熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置
【課題】磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置を提供する。
【解決手段】熱アシスト磁気ヘッド21は、磁気ディスク10に対向する媒体対向面S1及び媒体対向面S1と対向する背面32aを有すると共に、媒体対向面S1と背面32aとの対向方向に沿って延在する光導波路35と、記録ヘッド部34とを有する磁気ヘッド部を備える。光導波路35は、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコア部35aを有する。コア部35aは、背面32aに露出していない。
【解決手段】熱アシスト磁気ヘッド21は、磁気ディスク10に対向する媒体対向面S1及び媒体対向面S1と対向する背面32aを有すると共に、媒体対向面S1と背面32aとの対向方向に沿って延在する光導波路35と、記録ヘッド部34とを有する磁気ヘッド部を備える。光導波路35は、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコア部35aを有する。コア部35aは、背面32aに露出していない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う熱アシスト磁気ヘッド、この熱アシスト磁気ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)、及び、HGAを備えたハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気抵抗(MR:Magneto Resistive)効果素子等の磁気検出素子と電磁コイル素子等の磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KUV/kBTで与えられる。ここで、KUは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kBはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKUV/kBTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKUを大きくすることが考えられるが、このKUの増加は、磁気記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保磁力がこの書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると、書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する方法として、KUの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に磁気記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0006】
このような熱アシスト磁気ヘッド記録装置として、特許文献1〜2及び非特許文献1には、磁界を発生する磁気記録素子を備えたスライダとは離れた位置に半導体レーザ等の光源を設け、この光源からの光を光ファイバやレンズ等を介してスライダの媒体対向面まで導く構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、スライダの側面に磁気記録素子及び光源を集積した熱アシスト磁気ヘッドや、スライダの媒体対向面に磁気記録素子及び光源を集積した熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、電磁コイル素子に対して、磁気ヘッドの積層方向(ビット長方向)に近接した位置に光導波路を設けた熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。この構成においては、発光素子の出射光を光導波路内に導入し、媒体対向面内にある光導波路の光出射面から出射させて、磁気記録媒体を局所的に加熱する。続いて、局所的に加熱され保磁力が低下している磁気記録媒体の局所領域に対して、電磁コイル素子によって書き込み磁界を印加して書き込みを行う。
【特許文献1】特開平10−162444号公報
【特許文献2】特開2001−255254号公報
【特許文献3】特開2004−158067号公報
【特許文献4】特開2006−185548号公報
【非特許文献1】ShintaroMiyanishi, et al., “Near-Field Assisted Magnetic Recording”, IEEE Transactionson Magnetics, 2005, Vol.41, No.10, pp.2817-2821
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ところで、熱アシスト磁気ヘッドにおいて高密度の書き込みを実現するためには、磁気記録媒体を十分に加熱して、磁気記録媒体の保磁力を十分に小さくすることが要求される。そして、磁気記録媒体を十分に加熱するためには、光導波路からの出射光の強度が十分大きい必要がある。
【0011】
そこで、本発明者等は、光導波路からの出射光の強度に関して鋭意研究を行った。その結果、マルチモードとし、周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有する光導波路を用いた場合、出射光の強度がコアの長さに依存して変化するという新たな事実を見出すに至った。つまり、磁気記録媒体を加熱して磁気記録媒体の保磁力を十分に小さくするためには、光導波路からの出射光の強度が最も大きくなるようにコアの長さを極めて精密に設定することが望ましいこととなる。
【0012】
上記の研究結果を踏まえ、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドは、磁気記録媒体に対向する第1媒体対向面及び第1媒体対向面と対向する第1背面を有すると共に、第1媒体対向面と第1背面との対向方向に沿って延在する光導波路と、電磁変換素子とを有する磁気ヘッド部を備え、光導波路は、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有し、コアは、第1背面に露出していない。
【0013】
ところで、磁気ヘッド部の第1背面を形成する際に、第1背面となる側において既に光導波路のコアが外部に露出している場合を考える。このとき、第1背面を形成するためにラッピング加工(研磨加工)を行うとコアも研磨されてしまうので、ラッピング加工の加工精度が不十分であるとコアを所望の長さにすることが困難となる。コアの長さの制御のために、媒体対向面に対して垂直方向における磁気抵抗効果素子の長さであるMRハイトを制御する際に用いられる電気ラッピングガイド(ELG:Electric Lapping Guide、抵抗ラッピングガイド(RLG:Resistance Lapping Guide)とも称される)を磁気ヘッド部の第1背面となる側に設けることも考えられるが、磁気ヘッド部の製造工程が複雑となりコストの増大に繋がってしまう。
【0014】
しかしながら、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドでは、光導波路のコアが第1背面に露出していない。すなわち、磁気ヘッド部の第1背面が形成される前の時点においても、第1背面となる側において光導波路のコアが外部に露出していない。そのため、第1背面の形成の際に、第1背面側におけるコアの端部が加工されていない。従って、電気ラッピングガイドを用いたラッピング加工やフォトリソグラフィ等によって第1媒体対向面側におけるコアの端部が精度よく加工されていれば、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有する光導波路からの出射光の強度を最も大きくすることができる。その結果、磁気記録媒体が十分に加熱されて磁気記録媒体の保磁力が十分に小さくなるので、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能となる。なお、光導波路のコアは第1背面に露出していないものの、光は、第1背面とコアの端面との間を伝搬し、コア内を伝搬した後、第1媒体対向面側におけるコアの端面から出射される。
【0015】
好ましくは、コアは、第1媒体対向面に露出している。このようにすると、第1媒体対向面側におけるコアの端部が第1媒体対向面に露出していない場合と比較して、出射光の強度がより大きな状態で出射光が磁気記録媒体に照射されることとなる。そのため、磁気記録媒体をより十分に加熱することが可能となる。
【0016】
より好ましくは、第1媒体対向面及びコアのうち第1媒体対向面に露出している端面が、2μm以下の厚さのダイヤモンドライクカーボンによって覆われている。
【0017】
好ましくは、磁気記録媒体に対向する第2媒体対向面及び第2媒体対向面と対向する第2背面を有するスライダ基板を更に備え、磁気ヘッド部は、当該磁気ヘッド部のうち第1媒体対向面及び第1背面以外の部分において、スライダ基板のうち第2媒体対向面及び第2背面以外の部分に配置され、スライダ基板の第2背面が、磁気ヘッド部の第1背面よりも外方に向けて突出している。このようにすると、光源を支持する光源支持基板をスライダ基板の第2背面に設けたときに、光源のうち光が出射される出光端を、スライダ基板の第2背面よりも磁気ヘッド部寄りとなるようにすることが可能となる。
【0018】
より好ましくは、光が出射される出光端を有する光源と、スライダ基板の第2背面に設けられた光源支持基板とを更に備え、光源は、出射した光が光導波路に導入されると共に出光端がスライダ基板の第2背面よりも磁気ヘッド部寄りとなるように、光源支持基板に支持されている。
【0019】
ところで、光は、進行するにつれて進行方向に対し交差する方向に拡がる性質を有している。そのため、光源の出光端が第2背面よりも磁気ヘッド部から離れた側に位置している場合には、光源から出射された光が光導波路に到達する前に光源支持基板において散乱してしまうことがある。このとき、磁気記録媒体の加熱が十分になされない虞がある。
【0020】
しかしながら、上記のような構成を有する熱アシスト磁気ヘッドでは、光が光源支持基板において散乱することがないので、磁気記録媒体の加熱を十分に行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るヘッドジンバルアセンブリは、上記のいずれかの熱アシスト磁気ヘッドと、熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションとを備える。
【0022】
また、本発明に係るハードディスク装置は、上記のヘッドジンバルアセンブリと、媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見やすさのため、それぞれ任意となっている。
【0025】
[1]ハードディスク装置の構成
まず、図1を参照して、ハードディスク装置1の構成について説明する。ハードディスク装置1は、スピンドルモータ11の回転軸の周りを回転する複数の磁気ディスク(磁気記録媒体)10と、熱アシスト磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置12と、この熱アシスト磁気ヘッド21による書き込み動作及び読み出し動作を制御すると共に、熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発光させる光源であるレーザダイオード40を制御するための記録再生及び発光制御回路13とを備えている。
【0026】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)15によってピボットベアリング軸16を中心に揺動可能であり、ピボットベアリング軸16に沿った方向に積層されている。各駆動アーム14の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17が取り付けられている。各HGA17には、熱アシスト磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。熱アシスト磁気ヘッド21において、磁気ディスク10の表面に対向する面が媒体対向面(エアベアリング面(ABS:Air Bearing Surface)ともいう)である。なお、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び熱アシスト磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
【0027】
[2]ヘッドジンバルアセンブリの構成
続いて、図2を参照して、HGA17の構成について説明する。HGA17は、サスペンション20の先端部に熱アシスト磁気ヘッド21が固着されて構成されている。サスペンション20は、主として、ロードビーム200と、ロードビーム200上に固着されて支持された、弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に形成され、リード導体及びリード導体の両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203と、フレクシャ201の先端に板バネ状に形成されたタング部204とによって構成されている。なお、HGA17におけるサスペンション20は、上記した構成に限定されるものでない。また、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
【0028】
[3]熱アシスト磁気ヘッドの構成
続いて、図3〜図8を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の構成について説明する。熱アシスト磁気ヘッド21は、スライダ基板220及びデータ信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッド部32を有するスライダ22と、光源支持基板230及び熱アシスト磁気記録用の光源となるレーザダイオード(発光素子)40を有する光源ユニット23とを備える。スライダ基板220と光源支持基板230とは、スライダ基板220の背面(第2背面)2201と光源支持基板230の接着面2300とが接面された状態で、UV硬化型エポキシ樹脂やUV硬化型アクリル樹脂等の接着剤44によって固着されている(図4参照)。
【0029】
ここで、スライダ基板220の背面2201は、スライダ22の媒体対向面S2とは反対側に位置する面(媒体対向面S2と対向する面)である。また、光源支持基板230の底面2301は、エポキシ樹脂等の接着剤によって、フレクシャ201のタング部204に固着されている。
【0030】
[3.1]スライダ
スライダ22が有するスライダ基板220は、図3に示されるように、板状を呈している。スライダ基板220の媒体対向面S2は、熱アシスト磁気ヘッド21が適切な浮上量を得ることができるよう、所定形状に加工されている。スライダ基板220は、導電性のアルティック(Al2O3・TiC)等によって形成することができる。
【0031】
スライダ22が有する磁気ヘッド部32は、図3及び図4に示されるように、媒体対向面S2及び背面2201と隣り合うと共にスライダ基板220の媒体対向面S2に対して略垂直な側面である集積面2202(つまり、スライダ基板220のうち媒体対向面S2及び背面2201以外の面)に設けられている。本実施形態において、磁気ヘッド部32は、磁気ヘッド部32の媒体対向面(第1媒体対向面)S1及びスライダ基板220の媒体対向面(第2媒体対向面)S2が同一の平面上に位置すると共に、磁気ヘッド部32の背面(第1背面)32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出した状態で、スライダ基板220に支持されている。ここで、背面32aは、磁気ヘッド部32の媒体対向面S1とは反対側に位置する面(媒体対向面S2と対向する面)である。なお、図示していないが、保護膜として、厚さが2μm以下のダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)が媒体対向面S1,S2を覆うように設けられていると好ましい。
【0032】
磁気ヘッド部32は、MR素子332を有する読取ヘッド部33と、書き込み用の誘導型の電磁変換素子としての記録ヘッド部34と、読取ヘッド部33と記録ヘッド部34との間を通して設けられている光導波路35と、磁気ディスク10の記録層部分を加熱するための近接場光を発生させる近接場光発生部(プラズモン・プローブ)36と、これらの読取ヘッド部33、記録ヘッド部34、光導波路35及び近接場光発生部36を覆うように集積面上に形成された絶縁層38とを備える。
【0033】
読取ヘッド部33は、図4に示されるように、スライダ基板220上に、下部電極を兼ねる下部磁気シールド層330と、MR素子332と、上部電極を兼ねる上部磁気シールド層332とが、この順で積層されて構成されている。また、MR素子332のトラック幅方向の両側には、絶縁層38を介して、硬磁性材料からなる一対のバイアス印加層HM(図6参照)が形成されている。
【0034】
下部磁気シールド層330及び上部磁気シールド層334は、NiFe、CoFeNi、CoFe、FeN、FeZrN等の軟磁性材料からなり、不要な外部磁界をMR素子332が感知するのを防止する。下部磁気シールド層330及び上部磁気シールド層334は、フレームめっき法を含むパターンめっき法等を用いて形成することができ、これらの厚さとしては、例えば0.5μm〜3μm程度に設定することができる。
【0035】
MR素子332は、フリー層を含む多層構造であり(図示せず)、媒体対向面S1に露出するように媒体対向面S1側に配置されている。MR素子332は、磁気抵抗効果を利用して、磁気ディスク10から入力される磁界の変化を検出し、磁気ディスク10に記録されている磁気情報を読出す。なお、MR素子332の代わりに、磁気抵抗変化率の高い巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magneto Resistive)素子、異方性磁気抵抗効果を利用したAMR(Anisotropy Magneto Resistive)素子、トンネル接合で生じる磁気抵抗効果を利用したTMR(Tunnel Magneto Resistive)素子、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR素子等を利用してもよい。
【0036】
記録ヘッド部34は、主磁極層340と、ギャップ層341aと、薄膜コイル絶縁層341bと、薄膜コイル342と、補助磁極層344とを有している。主磁極層340は、薄膜コイル342によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスク10の記録層まで収束させながら導くための導磁路であり、薄膜コイル342の螺旋中心から媒体対向面Sに向かうように延びている。主磁極層340は、媒体対向面S側に位置すると共に媒体対向面Sに露出する磁極端部340aを含んでいる。薄膜コイル342に通電すると、磁界が主磁極層340の磁極端部340aまで導かれ、その先端から書き込み磁界が発生することとなる。
【0037】
磁極端部340aのトラック幅方向の幅及び積層方向(図4の左右方向)の厚みは、他の部分に比べて小さくすることが好ましい。この結果、高記録密度化に対応した微細で強い書き込み磁界を発生可能となる。具体的には、図5に示されるように、リーディング側すなわちスライダ基板220側の辺の長さがトレーリング側の辺の長さよりも短い逆台形となるように磁極端部340aの先端を先細にすることが好ましい。すなわち、磁極端部340aの端面には、ロータリーアクチュエータでの駆動により発生するスキュー角の影響によって隣接トラックに不要な書き込み等を及ぼさないように、ベベル角θが付けられている。ベベル角θの大きさは、例えば、15°程度である。書き込み磁界が主に発生するのはトレーリング側の長辺近傍であり、磁気ドミネント記録方式の場合にはこの長辺の長さによって書き込みトラックの幅が決定される。
【0038】
ここで、主磁極層340は、Ni、Fe及びCoのうちいずれか二つの元素若しくは三つの元素からなる合金、又は、これらを主成分として所定の元素が添加された合金等によって構成されていると好ましい。主磁極層340は、フレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。磁極端部340aの厚さとしては、例えば0.01μm〜0.5μm程度に設定することができ、主磁極層340の磁極端部340a以外の部分における厚さとしては、例えば0.5μm〜3.0μm程度に設定することができる。トラック幅は、例えば100nm程度に設定することができる。
【0039】
補助磁極層344は、媒体対向面S1と離れた側の端部344aにおいて主磁極層340と磁気的に接続されている。補助磁極層344の媒体対向面S1側の端部は、補助磁極層344の他の部分よりも層断面が広いトレーリングシールド部を形成している。補助磁極層344の媒体対向面S1側の端部は、媒体対向面S1に露出している。また、ギャップ層341a及び薄膜コイル絶縁層341bが主磁極層340と補助磁極層344との間に介在しているため、補助磁極層344の媒体対向面S1側の端部は、所定の間隔を有して主磁極層340の磁極端部340aと対向している。
【0040】
補助磁極層344は、Ni、Fe及びCoのうちいずれか二つの元素若しくは三つの元素からなる合金、又は、これらを主成分として所定の元素が添加された合金等によって構成されていると好ましい。補助磁極層344は、フレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。補助磁極層344の厚さとしては、例えば0.5μm〜5μm程度に設定することができる。
【0041】
ギャップ層341aは、主磁極層340と薄膜コイル342とを電気的に絶縁するため、Al2O3やAlN等によって構成されており、スパッタリング法、CVD法等を用いて形成することができる。ギャップ層341aの厚さとしては、例えば0.01μm〜0.5μm程度に設定することができる。
【0042】
薄膜コイル絶縁層341bは、薄膜コイル342と補助磁極層344とを電気的に絶縁するため、アルミナや有機絶縁材料であるレジスト等によって構成されている。薄膜コイル絶縁層341bの厚さとしては、例えば0.1μm〜5μm程度に設定することができる。
【0043】
薄膜コイル342は、補助磁極層344の端部344aの周りに導線が巻回されたスパイラル状に構成されている。薄膜コイル342は、Cu等によって構成することができる。薄膜コイル342の厚さとしては、例えば0.5μm〜3μm程度に設定することができる。
【0044】
光導波路35は、図4に示されるように、読取ヘッド部33と記録ヘッド部34との間に配置されており、集積面2202と平行となるように媒体対向面S1から背面32aまで延在している。光導波路35は、図4に示されるように、媒体対向面S1から背面32aの近傍まで延在するコア部(コア)35aと、媒体対向面S1側におけるコア35aの端面から背面32aまで延在する非コア部35bとによって構成されている。従って、コア部35aの媒体対向面S1側の端面(光導波路35の媒体対向面S1側の端面)は、媒体対向面S1に露出しており、レーザダイオード40によるレーザ光が出射される光出射面353となっている(図4及び図6参照)。また、非コア部35bの背面32a側の端面(光導波路35の光出射面353とは反対側の端面)は、背面32aに露出しており、レーザダイオード40によるレーザ光が入射される光入射面354となっている(図4及び図6参照)。なお、コア部35aの背面32a側の端面は背面32aに露出していないものの、レーザダイオード40からのレーザ光は、非コア部35bの内部(背面32aとコア部35aの背面32a側の端面との間)を伝搬し、コア部35a内を伝搬した後、光出射面353から出射される。
【0045】
コア部35aは、図6に示されるように、その大部分が略矩形の板状体を呈しているが、その媒体対向面S1側の端部のうちトラック幅方向の両角部分が面取りされている。そのため、コア部35aの媒体対向面S1側の端部は、媒体対向面S1側に向かうにつれてトラック幅方向における幅が小さくなっている。これにより、コア部35a(光導波路35)では、トラック幅方向において中央部分にレーザダイオード40によるレーザ光を集光することができるようになっている。なお、背面32aは、媒体対向面Sと略平行とされている。
【0046】
コア部35は、図5に示されるように、複数のコア35A1〜35A6,35B1〜35B6を有しており、コア35A1〜35A6とコア35B1〜35B6とは、交互に積層されている。コア35A1〜35A6は、SiONによって構成され、屈折率が1.80程度となるように設定されている。また、コア35A1〜35A6の厚さは、それぞれ400nm程度、300nm程度、250nm程度、200nm程度、150nm程度、100nm程度となるように設定されている。すなわち、コア35A1〜35A6は、記録ヘッド部34から読取ヘッド部33へと厚さの大きなものから順に並んでいる。
【0047】
一方、内部コア35B1〜35B6は、SiONによって構成され、屈折率がコア35A1〜35A6よりも低い1.72程度となるように設定されている。また、コア35B1〜35B6の厚さは、それぞれ50nm程度、100nm程度、150nm程度、200nm程度、250nm程度、350nm程度となるように設定されている。すなわち、コア35B1〜35B6は、記録ヘッド部34から読取ヘッド部33へと厚さの小さなものから順に並んでいる。
【0048】
図4に戻って、コア部35aは、光出射面353を除き、絶縁層38によって覆われている。絶縁層38は、コア部35aを構成しているコア35A1〜35A6,35B1〜35B6よりも屈折率が低い材料であるAl2O3やAlN等によって構成され、コア部35aのコア35A1〜35A6,35B1〜35B6に対するクラッドとして機能する。すなわち、絶縁層38の一部が非コア部35bとなっている。なお、この非コア部35bの媒体対向面S1に対して奥行方向における長さH(図6参照)は、0.5μm〜20μm程度に設定すると好ましい。
【0049】
このような構成を有する光導波路35にレーザダイオード40からレーザ光が入射すると、レーザ光は、コア部35a内において、レーザ光が進行するにつれて積層方向すなわち読取ヘッド部33から記録ヘッド部34へと向かう方向に偏向する(図7参照)。これは、このようなコア部35aの構造は、屈折率が読取ヘッド部33から記録ヘッド部34へと向かうにつれて高くなっている構造と同視でき、光は屈折率の低い方から高い方に偏向する性質を有しているためである。
【0050】
また、このような構成を有する光導波路35にレーザダイオード40からレーザ光が入射すると、コア部35a内において、レーザ光の強度が周期的に変化する(図7の(a)参照)。すなわち、コア部35aは、周期的に強度変調させるように(マルチモードとして)光を伝搬する。つまり、コア部35a(光導波路35)からの出射光の強度は、コア部35aの長さに依存して変化する。そのため、コア部35a(光導波路35)の光出射面353においてレーザ光の強度が最も大きくなるようにコア部35aの長さを決定することが好ましい。本実施形態に係るコア部35aにおいて、レーザ光の周期T1(図7の(a)参照)は27μm程度であり、レーザ光の強度が最も大きい部分の幅T2(図7の(a)参照)は6μm程度である。従って、コア部35aを所望の長さに設定するためには、±3μmの精度、好ましくは±1μmの加工精度が要求されることとなる。
【0051】
読取ヘッド部33と光導波路35との間には、下部シールド層330及び上部シールド層334と同様の材料によって形成された素子間シールド層148が配置されている。素子間シールド層148は、記録ヘッド部34において発生される磁界をMR素子332が感知しないように遮断して、MR素子332による読み出しの際の外来ノイズを抑制する役割を果たすものである。なお、読取ヘッド部33と光導波路35との間に、更に、バッキングコイル部が形成されていてもよい。
【0052】
近接場光発生部36は、図4〜図6に示されるように、光導波路35の光出射面353に配置された板状部材である。近接場光発生部36は、光出射面353のうち強度の大きなレーザ光が出射される部分(図5及び図7ではコア35A1の光出射面353における略中央部分)に位置しており、その端面が光出射面353に露出するようにコア35A1内に埋設されている。
【0053】
近接場光発生部36は、図5等に示されるように、媒体対向面Sから見て三角形状を呈しており、導電材料(例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rn若しくはIr、又は、これらの元素を組み合わせた合金)によって構成されている。近接場光発生部36の底辺36dは、スライダ基板220の集積面2202と平行、すなわちトラック幅方向と平行に配置されており、近接場光発生部36の底辺36dと向き合う頂点36vは、底辺36dよりも記録ヘッド部34の主磁極層340側に配置されている。ここで、近接場光発生部36の形状としては、底辺36dの両端の二つの底角が共に等しい二等辺三角形であると好ましい。
【0054】
このような近接場光発生部36にレーザダイオード40からのレーザ光が照射されると、近接場光発生部36を構成する金属内の電子がプラズマ振動し、その頂点36v近傍において電界の集中が生じて、その頂点36v近傍から磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に向けて近接場光が発生する。この近接場光の拡がりは、近接場光発生部36の頂点36v近傍の半径程度となるので、この頂点36vの半径をトラック幅以下とすれば、擬似的に出射光を回折限界以下にまで絞り込むことができる。
【0055】
図3に戻って、スライダ22が有する磁気ヘッド部32は、読取ヘッド部33の入出力端子にそれぞれ接続された一対の信号端子用の電極パッド371(図6も参照)と、記録ヘッド部34の両端にそれぞれ接続された一対の信号電極用の電極パッド373(図6も参照)と、ビアホール375aを介してスライダ基板220と電気的に接続されたグランド用の電極パッド375(図4も参照)とを更に備えている。これらの電極パッド371,373,375は、絶縁層38の露出面上に形成されている。なお、電極パッド375は、フレクシャ201の電極パッド274とボンディングワイヤ(図示せず)によって接続されている。そのため、電極パッド274によって、スライダ基板220の電位が例えばグランド電位に制御されることとなる。
【0056】
[3.2]光源ユニット
光源ユニット23が有する光源支持基板230は、図3に示されるように、板状を呈している。光源支持基板230は、図4に示されるように、アルミナ等によって形成された断熱層230aと、導電性のアルティック(Al2O3・TiC)等によって形成された導電体層230bとを有している。断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201と接着されており、この面が光源支持基板230の接着面2300とされている。この接着面2300と隣り合う側面である素子形成面2303上には、アルミナ等の絶縁材料によって形成された絶縁層41が設けられている。
【0057】
絶縁層41の表面で且つ媒体対向面Sと交差する面411上(スライダ基板220の集積面2202と平行な面411上)には、レーザダイオード40の駆動用の電極パッド47,48が形成されている(図3参照)。電極パッド47は、絶縁層41の面411の中央部においてトラック幅方向に延在している第1部分47aと、第1部分47aの端部から光源支持基板230の底面2301に向けて延在している第2部分47bとを有している。一方、電極パッド48は、絶縁層41の面411において電極パッド47と離間した位置に形成されており、絶縁層41の面411の中央部においてトラック幅方向に延在している第1部分48aと、第1部分48aの端部から光源支持基板230の底面2301に向けて延在している第2部分48bとを有している。そして、電極パッド47,48は、フレクシャ201の電極パッド247、248とリフロー半田によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0058】
また、電極パッド47は、図4に示されるように、絶縁層41内に設けられたビアホール47cによって光源支持基板230の導電体層230bと電気的に接続されている。そのため、電極パッド47によって、導電体層230bの電位を例えばグランド電位に制御することが可能となっている。なお、この電極パッド47は、ビアホール47cと共に、レーザダイオード40駆動時の熱を導電体層230b側に逃がすための熱伝導路としても機能する。
【0059】
電極パッド47、48は、例えば、TaやTi等によって形成された下地層と、当該下地層上に真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成されたAuやCu等の層とによって構成することができる。TaやTi等の下地層の厚さとしては、例えば10nm程度に設定することができ、AuやCu等の層の厚さとしては、例えば1μm〜3μm程度に設定することができる。
【0060】
光源ユニット23が有するレーザダイオード40は、図4に示されるように、Au−Sn等の導電性の半田材料からなる半田層42によって電極パッド47上に固着され、電極パッド47と電気的に接続されている。つまり、電極パッド47の一部は、レーザダイオード40によって覆われており、レーザダイオード40は、電極パッド47を介して、光源支持基板230に支持されている。より詳しくは、レーザダイオード40は、後述する出光端400から出射されたレーザ光が光導波路35に導入されるように、光源支持基板230に支持されている(図3及び図4参照)。
【0061】
また、レーザダイオード40は、出光端400がスライダ基板220の背面2201よりも磁気ヘッド部32寄りとなるように、光源支持基板230に支持されている(図3及び図4参照)。レーザダイオード40をこのように支持することが可能なのは、上述したように、磁気ヘッド部32の背面32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出した状態となっているためである。このようにすると、レーザダイオード40から出射されたレーザ光が光導波路35に到達する前に光源支持基板230において散乱することがなくなり、磁気ディスク10の加熱を十分に行うことができることとなる。
【0062】
レーザダイオード40は、通常、光学系ディスクストレージに使用されるものと同じ構造を有していてよく、例えば、図8に示されるように、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、*n−GaAs電流阻止層40hと、p−GaAsコンタクト層40iと、p電極40jとが順次積層された構造を有する。これらの多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するためのSiO2やAl2O3等からなる反射膜50,51が成膜されている。そして、一方の反射膜50には活性層40eに対応する位置に開口50aが設けられており、反射膜50が成膜されている面のうち開口50aに対応する領域が、レーザ光が放射される出光端400とされている。このようなレーザダイオード40においては、膜厚方向に電圧が印加されることにより、出光端400からレーザ光が出射される。
【0063】
出射されるレーザ光の波長λLは、例えば600nm〜650nm程度である。ただし、近接場光発生部36の金属材料に応じた適切な励起波長が存在することに留意しなければならない。例えば、近接場光発生部36としてAuを用いる場合、レーザ光の波長λLは、600nm近傍であることが好ましい。
【0064】
レーザダイオード40の大きさとしては、例えば、幅W40が200μm〜350μm、長さL40が250μm〜600μm、厚みT40が60μm〜200μm程度に設定することができる。ここで、レーザダイオード40の幅W40は、電流阻止層40hの対向端の間隔を下限として、例えば、100μm程度までに小さくすることができる。ただし、レーザダイオード40の長さは、電流密度と関係する量であり、それほど小さくすることはできない。いずれにしても、レーザダイオード40に関しては、搭載の際のハンドリングを考慮して、相当の大きさが確保されることが好ましい。
【0065】
また、レーザダイオード40は、ハードディスク装置1内の電源を使用することによって駆動することができる。実際、ハードディスク装置1は、通常、例えば2V程度の電源を備えており、この電圧はレーザ発振動作に十分な大きさである。また、レーザダイオード40の消費電力も、例えば、数十mW程度であるので、ハードディスク装置1内の電源で十分に賄うことができる。
【0066】
レーザダイオード40のn電極40aは、AuSn等の半田層42によって電極パッド47に固定されている。ここで、レーザダイオード40の出光端(光出射面)400は、図4の下向き(−Z方向)となっており(接着面2300と平行となっており)、光導波路35の光入射面354と対向している。実際にレーザダイオード40を固定する際には、例えば、電極パッド47の表面に厚さ0.7μm〜1μm程度のAuSn合金の蒸着膜を成膜し、レーザダイオード40を乗せた後、熱風ブロア下でホットプレート等によって200℃〜300℃程度までの加熱を行う。
【0067】
また、レーザダイオード40のp電極40jは、ボンディングワイヤによって電極パッド48と電気的に接続されている。なお、n電極40aがボンディングワイヤによって電極パッド48と電気的に接続され、p電極40jが半田層42によって電極パッド47に固定されるようにしてもよい。さらに、レーザダイオード40の光源支持基板230と接続される側を段差状に加工することによって、ボンディングワイヤを用いないで電極パッド48と電気的に接続することも可能である。
【0068】
ここで、上述したAuSn合金による半田付けをする場合、光源ユニット23を例えば300℃前後の高温に加熱することになるが、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21によれば、この光源ユニット23がスライダ22とは別に製造されるため、スライダ22の磁気ヘッド部32がこの高温の悪影響を受けずに済むようになっている。
【0069】
なお、レーザダイオード40及び電極パッド47,48の構成は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、レーザダイオード40は、GaAlAs系等、他の半導体材料を用いた他の構成のものであってもよい。また、レーザダイオード40と電極との半田付けに、他のろう材を用いて行うことも可能である。さらに、レーザダイオード40を、光源支持基板230上に直接半導体材料をエピタキシャル成長させることによって形成してもよい。
【0070】
[4]熱アシスト磁気ヘッドの回路構成
続いて、図9を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の回路構成について説明する。
【0071】
配線部材203を構成する配線の1つは、電極パッド247及び電極パッド47を介してレーザダイオード40のカソードに電気的に接続されており、別の配線は電極パッド248及び電極パッド48を介してレーザダイオード40のアノードに電気的に接続されている。電極パッド247,248間に駆動電流を供給するとレーザダイオード40が発光する。この光は、光導波路35及び媒体対向面Sを介して磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に照射される。
【0072】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド237、ボンディングワイヤBW及び電極パッド373を介して、記録ヘッド部34の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド237間に電圧を印加すると、記録ヘッド部34に通電が行われ、書き込み磁界が発生する。熱アシスト磁気ヘッド21では、レーザダイオード40から出射されたレーザ光は、光導波路35の光入射面354に入射して、媒体対向面Sに設けられた光出射面353から出射し、磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に照射される。このとき、媒体対向面Sに対向する磁気ディスク10の記録領域Rの温度が上昇し、記録領域Rの保磁力が一時的に低下する。従って、この保磁力の低下期間内に記録ヘッド部34に通電を行い、書き込み磁界を発生させることで、記録領域Rに情報を書き込むことができる。
【0073】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド238、ボンディングワイヤBW及び電極パッド371を介して読取ヘッド部33の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド238に電圧を印加すると読取ヘッド部33にセンス電流が流れる。記録領域Rに書き込まれた情報は、読取ヘッド部33にセンス電流を流すことで読み出すことができる。
【0074】
[5]熱アシスト磁気ヘッドを構成するスライダの製造方法
続いて、図10〜図15を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21を構成するスライダ22の製造方法について説明する。
【0075】
まず、図10に示されるように、アルティックからなるウエハ上に絶縁材料からなる下地層を形成して、スライダ基板220となるスライダ基板前駆体220’を形成する。続いて、スライダ基板前駆体220’上に、読取ヘッド部33となる読取ヘッド部前駆体33’、絶縁層38となる絶縁膜38a’及び素子間シールド層148となる素子間シールド層前駆体148’をそれぞれ形成する。続いて、この中間体上の全面を覆うようにコア35A1〜35A6,35B1〜35B6を構成する各材料を所定の厚さで且つ所定の順序で積層して、コア部35aとなるコア部前駆体35a’を形成する。このとき、同時に、媒体対向面S1となる側から見てコア35A1の光出射面353における略中央部分に位置するように、近接場光発生部36となる近接場光発生部前駆体36’を形成する。
【0076】
続いて、図11を参照して、次の工程を説明する。まず、コア部35aを形成しようとする領域を覆うように、コア部前駆体35a’上にレジスト膜Fを形成する。レジスト膜Fは、光又は電子線の照射によって重合するレジスト材料をコア部前駆体35a’の表面上に塗布し、光又は電子線を照射した後、現像処理を行うことによって形成される。レジスト膜Fを形成すると、レジスト膜Fが媒体対向面S1となる側から背面32aとなる側に向かう方向に延在するように、コア部前駆体35a’が覆われた状態となっている。より詳細には、図11に示されるように、背面32aとなる側におけるレジスト膜Fの端部が背面32aに到達していない状態となっている。
【0077】
ここで、本実施形態において、コア部35aの媒体対向面S1側の端部は、後述するように電気ラッピングガイドを用いたラッピング加工によって精密に加工されるので、コア部35aの媒体対向面S1側の端部の位置を考慮した上で背面32aとなる側におけるレジスト膜Fの端部の位置を決定することで、コア部35aを所望の長さに設定することができるようになる。次に、レジスト膜Fをマスクとして、露出している領域をコア部前駆体35a’の表面から絶縁膜38a’の表面までイオンミリング等によって除去する。
【0078】
続いて、図12を参照して、次の工程を説明する。まず、レジスト膜Fを残した状態で、スパッタリング法等で絶縁層38となる絶縁膜38bを中間体の全面に積層する。そして、レジスト膜Fを剥離してリフトオフを行い、レジスト膜F上の堆積材料を除去する。なお、絶縁膜38bは、光導波路35の非コア部35bの前駆体となっている。
【0079】
続いて、図13を参照して、次の工程を説明する。まず、中間体上に、絶縁層38となる絶縁膜38c及び記録ヘッド部34となる記録ヘッド部前駆体34’を公知の方法等によって形成する。そして、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)等によって、MR素子332及び近接場光発生部36の高さ(ハイト)を調整すると共にコア部35aの長さを調整するためのラッピング加工(研磨加工)を行う。このとき、媒体対向面S1,S2側となるラッピング面から媒体対向面S1,S2に対して奥行方向に向けてラッピングを行い、MR素子332の高さ及び近接場光発生部36の高さが所定の大きさになると共にコア部35aが所定の長さになったときにラッピングが終了する。なお、上述の工程において中間体内に電気ラッピングガイドを形成しておくことで、極めて高精度にMR素子332の高さ及び近接場光発生部36の高さを設定することができる。
【0080】
続いて、図14に示される工程では、磁気ヘッド部32の背面32aを形成する。具体的には、磁気ヘッド部32の背面32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出すると共にコア部35aの背面32a側の端部が背面32aから露出しないように、背面32a側から背面32aに対して奥行方向に向けて絶縁膜38a,38b,38cの一部を除去する。これにより、スライダ基板220に磁気ヘッド部32が搭載されたスライダ22が形成されることとなる(図15参照)。
【0081】
このとき、絶縁膜38a,38b,38cのエッチングレートがスライダ基板220のエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング溶液を用いたウエットエッチングにより、絶縁膜38a,38b,38cの一部を除去することができる。本実施形態では、絶縁膜38a,38b,38c(絶縁層38)がAl2O3やAlN等によって形成されており、スライダ基板前駆体220’(スライダ基板220)がアルティック等によって形成されているので、エッチング溶液として例えば水酸化ナトリウム溶液を用いることで、絶縁膜38a,38b,38c(絶縁層38)を選択的に除去することが可能となる。なお、ウエットエッチングの他、機械加工を行うことで絶縁膜38a,38b,38cの一部を除去するようにしてもよい。
【0082】
[6]作用
続いて、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21の作用について説明する。
【0083】
書き込み又は読み出し動作時には、熱アシスト磁気ヘッド21は、回転する磁気ディスク10の表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、読取ヘッド部33及び記録ヘッド部34の媒体対向面S側の端が磁気ディスク10と微小なスペーシングを介して対向することによって、データ信号磁界の感受による読み出しとデータ信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
【0084】
ここで、データ信号の書き込みの際、光源ユニット23から光導波路35を通って伝播してきたレーザ光が近接場光発生部36に到達し、近接場光発生部36から近接場光が発生する。この近接場光によって、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0085】
そして、熱アシスト磁気記録方式を採用することにより、高保磁力の磁気ディスク10に垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドを用いて書き込みを行い、記録ビットを極微細化することによって、例えば、1Tbits/inch2級の記録密度を達成することも可能となり得る。
【0086】
また、以上のような本実施形態においては、コア部35aが背面32aに露出していない。すなわち、磁気ヘッド部32の背面32aが形成される前の時点においても、背面32aとなる側においてコア部35aが外部に露出していない。そのため、背面32aの形成の際に、背面32a側におけるコア部35aの端部が加工されていない。従って、上記のように、電気ラッピングガイドを用いたラッピング加工によって媒体対向面S1側におけるコア部35aの端部が精度よく加工されていれば、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコア部35a(光導波路35)からの出射光の強度を最も大きくすることができる。その結果、磁気ディスク10が十分に加熱されて磁気ディスク10の保磁力が十分に小さくなるので、磁気ディスク10への高密度の書き込みを実現することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態においては、コア部35aの媒体対向面S1側の端面が媒体対向面S1に露出している。そのため、コア部35aの媒体対向面S1側の端面が媒体対向面S1に露出していない場合と比較して、出射光の強度がより大きな状態で出射光が磁気ディスク10に照射されることとなる。その結果、磁気ディスク10をより十分に加熱することが可能となっている。
【0088】
また、本実施形態においては、磁気ヘッド部32の背面32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出した状態で、磁気ヘッド部32がスライダ基板220に支持されており、出光端400がスライダ基板220の背面2201よりも磁気ヘッド部32寄りとなるように、レーザダイオード40が光源支持基板230に支持されている。そのため、レーザダイオード40から出射されたレーザ光が光導波路35に到達する前に光源支持基板230において散乱することがなくなり、磁気ディスク10の加熱を十分に行うことが可能となる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では近接場光発生部36が三角形状を呈していたが、頂点36vが平らになった台形状としてもよく、また、三角形状又は台形状の板を、その頂点同士または短辺同士が所定距離離間して対向するように一対配置した、いわゆる「蝶ネクタイ型」構造でも実施可能である。この「蝶ネクタイ型」構造においては、その中心部に非常に強い電界の集中が発生する。
【0090】
また、近接場光発生部36として、光導波路35の媒体対向面S側にレーザ光の波長よりも小さい微小な開口を設けてもよい。
【0091】
また、本実施形態では薄膜コイル342が1層設けられていたが、薄膜コイル342を2層以上設けてもよく、又は、ヘリカルコイルとしてもよい。
【0092】
また、断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201側に形成されていてもよく、全く設けなくても実施は可能である。
【0093】
また、光源ユニット23とスライダ22との接着に、UV硬化型接着剤以外の接着剤、例えば、レーザダイオード40と電極パッド47との接着に用いたAuSn等の半田層を用いても実施は可能である。
【0094】
また、保護膜として、媒体対向面S1,S2を覆うようにダイヤモンドライクカーボンを設けていたが、ダイヤモンドライクカーボンを設けなくてもよい。
【0095】
また、光導波路35からの出射光の強度を最も大きくすることができれば、コア部35aの媒体対向面S1側の端面が媒体対向面S1に露出していなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、ハードディスク装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、熱アシスト磁気ヘッドの媒体対向面が上方を向いた状態で示す、ヘッドジンバルアセンブリの斜視図である。
【図3】図3は、熱アシスト磁気ヘッドを示す斜視図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、媒体対向面から見た状態で示す、磁極端部及び光導波路の部分拡大図である。
【図6】図6は、熱アシスト磁気ヘッドの主要部を示す斜視図である。
【図7】図7の(a)は、光導波路にレーザ光を導入したときのシミュレーション結果を示す横断面図であり、図7の(b)は、光導波路にレーザ光を導入したときのシミュレーション結果を媒体対向面から見た状態で示す図である。
【図8】図8は、レーザダイオードを示す斜視図である。
【図9】図9は、熱アシスト磁気ヘッドの回路構成を示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドを構成するスライダを製造する一工程を示す図である。
【図11】図11は、図10の後続の工程を示す図である。
【図12】図12は、図11の後続の工程を示す図である。
【図13】図13は、図12の後続の工程を示す図である。
【図14】図14は、図13の後続の工程を示す図である。
【図15】図15は、図14の後続の工程を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1…ハードディスク装置、10…磁気ディスク(磁気記録媒体)、17…ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)、20…サスペンション、21…熱アシスト磁気ヘッド、22…スライダ、220…スライダ基板、2201…背面(第2背面)、2202…集積面、23…光源ユニット、230…光源支持基板、32…磁気ヘッド部、32a…背面(第1背面)、33…読取ヘッド部、34…記録ヘッド部(電磁変換素子)、340…主磁極層、340a…磁極端部、342…薄膜コイル、344…補助磁極層、35…光導波路、35a…コア部(コア)、36…近接場光発生部、38…絶縁層、40…レーザダイオード、S1…磁気ヘッド部の媒体対向面(第1媒体対向面)、S2…スライダ基板の媒体対向面(第2媒体対向面)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う熱アシスト磁気ヘッド、この熱アシスト磁気ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)、及び、HGAを備えたハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気抵抗(MR:Magneto Resistive)効果素子等の磁気検出素子と電磁コイル素子等の磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KUV/kBTで与えられる。ここで、KUは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kBはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKUV/kBTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKUを大きくすることが考えられるが、このKUの増加は、磁気記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保磁力がこの書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると、書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する方法として、KUの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に磁気記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0006】
このような熱アシスト磁気ヘッド記録装置として、特許文献1〜2及び非特許文献1には、磁界を発生する磁気記録素子を備えたスライダとは離れた位置に半導体レーザ等の光源を設け、この光源からの光を光ファイバやレンズ等を介してスライダの媒体対向面まで導く構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、スライダの側面に磁気記録素子及び光源を集積した熱アシスト磁気ヘッドや、スライダの媒体対向面に磁気記録素子及び光源を集積した熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、電磁コイル素子に対して、磁気ヘッドの積層方向(ビット長方向)に近接した位置に光導波路を設けた熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。この構成においては、発光素子の出射光を光導波路内に導入し、媒体対向面内にある光導波路の光出射面から出射させて、磁気記録媒体を局所的に加熱する。続いて、局所的に加熱され保磁力が低下している磁気記録媒体の局所領域に対して、電磁コイル素子によって書き込み磁界を印加して書き込みを行う。
【特許文献1】特開平10−162444号公報
【特許文献2】特開2001−255254号公報
【特許文献3】特開2004−158067号公報
【特許文献4】特開2006−185548号公報
【非特許文献1】ShintaroMiyanishi, et al., “Near-Field Assisted Magnetic Recording”, IEEE Transactionson Magnetics, 2005, Vol.41, No.10, pp.2817-2821
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ところで、熱アシスト磁気ヘッドにおいて高密度の書き込みを実現するためには、磁気記録媒体を十分に加熱して、磁気記録媒体の保磁力を十分に小さくすることが要求される。そして、磁気記録媒体を十分に加熱するためには、光導波路からの出射光の強度が十分大きい必要がある。
【0011】
そこで、本発明者等は、光導波路からの出射光の強度に関して鋭意研究を行った。その結果、マルチモードとし、周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有する光導波路を用いた場合、出射光の強度がコアの長さに依存して変化するという新たな事実を見出すに至った。つまり、磁気記録媒体を加熱して磁気記録媒体の保磁力を十分に小さくするためには、光導波路からの出射光の強度が最も大きくなるようにコアの長さを極めて精密に設定することが望ましいこととなる。
【0012】
上記の研究結果を踏まえ、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドは、磁気記録媒体に対向する第1媒体対向面及び第1媒体対向面と対向する第1背面を有すると共に、第1媒体対向面と第1背面との対向方向に沿って延在する光導波路と、電磁変換素子とを有する磁気ヘッド部を備え、光導波路は、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有し、コアは、第1背面に露出していない。
【0013】
ところで、磁気ヘッド部の第1背面を形成する際に、第1背面となる側において既に光導波路のコアが外部に露出している場合を考える。このとき、第1背面を形成するためにラッピング加工(研磨加工)を行うとコアも研磨されてしまうので、ラッピング加工の加工精度が不十分であるとコアを所望の長さにすることが困難となる。コアの長さの制御のために、媒体対向面に対して垂直方向における磁気抵抗効果素子の長さであるMRハイトを制御する際に用いられる電気ラッピングガイド(ELG:Electric Lapping Guide、抵抗ラッピングガイド(RLG:Resistance Lapping Guide)とも称される)を磁気ヘッド部の第1背面となる側に設けることも考えられるが、磁気ヘッド部の製造工程が複雑となりコストの増大に繋がってしまう。
【0014】
しかしながら、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドでは、光導波路のコアが第1背面に露出していない。すなわち、磁気ヘッド部の第1背面が形成される前の時点においても、第1背面となる側において光導波路のコアが外部に露出していない。そのため、第1背面の形成の際に、第1背面側におけるコアの端部が加工されていない。従って、電気ラッピングガイドを用いたラッピング加工やフォトリソグラフィ等によって第1媒体対向面側におけるコアの端部が精度よく加工されていれば、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有する光導波路からの出射光の強度を最も大きくすることができる。その結果、磁気記録媒体が十分に加熱されて磁気記録媒体の保磁力が十分に小さくなるので、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能となる。なお、光導波路のコアは第1背面に露出していないものの、光は、第1背面とコアの端面との間を伝搬し、コア内を伝搬した後、第1媒体対向面側におけるコアの端面から出射される。
【0015】
好ましくは、コアは、第1媒体対向面に露出している。このようにすると、第1媒体対向面側におけるコアの端部が第1媒体対向面に露出していない場合と比較して、出射光の強度がより大きな状態で出射光が磁気記録媒体に照射されることとなる。そのため、磁気記録媒体をより十分に加熱することが可能となる。
【0016】
より好ましくは、第1媒体対向面及びコアのうち第1媒体対向面に露出している端面が、2μm以下の厚さのダイヤモンドライクカーボンによって覆われている。
【0017】
好ましくは、磁気記録媒体に対向する第2媒体対向面及び第2媒体対向面と対向する第2背面を有するスライダ基板を更に備え、磁気ヘッド部は、当該磁気ヘッド部のうち第1媒体対向面及び第1背面以外の部分において、スライダ基板のうち第2媒体対向面及び第2背面以外の部分に配置され、スライダ基板の第2背面が、磁気ヘッド部の第1背面よりも外方に向けて突出している。このようにすると、光源を支持する光源支持基板をスライダ基板の第2背面に設けたときに、光源のうち光が出射される出光端を、スライダ基板の第2背面よりも磁気ヘッド部寄りとなるようにすることが可能となる。
【0018】
より好ましくは、光が出射される出光端を有する光源と、スライダ基板の第2背面に設けられた光源支持基板とを更に備え、光源は、出射した光が光導波路に導入されると共に出光端がスライダ基板の第2背面よりも磁気ヘッド部寄りとなるように、光源支持基板に支持されている。
【0019】
ところで、光は、進行するにつれて進行方向に対し交差する方向に拡がる性質を有している。そのため、光源の出光端が第2背面よりも磁気ヘッド部から離れた側に位置している場合には、光源から出射された光が光導波路に到達する前に光源支持基板において散乱してしまうことがある。このとき、磁気記録媒体の加熱が十分になされない虞がある。
【0020】
しかしながら、上記のような構成を有する熱アシスト磁気ヘッドでは、光が光源支持基板において散乱することがないので、磁気記録媒体の加熱を十分に行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るヘッドジンバルアセンブリは、上記のいずれかの熱アシスト磁気ヘッドと、熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションとを備える。
【0022】
また、本発明に係るハードディスク装置は、上記のヘッドジンバルアセンブリと、媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見やすさのため、それぞれ任意となっている。
【0025】
[1]ハードディスク装置の構成
まず、図1を参照して、ハードディスク装置1の構成について説明する。ハードディスク装置1は、スピンドルモータ11の回転軸の周りを回転する複数の磁気ディスク(磁気記録媒体)10と、熱アシスト磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置12と、この熱アシスト磁気ヘッド21による書き込み動作及び読み出し動作を制御すると共に、熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発光させる光源であるレーザダイオード40を制御するための記録再生及び発光制御回路13とを備えている。
【0026】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)15によってピボットベアリング軸16を中心に揺動可能であり、ピボットベアリング軸16に沿った方向に積層されている。各駆動アーム14の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17が取り付けられている。各HGA17には、熱アシスト磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。熱アシスト磁気ヘッド21において、磁気ディスク10の表面に対向する面が媒体対向面(エアベアリング面(ABS:Air Bearing Surface)ともいう)である。なお、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び熱アシスト磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
【0027】
[2]ヘッドジンバルアセンブリの構成
続いて、図2を参照して、HGA17の構成について説明する。HGA17は、サスペンション20の先端部に熱アシスト磁気ヘッド21が固着されて構成されている。サスペンション20は、主として、ロードビーム200と、ロードビーム200上に固着されて支持された、弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に形成され、リード導体及びリード導体の両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203と、フレクシャ201の先端に板バネ状に形成されたタング部204とによって構成されている。なお、HGA17におけるサスペンション20は、上記した構成に限定されるものでない。また、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
【0028】
[3]熱アシスト磁気ヘッドの構成
続いて、図3〜図8を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の構成について説明する。熱アシスト磁気ヘッド21は、スライダ基板220及びデータ信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッド部32を有するスライダ22と、光源支持基板230及び熱アシスト磁気記録用の光源となるレーザダイオード(発光素子)40を有する光源ユニット23とを備える。スライダ基板220と光源支持基板230とは、スライダ基板220の背面(第2背面)2201と光源支持基板230の接着面2300とが接面された状態で、UV硬化型エポキシ樹脂やUV硬化型アクリル樹脂等の接着剤44によって固着されている(図4参照)。
【0029】
ここで、スライダ基板220の背面2201は、スライダ22の媒体対向面S2とは反対側に位置する面(媒体対向面S2と対向する面)である。また、光源支持基板230の底面2301は、エポキシ樹脂等の接着剤によって、フレクシャ201のタング部204に固着されている。
【0030】
[3.1]スライダ
スライダ22が有するスライダ基板220は、図3に示されるように、板状を呈している。スライダ基板220の媒体対向面S2は、熱アシスト磁気ヘッド21が適切な浮上量を得ることができるよう、所定形状に加工されている。スライダ基板220は、導電性のアルティック(Al2O3・TiC)等によって形成することができる。
【0031】
スライダ22が有する磁気ヘッド部32は、図3及び図4に示されるように、媒体対向面S2及び背面2201と隣り合うと共にスライダ基板220の媒体対向面S2に対して略垂直な側面である集積面2202(つまり、スライダ基板220のうち媒体対向面S2及び背面2201以外の面)に設けられている。本実施形態において、磁気ヘッド部32は、磁気ヘッド部32の媒体対向面(第1媒体対向面)S1及びスライダ基板220の媒体対向面(第2媒体対向面)S2が同一の平面上に位置すると共に、磁気ヘッド部32の背面(第1背面)32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出した状態で、スライダ基板220に支持されている。ここで、背面32aは、磁気ヘッド部32の媒体対向面S1とは反対側に位置する面(媒体対向面S2と対向する面)である。なお、図示していないが、保護膜として、厚さが2μm以下のダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)が媒体対向面S1,S2を覆うように設けられていると好ましい。
【0032】
磁気ヘッド部32は、MR素子332を有する読取ヘッド部33と、書き込み用の誘導型の電磁変換素子としての記録ヘッド部34と、読取ヘッド部33と記録ヘッド部34との間を通して設けられている光導波路35と、磁気ディスク10の記録層部分を加熱するための近接場光を発生させる近接場光発生部(プラズモン・プローブ)36と、これらの読取ヘッド部33、記録ヘッド部34、光導波路35及び近接場光発生部36を覆うように集積面上に形成された絶縁層38とを備える。
【0033】
読取ヘッド部33は、図4に示されるように、スライダ基板220上に、下部電極を兼ねる下部磁気シールド層330と、MR素子332と、上部電極を兼ねる上部磁気シールド層332とが、この順で積層されて構成されている。また、MR素子332のトラック幅方向の両側には、絶縁層38を介して、硬磁性材料からなる一対のバイアス印加層HM(図6参照)が形成されている。
【0034】
下部磁気シールド層330及び上部磁気シールド層334は、NiFe、CoFeNi、CoFe、FeN、FeZrN等の軟磁性材料からなり、不要な外部磁界をMR素子332が感知するのを防止する。下部磁気シールド層330及び上部磁気シールド層334は、フレームめっき法を含むパターンめっき法等を用いて形成することができ、これらの厚さとしては、例えば0.5μm〜3μm程度に設定することができる。
【0035】
MR素子332は、フリー層を含む多層構造であり(図示せず)、媒体対向面S1に露出するように媒体対向面S1側に配置されている。MR素子332は、磁気抵抗効果を利用して、磁気ディスク10から入力される磁界の変化を検出し、磁気ディスク10に記録されている磁気情報を読出す。なお、MR素子332の代わりに、磁気抵抗変化率の高い巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magneto Resistive)素子、異方性磁気抵抗効果を利用したAMR(Anisotropy Magneto Resistive)素子、トンネル接合で生じる磁気抵抗効果を利用したTMR(Tunnel Magneto Resistive)素子、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR素子等を利用してもよい。
【0036】
記録ヘッド部34は、主磁極層340と、ギャップ層341aと、薄膜コイル絶縁層341bと、薄膜コイル342と、補助磁極層344とを有している。主磁極層340は、薄膜コイル342によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスク10の記録層まで収束させながら導くための導磁路であり、薄膜コイル342の螺旋中心から媒体対向面Sに向かうように延びている。主磁極層340は、媒体対向面S側に位置すると共に媒体対向面Sに露出する磁極端部340aを含んでいる。薄膜コイル342に通電すると、磁界が主磁極層340の磁極端部340aまで導かれ、その先端から書き込み磁界が発生することとなる。
【0037】
磁極端部340aのトラック幅方向の幅及び積層方向(図4の左右方向)の厚みは、他の部分に比べて小さくすることが好ましい。この結果、高記録密度化に対応した微細で強い書き込み磁界を発生可能となる。具体的には、図5に示されるように、リーディング側すなわちスライダ基板220側の辺の長さがトレーリング側の辺の長さよりも短い逆台形となるように磁極端部340aの先端を先細にすることが好ましい。すなわち、磁極端部340aの端面には、ロータリーアクチュエータでの駆動により発生するスキュー角の影響によって隣接トラックに不要な書き込み等を及ぼさないように、ベベル角θが付けられている。ベベル角θの大きさは、例えば、15°程度である。書き込み磁界が主に発生するのはトレーリング側の長辺近傍であり、磁気ドミネント記録方式の場合にはこの長辺の長さによって書き込みトラックの幅が決定される。
【0038】
ここで、主磁極層340は、Ni、Fe及びCoのうちいずれか二つの元素若しくは三つの元素からなる合金、又は、これらを主成分として所定の元素が添加された合金等によって構成されていると好ましい。主磁極層340は、フレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。磁極端部340aの厚さとしては、例えば0.01μm〜0.5μm程度に設定することができ、主磁極層340の磁極端部340a以外の部分における厚さとしては、例えば0.5μm〜3.0μm程度に設定することができる。トラック幅は、例えば100nm程度に設定することができる。
【0039】
補助磁極層344は、媒体対向面S1と離れた側の端部344aにおいて主磁極層340と磁気的に接続されている。補助磁極層344の媒体対向面S1側の端部は、補助磁極層344の他の部分よりも層断面が広いトレーリングシールド部を形成している。補助磁極層344の媒体対向面S1側の端部は、媒体対向面S1に露出している。また、ギャップ層341a及び薄膜コイル絶縁層341bが主磁極層340と補助磁極層344との間に介在しているため、補助磁極層344の媒体対向面S1側の端部は、所定の間隔を有して主磁極層340の磁極端部340aと対向している。
【0040】
補助磁極層344は、Ni、Fe及びCoのうちいずれか二つの元素若しくは三つの元素からなる合金、又は、これらを主成分として所定の元素が添加された合金等によって構成されていると好ましい。補助磁極層344は、フレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。補助磁極層344の厚さとしては、例えば0.5μm〜5μm程度に設定することができる。
【0041】
ギャップ層341aは、主磁極層340と薄膜コイル342とを電気的に絶縁するため、Al2O3やAlN等によって構成されており、スパッタリング法、CVD法等を用いて形成することができる。ギャップ層341aの厚さとしては、例えば0.01μm〜0.5μm程度に設定することができる。
【0042】
薄膜コイル絶縁層341bは、薄膜コイル342と補助磁極層344とを電気的に絶縁するため、アルミナや有機絶縁材料であるレジスト等によって構成されている。薄膜コイル絶縁層341bの厚さとしては、例えば0.1μm〜5μm程度に設定することができる。
【0043】
薄膜コイル342は、補助磁極層344の端部344aの周りに導線が巻回されたスパイラル状に構成されている。薄膜コイル342は、Cu等によって構成することができる。薄膜コイル342の厚さとしては、例えば0.5μm〜3μm程度に設定することができる。
【0044】
光導波路35は、図4に示されるように、読取ヘッド部33と記録ヘッド部34との間に配置されており、集積面2202と平行となるように媒体対向面S1から背面32aまで延在している。光導波路35は、図4に示されるように、媒体対向面S1から背面32aの近傍まで延在するコア部(コア)35aと、媒体対向面S1側におけるコア35aの端面から背面32aまで延在する非コア部35bとによって構成されている。従って、コア部35aの媒体対向面S1側の端面(光導波路35の媒体対向面S1側の端面)は、媒体対向面S1に露出しており、レーザダイオード40によるレーザ光が出射される光出射面353となっている(図4及び図6参照)。また、非コア部35bの背面32a側の端面(光導波路35の光出射面353とは反対側の端面)は、背面32aに露出しており、レーザダイオード40によるレーザ光が入射される光入射面354となっている(図4及び図6参照)。なお、コア部35aの背面32a側の端面は背面32aに露出していないものの、レーザダイオード40からのレーザ光は、非コア部35bの内部(背面32aとコア部35aの背面32a側の端面との間)を伝搬し、コア部35a内を伝搬した後、光出射面353から出射される。
【0045】
コア部35aは、図6に示されるように、その大部分が略矩形の板状体を呈しているが、その媒体対向面S1側の端部のうちトラック幅方向の両角部分が面取りされている。そのため、コア部35aの媒体対向面S1側の端部は、媒体対向面S1側に向かうにつれてトラック幅方向における幅が小さくなっている。これにより、コア部35a(光導波路35)では、トラック幅方向において中央部分にレーザダイオード40によるレーザ光を集光することができるようになっている。なお、背面32aは、媒体対向面Sと略平行とされている。
【0046】
コア部35は、図5に示されるように、複数のコア35A1〜35A6,35B1〜35B6を有しており、コア35A1〜35A6とコア35B1〜35B6とは、交互に積層されている。コア35A1〜35A6は、SiONによって構成され、屈折率が1.80程度となるように設定されている。また、コア35A1〜35A6の厚さは、それぞれ400nm程度、300nm程度、250nm程度、200nm程度、150nm程度、100nm程度となるように設定されている。すなわち、コア35A1〜35A6は、記録ヘッド部34から読取ヘッド部33へと厚さの大きなものから順に並んでいる。
【0047】
一方、内部コア35B1〜35B6は、SiONによって構成され、屈折率がコア35A1〜35A6よりも低い1.72程度となるように設定されている。また、コア35B1〜35B6の厚さは、それぞれ50nm程度、100nm程度、150nm程度、200nm程度、250nm程度、350nm程度となるように設定されている。すなわち、コア35B1〜35B6は、記録ヘッド部34から読取ヘッド部33へと厚さの小さなものから順に並んでいる。
【0048】
図4に戻って、コア部35aは、光出射面353を除き、絶縁層38によって覆われている。絶縁層38は、コア部35aを構成しているコア35A1〜35A6,35B1〜35B6よりも屈折率が低い材料であるAl2O3やAlN等によって構成され、コア部35aのコア35A1〜35A6,35B1〜35B6に対するクラッドとして機能する。すなわち、絶縁層38の一部が非コア部35bとなっている。なお、この非コア部35bの媒体対向面S1に対して奥行方向における長さH(図6参照)は、0.5μm〜20μm程度に設定すると好ましい。
【0049】
このような構成を有する光導波路35にレーザダイオード40からレーザ光が入射すると、レーザ光は、コア部35a内において、レーザ光が進行するにつれて積層方向すなわち読取ヘッド部33から記録ヘッド部34へと向かう方向に偏向する(図7参照)。これは、このようなコア部35aの構造は、屈折率が読取ヘッド部33から記録ヘッド部34へと向かうにつれて高くなっている構造と同視でき、光は屈折率の低い方から高い方に偏向する性質を有しているためである。
【0050】
また、このような構成を有する光導波路35にレーザダイオード40からレーザ光が入射すると、コア部35a内において、レーザ光の強度が周期的に変化する(図7の(a)参照)。すなわち、コア部35aは、周期的に強度変調させるように(マルチモードとして)光を伝搬する。つまり、コア部35a(光導波路35)からの出射光の強度は、コア部35aの長さに依存して変化する。そのため、コア部35a(光導波路35)の光出射面353においてレーザ光の強度が最も大きくなるようにコア部35aの長さを決定することが好ましい。本実施形態に係るコア部35aにおいて、レーザ光の周期T1(図7の(a)参照)は27μm程度であり、レーザ光の強度が最も大きい部分の幅T2(図7の(a)参照)は6μm程度である。従って、コア部35aを所望の長さに設定するためには、±3μmの精度、好ましくは±1μmの加工精度が要求されることとなる。
【0051】
読取ヘッド部33と光導波路35との間には、下部シールド層330及び上部シールド層334と同様の材料によって形成された素子間シールド層148が配置されている。素子間シールド層148は、記録ヘッド部34において発生される磁界をMR素子332が感知しないように遮断して、MR素子332による読み出しの際の外来ノイズを抑制する役割を果たすものである。なお、読取ヘッド部33と光導波路35との間に、更に、バッキングコイル部が形成されていてもよい。
【0052】
近接場光発生部36は、図4〜図6に示されるように、光導波路35の光出射面353に配置された板状部材である。近接場光発生部36は、光出射面353のうち強度の大きなレーザ光が出射される部分(図5及び図7ではコア35A1の光出射面353における略中央部分)に位置しており、その端面が光出射面353に露出するようにコア35A1内に埋設されている。
【0053】
近接場光発生部36は、図5等に示されるように、媒体対向面Sから見て三角形状を呈しており、導電材料(例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rn若しくはIr、又は、これらの元素を組み合わせた合金)によって構成されている。近接場光発生部36の底辺36dは、スライダ基板220の集積面2202と平行、すなわちトラック幅方向と平行に配置されており、近接場光発生部36の底辺36dと向き合う頂点36vは、底辺36dよりも記録ヘッド部34の主磁極層340側に配置されている。ここで、近接場光発生部36の形状としては、底辺36dの両端の二つの底角が共に等しい二等辺三角形であると好ましい。
【0054】
このような近接場光発生部36にレーザダイオード40からのレーザ光が照射されると、近接場光発生部36を構成する金属内の電子がプラズマ振動し、その頂点36v近傍において電界の集中が生じて、その頂点36v近傍から磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に向けて近接場光が発生する。この近接場光の拡がりは、近接場光発生部36の頂点36v近傍の半径程度となるので、この頂点36vの半径をトラック幅以下とすれば、擬似的に出射光を回折限界以下にまで絞り込むことができる。
【0055】
図3に戻って、スライダ22が有する磁気ヘッド部32は、読取ヘッド部33の入出力端子にそれぞれ接続された一対の信号端子用の電極パッド371(図6も参照)と、記録ヘッド部34の両端にそれぞれ接続された一対の信号電極用の電極パッド373(図6も参照)と、ビアホール375aを介してスライダ基板220と電気的に接続されたグランド用の電極パッド375(図4も参照)とを更に備えている。これらの電極パッド371,373,375は、絶縁層38の露出面上に形成されている。なお、電極パッド375は、フレクシャ201の電極パッド274とボンディングワイヤ(図示せず)によって接続されている。そのため、電極パッド274によって、スライダ基板220の電位が例えばグランド電位に制御されることとなる。
【0056】
[3.2]光源ユニット
光源ユニット23が有する光源支持基板230は、図3に示されるように、板状を呈している。光源支持基板230は、図4に示されるように、アルミナ等によって形成された断熱層230aと、導電性のアルティック(Al2O3・TiC)等によって形成された導電体層230bとを有している。断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201と接着されており、この面が光源支持基板230の接着面2300とされている。この接着面2300と隣り合う側面である素子形成面2303上には、アルミナ等の絶縁材料によって形成された絶縁層41が設けられている。
【0057】
絶縁層41の表面で且つ媒体対向面Sと交差する面411上(スライダ基板220の集積面2202と平行な面411上)には、レーザダイオード40の駆動用の電極パッド47,48が形成されている(図3参照)。電極パッド47は、絶縁層41の面411の中央部においてトラック幅方向に延在している第1部分47aと、第1部分47aの端部から光源支持基板230の底面2301に向けて延在している第2部分47bとを有している。一方、電極パッド48は、絶縁層41の面411において電極パッド47と離間した位置に形成されており、絶縁層41の面411の中央部においてトラック幅方向に延在している第1部分48aと、第1部分48aの端部から光源支持基板230の底面2301に向けて延在している第2部分48bとを有している。そして、電極パッド47,48は、フレクシャ201の電極パッド247、248とリフロー半田によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0058】
また、電極パッド47は、図4に示されるように、絶縁層41内に設けられたビアホール47cによって光源支持基板230の導電体層230bと電気的に接続されている。そのため、電極パッド47によって、導電体層230bの電位を例えばグランド電位に制御することが可能となっている。なお、この電極パッド47は、ビアホール47cと共に、レーザダイオード40駆動時の熱を導電体層230b側に逃がすための熱伝導路としても機能する。
【0059】
電極パッド47、48は、例えば、TaやTi等によって形成された下地層と、当該下地層上に真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成されたAuやCu等の層とによって構成することができる。TaやTi等の下地層の厚さとしては、例えば10nm程度に設定することができ、AuやCu等の層の厚さとしては、例えば1μm〜3μm程度に設定することができる。
【0060】
光源ユニット23が有するレーザダイオード40は、図4に示されるように、Au−Sn等の導電性の半田材料からなる半田層42によって電極パッド47上に固着され、電極パッド47と電気的に接続されている。つまり、電極パッド47の一部は、レーザダイオード40によって覆われており、レーザダイオード40は、電極パッド47を介して、光源支持基板230に支持されている。より詳しくは、レーザダイオード40は、後述する出光端400から出射されたレーザ光が光導波路35に導入されるように、光源支持基板230に支持されている(図3及び図4参照)。
【0061】
また、レーザダイオード40は、出光端400がスライダ基板220の背面2201よりも磁気ヘッド部32寄りとなるように、光源支持基板230に支持されている(図3及び図4参照)。レーザダイオード40をこのように支持することが可能なのは、上述したように、磁気ヘッド部32の背面32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出した状態となっているためである。このようにすると、レーザダイオード40から出射されたレーザ光が光導波路35に到達する前に光源支持基板230において散乱することがなくなり、磁気ディスク10の加熱を十分に行うことができることとなる。
【0062】
レーザダイオード40は、通常、光学系ディスクストレージに使用されるものと同じ構造を有していてよく、例えば、図8に示されるように、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、*n−GaAs電流阻止層40hと、p−GaAsコンタクト層40iと、p電極40jとが順次積層された構造を有する。これらの多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するためのSiO2やAl2O3等からなる反射膜50,51が成膜されている。そして、一方の反射膜50には活性層40eに対応する位置に開口50aが設けられており、反射膜50が成膜されている面のうち開口50aに対応する領域が、レーザ光が放射される出光端400とされている。このようなレーザダイオード40においては、膜厚方向に電圧が印加されることにより、出光端400からレーザ光が出射される。
【0063】
出射されるレーザ光の波長λLは、例えば600nm〜650nm程度である。ただし、近接場光発生部36の金属材料に応じた適切な励起波長が存在することに留意しなければならない。例えば、近接場光発生部36としてAuを用いる場合、レーザ光の波長λLは、600nm近傍であることが好ましい。
【0064】
レーザダイオード40の大きさとしては、例えば、幅W40が200μm〜350μm、長さL40が250μm〜600μm、厚みT40が60μm〜200μm程度に設定することができる。ここで、レーザダイオード40の幅W40は、電流阻止層40hの対向端の間隔を下限として、例えば、100μm程度までに小さくすることができる。ただし、レーザダイオード40の長さは、電流密度と関係する量であり、それほど小さくすることはできない。いずれにしても、レーザダイオード40に関しては、搭載の際のハンドリングを考慮して、相当の大きさが確保されることが好ましい。
【0065】
また、レーザダイオード40は、ハードディスク装置1内の電源を使用することによって駆動することができる。実際、ハードディスク装置1は、通常、例えば2V程度の電源を備えており、この電圧はレーザ発振動作に十分な大きさである。また、レーザダイオード40の消費電力も、例えば、数十mW程度であるので、ハードディスク装置1内の電源で十分に賄うことができる。
【0066】
レーザダイオード40のn電極40aは、AuSn等の半田層42によって電極パッド47に固定されている。ここで、レーザダイオード40の出光端(光出射面)400は、図4の下向き(−Z方向)となっており(接着面2300と平行となっており)、光導波路35の光入射面354と対向している。実際にレーザダイオード40を固定する際には、例えば、電極パッド47の表面に厚さ0.7μm〜1μm程度のAuSn合金の蒸着膜を成膜し、レーザダイオード40を乗せた後、熱風ブロア下でホットプレート等によって200℃〜300℃程度までの加熱を行う。
【0067】
また、レーザダイオード40のp電極40jは、ボンディングワイヤによって電極パッド48と電気的に接続されている。なお、n電極40aがボンディングワイヤによって電極パッド48と電気的に接続され、p電極40jが半田層42によって電極パッド47に固定されるようにしてもよい。さらに、レーザダイオード40の光源支持基板230と接続される側を段差状に加工することによって、ボンディングワイヤを用いないで電極パッド48と電気的に接続することも可能である。
【0068】
ここで、上述したAuSn合金による半田付けをする場合、光源ユニット23を例えば300℃前後の高温に加熱することになるが、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21によれば、この光源ユニット23がスライダ22とは別に製造されるため、スライダ22の磁気ヘッド部32がこの高温の悪影響を受けずに済むようになっている。
【0069】
なお、レーザダイオード40及び電極パッド47,48の構成は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、レーザダイオード40は、GaAlAs系等、他の半導体材料を用いた他の構成のものであってもよい。また、レーザダイオード40と電極との半田付けに、他のろう材を用いて行うことも可能である。さらに、レーザダイオード40を、光源支持基板230上に直接半導体材料をエピタキシャル成長させることによって形成してもよい。
【0070】
[4]熱アシスト磁気ヘッドの回路構成
続いて、図9を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の回路構成について説明する。
【0071】
配線部材203を構成する配線の1つは、電極パッド247及び電極パッド47を介してレーザダイオード40のカソードに電気的に接続されており、別の配線は電極パッド248及び電極パッド48を介してレーザダイオード40のアノードに電気的に接続されている。電極パッド247,248間に駆動電流を供給するとレーザダイオード40が発光する。この光は、光導波路35及び媒体対向面Sを介して磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に照射される。
【0072】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド237、ボンディングワイヤBW及び電極パッド373を介して、記録ヘッド部34の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド237間に電圧を印加すると、記録ヘッド部34に通電が行われ、書き込み磁界が発生する。熱アシスト磁気ヘッド21では、レーザダイオード40から出射されたレーザ光は、光導波路35の光入射面354に入射して、媒体対向面Sに設けられた光出射面353から出射し、磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に照射される。このとき、媒体対向面Sに対向する磁気ディスク10の記録領域Rの温度が上昇し、記録領域Rの保磁力が一時的に低下する。従って、この保磁力の低下期間内に記録ヘッド部34に通電を行い、書き込み磁界を発生させることで、記録領域Rに情報を書き込むことができる。
【0073】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド238、ボンディングワイヤBW及び電極パッド371を介して読取ヘッド部33の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド238に電圧を印加すると読取ヘッド部33にセンス電流が流れる。記録領域Rに書き込まれた情報は、読取ヘッド部33にセンス電流を流すことで読み出すことができる。
【0074】
[5]熱アシスト磁気ヘッドを構成するスライダの製造方法
続いて、図10〜図15を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21を構成するスライダ22の製造方法について説明する。
【0075】
まず、図10に示されるように、アルティックからなるウエハ上に絶縁材料からなる下地層を形成して、スライダ基板220となるスライダ基板前駆体220’を形成する。続いて、スライダ基板前駆体220’上に、読取ヘッド部33となる読取ヘッド部前駆体33’、絶縁層38となる絶縁膜38a’及び素子間シールド層148となる素子間シールド層前駆体148’をそれぞれ形成する。続いて、この中間体上の全面を覆うようにコア35A1〜35A6,35B1〜35B6を構成する各材料を所定の厚さで且つ所定の順序で積層して、コア部35aとなるコア部前駆体35a’を形成する。このとき、同時に、媒体対向面S1となる側から見てコア35A1の光出射面353における略中央部分に位置するように、近接場光発生部36となる近接場光発生部前駆体36’を形成する。
【0076】
続いて、図11を参照して、次の工程を説明する。まず、コア部35aを形成しようとする領域を覆うように、コア部前駆体35a’上にレジスト膜Fを形成する。レジスト膜Fは、光又は電子線の照射によって重合するレジスト材料をコア部前駆体35a’の表面上に塗布し、光又は電子線を照射した後、現像処理を行うことによって形成される。レジスト膜Fを形成すると、レジスト膜Fが媒体対向面S1となる側から背面32aとなる側に向かう方向に延在するように、コア部前駆体35a’が覆われた状態となっている。より詳細には、図11に示されるように、背面32aとなる側におけるレジスト膜Fの端部が背面32aに到達していない状態となっている。
【0077】
ここで、本実施形態において、コア部35aの媒体対向面S1側の端部は、後述するように電気ラッピングガイドを用いたラッピング加工によって精密に加工されるので、コア部35aの媒体対向面S1側の端部の位置を考慮した上で背面32aとなる側におけるレジスト膜Fの端部の位置を決定することで、コア部35aを所望の長さに設定することができるようになる。次に、レジスト膜Fをマスクとして、露出している領域をコア部前駆体35a’の表面から絶縁膜38a’の表面までイオンミリング等によって除去する。
【0078】
続いて、図12を参照して、次の工程を説明する。まず、レジスト膜Fを残した状態で、スパッタリング法等で絶縁層38となる絶縁膜38bを中間体の全面に積層する。そして、レジスト膜Fを剥離してリフトオフを行い、レジスト膜F上の堆積材料を除去する。なお、絶縁膜38bは、光導波路35の非コア部35bの前駆体となっている。
【0079】
続いて、図13を参照して、次の工程を説明する。まず、中間体上に、絶縁層38となる絶縁膜38c及び記録ヘッド部34となる記録ヘッド部前駆体34’を公知の方法等によって形成する。そして、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)等によって、MR素子332及び近接場光発生部36の高さ(ハイト)を調整すると共にコア部35aの長さを調整するためのラッピング加工(研磨加工)を行う。このとき、媒体対向面S1,S2側となるラッピング面から媒体対向面S1,S2に対して奥行方向に向けてラッピングを行い、MR素子332の高さ及び近接場光発生部36の高さが所定の大きさになると共にコア部35aが所定の長さになったときにラッピングが終了する。なお、上述の工程において中間体内に電気ラッピングガイドを形成しておくことで、極めて高精度にMR素子332の高さ及び近接場光発生部36の高さを設定することができる。
【0080】
続いて、図14に示される工程では、磁気ヘッド部32の背面32aを形成する。具体的には、磁気ヘッド部32の背面32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出すると共にコア部35aの背面32a側の端部が背面32aから露出しないように、背面32a側から背面32aに対して奥行方向に向けて絶縁膜38a,38b,38cの一部を除去する。これにより、スライダ基板220に磁気ヘッド部32が搭載されたスライダ22が形成されることとなる(図15参照)。
【0081】
このとき、絶縁膜38a,38b,38cのエッチングレートがスライダ基板220のエッチングレートよりも大きくなるようなエッチング溶液を用いたウエットエッチングにより、絶縁膜38a,38b,38cの一部を除去することができる。本実施形態では、絶縁膜38a,38b,38c(絶縁層38)がAl2O3やAlN等によって形成されており、スライダ基板前駆体220’(スライダ基板220)がアルティック等によって形成されているので、エッチング溶液として例えば水酸化ナトリウム溶液を用いることで、絶縁膜38a,38b,38c(絶縁層38)を選択的に除去することが可能となる。なお、ウエットエッチングの他、機械加工を行うことで絶縁膜38a,38b,38cの一部を除去するようにしてもよい。
【0082】
[6]作用
続いて、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21の作用について説明する。
【0083】
書き込み又は読み出し動作時には、熱アシスト磁気ヘッド21は、回転する磁気ディスク10の表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、読取ヘッド部33及び記録ヘッド部34の媒体対向面S側の端が磁気ディスク10と微小なスペーシングを介して対向することによって、データ信号磁界の感受による読み出しとデータ信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
【0084】
ここで、データ信号の書き込みの際、光源ユニット23から光導波路35を通って伝播してきたレーザ光が近接場光発生部36に到達し、近接場光発生部36から近接場光が発生する。この近接場光によって、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0085】
そして、熱アシスト磁気記録方式を採用することにより、高保磁力の磁気ディスク10に垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドを用いて書き込みを行い、記録ビットを極微細化することによって、例えば、1Tbits/inch2級の記録密度を達成することも可能となり得る。
【0086】
また、以上のような本実施形態においては、コア部35aが背面32aに露出していない。すなわち、磁気ヘッド部32の背面32aが形成される前の時点においても、背面32aとなる側においてコア部35aが外部に露出していない。そのため、背面32aの形成の際に、背面32a側におけるコア部35aの端部が加工されていない。従って、上記のように、電気ラッピングガイドを用いたラッピング加工によって媒体対向面S1側におけるコア部35aの端部が精度よく加工されていれば、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコア部35a(光導波路35)からの出射光の強度を最も大きくすることができる。その結果、磁気ディスク10が十分に加熱されて磁気ディスク10の保磁力が十分に小さくなるので、磁気ディスク10への高密度の書き込みを実現することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態においては、コア部35aの媒体対向面S1側の端面が媒体対向面S1に露出している。そのため、コア部35aの媒体対向面S1側の端面が媒体対向面S1に露出していない場合と比較して、出射光の強度がより大きな状態で出射光が磁気ディスク10に照射されることとなる。その結果、磁気ディスク10をより十分に加熱することが可能となっている。
【0088】
また、本実施形態においては、磁気ヘッド部32の背面32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出した状態で、磁気ヘッド部32がスライダ基板220に支持されており、出光端400がスライダ基板220の背面2201よりも磁気ヘッド部32寄りとなるように、レーザダイオード40が光源支持基板230に支持されている。そのため、レーザダイオード40から出射されたレーザ光が光導波路35に到達する前に光源支持基板230において散乱することがなくなり、磁気ディスク10の加熱を十分に行うことが可能となる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では近接場光発生部36が三角形状を呈していたが、頂点36vが平らになった台形状としてもよく、また、三角形状又は台形状の板を、その頂点同士または短辺同士が所定距離離間して対向するように一対配置した、いわゆる「蝶ネクタイ型」構造でも実施可能である。この「蝶ネクタイ型」構造においては、その中心部に非常に強い電界の集中が発生する。
【0090】
また、近接場光発生部36として、光導波路35の媒体対向面S側にレーザ光の波長よりも小さい微小な開口を設けてもよい。
【0091】
また、本実施形態では薄膜コイル342が1層設けられていたが、薄膜コイル342を2層以上設けてもよく、又は、ヘリカルコイルとしてもよい。
【0092】
また、断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201側に形成されていてもよく、全く設けなくても実施は可能である。
【0093】
また、光源ユニット23とスライダ22との接着に、UV硬化型接着剤以外の接着剤、例えば、レーザダイオード40と電極パッド47との接着に用いたAuSn等の半田層を用いても実施は可能である。
【0094】
また、保護膜として、媒体対向面S1,S2を覆うようにダイヤモンドライクカーボンを設けていたが、ダイヤモンドライクカーボンを設けなくてもよい。
【0095】
また、光導波路35からの出射光の強度を最も大きくすることができれば、コア部35aの媒体対向面S1側の端面が媒体対向面S1に露出していなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、ハードディスク装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、熱アシスト磁気ヘッドの媒体対向面が上方を向いた状態で示す、ヘッドジンバルアセンブリの斜視図である。
【図3】図3は、熱アシスト磁気ヘッドを示す斜視図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、媒体対向面から見た状態で示す、磁極端部及び光導波路の部分拡大図である。
【図6】図6は、熱アシスト磁気ヘッドの主要部を示す斜視図である。
【図7】図7の(a)は、光導波路にレーザ光を導入したときのシミュレーション結果を示す横断面図であり、図7の(b)は、光導波路にレーザ光を導入したときのシミュレーション結果を媒体対向面から見た状態で示す図である。
【図8】図8は、レーザダイオードを示す斜視図である。
【図9】図9は、熱アシスト磁気ヘッドの回路構成を示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドを構成するスライダを製造する一工程を示す図である。
【図11】図11は、図10の後続の工程を示す図である。
【図12】図12は、図11の後続の工程を示す図である。
【図13】図13は、図12の後続の工程を示す図である。
【図14】図14は、図13の後続の工程を示す図である。
【図15】図15は、図14の後続の工程を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1…ハードディスク装置、10…磁気ディスク(磁気記録媒体)、17…ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)、20…サスペンション、21…熱アシスト磁気ヘッド、22…スライダ、220…スライダ基板、2201…背面(第2背面)、2202…集積面、23…光源ユニット、230…光源支持基板、32…磁気ヘッド部、32a…背面(第1背面)、33…読取ヘッド部、34…記録ヘッド部(電磁変換素子)、340…主磁極層、340a…磁極端部、342…薄膜コイル、344…補助磁極層、35…光導波路、35a…コア部(コア)、36…近接場光発生部、38…絶縁層、40…レーザダイオード、S1…磁気ヘッド部の媒体対向面(第1媒体対向面)、S2…スライダ基板の媒体対向面(第2媒体対向面)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に対向する第1媒体対向面及び前記第1媒体対向面と対向する第1背面を有すると共に、前記第1媒体対向面と前記第1背面との対向方向に沿って延在する光導波路と、電磁変換素子とを有する磁気ヘッド部を備え、
前記光導波路は、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有し、
前記コアは、前記第1背面に露出していない熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
前記コアは、前記第1媒体対向面に露出している請求項1に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第1媒体対向面及び前記コアのうち前記第1媒体対向面に露出している端面が、2μm以下の厚さのダイヤモンドライクカーボンによって覆われている請求項2に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
磁気記録媒体に対向する第2媒体対向面及び前記第2媒体対向面と対向する第2背面を有するスライダ基板を更に備え、
前記磁気ヘッド部は、当該磁気ヘッド部のうち前記第1媒体対向面及び前記第1背面以外の部分において、前記スライダ基板のうち前記第2媒体対向面及び前記第2背面以外の部分に配置され、
前記スライダ基板の前記第2背面が、前記磁気ヘッド部の前記第1背面よりも外方に向けて突出している請求項1〜3のいずれか一項に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項5】
光が出射される出光端を有する光源と、
前記スライダ基板の前記第2背面に設けられた光源支持基板とを更に備え、
前記光源は、出射した光が前記光導波路に導入されると共に前記出光端が前記スライダ基板の前記第2背面よりも前記磁気ヘッド部寄りとなるように、前記光源支持基板に支持されている請求項4に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された熱アシスト磁気ヘッドと、
前記熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションとを備えるヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載されたヘッドジンバルアセンブリと、
前記媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備えるハードディスク装置。
【請求項1】
磁気記録媒体に対向する第1媒体対向面及び前記第1媒体対向面と対向する第1背面を有すると共に、前記第1媒体対向面と前記第1背面との対向方向に沿って延在する光導波路と、電磁変換素子とを有する磁気ヘッド部を備え、
前記光導波路は、伝搬方向において周期的に強度変調させるように光を伝搬させるコアを有し、
前記コアは、前記第1背面に露出していない熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
前記コアは、前記第1媒体対向面に露出している請求項1に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第1媒体対向面及び前記コアのうち前記第1媒体対向面に露出している端面が、2μm以下の厚さのダイヤモンドライクカーボンによって覆われている請求項2に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
磁気記録媒体に対向する第2媒体対向面及び前記第2媒体対向面と対向する第2背面を有するスライダ基板を更に備え、
前記磁気ヘッド部は、当該磁気ヘッド部のうち前記第1媒体対向面及び前記第1背面以外の部分において、前記スライダ基板のうち前記第2媒体対向面及び前記第2背面以外の部分に配置され、
前記スライダ基板の前記第2背面が、前記磁気ヘッド部の前記第1背面よりも外方に向けて突出している請求項1〜3のいずれか一項に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項5】
光が出射される出光端を有する光源と、
前記スライダ基板の前記第2背面に設けられた光源支持基板とを更に備え、
前記光源は、出射した光が前記光導波路に導入されると共に前記出光端が前記スライダ基板の前記第2背面よりも前記磁気ヘッド部寄りとなるように、前記光源支持基板に支持されている請求項4に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された熱アシスト磁気ヘッドと、
前記熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションとを備えるヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載されたヘッドジンバルアセンブリと、
前記媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備えるハードディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図7】
【公開番号】特開2009−43368(P2009−43368A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209671(P2007−209671)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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