説明

熱アシスト磁気記録ヘッド、およびプラズモンアンテナの製造方法

【課題】高密度記録に好適なTAMRヘッドを提供する。
【解決手段】本発明のTAMRヘッドは、通電された際に、磁気記録媒体に書き込みを行うための記録磁界を発生させる磁極と、電磁放射の放射源と、1対の側面を有する磁気コアと、エアベアリング面と平行な断面において1対の側面をコンフォーマルに覆う導電材料からなるプラズモン生成層とを含むプラズモンアンテナと、プラズモンアンテナに電磁放射を導くとともに、電磁放射と、プラズモンアンテナの内部で生成されたプラズモンモードとを結合させる導波路とを備える。プラズモン生成層は、エアベアリング面と直交する方向において厚さが変化し、エアベアリング面に最も近い位置において最も薄く、かつ、導波路に隣接する領域内において最も厚い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高保磁力および高磁気異方性を有する磁気メディアへの書き込みを可能とすべく、熱アシスト磁気記録(TAMR:thermally assisted magnetic recording)に基づく熱アシスト磁気記録ヘッド、およびそれに搭載される、記録再生ヘッドから磁気メディアへと所要の熱エネルギーを輸送するためのプラズモンアンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1インチ四方あたり1〜10テラビットの面データ密度の磁気記録の実現は、新規な磁気記録媒体および磁気記録ヘッドと、特にいわゆる超常磁性効果(superparamagnetic effect)の発現を遅らせることが可能な新規な磁気記録手法の発展とに密接に関係している。超常磁性効果は、所要のデータ密度を得るために情報を記録せねばならない極小領域における熱不安定性である。この熱不安定性を回避する方法は、高い磁気異方性および高い保磁力を有し、かつ高いデータ密度を得るために小型化が益々加速する記録ヘッドを用いても依然として書き込み可能な磁気記録媒体を用いることである。この問題に対処するための上記方法は、以下の2つの矛盾する要件を生じさせる。すなわち、第1に、異方性および保磁力の高い磁気メディアによって、さらに強力な記録磁界の必要性が余儀なくされること、第2に、十分な分解能を有するより小型の記録ヘッドが必要となる一方、そのような記録ヘッドの磁界勾配は小さい上、磁界プロファイルは広く、記録を行う上で不利であること、の2つの問題が生じる。
【0003】
これらの要件を同時に満たすことは、最先端のハードディスクドライブ(HDD)に用いられている現状の磁気記録手法のさらなる発展に対して制限要因となり得る。この場合、このような現状の手法を用いては記録面密度のさらなる増加は見込めない。これらの矛盾する要件に対処する方法の1つは、アシスト記録の手法、とりわけ熱アシスト磁気記録を用いることである。
【0004】
上記問題を解消するために適用されている、アシスト記録手法を用いた従来技術の形態に共通する特徴として、記録ヘッドによって生じる磁界とは直接関係しない物理的な方法を用いることにより、エネルギーを磁気記録系へと輸送していることが挙げられる。そのようなアシスト記録手法が、局所的な記録磁界領域における弱磁場記録を可能とする媒体特性プロファイル(a medium-property profile)を生成することができると仮定した場合、媒体特性プロファイルと記録磁界との双方の空間的勾配における相乗効果により、弱い記録磁界を用いた場合であっても高密度記録を達成することができる。このような従来のアシスト記録手法は、1μmを大幅に下回る大きさの局所領域を、光ビームを用いて、または超高周波交流磁界を発生させることにより加熱することを要する。
【0005】
熱アシスト磁気記録の加熱効果は、磁気メディアの微小領域の温度をほぼそのキュリー温度(Curie temperature)Tcにまで上昇させることによって作用する。このキュリー温度Tcでは、その保磁力と磁気異方性との双方が著しく低下し、その微小領域における磁気記録が容易となる。
【0006】
以下、熱アシスト磁気記録に特有の手法について説明する。熱アシスト磁気記録では、磁気メディアと、光周波数レーザにより励起されたエッジプラズモンの近接場との相互作用を通じて、磁気メディアにおいてサブミクロンの大きさを有する微小領域へと電磁エネルギーが輸送される。輸送された電磁エネルギーは、その記録媒体の温度を局所的に上昇させる。
【0007】
エッジプラズモンは、導電性を有する小さなプラズモンアンテナ(PA:Plasmon antenna)において励起される。プラズモンアンテナは、約200nmの幅を有し、記録再生ヘッド構造の内部に設けられる。光学励起源は、例えば、同様に記録再生ヘッド構造の内部に設けられたレーザダイオードや、この記録再生ヘッド構造の外部に設けられたレーザ源である。これらはいずれも、光導波路(WG:Optical Waveguide)などの中間輸送手段を介して、その光学的放射光線をアンテナへと導く。この光導波路によって、入射放射線の光学モードが、プラズモンアンテナにおけるプラズモンモードと結合し、これにより光エネルギーがプラズモンエネルギーへと変換される。このプラズモンエネルギーは、プラズモンアンテナによって磁気メディアの表面へと収束され、その収束部分を加熱する。この磁気メディア上の加熱部分と、記録ヘッドの磁極により生じた磁界とが正確に合致すると、熱アシスト磁気記録がなされる。以下の従来技術は、種々の形態の熱アシスト磁気記録の手法を説明している。
【0008】
特許文献1は、エッジプラズモンモード結合を利用した熱アシスト磁気記録構造を記載している。特許文献1では、Au(金)などの導電性材料より構成される近接場生成器が示されているものの、磁性材料については開示されていない。
【0009】
特許文献2は、磁界を検出するために用いられるフェライト磁気コアを採用したアンテナについて記載している。
【0010】
特許文献3は、2つの磁性層と、この磁性層間に設けられた貴金属層とを有するアンテナを開示している。
【0011】
特許文献4は、非磁性材料により形成された構造において、V字状の溝と、この溝の最深部に対向した突出部とを採用することによりプラズマ発生効率を改善することについて開示している。
【0012】
特許文献5は、熱アシスト磁気記録に用いられる磁気コアを有するプラズモンアンテナを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0103553
【特許文献2】米国特許第6538617号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0027161
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0201600
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0315735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来技術はいずれも、以下詳細に説明する本発明が解決しようとする課題について対処していない。
【0015】
図1は、従来のTAMR構造の一例を模式的に示すエアベアリング面(破線で示す)に沿った平面図およびエアベアリング面と直交した断面図である。ここでは、エアベアリング面をxy座標で示しており、磁気メディアの面内のクロストラック方向をx軸方向とし、ダウントラック方向をy軸方向としている。この縦方向(y軸方向)断面図の場合、x軸方向は紙面の奥側から手前側の方向であり、z軸方向は、ヘッドのエアベアリング面へと向かう方向である(端面方向)。
【0016】
従来の磁気記録ヘッドは、主磁極(MP:Main Pole)1と、その主磁極1の内部に記録磁界を生成する記録コイル5(図1では、一例として3回巻回された記録コイル5の断面が示されている)と、リターンポール3とを有している。主磁極1は、エアベアリング面に露出する端面の形状が矩形のものである。一般に、主磁極1から放出された磁束は、磁気メディアを通過したのち、リターンポール3へ戻ることとなる。
【0017】
光導波路(WG:Waveguide)4は、光導波路電磁波6を記録ヘッドのエアベアリング面(ABS)へ向けて導くものである。記録ヘッドのエアベアリング面の端面は、その記録ヘッドの端面とも称し、各構成要素においてエアベアリング面に最も近接する端部を、それらの構成要素の端面とも称する。プラズモンアンテナ2は、エアベアリング面に至るまで延在するとともに、主磁極1に隣接し、エアベアリング面に露出した端面が三角形状をなすものである。光導波路4の端面は、エアベアリング面の位置ではなく、エアベアリング面から長さ(深さ)dだけ離れた位置にある。電磁波の光周波数モード6は、プラズモンアンテナ2のエッジプラズモンモード7と結合しており、プラズモンモード7からのエネルギーは、磁気メディア表面へと輸送される。それにより、プラズモンアンテナ2のエアベアリング面に露出した三角形状の端面と対応する位置の磁気メディアの表面は局所的に加熱される。
【0018】
図1に示した従来の記録磁気ヘッドにおける構造上の有利な点は、光導波路4が記録磁気ヘッドにおけるエアベアリング面に到達する前に途切れており、その結果、電磁波の漏れが低減されることである。一方、エッジプラズモンモード7からのエネルギーは、エアベアリング面に到達すると、即座に、磁気メディアにおける空間的に限られた領域において、大きな熱勾配を形成することができる。長い寸法を有すると共に大きな体積の金属化合物からなるプラズモンアンテナ2は、熱による損傷を十分に低減することができる。
【0019】
ところで、上記の従来技術では、プラズモンアンテナに使用される材料はAg(銀)やAu(金)などの金属である。これらの材料は、光励起によるプラズモンモードを生じさせるのに優れていることが知られている。しかしながら、磁気メディア表面でのエネルギー輸送の一部における光加熱プロファイルを調整するにあたり、磁気記録ヘッドによって生じる磁界プロファイルの問題は依然として存在している。
【0020】
図2の上方のグラフは、一般的なTAMRヘッドにおける記録磁界プロファイル8を表わし、図2の下方のグラフは、一般的なTAMRヘッドにおける加熱プロファイル(heating profile)9を表わす。これら記録磁界プロファイル8および加熱プロファイル9は、図1に示したTAMRヘッドによる磁気メディア表面上のヒートスポット(プロファイルのピーク)に対応する位置でのものである。図2の各グラフの横軸は、図1のY軸方向に対応している。図2の上方のグラフの縦軸は磁界Hzを表わし、図2の下方のグラフの縦軸は熱強度Pheatを表わしている。どちらのプロファイルも磁気メディア上の微小部分に局在している。なお、図2には、プラズモンアンテナ2および主磁極1のABSに露出した端面の形状および位置が、グラフに対応して記載されている。
【0021】
図2に示したように、ヒートスポットは主磁極のリーディングエッジから離れた位置に生じている。この位置は十分な記録分解能を得るのに十分な加熱を行うことができるが、2つの曲線の相対位置は最適なものではない。TAMRヘッドの利益を最大限に引き出すには、加熱プロファイル9の傾斜が、記録磁界プロファイル8における最大の傾斜部分10,11と一致していることが必要である。その場合、2つの最大傾斜の相乗因子(a multiplicative factor)が得られるからである。
【0022】
しかしながら、加熱プロファイルと磁界プロファイルとの整合は、最適化するにあたり、例えば、光導波路の厚さおよび配置、プラズモンアンテナの設計上の選択、製造時の配列の困難性などによって生じる構造上の制限を受ける。
【0023】
図3(A)は、上記特許文献5に係るTAMRヘッドの他の形態を簡略化したものの一部を、エアベアリング面から眺めた概略正面図を表している。図3(A)は、プラズモンアンテナ22のエアベアリング面と、隣接する光導波路23の端面(エアベアリング面から後退した端面)とを示している。プラズモンアンテナ22は、磁性材料からなるコア24と、その周囲を部分的に覆うクラッド層27(網掛けで示す)とを有している。クラッド層27は、非磁性高導電性材料(例えばAu,Agなど)からなる。プラズモンアンテナ22は、エアベアリング面と平行な断面が例えば二等辺三角形もしくは正三角形をなし、かつ、エアベアリング面と直交する方向へ延在する細長い三角柱状のものである(後の図面においてより明確に示されている)。以下、磁性材料のコアを有するこのようなアンテナを、磁気コアアンテナ(MCA:Magnetic Core Antenna)と称する。
【0024】
図3(B)は、図3(A)に示したTAMRヘッドの概略斜視構成を表している。図3(B)に示すように、プラズモンアンテナ22は、その頂点22が光導波路23の上面と対向するように、光導波路23と同方向へ延在している。 このため、クラッド層27の頂点領域に略限定されたエッジプラズモン7と、光導波路23の内部の電磁光学モード6との結合が促進される。コア24は、主磁極21(図3(B)では不図示)の磁束の向きを制御することにより、磁気メディアの内部でプラズモンフィールドによって熱エネルギープロファイルを生成し、それを最適に整合させるように機能する。
【0025】
図4は、図3(B)に示したMCAを有するTAMRヘッドに特有の配置構造におけるエアベアリング面と直交する断面の構成を表している。図4に示すように、磁気ヘッドの主磁極21には、図3(B)に示した先の発明に係るプラズモンアンテナ22(MCA)が取り付けられ、または隣接して設けられている。図4に示したように、プラズモンアンテナ(MCA)22および主磁極21は、共に破線で示すエアベアリング面に露出した端面を有している。光導波路23は、プラズモンアンテナ(MCA)22に隣接しているが、エアベアリング面には露出していない。すなわち、光導波路23は、エアベアリング面から遠ざかる方向に所定の距離を有する位置に設けられている。図4において、プラズモンアンテナ(MCA)22の、エアベアリング面に露出した端面の形状を、破線で取り囲まれた位置に拡大して示す。コア24は、FeCoやNiFeからなり、Auなどからなるクラッド層27により部分的に覆われている(強調のため網掛けで示す)。この構造において、プラズモンアンテナ(MCA)22の平坦な底面(頂点22EGと反対側の、クラッド層27によって覆われていない面)は、主磁極21のトレーリングエッジと平行である。一方、頂点22は、光導波路23と対向して近接している。一方、エッジプラズモンモードを支えるプラズモンアンテナ(MCA)22の頂点は、主磁極21のトレーリングエッジから離間した位置に対向して設けられ、光導波路23と直ちに隣接している。光導波路23は、プラズモンアンテナ(MCA)22のダウントラック方向に位置し、その端面はエアベアリング面から離間している。光導波路23からプラズモンアンテナ(MCA)22へ向かう破線矢印は、放射結合を表す。さらに、プラズモンアンテナ(MCA)22から放出される破線矢印は、プラスモンエネルギーを示す。また、主磁極21およびプラズモンアンテナ(MCA)22から放出される実線矢印は、記録磁界を表す。なお、プラズモンアンテナ(MCA)22からの記録磁界は、コア24によって放出され、プラズモンアンテナ(MCA)22からのプラズモンエネルギーは、クラッド層27によって放出される。
【0026】
記録動作の間、主磁極21とプラズモンアンテナ(MCA)22のコア24との間隔が狭ければ(最も好ましくは接していれば)主磁極21によって生成される記録磁界はコア24を磁化し、飽和させることができる。したがって、プラズモンアンテナ(MCA)22のコア24は、その役割がエッジプラズモンモードの発熱特性に寄与するというよりはむしろ、加熱された磁気メディア上のヒートスポットへと磁束を案内することにある点で、MCA構造の一部ではなく主磁極構造の一部として考えることができる。
【0027】
図5は、図4に示したTAMRヘッドの、主磁極21近傍の磁界分布を表す特性図である。曲線(実線)20は、プラズモンアンテナ(MCA)22が存在する場合を表し、曲線(破線)25は、プラズモンアンテナ(MCA)22が不在の場合を表している。図中、プラズモンアンテナ(MCA)22が不在の場合とは、純金より構成され、磁気コアを有しないプラズモンアンテナの場合に実際に対応する。また、図中の横軸は、ダウントラック方向における磁極の中心からの距離をミクロン単位で表わしている。図5に示したように、磁気メディアにおけるヒートスポット(加熱領域)は、主磁極21の中心位置から約0.35μmの位置である。磁界強度分布は、主磁極21に対応する位置(−0.3以上+0.2μm以下の範囲)においては実質的に一定である。プラズモンアンテナ(MCA)22が存在しない場合(破線の曲線25)、磁界強度は、主磁極21に対応する位置から外れると、著しく低下する。
【0028】
一方、プラズモンアンテナ(MCA)22が存在する場合(実線の曲線20)、磁界強度は、主磁極21に対応する位置から外れたのち上昇し(MCAが不在の場合における約4kOe(406/4π[A/m])の値と比較して、約10kOe(106/4π[A/m])まで上昇する)、プラズモンアンテナ(MCA)22のトレーリング側のエッジ部分に対応する位置(0.35μm)でピークを示す。しかしながら、実際に加熱されたヒートスポットは、図4に示したクラッド層27(プラズモン生成層)の外縁部またはそれを超えた位置である、約0.4μmの部分に位置している。これは、プラズモンアンテナ(MCA)22の存在下において、磁界プロファイル中、最も強力な磁界および最も急峻な勾配となる部分は、磁気コア(図4に示したコア24)の縁部に位置する一方、加熱された実際のヒートスポットは、この磁気コアを覆うプラズモン生成層(図4に示したクラッド層27)の縁部に位置していることを表している。以上の結果から、ピーク磁界およびピーク勾配と、加熱のピークポイントとの隔たりを低減するために、プラズモンアンテナ(MCA)22におけるプラズモン生成層(クラッド層27)が薄いことが好ましい。
【0029】
図6は、プラズモンアンテナ(MCA)22におけるプラズモン生成層(クラッド層27)の厚さと、エッジプラズモンモードを介した輸送パワーの結果を表す特性図である。ここでは、プラズモンアンテナ(MCA)22は、均一なコア寸法を有し、MCA長さに沿って均一な厚さのプラズモン生成層(クラッド層27)を有していることを前提としている。また、銀(Ag)合金膜と純金(Au)膜との双方について検討した。図6の縦軸に示すプラズモンモードのパワーの値は、純金よりなるプラズモンアンテナを用いてMCAプラズモンモードで輸送されたパワーに対する、銀合金よりなるプラズモンアンテナを用いてMCAプラズモンモードで輸送されたパワーの比をパーセントで表わしている。図6は、プラズモン生成層(クラッド層27)の厚さが減少するに伴い、光エネルギーとプラズモンモードとの結合効率が著しく低下することを示している。したがって、薄いプラズモン生成層(クラッド層27)を用いた場合、磁気メディアの加熱が少なくなることが予想される。以上から、磁界のピークと加熱のピークとの位置の隔たりを少なくすることと、記録メディアの効率的な加熱を得ることとの間にはトレードオフの関係にある。上述した先行技術文献はいずれもこのトレードオフや、これを有利に解決する方法について対処していない。
【0030】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、TAMRヘッド構造のプラズモンアンテナにおけるプラズモンモードと光学モードとの結合効率に著しい悪影響を及ぼすことなく、磁気メディアに対する最大磁界の印加点と、その磁気メディアに対する加熱点との間隔を最適化した熱アシスト磁気記録ヘッドを実現することにある。
【0031】
本発明の他の目的は、熱アシスト磁気記録ヘッドの、プラズモンアンテナにおけるプラズモンモードと光導波路における光学モードとの結合の際のエネルギーロスを、最小限に抑えることにある。
【0032】
本発明のさらに他の目的は、現在の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造技術を著しく変更することなく、前述の目的を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的は、CoFeやNiFe等の磁性材料のコアを有するMCAと、このMCAを覆い、可変厚の厚さに形成され、プラズモンモードを生じさせる、AuやAg等の非磁性高導電性金属のプラズモン生成層(PGL:Plasmon Generating Layer)とを有する、TAMRヘッドのプラズモンアンテナ構造を用いることにより達成される。PGLの厚さは、このPGLにおける光学モードとプラズモンモードとの結合の結合長の範囲内で、この結合効率のロスを少なくすべく、十分な厚さとなるように設定されている。そして、PGLの厚さはTAMRヘッドのエアベアリング面に到達するに伴い急激に減少する。その結果、プラズモンアンテナの磁気コアの縁部は、PGLの縁部と、より近接することになる。これにより、磁界ピークと加熱ピークとの隔たりが減少することになる。このPGLの薄い部分は、エアベアリング面に近接したMCAの短いわずかな部分のみを占めるため、プラズモン結合の全効率に与える影響はほとんどない。
【0034】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドは、
(A1)通電された際に、磁気記録媒体に書き込みを行うための記録磁界を発生させる磁極と、
(A2)電磁放射の放射源と、
(A3)1対の側面を有する磁気コアと、エアベアリング面と平行な断面において前記1対の側面をコンフォーマルに覆う導電材料からなるプラズモン生成層とを含むプラズモンアンテナと、
(A4)プラズモンアンテナに電磁放射を導くとともに、電磁放射と、プラズモンアンテナの内部で生成されたプラズモンモードとを結合させる導波路と
を備える。
ここでプラズモン生成層は、エアベアリング面と直交する方向において厚さが変化し、エアベアリング面に最も近い位置において最も薄く、かつ、導波路に隣接する領域内において最も厚い。プラズモンアンテナは、プラズモンモードにより生じたエネルギーを磁気記録媒体の局所領域へと輸送することにより、局所領域を加熱し、その保磁力および磁気異方性を減少させる。プラズモンアンテナの磁気コアは、記録磁界を局所領域へと導き、これにより局所領域における記録磁界の強度および勾配が、輸送されたプラズモンモードの熱エネルギーにおける熱エネルギープロファイルとの組み合わせにより、保磁力および磁気異方性が減少した領域において書き込みを行うための最良の状態を形成する。
【0035】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドでは、電磁放射が光周波数の範囲内にあり、導波路が光導波路であるとよい。また、磁気コアは、磁性材料からなり、磁極と一体化され、磁極から突出するとともに磁極に沿って直線状に延びており、プラズモン生成層は磁気コアを覆うように形成されているとよい。また、磁気コアは、磁性材料からなり、磁極と同一直線上において磁極から一定の間隔で離間して配置され、プラズモン生成層は磁気コアを覆うように形成されているとよい。その場合、磁気コアは角柱状を有し、磁極と平行な底辺を有し、かつ磁極から100nm未満の間隔で配置されているとよい。さらに、磁気コアと磁極との間の空間は、Al23またはSiO2などの絶縁性非磁性材料により満たされているとよい。プラズモン生成層は、いずれも同じ断面形状を有する一連の第1から第3の部分からなり、第1の部分は、プラズモンアンテナのエアベアリング面を起点として後方へ延在し、第1の長さおよび第1の厚さを有し、第2の部分は、第1の部分と第3の部分との間の遷移部を構成し、厚さが変化するものであり、第3の部分は第3の厚さを有するとよい。
【0036】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドでは、磁気コアは、FeCoもしくはNiFeである磁性材料より形成され、または、Fe、CoもしくはBの単体あるいは化合物からなり、導電材料は、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Ta、もしくはGeまたはそれらの合金であるとよい。また、磁気コアは、磁極から物理的に離間しかつ磁極と同一直線上に位置する三角柱であり、プラズモン生成層は、三角柱の2つの側面と、それらの側面が交差する三角柱の頂点とをコンフォーマルに覆い、頂点とは反対側に位置し、かつ磁極から所定間隔を有するように離間しつつこれに隣接する三角柱の底辺が、導電材料からなる層により覆われずに露出しているとよい。また、磁気コアは、磁極の一体部分であるとともに、磁極から突出する三角形状の水平断面を有する三角柱であり、プラズモン生成層は、三角柱の2つの側面と、それらの側面が交差する三角柱の頂点とをコンフォーマルに覆うものであるとよい。頂点は、磁極に平行な直線状の縁部を形成しているとよい。あるいは、頂点は、磁極に平行な直線状の縁部である第1の部分と、第1の部分と連続し、磁極に向かってテーパ状となる直線状の縁部であってエアベアリング面において終了する第2の部分とを含んでいてもよい。また、プラズモンアンテナは、導波路と磁極との間に設けられ、プラズモンアンテナの頂点は、導波路と直に隣接して設けられ、三角柱の底辺が、磁極の側面と平行に並び、かつ側面から一定間隔を有するように離間しているとよい。
【0037】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドでは、磁気記録シールドをさらに備え、その磁気記録シールドが、エアベアリング面に含まれる第1の面と、第1の面に平行であり、エアベアリング面から離れて位置し、導波路の端面に隣接しかつこれに平行な第2の面と、第1の面および第2の面に対して垂直であり、プラズモン生成層の頂点に隣接する第3の面とを有するものであってもよい。
【0038】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドに関する各種構成例を、図7〜10に示す。図7〜10は、それぞれ、可変厚のPGLを有するMCAの近傍を模式的に表した図である。図7は、MCAと磁気記録用の磁極(MP:Magnetic Write Pole)とが一体化されている、すなわち、PGL32が、磁極39と一体化された磁気コアとしての突起部34を覆うように形成されている例である。図7(A)は側方から眺めた図であり、図7(B)はエアベアリング面(ABS)から眺めた図である。図7(B)に示したように、ABSにおいて、磁極39は三角柱状の突起部34と共に一体に成形されており、この突起部34を覆うようにPGL32が形成されている。光導波路33は、MCAのPGL層32に隣接し、その一部のみがPGL層32と部分的に重なっている。したがって、光導波路33の端面は、ABSに露出しておらず、ABSから一定の距離だけ後退した位置にある。なお、光導波路33の端面は、ABSに露出していてもよい。
【0039】
図8は、図7(B)に破線で示した中心線CLに沿った縦断面図であり、PGL32(判別のために網掛けで示す)の厚さがABSと直交する方向(奥行き方向)に沿って変化している様子を示している。光導波路33と対向する領域の肉厚部は、それよりもABSの近くに位置する肉薄部よりも、その奥行き方向の寸法が大きい。その結果、PGL32と光導波路33との重複領域において、光学モードとプラズモンモードとの結合を効率的に生じさせるための十分な長さが確保されている。
【0040】
図9(A),9(B)は、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドに関する他の構成例を表している。図9(A)は側方から眺めた図であり、9(B)はABSと直交する方向から眺めた図である。図9(A),9(B)に示したように、MCA(磁気コア31およびPGL32)は、磁極39から物理的に離間している。MCAは、ここでは独立した磁気コア31を有し、PGL32により部分的に覆われている。この磁気コア31と磁極39との間の分離部GPは、非導電性かつ非磁性の材料、好ましくはAl23またはSiO2などの酸化物によって満たされている。分離部GPの厚さは、好ましくは100nm未満である。
【0041】
図10は、図9(B)に破線で示した中心線CLに沿った縦断面図であり、PGL32(判別のために網掛けで示す)の厚さが奥行き方向に沿って変化している様子を示している。光導波路33と対向する領域の肉厚部は、それよりもABSの近くに位置する肉薄部よりも、その奥行き方向の寸法が大きい。その結果、PGL32と光導波路33との重複領域において、光学モードとプラズモンモードとの結合を効率的に生じさせるための十分な長さが確保されている。
【0042】
図11は、図7および図8または図9および図10に示した構造のTAMRヘッドにおける縦断面をより詳細に示す模式図であり、ABSと直交する断面においてPGL32の厚さが変化している様子を表している。図11では、その様子をより厳密に示すために、MCAの、奥行き方向に沿った各位置での断面50,51および52を示している。ABSに最も近接する部分32A(断面52)の厚さT1は、最小となっており、好ましくは60nm以下である。反対に、ABSから最も離れて位置する部分32C(断面50)の厚さT2は、部分32Aの厚さよりも10nm以上厚い。さらに、それらの間の部分32B(断面51)の厚さは、厚さT2と厚さT1との間で単調に変化している。PGL32が占める範囲に相当するMCAの全長TLは、PGL32の最も薄い部分(すなわち、部分32A)が占める範囲の長さLAの2倍以上の長さであることが好ましい。
【0043】
なお、実際の記録処理の際、図7〜図10に示したTAMRヘッド(または以下に説明する各実施の形態のTAMRヘッド)は、磁極39からMCAを経たのち光導波路33に至る方向、または光導波路33からMCAを経たのち磁極39へ至る反対方向へと磁気メディアに対して移動可能である。そのような方向の選択は、可能な限り高い記録密度を得るための移動方向を決定づけるものである、磁気メディアにおける実際の磁界プロファイルと加熱プロファイルとによって左右される。したがって、MCAは、実際のTAMRヘッドの磁極39におけるトレーリングエッジまたはリーディングエッジに設置することができる。ただし、いずれの場合においても、奥行き方向において厚みが異なるPGL層32を用いることによってより高いプラズモン結合効率を得るという概念は同じである。
【0044】
図14は、図12および図13に示した2つのMCA構造について、プラズモン結合効率(図14の縦軸)とABSにおけるPGLの厚さとを比較したシミュレーション結果を表している。図12は、奥行き方向において均一な厚さのPGL32を有するMCA構造を示し、図13は、図11と同様、奥行き方向において徐々に厚さが変化する部分32Bを含むMCA構造を示している。ここでは、PGL32はAu(金)によって構成され、磁気コア39はFeCoによって構成されていることを前提としている。図12および図13のいずれのMCA構造においても、MCAの全長TLは2μmである。図12では、MCAが均一な厚さのPGL32(ABSでの厚さT1と、ABSと反対側の端部(後端)での厚さT2とが一致(例えば190μm)するようなPGL32)を有する。
【0045】
図13に示したように、奥行き方向において厚さの変化するPGL32を有するMCAの場合、薄肉部である部分32Aの長さLAは100nmとした。この部分32Aと連続する遷移部分としての部分32Bの厚さは、20nm〜200nmの間で変化する。部分32Bの長さLBは200nmとした。さらに、肉厚部である部分32Cの厚さは190nmである。
【0046】
図14において、横軸はABSでのPGLの厚さ(μm)を表し、縦軸はプラズモン結合効率を相対値で表している。また、曲線C12は図12に示したMCA構造におけるプラズモン結合効率を表し、曲線C13は図13に示したMCA構造におけるプラズモン結合効率を表す。図14に示したように、PGL32は、ABSにおける厚さT=20nmの位置において、曲線C13は、曲線C12と比較して約2倍のプラズモン結合(または生成)効率を発現していることがわかる。また、テーパ状に厚さが変化するPGL32を有するMCA構造(図13)が、均一な厚さのPGL32を有するMCA構造(図12)に対して有する優位性は、ABSにおけるPGL32の厚さがさらに薄い場合において、よりいっそう大きくなるということが、図14の曲線C12,C13の傾向から理解される。このような優位性は、光学モードとプラズモンモードとの結合が効率化した結果として、磁気メディアにおける十分に高い加熱を維持しつつ、磁界プロファイルと加熱プロファイルとの隔たりを減少させる上で、奥行き方向において厚さが異なるPGL32を有するMCA構造が理想的なものであることを示している。
【0047】
本発明のプラズモンアンテナの製造方法は、熱アシスト磁気記録ヘッドに適用されるプラズモンアンテナを製造する方法であって、
(B1)基体を準備する工程と、
(B2)基体にテーパ状のトレンチを形成する工程と、
(B3)少なくともトレンチをコンフォーマルに覆うように、第1の厚さを有すると共に導電材料からなる第1の層を形成する工程と、
(B4)マスク層を、第1の層の第1の部分を覆いつつ前記第1の層の背後の第2の部分を露出させるように選択的に形成する工程と、
(B5)少なくとも第1の層の第2の部分をコンフォーマルに覆う、導電材料からなる第2の層を第2の厚さとなるように形成する工程と、
(B6)マスク層を除去することにより、トレンチを、第1の部分において第1の厚さを有すると共に第2の部分において第1および第2の厚さの合計の厚さを有するプラズモン生成層によってコンフォーマルに満たされたまま残存させる工程と、
(B7)プラズモン生成層が形成されたトレンチに磁性材料による層を成膜することにより、プラズモン生成層が形成されたトレンチを磁気コアによって充填する工程と
を含むものである。
【0048】
図15〜図21は、例えば図13などに示した可変厚のPGL32を有するMCA構造を効率的かつ有利に製造するための一連の製造工程を表す図である。なお、当業者であれば、後述する8つの実施の形態を製作する際に如何にしてこれらの製造工程を適用することができるかを理解することができる。これらの製造工程において、MCAは磁極39のトレーリングエッジの上に形成される。図15〜図21のそれぞれの左側の図(A)は、作製中の構造をABSから眺めた図であり、右側の図(B)は、ABSに対して垂直な面に沿ったMCAの中心を通る縦断面図である。ABSは、各図(B)において最も右側の縁部に位置している。以下の工程は、各図に対応する製造工程を示している。
【0049】
まず、図15に示したように、非磁性の基体51を準備する。次に、図16に示したように、フォトリソグラフィ法またはエッチング法を用いて、基体51にテーパ状のトレンチ52を形成する。次に、図17に示したように、トレンチ52をコンフォーマルに覆う第1のPGL53を成膜する。次に、図18に示したように、第1のPGL53の、最もABS側の端部を覆うようにマスク54を形成する。次に、図19に示したように、マスク54の背後の領域における第1のPGL53を覆うように第2のPGL55を成膜する。ABSから見た図では、第2のPGL53の外形を破線にて示している。ただし、第2のPGL53自体は、マスク54の背後に隠れて見えない。次に、図20に示したように、マスク54を除去し、これにより階段状に形成された第1のPGL53および第2のPGL55を露出させる。最後に、図21に示したように、第1のPGL53と第2のPGL55との双方を直接覆うように、磁性材料56を堆積させるか、電気めっき処理を行う。磁性材料56の成膜部分はMCAの磁気コアとなり、第1のPGL層53と第2のPGL層55とは、この磁気コアを覆う階段状の厚さを有するPGLとなる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドによれば、プラズモン生成層の厚さをABSに近づくほど薄くなるようにしたので、近接場光の広がりを抑えることができ、磁気メディア上の、より微小な表面領域の加熱が可能となる。その結果、より高密度の磁気記録を実現することができる。また、本発明のプラズモンアンテナの製造方法によれば、上記本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドに好適なプラズモンアンテナを簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来のTAMRヘッドの構成を表す模式図である。
【図2】図1に示す従来技術に係る構造の磁気プロファイルと加熱プロファイルとを模式的に示す特性図である。
【図3】従来技術に係る構造のプラズモンアンテナ・光導波路構造を示す模式図である。
【図4】図3に示した従来技術に係る構造におけるプラズモンアンテナ、光導波路、および磁気記録磁極の配置を示す図である。
【図5】図4に示す従来のプラズモンアンテナにおける、磁界プロファイルおよび加熱プロファイルを表す特性図である。
【図6】各種プラズモン生成層の厚さと、それらの層において生じる光学モードとプラズモンモードとの結合効率との関係のシミュレーション結果を示す特性図である。
【図7】本発明のTAMRヘッドにおける一構成例を表す模式図である。
【図8】本発明のTAMRヘッドにおける他の一構成例を表す模式図である。
【図9】図7に示したTAMRヘッドにおけるABSと直交する断面を表す模式図である。
【図10】図8に示したTAMRヘッドにおけるABSと直交する断面を表す模式図である。
【図11】図7に示したTAMRヘッドにおけるABSと直交する断面を表す他の模式図である。
【図12】比較例としてのTAMRヘッドにおけるABSと直交する断面を表す模式図である。
【図13】本発明の実施例としてのTAMRヘッドにおけるABSと直交する断面を表す模式図である。
【図14】PGLの厚さとプラズモン結合効率との関係を表す特性図である。
【図15】本発明のTAMRヘッドの製造方法における一工程を表す断面図である。
【図16】図15に続く一工程を表す断面図である。
【図17】図16に続く一工程を表す断面図である。
【図18】図17に続く一工程を表す断面図である。
【図19】図18に続く一工程を表す断面図である。
【図20】図19に続く一工程を表す断面図である。
【図21】図20に続く一工程を表す断面図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【図23】本発明の第2の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【図25】本発明の第4の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【図26】本発明の第5の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【図27】本発明の第6の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【図28】本発明の第7の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【図29】本発明の第8の実施の形態としてのTAMRヘッドを表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の目的、特徴および利点は、以下に記載の好適な実施の形態の説明に照らして理解される。好適な実施の形態の説明は、添付図面に照らして理解される。
【0053】
本発明の好適な実施の形態は、それぞれ、磁気メディアに高密度記録をもたらすためのTAMRヘッドである。このTAMRヘッドは、磁気コアと、奥行き方向(ABSと直交する方向)において厚さの変化する(可変厚の)プラズモン生成層(PGL:Plasmon Generating Layer)とを含むプラズモンアンテナを備えている。PGLは、磁性材料よりなる柱状コアの少なくとも2つの側面をコンフォーマルに覆っている。柱状コアは、以下説明する各実施の形態では、例えば、ABSと平行な断面形状が三角形に近似し、かつ、奥行き方向においてその断面の大きさが変化している。PGLは、上記三角形の頂点と、この頂点をなす2つの両側とをコンフォーマルに覆っている。なお、他の形状のコアや、他のコンフォーマルなPGLを用いてもよい。
【0054】
PGLは、プラズモンモードの生成と輸送とを支えるものである。プラズモンモードは、PGL層の最肉厚部における光学モードとの効率的な結合により生成され、光導波路などのデバイスによってアンテナへと案内される。光学モードは、光周波数レーザなどの隣接する光学的放射源により生成される。この磁気コアアンテナ(MCA:Magnetic Core Antenna)を、磁気記録磁極(MP:Magnetic Write Pole)に隣接して配置することにより(PGL層の最肉薄部がエアベアリング面に位置している)、磁気記録磁界が生じる。この磁気記録磁極のピーク強度およびピーク勾配は、プラズモンモードの近接場と重畳され、これにより磁気メディア上の同じポイントに対して加熱と書き込みとの双方が行われる。
【0055】
上述したように、放射結合効率は、光学放射源からのエネルギーの損失を抑えつつ、PGLのうち最も肉厚の部分においてエッジプラズモンモードを生成する。その結果、これに付随したプラズモンの電磁近接場がPGLの最小厚さ部分において発生し、記録磁界が発生するポイントに極めて近い磁気メディア上の微小表面領域に作用する。これにより、その微小表面領域において空間依存するプロファイルを有する熱エネルギーが発生し、微小表面領域の温度を上昇させる。記録ヘッドの磁極は、空間依存する磁界強度プロファイルを有する磁気記録磁界を発生させ、この磁気記録磁界は、上記プラズモン磁界と最適な形で実質的に重複した表面領域に作用する。熱エネルギー分布と磁界との空間的整合は、それらの分布域における最大勾配が互いに略重複するようなものとなっている。この重複により、磁気メディアの局所磁化を変化させる際の磁界の有効性が増し、磁気メディアに対する磁気記録が大きく強化されるとともに、磁気記録を非常に微細な表面領域に限定させることができる。
【0056】
[第1の実施の形態]
図22(A)〜22(C)は、それぞれ、第1の実施の形態に係るTAMRヘッドを模式的に示す側面図、光導波路33を含むABSと平行な断面図、および、TAMRヘッドのトラック幅方向における中心位置を通る縦断面図である。このTAMRヘッドは、磁極39と、これと一体化された磁気コア34と、この磁気コア34を覆うように形成されたPGL32と、PGL32と離間して対向するように配置された光導波路33とを備えている。ここで、磁気コア34およびPGL32はプラズモンアンテナとして機能するものである。磁極39および磁気コア34は同種の材料からなり、一体成形されていることが望ましい。磁気コア34は、奥行き方向を軸とする三角柱状の磁性体であり、そのうちの2つの側面をPGL32がコンフォーマルな形状をなすように覆っている。
【0057】
本実施の形態および他の実施の形態のいずれにおいても、磁極39のABSから見た断面形状は、例えば台形の形状を呈している。また、プラズモンアンテナの磁気コア34は、磁極39の最も広い幅を有する面と接しており、頂点を光導波路33へ向けている。磁気コア34は、ABSと平行な断面において、磁極39から最も離れた位置に位置する頂点において交わる2つの傾斜した側面を有する。磁気コア34は、立体柱状の形状を有しているため、その頂点は、磁極39の中心位置を通る中心線CL上に位置する。PGL32は、頂点と、この頂点を形成すべく互いに合流する2つのテーパ状の側面とを覆うように形成されている。図22(B)に示したように、磁極31およびプラズモンアンテナは、PGL32の頂点を通る中心線CLに対して対称である。このことは、以下のすべての実施の形態でも同様である。
【0058】
なお、以下に述べる第1から第4の実施の形態では、磁極31からのPGL32の頂点までの距離は一定となっている。これに対して、第5から第8の実施の形態の場合、PGL32の頂点は、ABSに近づくほど磁極31へ徐々に近づくように変化している。
【0059】
光導波路33は、PGL32の頂点とは反対側に配置され、プラズモンを効率よく生成すべく、PGL32の最も肉厚な部分32Cと隣接している。磁極31は、書き込み処理の際、磁界を発生させることにより媒体粒子の磁化方向を反転させる。プラズモンアンテナは、磁気コア34およびPGL32と協働して、エッジプラズモンモードに由来する電磁エネルギーを磁気メディアへと輸送する。この時、電磁エネルギーが輸送される磁気メディアの微小領域は、その微小領域での保磁力および異方性を減少させるために加熱されることになる。プラズモンモードは、光導波路33の内部の、プラズモンアンテナのPGL32と結合する光学放射により生じる。プラズモンモードの電磁エネルギーは、磁気メディアがプラズモンモードに由来する電界エネルギーを吸収することにより、その磁気メディアにおいて局所的な加熱を発生させる。
【0060】
PGL32の最も厚みの大きな部分32Cは、ABSから最も離れた位置に設けられ、最もABSの近くに位置する最小厚さの部分32Aよりも、奥行き方向の長さが大きくなっている。部分32Aは、一端がABSに露出しており、そのABSに露出した位置において約60nm以下の厚さを有している。また、部分32Aは、奥行き方向において約500nm以下の長さを有している。PGL32の部分32Cの厚さは、好ましくは部分32Aの厚さよりも10nm以上大きいことが望ましい。部分32Aと部分32Cとの間の遷移領域としての部分32Bを含めたPGL32の全長TLは、部分32Aの長さLAの少なくとも2倍(すなわち、少なくとも1000nm)であることが望ましい。光導波路33と、PGL32との間の最小間隔は、好ましくは50nm未満である。光導波路33の端面は、MCAのABSから後退していることが好ましいが、ABSに露出していてもよい。
【0061】
[第2の実施の形態]
【0062】
図23(A)〜23(C)は、第2の実施の形態を示す模式図である。第2の実施の形態は、磁極39とMCA(磁気コア31およびPGL32)とが別体であり、分離された構成であること以外は、第1の実施の形態と同様である。なお、磁極39と一体に設けられた磁気コア34と区別するため、ここでは磁気コアの符号を31とする。磁気コア31は、本実施の形態では三角柱状の形状を有し、その頂点は、奥行き方向において磁極39とほぼ平行に延在している。
【0063】
書き込み処理の際、磁極39からの磁界は、MCAの磁気コア31をも磁化させることにより、磁極39からの記録磁界に加えて磁気コア31からの記録磁界も磁気メディアに対して及ぶこととなる。磁極39とMCAとの間の間隙領域は、好ましくは100nm未満である。また、この間隙領域は、好ましくは非導電性かつ非磁性の材料(例えばAl23またはSiO2などの酸化物が好ましい)により満たされている。
【0064】
[第3の実施の形態]
図24(A)〜24(C)は、それぞれ、第3の実施の形態に係るTAMRヘッドを模式的に示す側面図、磁気記録シールド38を含むABSと平行な断面図、および縦断面図である。このTAMRヘッドは、第1の実施の形態と同様に、磁極39と、磁気コア34およびこれを覆う可変厚のPGL32からなるMCAとを備えたものである。MCAにおける磁気コア34は、磁極39と一体化されている。また、第1の実施の形態と同様に、光導波路33が設けられている。光導波路33は、光エネルギーとプラズモンエネルギーとの結合を最も効率的にすべく、PGL32の頂点に隣接し、かつ、このPGL32の最も肉厚な部分と重なり合う領域に沿うように設けられている。書き込み処理の際、MCAの磁気コア34により生じた磁界は、記録メディアへと輸送される。光導波路33における光学モードは、PGL層32と結合し、プラズモンモードが生成される。このプラズモンモードは、MCAに沿ってTAMRヘッドのエアベアリング面に向かって輸送される。このプラズモンモードの近接場は、記録メディアへと作用し、その記録メディアを局所的に加熱する。PGL32は、ABSに近い部分の厚さが、ABSから離れた部分の厚さよりも薄くなっている。また、光学モードとプラズモンモードとの結合が効率よく発生するように、PGL32の肉厚部である部分32Cは、その肉薄部よりも奥行き方向の長さが大きくなっている。部分32Aは、一端がABSに露出しており、そのABSに露出した位置において約60nm以下の厚さを有している。また、部分32Aは、奥行き方向において約500nm以下の長さを有している。PGL32の部分32Cの厚さは、好ましくは部分32Aの厚さよりも10nm以上大きいことが望ましい。部分32Aと部分32Cとの間の遷移領域としての部分32Bを含めたPGL32の全長TLは、部分32Aの長さLAの少なくとも2倍(すなわち、少なくとも1000nm)であることが望ましい。光導波路33と、PGL32との間の最小間隔は、好ましくは50nm未満である。光導波路33の端面は、MCAのABSから後退していることが好ましいが、ABSに露出していてもよい。
【0065】
また、このTAMRヘッドでは、磁気記録シールド38が、MCAに対して光導波路33と同じ側に配置され、光導波路33の端面とABSとの間に設けられている。PGL32の光導波路33に対向する縁部と、磁気記録シールド38との間の距離は、約10nmから500nmである。光導波路33と磁気記録シールド38との間の距離は、好ましくはMCAの全長TL未満である。磁気記録シールド38のMCAに対向する端部の厚さは、好ましくは約500nm未満である。PGL32の頂点は、ほぼ直線状に奥行き方向へ延在している。また、PGL32の材料による約10nmから20nmの厚さの薄い層を、磁気記録シールド38の、PGL層32の頂点に対向する表面48に成膜することもできる。これは、磁気メディアの加熱スポットの大きさを減少させる上で有効である。
【0066】
[第4の実施の形態]
図25(A)〜25(C)は、第4の実施の形態としてのTAMRヘッドの構造を表す模式図である。このTAMRヘッドは、磁極39とMCA(磁気コア31およびPGL32)とが別体であり、分離された構成であること以外は、第3の実施の形態と同様である。書き込み処理の際、磁極39からの磁界は、MCAの磁気コア31をも磁化させることにより、磁極39の磁界に加えて磁気コア31からの磁界が磁気メディアに及ぶこととなる。磁極39とMCAとの間隔は、好ましくは100nm未満である。この間隙領域は、好ましくは非導電性かつ非磁性の材料(例えばAl23またはSiO2などの酸化物が好ましい)により満たされている。また、PGL32の材料による約10nmから20nmの厚さの薄い層を、磁気記録シールド38の、PGL32の頂点に対向する表面48に成膜することもできる。これは、磁気メディアの加熱スポットの大きさを減少させる上で有効である。
【0067】
[第5の実施の形態]
図26(A)〜26(C)は、第5の実施の形態としてのTAMRヘッドの構造を表す模式図である。このTAMRヘッドは、PGL32の頂点の縁部が、上述した各実施の形態のように磁極39に対して平行な直線状の縁部となっていないこと以外は、第1の実施の形態と同様である。本実施の形態のPGL32は、一端がABSに露出し、ABSから遠ざかるほど磁極39へ近づくように傾斜する頂点の縁部40を含む部分32Dと、そのABSと反対側に設けられ、頂点の縁部が磁極39と平行をなす部分32Eとを有する。なお、頂点の縁部40を傾斜させることにより、例えば、PGL32のABSと平行な断面でのエアベアリング面から見た断面形状の寸法がABSへ近づくほど減少することとなる。
【0068】
[第6の実施の形態]
図27(A)〜27(C)は、第6の実施の形態としてのTAMRヘッドの構造を表す模式図である。このTAMRヘッドは、第5の実施の形態と同様に、PGL32の頂点の縁部40が磁極31に対して傾斜していること以外は、第2の実施の形態と同様である。なお、頂点の縁部40を傾斜させることにより、例えば、PGL32のABSから見た断面形状の寸法がABSへ近づくほど減少することとなる。
【0069】
[第7の実施の形態]
図28(A)〜28(C)は、第7の実施の形態としてのTAMRヘッドの構造を表す模式図である。このTAMRヘッドは、PGL32の頂点の縁部40の一部が、磁極39に対して傾斜していること以外は、第3の実施の形態と同様である。また、必須ではないが、磁気記録シールド38のPGL32に対向する縁部(表面48)は、PGL32の傾斜した縁部40に対してコンフォーマルな傾斜部をなしている。なお、縁部40を傾斜させることにより、例えば、PGL32のABSから見た断面形状の寸法がABSへ近づくほど減少することとなる。
【0070】
また、PGL32の材料による約10nmから20nmの厚さの薄い層を、磁気記録シールド38の、PGL32の頂点に対向する表面48に成膜することもできる。これは、磁気メディアの加熱スポットの大きさを減少させる上で有効である。
【0071】
[第8の実施の形態]
図29(A)〜図29(C)は、第8の実施の形態としてのTAMRヘッドの構造を表す模式図である。このTAMRヘッドは、プラズモンが伝播するPGL32の頂点縁部40が、磁極39に対して傾斜していること以外は、第4の実施の形態と同様である。また、必須ではないが、磁気記録シールド38のPGL32に対向する縁部(表面48)は、PGL32のプラズモン輸送縁部(頂点縁部40)のテーパ部に対してコンフォーマルな傾斜部をなしている。なお、頂点縁部40を傾斜させることにより、例えば、PGL32のABSから見た断面形状の寸法がABSへ近づくほど減少することとなる。
【0072】
磁極39とMCAとの間隔は、好ましくは100nm未満である。また、この間隙領域は、好ましくは非導電性かつ非磁性の材料(例えばAl23またはSiO2などの酸化物が好ましい)により満たされている。また、PGL32の材料による約10nmから20nmの厚さの薄い層を、磁気記録シールド38の、PGL32の頂点に対向する表面48に成膜することもできる。これは、磁気メディアの加熱スポットの大きさを減少させる上で有効である。
【0073】
当業者により理解されるように、本発明の好適な実施の形態は本発明を限定するものではなく、あくまで例示である。本発明のTAMRヘッドは、奥行き方向において厚さの変化するPGLを有するプラズモンアンテナを備えることにより、光学モードとプラズモンモードとの結合が効率化され、磁気記録磁界およびその勾配が最大となるポイントと、表面加熱ポイントとの間の磁気メディア上の間隔を最適に保持することを可能とするものである。したがって、これを形成し、使用するための方法、プロセス、材料、構造、および寸法についての修正や変更は適宜なし得るものである。
【符号の説明】
【0074】
31…磁気コア、32…プラズモン生成層、33…光導波路、34…突起部(磁気コア)、39…磁極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電された際に、磁気記録媒体に書き込みを行うための記録磁界を発生させる磁極と、
電磁放射の放射源と、
1対の側面を有する磁気コアと、エアベアリング面と平行な断面において前記1対の側面をコンフォーマルに覆う導電材料からなるプラズモン生成層とを含むプラズモンアンテナと、
前記プラズモンアンテナに前記電磁放射を導くとともに、前記電磁放射と、前記プラズモンアンテナの内部で生成されたプラズモンモードとを結合させる導波路と
を備え、
前記プラズモン生成層は、エアベアリング面と直交する方向において厚さが変化し、エアベアリング面に最も近い位置において最も薄く、かつ、前記導波路に隣接する前記領域内において最も厚く、
前記プラズモンアンテナは、前記プラズモンモードにより生じたエネルギーを前記磁気記録媒体の局所領域へと輸送することにより、前記局所領域を加熱し、その保磁力および磁気異方性を減少させ、
前記プラズモンアンテナの前記磁気コアは、前記記録磁界を前記局所領域へと導き、これにより前記局所領域における前記記録磁界の強度および勾配が、前記輸送されたプラズモンモードの熱エネルギーにおける熱エネルギープロファイルとの組み合わせにより、前記保磁力および前記磁気異方性が減少した領域において書き込みを行うための最良の状態を形成する
熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項2】
前記電磁放射が光周波数の範囲内にあり、前記導波路が光導波路である
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項3】
前記磁気コアは、磁性材料からなり、前記磁極と一体化され、前記磁極から突出するとともに前記磁極に沿って直線状に延びており、
前記プラズモン生成層は前記磁気コアを覆うように形成されている
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項4】
前記磁気コアは、磁性材料からなり、前記磁極と同一直線上において前記磁極から一定の間隔で離間して配置され、
前記プラズモン生成層は前記磁気コアを覆うように形成されている
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項5】
前記磁気コアは角柱状を有し、前記磁極と平行な底辺を有し、かつ前記磁極から100nm未満の間隔で配置されている
請求項4に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項6】
前記磁気コアと前記磁極との間の空間は、絶縁性非磁性材料により満たされており、
前記絶縁性非磁性材料は、Al23またはSiO2である
請求項5に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項7】
前記プラズモン生成層は、いずれも同じ断面形状を有する一連の第1から第3の部分からなり、
前記第1の部分は、前記プラズモンアンテナのエアベアリング面を起点として後方へ延在し、第1の長さおよび第1の厚さを有し、
前記第2の部分は、前記第1の部分と前記第3の部分との間の遷移部を構成し、厚さが可変であり、
前記第3の部分は第3の厚さを有する
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項8】
前記第1の厚さが60nm以下であり、
前記第1の長さが500nm以下である
請求項7に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項9】
前記第3の厚さが、前記第1の厚さよりも10nm以上大きい
請求項8に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項10】
前記プラズモン生成層の前記第1の部分と、前記第2の部分と、前記第3の部分との全長が、前記第1の長さの少なくとも2倍である
請求項7に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項11】
前記磁気コアは、FeCoもしくはNiFeである磁性材料より形成され、または、Fe(鉄)、Co(コバルト)、もしくはB(ホウ素)の単体あるいは化合物からなり、
前記導電材料は、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、もしくはGe(ゲルマニウム)またはそれらの合金である
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項12】
前記磁気コアは、前記磁極から物理的に離間しかつ前記磁極と同一直線上に位置する三角柱であり、
前記プラズモン生成層は、前記三角柱の2つの側面と、それらの側面が交差する前記三角柱の頂点とをコンフォーマルに覆い、
前記頂点とは反対側に位置し、かつ前記磁極から所定間隔を有するように離間しつつこれに隣接する前記三角柱の底辺が、前記導電材料からなる層により覆われずに露出している
請求項7に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項13】
前記磁気コアは、前記磁極の一体部分であるとともに、前記磁極から突出する三角形状の水平断面を有する三角柱であり、
前記プラズモン生成層は、前記三角柱の2つの側面と、それらの側面が交差する前記三角柱の頂点とをコンフォーマルに覆う
請求項7に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項14】
前記頂点は、前記磁極に平行な直線状の縁部を形成している
請求項12に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項15】
前記頂点は、前記磁極に平行な直線状の縁部を形成している、
請求項13に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項16】
前記頂点は、
前記磁極に平行な直線状の縁部である第1の部分と、
前記第1の部分と連続し、前記磁極に向かってテーパ状となる直線状の縁部であって前記エアベアリング面において終了する第2の部分と
を含んでいる
請求項12に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項17】
前記頂点は、
前記磁極に平行な直線状の縁部である第1の部分と、
前記第1の部分と連続し、前記磁極に向かってテーパ状となる直線状の縁部であって前記エアベアリング面において終了する第2の部分と
を含んでいる
請求項13に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項18】
前記プラズモンアンテナは、前記導波路と前記磁極との間に設けられ、
前記プラズモンアンテナの頂点は、前記導波路と直に隣接して設けられ、
前記三角柱の底辺が、前記磁極の側面と平行に並び、かつ前記側面から一定間隔を有するように離間している
請求項12に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項19】
前記プラズモンアンテナは、前記導波路と前記磁極との間に設けられ、
前記プラズモンアンテナの頂点は、前記導波路に直に隣接して設けられている
請求項13に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項20】
前記プラズモンアンテナと前記磁極とは、エアベアリング面に露出した端面を有し、
前記導波路の端面は、エアベアリング面から離れた位置にある
請求項16に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項21】
前記プラズモンアンテナと前記磁極とは、エアベアリング面に露出した端面を有し、
前記導波路の端面は、エアベアリング面から離れた位置にある
請求項17に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項22】
前記プラズモンアンテナ、プラズモン生成層、および導波路は、前記磁極のリーディングエッジ側に形成されている
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項23】
前記プラズモンアンテナ、プラズモン生成層、および導波路は、前記磁極のトレーリングエッジ側に形成されている
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項24】
磁気記録シールドをさらに備え、
前記磁気記録シールドは、
前記エアベアリング面に含まれる第1の面と、
前記第1の面に平行であり、前記エアベアリング面から離れて位置し、前記導波路の前記端面に隣接しかつこれに平行な第2の面と、
前記第1の面および前記第2の面に対して垂直であり、前記プラズモン生成層の前記頂点に隣接する第3の面と
を有する
請求項20に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項25】
前記第3の面は、10nm以上20nm以下の厚さを有するプラズモン生成材料の層により覆われている、
請求項24に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項26】
磁気記録シールドをさらに備え、
前記磁気記録シールドは、
前記エアベアリング面に含まれる第1の面と、
前記第1の面に平行であり、前記導波路の前記端面に隣接しかつこれに平行な第2の面と、
前記第1の面および前記第2の面に対して傾斜しており、前記プラズモン生成層の前記頂点に隣接すると共に前記プラズモン形成層とコンフォーマルな形状を有する第3の面と
を有する
請求項21に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項27】
前記第3の面が、10nm以上20nm以下の厚さを有するプラズモン生成材料の層により覆われている、
請求項26に記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項28】
熱アシスト磁気記録ヘッドに適用されるプラズモンアンテナの製造方法であって、
基体を準備する工程と、
前記基体にテーパ状のトレンチを形成する工程と、
少なくとも前記トレンチをコンフォーマルに覆うように、第1の厚さを有すると共に導電材料からなる第1の層を形成する工程と、
マスク層を、前記第1の層の第1の部分を覆いつつ前記第1の層の背後の第2の部分を露出させるように選択的に形成する工程と、
少なくとも前記第1の層の前記第2の部分をコンフォーマルに覆う、導電材料からなる第2の層を第2の厚さとなるように形成する工程と、
前記マスク層を除去することにより、前記トレンチを、前記第1の部分において第1の厚さを有すると共に前記第2の部分において前記第1および第2の厚さの合計の厚さを有するプラズモン生成層によってコンフォーマルに満たされたまま残存させる工程と、
前記プラズモン生成層が形成されたトレンチに磁性材料による層を成膜することにより、前記プラズモン生成層が形成されたトレンチを磁気コアによって充填する工程と
を含むプラズモンアンテナの製造方法。
【請求項29】
前記磁性材料として、FeCoもしくはNiFeのいずれか、または、Fe(鉄)、Co(コバルト)、もしくはB(ホウ素)の単体あるいはそれらの合金を用い、
前記導電材料として、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、もしくはGe(ゲルマニウム)またはそれらの合金を用いる
請求項28に記載のプラズモンアンテナの製造方法。
【請求項30】
前記テーパ状のトレンチが、三角形の水平断面形状を有する、
請求項28に記載のプラズモンアンテナの製造方法。
【請求項31】
前記第1の部分が、500nm以下の長さを有し、60nm以下の厚さを有する
請求項28に記載のプラズモンアンテナの製造方法。
【請求項32】
前記第2の部分が、前記第1の厚さよりも10nm以上厚い第2の厚さを有する
請求項28に記載のプラズモンアンテナの製造方法。
【請求項33】
前記第1の部分と前記第2の部分との前記合計の長さが、前記第1の部分の長さの2倍以上である
請求項28に記載のプラズモンアンテナの製造方法。
【請求項34】
前記マスク層が、リフトオフ法またはエッチング法により除去される
請求項28に記載のプラズモンアンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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