説明

熱アシスト磁気記録ヘッド及び磁気ディスク装置

【課題】光導波路を備えた熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、供給する光の強度を安定化させ、安定した熱アシスト効果を得て、安定した記録を実現する。
【解決手段】磁気記録媒体の表面にレーザ光を導くための光導波路を備えた磁気記録ヘッドにおいて、ABSに形成された近接場光を発生する素子の近傍に光出力を検出する機能を備えた素子を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光による熱で磁気記録をアシストする熱アシスト磁気記録ヘッド、及びその熱アシスト磁気記録ヘッドを用いた磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記録装置の1つとして、コンピュータ等に装着されている磁気ディスク装置には、装置を大型化することなく膨大な情報を蓄積するために高記録密度化が求められている。磁気ディスクの高記録密度化には、微小な記録ビットを安定させる必要性から、高保磁力の記録媒体が用いられる。高保磁力の記録媒体に記録するためには、微小領域に強い磁界強度を集中させる必要がある。しかし、高記録密度化が進むと、強い磁界強度を微小領域に集中させることは技術的に困難になる。
【0003】
この問題を解決する技術として、光記録技術と磁気記録技術を融合したハイブリッド記録技術が有力視されている。記録時に印加磁界と同時に媒体(強磁性体)に光照射して、媒体のキューリ温度(摂氏数百度程度)付近の温度に加熱し、媒体の保磁力を低減させる。これにより、従来の磁気記録ヘッドでは記録磁界強度が不足して記録が困難であった高保磁力の記録媒体にも記録が容易になる。このハイブリッド記録方法は熱アシスト磁気記録又は光アシスト磁気記録と呼ばれる。再生には、従来の磁気記録で用いられている磁気抵抗効果素子を用いる。
【0004】
この熱アシスト磁気記録方式では、媒体を加熱するためのレーザ光を記録ヘッドに導く。レーザ光源には、磁気ディスク装置のパッケージ内で使用する必要性から、小型で低消費電力の半導体レーザダイオード(以下、LDという)が用いられる。
【0005】
熱アシスト磁気記録では、半導体レーザから発生した光を効率良くヘッド先端まで導くことが必要である。このような要求を実現する構造として、たとえば、特許文献1に、スライダ内に光導波路と近接場光発生素子を集積したヘッドが、特許文献2に、スライダ内に光導波路を集積したヘッドが記載されている。特許文献3には、近接場光発生素子へ入射する光量を分岐導波路と受光素子を用いてモニタリングし、光源の駆動電力をフィードバック制御する熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−59691号公報
【特許文献2】特開2010−49735号公報
【特許文献3】特開2008−204586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱アシスト磁気記録用の光素子集積ヘッドにおいて、半導体レーザから出射されたレーザ光は、スライダ中に設けられている光導波路を通り、スライダの浮上面(ABS:Air Bearing Surface)に導かれる。ABS近傍には近接場光を発生する素子が設けられ、導かれた光が近接場光発生素子に入射し、微小なスポットサイズの近接場光が励起される。発生した近接場光がABSから記録媒体(磁気ディスク)に照射されることによって、記録媒体がその光を吸収し、熱に変換されることで、加熱された媒体のビットの保磁力が低下する。この保磁力が低下したビットに記録磁場を印加すると新しい記録ビットが形成される。したがって、近接場光発生素子に入射する光の量によって、媒体を加熱する熱の量が変化するため、記録状態が変化する。このようなことから、近接場光発生素子に入射する光の量(強度)を制御することが、安定した記録を行う上で重要である。
【0008】
近接場光発生素子に入射する光の量を制御するためには、入射する光の量をモニタリングする機構が必要になる。入射光の光量をモニタリングする方法として、引用文献3のように、光導波路を分岐して、近接場光発生素子に入射する光と受光素子で受光する光を分波する方法がある。光導波路を途中から分岐すると、分岐した各々の光導波路に導波される光量の比は、LDから入射する光の強度によらず一定になる。ただし、光源となるLDのモードフィールドと光の入射位置が大きく変化しないことが前提である。このとき受光素子に行く光は、近接場光発生素子に吸収されないため、アシスト機構に寄与しない。よって、アシスト光としては損失となるが、近接場光発生素子に向かう光量と受光素子に向かう光量の比をたとえば10対1にするように分岐比を設定することで、近接場光発生素子への光量を大半にして損失を低減することができる。
【0009】
しかし、磁気ヘッドの内部は、導波路以外にもさまざまな構造体が複雑に配置されている。導波路を分岐すると、構造体との干渉を避けるための配置が困難になることも想定される。また、近接場光発生素子と受光素子が離れた位置にあると、受光素子に導く途中で光損失が生じ、近接場光発生素子に入射する光量と受光素子で検出する光量の関係が一定でなくなり、正確にモニタリングできないことも起こりうる。
【0010】
本発明の目的は、近接場光発生素子が発生する近接場光の強度を制御するために、簡単な構造で近接場光発生素子への入射光量をモニタリングすることのできる機構を備えた熱アシスト磁気記録ヘッドを実現することである。また、その結果として、熱アシスト機構の安定化を実現し、磁気ディスク装置の記録性能を向上するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、光導波路を伝搬し、近接場光発生素子に入射する光源からの光量を定量的に検出する方法として、スライダの近接場光発生素子近傍に光を検出するための受光素子を配置する構造を提案する。スライダと別体の受光素子を実装するのではなく、スライダに受光素子をモノリシックに集積する構造を提案する。また、磁気ヘッドにおいて、受光素子、近接場光発生素子、光導波路、磁極を配置するための位置関係を提案する。
【0012】
すなわち、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録磁界を発生する磁極と、その磁極の近傍に設けられた近接場光発生素子と、近接場光発生素子に光を導く光導波路コアと、光導波路コアの近接場光発生素子側端部の側方に近接して配置された光検出素子とを有する。
【0013】
また、本発明による磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、磁気ディスクを駆動する磁気ディスク駆動部と、磁気ディスクに対する情報の書き込み及び読み出しを行うヘッドと、ヘッドを磁気ディスクの所望トラックに位置決めするヘッド駆動部と、光源と、光源を制御する光源制御部とを備え、ヘッドは、記録磁界を発生する磁極と、その磁極の近傍に設けられた近接場光発生素子と、近接場光発生素子に光源からの光を導く光導波路コアと、光導波路コアの近接場光発生素子側端部の側方に近接して配置された光検出素子とを有し、光源制御部は、光検出素子で検出される光強度が一定になるように光源を制御するものである。
【0014】
偏光したレーザ光は、光源となるLDから出射され、スライダの背面に入射して、背面からABSまで設けられた光導波路を伝播して、ABS近傍に設けられた近接場光を発生させるための近接場光発生素子に入射する。光導波路を伝搬してきて近接場光発生素子に入射する直前の光のモードフィールドの大きさが近接場光発生素子の形状に収まるほど小さければ、全ての光は近接場光発生素子に入射することになる。しかし通常、光導波路で小さくできる光のモードフィールドの大きさには限界があり、100nm程度のスケールの近接場光発生素子の入射面の大きさよりも大きい。したがって、どのように効率よく導波路と近接場光発生素子の位置関係を配置しても、近接場光発生素子に入射する光には漏れる光(漏れ光)が存在する。この漏れ光を受光素子で受光してモニタリングに利用すれば、分岐導波路などを用いて光を分波しなくてもよい。
【0015】
そのためには、光の進行してくる方向に対して受光素子が近接場光発生素子の前に出ないよう、近接場光発生素子と平行な位置に配置する必要がある。近接場光発生素子は、ABSに近接場光を発生させるため、ABSに接して形成されるため、近接場光発生素子の後ろ、つまりABS側に配置することはできないからである。近接場光発生素子より手前、つまり光が入射してくる側に配置することもできるが、近接場光発生素子に入射する光の妨げとなり、光の利用効率が低下してしまうため、好ましくない。
【0016】
受光素子は、導波路を導波する光の進行方向に対して、近接場光発生素子と並列して配置し、近接場光発生素子に入射せずに漏れた光を検出することで、近接場光発生素子の効率に影響を与えずに、近接場光発生素子に入射する光量を定量的に推定することができる。
【0017】
受光素子は、漏れた光を効率的に受光する必要があることから、感度の良い材料と構造を有していることが求められる。LDが出射する光の波長は用途に応じてさまざまであるが、広く受光素子に用いられている半導体が適している。それぞれの持つバンドギャップと吸収係数から、可視光であれば結晶SiやアモルファスSi、近赤外光であればSiGe,InGaAsなど化合物半導体が適している。また、単層の半導体ではなく、p型とn型の半導体を接合したダイオード(フォトダイオード)構造にすると受光感度が大きく改善する。そのため、p型半導体層とn型半導体層を積層したP−N構造やp型半導体層、真性半導体、n型半導体層を積層したP−I−N構造を形成するとよい。
【0018】
また、磁気ヘッド特有のスペースの問題があり、漏れた光を十分に拾う受光面積を確保できないことが懸念される。数ミリワット程度の強度を受光する面型フォトダイオードは、数ミリメートル程度の大きさがある。しかし、磁気ヘッドのABSにこのような大きさのフォトダイオードを設置することは困難である。したがって、入射面でなく、フォトダイオードの中で光の進行方向に吸収できる導波路型フォトダイオードとすることがよい。半導体のP−I−N構造は、真性半導体層をコア、p型半導体層とn型半導体層をクラッドとする導波路を形成するのに都合が良い。この際、p型半導体層とn型半導体層が同じ厚さの対象構造ではなく、導波路型フォトダイオードにより多くの光が入射できるように、p型半導体層とn型半導体層の厚さを変えて非対称にして、光軸をフォトダイオードの中心からずらしてもよい。
【0019】
磁気ヘッドを作製するウェハプロセスにおいて、ウェハ上に多層膜を形成する方向は、導波路型フォトダイオードを作製するための多層を積層する方向と一致しており、作製にも適している。太陽電池でも用いられている受光素子材料のアモルファスSiなどは蒸着法、スパッタ法、各種CVD法で作製でき、磁気ヘッドのウェハプロセスに整合する。
【0020】
以上で述べたような方法で、近接場光発生素子と並列してスライダと一体化した受光素子を設置することで、近接場光を発生する近接場光発生素子に入射する光量を測定して、熱アシスト磁気記録ヘッドの熱アシスト機構の安定動作が実現できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、近接場光発生素子に入射する光量を測定することができ、測定した値をもとに光源を駆動する電流値を制御することで、熱アシスト機構に寄与する光の安定した供給を実現できる。その結果、安定した熱アシスト効果の得られる磁気記録ヘッドを実現することができ、磁気ディスク装置の動作を安定にし、記録精度を向上することができる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドを備えるスライダの一実施例を示す断面模式図。
【図2】図1の磁極付近を拡大した断面模式図。
【図3】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの別の実施例の拡大断面模式図。
【図4】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの別の実施例の拡大断面模式図。
【図5】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの別の実施例の拡大断面模式図。
【図6A】光導波路のコア、近接場光発生素子、及び受光素子の位置関係を示す拡大断面模式図。
【図6B】光導波路のコア、近接場光発生素子、及び受光素子の位置関係を示す拡大断面模式図。
【図7】本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドを使用した磁気ディスク装置を模式的に示した斜視図。
【図8】LD駆動電流制御回路を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドを備えるスライダの一実施例を示す断面模式図である。図2は、図1の磁極付近を拡大した断面模式図である。実際のスライダの内部構造は複雑なため、図は簡略化して示している。
【0024】
スライダ110は、上部にLD搭載用サブマウント150が設けられ、サブマウント150にはソルダ109によって半導体LD素子10が固定されている。LD素子10は、活性層101、n型クラッド層102、p型クラッド層103を有する。スライダ内部には、磁気記録用の記録ヘッドと磁気再生用の再生ヘッドが形成されている。記録ヘッドは、主磁極112−1と補助磁極112−2,112−3を有する単磁極ヘッド、単磁極ヘッドを励磁して主磁極112−1から記録磁界221を発生させるための励磁用コイル113、主磁極112−1の近傍に設けられた近接場光発生素子115、LD素子10からの光を近接場光発生素子115に導く光導波路コア111を備える。近接場光発生素子115は、磁気記録媒体の記録層132の記録磁界が印加されている領域に近接場光を照射して熱222を付与する。光導波路コア111のABS側の側方、すなわち近接場光発生素子側の端部の側方には、光導波路コア111に近接して受光素子117が配置されている。光導波路コア111の光入射端には反射防止膜119が設けられている。また、再生ヘッドは、一対の磁気シールドで挟まれた磁気抵抗効果素子114を備える。スライダ110は、サスペンション121とジンバル(フレクシャ)122によって支持され、磁気記録媒体の表面上を一定の浮上量を保って飛行する。図示した磁気記録媒体は、磁気記録媒体基板131上に記録層132が形成された構造を有するが、この他に下地層、配向制御層、軟磁性下地層などを備えていてもよい。
【0025】
図1において、LD10の活性層101から出射され、反射防止膜119を通ってスライダ110の上面から入射した光201は、コア111を中心とするスライダ内の光導波路に光学的に結合し、導波光204となり光導波路内を伝搬してゆく。図2において、光導波路を伝搬した光205は、ABS近傍に設けられた近接場光発生素子115に入射する。この際、近接場光発生素子115に入射せずに漏れた光206が、近接場光発生素子115の横に設けられた受光素子117に入射する。光導波路のコア111は、方向がABSに垂直ないしは垂直に近い方向である。光の伝搬方向はコアの方向に平行であり、ABSには垂直である。光がABSに垂直に入射すると、ABSで反射された戻り光が光源であるLDに帰還してしまい、LDの安定した発振を阻害する恐れがある。したがって、光導波路のコアはABSに完全に垂直ではなく、反射戻り光の発生を防止するために数度ほど傾いていてもよい。
【0026】
近接場光発生素子115は、偏光した光が入射すると表面プラズモン共鳴で近接場光を発生する素子で、金、銀、アルミニウムなどの金属でできており、断面が数十から数百ナノメートル程度の大きさである。光導波路のクラッドは、スライダの他の積層部分で用いられているアルミナであることが作成上簡便であるため望ましい。そのため、光導波路のコア111はアルミナよりも屈折率の大きな材料である。近接場光発生素子115に入射する光のスポットを小さく絞って、効率よく近接場光発生素子115に入射させるためには、コアとクラッドの屈折率差を大きくすればよく、コアには酸化タンタルや窒化珪素など屈折率の大きい材料を用いる。これらの材料をコアに用いれば、コアを数百ナノメートルにしても十分な光閉じ込め効果があり、光のスポットの直径を数百ナノメートルまで絞ることが可能である。
【0027】
図3は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの別の実施例の拡大断面模式図である。図2と同様に構造は簡略化して示している。本実施例では、受光素子117は、コア117−1とクラッド117−2からなる導波路構造をしており、導波路型受光素子が導く光の方向は伝搬光の進行方向と同じ方向、換言すると、光導波路コア111の長軸方向に平行な方向である。
【0028】
図4は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの別の実施例の拡大断面模式図である。図2と同様に構造は簡略化して示している。本実施例の受光素子117は、n型半導体117−3、i型(真性)半導体117−5、p型半導体117−4を、スライダの流入端側から流出端側に順に積層したP−I−N型のフォトダイオードとなっている。n型半導体、p型半導体を積層するだけでも、P−N接合部に空乏層が生じるため、同様の構造となる。また、真性半導体層の屈折率をn型、p型半導体層よりも高く設定することで、真性半導体層をコア、n型、p型半導体層をクラッドとする光導波路として働く導波路型フォトダイオードになる。もちろん、p型半導体層とn型半導体層の配置は逆でもよい。これらの半導体の材料としては、LDの光の波長が可視光領域の場合はアモルファスSiや結晶Siが適しており、スパッタリングなどで形成できる。また、LDから発生する光が赤外光領域の場合は、SiGeなど、光の波長に合わせて吸収に適したバンドギャップを有する材料を選択すればよい。
【0029】
図5は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの別の実施例の拡大断面模式図である。図2と同様に構造は簡略化して示している。受光素子117により多くの光が入射することで、感度を向上できる。n型半導体117−3、i型(真性)半導体117−5、p型半導体117−4を積層したP−I−N型のフォトダイオードである導波路型の受光素子117は、コア111の中心に近く設置するほど伝搬光の光フィールドが受光素子にかかるため、より多くの光が入射する。導波路型の受光素子では、その導波路に多くの光を伝搬させることで、受光感度が上がる。位置を変えなくても、導波路型受光素子を非対称にすることで、受光素子の光軸を伝搬光のフィールドの中心に近づけ、より多くの光を受光することができる。そのためには、図の例では、n型半導体117−3を厚く、p型半導体117−4を薄くすれば、導波路型受光素子のコアとなる真性半導体層117−5が伝搬光の中心に近づく。もちろん、p型半導体層とn型半導体層の配置を図と逆にした場合には、p型半導体を厚く、n型半導体を薄くすればよい。
【0030】
図6A、図6Bは、光導波路のコア111、近接場光を発生する近接場光発生素子115、及び受光素子117の位置関係を示す拡大断面模式図である。図6Aはスライダの側方から見たときの位置関係を示し、図6Bはスライダの流出端(トレーリングエッジ)側からみた位置関係を示している。
【0031】
光導波路コア111のABS側の終端に近接場光発生素子115が配置され、その横方向に少し離れて受光素子117が配置される。主磁極112−1、近接場光発生素子115、受光素子117相互の位置関係としては、一例として、近接場光発生素子115を挟むようにして主磁極112−1と受光素子117とが配置される。受光素子117は光導波路のコア111の長さ方向、つまり光の進行方向に対して、近接場光発生素子115と平行な位置にあり、近接場光発生素子115に入射する光を奪うことなく、近接場光発生素子115に入射せずに漏れた光を受光する。図6Bに示すように、受光素子117の幅aは、多くの漏れた光を受光できるよう、光導波路のコア111の幅bよりも広い。また、近接場光発生素子115に入射する光を奪わないように、受光素子117の高さhは近接場光発生素子115の高さを超えないのが好ましい。すなわち、受光素子117の素子高さ方向の上端位置は、近接場光発生素子115の素子高さ方向の上端位置と同じか、それよりも低いのが好ましい。
【0032】
図7は、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドを使用した磁気ディスク装置を模式的に示した斜視図である。装置筐体400内で、磁気ディスク(磁気記録媒体)402が、スピンドル403により回転する。アーム405はボイスコイルモータ401で駆動され、このアーム405にはサスペンション121が取り付けられている。サスペンション121の先には、LD10をスライダ110に搭載した熱アシスト磁気記録ヘッド410が接続されている。スライダ110に搭載された熱アシスト磁気記録ヘッド410は、ボイスコイルモータ401によって磁気ディスク402の所望のトラックに位置決めされ、情報を記録する。また、磁気ディスク402に記録された情報は、同じくスライダに搭載された再生ヘッドによって読み出される。熱アシスト磁気記録ヘッド410によって書き込むべき記録情報の処理、及び再生ヘッドによって読み出された情報の処理は、信号処理用LSI404によって行われる。
【0033】
図8は、本発明の磁気ディスク装置において、受光素子で検出した光量からLDドライバを介してLDの駆動電流にフィードバックする回路を示す模式図である。
【0034】
受光素子117で吸収した光が電流計152で光電流として検出され、その光電流の値をもとにLDドライバ151で電流源153が発生するLD駆動電流を制御してLD10の発生する光量を制御する。こうして、受光素子117で検出される光強度、従って近接場光発生素子115に入射する光強度が一定になるように制御され、熱アシスト記録を安定して行うことができる。
【0035】
なお、LD10の光量は温度によっても変化する。したがって、ヘッドにサーミスタなど温度検出素子を置き、その電流値などの電気信号から同様にしてLDドライバにフィードバックをかけてLDの光量を制御してもよい。ただし、図8では、温度検出素子とそのフィードバック回路は図示を省略している。また、フィードバック回路に用いられる配線は、スライダ110やサブマウント150に設けた配線を通り、図8では省略した磁極や磁気抵抗センサを駆動する回路と同様に、サスペンション121の表面にフレキシブル配線として敷設することでヘッドの外に導くことが出来る。LDドライバ151や電流計152、電流源153などは装置筐体400の空いているスペースに設置すればよい。
【0036】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば、以上の実施例では、LD素子10をスライダ110に搭載する例によって説明したが、LD素子をサスペンション上あるいは装置筐体400内のLDドライバの近くに配置し、そこから光導波路によってスライダに光を導くようにすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 半導体LD素子
101 活性層
102 n型クラッド層
103 p型クラッド層
109 ソルダ
110 スライダ
111 光導波路のコア
112−1 主磁極
112−2 補助磁極
113 励磁用コイル
114 磁気抵抗効果素子
115 近接場光発生素子
117 受光素子
117−1 導波路型受光素子のコア
117−2 導波路型受光素子のクラッド
117−3 受光素子のn型半導体
117−4 受光素子のp型半導体
117−5 受光素子の真性半導体
119 反射防止膜
121 サスペンション
122 ジンバル(フレクシャ)
131 磁気記録媒体基板
132 記録層
150 LD搭載用サブマウント
151 LDドライバ
152 電流計
153 電流源
221 記録磁界
222 熱
400 装置筐体
401 ボイスコイルモータ
402 磁気ディスク
403 スピンドル
404 信号処理用LSI
405 アーム
410 熱アシスト磁気記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録磁界を発生する磁極と、
前記磁極の近傍に設けられた近接場光発生素子と、
前記近接場光発生素子に光を導く光導波路コアと、
前記光導波路コアの前記近接場光発生素子側端部の側方に近接して配置された光検出素子と
を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記光検出素子は導波路型のフォトダイオードであり、前記導波路型のフォトダイオードの光を導波する方向が前記導波路コアの長軸方向に平行な方向であることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記近接場光発生素子を挟むようにして前記磁極と前記光検出素子とが配置されていることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項4】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記光検出素子の素子高さ方向上端位置は、前記近接場光発生素子の素子高さ方向上端位置と同じか、それよりも低いことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項5】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記光検出素子は、p型半導体とn型半導体のヘテロ接合を有する積層構造、又はp型半導体、i型(真性)半導体、n型半導体のヘテロ接合を有する積層構造からなり、そのP−N接合又はP−I−N接合を構成する半導体層は、ヘッドの流入端から流出端に向かう方向に積層されていることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項6】
請求項5記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記p型半導体とn型半導体のうち、前記光導波路コアに近いほうの半導体層の厚さが前記光導波路コアから遠いほうの半導体層の厚さよりも薄いことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項7】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記光検出素子は珪素を主成分とする材料から構成される半導体であることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項8】
磁気ディスクと、
前記磁気ディスクを駆動する磁気ディスク駆動部と、
前記磁気ディスクに対する情報の書き込み及び読み出しを行うヘッドと、
前記ヘッドを前記磁気ディスクの所望トラックに位置決めするヘッド駆動部と、
光源と、
前記光源を制御する光源制御部とを備え、
前記ヘッドは、記録磁界を発生する磁極と、前記磁極の近傍に設けられた近接場光発生素子と、前記近接場光発生素子に前記光源からの光を導く光導波路コアと、前記光導波路コアの前記近接場光発生素子側端部の側方に近接して配置された光検出素子とを有し、
前記光源制御部は、前記光検出素子で検出される光強度が一定になるように前記光源を制御することを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−4122(P2013−4122A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131417(P2011−131417)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高密度ナノビット磁気記録技術の開発(グリーンITプロジェクト)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】