説明

熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置

【課題】磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】熱アシスト磁気ヘッド21は、媒体対向面S及びこれと対向する背面32aを有する磁気ヘッド部32を備える。磁気ヘッド部32は、記録ヘッド部34と、光導波路35Aと、遮光体39A〜39Dとを有する。光導波路35Aは、媒体対向面Sと背面32aとの対向方向に沿って延在する。遮光体39A〜39Dは、媒体対向面Sと背面32aとの対向方向に沿ってそれぞれ延在していると共に媒体対向面Sと背面32aとの間におけるレーザ光の透過を妨げる。光導波路35A及び遮光体39A,39Bは、背面32aから見たときに、同一直線上に配列されている。遮光体39C,39Dは、背面32aから見たときに、当該直線を間に置いて相対すると共に当該直線と略直交する直線上に配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う熱アシスト磁気ヘッド、この熱アシスト磁気ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)、及び、HGAを備えたハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気抵抗(MR:Magneto Resistive)効果素子等の磁気検出素子と電磁コイル素子等の磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KV/kTで与えられる。ここで、Kは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKV/kTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKを大きくすることが考えられるが、このKの増加は、磁気記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保磁力がこの書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると、書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する方法として、Kの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に磁気記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0006】
このような熱アシスト磁気ヘッド記録装置として、特許文献1には、電磁コイル素子に対して磁気ヘッドの積層方向(ビット長方向)に近接した位置に光導波路が設けられた磁気ヘッド部を有するスライダと、このスライダとは別の光源支持基板に光源が設けられた光源ユニットとを備える熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。この構成においては、発光素子の出射光を光導波路内に導入し、媒体対向面内にある光導波路の光出射面から出射させて、磁気記録媒体を局所的に加熱する。続いて、局所的に加熱され保磁力が低下している磁気記録媒体の局所領域に対して、電磁コイル素子によって書き込み磁界を印加して書き込みを行う。
【特許文献1】特開2006−185548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載された熱アシスト磁気ヘッドを作成するためには、光源ユニットを、スライダの媒体対向面の反対側の面(背面)に重ねた後に固定する必要がある。この場合、磁気ヘッド部を有するスライダと光源ユニットとをそれぞれ独立に試験した上で、良品であるスライダと光源ユニットを固定し、熱アシスト磁気ヘッドを歩留まり良く製造できる。また、この場合、光源を媒体対向面から離れた位置で且つスライダの近傍に設けることができるので、光の伝搬効率の低下や装置全体の構成の複雑化等はほとんど問題とならない。
【0008】
しかしながら、上記のようにスライダと光源ユニットとを別々に作製する場合には、スライダと光源ユニットとを固定する際の光源と光導波路との位置合わせ(アライメント)を精度良く行うことが必要となる。これは、アライメント精度が悪化すると、磁気記録媒体の加熱効率の低下に繋がり、熱アシスト磁気記録を行う上で大きな問題となるためである。
【0009】
そこで、本発明は、光源と光導波路との位置合わせを極めて高精度に調整することにより、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドは、磁気記録媒体に対向する媒体対向面及び媒体対向面と対向する背面を有する磁気ヘッド部を備える熱アシスト磁気ヘッドであって、磁気ヘッド部は、電磁変換素子と、媒体対向面と背面との対向方向に沿って延在する第1光導波路と、媒体対向面と背面との間に位置すると共に媒体対向面と背面との間における光の透過を妨げる第1遮光体、第2遮光体、第3遮光体及び第4遮光体とを有し、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体は、媒体対向面又は背面から見たときに、同一の直線上に配列されており、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体が配列された直線は、媒体対向面又は背面から見たときに、第3遮光体と第4遮光体との間に位置しており、第3遮光体及び第4遮光体は、媒体対向面又は背面から見たときに、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体が配列された直線と略直交する直線上に配列されている。
【0011】
本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドでは、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体が、媒体対向面又は背面から見たときに、同一の直線上に配列されている。また、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドでは、第3遮光体及び第4遮光体が、媒体対向面又は背面から見たときに、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体が配列された直線を間に置いて相対すると共に直線と略直交する直線上に配列されている。そのため、まず、背面側に光源を配置し、出射光が第3遮光体に向けて照射された後に第4遮光体に向けて照射されるように、光源から光を出射したままの状態で光源を順次移動(スキャン)させて、磁気ヘッド部を透過した光の強度等の変化の様子を媒体対向面側において検出することで、第3遮光体と第4遮光体との間の位置を特定することができる。続いて、出射光が、特定された第3遮光体と第4遮光体との間の位置を通ると共に第3遮光体及び第4遮光体が配列された直線と略直交する直線、すなわち、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体が配列された直線に沿うように、光源から光を出射したままの状態で光源を順次移動(スキャン)させて、磁気ヘッド部を透過した光の強度等の変化の様子を媒体対向面側において検出することで、第1光導波路の位置を特定することができる。従って、2つの異なる方向から第1光導波路の位置を特定することができるようになるので、光源と第1光導波路との位置合わせを極めて高精度に調整できる。その結果、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能となる。
【0012】
好ましくは、第1光導波路は、媒体対向面又は背面から見たときに、第1遮光体と第2遮光体との間に位置している。このようにすると、出射光が、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体が配列された直線に沿うように、光源から光を出射したままの状態で光源を順次移動(スキャン)させて、磁気ヘッド部を透過した光の強度等の変化の様子を媒体対向面側において検出した場合、出射光が第1遮光体→第1光導波路→第2遮光体の順に照射されることなり、このとき光の強度等の検出量が僅か→多い→僅かと変化するので、第1光導波路の位置をより高精度且つ容易に特定することが可能となる。
【0013】
好ましくは、第3遮光体及び第4遮光体は、媒体対向面又は背面から見たときに、第1光導波路並びに第1遮光体及び第2遮光体が配列された直線に沿う方向にそれぞれ延在している。このようにすると、ある程度大まかに光源を移動させた場合でも第3遮光体と第4遮光体との間の位置を特定できるので、第1光導波路の位置をより簡便に特定することが可能となる。
【0014】
好ましくは、第1遮光体、第2遮光体、第3遮光体及び第4遮光体は、背面に露出している。光は、進行するにつれて進行方向に対し交差する方向に拡がる性質を有しているので、このようにすることで、各遮光体によって光源からの出射光を確実に遮光できるようになる。その結果、第1光導波路の位置をより高精度に特定することが可能となる。
【0015】
好ましくは、磁気ヘッド部は、媒体対向面と背面との対向方向に沿って延在する第2光導波路を更に有し、第2光導波路は、媒体対向面又は背面から見たときに、第3遮光体と第4遮光体との間に位置している。
【0016】
また、本発明に係るヘッドジンバルアセンブリは、上記のいずれかの熱アシスト磁気ヘッドと、熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションとを備える。
【0017】
また、本発明に係るハードディスク装置は、上記のヘッドジンバルアセンブリと、媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光源の位置を極めて高精度に調整することにより、磁気記録媒体への高密度の書き込みを実現することが可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見やすさのため、それぞれ任意となっている。
【0020】
[1]ハードディスク装置の構成
まず、図1を参照して、ハードディスク装置1の構成について説明する。ハードディスク装置1は、スピンドルモータ11の回転軸の周りを回転する複数の磁気ディスク(磁気記録媒体)10と、熱アシスト磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置12と、この熱アシスト磁気ヘッド21による書き込み動作及び読み出し動作を制御すると共に、熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発光させる光源であるレーザダイオード40を制御するための記録再生及び発光制御回路13とを備えている。
【0021】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)15によってピボットベアリング軸16を中心に揺動可能であり、ピボットベアリング軸16に沿った方向に積層されている。各駆動アーム14の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17が取り付けられている。各HGA17には、熱アシスト磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。熱アシスト磁気ヘッド21において、磁気ディスク10の表面に対向する面が媒体対向面(エアベアリング面(ABS:Air Bearing Surface)ともいう)である。なお、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び熱アシスト磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
【0022】
[2]ヘッドジンバルアセンブリの構成
続いて、図2を参照して、HGA17の構成について説明する。HGA17は、サスペンション20の先端部に熱アシスト磁気ヘッド21が固着されて構成されている。サスペンション20は、主として、ロードビーム200と、ロードビーム200上に固着されて支持された、弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に形成され、リード導体及びリード導体の両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203と、フレクシャ201の先端に板バネ状に形成されたタング部204とによって構成されている。なお、HGA17におけるサスペンション20は、上記した構成に限定されるものでない。また、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
【0023】
[3]熱アシスト磁気ヘッドの構成
続いて、図3〜図7を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の構成について説明する。熱アシスト磁気ヘッド21は、スライダ基板220及びデータ信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッド部32を有するスライダ22と、光源支持基板230及び熱アシスト磁気記録用の光源となるレーザダイオード(発光素子)40を有する光源ユニット23とを備える。スライダ基板220と光源支持基板230とは、スライダ基板220の背面2201と光源支持基板230の接着面2300とが接面された状態で、UV硬化型エポキシ樹脂やUV硬化型アクリル樹脂等の接着剤44によって固着されている(図4参照)。
【0024】
ここで、スライダ基板220の背面2201は、スライダ22の媒体対向面Sとは反対側に位置する面である。また、光源支持基板230の底面2301は、エポキシ樹脂等の接着剤によって、フレクシャ201のタング部204に固着されている。
【0025】
[3.1]スライダ
スライダ22が有するスライダ基板220は、図3に示されるように、板状を呈している。スライダ基板220の媒体対向面Sは、熱アシスト磁気ヘッド21が適切な浮上量を得ることができるよう、所定形状に加工されている。スライダ基板220は、導電性のアルティック(Al・TiC)等によって形成することができる。
【0026】
スライダ22が有する磁気ヘッド部32は、図3及び図4に示されるように、媒体対向面S及び背面2201と隣り合うと共にスライダ基板220の媒体対向面Sに対して略垂直な側面である集積面2202に設けられている。磁気ヘッド部32は、MR素子332を有する読取ヘッド部33と、書き込み用の誘導型の電磁変換素子としての記録ヘッド部34と、読取ヘッド部33と記録ヘッド部34との間を通して設けられている光導波路35A,35B,35Cと、磁気ディスク10の記録層部分を加熱するための近接場光を発生させる近接場光発生部(プラズモン・プローブ)36と、遮光体39A,39B,39C,39D,39E,39Fと、これらの読取ヘッド部33、記録ヘッド部34、光導波路35A〜35C、近接場光発生部36及び遮光体39A〜39Fを覆うように集積面上に形成された絶縁層38とを備える。
【0027】
読取ヘッド部33は、図4に示されるように、スライダ基板220上に、下部電極を兼ねる下部磁気シールド層330と、MR素子332と、上部電極を兼ねる上部磁気シールド層332とが、この順で積層されて構成されている。また、MR素子332のトラック幅方向の両側には、絶縁層38を介して、硬磁性材料からなる一対のバイアス印加層HM(図6参照)が形成されている。
【0028】
下部磁気シールド層330及び上部磁気シールド層334は、NiFe、CoFeNi、CoFe、FeN、FeZrN等の軟磁性材料からなり、不要な外部磁界をMR素子332が感知するのを防止する。下部磁気シールド層330及び上部磁気シールド層334は、フレームめっき法を含むパターンめっき法等を用いて形成することができ、これらの厚さとしては、例えば0.5μm〜3μm程度に設定することができる。
【0029】
MR素子332は、フリー層を含む多層構造であり(図示せず)、媒体対向面Sに露出するように媒体対向面S側に配置されている。MR素子332は、磁気抵抗効果を利用して、磁気ディスク10から入力される磁界の変化を検出し、磁気ディスク10に記録されている磁気情報を読出す。なお、MR素子332の代わりに、磁気抵抗変化率の高い巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magneto Resistive)素子、異方性磁気抵抗効果を利用したAMR(Anisotropy Magneto Resistive)素子、トンネル接合で生じる磁気抵抗効果を利用したTMR(Tunnel Magneto Resistive)素子、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR素子等を利用してもよい。
【0030】
記録ヘッド部34は、主磁極層340と、ギャップ層341aと、薄膜コイル絶縁層341bと、薄膜コイル342と、補助磁極層344とを有している。主磁極層340は、薄膜コイル342によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスク10の記録層まで収束させながら導くための導磁路であり、薄膜コイル342の螺旋中心から媒体対向面Sに向かうように延びている。主磁極層340は、媒体対向面S側に位置すると共に媒体対向面Sに露出する磁極端部340aを含んでいる。薄膜コイル342に通電すると、磁界が主磁極層340の磁極端部340aまで導かれ、その先端から書き込み磁界が発生することとなる。
【0031】
磁極端部340aのトラック幅方向の幅及び積層方向(図4の左右方向)の厚みは、他の部分に比べて小さくすることが好ましい。この結果、高記録密度化に対応した微細で強い書き込み磁界を発生可能となる。具体的には、図5に示されるように、リーディング側すなわちスライダ基板220側の辺の長さがトレーリング側の辺の長さよりも短い逆台形となるように磁極端部340aの先端を先細にすることが好ましい。すなわち、磁極端部340aの端面には、ロータリーアクチュエータでの駆動により発生するスキュー角の影響によって隣接トラックに不要な書き込み等を及ぼさないように、ベベル角θが付けられている。ベベル角θの大きさは、例えば、15°程度である。書き込み磁界が主に発生するのはトレーリング側の長辺近傍であり、磁気ドミネント記録方式の場合にはこの長辺の長さによって書き込みトラックの幅が決定される。
【0032】
ここで、主磁極層340は、Ni、Fe及びCoのうちいずれか二つの元素若しくは三つの元素からなる合金、又は、これらを主成分として所定の元素が添加された合金等によって構成されていると好ましい。主磁極層340は、フレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。磁極端部340aの厚さとしては、例えば0.01μm〜0.5μm程度に設定することができ、主磁極層340の磁極端部340a以外の部分における厚さとしては、例えば0.5μm〜3.0μm程度に設定することができる。トラック幅は、例えば100nm程度に設定することができる。
【0033】
補助磁極層344は、媒体対向面Sと離れた側の端部344aにおいて主磁極層340と磁気的に接続されている。補助磁極層344の媒体対向面S側の端部は、補助磁極層344の他の部分よりも層断面が広いトレーリングシールド部を形成している。補助磁極層344の媒体対向面S側の端部は、媒体対向面Sに露出している。また、ギャップ層341a及び薄膜コイル絶縁層341bが主磁極層340と補助磁極層344との間に介在しているため、補助磁極層344の媒体対向面S側の端部は、所定の間隔を有して主磁極層340の磁極端部340aと対向している。
【0034】
補助磁極層344は、Ni、Fe及びCoのうちいずれか二つの元素若しくは三つの元素からなる合金、又は、これらを主成分として所定の元素が添加された合金等によって構成されていると好ましい。補助磁極層344は、フレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。補助磁極層344の厚さとしては、例えば0.5μm〜5μm程度に設定することができる。
【0035】
ギャップ層341aは、主磁極層340と薄膜コイル342とを電気的に絶縁するため、AlやAlN等によって構成されており、スパッタリング法、CVD法等を用いて形成することができる。ギャップ層341aの厚さとしては、例えば0.01μm〜0.5μm程度に設定することができる。
【0036】
薄膜コイル絶縁層341bは、薄膜コイル342と補助磁極層344とを電気的に絶縁するため、アルミナや有機絶縁材料であるレジスト等によって構成されている。薄膜コイル絶縁層341bの厚さとしては、例えば0.1μm〜5μm程度に設定することができる。
【0037】
薄膜コイル342は、補助磁極層344の端部344aの周りに導線が巻回されたスパイラル状に構成されている。薄膜コイル342は、Cu等によって構成することができる。薄膜コイル342の厚さとしては、例えば0.5μm〜3μm程度に設定することができる。
【0038】
光導波路35Aは、図4に示されるように、読取ヘッド部33と記録ヘッド部34との間に配置されており、集積面2202と平行となるように媒体対向面Sから背面32a(磁気ヘッド部32の媒体対向面Sとは反対側に位置する面)まで延在している。光導波路35Aは、図4に示されるように、媒体対向面Sから背面32aの近傍まで延在するコア部35aと、媒体対向面S側におけるコア35aの端面から背面32aまで延在する非コア部35bとによって構成されている。従って、コア部35aの媒体対向面S側の端面(光導波路35Aの媒体対向面S側の端面)は、媒体対向面Sに露出しており、レーザダイオード40によるレーザ光が出射される光出射面353Aとなっている(図4及び図6参照)。
【0039】
また、非コア部35bの背面32a側の端面(光導波路35Aの光出射面353Aとは反対側の端面)は、背面32aに露出しており、レーザダイオード40によるレーザ光が入射される光入射面354Aとなっている(図4及び図6参照)。なお、コア部35aの背面32a側の端面は背面32aに露出していないものの、レーザダイオード40からのレーザ光は、非コア部35bの内部(背面32aとコア部35aの背面32a側の端面との間)を伝搬し、コア部35a内を伝搬した後、光出射面353Aから出射される。
【0040】
コア部35aは、図6に示されるように、その大部分が略矩形の板状体を呈しているが、その媒体対向面S側の端部のうちトラック幅方向の両角部分が面取りされている。そのため、コア部35aの媒体対向面S側の端部は、媒体対向面S側に向かうにつれてトラック幅方向における幅が小さくなっている。これにより、コア部35a(光導波路35A)では、トラック幅方向において中央部分にレーザダイオード40によるレーザ光を集光することができるようになっている。なお、背面32aは、媒体対向面Sと略平行とされている。
【0041】
図4に戻って、コア部35aは、光出射面353Aを除き、絶縁層38によって覆われている。絶縁層38は、コア部35aを構成している材料よりも屈折率が低い材料によって構成され、コア部35aに対するクラッドとして機能する。すなわち、絶縁層38の一部が非コア部35bとなっている。なお、この非コア部35bの媒体対向面Sに対して奥行方向における長さH(図6参照)は、0.5μm〜20μm程度に設定すると好ましい。
【0042】
なお、クラッドとしての絶縁層38が、SiO(n=1.5)によって形成されている場合、コア部35aは、Al(n=1.63)によって形成することができる。また、絶縁層38が、Alによって形成されている場合、コア部35aは、Ta(n=2.16)、Nb(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO(n=2.3〜2.55)によって形成することができる。コア部35aをこのような材料で構成することによって、材料そのものが有する良好な光学特性によるだけではなく、界面での全反射条件が整うことによって、レーザ光の伝播損失が小さくなる。
【0043】
読取ヘッド部33と光導波路35Aとの間には、図4及び図6に示されるように、下部シールド層330及び上部シールド層334と同様の材料によって形成された素子間シールド層148が配置されている。素子間シールド層148は、記録ヘッド部34において発生される磁界をMR素子332が感知しないように遮断して、MR素子332による読み出しの際の外来ノイズを抑制する役割を果たすものである。なお、読取ヘッド部33と光導波路35Aとの間に、更に、バッキングコイル部が形成されていてもよい。
【0044】
近接場光発生部36は、図4〜図6に示されるように、光導波路35の光出射面353Aに配置された板状部材である。近接場光発生部36は、光出射面353Aのうち強度の大きなレーザ光が出射される部分に位置しており、その端面が光出射面353Aに露出するようにコア35部aに埋設されている。
【0045】
近接場光発生部36は、図5及び図6に示されるように、媒体対向面Sから見て三角形状を呈しており、導電材料(例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rn若しくはIr、又は、これらの元素を組み合わせた合金)によって構成されている。近接場光発生部36の底辺36dは、スライダ基板220の集積面2202と平行、すなわちトラック幅方向と平行に配置されており、近接場光発生部36の底辺36dと向き合う頂点36vは、底辺36dよりも記録ヘッド部34の主磁極層340側に配置されている。ここで、近接場光発生部36の形状としては、底辺36dの両端の二つの底角が共に等しい二等辺三角形であると好ましい。
【0046】
このような近接場光発生部36にレーザダイオード40からのレーザ光が照射されると、近接場光発生部36を構成する金属内の電子がプラズマ振動し、その頂点36v近傍において電界の集中が生じて、その頂点36v近傍から磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に向けて近接場光が発生する。この近接場光の拡がりは、近接場光発生部36の頂点36v近傍の半径程度となるので、この頂点36vの半径をトラック幅以下とすれば、擬似的に出射光を回折限界以下にまで絞り込むことができる。
【0047】
一方、光導波路35B,35Cは、図3及び図7に示されるように、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、トラック幅方向において光導波路35Aを間に置いて相対するように配置されており、集積面2202と平行となるように媒体対向面Sから背面32aまで延在している。光導波路35B,35Cは、その全体が、光導波路35Aのコア部35aと同一の材料によって構成されている。従って、光導波路35B,35Cの媒体対向面S側の端面は、媒体対向面Sに露出しており、背面32a側に位置する光源による光が出射される光出射面353B,353Cとなっている(図7参照)。
【0048】
また、光導波路35B,35Cの背面32a側の端面は、背面32aに露出しており、背面32a側に位置する光源による光が入射される光入射面354B,354Cとなっている(図7参照)。なお、光導波路35B,35Cには、光導波路35Aと異なり、近接場光発生部36が設けられていない。
【0049】
光導波路35B,35Cは、光出射面353B,353C及び光入射面354B,354Cを除き、絶縁層によって覆われている(図3参照)。そのため、絶縁層38は、光入射面354B,354Cに対してもクラッドとして機能する。
【0050】
遮光体39A〜39Fは、光を反射、吸収、散乱等することで、媒体対向面Sと背面32aとの間における光の透過を妨げる(遮光する)ものである。遮光体39A〜39Fは、例えば、Cu、Ni、Fe、Au等の金属材料やパーマロイ等の磁性材料によって構成されており、例えばめっき法を用いて形成することができる。
【0051】
遮光体39A〜39Fは、図3及び図7に示されるように、集積面2202と平行となるように媒体対向面Sから背面32aまで延在している(すなわち、媒体対向面Sと背面32aとの間に位置している)。遮光体39A〜39Fの背面32a側の端面は、背面32aに露出しており、遮光体39A〜39Fの媒体対向面S側の端面は、媒体対向面Sに露出していない。
【0052】
遮光体39A,39Bは、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、光導波路35B,35Cの間で、且つ、トラック幅方向において光導波路35Aを間に置いて相対するように配置されている。遮光体39C,39Dは、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、光導波路35Bを間に置いて相対するように配置されている。遮光体39E,39Fは、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、光導波路35Cを間に置いて相対するように配置されている。
【0053】
従って、光導波路35A,35B,35C及び遮光体39A,39Bは、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、同一直線上(直線L上)に配列されている(図7参照)。光導波路35B及び遮光体39C,39Dは、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、直線L(光導波路35A,35B,35C及び遮光体39A,39Bが配列された直線)と略直交する直線L上に配列されている(図7参照)。光導波路35C及び遮光体39E,39Fは、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、直線L(光導波路35A,35B,35C及び遮光体39A,39Bが配列された直線)と略直交する直線L上に配列されている(図7参照)。なお、遮光体39C〜39F及び光導波路35B,35Cは、直線Lに沿う方向にそれぞれ延在している。
【0054】
図3に戻って、スライダ22が有する磁気ヘッド部32は、読取ヘッド部33の入出力端子にそれぞれ接続された一対の信号端子用の電極パッド371(図6も参照)と、記録ヘッド部34の両端にそれぞれ接続された一対の信号電極用の電極パッド373(図6も参照)と、ビアホール375aを介してスライダ基板220と電気的に接続されたグランド用の電極パッド375(図4も参照)とを更に備えている。これらの電極パッド371,373,375は、絶縁層38の露出面上に形成されている。なお、電極パッド375は、フレクシャ201の電極パッド274とボンディングワイヤ(図示せず)によって接続されている。そのため、電極パッド274によって、スライダ基板220の電位が例えばグランド電位に制御されることとなる。
【0055】
[3.2]光源ユニット
光源ユニット23が有する光源支持基板230は、図3に示されるように、板状を呈している。光源支持基板230は、図4に示されるように、アルミナ等によって形成された断熱層230aと、導電性のアルティック(Al・TiC)等によって形成された導電体層230bとを有している。断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201と接着されており、この面が光源支持基板230の接着面2300とされている。この接着面2300と隣り合う側面である素子形成面2303上には、アルミナ等の絶縁材料によって形成された絶縁層41が設けられている。
【0056】
絶縁層41の表面で且つ媒体対向面Sと交差する面411上(スライダ基板220の集積面2202と平行な面411上)には、レーザダイオード40の駆動用の電極パッド47,48が形成されている(図3参照)。電極パッド47は、絶縁層41の面411の中央部においてトラック幅方向に延在している第1部分47aと、第1部分47aの端部から光源支持基板230の底面2301に向けて延在している第2部分47bとを有している。一方、電極パッド48は、絶縁層41の面411において電極パッド47と離間した位置に形成されており、絶縁層41の面411の中央部においてトラック幅方向に延在している第1部分48aと、第1部分48aの端部から光源支持基板230の底面2301に向けて延在している第2部分48bとを有している。そして、電極パッド47,48は、フレクシャ201の電極パッド247、248とリフロー半田によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0057】
また、電極パッド47は、図4に示されるように、絶縁層41内に設けられたビアホール47cによって光源支持基板230の導電体層230bと電気的に接続されている。そのため、電極パッド47によって、導電体層230bの電位を例えばグランド電位に制御することが可能となっている。なお、この電極パッド47は、ビアホール47cと共に、レーザダイオード40駆動時の熱を導電体層230b側に逃がすための熱伝導路としても機能する。
【0058】
電極パッド47、48は、例えば、TaやTi等によって形成された下地層と、当該下地層上に真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成されたAuやCu等の層とによって構成することができる。TaやTi等の下地層の厚さとしては、例えば10nm程度に設定することができ、AuやCu等の層の厚さとしては、例えば1μm〜3μm程度に設定することができる。
【0059】
光源ユニット23が有するレーザダイオード40は、図4に示されるように、Au−Sn等の導電性の半田材料からなる半田層42によって電極パッド47上に固着され、電極パッド47と電気的に接続されている。つまり、電極パッド47の一部は、レーザダイオード40によって覆われており、レーザダイオード40は、電極パッド47を介して、光源支持基板230に支持されている。より詳しくは、レーザダイオード40は、後述する出光端400から出射されたレーザ光が光導波路35Aに導入されるように、光源支持基板230に支持されている(図3及び図4参照)。
【0060】
また、レーザダイオード40は、出光端400がスライダ基板220の背面2201よりも磁気ヘッド部32寄りとなるように、光源支持基板230に支持されている(図3及び図4参照)。レーザダイオード40をこのように支持することが可能なのは、上述したように、磁気ヘッド部32の背面32aよりもスライダ基板220の背面2201が外方に向けて突出した状態となっているためである。このようにすると、レーザダイオード40から出射されたレーザ光が光導波路35Aに到達する前に光源支持基板230において散乱することがなくなり、磁気ディスク10の加熱を十分に行うことができることとなる。
【0061】
レーザダイオード40は、通常、光学系ディスクストレージに使用されるものと同じ構造を有していてよく、例えば、図8に示されるように、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、*n−GaAs電流阻止層40hと、p−GaAsコンタクト層40iと、p電極40jとが順次積層された構造を有する。これらの多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するためのSiOやAl等からなる反射膜50,51が成膜されている。そして、一方の反射膜50には活性層40eに対応する位置に開口50aが設けられており、反射膜50が成膜されている面のうち開口50aに対応する領域が、レーザ光が放射される出光端400とされている。このようなレーザダイオード40においては、膜厚方向に電圧が印加されることにより、出光端400からレーザ光が出射される。
【0062】
出射されるレーザ光の波長λは、例えば600nm〜650nm程度である。ただし、近接場光発生部36の金属材料に応じた適切な励起波長が存在することに留意しなければならない。例えば、近接場光発生部36としてAuを用いる場合、レーザ光の波長λは、600nm近傍であることが好ましい。
【0063】
レーザダイオード40の大きさとしては、例えば、幅W40が200μm〜350μm、長さL40が250μm〜600μm、厚みT40が60μm〜200μm程度に設定することができる。ここで、レーザダイオード40の幅W40は、電流阻止層40hの対向端の間隔を下限として、例えば、100μm程度までに小さくすることができる。ただし、レーザダイオード40の長さは、電流密度と関係する量であり、それほど小さくすることはできない。いずれにしても、レーザダイオード40に関しては、搭載の際のハンドリングを考慮して、相当の大きさが確保されることが好ましい。
【0064】
また、レーザダイオード40は、ハードディスク装置1内の電源を使用することによって駆動することができる。実際、ハードディスク装置1は、通常、例えば2V程度の電源を備えており、この電圧はレーザ発振動作に十分な大きさである。また、レーザダイオード40の消費電力も、例えば、数十mW程度であるので、ハードディスク装置1内の電源で十分に賄うことができる。
【0065】
レーザダイオード40のn電極40aは、AuSn等の半田層42によって電極パッド47に固定されている。ここで、レーザダイオード40の出光端(光出射面)400は、図4の下向き(−Z方向)となっており(接着面2300と平行となっており)、光導波路35Aの光入射面354Aと対向している。実際にレーザダイオード40を固定する際には、例えば、電極パッド47の表面に厚さ0.7μm〜1μm程度のAuSn合金の蒸着膜を成膜し、レーザダイオード40を乗せた後、熱風ブロア下でホットプレート等によって200℃〜300℃程度までの加熱を行う。
【0066】
また、レーザダイオード40のp電極40jは、ボンディングワイヤによって電極パッド48と電気的に接続されている。なお、n電極40aがボンディングワイヤによって電極パッド48と電気的に接続され、p電極40jが半田層42によって電極パッド47に固定されるようにしてもよい。さらに、レーザダイオード40の光源支持基板230と接続される側を段差状に加工することによって、ボンディングワイヤを用いないで電極パッド48と電気的に接続することも可能である。
【0067】
ここで、上述したAuSn合金による半田付けをする場合、光源ユニット23を例えば300℃前後の高温に加熱することになるが、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21によれば、この光源ユニット23がスライダ22とは別に製造されるため、スライダ22の磁気ヘッド部32がこの高温の悪影響を受けずに済むようになっている。
【0068】
なお、レーザダイオード40及び電極パッド47,48の構成は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、レーザダイオード40は、GaAlAs系等、他の半導体材料を用いた他の構成のものであってもよい。また、レーザダイオード40と電極との半田付けに、他のろう材を用いて行うことも可能である。さらに、レーザダイオード40を、光源支持基板230上に直接半導体材料をエピタキシャル成長させることによって形成してもよい。
【0069】
[4]熱アシスト磁気ヘッドの回路構成
続いて、図9を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の回路構成について説明する。
【0070】
配線部材203を構成する配線の1つは、電極パッド247及び電極パッド47を介してレーザダイオード40のカソードに電気的に接続されており、別の配線は電極パッド248及び電極パッド48を介してレーザダイオード40のアノードに電気的に接続されている。電極パッド247,248間に駆動電流を供給するとレーザダイオード40が発光する。この光は、光導波路35A及び媒体対向面Sを介して磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に照射される。
【0071】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド237、ボンディングワイヤBW及び電極パッド373を介して、記録ヘッド部34の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド237間に電圧を印加すると、記録ヘッド部34に通電が行われ、書き込み磁界が発生する。熱アシスト磁気ヘッド21では、レーザダイオード40から出射されたレーザ光は、光導波路35Aの光入射面354Aに入射して、媒体対向面Sに設けられた光出射面353Aから出射し、磁気ディスク10の記録領域R(図6参照)に照射される。このとき、媒体対向面Sに対向する磁気ディスク10の記録領域Rの温度が上昇し、記録領域Rの保磁力が一時的に低下する。従って、この保磁力の低下期間内に記録ヘッド部34に通電を行い、書き込み磁界を発生させることで、記録領域Rに情報を書き込むことができる。
【0072】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド238、ボンディングワイヤBW及び電極パッド371を介して読取ヘッド部33の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド238に電圧を印加すると読取ヘッド部33にセンス電流が流れる。記録領域Rに書き込まれた情報は、読取ヘッド部33にセンス電流を流すことで読み出すことができる。
【0073】
[5]熱アシスト磁気ヘッドの製造方法
続いて、図10〜図13を参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の製造方法について説明する。
【0074】
まず、上述の構成を有するスライダ22と、上述の構成を有する光源ユニット23とを製造する。続いて、これらの良品とされるスライダ22と良品とされる光源ユニット23との位置合わせを行う。
【0075】
具体的には、図10に示されるように、スライダ22の媒体対向面S側にフォトダイオード等の光検出器DTを配置する。そして、電極パッド47,48間に電圧を印加してレーザダイオード40を発光させると共にスライダ基板220の背面2201と光源支持基板230の接着面2300とを重ね合わせた状態で、レーザダイオード40によるレーザ光が遮光体39D、光導波路35B及び遮光体39Cに向けてこの順にそれぞれ照射されるように、レーザダイオード40からレーザ光を照射させたままの状態で光源ユニット23を矢印A(図10及び図13の(a)参照)方向に所定の速度で移動(スキャン)させ、背面32aから媒体対向面Sへと透過したレーザ光の強度等の変化の様子を光検出器DTによって検出する。
【0076】
このときの光検出器DTの出力を図13の(b)に示す。図13の(b)に示されるように、レーザ光が絶縁層38に向けて照射されているときに光検出器DTの出力が最も大きくなり、レーザ光が遮光体39C,39Dに向けて照射されているときに光検出器DTの出力がほぼ0となり、レーザ光が光導波路35Bに向けて照射されているときに光検出器DTの出力が所定の大きさとなる。そのため、遮光体39Cと遮光体39Dとの間の位置、すなわち、光導波路35Bの位置を特定することができる。なお、レーザ光が光導波路35Bに向けて照射されているときよりも絶縁層38に向けて照射されているときの方が光検出器DTの出力が大きくなっているのは、光導波路35Bの方が絶縁層38よりも屈折率が高く、また、レーザ光が、全反射を繰り返して光導波路35Bを伝搬するうちに減衰してしまうためである。
【0077】
次に、電極パッド47,48間に電圧を印加してレーザダイオード40を発光させると共にスライダ基板220の背面2201と光源支持基板230の接着面2300とを重ね合わせた状態で、レーザダイオード40によるレーザ光が遮光体39Cと遮光体39Dとの間(光導波路35B)、遮光体39B、光導波路35A、遮光体39A及び遮光体35Cに向けてこの順にそれぞれ照射されるように、レーザダイオード40からレーザ光を照射させたままの状態で光源ユニット23を矢印B(図11及び図13の(a)参照)方向に所定の速度で移動(スキャン)させ、背面32aから媒体対向面Sへと透過したレーザ光の強度等の変化の様子を光検出器DTによって検出する。
【0078】
このときの光検出器DTの出力を図13の(c)に示す。図13の(c)に示されるように、レーザ光が絶縁層38に向けて照射されているときに光検出器DTの出力が最も大きくなり、レーザ光が遮光体39A,39Bに向けて照射されているときに光検出器DTの出力がほぼ0となり、レーザ光が光導波路35A〜35Cに向けて照射されているときに光検出器DTの出力が所定の大きさとなる。そのため、遮光体39Aと遮光体39Bとの間の位置、すなわち、光導波路35Aの位置を特定することができる。なお、レーザ光が光導波路35Aに向けて照射されているときよりも光導波路35B,35Cに向けて照射されているときの方が光検出器DTの出力が大きくなっているのは、光導波路35Aの光出射面353Aには近接場光発生部36が設けられており、光導波路35Aの光出射面353Aから出射される光は近接場光であって、この近接場光は進行波ではなく検出することが困難なためである。
【0079】
このようにして光導波路35Aの位置が特定されると、図12に示されるように、スライダ基板220の背面2201及び/又は光源支持基板230の接着面2300に、硬化することによって接着剤44となるUV硬化型接着剤44aを塗布する。UV硬化型接着剤44aとしては、UV硬化型エポキシ樹脂やUV硬化型アクリル樹脂等が挙げられる。そして、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、レーザダイオード40の出光端400が光導波路35Aと重なるようにスライダ22と光源ユニット23との位置合わせを行い、その位置で、スライダ基板220の背面2201と光源支持基板230の接着面2300とを重ね合わせる。
【0080】
その後、外部からUV硬化型接着剤44aに紫外線を照射することによりUV硬化型接着剤44aを硬化させ、スライダ22と光源ユニット23とを接着する。これにより、熱アシスト磁気ヘッド21が形成されることとなる。
【0081】
[6]作用
続いて、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21の作用について説明する。
【0082】
書き込み又は読み出し動作時には、熱アシスト磁気ヘッド21は、回転する磁気ディスク10の表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、読取ヘッド部33及び記録ヘッド部34の媒体対向面S側の端が磁気ディスク10と微小なスペーシングを介して対向することによって、データ信号磁界の感受による読み出しとデータ信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
【0083】
ここで、データ信号の書き込みの際、光源ユニット23から光導波路35Aを通って伝播してきたレーザ光が近接場光発生部36に到達し、近接場光発生部36から近接場光が発生する。この近接場光によって、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0084】
そして、熱アシスト磁気記録方式を採用することにより、高保磁力の磁気ディスク10に垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドを用いて書き込みを行い、記録ビットを極微細化することによって、例えば、1Tbits/inch級の記録密度を達成することも可能となり得る。
【0085】
また、以上のような本実施形態においては、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、光導波路35B、遮光体39B、光導波路35A、遮光体39A、光導波路35Cが、この順で同一の直線L上に配列されている。また、本実施形態においては、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、遮光体39C,39Dが、直線L(光導波路35B)を間に置いて相対するように配列されている(すなわち、遮光体39C、光導波路35B、遮光体39Dが、この順で同一の直線L上に配列されている)。また、本実施形態においては、背面32a(媒体対向面S)から見たときに、遮光体39E,39Fが、直線L(光導波路35C)を間に置いて相対するように配列されている(すなわち、遮光体39F、光導波路35C、遮光体39Eが、この順で同一の直線L上に配列されている)。そのため、まず、背面32a側に位置するレーザダイオード40から出射されたレーザ光が、遮光体39Dに向けて照射された後に遮光体Cに向けて照射されるように、レーザダイオード40からレーザ光を照射させたままの状態で光源ユニット23を移動(スキャン)させて、背面32aから媒体対向面Sへと透過したレーザ光(磁気ヘッド部32を透過したレーザ光)の強度等の変化の様子を媒体対向面S側に位置する光検出器DTによって検出することで、遮光体39Cと遮光体39Dとの間の位置(光導波路35Bの位置)を特定することができる。続いて、レーザダイオード40から出射されたレーザ光が、特定された遮光体39Cと遮光体39Dとの間の位置(光導波路35B)を通ると共に直線Lに沿うように、レーザダイオード40からレーザ光を照射させたままの状態で光源ユニット23を移動(スキャン)させて、背面32aから媒体対向面Sへと透過したレーザ光(磁気ヘッド部32を透過したレーザ光)の強度等の変化の様子を媒体対向面S側に位置する光検出器DTによって検出することで、光導波路35Aの位置を特定することができる。従って、2つの異なる方向から光導波路35Aの位置を特定することができるようになるので、レーザダイオード40と光導波路35Aとの位置合わせを極めて高精度に調整できる。その結果、磁気ディスク10への高密度の書き込みを実現することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態においては、遮光体39A〜39Fが背面32aに露出している。光は、進行するにつれて進行方向に対し交差する方向に拡がる性質を有しているので、このようにすることで、遮光体39A〜39Fによってレーザダイオード40から出射されたレーザ光を確実に遮光できるようになる。その結果、光導波路35Aの位置をより高精度に特定することが可能となる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では近接場光発生部36が三角形状を呈していたが、頂点36vが平らになった台形状としてもよく、また、三角形状又は台形状の板を、その頂点同士または短辺同士が所定距離離間して対向するように一対配置した、いわゆる「蝶ネクタイ型」構造でも実施可能である。この「蝶ネクタイ型」構造においては、その中心部に非常に強い電界の集中が発生する。
【0088】
また、近接場光発生部36として、光導波路35Aの媒体対向面S側にレーザ光の波長よりも小さい微小な開口を設けてもよい。
【0089】
また、本実施形態では薄膜コイル342が1層設けられていたが、薄膜コイル342を2層以上設けてもよく、又は、ヘリカルコイルとしてもよい。
【0090】
また、断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201側に形成されていてもよく、全く設けなくても実施は可能である。
【0091】
また、光源ユニット23とスライダ22との接着に、UV硬化型接着剤以外の接着剤、例えば、レーザダイオード40と電極パッド47との接着に用いたAuSn等の半田層を用いても実施は可能である。
【0092】
また、光導波路35Aからの出射光の強度を最も大きくすることができれば、コア部35aの媒体対向面S側の端面が媒体対向面Sに露出していなくてもよい。
【0093】
また、光導波路35B,35Cは、全てが光導波路35Aのコア部35aと同一の材料によって構成されていたが、光導波路35Aと同様に、光導波路35B,35Cのうちコア部35aに相当する部分が、背面32aに露出していなくてもよく、また、媒体対向面Sに露出していなくてもよい。また、磁気ヘッド部32に光導波路35B,35Cが設けられていなくてもよい。
【0094】
また、遮光体39A〜39Fは、背面32aに露出していなくてもよく、また、媒体対向面Sに露出していてもよい。
【0095】
また、光導波路35A及び遮光体39A,39Bが同一の直線L上に配列されていれば、遮光体39A,39Bは、光導波路35Aを間に置いて相対するように配置されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、ハードディスク装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、熱アシスト磁気ヘッドの媒体対向面が上方を向いた状態で示す、ヘッドジンバルアセンブリの斜視図である。
【図3】図3は、熱アシスト磁気ヘッドを示す斜視図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、媒体対向面から見た状態で示す、磁極端部及び光導波路の部分拡大図である。
【図6】図6は、熱アシスト磁気ヘッドの主要部を示す斜視図である。
【図7】図7は、主として光導波路及び遮光体を示す斜視図である。
【図8】図8は、レーザダイオードを示す斜視図である。
【図9】図9は、熱アシスト磁気ヘッドの回路構成を示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドを製造する一工程を示す図である。
【図11】図11は、図10の後続の工程を示す図である。
【図12】図12は、図11の後続の工程を示す図である。
【図13】図13の(a)は、磁気ヘッド部の背面から見た状態で示す、光導波路及び遮光体の部分拡大図であり、図13の(b)は、光源ユニットが矢印A方向に移動したときの、光検出器の出力の変化の様子を示す図であり、図13の(c)は、光源ユニットが矢印B方向に移動したときの、光検出器DTの出力の変化の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1…ハードディスク装置、10…磁気ディスク(磁気記録媒体)、17…ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)、20…サスペンション、21…熱アシスト磁気ヘッド、22…スライダ、220…スライダ基板、23…光源ユニット、230…光源支持基板、32…磁気ヘッド部、32a…背面、33…読取ヘッド部、34…記録ヘッド部(電磁変換素子)、340…主磁極層、340a…磁極端部、342…薄膜コイル、344…補助磁極層、35A〜35C…光導波路、36…近接場光発生部、38…絶縁層、39A〜39F…遮光体、40…レーザダイオード、S…媒体対向面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に対向する媒体対向面及び前記媒体対向面と対向する背面を有する磁気ヘッド部を備える熱アシスト磁気ヘッドであって、
前記磁気ヘッド部は、
電磁変換素子と、
前記媒体対向面と前記背面との対向方向に沿って延在する第1光導波路と、
前記媒体対向面と前記背面との間に位置すると共に前記媒体対向面と前記背面との間における光の透過を妨げる第1遮光体、第2遮光体、第3遮光体及び第4遮光体とを有し、
前記第1光導波路並びに前記第1遮光体及び前記第2遮光体は、前記媒体対向面又は前記背面から見たときに、同一直線上に配列されており、
前記第1光導波路並びに前記第1遮光体及び前記第2遮光体が配列された前記直線は、前記媒体対向面又は前記背面から見たときに、前記第3遮光体と前記第4遮光体との間に位置しており、
前記第3遮光体及び前記第4遮光体は、前記媒体対向面又は前記背面から見たときに、前記第1光導波路並びに前記第1遮光体及び前記第2遮光体が配列された前記直線と略直交する直線上に配列されている熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第1光導波路は、前記媒体対向面又は前記背面から見たときに、前記第1遮光体と前記第2遮光体との間に位置している請求項1に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第3遮光体及び前記第4遮光体は、前記媒体対向面又は前記背面から見たときに、前記第1光導波路並びに前記第1遮光体及び前記第2遮光体が配列された直線に沿う方向にそれぞれ延在している請求項1又は2に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第1遮光体、前記第2遮光体、前記第3遮光体及び前記第4遮光体は、前記背面に露出している請求項1〜3のいずれか一項に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項5】
前記磁気ヘッド部は、前記媒体対向面と前記背面との対向方向に沿って延在する第2光導波路を更に有し、
前記第2光導波路は、前記媒体対向面又は前記背面から見たときに、前記第3遮光体と前記第4遮光体との間に位置している請求項1〜4のいずれか一項に記載された熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された熱アシスト磁気ヘッドと、
前記熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションとを備えるヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載されたヘッドジンバルアセンブリと、
前記媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備えるハードディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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