説明

照明装置

【課題】標本に対する照明光を遮断することなく明視野照明と偏斜照明とを容易に切り換えられること。
【解決手段】照明装置5は、標本に対して明視野照明と偏斜照明とを切換可能に行う照明装置であって、標本に対する照明光束を照明光軸OA2周りに制限する開口絞り14と、照明光束を遮光する遮光シート33を有し、開口絞り14によって制限された照明光路に対して遮光シート33を挿脱させるとともに、照明光路内への遮光シート33の挿入量に対応して照明光束を照明光軸OA2に対して非対称に遮光する遮光機構30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本に対して明視野照明と偏斜照明とを切換可能に行う照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡に用いる照明装置として、標本に対して偏斜照明を行う照明装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。偏斜照明では、標本の観察に用いる対物レンズの光軸に対して傾斜した照明光のみ照射することによって、通常の明視野照明に比べ、標本の観察において高い解像力を得ることができる。なお、「偏斜照明」は、「斜光照明」、「傾斜照明」または「斜照明」等と称させる場合もあるが、本明細書では「偏斜照明」を用いることとする。
【0003】
特許文献1に記載された落射偏斜照明装置では、開口径が変更可能な開口絞りを備え、この開口絞りを照明光学系の光軸に対して偏心させることで、偏斜照明を行うようにしている。すなわち、この落射偏斜照明装置では、開口絞りを照明光学系の光軸上に配置した場合に通常の明視野照明をすることができ、開口絞りをその光軸上から偏心させた場合に偏斜照明をすることができる。
【0004】
特許文献2に記載された斜光照明絞りを有する顕微鏡では、照明光学系の光軸に対して挿脱可能な斜光照明絞りを備え、この斜光照明絞りを照明光学系の光軸上に配置した場合に偏斜照明をすることができ、斜光照明絞りをその光軸上から退避させた場合に通常の明視野照明をすることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−148526号公報
【特許文献2】特開2006−18092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された落射偏斜照明装置では、偏斜照明から明視野照明へ切り換えるごとに開口絞りの中心を照明光学系の光軸に合致させる芯出し調整を行う必要があり、照明の切換作業に多大な手間と時間を要するという問題があった。また、特許文献2に記載された顕微鏡では、偏斜照明と明視野照明とを切り換える際に斜光照明絞りを挿脱することで、標本に対する照明光を一時的に遮断することとなり、その際に標本の観察をすることができなくなるという問題があった。このため、検鏡者が標本を見失う、経時的に連続した観察をすることができなくなる等の問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、標本に対する照明光を遮断することなく明視野照明と偏斜照明とを容易に切り換えることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる照明装置は、標本に対して明視野照明と偏斜照明とを切換可能に行う照明装置において、前記標本に対する照明光束を所定光軸周りに制限する絞りと、前記照明光束を遮光する遮光部材を有し、前記絞りによって制限された前記照明光束の光路に対して前記遮光部材を挿脱させるとともに、該光路内への前記遮光部材の挿入量に対応して前記照明光束を前記所定光軸に対して非対称に遮光する遮光機構と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる照明装置は、標本に対して明視野照明と偏斜照明とを切換可能に行う照明装置において、前記標本に対する照明光束の光路を所定光軸周りに制限する絞りを有し、該絞りの開口径を変化させる絞り機構と、前記照明光束を遮光する遮光部材を有し、前記絞りによって制限された前記照明光束の光路に対して前記遮光部材を挿脱させるとともに、該光路内への前記遮光部材の挿入量に対応して前記照明光束を前記所定光軸に対して非対称に遮光する遮光機構と、前記遮光機構による前記遮光部材の前記光路に対する挿入移動または退避移動の少なくとも一方に連動し、前記絞り機構によって前記開口径を変化させる連動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる照明装置は、上記の発明において、前記連動機構は、前記遮光機構が前記遮光部材を前記光路内へ所定量挿入させた場合、前記絞り機構によって前記開口径を最大にすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる照明装置は、上記の発明において、前記連動機構は、前記遮光機構が前記遮光部材を前記光路内から該光路外へ退避移動させた場合、前記絞り機構によって前記開口径を、前記遮光機構が前記遮光部材を前記光路内へ挿入させる以前の大きさに復元することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる照明装置は、上記の発明において、前記遮光機構は、前記絞り近傍における前記光路に対して前記遮光部材を挿脱させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる照明装置は、上記の発明において、前記遮光機構は、前記照明光を拡散させる拡散光学素子を前記遮光部材と一体に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる照明装置によれば、標本に対する照明光を遮断することなく明視野照明と偏斜照明とを容易に切り換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明にかかる照明装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一符号を付して示している。
【0016】
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態にかかる照明装置について説明する。図1は、本実施の形態にかかる照明装置を用いた顕微鏡100の要部構成を示す図である。この図に示すように、顕微鏡100は、標本1が載置されるステージ2と、ステージホルダ3を介してステージ2を支持する顕微鏡本体4と、顕微鏡本体4上に搭載された照明装置5と、照明装置5の前側(図1における左側)底部に設けられたレボルバ6と、レボルバ6に対して交換自在に取り付けられる対物レンズ7と、レボルバ6の直上部において照明装置5上に搭載された鏡筒8と、鏡筒8の前側に設けられた双眼部9とを備える。
【0017】
ステージホルダ3は、顕微鏡本体4の側面部に突設された焦準ハンドル4aの回動操作に連動し、図示しない焦準機構によって昇降移動される。標本1およびステージ2は、ステージホルダ3の昇降移動にともなって観察光軸OA1方向に焦準移動されて、焦点合わせ(ピント合わせ)される。また、ステージホルダ3は、図示しない平面駆動機構によって、観察光軸OA1に垂直な平面内で自在に移動される。これによって、標本1上の観察位置が調整される。なお、観察光軸OA1は、対物レンズ7の光軸に相当する。
【0018】
対物レンズ7は、鏡筒8に内設された図示しない結像レンズと協働し、照明装置5によって照明される標本1の観察像を結像させる。その際、対物レンズ7は、標本1上の各点から発する観察光を平行光束にして結像レンズへ射出させる。結像レンズは、対物レンズ7が射出させた観察光を集束させて観察像を結像させる。この観察像は、鏡筒8に内設された図示しない偏向プリズムを介して双眼部9内へ導入され、双眼部9によって左右方向(図1における紙面垂直方向)に2分割された後、双眼部9の先端部に設けられた一対の接眼レンズ9aを介して検鏡者に目視観察される。
【0019】
照明装置5は、照明光を発する光源11と、光源11が発した照明光を集光して1次光源像を結像させるコレクタレンズ12と、照明光を拡散させる拡散光学素子としてのフロストガラス13と、コレクタレンズ12が集光した照明光の光束を制限する開口絞り14と、開口絞り14を通過した照明光の光束を制限する視野絞り15と、視野絞り15を通過した照明光を集光して2次光源像を結像させるリレーレンズ16と、リレーレンズ16から射出した照明光を観察光軸OA1に沿って対物レンズ7へ向けて偏向させるハーフミラー17と、を備える。これらコレクタレンズ12からハーフミラー17までの各光学素子は、筐体としての投光管本体18に内設されている。また、光源11からハーフミラー17までの各光学素子は、照明光軸OA2を共通の光軸として配置されている。
【0020】
開口絞り14は、1次光源像の結像面上に配置されるとともに、対物レンズ7の瞳と共役な位置に配置されている。開口絞り14は、コレクタレンズ12が集光した照明光の光束とともに1次光源像の大きさを制限することで、標本1に照射する照明光の開口数(NA)を規定する。視野絞り15は、対物レンズ7の焦点面と共役な位置に配置されており、開口絞り14を通過した照明光の光束を制限することで、標本1上に照射する照明光の照射範囲(照野)を規定する。このようにして照明装置5は、対物レンズ7を介して標本1をケーラー照明する。
【0021】
ここで、開口絞り14は、その開口部の大きさが変更可能な可変絞りとして構成されており、フロストガラス13は、開口絞り14によって制限された照明光の光路(以下、照明光路と称する。)に対して挿脱される遮光部材が一体に設けられている。図2−1および図2−2は、かかる開口絞り14およびフロストガラス13を各々備えた絞り機構20および遮光機構30の構成を示す断面図である。図2−1は、遮光部材が照明光路から退避された場合を示し、図2−2は、遮光部材が照明光路に挿入された場合を示している。図2−1および図2−2は、いずれも照明装置5の上部から見た構成を示す図であって、図中下方には図示しないコレクタレンズ12および光源11が配置されている。
【0022】
これらの図に示すように、絞り機構20は、開口絞り14の他、台座21、回し環22、コマ23およびレバー24を用いて構成されている。台座21は、貫通孔21aを有し、貫通孔21aの中軸を照明光軸OA2に一致させて投光管本体18の底部に固定されている。また、台座21は、貫通孔21aと同軸に凹部21bを有し、凹部21b内に開口絞り14を保持している。
【0023】
回し環22は、中心部に貫通孔22aを有し、貫通孔22aの中軸を照明光軸OA2に一致させて凹部21bに嵌設されている。貫通孔22aの孔径は、貫通孔21aの孔径と略等しくされている。コマ23は、中心部に開口部23aを有し、回し環22に対して台座21と反対側に取り付けられている。レバー24は、その一端がコマ23の側面部23bに取り付けられ、他端が投光管本体18の側壁部18aから外部へ突出されている。コマ23は、側壁部18aに対するレバー24の挿脱移動、すなわちレバー24の軸方向の移動にともない、回し環22に対して摺動可能とされている。
【0024】
図3−1は、図2−1に示すIII矢視方向から見た台座21および開口絞り14の組み立て構成を示す図である。また、図3−2は、同様にIII矢視方向から見た回し環22、コマ23およびレバー24の組み立て構成を示す図である。図3−1に示すように、開口絞り14は、複数の絞り羽根14aを螺旋状に順次組み合わせて構成されている。図3−1では、一例として4枚の絞り羽根14aを用いて構成された開口絞り14を示している。ただし、開口絞り14は、4枚に限定されず5枚以上の絞り羽根14aを用いて構成してもよい。
【0025】
絞り羽根14aは、図3−3(a)に示すように、略C字状の平板部材14bと、固定ピン14cと、駆動ピン14dとを用いて構成されている。固定ピン14cおよび駆動ピン14dは、図3−3(b)に示すように、それぞれ平板部材14bの異なる端部において、平板部材14bに対して互いに反対側に突設されている。なお、図3−3(a)は、図3−1と同様にIII矢視方向から見た構成を示し、図3−3(b)は、図3−3(a)におけるAA矢視方向から見た構成を示している。
【0026】
台座21の凹部21bには、図3−1に示すように、照明光軸OA2周りに等間隔に4つのダボ穴21cが設けられている。各ダボ穴21cにはそれぞれ異なる絞り羽根14aの固定ピン14cが嵌入されている。また、回し環22の端面のうち開口絞り14に対向する端面には、図3−2に示すように、放射方向に4つの長溝22bが設けられている。各長溝22bにはそれぞれ異なる絞り羽根14aの駆動ピン14dが挿設されている。さらに、回し環22の端面のうちコマ23に対向する端面には、図3−2に示すように、連結ピン22cが突設されている。連結ピン22cは、コマ23の上面部に突設されたフォーク状の突起部23c間に挟み込まれている。
【0027】
以上のように構成された絞り機構20では、レバー24をその軸方向に移動させることで、コマ23が照明光軸OA2に対して垂直方向に直線移動され、この直線移動にともない回し環22が照明光軸OA2回りに回転移動される。さらに、回し環22の回転移動にともない、駆動ピン14dが長溝22bに案内されて放射方向に移動されることで、開口絞り14の各絞り羽根14aが開閉駆動される。開口絞り14の開口部14eは略円形に形成されており、その直径に相当する開口径φ(図3−1参照)は、各絞り羽根14aの開閉駆動に応じて所定範囲内で連続的に変化する。
【0028】
コレクタレンズ12が集光した照明光の光束(以下、照明光束と称する。)は、開口絞り14によって、照明光軸OA2周りにおける開口部14eの範囲内に制限される。具体的には、例えば図2−1に示すように、投光管本体18の側壁部18aからレバー24が所定量引き出された場合、開口径φはその引出量に対応する開口径φxとされ、照明光束はこの開口径φxに対応する照明光束OPxに制限される。また、図2−2に示すように、レバー24が投光管本体18内に可動範囲一杯に押し込まれた場合、開口部14eは開放(全開)され、開口径φは最大の開口径φmaxにされるとともに、照明光束は開口径φmaxに対応する照明光束OPmaxに制限される。
【0029】
つづいて、遮光機構30について説明する。図4−1および図4−2は、それぞれ遮光機構30の構成を示す図である。図4−1は、図2−1におけるIV方向から見た構成を示し、図4−2は、図2−2におけるIV’方向から見た構成を示している。これらの図に示すように、遮光機構30は、フロストガラス13の他、ガイド31、スライダ32、遮光シート33およびレバー34を用いて構成されている。遮光機構30は、図2−1および図2−2に示すように、照明光軸OA2方向において絞り機構20近傍に配置されている。
【0030】
ガイド31は、U字状の溝部31a(図2−1参照)を有するリニアガイドであって、そのガイド方向を照明光軸OA2に対して垂直にして投光管本体18の底部に固定されている。また、ガイド31は、溝部31aの両端部における所定位置にそれぞれストッパ31b,31cが設けられている。ストッパ31b,31cは、ガイド31がガイドするスライダ32のスライド移動範囲を規定する。
【0031】
スライダ32は、ストッパ31b,31c間で溝部31aに嵌挿される平板状部材であって、略中央部に設けられた凹部32a内に円盤状のフロストガラス13が嵌設されている。遮光部材としての遮光シート33は、スライダ32の端面のうちフロストガラス13に対して絞り機構20と反対側の端面に貼付されている。レバー34は、その一端がスライダ32の側面部32bに取り付けられ、他端が投光管本体18の側壁部18aから外部に突出されている。スライダ32は、側壁部18aに対するレバー34の挿脱移動、すなわちレバー34の軸方向の移動にともない、ガイド31上に対してスライド移動可能とされている。
【0032】
さらに、スライダ32は、フロストガラス13の直上部に設けられた孔部32c内にバネ機構(プランジャ)35が設けられている。バネ機構35は、バネ35aとボール35bとを用いて構成されており、ボール35bの下端部をバネ35aによって付勢することで、ボール35bの上端部をスライダ32の上端面32dから所定のバネ力で突出させる。これに対し、スライダ32の上端面32dには押さえ板36が当接されている。押さえ板36は、投光管本体18の左右の側壁部18a,18bの上部に渡設され、その略中央部における照明光軸OA2直上部には係合穴36aが設けられている。この係合穴36aとバネ機構35とによってクリック機構が構成されている。スライダ32は、ガイド31に対してスライド移動される際、ボール35bの上端部が係合穴36a内に係入される位置で一時係止され、これにともないフロストガラス13は、照明光軸OA2上に位置決めされる。
【0033】
なお、係合穴36a内に係入されたボール35bは、所定の力量以上の力によってスライダ32がスライド移動されることで係合穴36aから容易に係脱されるとともに、押さえ板36によって孔部32c内へ押入される。また、押さえ板36の上部における投光管本体18の開口部は、カバー19によって開閉可能に閉塞されている。
【0034】
遮光シート33は、図4−1に示すように、開口絞り14の開放時の開口部14e、つまり照明光束OPmaxの光束断面よりも大きな遮光面を有し、スライダ32がクリック機構によって一時係止された場合に照明光束OPmaxより外側に位置するようにスライダ32に貼付されている。図4−1に示す例では、遮光シート33は、スライダ32が一時係止される位置で照明光束OPmaxに外接するように設けられている。この位置からレバー34が投光管本体18内に押し込まれ、スライダ32が図4−2に示す状態までスライド移動されることで、遮光シート33は、開口絞り14近傍における照明光路内に挿入されるとともに、その挿入量に対応して照明光束OPmaxを照明光軸OA2に対して非対称に遮光する。図4−2に示す例では、遮光シート33は、左右のエッジのうち少なくとも照明光軸OA2に近い側のエッジ33aが上下方向に直線状に成形されており、略半月状の光束を残して左右非対称に照明光束OPmaxを遮光している。
【0035】
ストッパ31b,31cは、スライダ32を当接させることで、スライダ32のスライド移動範囲を制限する。具体的には、ストッパ31bは、レバー34を投光管本体18から引き出す方向、つまり遮光シート33を照明光路から退避させる方向におけるスライダ32のスライド移動範囲を制限し、ストッパ31cは、レバー34を投光管本体18内へ押し込む方向、つまり遮光シート33を照明光路へ挿入させる方向におけるスライダ32のスライド移動範囲を制限する。ストッパ31bは、例えば図4−1に示すように、スライダ32がクリック機構によって一時係止される位置でスライダ32が当接されるように設けられる。また、ストッパ31cは、例えば図4−2に示すように、遮光シート33が照明光束OPmaxを所定量遮光する位置でスライダ32が当接されるように設けられる。
【0036】
なお、レバー34の所望位置にカラー37を環設し(図4−1参照)、カラー37と側壁部18aと当接させることで、スライダ32をストッパ31b,31c間の所望位置に位置決めすることもできる。
【0037】
以上のように構成された照明装置5では、遮光機構30におけるレバー34を投光管本体18から引き出す方向へ移動させ、スライダ32をクリック機構によって一時係止されるまでスライド移動させるとともに、遮光シート33を照明光路から退避させることで、標本1に対して明視野照明をすることができる。このとき、絞り機構20におけるレバー24を投光管本体18に対して挿脱移動させ、開口絞り14の開口径φを適宜変化させることで、標本1に対して照明光を所望の開口数および照明光量で照射することができる。
【0038】
また、照明装置5では、遮光機構30におけるレバー34を投光管本体18内に押し込む方向へ移動させ、スライダ32をストッパ31cに当接するまでスライド移動させるとともに、遮光シート33を照明光路内へ所定量挿入させて照明光束OPmaxの一部を遮光させることで、標本1に対して偏斜照明をすることができる。このとき、絞り機構20におけるレバー24を投光管本体18内へ可動範囲一杯に押し込み、開口部14eを開放させることで、観察光軸OA1に対する照明光の傾斜角度を最大にすることができる。
【0039】
さらに、照明装置5では、レバー34を投光管本体18内に押し込む方向へ移動させ、スライダ32をストッパ31cに当接する前の所望位置へスライド移動させるとともに、遮光シート33をその所望位置に対応する挿入量だけ照明光路内へ挿入させて照明光束OPmaxの一部を遮ることで、スライダ32をストッパ31cに当接させる場合よりも照明光の傾斜角度を小さくして偏斜照明を行うことができる。この場合、照明光路に対する遮光シート33の挿入量と開口絞り14の開口径φとに対応し、照明光の観察光軸OA1に対する傾斜角度と照明光量とを変化させることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態にかかる照明装置5では、標本1に対する照明光束を照明光軸OA2周りに制限する開口絞り14と、照明光束を遮光する遮光シート33を有し、開口絞り14によって制限された照明光路に対して遮光シート33を挿脱させるとともに、照明光路内への遮光シート33の挿入量に対応して照明光束を照明光軸OA2に対して非対称に遮光する遮光機構30とを備えているため、標本1に対する照明光を遮断することなく明視野照明と偏斜照明とを容易に切り換えることができる。
【0041】
また、照明装置5では、遮光機構30は、開口絞り14近傍、つまり対物レンズ7の瞳と共役な位置近傍における照明光路に遮光シート33を挿脱させるため、偏斜照明における照明光の標本1に対する照射角度範囲を明確に規定することができる。
【0042】
(変形例1)
つぎに、本発明の実施の形態にかかる照明装置の変形例1について説明する。上述した照明装置5では、絞り機構20におけるレバー24と遮光機構30におけるレバー34とは個別に操作されるものとしたが、本変形例1では、レバー34の操作に連動してレバー24が作動されるものとしている。
【0043】
本変形例1では、照明装置5は、図5−1および図5−2に示すように、投光管本体18に対するレバー24の挿脱移動に連動してレバー34を挿脱移動させる連動機構としての連動部41,42をさらに備える。連動部41は、一端がレバー24の所定位置に環設され、他端がレバー34に向けて突起されている。同様に、連動部42は、一端がレバー34の所定位置に環設され、他端がレバー24に向けて突起されている。
【0044】
連動部42は、図5−1に示すように遮光シート33が照明光路から退避された状態からレバー34が投光管本体18内へ押し込まれる場合、その突起部42aが連動部41の突起部41aに当接され、レバー34の動きに対応して連動部41をレバー24の軸方向へ押動する。これによって、レバー24は、レバー34の動きに連動して投光管本体18内へ押し込まれ、開口絞り14は、開口部14eの開口径φが拡大される。すなわち、連動部41,42は、遮光機構30による遮光シート33の照明光路に対する挿入移動に連動し、絞り機構20によって開口絞り14の開口径φを拡大変化させる。
【0045】
また、連動部41,42は、図5−2に示すようにスライダ32がストッパ31cに当接されるまでレバー34が投光管本体18内へ押し込まれた場合、開口絞り14の開口部14eを開放させる位置までレバー24を投光管本体18内へ移動させる。すなわち、連動部41,42は、遮光機構30が遮光シート33を照明光路内へ所定量挿入させた場合、絞り機構20によって開口絞り14の開口径φを最大にする。
【0046】
これによって、本変形例1にかかる照明装置5では、明視野照明から偏斜照明へ切り換える場合、遮光機構30による遮光シート33の照明光路に対する挿入移動に連動させて開口絞り14の開口部14eを開放させることができ、標本1に対して偏斜照明をする場合に開口部14eを必ず開放させることができる。
【0047】
(変形例2)
つぎに、本発明の実施の形態にかかる照明装置の変形例2について説明する。上述した変形例1では、投光管本体18に対するレバー34の押し込み方向の移動に連動させてレバー24を同じ方向へ移動させるようにしていたが、本変形例2では、さらに投光管本体18に対するレバー34の引き出し方向の移動に連動させてレバー24を同じ方向へ移動させるようにしている。すなわち、投光管本体18に対するレバー34の挿脱移動に連動してレバー24が挿脱移動されるものとしている。
【0048】
本変形例2では、照明装置5は、図6−1および図6−2に示すように、絞り機構20に替えて絞り機構50を備える。絞り機構50は、絞り機構20の構成をもとに、レバー24に替えてレバー54を有する。レバー54は、レバー54a,54bを用いて構成されている。レバー54aは、一端がコマ23の側面部23bに取り付けられ、他端にマグネット54cが設けられている。レバー54a,54bは、マグネット54cによって同軸に連結されるとともに切り離し可能とされている。
【0049】
また、本変形例2における照明装置5は、連動機構として連動部41,42に加えて引張バネ43を備える。引張バネ43は、そのバネ力の作用方向とレバー54の軸方向とを一致させ、一端がレバー54aに固定されるとともに、他端がレバー54bに固定されている。マグネット54cは、レバー54aを介して円筒状の引張バネ43内に挿設されており、連動部41と連動部42とが連動しない範囲では、引張バネ43の収縮力によってレバー54bの端部に当接される(図6−1参照)。これによって、レバー54a,54bは、連動部41と連動部42とが連動しない範囲において一体に連結され、絞り機構20におけるレバー24と同様に作用する。
【0050】
レバー34が投光管本体18内へ押し込まれ、突起部42aが突起部41aに当接されるとともにレバー54の軸方向へ押動される場合、レバー54aは、図6−2に示すように、レバー54bから切り離されるとともに、レバー34および連動部42の動きに連動して自軸方向へ移動される。これによって、開口絞り14は、変形例1の場合と同様に、照明光路に対する遮光シート33の挿入移動に連動して開口径φが拡大される。そして、スライダ32がストッパ31cに当接されるまでレバー34が投光管本体18内へ押し込まれた場合、開口絞り14は、開口径φが最大にされる。なお、レバー54bは、レバー54aが切り離される前後において、投光管本体18の側壁部18aによって同じ状態に保持されている。
【0051】
これに対して、レバー34が投光管本体18から引き出され、遮光シート33が照明光路内から照明光路外へ退避移動される場合、連動部42は、レバー34の動きにともなって連動部41から遠ざかる方向へ移動され、レバー54aおよび連動部41は、引張バネ43の収縮作用によって、マグネット54cをレバー54b端に当接させる方向へ移動される。そして、引張バネ43による連動部41の可動範囲に比べてレバー34が十分に引き出されることで、マグネット54cはレバー54b端に当接され、レバー54aはレバー54bに連結される。これによって、レバー54は、レバー34が投光管本体18内へ押し込まれる以前の状態に復帰され、開口絞り14の開口径φは、遮光シート33が照明光路内に挿入される以前の大きさに復元される。
【0052】
すなわち、本変形例2における照明装置5では、連動機構としての連動部41,42および引張バネ43は、遮光機構30が遮光シート33を照明光路内から照明光路外へ退避移動させた場合、絞り機構50によって開口絞り14の開口径φを、遮光機構30が遮光シート33を照明光路内へ挿入させる以前の大きさに復元する。
【0053】
ここで、各部の力量は、「側壁部18aにおけるレバー54bの制動力」および「側壁部18aにおけるレバー34の制動力」>「引張バネ43のバネ力(収縮力)」および「マグネット54cの接合力(磁力)」の関係を満足するものとされている。
【0054】
以上説明した本変形例2にかかる照明装置5では、明視野照明から偏斜照明へ切り換える場合、変形例1にかかる照明装置5と同様に、遮光機構30による遮光シート33の挿入移動に連動させて開口絞り14の開口部14eを開放させることができる。さらに、本変形例2にかかる照明装置5では、偏斜照明から明視野照明へ切り換える場合、遮光機構30による遮光シート33の退避移動に連動させて開口絞り14の開口径φを、偏斜照明に切り換える以前の大きさに復元することができる。
【0055】
(変形例3)
つぎに、本発明の実施の形態にかかる照明装置の変形例3について説明する。上述した遮光機構30では、スライダ32は、クリック機構によって一時係止される以外、ガイド31上の位置がスライド移動方向に固定されなかったが、本変形例3では、スライダ32がストッパ31b,31c間の任意の位置に固定できるようにしている。
【0056】
本変形例3では、照明装置5は、遮光機構30に替えて、図7に示す遮光機構60を備える。遮光機構60は、図7に示すように、遮光機構30の構成をもとにレバー34に替えてレバー64を備えるとともに、圧縮バネ65をさらに備える。その他の構成は遮光機構30と同じであり、同一構成部分には同一符号を付して示している。
【0057】
圧縮バネ65は、一端が投光管本体18の側壁部18bの内壁面に固定され、他端がスライダ32の側面部32eに固定されて、ガイド31のガイド方向つまりスライダ32のスライド移動方向と平行に設けられている。図7に示す例では、遮光機構60は、2本の圧縮バネ65を備え、スライダ32は、この2本の圧縮バネ65によってストッパ31bに当接されるように付勢されている。なお、遮光機構60が備える圧縮バネ65は、スライダ32を同様に付勢するものであれば、2本に限定されず1本もしくは3本以上であってもよい。
【0058】
レバー64は、その側面部64aに雄ネジが螺刻され、投光管本体18の側壁部18aに設けられたネジ孔18cに螺挿されるとともに、先端部がネジ孔18cを介してスライダ32の側面部32bに当接されている。レバー64は、その先端部がストッパ31bよりもさらにストッパ31c側へねじ込まれた場合、そのねじ込み量に対応してスライダ32をストッパ31c方向へスライド移動させる。
【0059】
以上のように構成された遮光機構60では、スライダ32は、圧縮バネ65からの付勢力によってレバー64またはストッパ31bに常に当接され、これによってスライド移動方向における位置が固定される。また、遮光機構60では、ネジ孔18cに対するレバー64のねじ込み量に対応して、スライダ32をストッパ31b,31c間の所望の位置に位置決めすることができる。
【0060】
ここまで、本発明を実施する最良の形態を実施の形態として説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上述した実施の形態では、遮光機構30,60は、遮光部材としての遮光シート33と拡散光学素子としてのフロストガラス13とをスライダ32によって一体に備えるものとしたが、一体に限定されず別体に備えてもよい。その場合、例えばフロストガラス13を開口絞り14近傍における照明光路上に設けるとともに、開口絞り14とフロストガラス13との間の照明光路に対して遮光シート33を挿脱させるとよい。これによって、遮光機構を小型化および軽量化することができ、遮光機構の操作性を向上させることができる。
【0062】
また、上述した実施の形態では、遮光機構30,60は、遮光シート33において上下方向に直線状に成形されたエッジ33aによって照明光路をナイフエッジ式に遮光するものとしたが、遮光に用いるエッジは直線状のエッジに限定されるものではなく、例えば円弧状のエッジを用いるなど、任意形状のエッジを用いることができる。これによって、エッジ形状ごとに異なる照明効果を有する偏斜照明を実現することができる。
【0063】
また、上述した実施の形態では、絞り機構20,50および遮光機構30,60は、それぞれレバー24,54,34,64が手動操作されるものとしたが、モータ等を用いた電動駆動機構を用いて自動操作されるものとしてもよい。これによって、絞り機構および遮光機構の操作性および制御性を向上させることができる。
【0064】
また、上述した実施の形態では、照明装置5は、標本1に対して落射照明をするものとして説明したが、落射照明に限定されず、透過照明をするものとしてもよい。また、照明装置5は、顕微鏡100に搭載して用いるものとしたが、顕微鏡に限定されず、半導体検査装置やFPD(Flat Panel Display)検査装置など、各種の検査装置等に搭載して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態にかかる照明装置を用いた顕微鏡の全体構成を示す図である。
【図2−1】実施の形態にかかる照明装置が備える絞り機構および遮光機構の構成を示す断面図である。
【図2−2】実施の形態にかかる照明装置が備える絞り機構および遮光機構の構成を示す断面図である。
【図3−1】絞り機構の部分構成を示す図である。
【図3−2】絞り機構の部分構成を示す図である。
【図3−3】絞り羽根の構成を示す図である。
【図4−1】遮光機構の構成を示す図である。
【図4−2】遮光機構の構成を示す図である。
【図5−1】実施の形態の変形例1にかかる照明装置が備える絞り機構および遮光機構の構成を示す断面図である。
【図5−2】実施の形態の変形例1にかかる照明装置が備える絞り機構および遮光機構の構成を示す断面図である。
【図6−1】実施の形態の変形例2にかかる照明装置が備える絞り機構および遮光機構の構成を示す断面図である。
【図6−2】実施の形態の変形例2にかかる照明装置が備える絞り機構および遮光機構の構成を示す断面図である。
【図7】実施の形態の変形例3にかかる照明装置が備える遮光機構の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 標本
2 ステージ
3 ステージホルダ
4 顕微鏡本体
4a 焦準ハンドル
5 照明装置
6 レボルバ
7 対物レンズ
8 鏡筒
9 双眼部
9a 接眼レンズ
11 光源
12 コレクタレンズ
13 フロストガラス
14 開口絞り
14a 絞り羽根
14b 平板部材
14c 固定ピン
14d 駆動ピン
14e 開口部
15 視野絞り
16 リレーレンズ
17 ハーフミラー
18 投光管本体
18a,18b 側壁部
18c ネジ孔
19 カバー
20 絞り機構
21 台座
21a 貫通孔
21b 凹部
21c ダボ穴
22 回し環
22a 貫通孔
22b 長溝
22c 連結ピン
23 コマ
23a 開口部
23b 側面部
23c 突起部
24 レバー
30 遮光機構
31 ガイド
31a 溝部
31b,31c ストッパ
32 スライダ
32a 凹部
32b,32e 側面部
32c 孔部
32d 上端面
33 遮光シート
33a エッジ
34 レバー
35 バネ機構
35a バネ
35b ボール
36 押さえ板
36a 係合穴
37 カラー
41,42 連動部
41a,42a 突起部
43 引張バネ
50 絞り機構
54,54a,54b レバー
54c マグネット
60 遮光機構
64 レバー
64a 側面部
65 圧縮バネ
100 顕微鏡
OA1 観察光軸
OA2 照明光軸
OPx,OPmax 照明光束
φ,φx,φmax 開口径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本に対して明視野照明と偏斜照明とを切換可能に行う照明装置において、
前記標本に対する照明光束を所定光軸周りに制限する絞りと、
前記照明光束を遮光する遮光部材を有し、前記絞りによって制限された前記照明光束の光路に対して前記遮光部材を挿脱させるとともに、該光路内への前記遮光部材の挿入量に対応して前記照明光束を前記所定光軸に対して非対称に遮光する遮光機構と、
を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
標本に対して明視野照明と偏斜照明とを切換可能に行う照明装置において、
前記標本に対する照明光束を所定光軸周りに制限する絞りを有し、該絞りの開口径を変化させる絞り機構と、
前記照明光束を遮光する遮光部材を有し、前記絞りによって制限された前記照明光束の光路に対して前記遮光部材を挿脱させるとともに、該光路内への前記遮光部材の挿入量に対応して前記照明光束を前記所定光軸に対して非対称に遮光する遮光機構と、
前記遮光機構による前記遮光部材の前記光路に対する挿入移動または退避移動の少なくとも一方に連動し、前記絞り機構によって前記開口径を変化させる連動機構と、
を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
前記連動機構は、前記遮光機構が前記遮光部材を前記光路内へ所定量挿入させた場合、前記絞り機構によって前記開口径を最大にすることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記連動機構は、前記遮光機構が前記遮光部材を前記光路内から該光路外へ退避移動させた場合、前記絞り機構によって前記開口径を、前記遮光機構が前記遮光部材を前記光路内へ挿入させる以前の大きさに復元することを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記遮光機構は、前記絞り近傍における前記光路に対して前記遮光部材を挿脱させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の照明装置。
【請求項6】
前記遮光機構は、前記照明光を拡散させる拡散光学素子を前記遮光部材と一体に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の照明装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−14772(P2009−14772A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173247(P2007−173247)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】