が提案されている。
【0012】
図12に従来技術におけるフライアイ照明光学系の構成図を示す。フライアイ照明光学系は、光源10と、コレクタレンズ20、フライアイインテグレータ30、リレーレンズ41、視野絞り50、リレーレンズ40、開口絞り60、コンデンサレンズ70からなる光学系を用いる。
【0013】
コレクタレンズ20は、前側焦点位置に光源10を配置し、光源10から発せられた光束を略平行光に変換する。コレクタレンズ20の後側焦点位置にはフライアイインテグレータ30の入射面が配置される。
【0014】
更に、フライアイインテグレータの射出面が、前側焦点位置となるようにリレーレンズ41を配置し、このリレーレンズ41の後側焦点位置に視野絞り50を配置する。
【0015】
更に、リレーレンズ41の後側焦点位置が、前側焦点位置となるようにリレーレンズ40を配置し、このリレーレンズ40の後側焦点位置に開口絞り60を配置する。
【0016】
また、リレーレンズ40の後側焦点位置が、前側焦点位置となるようにコンデンサレンズ70を配置し、このコンデンサレンズ70の後側焦点位置を視野面80とする。
【0017】
図11と図12の対比から明らかなように、フライアイ照明光学系はケーラー照明光学系のコレクタレンズ20と視野絞り50との間にフライアイインテグレータ30とリレーレンズ41とが追加された構成となっている。
【0018】
フライアイインテグレータ30を構成する単位レンズは両面の曲率半径│r│が等しく、左右の頂点がそれぞれ反対側から平行光を入れたときの焦点になっている。フライアイインテグレータ30はこの単位レンズを数十個各頂点が同一平面上に乗るように束ねて配置されている。各単位レンズの入射面は照明領域と共役に配置され、その像は単位レンズの位置に無関係にリレーレンズ41の後側焦点(視野絞り50の配置される面)に生じ、視野絞り50を重畳的に照明する。フライアイインテグレータ30の入射面上の照度は光源の放射角度特性によって中心が明るく、周辺が暗く照明されるが各単位レンズの入射面が重畳的に視野絞り50上に投影されるため、視野絞り面全体での照度の均一性が向上する。一方でフライアイインテグレータ30の後側頂点面には各単位レンズに小さな光源像が規則正しく並び、二次光源を形成する。
【0019】
更にフライアイ照明光学系では、ケーラー照明光学系と同様に視野絞り50と視野面80、及び二次光源と開口絞り60がそれぞれ共役に配置されており、視野絞り50と開口絞り60の径を調整することで照明領域と照明開口数を定めることができる。
【0020】
更に、フライアイインテグレータ30により視野絞り50上に重畳的に投影され、均一に照明された光束は、更にリレーレンズ40及びコンデンサレンズ70により視野面80に投影され、視野面80を均一に照明する。
【0021】
このように顕微鏡照明光学系においてフライアイ照明光学系を用いたものとして、例えば特許文献1から特許文献3に示すようなものが提案されている。特許文献1には、光源としてハロゲンランプを用いた顕微鏡照明光学系の例が開示されている。また、特許文献2及び特許文献3には、光源にLEDを用いた顕微鏡照明光学系の例が開示されている。
【特許文献1】特開2002−40327号公報
【特許文献2】特開2003−337286号公報
【特許文献3】特開2003−5083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
特許文献2及び特許文献3に記載される発明は、いずれもLEDを拡散光源として取り扱い、コレクタレンズの前側焦点位置に配置することでLEDからの光束をコレクタレンズにより略平行に変換した後、フライアイインテグレータに入射させている。このような構成においては、コレクタレンズの取り込み角度以上の角度でLEDから放出される光束は光学系に入射せず、照射に到達しないためLEDからの光束を有効に利用することができない。
【0023】
また、照明光源にLEDを用いる利点の一つとして装置の小型化が上げられるが、上述の通りフライアイ照明光学系はケーラー照明光学系にフライアイインテグレータとリレーレンズとが追加された構成となっていることから、ケーラー照明光学系に比べ装置が大型化してしまう。更に、特許文献2及び特許文献3に記載の発明のように、コレクタレンズで略平行光に変換したのちフライアイインテグレータに入射させる光学系の構成は(例えば特許文献1に記載された)光源にハロゲンランプを用いたものと変わらず、小型の光源であるLEDに見合うような光学系の小型化がなされているとは言い難い。
【0024】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、LED光源を用いた照明装置であって、小型で光束のロスの少なく、照明均一性の高いものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記課題を解決するための第1の手段は、固体光源と、前記固体光源を保護する封止材により構成され前記固体光源から放出される光束を略平行光束に変換する平行化素子と、前記平行化素子の射出面近傍に配置され、二次元的に配列された多数の微小レンズにより構成されて、前記平行化素子からの略平行光束を波面分割して複数の二次光源を形成するオプティカルインテグレータとを有する光源部と、前記オプティカルインテグレータからの光束を集光して被照射面を重畳的に照明する光学系とを有することを特徴とする照明装置である。
【0026】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段の光源部を、固体光源と、前記固体光源を保護する封止材により構成され前記固体光源から放出される光束を略平行光束に変換する平行化素子とを複数個二次元的に配列したものと、前記平行化素子の射出面近傍に配置され、二次元的に配列された多数の微小レンズにより構成されて、前記平行化素子からの略平行光束を波面分割して複数の二次光源を形成するオプティカルインテグレータとを有する光源部に変えた照明装置である。
【0027】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段であって、前記平行化素子の外接円の直径をd、前記平行化素子の射出面より放出される光束の発散角をθ、前記オプティカルインテグレータの有効直径(光学的に有効な部分の内接円の直径)をd、前記微小レンズの焦点距離をf、前記微小レンズの入射端面の外接円の直径をd、前記微小レンズの射出端面に対する内接円の直径をd、前記被照射面における最大照射領域の内接円の直径をd、照明光の最大開口数をNAmaxとしたとき、次の式1及び式2を満足することを特徴とするものである。
【数1】

【数2】

【0028】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第2の手段であって、前記二次元的に配置された平行化素子全体の外接円の直径をd、前記平行化素子の射出面より放出される光束の発散角をθ、前記オプティカルインテグレータの有効直径(光学的に有効な部分の内接円の直径)をd、前記微小レンズの焦点距離をf、前記微小レンズの入射端面の外接円の直径をd、前記微小レンズの射出端面に対する内接円の直径をd、前記被照射面における最大照射領域の内接円の直径をd、照明光の最大開口数をNAmaxとしたとき、次の式1及び式2を満足することを特徴とするものである。
【数3】

【数4】

【0029】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第3の手段又は第4の手段であって、次の式3を更に満足することを特徴とするものである。
【数5】

【0030】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第1の手段から第5の手段のいずれかであって、前記微小レンズの入射面と前記微小レンズの射出面の面積が等しく、形状が異なることを特徴とするものである。
【0031】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第6の手段であって、前記微小レンズの射出面が正六角形又は、正六角形を1つの辺の方向に伸縮した形状の六角形であり、前記オプティカルインテグレータの射出面においては、各六角形は、隙間や重なりが無く敷き詰められていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、LED光源を用いた照明装置であって、小型で光束のロスの少なく、照明均一性の高いものを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態である照明装置を示す図であり、顕微鏡の透過照明光学系に適用した例を示すものである。ここで、最大照射領域の大きさを直径d=5mmの円形領域、照明光の最大開口数をNAmax=0.15とする。
【0034】
この実施の形態の照明装置は、LED11と、コリメータ15、フライアイインテグレータ(オプティカルインテグレータ)30により構成される光源部A、コレクタレンズ20、視野絞り50、リレーレンズ40、開口絞り60、コンデンサレンズ70からなる光学系を用いている。コレクタレンズ20、視野絞り50、リレーレンズ40、開口絞り60、コンデンサレンズ70からなる光学系は、オプティカルインテグレータ30からの光束を集光して被照射面を重畳的に照明する光学系である。
【0035】
平行化素子であるコリメータ15は、LED11を保護する封止材を兼ねており、LED11から放出される光束を略平行光束に変換する平行化素子である。このように、LED11を保護する封止材に平行化素子の役割を兼用させることにより、LED11からの光の発散角が大きな場合でも、平行化素子(従来はコレクタレンズ20を用いていた)を大型化することなく、LED11からの光束を有効に利用することができる。
【0036】
コリメータ15の射出面近傍にはフライアイインテグレータ30の入射面が配置される。フライアイインテグレータ30の射出面には、各単位レンズ毎に小さな光源像が規則正しく並び、二次光源を形成する。フライアイインテグレータ30は熱可塑樹脂の射出成型品とすることで安価に構成することが可能であり望ましい。
【0037】
更に、フライアイインテグレータ30の射出面が、前側焦点位置となるようにコレクタレンズ20を配置し、コレクタレンズ20の後側焦点位置に視野絞り50を配置する。
【0038】
更に、コレクタレンズ20の後側焦点位置が、前側焦点位置となるようにリレーレンズ40を配置し、このリレーレンズ40の後側焦点位置に開口絞り60を配置する。この開口絞り60の配置される面においては拡大された光源像が結像する。また、リレーレンズ40の後側焦点位置が、前側焦点位置となるようにコンデンサレンズ70を配置し、このコンデンサレンズ70の後側焦点位置を視野面80とする。
【0039】
図11と図1の比較から明らかなとおり、本実施の形態における照明装置の構成は、ちょうど、ケーラー照明光学系の光源10の位置にフライアイインテグレータ30の射出端面に形成された2次光源を配置したものとなっている。このように構成することにより、ケーラー照明光学系と同様に、視野絞り50と開口絞り60の径を調整することで、照明領域と照明開口数を定めることができる。
【0040】
また従来のフライアイ照明系と同様に、フライアイインテグレータ30により視野絞り50上に重畳的に投影され、均一に照明された光束は、更にリレーレンズ40及びコンデンサレンズ70により視野面80に投影され、視野面80を均一に照明する。
【0041】
また、前述のように、コリメータ15を封止樹脂と兼ねてLED11近傍に配置し、且つコリメータ15射出面近傍にフライアイインテグレータ30を配置して光源部Aを構成しているので、光学系全体を小型化することが可能である。このように合成樹脂により構成されたコリメータ15、フライアイインテグレータ30を光源近傍に配置する構成は、小型で発熱の少ない固体光源であるLEDを用いることで実現可能である。
【0042】
図2は、LED11及びコリメータ15の例を説明したものである。コリメータ15の反射面15bは焦点距離f=0.425の回転放物面であり、放物面の焦点位置にLED11が配置されている。LED11から放出された光束はコリメータレンズの反射面15bにて全反射し、略平行光束に変換され、射出端面15dから射出される。ここで射出端面15dの形状は直径d=6mmの円形状である。
【0043】
コリメータ15から射出される光束の放射角度特性についてのシミュレーション結果を図3に示す。ここでLED11は300μm四方、屈折率はn=2.5、コリメータ15の屈折率は1.53とした。図3からコリメータ15から射出される光束の発散角は半値角(半角)でおよそθ=4°であることがわかる。
【0044】
コリメータ15から射出した光束はフライアイインテグレータ30に入射する。このときフライアイインテグレータ30の入射面全面を照らすために式1を満足することが求められる。ここでdはフライアイインテグレータ30の有効直径である。
【数6】

【0045】
フライアイインテグレータ30の単位レンズの入射端面形状は照射領域と共役であることから、必要とされる照射領域と相似もしくは相似に近い形状とすることが望ましい。本実施の形態を顕微鏡の照明装置として使用する場合には、顕微鏡の目視観察領域である円形に近い正六角形とすることが望ましい。本実施の形態においてはフライアイインテグレータ30の大きさは有効直径(光学的に有効な部分の直径)d=6mmの円形、各単位レンズの入射面、射出面はともに同じ大きさの正六角形であり一辺の長さは0.25mm(入射面の対角長d=0.5mm)とする。
【0046】
またLagrange不変則から光束の直径と開口数(NA)の積が光学系を通じて一定であることが知られている。被照射面における最大照射領域の内接円の直径をd、照明光の最大開口数をNAmaxとすると、光束の直径と開口数(NA)の積は、NAMAX×dとなる。一方、フライアイインテグレータ30から放出される光のNAは、微小レンズの入射端面の外接円の直径をd、微小レンズの焦点距離をfとすると、d/(2f)となり、光束の直径は、オプティカルインテグレータの有効直径(光学的に有効な部分の内接円の直径)d、となる。よって、被照明領域が有効に照明されるためには、
【数7】

であることが必要である。
【0047】
前述の条件の下で、視野面80における最大照射領域の大きさd=5mm、照明光の最大開口数NAmax=0.15を実現するためには、f=1.6mmとすることで条件を満足することができる。
【0048】
またこのときフライアイインテグレータ30の射出面に形成される光源像の大きさφは式4で与えられる。
【数8】

【0049】
ここでθは、平行化素子であるコリメータ15の射出面より放出される光束の発散角である。光源像の大きさφがフライアイインテグレータ30の各単位レンズの射出端面に対する内接円の直径dと比べ大きい場合、射出端面で光束のケラレが生じロスが生じる。
【0050】
また、光源像の大きさφがフライアイインテグレータ30の各単位レンズの射出端面に対する内接円の直径dと比べ1/2以下であると各単位レンズの射出端面を光源像が満たす率(充足率)が小さくなりすぎ、所望の光量が得られなくなるため好ましくない。そのため本発明の好ましい形態としては、LED11より発せられる光束を効率よく視野面80に照射する条件として式3を満足することが望ましい。
【数9】

【0051】
本実施の形態においては単位レンズの射出端面に対する内接円の直径d=0.433、コ=リメータの発散角θ=4°、単位レンズの焦点距離f=1.6mmとしてφ=0.11mmであり式3を満足している。
【0052】
本実施の形態においては、フライアイインテグレータ30の単位レンズの入射面、射出面はともに同じ大きさの正六角形とした。これは顕微鏡の目視観察領域である円形に近い形状とするためであるが、例えば固体撮像素子での観察を目的として長方形の照明領域を照明する場合には入射面の形状は長方形とすることが望ましい。
【0053】
撮像素子の形状に合わせ入射面の形状は長方形とする場合においても、単位レンズ射出面形状は内接円の直径dを極力大きくすることで光源像のケラレを防ぐことができるため、入射面と面積が等しくできるだけ円形に近い形状、特に正六角形とすることが望ましい。その場合フライアイインテグレータ30の入射面と射出面の面積が等しく形状が異なるモザイク型フライアイとすることが望ましい(このような形状のフライアイインテグレータについては特許文献1に詳細に記載されている)。
【0054】
フライアイインテグレータ30の入射面と射出面の面積を等しくするのは、入射した光を効率良く出射させるためである。又、単位レンズの射出面の形状を正六角形とできるのは、単位レンズの光軸が正六角形に配列されている場合に限られる。単位レンズの光軸が正六角形に配列されておらず、正六角形を1つの辺の方向に伸縮した形状の六角形に配列されている場合は、出射面の形状も、正六角形を1つの辺の方向に伸縮した形状の六角形とし、かつ六角形が隙間や重なりが無く敷き詰められたものとすることが好ましい。
【0055】
本実施の形態において、コリメータ15は封止材を兼ねた均質の媒質により構成されているとしたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば図4のように、コリメータ15にかえてLED11近傍を媒質14で満たし、更にコリメータ16で2重に封止する構成としてもよい。図において、16aは媒質14を封入した界面であり球形である。球の中心にLED11が位置しているので、LED11からの光は、界面16aで屈折されることなく直進する。16bは、LED11を焦点位置とする回転放物面からなる反射面、16dは射出端面である。
【0056】
図4のような例は、特に、コリメータ15のように外周面が全反射面を構成する封止材の屈折率が低い場合に、LED11との間で全反射が発生して、光束がLED11の内部に閉じ込められるような場合に有効である。すなわち、LED11とコリメータ16の間を満たす媒質14は屈折率nが式5を満足するようにすると、LED11と媒質14、媒質14とコリメータ16の間のいずれにおいても全反射が発生することを防止できる可能性があり望ましい。
【0057】
≧n≧n … (5)
本実施の形態においてnはLED11の屈折率=2.5、nはコリメータ16の屈折率=1.53であるので、例えば媒質14は屈折率n=1.7の封止材とすればよい。
【0058】
また本実施の形態においてコリメータ15は放物面の反射面15bによりLED11から放出される光束を平行化するとしたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば図5のように、コリメータ15にかえて、コリメータ17のように反射と屈折を組み合わせた構成としてもよい。図5において、17bは反射面、17cは第1射出端面、17dは第2射出端面である。LED11から放出される中心部の光は、第1の射出端面17cで屈折されて略平行光となって射出される。LED11から放出される周縁部の光は、反射面17bで全反射され、第2の射出端面17dで屈折されて、略平行光となって射出される。このように構成することで、LED11から光軸方向に放出される光束も平行化され、LED11から放出される光束を効率的に平行化することが可能である。またさらに、図6のように2重に封止する構成としてもよい。図6において、18はコリメータ、18aは媒質を封入した界面であり球形である。球の中心にLED11が位置しているので、LED11からの光は、界面で屈折されることなく直進する。18bは、反射面、18cは第1射出端面、18dは第2射出端面である。LED11から放出される中心部の光は、第1の射出端面18cで屈折されて略平行光となって射出される。LED11から放出される周縁部の光は、反射面18bで全反射され、第2の射出端面18dで屈折されて、略平行光となって射出される。
【0059】
本実施の形態における照明光学系は既存のケーラー照明光学系にレトロフィットとすることも可能である。前述のとおり本実施の形態における照明光学系の構成は、ケーラー照明光学系の光源10の位置にフライアイインテグレータ30の射出端面に形成られた2次光源を配置したものとなっている。すなわち、フライアイインテグレータ30の径dをケーラー照明光学系のハロゲンランプのフィラメントサイズと同等の直径とし、フライアイインテグレータ30から射出される光束の発散角θをケーラー照明光学系の光束取り込み角以上とすることで既存のケーラー照明光学系のハロゲンランプに換えて光源部Aを配置することができる。
【0060】
次に図7を参照して、本発明の第2の実施の形態である照明装置について説明する。この実施の形態は、顕微鏡の透過照明光学系に適用した例を示すものであり、第1の実施の形態との相違は光源部Aを、LED11とコリメータ15を有する光源ユニットを複数個アレイ状に配列してなる光源部Bに置き換えた点である。ここで、最大照射領域の大きさを直径d=10mmの円形領域、照明光の最大開口数をNAmax=0.3とする。
【0061】
アレイ状に配置されたコリメータ15から射出した光束はフライアイインテグレータ30に入射する。本実施の形態においてはフライアイインテグレータ30の各単位レンズの入射面、射出面はともに同じ大きさの正六角形であり一辺の長さは0.25mm(入射面の対角長d=0.5mm)とする。
【0062】
このときフライアイインテグレータ30の入射面全面を照らすために式1を満足することが求められる。ここでdはアレイ状に配置されたコリメータ15の射出面の大きさ、dはフライアイインテグレータ30の有効直径(光学的に有効な部分の直径)である。
【数10】

【0063】
また、またLagrange不変則から、前述のように、視野面80における最大照射領域の大きさをd、照明光の最大開口数NAmaxを実現するためにフライアイインテグレータ30の微小レンズの入射端面の外接円の直径をd、焦点距離をfとして式2を満足することが求められる。
【数11】

【0064】
即ち、本実施の形態において視野面80における最大照射領域の大きさd=10、照明光の最大開口数NAmax=0.3を満足する為には式6を満足しなければならない。
【数12】

【0065】
また本実施の形態において、LED11より発せられる光束を効率よく視野面80に照射する条件として、前述のように式3を満足することが望ましい。
【数13】

【0066】
即ち本実施の形態においては単位レンズの射出端面に対する内接円の直径をd=0.433、コ=リメータの発散角θ=4°として式7を満足することが望ましい。
【0067】
1.55≦f≦3.10 …(7)
本実施の形態においてはf=3.0mmとすることで条件を満足することができる。このとき式1および式6よりdはアレイ状に配置されたコリメータ15の射出面の大きさdは式8を満足しなければならない。
【0068】
≧36 …(8)
図8はアレイ状に配置されたコリメータ15の射出面の例を示している。図8上、点線で表されるのが直径36mmの円である。図8に示すように射出端面の直径6mmであるコリメータ15を六方最密に37個アレイ状に配置することで式8を満足することができる。
【0069】
本実施の形態においては射出端面の形状が円形であるコリメータ15をアレイ状に配置したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば図9のように、射出端面の形状が正六角形であるコリメータ19を用いて、隙間無く配置しても良い。このように構成することで、光源像の充足率を高め、より明るい照明とすることが可能である。
【0070】
次に図10を参照して、本発明の第3の実施の形態である照明装置について説明する。この実施の形態は、顕微鏡の落射照明光学系に適用した例である。
【0071】
コリメータ15は、LED11を保護する封止材を兼ねておりLED11から放出される光束を略平行光束に変換する。コリメータ15の射出端面近傍にはフライアイインテグレータ30の入射面が配置される。フライアイインテグレータ30の射出面には各単位レンズに小さな光源像が規則正しく並び、2次光源を形成する。フライアイインテグレータ射出面近傍には開口絞り60が配置される。
【0072】
更に、フライアイインテグレータ30の射出面が、前側焦点位置となるようにコレクタレンズ20を配置し、コレクタレンズ20の後側焦点位置に視野絞り50を配置する。
【0073】
更に、コレクタレンズ20の後側焦点位置が、前側焦点位置となるようにリレーレンズ40を配置し、ハーフミラー90を介してこのリレーレンズ40の後側焦点位置と対物レンズ71の瞳が一致するよう配置する。対物レンズ71はコンデンサレンズを兼ねており、後側焦点位置を視野面80とする。
【0074】
均一な明るさで照明された視野面80上に不図示の被観察試料を配置する。像面100は対物レンズ71、第二対物レンズ72により視野面80と共役となっており、像面100上に被観察試料の拡大像が結像する。観察者は不図示の接眼レンズにより被観察試料の拡大像を観察する。
【0075】
視野絞り50と視野面80が共役に配置され、2次光源近傍に開口絞り60が配置されており、視野絞り50と開口絞り60の径を調整することで照明領域と照明開口数を定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施の形態である照明装置を示す図である。
【図2】LEDとコリメータの関係を示す図である。
【図3】コリメータから射出される光束の放射角度特性についてのシミュレーション結果を示す図である。
【図4】コリメータの例を示す図である。
【図5】コリメータの例を示す図である。
【図6】コリメータの例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態である照明装置を示す図である。
【図8】アレイ状に配置されたコリメータの射出面の例を示す図である。
【図9】アレイ状に配置されたコリメータの射出面の例を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態である照明装置を示す図である。
【図11】ケーラー照明法による顕微鏡透過照明の構成図である。
【図12】従来技術におけるフライアイ照明光学系の構成図である。
【符号の説明】
【0077】
11…LED、14…媒質、15…コリメータ、15b…反射面、15d…射出端面、16…コリメータ、16a…界面、16b…反射面、16d…射出端面、17…コリメータ、17b…反射面、17c…第1射出端面、17d…第2射出端面、18…コリメータ、18a…界面、18b…反射面、18c…第1射出端面、18d…第2射出端面、19…コリメータ、20…コレクタレンズ、30…フライアイインテグレータ、40…リレーレンズ、50…視野絞り、60…開口絞り、70…コンデンサレンズ、71…対物レンズ、72…第二対物レンズ、80…視野面、90…ハーフミラー、100…像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体光源と、前記固体光源を保護する封止材により構成され前記固体光源から放出される光束を略平行光束に変換する平行化素子と、前記平行化素子の射出面近傍に配置され、二次元的に配列された多数の微小レンズにより構成されて、前記平行化素子からの略平行光束を波面分割して複数の二次光源を形成するオプティカルインテグレータとを有する光源部と、
前記オプティカルインテグレータからの光束を集光して被照射面を重畳的に照明する光学系
とを有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置の光源部を、
固体光源と、前記固体光源を保護する封止材により構成され前記固体光源から放出される光束を略平行光束に変換する平行化素子とを複数個二次元的に配列したものと、
前記平行化素子の射出面近傍に配置され、二次元的に配列された多数の微小レンズにより構成されて、前記平行化素子からの略平行光束を波面分割して複数の二次光源を形成するオプティカルインテグレータとを有する
光源部に変えた照明装置。
【請求項3】
前記平行化素子の外接円の直径をd、前記平行化素子の射出面より放出される光束の発散角をθ、前記オプティカルインテグレータの有効直径(光学的に有効な部分の内接円の直径)をd、前記微小レンズの焦点距離をf、前記微小レンズの入射端面の外接円の直径をd、前記微小レンズの射出端面に対する内接円の直径をd、前記被照射面における最大照射領域の内接円の直径をd、照明光の最大開口数をNAmaxとしたとき、次の式1及び式2を満足することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【数1】

【数2】

【請求項4】
前記二次元的に配置された平行化素子全体の外接円の直径をd、前記平行化素子の射出面より放出される光束の発散角をθ、前記オプティカルインテグレータの有効直径(光学的に有効な部分の内接円の直径)をd、前記微小レンズの焦点距離をf、前記微小レンズの入射端面の外接円の直径をd、前記微小レンズの射出端面に対する内接円の直径をd、前記被照射面における最大照射領域の内接円の直径をd、照明光の最大開口数をNAmaxとしたとき、次の式1及び式2を満足することを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【数3】

【数4】

【請求項5】
次の式3を更に満足することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の照明装置。
【数5】

【請求項6】
前記微小レンズの入射面と前記微小レンズの射出面の面積が等しく、形状が異なることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記微小レンズの射出面が正六角形又は、正六角形を1つの辺の方向に伸縮した形状の六角形であり、前記オプティカルインテグレータの射出面においては、各六角形は、隙間や重なりが無く敷き詰められていることを特徴とする請求項6に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−257015(P2008−257015A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100261(P2007−100261)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】