説明

熱アシスト磁気記録用光源ユニット及び該ユニットを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法

【課題】反射戻り光による光源の発振特性の低下を防止することができ、さらに光源の不良品率及び設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる、熱アシスト磁気記録用の手段を提供する。
【解決手段】接着面を有するユニット基板と、接着面とは垂直な素子形成面に設けられており透過反射層及び上部伝播層を備えた伝播層と、接着面とは反対側の面に形成されている堀込みと、この堀込みに設けられた光源と、上部伝播層に設けられた光路変更部とを備えており、透過反射層が、伝播層の接着面側の端面に至るまで伸長していて、透過反射層の上方の層面が、光路変更部によって光路が変更されて上部伝播層を伝播する光に対して全反射面となっており、さらに、堀込みにおいて光が入射する側面が、透過反射層の下方の層面となっている光源ユニットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う薄膜磁気ヘッドの構成要素である、レーザダイオード等の光源を備えた光源ユニット、この光源ユニットを備えた薄膜磁気ヘッド、この薄膜磁気ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)及びこのHGAを備えた磁気ディスク装置に関する。また、この光源ユニットを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、読み出し用の磁気抵抗(MR)効果素子と書き込み用の電磁コイル素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KV/kTで与えられる。ここで、Kは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKV/kTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKを大きくすることが考えられるが、このKの増加は、記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保持力が、この書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する第1の方法として、面内磁気記録方式から垂直磁気記録方式への移行が考えられる。垂直磁気記録媒体では記録層厚をより大きくすることが可能であり、結果として、Vを大きくして熱安定性を向上させることができる。第2の方法として、パターンドメディアの使用が考えられる。通常の磁気記録では、上述したように1つの記録ビットをN個の磁性微粒子によって構成して記録しているが、パターンドメディアを用いて、1つの記録ビットを体積NVの1つの領域とすることによって、熱安定性の指標がKNV/kTとなり、熱安定性が飛躍的に向上する。
【0006】
さらに、熱安定性の問題を解決する第3の方法として、Kの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0007】
この熱アシスト磁気記録方式における、光を記録媒体に照射するための光放射部として、特許文献1においては、基板上に形成された円錐体等の形状をした金属の散乱体と、その散乱体の周辺に形成された誘電体等の膜とを備えた近接場光プローブが開示されている。また、特許文献2においては、記録再生装置において固体イマージョン・レンズを用いたヘッドが開示されている。さらに、特許文献3には、近接場光プローブを構成する散乱体を、その照射される面が記録媒体に垂直となるように、垂直磁気記録用単磁極書き込みヘッドの主磁極に接して形成された構成が開示されている。さらに、非特許文献1には、水晶のスライダ上に形成されたU字状の近接場光プローブが開示されている。さらにまた、非特許文献2には、光がよく透過する回折格子を、光がほとんど透過しない回折格子を突き当てて結合したグレーティングが開示されている。
【0008】
以上に述べたように、実際、種々の光放射部が提案されているが、熱アシスト磁気記録を実現するにおいて非常に重要であるのが、ヘッドの浮上面(ABS)近傍に設けられたこの光放射部に、レーザ光を供給するための手段である。
【0009】
例えば、特許文献4及び5に開示された技術は、レーザ光の供給に光ファイバを用いている。ここで、特許文献4には、斜めに切断した光ファイバ等の端面に、ピンホールが形成された金属膜を設けた構成が開示されている。また、特許文献5には、光ファイバから出射したレーザ光を適切にレンズ光学系に向けるための可動ミラーを備えた光学式浮上ヘッドが開示されている。
【0010】
これに対して、特許文献6及び特許文献3に開示された技術は、レーザ光の供給にヘッド内に設けられた半導体レーザ素子を用いている。ここで、特許文献6には内蔵したレーザ素子部からの光を、媒体に対向した微小光学開口に照射して熱アシストを行う構成が開示されている。また、特許文献3には、レーザ素子をABS近傍又はヘッド素子の上方等の位置に設けて、上述した近接場光プローブを構成する散乱体にレーザ光を照射する構成が開示されている。
【0011】
ここで、レーザ光の供給手段としての、光ファイバと、ヘッド内に設けられた半導体レーザ素子とを比較する。光ファイバを用いる場合、半導体レーザのような複雑な構造をヘッド内部に形成する必要がなく、所望の強度を有する微細な近接場光を比較的容易に得られる。しかしながら、光ファイバをヘッドに固定する際には、この光ファイバを相当に曲げる必要が生じるが、特に、ガラス製ファイバにおいてはその許容曲げ半径が大きく、曲げ加工が困難となる。また、プラスティック製ファイバの場合、許容曲げ半径は有る程度小さくなるが、高損失であり伝播効率が低下してしまう。
【0012】
さらに、光ファイバを用いる場合、ヘッドから飛び出した光ファイバが揺れて、スライダの浮上特性に悪影響を及ぼしたり、磁気ディスク間にヘッドが配置されている場合、接触の危険性が生じたりする可能性がある。また、光ファイバ端と光源や導波路層等との結合部において非常に大きな損失が発生してしまう。これに対して、半導体レーザをヘッド内に設ける場合、このような問題は発生せず、浮上特性に大きな影響を与えることなく比較的低損失でレーザ光を供給することが可能となる。
【0013】
【特許文献1】特開2001−255254号公報
【特許文献2】特開平10−162444号公報
【特許文献3】特開2004−158067号公報
【特許文献4】特開2000−173093号公報
【特許文献5】特表2002−511176号公報
【特許文献6】特開2001−283404号公報
【非特許文献1】ShintaroMiyanishi他著 ”Near-field Assisted Magnetic Recording” IEEE TRANSACTIONS ONMAGNETICS、2005年、第41巻、第10号、p.2817−2821
【非特許文献2】庄野敬二、押木満雅著 「熱アシスト磁気記録の現状と課題」 日本応用磁気学会誌、2005年、第29巻、第1号、p.5−13
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、光の導入に半導体レーザ等の光源を用いる場合においても、光源の不良品率、及び設置位置の誤差によるヘッドの製造歩留まりの低下、さらには反射戻り光によるレーザ発振動作の不安定化等が問題となっていた。
【0015】
一般に、半導体レーザのダイオードチップにおいては、出力、レーザ光の広がり角、寿命等の特性評価を、チップ単体で非破壊的に行うことは非常に困難である。従って、半導体レーザをヘッド内に設ける場合、半導体レーザをスライダ等に設置した後に特性評価を行い、良否を判定することになる。さらに、半導体レーザと他の光学素子、特に近接場光の発生箇所との微妙な位置関係を適切に調整すること自体が相当に困難であるにもかかわらず、一度設置された半導体レーザの位置は、変更がほとんど不可能である。従って、実際に、半導体レーザの設置位置の誤差、特に、他の光学素子との位置関係に関わる製造誤差を解消又は縮小することが非常に困難となっている。
【0016】
その結果、ヘッド全体の製造歩留まりに対して、磁気ヘッド部分の歩留まりと、半導体レーザ自体の歩留まりと、半導体レーザの設置位置に関する歩留まりの全てが積算的に影響し、ヘッド全体の歩留まりが著しく低下してしまう。
【0017】
また、光源のスライダへの設置の問題を考察すると、例えば、特許文献3に開示されているように、散乱体に適切に光を照射するために、光源がヘッド端面近傍の記録媒体に非常に近い位置に設置されている場合、光源位置が記録媒体に接触する可能性を有しており、装置の信頼性という観点から非常に好ましくない。
【0018】
これに対して、例えば、非特許文献1に記載された技術によれば、半導体レーザ等の光源を媒体面から遠ざけた状態において光が入射可能となる。この場合、光ピックアップヘッドから収束された光が近接場光プローブに直接入射している。しかしながら、この技術は、近接場光プローブの集積された面と媒体対向面とが一致している構成を前提としており、集積面と媒体対向面(ABS)とが垂直である一般的な薄膜磁気ヘッドの構成とは全く異なり、親和性が良くない。すなわち、例えば、垂直通電型巨大磁気抵抗(CPP(Current Perpendicular to Plain)−GMR)効果素子や垂直磁気記録用の電磁コイル素子を備えた薄膜磁気ヘッドに適用することが非常に困難である。
【0019】
さらに、半導体レーザを媒体面から遠ざけた状態でヘッドに設けた場合、通常、光路上において前後で屈折率の異なる界面が存在する場合が多くなるが、この界面において、レーザ光の一部が反射され、反射戻り光として、半導体レーザに戻ってしまう。特に、半導体レーザの出光端から放射された光が、ヘッド内に入射する際の入射面において相当の割合で反射し、大きな反射戻り光となり得る。その結果、半導体レーザの発振動作が不安定化し、発振特性が低下する。
【0020】
従って、本発明の目的は、集積面とABSとが垂直である構成を有する薄膜磁気ヘッドにおいて、光源をABSから遠ざけた位置に設置した上で反射戻り光による光源の発振特性の低下を防止することができ、さらに光源の不良品率及び設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる手段を提供することにある。
【0021】
また、本発明の目的は、このような手段を用いた薄膜磁気ヘッド、この薄膜磁気ヘッドを備えたHGA及びこのHGAを備えた磁気ディスク装置を提供することにある。さらに、この薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明について説明する前に、明細書において使用される用語の定義を行う。基板の集積面に形成された磁気ヘッド素子の積層構造において、基準となる層よりも基板側にある構成要素を、基準となる層の「下」又は「下方」にあるとし、基準となる層よりも積層される方向側にある構成要素を、基準となる層の「上」又は「上方」にあるとする。
【0023】
本発明によれば、スライダのABSとは反対側の面に接着される接着面を有するユニット基板と、このユニット基板の接着面とは垂直な素子形成面に設けられた透過反射層とこの透過反射層上に設けられた熱アシスト磁気記録用の光の光路を含む上部伝播層とを含む伝播層と、ユニット基板の接着面とは反対側の面に形成されている堀込みと、この堀込みに設けられており光を放射する光源と、上部伝播層に設けられており光を伝播層の接着面側の端面に向けさせるための光路変更部とを備えており、
透過反射層が、伝播層の接着面側の端面又はこの端面の近傍に至るまで伸長していて、透過反射層の上方の層面が、光路変更部によって光路が変更されて上部伝播層を伝播する光に対して全反射面となっており、さらに、堀込みにおいて光源からの光が入射する側面が、透過反射層の下方の層面となっている熱アシスト磁気記録用の光源ユニットが提供される。
【0024】
この本発明による光源ユニットは、例えばレンズ部のような、複雑でしかも精度を要する光学部品を一切用いていない。すなわち、光源の位置関係を調整すべき光学系が、主に光路変更部のみであるので、光源の位置を比較的容易に調整することができる。その結果、光源の設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を十分に回避することができる。
【0025】
また、この本発明による光源ユニットと、スライダとを組み合わせて薄膜磁気ヘッドを製造する場合、例えば、前もって光源ユニットの特性評価を行って、良品のみを薄膜磁気ヘッドの製造に使用すれば、ヘッド製造時のヘッド全体の歩留まりが、ほぼスライダの製造歩留まりとなり、光源ユニットの不良品率によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる。
【0026】
さらにまた、この本発明による光源ユニットは、スライダのABSとは反対側の面に接着されるので、常に、光源をABSから遠ざけた位置に設置することが可能となる。さらに、このような光源ユニットを用いることによって、スライダに適切な進行方向を有しており伝播が調整された光を入射させることが可能となる。すなわち、集積面とABSとが垂直である構成を有する薄膜磁気ヘッドにおいて、適切な大きさ及び方向を有する光を確実に供給することができる。その結果、磁気記録媒体の加熱効率が高い熱アシスト磁気記録が実現可能となる。
【0027】
この本発明による光源ユニットにおいて、透過反射層が、上部伝播層の構成材料の屈折率よりも低くて、装置内の雰囲気の屈折率よりも高い屈折率を有する材料から構成されていることが好ましい。また、透過反射層が、このような屈折率を有する非晶性のフッ素樹脂からなることも好ましい。さらに、透過反射層における光源からの光が入射する部分の層厚tARが、光源からの光の波長をλとし、透過反射層の屈折率をnARとして、tAR=(1/4)×(λ/nAR)の条件を満たすことがより好ましい。
【0028】
このような透過反射層に、光源からの光が入射した場合、入射した光のうち反射する分が十分に低減されて、光源に戻る反射戻り光が十分に抑制される。その結果、光源の発振動作の不安定化が回避されて、発振特性が良好に維持される。
【0029】
さらに、本発明による光源ユニットにおいて、透過反射層の上方の層面が、素子形成面と平行であることも好ましい。また、伝播層が、素子形成面上に下地伝播層と透過反射層と上部伝播層とが順次積層された構造を有しており、堀込みが、ユニット基板及び下地伝播層の接着面とは反対側の面に形成されていてユニット基板及び下地伝播層の両方に及んでおり、光路変更部が、該上部伝播層に設けられていることも好ましい。
【0030】
さらにまた、本発明による光源ユニットにおいて、光源が、透過反射層の下方の層面に出光端を向けたレーザダイオードであることが好ましい。この場合、ユニット基板が導電性を有しており、このレーザダイオードの底面をなす電極が、ユニット基板に電気的に接続されていることが好ましい。また、本発明による光源ユニットにおいて、光路変更部が、ユニット基板の素子形成面に対して斜めに形成された、伝播層の層面を反射面としたプリズム部であることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、さらに、切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、以上に述べた光源ユニットとなるユニット加工バーが提供される。
【0032】
本発明によれば、さらにまた、ABS及びABSに垂直な集積面を有するスライダ基板と、集積面に形成された磁気ヘッド素子と、光をABSとは反対側の自身の端面から受け入れてABS側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、この磁気ヘッド素子及びこの導波路層を覆うように集積面上に形成された被覆層とを備えたスライダと、
スライダのABSとは反対側の面に接着面を接面させており、伝播層の接着面側の端面から放射された光が、導波路層を伝播してABS側のスライダ端面に達するように位置を合わせて固定されている、以上に述べた光源ユニットと
を備えている薄膜磁気ヘッドが提供される。
【0033】
この本発明による薄膜磁気ヘッドにおいて、スライダが、導波路層のABS側の端面に接した位置又はこの端面に近接した位置に設けられており、近接場光を発生させてデータ信号の書き込みの際に磁気記録媒体を加熱するための、ABS側のスライダ端面に達した端を有する近接場光発生部をさらに備えていることが好ましい。
【0034】
本発明によれば、さらにまた、以上に述べた薄膜磁気ヘッドと、この薄膜磁気ヘッドを支持する支持機構と、磁気ヘッド素子のための信号線と、光源用の電力供給線とを備えているHGAが提供される。
【0035】
本発明によれば、さらにまた、このようなHGAを少なくとも1つ備えており、少なくとも1つの磁気記録媒体と、この少なくとも1つの磁気記録媒体に対して薄膜磁気ヘッドが行う書き込み及び読み出し動作を制御するとともに、光源の発光動作を制御するための記録再生及び発光制御回路とをさらに備えている磁気ディスク装置が提供される。
【0036】
本発明によれば、さらにまた、ユニット基板ウエハの素子形成面に透過反射層を形成し、次いで、この透過反射層上に上部伝播層を形成した後、ユニット基板ウエハからユニット加工バーを切り出し、その後、このユニット加工バーの上部伝播層の一部を研削して素子形成面に対して傾斜した反射面を有するプリズム部を形成し、このプリズム部の形成の後又は前に、このユニット加工バーにおいてスライダと接着される接着面となるバー接着面とは反対側の面に、光が入射する側面が透過反射層の下方の層面となっている堀込みを形成し、その後、この堀込みに光源を搭載し、その後、ユニット加工バーを切断分離することによって、熱アシスト磁気記録用の光源ユニットを形成し、
ABS及びABSに垂直な集積面を有するスライダ基板と、集積面に形成された磁気ヘッド素子と、光をABSとは反対側の自身の端面から受け入れてABS側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、この磁気ヘッド素子及びこの導波路層を覆うように集積面上に形成された被覆層とを備えたスライダを形成し、
形成された光源ユニットの接着面と、形成されたスライダのABSとは反対側の面とを接面させ、次いで、伝播層の接着面側の端面から放射された光が導波路層を伝播してABS側のスライダ端面に達するように光源ユニットとスライダとの位置合わせをした上で、光源ユニットとスライダとを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法が提供される。
【0037】
本発明によれば、さらにまた、ユニット基板ウエハの素子形成面に透過反射層を形成し、次いで、この透過反射層上に上部伝播層を形成した後、ユニット基板ウエハからユニット加工バーを切り出し、その後、このユニット加工バーの上部伝播層の一部を研削して素子形成面に対して傾斜した反射面を有するプリズム部を形成し、このプリズム部の形成の後又は前に、このユニット加工バーにおいてスライダと接着される接着面となるバー接着面とは反対側の面に、光が入射する側面が透過反射層の下方の層面となっている堀込みを形成し、その後、この堀込みに光源を搭載することによって、ユニット加工バーの形成を終了させ、
切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、ABS及びABSに垂直な集積面を有するスライダ基板と、集積面に形成された磁気ヘッド素子と、光を該ABSとは反対側の自身の端面から受け入れて該ABS側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、この磁気ヘッド素子及びこの導波路層を覆う被覆層とを備えた熱アシスト磁気記録用のスライダとなるスライダ加工バーを形成し、
形成が終了したユニット加工バーのバー接着面と、形成されたスライダ加工バーのABSとなる面とは反対側の面とを接面させ、次いで、伝播層の接着面側の端面から放射された光が導波路層を伝播してABS側のスライダ端面に達するように、ユニット加工バーとスライダ加工バーとを位置合わせした上で、ユニット加工バーとスライダ加工バーとを固着し、その後、固着されたユニット加工バー及びスライダ加工バーを切断分離する薄膜磁気ヘッドの製造方法が提供される。
【0038】
以上に述べた本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法において、透過反射層を、上部伝播層の構成材料の屈折率よりも低くて、装置内の雰囲気の屈折率よりも高い屈折率を有する材料を用いて形成することが好ましい。また、透過反射層における光源からの光が入射する部分の層厚tARが、光源からの光の波長をλとし、透過反射層の屈折率をnARとして、tAR=(1/4)×(λ/nAR)の条件を満たすように、バー接着面とは反対側の面をエッチングすることによって堀込みを形成することがより好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明による熱アシスト磁気記録用の光源ユニット、この光源ユニットを備えた薄膜磁気ヘッド、この薄膜磁気ヘッドを備えたHGA及びこのHGAを備えた磁気ディスク装置によれば、集積面とABSとが垂直であるヘッド構成において、光源をABSから遠ざけた位置に設置した上で反射戻り光による光源の発振特性の低下を防止することができ、さらに光源の不良品率及び設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる。
【0040】
また、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、このような熱アシスト磁気記録用の薄膜磁気ヘッドを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0042】
図1は、本発明による磁気ディスク装置及びHGAの一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。ここで、HGAの斜視図においては、HGAの磁気ディスク表面に対向する側が上になって表示されている。
【0043】
同図において、10は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する複数の磁気記録媒体である磁気ディスク、12は、薄膜磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置、13は、この薄膜磁気ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに後に詳述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードを制御するための記録再生及び発光制御回路をそれぞれ示している。
【0044】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM)15によってピボットベアリング軸16を中心にして角揺動可能であり、この軸16に沿った方向にスタックされている。各駆動アーム14の先端部には、HGA17が取り付けられている。各HGA17には、薄膜磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び薄膜磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
【0045】
HGA17は、サスペンション20の先端部に、薄膜磁気ヘッド21を固着し、さらにその薄膜磁気ヘッド21の端子電極に配線部材203の一端を電気的に接続して構成される。サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200上に固着され支持された弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に設けられておりリード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203とから主として構成されている。
【0046】
なお、本発明のHGA17におけるサスペンションの構造は、以上述べた構造に限定されるものではないことは明らかである。なお、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
【0047】
図2は、本発明による薄膜磁気ヘッド21の一実施形態を示す斜視図である。
【0048】
図2によれば、薄膜磁気ヘッド21は、データ信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッド素子32を備えたスライダ22と、熱アシスト磁気記録用の光源となるレーザダイオード40を備えた光源ユニット23とが、それぞれの背面2201及び接着面2300を接面させて接着、固定された構成を有している。ここで、スライダ22の背面2201は、スライダ22のABS2200とは反対側の面である。
【0049】
スライダ22は、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面であるABS2200を有するスライダ基板220と、スライダ基板220のABS2200に垂直な集積面2202に形成された、データ信号を読み出すためのMR効果素子33及びデータ信号を書き込むための電磁コイル素子34から構成される磁気ヘッド素子32と、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の間を通して設けられている導波路層35と、磁気ディスクの記録層部分を加熱するための近接場光を発生させる近接場光発生部36と、MR効果素子33、電磁コイル素子34、導波路層35及び近接場光発生部36を覆うように集積面2202上に形成された被覆層38と、被覆層38の層面から露出した、MR効果素子33及び電磁コイル素子34に2つずつ接続されている合計4つの信号端子電極37とを備えている。
【0050】
MR効果素子33、電磁コイル素子34、及び近接場光発生部36の一端は、ABS2200側のスライダ端面221に達している。ここで、スライダ端面221は、スライダ22のABS2200側の面であってABS2200以外の部分の面である。実際の書き込み又は読み出し動作時には、薄膜磁気ヘッド21が回転する磁気ディスク表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の端が磁気ディスクと微小なスペーシングを介して対向することによって、データ信号磁界の感受による読み出しとデータ信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
【0051】
ここで、データ信号の書き込みの際、光源ユニット23から導波路層35を通って伝播してきたレーザ光が近接場光発生部36を照射し、この照射によって、近接場光発生部36のスライダ端面221に達した端から近接場光が発生する。この近接場光によって、後述するように、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0052】
導波路層35は、ともに放物線に沿って湾曲した、トラック幅方向において対向する2つの側面351を有しており、ABS2200とは反対側のスライダ端面222に達した端面352から入射した平行に揃えられたレーザ光39が、この両側面351での反射によって、スライダ端面221側の端面である集光面350に集光可能となっている。なお、スライダ端面222は、スライダ22のABS2200とは反対側の面であって背面2201以外の部分の面である。また、近接場光発生部36は、一方の端が導波路層35の集光面350に接しており、他方の端がスライダ端面221に達している微細な近接場光ギャップ部361と、互いの先端をこの近接場光ギャップ部361を介して対向させている2つの対向金属層360とを備えている。近接場光発生部36においては、近接場光ギャップ部361と、この微細な近接場光ギャップ部361を狭持した対向金属層360とが、いわゆる「蝶ネクタイ型」構造を実現している。この「蝶ネクタイ型」構造においては、その中心部に非常に強い電界の集中が発生する。
【0053】
この近接場光の電界強度は、入射光に比べて桁違いに強く、この非常に強力な近接場光が、磁気ディスク表面の対向する局所部分を急速に加熱する。これにより、この局所部分の保磁力が、書き込み磁界による書き込みが可能な大きさまでに低下するので、高密度記録用の高保磁力の磁気ディスクを使用しても、電磁コイル素子34による書き込みが可能となる。なお、近接場光は、スライダ端面221から磁気ディスクの表面に向かって、上述した近接場光ギャップ部361のトラック幅方向の幅又は層厚程度までの領域に存在する。従って、10nm又はそれ以下の浮上量である現状において、近接場光は、十分に記録層部分に到達することができる。また、このように発生する近接場光の幅は、同じく上述した幅又は層厚と同程度であって、この近接場光の電界強度は、この幅又は層厚以上の領域では指数関数的に減衰するので、非常に局所的に磁気ディスクの記録層部分を加熱することができる。
【0054】
同じく図2によれば、光源ユニット23は、スライダ22の背面2201に接着される接着面2300を有するユニット基板230と、素子形成面2302上に設けられており、後述するレーザダイオード40から放射されたレーザ光の光路を含み、このレーザ光を自身の接着面側の端面410まで伝播させるための伝播層41と、伝播層41のうちの後述する下地伝播層412における接着面2300とは反対側の端面、及びユニット基板の接着面2300とは反対側のユニット上面2301に形成されており、ユニット基板230及び下地伝播層412の両方に及んでいる堀込み45と、堀込み45に設置されており、熱アシスト磁気記録用のレーザ光を供給するためのレーザダイオード40と、伝播層41のうちの後述する上部伝播層414に設けられており、上部伝播層414の素子形成面2302に対して斜めに形成された層面を反射面430とした、レーザ光を端面410に向けさせるための光路変更部としてのプリズム部43と、レーザダイオード40用の駆動端子電極440及び441とを備えている。
【0055】
伝播層41は、下地伝播層412と、この下地伝播層412上に積層された透過反射層413と、この透過反射層413上に積層された上部伝播層414とから構成されている。ここで、透過反射層413は、伝播層41の接着面2300側の端面410まで伸長しており、後に詳しく説明するように、上部伝播層414の構成材料よりも低くて磁気ディスク装置内の雰囲気(屈折率nは約1)よりも高い屈折率を有する材料から構成されている。
【0056】
従って、透過反射層413の上方の層面であって素子形成面2302と平行な層面4131は、この層面内の方向に近い大きな入射角(全反射の臨海角以上の入射角)で入射してくるレーザ光を全反射させる。すなわち、層面4131は、プリズム部43によって光路が変更されて上部伝播層414を伝播するレーザ光に対して、全反射面となっている。また、上部伝播層414の上面の内側4140も、同様に伝播するレーザ光に対して全反射面となっている。その結果、上部伝播層414は、透過反射層413を設けることによって、伝播効率の良い導波路層となっている。
【0057】
なお、透過反射層413は、必ずしも伝播層41の接着面2300側の端面410まで伸長している必要はなく、例えば、端面410の近傍に達していればよい。すなわち、上部伝播層414を伝播するレーザ光を伝播層41の接着面2300側の端面410にまで、確実に伝播効率良く到達させることができるだけ伸長していればよい。さらに、透過反射層413の層面4131は、光源ユニット23からスライダ22に放射されるレーザ光における所望の向きに応じて、素子形成面2302に対して傾斜していてもよい。
【0058】
また、堀込み45においてレーザダイオード40からのレーザ光が入射する入射側面は、この透過反射層413の下方の層面4130となっている。ここで、上述したように、透過反射層413は、上部伝播層414の構成材料よりも低くて磁気ディスク装置内の雰囲気(屈折率nは約1)よりも高い屈折率を有する材料から構成されているので、屈折率の高い上部伝播層414上に設けられた、屈折率の低い反射防止用のコーティング層としての機能を果たすことになる。以下、この機能について説明する。
【0059】
一般に、屈折率nの媒体から屈折率nの媒体に光が垂直入射する際の反射率R12は、光の吸収を無視し、さらに媒体間の界面が平滑で乱反射がないとした場合、
12=((n−n)/(n+n)) (1)
と表される。すなわち、両媒体の屈折率の差n−nが小さいほど、反射率R12が小さくなり、光の透過量が増大する。従って、磁気ディスク装置内の雰囲気と上部伝播層414との間に、両者の間の屈折率値を有する透過反射層413を設けることによって、全体の反射量が低減されることになる。
【0060】
実際に、(1)式を、磁気ディスク装置内の雰囲気及び透過反射層413の界面と、透過反射層413及び上部伝播層414の界面とに適用し、光の干渉効果を考慮することによって、透過反射層413におけるレーザ光が入射する部分の層厚tAR及び同層の屈折率nARの値が、
AR=(1/4)×(λ/nAR) (2)
AR=(nUT (3)
であるときに、最も反射量が小さくなることが求められる。ここで、λはレーザ光の波長であり、n及びnUTはそれぞれ磁気ディスク装置内の雰囲気及び上部伝播層414の屈折率である。なお、(2)式は、それぞれの界面からの反射光の位相が逆となって打ち消し合う条件であり、(3)式は、その際の振幅が揃う条件である。
【0061】
すなわち、透過反射層413におけるレーザ光が入射する部分の層厚tAR及び同層の屈折率nARはそれぞれ、上述した(2)及び(3)式を満たす値に設定されていることが好ましいことが理解される。
【0062】
レーザダイオード40の出光端400から放射されたレーザ光は、入射側面である層面4130に入射して上部伝播層414内を伝播する。この際、層面4130に入射したレーザ光のうち反射する分は、上述したように十分に低減されており、出光端400に戻る反射戻り光が十分に抑制される。その結果、レーザダイオード40の発振動作の不安定化が回避されて、発振特性が良好に維持される。
【0063】
また、レーザ光は、伝播層41を伝播するにつれて進行方向を中心として広がっていく。しかしながら、このレーザ光は、プリズム部43の反射面430に達して同面で全反射し、進行方向を変更させられた後、上部伝播層414において層面4131及び上面の内側4140の間で全反射を繰り返し、伝播層41の端面410まで確実に伝播効率良く伝播する。その結果、この端面410から放射されたレーザ光が、導波路層35の端面352に、同層の層面に平行な方向に入射可能となる。
【0064】
ここで、光源ユニット23は、例えばレンズ部のような、複雑でしかも精度を要する光学部品を一切用いることなく、また、面倒な光学的な微調整を行うことなく、適切な大きさ及び方向を有するレーザ光を放射可能としている。すなわち、このような光源ユニット23を用いることによって、集積面2202とABS2200とが垂直である構成を有する薄膜磁気ヘッド21において、適切な大きさ及び方向を有するレーザ光が、比較的容易な製造工程及び調整過程を経て、確実に供給可能となる。その結果、磁気ディスクの記録層の加熱効率が高い熱アシスト磁気記録を、容易に実現可能とする。
【0065】
また、以上に、スライダ22及び光源ユニット23の構成を説明したが、薄膜磁気ヘッド21は、このようなスライダ22及び光源ユニット23を合わせた構成になっていて、それぞれを形成した後に、組み合わせることにより製造することができる。従って、例えば、前もって光源ユニットの特性評価を行って、良品のみを薄膜磁気ヘッドの製造に使用すれば、ヘッド製造時のヘッド全体の製造歩留まりが、ほぼスライダの製造歩留まりとなり、光源ユニットの不良品率によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる。
【0066】
さらに、光源ユニット23は、スライダ22のABS2200とは反対側の背面2201に接着されるので、常に、レーザダイオード40をABS2200から遠ざけた位置に設置することが可能となる。
【0067】
なお、スライダ22及び光源ユニット23の大きさは任意であるが、例えば、スライダ22は、トラック幅方向の幅700μm×長さ(奥行き)850μm×厚み230μmの、いわゆるフェムトスライダであってもよい。この場合、光源ユニット23は、これよりも一回り小さい大きさ、例えば、トラック幅方向の幅650μm×長さ(奥行き)700μm×厚み180μmであってもよい。また、例えば、通常用いられるレーザダイオードの典型的な大きさは、幅250μm×長さ(奥行き)250μm×厚み65μm程度であり、この大きさの光源ユニット23のユニット上面2301(及び下地伝播層412の端面)に、この大きさのレーザダイオード40を設置できる堀込み45を形成することが、十分に可能となっている。この際、この堀込み45の深さを65μm、又はこれよりも数μm深くしておけば、レーザダイオード40の上面をユニット上面2301と同等か、又は低くすることができる。ただし、この堀込み45の深さを、例えば30μm程度として、レーザダイオード40の上面を若干突出させてもよい。また、光源ユニット23の大きさを、レーザダイオード40が設置可能な範囲でより小さくすることによって、1枚の基板ウエハから、より多数の光源ユニット23を収得することが可能となる。
【0068】
また、伝播層41の端面410に達したレーザ光のスポットにおいて、トラック幅方向の径を、例えば5〜40μm程度とし、この径に直交する径を、例えば1〜6μm程度とすることができる。この1〜6μm程度の値は、上部伝播層414の厚さを同等の1〜6μm程度とすることによって実現する。一方、このレーザ光を受け取る導波路層35の端面352での厚さを、例えば1〜6μm程度とし、導波路層35の端面352でのトラック幅方向の幅を、例えば50〜500μm程度とすることができる。以上のように大きさを設定した場合、伝播層41の端面410から放射された光が、導波路層35を伝播してABS2200側のスライダ端面221(近接場光発生部36)に達するように、スライダ22と光源ユニット23との位置を合わせる際、トラック幅方向での位置合わせは、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせに比べて比較的容易に行うことができる。
【0069】
また、薄膜磁気ヘッド21全体の光学的な調整においては、上述したスライダ22と光源ユニット23との位置合わせを行う前に、光源ユニット23において、レーザダイオード40の堀込み45に対する位置の調整を行う必要がある。ここで、光源ユニット23においては、レーザダイオード40の位置関係を調整すべき光学系が、主にプリズム部43のみであるので、比較的容易に調整することができる。その結果、レーザダイオード40の設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を十分に回避することができる。
【0070】
また、他の実施形態として、スライダ22において近接場光発生部36を設けずに、導波路層35の集光面350をスライダ端面221から露出させて、磁気ディスクに集光したレーザ光を照射して、磁気ディスクを加熱してもよい。この場合、例えば、磁気ディスク装置の使用環境が低温である時にのみ磁気ディスクを加熱して、少なくとも室温時の保磁力Hを維持することも好ましいし、レーザ光を磁気ディスクに常時照射して、磁気ディスクを例えば100℃以上の高温に維持することも好ましい。
【0071】
図3(A)は、図2に示した薄膜磁気ヘッド21の要部の構成を概略的に示す、図2のA−A線断面図であり、図3(B)は、磁気ヘッド素子32及び近接場光発生部36のスライダ端面221における端の形状を示す平面図である。
【0072】
まず、薄膜磁気ヘッド21のスライダ22の構成要素について説明する。
【0073】
図3(A)のスライダ22において、220はアルティック(Al−TiC)等からなるスライダ基板であり、磁気ディスク表面に対向するABS2200を有している。このスライダ基板220のABS2200を底面とした際の一つの側面である集積面2202に、読み出し用のMR効果素子33と、書き込み用の電磁コイル素子34と、これらの素子を保護する被覆層38とが主に形成されている。
【0074】
MR効果素子33は、MR積層体332と、この積層体を挟む位置に配置されている下部シールド層330及び上部シールド層334とを含む。下部シールド層330及び上部シールド層334は、例えば、フレームめっき法を含むパターンめっき法等によって形成された厚さ0.5〜3μm程度のNiFe、CoFeNi、CoFe、FeN若しくはFeZrN等で構成することができる。
【0075】
MR積層体332は、面内通電型(CIP(Current In Plain))巨大磁気抵抗(GMR(Giant Magneto Resistive))多層膜、垂直通電型(CPP(Current Perpendicular to Plain))GMR多層膜、又はトンネル磁気抵抗(TMR(Tunnel Magneto Resistive))多層膜を含み、非常に高い感度で磁気ディスクからの信号磁界を感受する。上下部シールド層334及び330は、MR積層体332が雑音となる外部磁界の影響を受けることを防止する。
【0076】
このMR積層体332がCIP-GMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330の各々とMR積層体332との間に絶縁用の上下部シールドギャップ層がそれぞれ設けられる。さらに、MR積層体332にセンス電流を供給して再生出力を取り出すためのMRリード導体層が形成される。一方、MR積層体332がCPP-GMR多層膜又はTMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330はそれぞれ上下部の電極層としても機能する。この場合、上下部シールドギャップ層とMRリード導体層とは不要であって省略される。なお、図示されていないが、MR積層体332のスライダ端面221とは反対側のシールド層間には絶縁層が形成され、さらに、MR積層体332のトラック幅方向の両側には、絶縁層か、又は磁区の安定化用の縦バイアス磁界を印加するための、バイアス絶縁層及び強磁性材料からなるハードバイアス層が形成される。
【0077】
MR積層体332は、例えば、TMR効果多層膜を含む場合、IrMn、PtMn、NiMn、RuRhMn等からなる厚さ5〜15nm程度の反強磁性層と、例えば強磁性材料であるCoFe等、又はRu等の非磁性金属層を挟んだ2層のCoFe等から構成されており反強磁性層によって磁化方向が固定されている磁化固定層と、例えばAl、AlCu等からなる厚さ0.5〜1nm程度の金属膜が真空装置内に導入された酸素によって又は自然酸化によって酸化された非磁性誘電材料からなるトンネルバリア層と、例えば強磁性材料である厚さ1nm程度のCoFe等と厚さ3〜4nm程度のNiFe等との2層膜から構成されておりトンネルバリア層を介して磁化固定層との間でトンネル交換結合をなす磁化自由層とが、順次積層された構造を有している。
【0078】
電磁コイル素子34は、垂直磁気記録用であり、主磁極層340、ギャップ層341、コイル層342、コイル絶縁層343、及び補助磁極層344を備えている。主磁極層340は、コイル層342によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスクの記録層まで収束させながら導くための導磁路である。ここで、主磁極層340のスライダ端面221側の端部340aの層厚方向の長さ(厚さ)は、他の部分に比べて小さくなっている。この結果、高記録密度化に対応した微細な書き込み磁界が発生可能となる。
【0079】
補助磁極層344のスライダ端面221側の端部は、補助磁極層344の他の部分よりも層断面が広いトレーリングシールド部となっている。トレーリングシールド部は、主磁極層340のABS側の端とギャップ層を介して対向している。このようなトレーリングシールド部を設けることによって、スライダ端面221近傍におけるトレーリングシールド部の端部と主磁極層340の端部との間において磁界勾配がより急峻になる。この結果、信号出力のジッタが小さくなって読み出し時のエラーレートを小さくすることができる。
【0080】
ここで、主磁極層340は、例えば、ABS側の端部での全厚が約0.01μm〜約0.5μmであって、この端部以外での全厚が約0.5μm〜約3.0μmの、例えばフレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成されたNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。ギャップ層341は、例えば、厚さ約0.01μm〜約0.5μmの、例えばスパッタリング法、CVD法等を用いて形成されたAl(アルミナ)又はDLC等から構成されている。コイル層342は、例えば、厚さ約0.5μm〜約3μmの、例えばフレームめっき法等を用いて形成されたCu等から構成されている。コイル絶縁層343は、例えば、厚さ約0.1μm〜約5μmの熱硬化されたレジスト層等から構成されている。補助磁極層344は、例えば、厚さ約0.5μm〜約5μmの、例えばフレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成されたNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。
【0081】
導波路層35は、MR効果素子33と電磁コイル素子34との間に位置していて集積面2202と平行に伸長しているが、スライダ端面221の近傍において、スライダ端面221に向かってその厚さ方向においても先細りした形状を有している。導波路層35は、何れの部分においても、被覆層38を形成する材料よりも高い屈折率nを有する、例えばスパッタリング法等を用いて形成された誘電材料から構成されている。例えば、被覆層38が、SiO(n=1.5)から形成されている場合、導波路層35は、Al(n=1.63)から形成されていてもよい。さらに、被覆層38が、Al(n=1.63)から形成されている場合、導波路層35は、Ta(n=2.16)、Nb(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO(n=2.3〜2.55)から形成されていてもよい。導波路層35をこのような材料で構成することによって、材料そのものが有する良好な光学特性によるだけではなく、界面での全反射条件が整うことによって、レーザ光の伝播損失が小さくなり、近接場光の発生効率が向上する。
【0082】
図3(A)において、近接場光発生部36の近接場光ギャップ部361は、導波路層35と同じ誘電材料で形成されている。また、図3(A)には図示されておらず図2に示されている、近接場光発生部36の対向金属層360は、Au、Pd、Pt、Rh若しくはIr、若しくはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金、又はAl、Cu等が添加されたこれらの合金等の導電材料から形成されている。
【0083】
近接場光ギャップ部361のトラック幅方向の幅及び層厚は、入射されるレーザ光の波長よりも十分に小さく、それぞれ、約10nm〜約300nm及び約10nm〜約200nmである。また、近接場光ギャップ部361のスライダ端面221に垂直な方向の長さは、例えば、10〜500nm程度である。また、導波路層35の端面352でのトラック幅方向の幅は、例えば、50〜500μm程度である。
【0084】
図3(B)によれば、スライダ端面221上において、近接場光ギャップ部361の発生端361aは、電磁コイル素子34の主磁極層340の端340bに近接していて、端340bのリーディング側に位置している。また、発生端361aの形状は、トレーリング側に短辺を有する正台形となっている。
【0085】
ここで、近接場光は、入射されるレーザ光の波長及び導波路層35の形状にも依存するが、一般に、最も幅の狭いトレーリング側の短辺近傍において最も強い強度を有する。すなわち、磁気ディスクの記録層部分を加熱する熱アシスト作用において、このトレーリング側の短辺近傍が、主要な加熱作用部分となる。
【0086】
また、主磁極層340の端340bの形状は、トレーリング側に長辺を有する逆台形となっている。すなわち、主磁極層340の端部340aの側面には、ロータリーアクチュエータでの駆動により発生するスキュー角の影響によって隣接トラックに不要な書き込み等を及ぼさないように、ベベル角が付けられている。ベベル角の大きさは、例えば、15°程度である。実際に、書き込み磁界が主に発生するのは、トレーリング側の長辺近傍であり、この長辺の長さによって書き込みトラックの幅が決定される。
【0087】
以上に述べた、近接場光ギャップ部361の発生端361a、及び主磁極層340の端340bの配置及び形状によれば、主要な加熱作用部分である発生端361aのトレーリング側の短辺近傍が、書き込み部分である主磁極層の端340bに非常に近い位置にあるので、磁気ディスクの記録層部分に熱を加えた直後に、ほとんど間を置かず、書き込み磁界を印加することができる。これにより、熱アシストによる安定した書き込み動作が、確実に実行可能となる。
【0088】
なお、MR効果素子33と導波路層35及び近接場光発生部36との間に、素子間シールド層48が形成されている。素子間シールド層48は、MR効果素子33を、電磁コイル素子34より発生する磁界から遮断して読み出しの際の外来ノイズを防止する役割を果たす。また、素子間シールド層48と導波路層35との間に、さらに、バッキングコイル部が形成されていてもよい。バッキングコイル部は、電磁コイル素子34から発生してMR効果素子33の上下部電極層を経由する磁束ループを打ち消す磁束を発生させて、磁気ディスクへの不要な書き込み又は消去動作である広域隣接トラック消去(WATE)現象の抑制を図るものである。なお、コイル層342は、図3(A)において1層であるが、2層以上又はヘリカルコイルでもよい。
【0089】
また、電磁コイル素子34が、長手磁気記録用であってもかまわない。この場合、主磁極層340及び補助磁極層344の代わりに、下部磁極層及び上部磁極層が設けられ、さらに、下部磁極層及び上部磁極層のスライダ端面221側の端部に挟持された書き込みギャップ層が設けられる。この書き込みギャップ層位置からの漏洩磁界によって書き込みが行われる。
【0090】
次いで、薄膜磁気ヘッド21の光源ユニット23の構成要素について説明する。
【0091】
図3(A)の光源ユニット23において、230はアルティック(Al−TiC)等からなるユニット基板であり、スライダ基板220の背面2201に接着している接着面2300を有している。この接着面2300を底面とした際の一つの側面である素子形成面2302上に、伝播層41が設けられており、この伝播層41のうちの上部伝播層414にプリズム部43が設けられており、さらに、ユニット基板230及び伝播層41のうちの下地伝播層412に形成された堀込み45に、レーザダイオード40が設置されている。
【0092】
伝播層41は、上述したように、下地伝播層412と、この下地伝播層412上に積層された透過反射層413と、この透過反射層413上に積層された上部伝播層414とから構成されている。
【0093】
透過反射層413は、これも上述したように、上部伝播層414を形成する材料よりも低くて磁気ディスク装置内の雰囲気(屈折率nは約1)よりも高い屈折率nARを有する誘電材料から構成されている。例えば、上部伝播層414がAl(アルミナ)(n=1.63)から形成されている場合、透過反射層413は、SiO(n=1.5)又はMgF(n=1.36)から形成されていてもよい。さらに、上部伝播層414がTa(n=2.16)、Nb(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO(n=2.3〜2.55)から形成されている場合、透過反射層413は、Al(n=1.63)、SiO(n=1.5)、又はMgF(n=1.36)から形成されていてもよい。なお、この場合、透過反射層413、上部伝播層414ともに、例えばスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0094】
また、透過反射層413は、無機材料でなくともよい。例えば、上部伝播層414がSiO(n=1.5)、Al(n=1.63)、Ta(n=2.16)、Nb(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO(n=2.3〜2.55)から形成されている場合、透過反射層413が、これらの構成材料よりも低い屈折率を有する、塗布法又はゾルゲル法等を用いて形成された、UV(紫外線)硬化型又は熱硬化型等の、フッ素樹脂又は非晶性フッ素樹脂等であってもよい。例えば、実際に、UV硬化型の非晶性フッ素樹脂において、硬化後の屈折率が、1.38程度のものが開発されている。
【0095】
さらに、透過反射層413の厚さは、レーザダイオード40と対向していない部分においては、例えば0.2μm程度までの値であり、一方、レーザ光が入射する部分の層厚tARは、上述した(2)式を満たす値であることが好ましい。例えば、レーザ光の波長λが600nmであって、透過反射層413の屈折率nARが1.38である場合、層厚tARが、約109nmであることが好ましい。
【0096】
また、上部伝播層414の厚さは、素子形成面2302に垂直な方向での、導波路としての幅に相当し、実際、端面410に達したレーザ光のスポットの、トラック幅方向に垂直な方向の径を決定する。そのため、この上部伝播層414の厚さは、スライダ22の導波路層35の端面352での厚さと同程度の、例えば1〜6μm程度に設定されてもよい。
【0097】
なお、下地伝播層412は、透過反射層413の下地としての役割を果たしており、レーザ光の光路を含まない。従って、下地伝播層412は、屈折率の点で特に限定されず、例えば、スパッタリング法等を用いて形成された、厚さ0.1〜20μm程度の、上部伝播層414と同じ材料から構成された層であってもよい。
【0098】
プリズム部43は、素子形成面2302に対して斜めに形成された、上部伝播層414の層面を反射面430として、レーザ光の進行方向を変更させるものである。レーザ光が、このプリズム部43の反射面430に臨界角以上の入射角で入射すると、このレーザ光は、反射面430で全反射し、端面410の方向に進行方向を変更させられる。実際、例えば、上部伝播層414がAl(n=1.63)、TiO(n=2.3〜2.55)のいずれから形成されている場合であっても、磁気ディスク装置内の雰囲気(屈折率nは約1)よりは大きな屈折率を有しているので、このような全反射が可能となる。
【0099】
なお、本発明においては、プリズム部43によって進行方向を変更させられたレーザ光は、透過反射層413の層面4131と上部伝播層414の上面の内側4140との間に進入しさえすれば、確実に端面410に達することができる。従って、使用状況によっては、反射面430の素子形成面に対する傾斜角θの精度を、それほど高めなくともよい。
【0100】
図4(A)及び(B)は、レーザダイオード40の構成、及びレーザダイオード40の堀込み45への搭載方法を示す概略図である。
【0101】
図4(A)によれば、レーザダイオード40は、通常、光学系ディスクストレージに使用されるものと同じ構造を有していてもよく、例えば、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、n−GaAs電流阻止層40hと、p−GaAsコンタクト層40iと、p電極40jとが順次積層された構造を有する。これらの多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するためのSiO、Al等からなる反射膜50及び51が成膜されており、レーザ光が放射される出光端400には、一方の反射膜50における活性層40eの位置に開口が設けられている。
【0102】
放射されるレーザ光の波長λは、例えば600〜650nm程度である。ただし、スライダ22(図2)に近接場光発生部36を設ける場合、対向金属層360(図2)の金属材料に応じた適切な励起波長が存在することに留意しなければならない。例えば、対向金属層360としてAuを用いた場合、レーザ光の波長λは、600nm近傍が好ましい。なお、この励起波長においては、対向金属層360の寸法によっても最適値が変化する。
【0103】
レーザダイオード40の大きさは、上述したように、例えば、幅250μm×長さ(奥行き)250μm×厚み65μm程度である。ここで、レーザダイオード40の幅は、電流阻止層40hの対向端の間隔を下限として、例えば、100μm程度までに小さくすることができる。ただし、レーザダイオード40の長さは、電流密度と関係する量であり、それほど小さくすることはできない。いずれにしても、レーザダイオード40に関しては、搭載の際のハンドリングを考慮して、相当の大きさが確保されることが好ましい。
【0104】
また、このレーザダイオード40の駆動においては、磁気ディスク装置内の電源が使用可能である。実際、磁気ディスク装置は、通常、例えば2V程度の電源を備えており、レーザ発振動作には十分の電圧を有している。また、レーザダイオード40の消費電力も、例えば、数十mW程度であり、磁気ディスク装置内の電源で十分に賄うことができる。
【0105】
図4(B)によれば、レーザダイオード40は、堀込み45に搭載されており、底面401をなす一方の電極が、鉛フリー半田の1つであるAuSn合金52による半田付けによって、堀込み45の底面450と電気的に接続されながら固定されている。ここでユニット基板230は、例えばアルティックから形成されており導電性を有するので、レーザダイオード40と駆動端子電極440とが電気的に接続されることになる。実際の固定においては、例えば、堀込み45の底面450に厚さ0.7〜1μm程度のAuSn合金の蒸着膜を成膜し、レーザダイオード40を乗せた後、熱風ブロア下でホットプレート等による200〜300℃程度までの加熱を行って固定してもよい。なお、堀込み45の底面450と接続される電極は、n電極40aでもp電極40jでもかまわない。ここで、上述したAuSn合金による半田付けをする場合、光源ユニットを例えば300℃前後の高温に加熱することになるが、本発明によれば、この光源ユニットがスライダとは別に製造されるため、スライダ内の磁気ヘッド素子がこの高温の悪影響を受けずに済む。
【0106】
駆動端子電極440は、ユニット基板230のユニット上面2301上に設けられた厚さ10nm程度のTa、Ti等からなる下地層の上に形成されており、厚さ1〜3μm程度の例えばスパッタリング法等によるAu、Cu等の層から構成されている。また、駆動端子電極441は、レーザダイオード40の半田付けされていないもう一方の電極上に設けられた厚さ10nm程度のTa、Ti等からなる下地層の上に形成されており、厚さ1〜3μm程度の例えばスパッタリング法等によるAu、Cu等の層から構成されている。
【0107】
なお、レーザダイオード40及び駆動端子電極440及び441も、当然に、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、レーザダイオード40は、GaAlAs系等、他の半導体材料を用いた他の構成のものであってもよい。さらに、レーザダイオード40の電極の半田付けに、他のろう材を用いて行うことも可能である。さらにまた、レーザダイオード40の両方の電極をユニット基板から絶縁させて、駆動端子電極を形成してもよい。さらにまた、レーザダイオード40を、ユニット基板上に直接、半導体材料をエピタキシャル成長させることによって形成してもよい。
【0108】
図5は、本発明による光源ユニットについての他の実施形態を示す、図2のA−A線断面に相当する断面図である。
【0109】
図5(A)によれば、伝播層60は、素子形成面2302に形成された透過反射層603と、この透過反射層603上に形成された上部伝播層604とから構成されている。このような形態においても、層面6030に入射したレーザ光のうち反射する分は、上述したように十分に低減されており、反射戻り光が十分に抑制される。その結果、レーザダイオード40の発振動作の不安定化が回避されて、発振特性が良好に維持される。さらに、レーザ光は、プリズム部61で全反射し、進行方向を変更させられた後、上部伝播層604において層面6031及び上面の内側6040の間で全反射を繰り返し、伝播層60の端面600まで確実に伝播効率良く伝播する。
【0110】
図5(B)によれば、この実施形態においては、透過反射層623における、レーザダイオード40からのレーザ光が入射する部分の厚さと、プリズム部63において全反射したレーザ光の導波路としての部分の厚さとが異なっている。この場合においても、層面6230に入射したレーザ光のうち反射する分は、上述したように十分に低減されており、反射戻り光が十分に抑制される。その結果、レーザダイオード40の発振動作の不安定化が回避されて、発振特性が良好に維持される。さらに、レーザ光は、プリズム部63で全反射し、進行方向を変更させられた後、伝播層62の端面620まで確実に伝播効率良く伝播する。
【0111】
図5(C)によれば、透過反射層643は、反射戻り光を抑制する役割を果たす第1の透過反射層643aと、伝播層64の端面640までの導波路の全反射面としての役割を果たす第2の透過反射層643bとから構成されている。第1の透過反射層643a及び第2の透過反射層643bは一体とはなっていないが、ともに同じ材料であってもよいし、それぞれ役割に応じた、異なる材料から構成されていてもよい。
【0112】
以上、いずれの実施形態においても、光源ユニットにおいて、例えばレンズ部のような、複雑でしかも精度を要する光学部品を一切用いることなく、反射戻り光による光源の発振特性の低下を防止した上で、適切な大きさ及び方向を有するレーザ光を放射可能としている。
【0113】
図6(A)は、本発明に係るスライダ加工バー及びスライダ22の形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートであり、図6(B)は、本発明によるユニット加工バー及び光源ユニット23の形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【0114】
最初に、スライダ加工バー及びスライダ22の製造方法を説明する。図6(A)によれば、まず、スライダ用のウエハ基板の集積面に、MR効果素子33が形成される(ステップSS1)。次いで、近接場光発生部36が形成され(ステップSS2)、その後、導波路層35が形成される(ステップSS3)。次いで、必要であれば、バッキングコイル部が形成される(ステップSS4)。次いで、データを書き込むための電磁コイル素子34が形成され(ステップSS5)、その後、被覆層38及び信号端子電極37が形成される(ステップSS6)。以上により、主に、磁気ヘッド素子32、導波路層35、近接場光発生部36及び信号端子電極37からなる磁気ヘッド素子パターンを、ウエハ基板上に形成するためのウエハ薄膜工程が終了する。
【0115】
次いで、ウエハ薄膜工程が終了したこのウエハ基板を切断して、スライダ加工バーを切り出す(ステップSS7)。その後、このスライダ加工バーにMRハイト加工を施す(ステップSS8)。次いで、ABS側のスライダ端面に保護膜を形成する(ステップSS9)。その後、ABSにレールを形成する加工を行う(ステップSS10)。以上により、スライダ加工バーの製造工程が完了する。この後、薄膜磁気ヘッド21の製造においてスライダ加工バーとユニット加工バーとを固着する場合は、この製造されたスライダ加工バーを用いる。
【0116】
これに対して、この後の薄膜磁気ヘッド21の製造にスライダ22を用いる場合は、この加工バーを切断して個々のスライダ22への分離を行う(ステップSS11)。以上により、機械加工工程が終了して、スライダ22の製造工程が完了する。
【0117】
次いで、ユニット加工バー及び光源ユニット23の製造方法を説明する。
【0118】
図6(B)によれば、まず、光源ユニット用のウエハ基板の素子形成面に、下地伝播層412が形成される(ステップSU1)。次いで、透過反射層413が形成され(ステップSU2)、その後、上部伝播層414が形成される(ステップSU3)。以上のように簡便な工程を経て、光源ユニットのウエハ薄膜工程が終了する。
【0119】
次いで、ウエハ薄膜工程が終了したこのウエハ基板を切断して、ユニット加工バーを切り出す(ステップSU4)。その後、伝播層41となる層を研削してプリズム部43を形成する(ステップSU5)。次いで、ユニット加工バーに堀込み45を形成し(ステップSU6)、形成された堀込み45にレーザダイオード40を搭載する(ステップSU7)。その後、駆動端子電極440及び441を形成する(ステップSU8)。なお、プリズム部43の形成工程(ステップSU5)と、堀込み45の形成工程(ステップSU6)との順序が逆になってもかまわない。ただし、レーザダイオード40の搭載(ステップSU7)は、プリズム部43の形成工程(ステップSU5)が終了した後であることが好ましい。
【0120】
ここで、薄膜磁気ヘッド21の製造においてスライダ加工バーとユニット加工バーとを固着する場合は、レーザダイオード40の特性検査を行い(ステップSU10′)、この検査において良品と判定されたユニット加工バーを、以後の製造工程に用いる。以上により、ユニット加工バーの製造工程が完了する。
【0121】
これに対して、この後の薄膜磁気ヘッド21の製造に光源ユニット23を用いる場合は、このユニット加工バーを切断して個々の光源ユニット23への分離を行う(ステップSU9)。その後、レーザダイオード40の特性検査を行い(ステップSU10)、この検査において、搭載されたレーザダイオードが良品と判定された光源ユニット23だけを、以後の製造工程に用いる。以上により、機械加工工程が終了して、光源ユニット23の製造工程が完了する。
【0122】
図7(A)は、本発明による、スライダ22及び光源ユニット23を固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートであり、図7(B)は、本発明による、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【0123】
最初に、スライダ22及び光源ユニット23を固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法を説明する。図7(A)によれば、まず、スライダ22のABSとは反対側の面(背面2201及びスライダ端面222)、及び光源ユニット23の接着面2300側の面(接着面2300及び端面410)の両方又はいずれか一方に、UV硬化樹脂を予め塗布する(ステップS1)。
【0124】
次いで、スライダ22のABSとは反対側の面と、光源ユニット23の接着面2300側の面とを接面させて、伝播層41の端面410から放射された光が導波路層35を伝播してABS側のスライダ端面221に達するように位置合わせを行う(ステップS2)。最後に、紫外線を照射してスライダ22及び光源ユニット23を固着することによって(ステップS3)、薄膜磁気ヘッド21の製造工程が完了する。
【0125】
次いで、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法を説明する。図7(B)によれば、まず、スライダ加工バー及びユニット加工バーの接着される面の両方又はいずれか一方に、UV硬化樹脂を予め塗布する(ステップS1′)。次いで、スライダ加工バー及びユニット加工バーの接着される面同士を接面させて、伝播層41の端面410から放射された光が導波路層35を伝播してABS側のスライダ端面221に達するように位置合わせを行う(ステップS2′)。その後、紫外線を照射して、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する(ステップS3′)。最後に、この固着した加工バーを切断分離することによって(ステップS4′)、薄膜磁気ヘッド21の製造工程が完了する。
【0126】
以下、上述したフローチャートに示された光源ユニット及び薄膜磁気ヘッドの製造方法について、図を用いて詳細に説明する。
【0127】
図8(A)〜(I)は、本発明による光源ユニット23及び薄膜磁気ヘッド21の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【0128】
図8(A)によれば、最初に、ユニット基板となる基板ウエハ上に、下地伝播層412、透過反射層413及び上部伝播層414が順次積層された積層体90を形成し、この積層体90が形成されたユニットウエハ91を、樹脂等を用いて切断分離用治具に接着して切断し、ユニット加工バー92を切り出す。次いで、図8(B)に示すように、このユニット加工バー92の積層体90のうち上部伝播層414のエッジを、砥石等の研磨手段に所定の角度で押し当てて研磨する。この際の研磨面が反射面430となる。反射面430の角度θ(図3)は、研磨の際の押し当てる所定の角度によって制御される。次いで、図8(C)に示すように、ユニット加工バー92においてユニット上面2301となる面にフォトレジストパターン93を形成した上で、イオンミリング法、又はRIE法等を用いたエッチングによって堀込み45を形成する。この際、堀込み45において、レーザ光が入射する側面が、透過反射層413の下方の層面4130となるように、フォトレジストパターン93の位置及びエッチング条件が調整される。さらに、より好ましくは、透過反射層413におけるレーザ光が入射する部分の層厚tARが、上述した式(2)を満たす値となるように調整される。
【0129】
次いで、図9(D)に示すように、堀込み45が形成されたユニット加工バー94において、堀込み45にレーザダイオード40を搭載する。その後、図9(E)に示すように、レーザダイオード40用の駆動端子電極440及び441を形成する。最後に、ユニット加工バー94を、樹脂等を用いて切断用治具に接着し、溝入れ処理を行った後、切断処理を行い、ユニット加工バー94を、図9(F)に示すような個々の光源ユニット23であるチップに分離する。以上により、光源ユニット23の製造工程が完了する。
【0130】
なお、ここで、光源ユニット23に搭載されたレーザダイオード40の特性検査を行い、この検査において、搭載されたレーザダイオード40が良品と判定された光源ユニット23だけを、以後の製造工程に用いることができる。特性検査は、例えば、検査用プローブを、駆動端子電極440及び441に接触させて実際にレーザダイオード40を駆動させ、フォトダイオード等の受光素子を用いて、伝播層41の接着面側の端面410から放射されるレーザ光を検出することによって実施することができる。
【0131】
その後、図9(G)に示すように、この分離された光源ユニット23と、既に製造されたスライダ22とが、それぞれの背面2201及び接着面2300を接面させて接着される。この際、例えば、接着面2300及び/又は背面2201にUV硬化樹脂を塗布し、次いで、両面を接面させて位置合わせを行った後、接面部に紫外線を照射して接着、固定してもよい。
【0132】
また、図9(H)に示すように、ユニット加工バー94を切断分離する前に、このユニット加工バー94と、スライダの機械加工工程で形成されるスライダ加工バー95とを位置合わせした上で、同様に接着、固定し、その後、図9(I)に示すように、個々の薄膜磁気ヘッド21に切断分離してもよい。この場合、少なくとも、スライダ22及び光源ユニット23のトラック幅方向の幅は同一になるように設定されている。以上により、薄膜磁気ヘッド21の製造工程が完了する。
【0133】
なお、ユニット加工バー94とスライダ加工バー95とを固着する前に、ユニット加工バー94に搭載されたレーザダイオード40の特性検査を行い、この検査において、搭載されたすべてのレーザダイオード40が良品と判定されたユニット加工バー94だけを、以後の製造工程に用いることができる。
【0134】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明による磁気ディスク装置及びHGAの一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明による薄膜磁気ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2に示した薄膜磁気ヘッドの要部の構成を概略的に示す、図2のA−A線断面図、及び磁気ヘッド素子及び近接場光発生部のスライダ端面における端の形状を示す平面図である。
【図4】レーザダイオードの構成、及びレーザダイオードの堀込みへの搭載方法を示す概略図である。
【図5】本発明による光源ユニットについての他の実施形態を示す、図2のA−A線断面に相当する断面図である。
【図6】本発明に係るスライダ加工バー及びスライダの形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャート、及び本発明によるユニット加工バー及び光源ユニットの形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【図7】本発明による、スライダ及び光源ユニットを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャート、及び本発明による、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【図8】本発明による光源ユニット及び薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0136】
10 磁気ディスク
11 スピンドルモータ
12 アセンブリキャリッジ装置
13 記録再生及び発光制御回路
14 駆動アーム
15 ボイスコイルモータ(VCM)
16 ピボットベアリング軸
17 ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)
20 サスペンション
200 ロードビーム
201 フレクシャ
202 ベースプレート
203 配線部材
21 薄膜磁気ヘッド
22 スライダ
220 スライダ基板
2200 浮上面(ABS)
2201 背面
2202 集積面
221、222 スライダ端面
23 光源ユニット
230 ユニット基板
2300 接着面
2301 ユニット上面
2302 素子形成面
32 磁気ヘッド素子
33 MR効果素子
330 下部シールド層
332 MR積層体
334 上部シールド層
34 電磁コイル素子
340 主磁極層
340a 端部
341 ギャップ層
342 コイル層
343 コイル絶縁層
344 補助磁極層
35 導波路層
350 集光面
351 側面
352 端面
36 近接場光発生部
360 対向金属層
361 近接場光ギャップ部
37 信号端子電極
38 被覆層
39 レーザ光
40 レーザダイオード
400 出光端
401 底面
41、60、62、64 伝播層
410、600、620、640 端面
412 下地伝播層
413、603、623、643 透過反射層
4130、4131、6030、6031、6230、6231 層面
414、604 上部伝播層
4140、6040 上面の内側
43、61、63 プリズム部
430 反射面
440、441 駆動端子電極
45 堀込み
450 底面
48 素子間シールド層
50、51 反射膜
52 AuSn合金
643a 第1の透過反射層
643b 第2の透過反射層
90 積層体
91 ユニットウエハ
92、94 ユニット加工バー
93 フォトレジストパターン
95 スライダ加工バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダの浮上面とは反対側の面に接着される接着面を有するユニット基板と、該ユニット基板の接着面とは垂直な素子形成面に設けられた透過反射層と該透過反射層上に設けられた熱アシスト磁気記録用の光の光路を含む上部伝播層とを備えた伝播層と、該ユニット基板の該接着面とは反対側の面に形成されている堀込みと、該堀込みに設けられており該光を放射する光源と、該上部伝播層に設けられており該光を該伝播層の接着面側の端面に向けさせるための光路変更部とを備えており、
前記透過反射層が、前記伝播層の接着面側の端面又は該端面の近傍に至るまで伸長していて、該透過反射層の上方の層面が、前記光路変更部によって光路が変更されて前記上部伝播層を伝播する光に対して全反射面となっており、さらに、前記堀込みにおいて前記光源からの光が入射する側面が、該透過反射層の下方の層面となっていることを特徴とする熱アシスト磁気記録用の光源ユニット。
【請求項2】
前記透過反射層が、前記上部伝播層の構成材料の屈折率よりも低くて、装置内の雰囲気の屈折率よりも高い屈折率を有する材料から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記透過反射層が、非晶性のフッ素樹脂から構成されてことを特徴とする請求項2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記透過反射層における前記光源からの光が入射する部分の層厚tARが、該光源からの光の波長をλとし、該透過反射層の屈折率をnARとして、tAR=(1/4)×(λ/nAR)の条件を満たすことを特徴とする請求項2又は3に記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記透過反射層の上方の層面が、該素子形成面と平行であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記伝播層が、前記素子形成面上に下地伝播層と前記透過反射層と前記上部伝播層とが順次積層された構造を有しており、前記堀込みが、前記ユニット基板及び該下地伝播層の前記接着面とは反対側の面に形成されていて該ユニット基板及び該下地伝播層の両方に及んでおり、前記光路変更部が、該上部伝播層に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記光源が、前記透過反射層の下方の層面に出光端を向けたレーザダイオードであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項8】
前記ユニット基板が導電性を有しており、前記レーザダイオードの底面をなす電極が、該ユニット基板に電気的に接続されていることを特徴とする請求項7に記載の光源ユニット。
【請求項9】
前記光路変更部が、前記ユニット基板の素子形成面に対して斜めに形成された、前記伝播層の層面を反射面としたプリズム部であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項10】
切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、請求項1から9のいずれか1項に記載の光源ユニットとなることを特徴とするユニット加工バー。
【請求項11】
前記浮上面及び該浮上面に垂直な集積面を有するスライダ基板と、該集積面に形成された磁気ヘッド素子と、前記光を該浮上面とは反対側の自身の端面から受け入れて該浮上面側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、該磁気ヘッド素子及び該導波路層を覆うように該集積面上に形成された被覆層とを備えたスライダと、
前記スライダの浮上面とは反対側の面に前記接着面を接面させており、前記伝播層の接着面側の端面から放射された光が、前記導波路層を伝播して前記浮上面側のスライダ端面に達するように位置を合わせて固定されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の光源ユニットと
を備えていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【請求項12】
前記スライダが、前記導波路層の浮上面側の端面に接した位置又は該端面に近接した位置に設けられており、近接場光を発生させてデータ信号の書き込みの際に磁気記録媒体を加熱するための、浮上面側のスライダ端面に達した端を有する近接場光発生部をさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の薄膜磁気ヘッドと、該薄膜磁気ヘッドを支持する支持機構と、前記磁気ヘッド素子のための信号線と、前記光源用の電力供給線とを備えていることを特徴とするヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項14】
請求項13に記載のヘッドジンバルアセンブリを少なくとも1つ備えており、少なくとも1つの磁気記録媒体と、該少なくとも1つの磁気記録媒体に対して前記薄膜磁気ヘッドが行う書き込み及び読み出し動作を制御するとともに、前記光源の発光動作を制御するための記録再生及び発光制御回路とをさらに備えていることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項15】
ユニット基板ウエハの素子形成面に透過反射層を形成し、次いで、該透過反射層上に上部伝播層を形成した後、該ユニット基板ウエハからユニット加工バーを切り出し、その後、該ユニット加工バーの該上部伝播層の一部を研削して該素子形成面に対して傾斜した反射面を有するプリズム部を形成し、該プリズム部の形成の後又は前に、該ユニット加工バーにおいてスライダと接着される接着面となるバー接着面とは反対側の面に、光が入射する側面が該透過反射層の下方の層面となっている堀込みを形成し、その後、該堀込みに光源を搭載し、その後、該ユニット加工バーを切断分離することによって、熱アシスト磁気記録用の光源ユニットを形成し、
浮上面及び該浮上面に垂直な集積面を有するスライダ基板と、該集積面に形成された磁気ヘッド素子と、前記光を該浮上面とは反対側の自身の端面から受け入れて該浮上面側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、該磁気ヘッド素子及び該導波路層を覆うように該集積面上に形成された被覆層とを備えたスライダを形成し、
形成された前記光源ユニットの接着面と、形成された前記スライダの浮上面とは反対側の面とを接面させ、次いで、前記伝播層の接着面側の端面から放射された光が前記導波路層を伝播して前記浮上面側のスライダ端面に達するように該光源ユニットと該スライダとの位置合わせをした上で、該光源ユニットと該スライダとを固着することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項16】
ユニット基板ウエハの素子形成面に透過反射層を形成し、次いで、該透過反射層上に上部伝播層を形成した後、該ユニット基板ウエハからユニット加工バーを切り出し、その後、該ユニット加工バーの該上部伝播層の一部を研削して該素子形成面に対して傾斜した反射面を有するプリズム部を形成し、該プリズム部の形成の後又は前に、該ユニット加工バーにおいてスライダと接着される接着面となるバー接着面とは反対側の面に、光が入射する側面が該透過反射層の下方の層面となっている堀込みを形成し、その後、該堀込みに光源を搭載することによって、ユニット加工バーの形成を終了させ、
切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、浮上面及び該浮上面に垂直な集積面を有するスライダ基板と、該集積面に形成された磁気ヘッド素子と、前記光を該浮上面とは反対側の自身の端面から受け入れて該浮上面側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、該磁気ヘッド素子及び該導波路層を覆う被覆層とを備えた熱アシスト磁気記録用のスライダとなるスライダ加工バーを形成し、
形成が終了した前記ユニット加工バーのバー接着面と、形成された前記スライダ加工バーの浮上面となる面とは反対側の面とを接面させ、次いで、前記伝播層の接着面側の端面から放射された光が前記導波路層を伝播して前記浮上面側のスライダ端面に達するように、該ユニット加工バーと該スライダ加工バーとを位置合わせした上で、該ユニット加工バーと該スライダ加工バーとを固着し、その後、固着された該ユニット加工バー及び該スライダ加工バーを切断分離することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記透過反射層を、前記上部伝播層の構成材料の屈折率よりも低くて、装置内の雰囲気の屈折率よりも高い屈折率を有する材料を用いて形成することを特徴とする請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記透過反射層における前記光源からの光が入射する部分の層厚tARが、前記光源からの光の波長をλとし、該透過反射層の屈折率をnARとして、tAR=(1/4)×(λ/nAR)の条件を満たすように、前記バー接着面とは反対側の面をエッチングすることによって前記堀込みを形成することを特徴とする請求項17に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−16096(P2008−16096A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184580(P2006−184580)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】