説明

熟成コンポスト様物の製造方法

【課題】微粉分が少なく、有機質肥料としての取り扱い性に優れた熟成コンポスト様物を低コストで歩留り良く製造する方法を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物を加熱乾燥した後、熱処理することにより熟成コンポスト様物を製造する方法において、加熱乾燥後の熱処理工程の該降温過程において、被処理物にポリマーを添加して撹拌混合する。被処理物に粘性の高いポリマー(高分子凝集剤)水溶液を噴霧することにより、被処理物中の微粉分の表面にポリマーが付着し、微粉同士が粒状に集塊する。この状態で更に加熱、撹拌混合されることにより、水分が蒸発して残留したポリマー成分が互いに架橋することにより、造粒成形される。このような凝集、造粒効果を発揮するポリマーを熱処理工程の降温工程で添加することにより、ポリマーのこげつきを引き起こすことなく、その凝集、造粒効果を有効に発揮させて微粉分の少ない熟成コンポスト様物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物処理汚泥や畜糞等の有機性廃棄物を処理して熟成コンポストに類似した悪臭の無い製品を短時間で製造する方法に係り、特に、微粉分の割合が少なく、飛散、発塵等の問題がなく、有機質肥料としての取り扱い性に優れた熟成コンポスト様物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物処理汚泥や生ごみ、畜糞等の有機性廃棄物から、熟成コンポストに類似した悪臭の無い製品を比較的低い処理温度と短い時間で低コストにて効率的に製造する技術として、特開2001−130990号公報に、有機性廃棄物を加熱乾燥した後、100〜200℃で熱処理して熟成コンポスト様物を製造する方法及び装置が提案されている。
【0003】
この方法及び装置であれば、有機性廃棄物を加熱乾燥し、100〜200℃という比較的低い温度での加熱を継続することにより、10〜20時間程度の短時間の処理で、悪臭がなく、しかも有機肥料分も十分に残留している上に塩分もさほど高くなく、有機肥料として有効な熟成コンポスト類似の製品を得ることができる。
【0004】
通常の生ゴミなどを原料としたコンポストは微生物により有機物の分解が行われた(即ち、醗酵)結果得られるもので、有機物が安定化している。従って、土壌に投入されたときの分解速度が遅く、それゆえ急激に分解されて酸素欠乏状態を招くことがない。また、臭気成分も除去されており悪臭も殆どない。しかし、コンポスト化処理法では、微生物の働き(醗酵)により有機物を安定化させ、臭気成分を除去するため、製造に長期間を要する。
【0005】
これに対して、特開2001−130990号公報で製造されるコンポスト様物は、乾燥後の加熱分解で、コンポスト化処理法で得られる熟成コンポストと同様に臭気成分がなく、有機物が安定化した物質とされたものであり、特開2001−130990号公報の方法及び装置によれば、有機性廃棄物を原料として、加熱乾燥し、その後熱処理して熱変成(腐植質化)させることにより、醗酵過程を経ずに熟成コンポストと類似の有機質肥料を比較的低温の処理で、短時間(1日弱)で得ることができる。しかも、得られた熟成コンポスト様物は、施肥したときに窒素の無機化が遅いため、長期間肥効を維持することができ、また、標準施肥量に対して4〜5倍という過剰施肥をしても植害を発生させないという利点をも有する優れた緩効性肥料である。
【0006】
しかし、特開2001−130990号公報に記載される方法により、有機性廃棄物を加熱乾燥した後熱処理することにより製造された熟成コンポスト様物中には、微粉分(例えば、粒径250μm以下の微粒子)が多く含まれているため、加熱容器からの取り出し時、製品(有機質肥料)としての出荷のための袋詰め作業時、更には施肥時等において、飛散、発塵等の問題があり、取り扱い性が悪い。特に、機械式施肥を行う場合、肥料は粒状であることが望まれるが、微粉分の多いものでは、機械式施肥を適用することができず、飛散、発塵による作業環境の悪化、歩留りの低下も問題となる。
【0007】
従って、現状では熱処理により得られた熟成コンポスト様物を篩分けし、篩下の微粉分は再度原料の有機性廃棄物と共に加熱乾燥及び熱処理し、篩上の粒状分のみを製品としている。
【0008】
しかしながら、この方法では、
(1) 熟成コンポスト様物の篩分設備が必要となる。
(2) 篩下の微粉分を再度加熱乾燥及び熱処理に供するための搬送設備を必要とし、また、微粉分を再度加熱乾燥及び熱処理するためのエネルギーコストもかかり、製造歩留りが低い。通常、熱処理で得られる熟成コンポスト様物中の微粉分の割合は5〜10重量%にもなり、これを再度処理することの不利益は大きい。
(3) 篩分けを行っても、篩上の粒状分中にはなお、微粉分が約2重量%程度含まれているため、取り扱い性に十分に優れるとは言えない。
といった問題がある。
【0009】
特開2004−99395号公報には、この問題を解決するために、有機性廃棄物にポリマーを添加混合した後、加熱乾燥し、次いで熱処理する方法が提案されているが、この方法では、有機性廃棄物に添加されたポリマーが高温の熱処理を受けることで加熱容器内でのこげつきの問題があり、ポリマーによる凝集、造粒効果を有効に発揮し得ない場合があった。
【特許文献1】特開2001−130990号公報
【特許文献2】特開2004−99395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題点を解決し、微粉分が少なく、有機質肥料としての取り扱い性に優れた熟成コンポスト様物を低コストで歩留り良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)の熟成コンポスト様物の製造方法は、有機性廃棄物を加熱乾燥した後、熱処理することにより熟成コンポスト様物を製造する方法において、該加熱乾燥後の熱処理工程が昇温過程とその後の降温過程とを有し、該降温過程において、被処理物にポリマーを添加して撹拌混合することを特徴とする。
【0012】
請求項2の熟成コンポスト様物の製造方法は、請求項1において、前記降温過程において、前記被処理物の温度が100〜120℃となった時点でポリマーを添加することを特徴とする。
【0013】
請求項3の熟成コンポスト様物の製造方法は、請求項1又は2において、前記ポリマーの水溶液を、前記被処理物に対するポリマー添加量が0.1〜0.2重量%で、ポリマー添加直後の被処理物の含水率が20〜30重量%となるように添加することを特徴とする。
【0014】
請求項4の熟成コンポスト様物の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ポリマーを添加した被処理物を75〜90℃で10〜30分撹拌混合することを特徴とする。
【0015】
請求項5の熟成コンポスト様物の製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、製造された熟成コンポスト様物の含水率が12〜14重量%であることを特徴とする。
【0016】
請求項6の熟成コンポスト様物の製造方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、製造された熟成コンポスト様物中の250μm篩下率が1.5%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
粘性の高いポリマー(高分子凝集剤)水溶液を被処理物に噴霧することにより、被処理物中の微粉分の表面にポリマーが付着し、微粉同士が粒状に集塊する。この状態で更に加熱、撹拌混合されることにより、水分が蒸発して残留したポリマー成分が互いに架橋することにより、被処理物は造粒成形される。
【0018】
本発明の熟成コンポスト様物の製造方法によれば、このような凝集、造粒効果を発揮するポリマーを、熱処理工程の降温工程で被処理物に添加することにより、こげつきを引き起こすことなく、その凝集、造粒効果を有効に発揮させて微粉分の少ない熟成コンポスト様物を製造することができる。
【0019】
本発明では、ポリマーは、熱処理工程の降温過程において、被処理物の温度が100〜120℃となった時点で添加することが、こげつきを防止した上で、その凝集、造粒効果を有効に発揮させる上で好ましく、特に、ポリマーは、ポリマー水溶液として、被処理物に対するポリマー添加量が0.1〜0.2重量%で、ポリマー添加直後の被処理物の含水率が20〜30重量%となるように添加することが好ましい。また、ポリマー添加後の被処理物を更に75〜90℃で10〜30分撹拌混合し、含水率12〜14重量%の熟成コンポスト様物とすることにより、残留水分を抑えた上で微粉分の少ない熟成コンポスト様物を得ることができ、好ましい。
【0020】
本発明によれば、250μm篩下率(目開き250μmの篩で篩分けした場合、篩下の微粉分の、篩分けに供したサンプル全体に対する重量割合)が1.5%以下の著しく微粉分の少ない熟成コンポスト様物を製造することができ、これにより、従来の熱処理後の篩分け処理を不要とし、篩分設備、篩下の微粉分の搬送設備を不要とし、また、微粉分を再度加熱乾燥及び熱処理するためのエネルギーコストを削減することができる。即ち、従来の微粉分の加熱乾燥及び熱処理のエネルギーコスト10〜15%を削減することができる。また、製品の歩留りは100%となる。
【0021】
従って、本発明によれば、微粉分が少なく、飛散、発塵等の問題のない、取り扱い性に優れた熟成コンポスト様物を歩留り良く、低コストで効率的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の熟成コンポスト様物の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明における有機性廃棄物からの熟成コンポスト様物の製造では、有機性廃棄物を加熱乾燥し、この乾燥処理により有機性廃棄物中の水分が徐々に蒸発し、含水率が1%未満となって乾燥が完了した後も、更に有機性廃棄物を好ましくは100〜200℃の温度で加熱を継続する。
【0024】
有機性廃棄物の加熱乾燥で水分が蒸発する過程において、水分が残留している間は、被処理物である有機性廃棄物の温度は100℃未満であるが、水分が完全に蒸発除去された後も加熱を継続すると、被処理物の温度は100℃以上に上昇する。この状態で被処理物を例えば3〜6時間程度維持すると、被処理物中の有機物量が減少し始める。有機物が3〜30%程度減少するまで加熱を継続すると臭気の殆どない熟成コンポスト様物を得ることができる。
【0025】
この加熱を終了して製品とするに好適な有機物の減少率は、処理する有機性廃棄物の種類によって異なり、例えば、活性汚泥の余剰汚泥の場合には10〜30%と比較的減少率が多く、消化汚泥の場合には3〜10%と比較的減少率が小さい。
【0026】
加熱乾燥工程が完了した後の熱処理時の加熱温度は好ましくは100〜200℃、より好ましくは150〜200℃とする。この温度範囲であれば、水分は完全に蒸発除去され、臭気成分も揮散、分解される一方で、有機物は炭化せず、良好な熟成コンポスト様物を得ることができる。
【0027】
本発明において、加熱乾燥及び熱処理に要する時間は、処理する原料の性状、及び乾燥容器への投入形態や加熱装置の仕様、運転条件等によっても異なるが通常の場合、加熱乾燥時間は10〜15時間、その後の熱処理時間は3〜6時間程度である。
【0028】
得られた製品は、臭気が殆どなく、有機肥料成分が十分に残留し、塩分もさほど高くはなく、かつ熟成コンポスト類似の良好なものである。
【0029】
本発明においては、このような熟成コンポスト様物の製造に当たり、加熱乾燥後の熱処理工程の降温過程において、被処理物にポリマーを添加してその温度条件下に撹拌混合する。即ち、熱処理工程は、加熱乾燥後100〜200℃、好ましくは150〜200℃の熱処理温度にまで上昇する昇温過程と、この熱処理温度で所定時間保持する保持過程と、その後の降温過程とを含む。本発明においては、この保持過程の温度から徐々に降温する過程において、好ましくは被処理物の温度が100〜120℃、特に100〜105℃に低下した時点でポリマーを添加することが好ましい。ポリマー添加時の被処理物の温度が高過ぎるとポリマーのこげつきによる凝集、造粒効果を十分に発揮させることができず、少な過ぎてもポリマーの架橋を十分に行えず、強度の高い造粒物を得ることができない。
【0030】
このポリマーとしては、天然ポリマー、合成ポリマーのいずれでも良く、両者を併用しても良い。天然ポリマーとしては、デンプン、キトサン等を用いることができる。また、合成ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドのようなノニオン性ポリマー、ポリアクリル酸、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体のようなアニオン性ポリマー、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとの共重合体のようなカチオン性ポリマー、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸とアクリルアミドとの共重合体のような両性ポリマー等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。特に、後述の実施例1に示すような排水処理設備に併設された熟成コンポスト様物製造設備では、排水処理における余剰汚泥の凝集、脱水処理のためのポリマーと同一のものを用いることが好ましい。
【0031】
ポリマーは、被処理物への噴霧、添加の点から、水溶液、分散液、エマルション等の液状で用いるのが好ましく、特にポリマー濃度は0.1〜1重量%、特に0.5〜1重量%程度のポリマー水溶液として添加することが好ましい。このポリマー濃度が高過ぎると粘性が高くなりすぎ、被処理物に対して均一に噴霧することが困難であり、低過ぎると水分が多くなることにより、その後の熱処理時間が多くなり、好ましくない。ポリマーが分散液やエマルションの場合、そのまま又は水溶液として用いることができる。
【0032】
被処理物へのポリマーの添加は、熱処理用の加熱容器内の被処理物に十分に均一に添加するために、上述のポリマー水溶液を加熱容器内に設けた噴霧ノズルより噴霧して行うことが好ましい。また、ポリマー添加時の被処理物に対するポリマー添加量が0.1〜0.2重量%で、ポリマー添加直後の被処理物の含水率が20〜30重量%となるように行うことが好ましい。ポリマー添加量が少な過ぎると十分な凝集、造粒効果を得ることができない。ポリマー添加量は、多い程得られる熟成コンポスト様物中の微粉分を低減することができるが、過度に多くても経済的に不利である。また、ポリマー添加直後の被処理物の含水率は、添加するポリマー水溶液の水分量に関係するが、上述の含水率程度であれば、ポリマー添加後の熱処理の負荷を過度に高めることなく、ポリマー水溶液を被処理物に添加して良好な凝集、造粒効果を得ることができる。
【0033】
熱処理工程の降温過程で、被処理物にポリマーを添加した後は、更に75〜90℃程度の温度で10〜30分程度加熱しつつ撹拌混合することが好ましい。このポリマー添加後の加熱が十分でないと、得られる熟成コンポスト様物の含水率が高くなり、製品重量が増し、好ましくない。逆に、ポリマー添加後の加熱を過度に行うと、得られる熟成コンポスト様物の含水率が低くなり過ぎ、再び微粉発生の問題が発生する。
【0034】
本発明では、ポリマー添加後に適度な加熱乾燥を行うことにより、含水率12〜14重量%の熟成コンポスト様物を製造することが、含水による重量の増加を抑えた上で、微粉分の少ない熟成コンポスト様物を得る上で好ましい。
【0035】
このようにして熱処理工程の降温過程で被処理物にポリマーを添加して更に加熱、撹拌、混合することにより、本発明では、250μm篩下率が1.5%以下、特に1.0%以下の熟成コンポスト様物を製造することが好ましく、これにより、従来必要とされていた熟成コンポスト様物の篩分処理、篩下分の再処理を不要として、微粉分が少なく取り扱い性に優れた熟成コンポスト様物を高い歩留りで低コストに製造することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実験例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0037】
実験例1
ポリマーを添加せずに得られた製品の熟成コンポスト様物(排水処理で得られた脱水ケーキを13時間加熱乾燥し、温度が100℃に上昇した後も更に150〜160℃で4時間熱処理して得られた熟成コンポスト様物を、250μmの篩で篩分けすることにより微粉分を除去した熟成コンポスト様物)に、篩分工程で得られた篩下分の微粉を20重量%混合して供試サンプルを調製した。この供試サンプルの250μm篩下率は37重量%である。
【0038】
この供試サンプルを加熱下、排水処理工程で余剰汚泥の凝集、脱水のために用いたポリマー(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとのモル比7:3の共重合体)と同一のポリマーの水溶液を噴霧して更に加熱、撹拌混合する際の処理条件を種々変え、処理済サンプルの250μm篩下率を調べる実験を行った。
【0039】
用いたポリマー水溶液のポリマー濃度、供試サンプルに対するポリマー添加率、ポリマー添加後のサンプルの水分量、ポリマー添加後の加熱条件等と、処理済サンプルの含水率及び250μm篩下率は表1に示す通りであった。
【0040】
また、サンプルに対するポリマー添加率と250μm篩下率との関係を図2に、処理済サンプルの含水率と250μm篩下率との関係を図3に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
これらの結果から、次のことが明らかである。
(1) ポリマー水溶液のポリマー濃度は0.4〜1重量%、特に0.5〜0.7重量%とすることが好ましい。
(2) サンプルに対するポリマー添加量は、0.1〜0.2重量%で、ポリマー添加直後の含水率は10〜30重量%が好ましい。
(3) ポリマー添加時のサンプル温度は100〜105℃であることが好ましい。
(4) ポリマー添加後の処理条件は75〜90℃で10〜30分が好ましい。
(5) 処理後のサンプルの含水率は12〜14%が好ましい。
【0043】
実施例1
図1に示す農業集落排水処理設備に併設された熟成コンポスト様物製造設備により、本発明に従って熟成コンポスト様物の製造を行った。
【0044】
図1において、1は排水が流入するオキシデーションディッチ処理槽であり、このオキシデーションディッチ処理槽1の処理水は最終沈殿池2に導入されて固液分離され、上澄水は滅菌装置3で滅菌された後放流される。最終沈殿池2の分離汚泥は一部が返送汚泥としてオキシデーションディッチ処理槽1に返送され、残部が余剰汚泥として凝集槽4に送給される。汚泥はこの凝集槽4でポリマー溶解槽5からのポリマー水溶液が添加されて凝集処理され、凝集汚泥は脱水機6で脱水処理され、脱水濾液は排水と共に処理される。脱水機6からの脱水ケーキは、ベルトコンベア7で間接加熱装置8に送給され、加熱乾燥及び熱処理され、得られた熟成コンポスト様物はベルトコンベア9で製品ホッパー10に送給され、計量、袋詰されて製品として出荷される。
【0045】
間接加熱装置8は、加熱媒体(熱媒油)が循環するように、熱媒油ジャケット11が設けられ、2重壁構造とされた加熱容器12の循環路に熱媒油13を循環させて、内部の被処理物14を間接加熱するものである。この熱媒油13は熱媒油ボイラ20で加熱されて加熱容器12の循環路を循環する。加熱容器12内の上部にはポリマー溶解槽5からのポリマー水溶液の噴霧ノズル15が設けられている。脱水ケーキは加熱容器12の上部投入口12Aから投入され、撹拌装置16の回転軸16Aの回転により撹拌羽根16Bで撹拌されると共に、熱媒油13で加熱乾燥及び熱処理され、製品の熟成コンポスト様物は加熱容器12の底部出口12Bから取り出される。
【0046】
このような間接加熱装置8で脱水ケーキを加熱する場合、熱媒油13の温度を150〜200℃に維持すると、乾燥終了前は100℃未満の被処理物14が乾燥完了後は150〜160℃に維持され、良好な加熱が行われる。なお、このような処理においては、揮発性有機物を含む排ガスが発生するが、この排ガスは、排気口(図示せず)から取り出し、別途処理を行う。
【0047】
本実施例では、この間接加熱装置8で200℃の熱媒油により脱水ケーキを加熱乾燥した後、被処理物14を160℃まで昇温し、この温度で3時間保持した。この時点では加熱容器12内の被処理物14の大部分は粒状化しているが、一部は摩耗により微粉化していた。
【0048】
この160℃の保持過程後の降温過程において、被処理物14の温度が100℃に低下したときに、撹拌を継続しつつポリマー溶解槽5の0.5重量%ポリマー水溶液(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとのモル比7:3の共重合体)を被処理物に対するポリマー添加量が0.1重量%、添加直後の被処理物の含水率が20重量%となるように噴霧ノズル15から噴霧し、更に70〜90℃で10分撹拌下加温して製品を得た。
【0049】
得られた製品の含水率は14重量%、250μm篩下率は0.6重量%であり、ポリマーを噴霧しない場合の250μm篩下率5〜10重量%に対して微粉分を大幅に低減することができた。得られた製品の250μm篩下率は、有機質肥料としての使用上、何ら問題となるものではないことから、これを篩分処理することなく、そのまま製品化することができた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1における処理工程を示す系統図である。
【図2】実験例1におけるサンプルに対するポリマー添加率と250μm篩下率との関係を示すグラフである。
【図3】実験例1における処理済サンプルの含水率と250μm篩下率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 オキシデーションディッチ処理槽
2 最終沈殿池
3 滅菌装置
4 凝集槽
5 ポリマー溶解槽
6 脱水機
7,9 ベルトコンベア
8 間接加熱装置
10 製品ホッパー
11 熱媒油ジャケット
12 加熱容器
13 熱媒油
14 被処理物
15 噴霧ノズル
16 撹拌装置
20 熱媒油ボイラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を加熱乾燥した後、熱処理することにより熟成コンポスト様物を製造する方法において、
該加熱乾燥後の熱処理工程が昇温過程とその後の降温過程とを有し、
該降温過程において、被処理物にポリマーを添加して撹拌混合することを特徴とする熟成コンポスト様物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記降温過程において、前記被処理物の温度が100〜120℃となった時点でポリマーを添加することを特徴とする熟成コンポスト様物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ポリマーの水溶液を、前記被処理物に対するポリマー添加量が0.1〜0.2重量%で、ポリマー添加直後の被処理物の含水率が20〜30重量%となるように添加することを特徴とする熟成コンポスト様物の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ポリマーを添加した被処理物を75〜90℃で10〜30分撹拌混合することを特徴とする熟成コンポスト様物の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、製造された熟成コンポスト様物の含水率が12〜14重量%であることを特徴とする熟成コンポスト様物の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、製造された熟成コンポスト様物中の250μm篩下率が1.5%以下であることを特徴とする熟成コンポスト様物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−89304(P2006−89304A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273633(P2004−273633)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】