説明

照明装置

【課題】光源の全照射範囲にわたって、人間の視感度に合った光を照射し、光源点灯後の視認性を向上することができる照明装置を提供する。
【解決手段】照射範囲を複数に分割したエリア71毎に光を照射し、光の波長構成を可変とする光源部11を複数具備する照明部1と、他の照明装置の点灯状態を検知する稼動検知部6と、光源部11が照射する光のみによる各エリア71の明るさを示す内部データおよび、他の照明装置の点灯状態毎に、他の照明装置が照射する光のみによる各エリア71の明るさを示す外部データが格納された記憶部4と、内部データと、稼動検知部6の検知結果に対応する外部データとの和に基づき、光源部11が照射する光の長波長成分と短波長成分との割合を演算する演算部3と、演算部3の各エリア71の演算結果に基づいて、光源部11が照射する光の波長構成を制御する制御部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、省エネや視認性向上を実現する装置として、光源の照射範囲の明るさを検知するセンサを備え、センサの検知結果を用いて、光源の出力レベルをフィードバック制御する照明装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、任意の場所に設置可能な輝度検出器により床面の明るさを常時監視している。そして、自然採光により必要な明るさが得られているエリアと、必要な明るさが得られていないエリアとを判別し、照明の点灯・消灯を自動的に制御している。
【0004】
また、人の視感度は周辺の明るさによって変化することが知られている。人の網膜には、錐体と杆体の2種類の光センサーがある。明るい環境(以下、明所視と称す)では錐体が働き、暗い環境(以下、暗所視と称す)では杆体が働くことで、明るさを知覚することができる。さらに、薄暗い環境(以下、薄明視と称す)では、錐体と杆体との両方が働くことが知られている。
【0005】
明所視,暗所視,薄明視では、人の網膜で働く光センサー(錐体,杆体)の違いから、明るさの視感度特性(分光視感効率)が光の波長毎に異なる。図15に、明所視と暗所視とにおける分光視感効率を示す。図15に示すように、明所視における分光視感効率R1のピーク波長は555nm、暗所視における分光視感効率R2のピーク波長は507nmとなる。
【0006】
例えば、昼間(明所視)と夜間(暗所視)とでは、明るく感じる光の色(見えやすい色)が異なる。昼間から夕方,夜間になるにつれて、明所視から薄明視,暗所視と変化するので、明るく感じる光も短波長側へ変化していく。
【0007】
そこで、人間の視感度特性に基づいて、車両の前照灯が照射する光の色を変化させる前照灯装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の前照灯装置は、車両周囲の明るさを検知し、予め定められた低照度状態の場合には、青色成分(短波長成分)を増加させる。それによって、前照灯の光は、他の車両等からの被視認性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−21814号公報
【特許文献2】特開2007−10634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2の前照灯装置では、他の車両からの前照灯の被視認性は向上されるが、前照灯による照射範囲の視認性は考慮されていない。つまり、前照灯が点灯する前後で照射範囲の明るさが変化するので、目の視感度特性(順応状態)が変化する。
【0010】
また、前照灯からの距離または周辺光などによって、前照灯による照射範囲内でも明るさが異なり、1つの光源で照射する範囲の明るさは不均一となる。そのため、照射範囲内でも目の順応状態は異なり、1箇所の明るさを検知して、光の出力レベルを決めるだけでは、良好な視環境実現には不十分である。
【0011】
また、特許文献1では、エリアごとに自然光等による明るさを検知し、光の出力レベルを調整することで省エネを図っているが、光の波長構成を変動させていない。すなわち、特許文献1の照明装置は視感度について考慮されていない。
【0012】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源の全照射範囲にわたって、人間の視感度に合った光を照射し、光源点灯後の視認性を向上することができる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の照明装置は、所定の範囲を複数に分割したエリア毎に光を照射し、当該光の波長構成を可変とする光源部を複数具備する照明部と、前記エリアに光を照射する他の照明装置の点灯状態を検知する稼動検知部と、前記光源部が照射する光のみによる前記エリア毎の明るさを示す第1のデータおよび、前記他の照明装置の点灯状態毎に、当該他の照明装置が照射する光のみによる前記エリア毎の明るさを示す第2のデータが格納された記憶部と、前記第1のデータと、前記稼動検知部の検知結果に対応する前記第2のデータとの和に基づき、前記光源部が前記エリア毎に照射する光の長波長成分と短波長成分との割合を演算する演算部と、前記演算部の前記エリア毎の演算結果に基づいて、前記光源部が前記エリアに照射する光の波長構成を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
この照明装置において、前記光源部は、色温度が高い高色温度光源と、前記高色温度光源に対して色温度が低い低色温度光源とで構成されており、前記制御部は、前記演算部の演算結果に基づいて、前記高色温度光源および前記低色温度光源を調光制御することによって、前記光源部が照射する光の波長構成を制御することが好ましい。
【0015】
この照明装置において、前記光源部は、色温度が高い高色温度光源と、前記高色温度光源に対して色温度が低い低色温度光源とで構成されており、前記制御部は、前記演算部の演算結果に基づいて、前記高色温度光源と前記低色温度光源とのうち、いずれか一方のみを点灯させることで、前記光源部が照射する光の波長構成を制御することが好ましい。
【0016】
この照明装置において、前記光源部は、複数の前記高色温度光源と、複数の前記低色温度光源とで構成されており、前記高色温度光源と前記低色温度光源とが交互に実装されていることが好ましい。
【0017】
この照明装置において、前記照明部は、前記光源部が実装される実装面を有しており、
前記実装面は、曲面に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明では、光源の全照射範囲にわたって、人間の視感度に合った光を照射し、光源点灯後の視認性を向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1の照明装置のブロック構成図を示す図である。
【図2】同上の光源部のLEDが照射する光の分光強度をグラフである。
【図3】(a)同上の照明部の照射範囲を示す概略図である。(b)各エリアにおける検知部の検知結果を示すグラフである。
【図4】各エリアの順応輝度を示すグラフである。
【図5】同上の光源部が照射する光の分光強度を示すグラフである。
【図6】同上の制御を示すフローチャートである。
【図7】(a)高色温度LEDおよび低色温度LEDが照射する光の分光強度をグラフである。(b)高色温度LEDおよび低色温度LEDが照射する光の特性を示す表である。
【図8】高色温度LEDおよび低色温度LEDの外観を示す概略図である。
【図9】(a)実装面が球面で形成された器具本体の外観を示す概略図である。(b)実装面が平面で形成された器具本体の外観を示す概略図である。
【図10】(a)高色温度LEDおよび低色温度LEDの実装配置を示す概略図である。(b)各エリアに照射される光の分布を示す概略図である。
【図11】(a)高色温度LEDおよび低色温度LEDの実装配置を示す概略図である。(b)各エリアに照射される光の分布を示す概略図である。
【図12】入力端末機を備えた街路灯の概略構成図である。
【図13】(a)器具本体の概略構成図である。(b)LEDの配置を示す概略図である。
【図14】カメラを備えた街路灯の概略構成を示す図である。
【図15】視感度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(実施形態1)
本実施形態の照明装置は、夜間または自然光が照射されない室内で用いられる照明装置である。また、本実施形態の照明装置の近傍には、本実施形態の照明装置とは異なる他の照明装置が設けられており、他の照明装置が照射する光が、本実施形態の照明装置の照射範囲に照射されているとして、以下説明する。
【0022】
本実施形態の照明装置は、照明部1と入力部2と演算部3と記憶部4と制御部5と稼動検知部6とで構成されている。
【0023】
照明部1は、複数の光源部11で構成されている。本実施形態の光源部11は、青色LED12aと緑色LED12bと赤色LED12cとを各々備えている。図2に各LED12a〜12cの相対分光強度を示す。図2に示すG1は青色LED12aの分光強度、G2は緑色LED12bの分光強度、G3は赤色LED12cの分光強度を示している。また、光源部11は点灯回路13を備えている。点灯回路13は、図示しない電源から各LED12a〜12cに供給される点灯電力を制御することで、各LED12a〜12cの出力レベルは可変自在に構成されている。そして、各LED12a〜12cの出力レベルを変動させることで、各LED12a〜12cの混色光の波長構成(分光強度)を光源部11毎に変動させることができる。なお、本実施形態の光源部11は、LEDで構成されているが、LEDに限定するものではなく、蛍光灯などの放電灯または有機ELなどでもよい。
【0024】
図3(a)に照明部1の照射範囲の概略図を示す。照明部1は、路面7に向かって光を照射する。具体的には、照明部1の照射範囲は複数のエリア71に分割されており、各光源部11が各々に対応したエリア71に光を照射する。本実施形態では、照明部1直下のエリアを71a、照明部1から一方側に離れたエリアを71b、照明部1から他方側に離れたエリアを71cとする。また、エリア71cには、他の照明装置に設けられた光源が照射する光8(以下、周辺光8と称す)が照射されている。エリア71aに光を照射する光源部を11a、エリア71bに光を照射する光源部を11b、エリア71cに光を照射する光源部を11cとして以下説明する。
【0025】
図4に、照明部1の照射範囲における明るさ(順応輝度)の分布図を示す。図4に示すL1は照明部1が照射する光のみによる順応輝度、L2は周辺光8のみによる順応輝度、L3は照明部1が照射する光と周辺光8とによる順応輝度の和を示している。
【0026】
入力部2は、ユーザーが各エリア71の明るさを入力するための入力端末機で構成されており、モニターやスイッチ等を備えている。ユーザーは周辺光8のみによる各エリア71の順応輝度(以降、外部順応輝度と称す)を測定し、入力部2を操作して測定結果と他の照明装置の点灯状態とを対応付けてを入力する(図4のL2参照)。この測定は、各エリア71に自然光が照射されていない夜間等の状態かつ、照明部1が消灯している状態において、ユーザーが照度計などを用いて外部順応輝度の測定を行う。このとき、他の照明装置が光源を調光制御することができる場合、調光状態での外部順応輝度と、その調光レベルとを対応付けて入力部2に入力することができる。なお、本実施形態では、他の照明装置は調光機能を備えておらず、全点灯・消灯のみの制御を行う。したがって、ユーザーは上記測定した外部順応輝度と全点灯とを対応付けて入力を行う。
【0027】
そして、上記で測定した外部順応輝度と全点灯とが、入力部2を用いて入力されると、演算部3は入力された各エリア71の外部順応輝度と全点灯を対応付けてを記憶部4に格納する。
【0028】
演算部3はマイクロコンピュータ等で構成されており、信号処理部としての機能を備えている。そして、演算部3は、入力部2で入力された外部順応輝度と全点灯とを対応付け、外部データ(第2のデータ)として記憶部4に格納する。
【0029】
また、記憶部4には、本実施形態の照明装置に備えられた照明部1が照射する光のみによる各エリア71の順応輝度(以下、内部順応輝度と称す)が内部データ(第1のデータ)として予め格納されている(図4のL1参照)。
【0030】
稼動検知部6は、他の照明装置の点灯状態を検知している。本実施形態の稼動検知部6は、無線信号の受信機で構成されている。また、他の照明装置は自身の点灯状態を示す状態信号を、無線信号で送信する図示しない送信機を備えている。そして、稼動検知部6は、他の照明装置から送信される点灯状態信号を受信することで、他の照明装置の点灯状態を検知している。
【0031】
また、演算部3は、各エリア71に存在する人間の目の順応状態(以降、エリア71の順応状態と称す)を判断する。
【0032】
まず、演算部3は、記憶部4を参照して稼動検知部6の検知結果に対応した外部データ(図4のL2参照)を取得する。すなわち、例えば他の照明装置が全点灯である場合、全点灯に対応付けられた外部データ、他の照明装置が調光状態である場合、その調光レベルに対応付けられた外部データを取得する。
【0033】
さらに、演算部3は、記憶部4を参照して内部データ(図4のL1参照)を取得する。そして、演算部3は、取得した内部データと外部データとを足し合わせることで、各エリア71の順応輝度(以下、総合順応輝度と称す)を導出する(図4のL3参照)。図3(b)に、各エリア71における演算部3の導出結果を示す。エリア71aは、照明部1の直下であり総合順応輝度が最も高く、20cd/mとなっている。エリア71bは、照明部1から離れているため総合順応輝度が低く、0.5cd/mとなっている。エリア71cは、照明部1から離れているが、周辺光8が照射されているため総合順応輝度が高く、13cd/mとなっている。
【0034】
本実施形態の演算部3は、各エリア71の順応状態(明所視,薄明視)を判断するために順応閾値を用いている。順応閾値は、10cd/mに設定されており、演算部3は10cd/m以上を明所視、10cd/m未満を薄明視と判断する。
【0035】
そして、演算部3は、判断した各エリア71の順応状態から、各エリア71の視感度に合わせた光の波長構成を演算する。演算部3は、光源部11が照射する光の強度(各LED12a〜12cの出力レベルの和)を一定とし、各LED12a〜12cの出力比を変動させることで、光源部11が照射する光の波長構成を変動させる。そこで、演算部3は、各エリア71に対応した光源部11毎のLED12a〜12cの出力比を、各エリア71の順応状態から導出する。そして、演算部3は導出した各光源部11の各LED12a〜12cの出力比(波長構成)を制御部5に出力する。本実施形態では、演算部3が明所視と判断した場合、演算部3は各LED12a〜12cの出力比を青:緑:赤=1.0:1.0:1.0と設定する。以降、各LED12a〜12cの出力比が青:緑:赤=1.0:1.0:1.0である場合、明所視モードと称す。一方、演算部3が薄明視と判断した場合、演算部3は各LED12a〜12cの出力比を青:緑:赤=1.0:1.4:0.6と設定する。以降、各LED12a〜12cの出力比が青:緑:赤=1.0:1.4:0.6である場合、薄明視モードと称す。
【0036】
制御部5は、照明装置を駆動させる電源部および、各光源部11の各LED12a〜12cの出力レベルを制御する出力制御部を備えている。そして、制御部5は、演算部3が設定した波長構成に基づき、光源部11の各LED12a〜12cの出力レベルを制御することで、光源部11が照射する光の波長構成を制御する。
【0037】
図5に光源部11が照射する光(各LED12a〜12cの混色光)の分光強度を示す。図5のG4は光源部11を明所視モードで点灯させた場合の分光強度を示し、G5は光源部11を薄明視モードで点灯させた場合の分光強度を示す。図5に示すように、薄明視モードで光源部11が照射する光(G5)は、明所視モードで光源部11が照射する光(G4)に比べて、長波長成分が少なく短波長成分が多い。したがって、順応状態が明所視のエリア71に、明所視モードで光源部11が光を照射することによって、人間の目の視感度に合った光となり視認性が向上する。一方、順応状態が薄明視のエリア71に、薄明視モードで光源部11が光を照射することによって、人間の目の視感度に合った光となり視認性が向上する。
【0038】
次に、図6に示すフローチャートを用いて、本実施形態の照明装置で行われる処理の流れを示す。
【0039】
本実施形態の照明装置は、まず制御部5が照明部1の各光源部11を明所視モードで点灯させ、各エリア71を照射する(S1)。
【0040】
次に、稼動検知部6が他の照明装置の点灯状態を検知する(S2)。本実施形態では、他の照明装置は全点灯しており、稼動検知部6は全点灯状態を検知して、この検知結果を演算部3に出力する。
【0041】
演算部3は、内部データと、稼動検知部6の検知結果(全点灯)に対応する外部データとを記憶部4から取得し、取得した内部データと外部データとを足し合わせて各エリア71の総合順応輝度を導出する(S3)。
【0042】
そして、演算部3は、導出結果から各エリア71の順応状態を判断する(S4)。演算部3の導出結果は、図4(b)に示すように、エリア71aの総合順応輝度は20cd/m、エリア71bの総合順応輝度は0.5cd/m、エリア71cの総合順応輝度は13cd/mとなっている。また、順応閾値は、10cd/mに設定されている。したがって、演算部3は、エリア71a,71cを明所視と判断し、エリア71bを薄明視と判断する。
【0043】
そして、演算部3は各エリア71の順応状態から、そのエリア71に対応した光源部11が照射する光の波長構成を演算する。演算部3は、明所視と判断したエリア71a,71cに光を照射する光源部11a,11cの波長構成を明所視モードと導出する(S5a)。また、薄明視と判断したエリア71bに光を照射する光源部11bの波長構成を薄明視モードと導出する(S5b)。
【0044】
次に、制御部5は、演算部4が導出した波長構成に基づいて、光源部11が照射する光の波長構成を制御する(S6a,S6b)。制御部5は、光源部11の波長構成を、この光源部11が照射するエリア71に対応した演算部3の導出する波長構成に基づいて変動させる。本実施形態では、明所視のエリア71a,71cに対応した光源部11a,11cは、既に明所視モードで光を照射しているので、制御部4は光源部11a,11cの明所視モードを維持する。また、薄明視のエリア71bに対応した光源部11bは、制御部4が波長構成を明所視モードから薄明視モードに切り替える。
【0045】
このように、本実施形態の照明装置は、他の照明装置の点灯状態を検知し、周辺光8による外部順応輝度を考慮して、照明部1が点灯後の各エリア71の総合順応輝度を導出し、照明部1が点灯後の各エリア71の視感度に合わせた波長構成を判断する。そして、この判断結果に基づいて、このエリア71に照射する光源部11の波長構成を制御部5が切り替える。したがって、各エリア71において、光源部11の点灯状態における視感度に合わせた光が光源部11から照射されるので、光源部11が点灯状態での視認性を向上させることができる。さらに、記憶部4に格納されている内部データと外部データは、エリア71毎に対応しているので、照明部1の全照射範囲にわたって視認性を向上させることができる。
【0046】
また、他の照明装置が消灯した場合、稼動検知部6が他の照明装置の消灯を検知し、演算部3は内部データ(図4のL1参照)のみに基づいて、各エリア71の順応状態を判断する。したがって、演算部3はエリア71cに対しても薄明視と判断するので、制御部5は光源部11cの波長構成を薄明視モードに切り替える。
【0047】
また、他の照明装置が調光制御を行うことができ、調光状態で点灯している場合、稼動検知部6は他の照明装置の調光点灯状態および調光レベルを検知する。そして、演算部3は、内部データと、調光レベルに対応付けられた外部データとを記憶部4から取得して、各エリア71の総合順応輝度を導出し、各エリア71の順応状態を判断する。そして、判断した順応状態に基づいて、光源部11が照射する光の波長構成を切り替える。
【0048】
また、本実施形態では複数のエリア71の中からエリア71a〜71cを選択して説明したが、他のエリア71についても、上記と同様の制御が行われる。
【0049】
また、本実施形態では、明所視モードで光源部11を点灯させた状態で、他の照明装置の点灯状態を検知し、各エリア71の総合順応輝度を導出しているが、薄明視モードで光源部11を点灯させた状態で、各エリア71の総合順応輝度を導出してもよい。また、各エリア71の総合順応輝度に基づいて、視感度に合わせた波長構成であれば、上記の各LED12a〜12cの出力比に限定されない。
【0050】
また、本実施形態では1つの順応閾値を用いて各エリア71の順応状態を判断しているが、複数の順応閾値を設定して段階的に光の波長構成を切り替えてもよい。例えば、薄明視のエリア71bの総合順応輝度0.5cd/mよりも総合順応輝度が小さい場合、薄明視モードよりもさらに短波長成分を増加させることで視感度に合った光となる。また、各エリア71の総合順応輝度に基づいて、連続的に光の波長構成を変動できるように構成してもよい。
【0051】
また、本実施形態の入力部2は入力端末機で構成されているが、この構成に限定するものではない。例えば、入力部2を、外部順応輝度を検知する検知センサで構成して、各エリア71の外部順応輝度を測定し、自動的に外部データが記憶部4に格納されるように構成してもよい。この場合、検知センサは例えばフォトダイオードやカメラで構成される。
【0052】
検知センサをフォトダイオードで構成した場合、フォトダイオードが各エリア71の外部順応輝度を検知し、このフォトダイオードの検知電流に基づいた順応輝度が外部データとして記憶部4に格納される。
【0053】
検知センサをカメラで構成した場合、カメラが各エリア71を撮像し、撮像データに画像処理を施すことによって、各エリア71の外部順応輝度を導出する。そして、導出した各エリア71の順応輝度が外部データとして記憶部4に格納される。
【0054】
また、本実施形態の稼動検知部6は、受信機で構成され、他の照明装置から送信される状態信号を受信することで、他の照明装置の点灯状態を検知しているが、この構成に限定するものではない。例えば、稼動検知部6を照度センサなどで構成し、他の照明装置が照射する光の照度を検知することで、他の照明装置の点灯状態を検知するように構成してもよい。
【0055】
(実施形態2)
本実施形態の光源部11は、2種類のLEDで構成されている。実施形態1の光源部11は、青色LED12aと緑色LED12bと赤色LED12cとの3種類のLEDで構成され、その混色光をエリア71毎に照射していた。しかし、本実施形態の光源部11は、高色温度LED12dと低色温度LED12eとの2種類のLEDで構成され、高色温度LED12dと低色温度LED12eとのうち、いずれか一方のみを点灯させ、エリア71毎に照射する。なお、他の構成は、実施形態1と同様であるので、同一符号を付して説明は省略する。
【0056】
図7(a)に高色温度LED12dおよび低色温度LED12eの相対分光強度を示す。図7(a)に示すG6は高色温度LED12dの分光強度、G7は低色温度LED12eの分光強度を示している。また、図7(b)に示すように、高色温度LED12dが照射する光は、色度座標がx=0.2912,y=0.2921、相関色温度が8740K、偏差がDUV=−4.48である。一方、低色温度LED12eが照射する光は、色度座標がx=0.3141,y=0.3343、相関色温度が6394K、偏差がDUV=5.20である。上記に示すように、高色温度LED12dは短波長成分を多く含んでおり、色温度が高い。一方、低色温度LED12eは高色温度LED12dに対して色温度が低い。すなわち、高色温度LED12dを点灯させた場合は、薄明視に適した視環境となり、低色温度LED12eを点灯させた場合は、明所視に適した視環境となる。
【0057】
本実施形態では、初期状態として高色温度LED12dのみを点灯させ、薄明視に合わせている。そして、稼動検知部6が他の照明装置の点灯状態を検知して、演算部3は、内部データと、稼動検知部6の検知結果に対応する外部データとを記憶部4から取得し、内部データと外部データとを足し合わせることで各エリア71の総合順応輝度を導出する。なお、演算部3の導出結果が実施形態1と同一であるとして、以下説明する(図3(a)(b)参照)。
【0058】
そして、演算部3は、各エリア71の総合順応輝度の導出結果から、各エリア71の順応状態を判断する。演算部3は、明所視と判断したエリア71a,71cに照射する光源部11a,11cの波長構成を明所視に合わせるために、高色温度LED12dの消灯、低色温度LED12eの点灯を制御部5に指示する。そして、制御部5がエリア71a,71cに照射する光源部11a,11cの高色温度LED12dを消灯し、低色温度LED12eを点灯させる。それによって、エリア71a,71cに照射される光の色温度が低く、明所視における視感度に合った光となり、視認性が向上する。
【0059】
一方、初期状態で薄明視に合わせた光を照射しているので、演算部3は、薄明視と判断したエリア71bに照射する光源部11bの低色温度LED12eの点灯状態を維持させる。したがって、エリア71bに照射される光の色温度が高く、薄明視における視感度に合った光となり、視認性が向上する。
【0060】
本実施形態では、各エリア71における目の順応状態に応じて、視感度の高いほうのLED12d,12eを点灯させることで、同じエネルギー量で、視認性の高い光環境を実現することができる。さらに、本実施形態では、2つのLED12d,12eの点灯/消灯の切り替えのみでエリア71毎に照射する光の波長構成を変動させることができるので、制御が容易となる。
【0061】
なお、本実施形態では、高色温度LED12dを点灯させた状態で他の照明装置の点灯状態を検知しているが、低色温度LED12eを点灯させた状態で他の照明装置の点灯状態を検知してもよい。また、光源部11毎に異なるLED12d,12eを点灯させた状態で、他の照明装置の点灯状態を検知してもよい。
【0062】
次に、照明部1の構造について説明する。
【0063】
図8にLED12d,12eの概略図、図9(a)にLED12d,12eが設けられた照明部1の概略図を示す。
【0064】
本実施形態の高色温度LED12d,低色温度LED12eは、図8に示すように、略半球状に形成されており、底面側から球面側に向かって光を照射する。また、照明部1は、器具本体14と、器具本体14に実装されるLED12d,12eとで構成されている。器具本体14は、図9(a)に示すように、半球状に形成され、その球面(曲面)が実装面を構成しており、球面に上記の高色温度LED12d,低色温度LED12eが実装される。
【0065】
LED12d,12eは照射する光の指向性が高いので、もし図9(b)に示すようにLED12d,12eの実装面が平面で形成された器具本体14aを用いた場合、照射範囲が限られてしまう。しかし、本実施形態では、実装面が球面で形成された器具本体14を用いているので、器具本体14aに対して同じLED12d,12eの個数を実装した場合でも照射範囲を広げることができる。
【0066】
次に、照明部1に実装される高色温度LED12d,低色温度LED12eの具体的な配置について説明する。
【0067】
図10(a)に路面7から照明部1を見た際の高色温度LED12d,低色温度LED12eの配置図を示す。なお、図10(a)では、LED12d,12eの配置を分かりやすくするために、器具本体14の実装面を平面で示す。
【0068】
本実施形態の照明部1は、器具本体14にLED12d,12eが10行×8列に並べて実装されている。そして、同一の行には同一種類のLED12d,12eが並んで実装され、同一の列には高色温度LED12dと低色温度LED12eとが交互に実装されている。本実施形態では、1行目に低色温度LED12eが実装され、2行目に高色温度LED12dが実装されている。なお、10行×8列に実装されたLED12d,12eの数は1例であって、10行×8列に限定するものではなく、他の行数,他の列数で構成されていてもよい。
【0069】
そして、本実施形態では各列に実装されたLED12d,12eで、1つの光源部11を構成している。なお、本実施形態では、光源部11は、1列に実装されたLED12d,12eで構成されているが、1列に限定するものではなく、複数の列をまとめて光源部11としてもよい。
【0070】
上記のように器具本体14にLED12d,12eが実装された照明部1を用いて、各エリア71を照射した場合における光の分布を図10(b)に示す。なお、各エリア71の総合順応輝度は、実施形態1と同様であるとして以下説明する(図3(a)(b)参照)。エリア71a,71cは明所視であるので、低色温度LED12eのみの光が照射され、エリア71bは薄明視であるので、高色温度LED12dのみの光が照射されている。
【0071】
もし、図11(a)に示すように、器具本体13の3〜7行目に低色温度LED12e、1,2行目と8〜10行目に高色温度LED12dを実装した場合、各エリア71の光の分布は図11(b)となる。図11(b)に示すように、明所視のエリア71a,71cは両端付近に光が照射されず、薄明視のエリア71bは中心付近に光が照射されなくなり、各エリア71内で光のムラが発生する。しかし、本実施形態では、1行毎に高色温度LED12dと低色温度LED12eとを交互に実装しているので、明所視のエリア71a,71cと薄明視のエリア71bとにおける光のムラを抑制することができ、良好な視環境を実現することができる。
【0072】
次に入力部2の構成について説明する。
【0073】
本実施形態の照明装置は図12に示すような街路灯Aであり、路面7に設けられた支柱72の上部に照明部1が設けられている。そして、器具本体14の内部に演算部3,記憶部4,制御部5,稼動検知部6を収納している。また、入力部2は入力端末機21で構成されており、支柱72に設けられている。入力端末機21は、モニターやスイッチ等を備えており、ユーザーが路面7に立った状態で操作しやすい高さに設けられている。また、照明部1は、図13(a)(b)に示すように、器具本体14の球面にLED12d,12eが実装され、複数の光源部11を構成している。
【0074】
また、照明装置(街路灯A)の近傍には、建物8があり、建物8内に設けられた他の照明装置81が照射する光が、建物開口82から漏れている。
【0075】
ユーザーは、夜間で照明部1が消灯し、他の照明装置81が点灯している状態において、照度計を用いて各エリア71の外部順応輝度を測定する。そして、ユーザーは入力端末21を操作して測定結果を入力し、記憶部4に外部データを格納する。
【0076】
また、他の照明装置81は、自身の点灯状態を示す状態信号を送信する送信機83を備えている。稼動検知部6は、送信機83が送信する状態信号を受信し、この状態信号に基づいて他の照明装置81の点灯状態を検知する。そして、演算部3は、記憶部4を参照して、内部データと、稼動検知部6の検知結果に対応する外部データとを足し合わせて、各エリア71の総合順応輝度を導出する。そして、演算部3は、導出結果から各エリア71の順応状態を判断し、高色温度LED12dまたは低色温度LED12eの点灯を制御部5に指示する。制御部5は、演算部3の指示に基づいて光源部11毎に高色温度LED12dまたは低色温度LED12eを点灯させる。
【0077】
また、入力部2は、図14に示すように、支柱72に設けられたカメラ22で構成されていてもよい。カメラ22は、各エリア71を撮像している。そして、演算部3はカメラ22の撮像データに画像処理を施すことによって、各エリア71の外部順応輝度を導出し、外部データとして記憶部4に格納する。以降の制御は、上記と同様なので省略する。
【符号の説明】
【0078】
1 照明部
2 入力部
3 演算部
4 記憶部
5 制御部
6 稼動検知部
11 光源部
12a 青色LED
12b 緑色LED
12c 赤色LED
13 点灯回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲を複数に分割したエリア毎に光を照射し、当該光の波長構成を可変とする光源部を複数具備する照明部と、
前記エリアに光を照射する他の照明装置の点灯状態を検知する稼動検知部と、
前記光源部が照射する光のみによる前記エリア毎の明るさを示す第1のデータおよび、前記他の照明装置の点灯状態毎に、当該他の照明装置が照射する光のみによる前記エリア毎の明るさを示す第2のデータが格納された記憶部と、
前記第1のデータと、前記稼動検知部の検知結果に対応する前記第2のデータとの和に基づき、前記光源部が前記エリア毎に照射する光の長波長成分と短波長成分との割合を演算する演算部と、
前記演算部の前記エリア毎の演算結果に基づいて、前記光源部が前記エリアに照射する光の波長構成を制御する制御部とを備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記光源部は、色温度が高い高色温度光源と、前記高色温度光源に対して色温度が低い低色温度光源とで構成されており、
前記制御部は、前記演算部の演算結果に基づいて、前記高色温度光源および前記低色温度光源を調光制御することによって、前記光源部が照射する光の波長構成を制御することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光源部は、色温度が高い高色温度光源と、前記高色温度光源に対して色温度が低い低色温度光源とで構成されており、
前記制御部は、前記演算部の演算結果に基づいて、前記高色温度光源と前記低色温度光源とのうち、いずれか一方のみを点灯させることで、前記光源部が照射する光の波長構成を制御することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光源部は、複数の前記高色温度光源と、複数の前記低色温度光源とで構成されており、前記高色温度光源と前記低色温度光源とが交互に実装されていることを特徴とする請求項2または3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記照明部は、前記光源部が実装される実装面を有しており、
前記実装面は、曲面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−48860(P2012−48860A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187550(P2010−187550)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】