説明

熱プレス方法およびその装置

【課題】消費電力を大幅に削減できる熱プレス方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】相対する固定熱盤11と可動熱盤12と可動熱盤を移動させる油圧シリンダ1と油圧シリンダ1を移動させる油圧ポンプ4と吐出圧力を検出する圧力センサ3と、圧力センサ3からの圧力信号7をエア圧力に変換する電空レギュレータ8と、エアブースター5とを具備しており、圧力センサ3からの圧力信号7が電空レギュレータ8に送られ、モータ6のON−OFFとエアブースターの圧力を制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種部材の加工や組立などに用いる熱プレス方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加工や組立などにおける熱プレス工程は、油圧ポンプを用いて、油圧シリンダの上昇〜加圧〜保圧〜下降までの一連の動作を繰り返し行うものであり、従来における熱プレス方法およびその装置の構成例を図3に示す。
【0003】
すなわち、図3に示すように、まずモータ6と油圧ポンプ4によってオイルタンク9より油13を油圧シリンダ1に供給し、油圧シリンダ1を上昇させる。次に油圧ポンプ4の吐出圧力が設定圧力になるまで加圧を続ける。その時の、油圧ポンプ4の吐出圧力は、圧力センサ3により検出している。
【0004】
その後、ある一定の時間をおいて、所定の保圧時間を経過して、熱プレス動作が完了した後、制御弁2を切替えて油圧シリンダ1を下降させる。この一連のサイクルを繰り返す。ここで、1サイクル当たりの保圧時間は、使用する部材、構成あるいは製品などにより異なるが、長いもので約3〜4時間である。
【0005】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平5−269777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の熱プレス方法では次の課題がある。即ち、上記従来の熱プレス工程においては、モータ6と油圧ポンプ4を用いて、油圧シリンダ1を上昇〜加圧〜保圧〜下降の一連のサイクルとして繰り返しているが、保圧時間帯においては、油13を少量のみ供給すれば良いのであるが、上記保圧時間帯中もモータ6は回転数一定で回り続けており、余剰の油13は電磁比例リリーフ弁31よりオイルタンク9に戻されるのである。
【0007】
すなわち、図4に示すように、油圧シリンダ1が上昇〜加圧の過程においては消費電力は上昇することになるのである。
【0008】
次に保圧時間帯に入るが、モータ6は一定回転しているため、その時も消費電力はほぼ一定のままである。また、保圧後、下降して待機時間帯に入っても、モータ6は上記記載と同様に一定回転であり停止していないため、ある一定の電力量を消費しており、省エネルギー性という点から非常に効率が悪いという課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、消費電力を少なくした熱プレス方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、特に、油圧ポンプからの吐出圧をモニタリングし、前記吐出圧の負荷状態に応じて、油圧ポンプ用モータのON−OFFとエアブースターの圧力制御をするという構成を有しており、特に、加圧動作完了後の保圧時間帯に、油圧ポンプモータの回転数を停止させるという構成を有しており、これにより、モータ回転数が零となって停止し、それによる、消費電力を大幅に削減できるという作用効果を有する。
【0012】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、被プレス体に相対する固定熱盤と可動熱盤と、可動熱盤を移動させる油圧シリンダと、油圧シリンダを駆動させる油圧ポンプと、油圧ポンプからの吐出圧力を検出する圧力センサと、圧力センサよりの信号をエア圧力に変換する電空レギュレータと、エアブースターとを備えた構成を有しており、これにより、保圧時間帯の追従性が良くなり、プレス圧力の変動が少ない熱プレスができるという作用効果を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱プレス方法およびその装置は、油圧ポンプにおける吐出圧力をモニタリングし、エアブースターにより、保圧時、油圧ポンプ用モータの回転数を零にして停止させる構成であり、消費電力を大幅に削減できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、プリント配線板の加工を例とする、実施の形態を用いて、本発明の特に請求項1〜2に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態におけるプリント配線板の熱プレス装置の要部構成図、図2は同装置における消費電力の説明図である。
【0016】
図1において、プリント配線板10は油圧シリンダ1を介して、相対する固定熱盤11と可動熱盤12によりプリント配線板10の加工のため熱プレスがなされるのであり、また、プリント配線板10の間には金属板14が挿入されており、加圧用の油圧ポンプ4と油圧ポンプ4の回転用のモータ6と電空レギュレータ8とエアブースター5を具備しており、圧力センサ3による圧力信号7が電空レギュレータ8に送られ、モータ6のON−OFFと切替弁15を制御している。
【0017】
油圧シリンダ1における上昇〜加圧時の場合は、モータ6を回転させる事により大流量の油13を吐出するのである。
【0018】
次に、加圧が終了し、油圧シリンダ1が保圧状態の場合には、少量の油13のみ必要となるため、モータ6を停止させ、エアブースター5に切替えるのである。
【0019】
これらエアブースター5をプリント配線板の熱プレス装置に用いる事により、消費電力の大幅削減が図れるのである。
【0020】
次に一連の動作について説明する。油圧シリンダ1は、上昇〜加圧〜保圧〜下降の一連のサイクルを繰り返している。最初、上昇〜加圧時までは、モータ6を回転させることにより大流量の油13を油圧シリンダ1に吐出し、指定圧力に対して遅れることなく追従し設定圧力まで達する。
【0021】
その後加圧動作に入り、しばらくして保圧状態になる。この時上記記載のようにモータ6を停止させる。これと並行して、電空レギュレータ8によりエアブースター5に所定エアを供給し、油圧に変換し、漏れ量などの少量の油を供給する。その後油圧シリンダ1は下降して待機時間に入る。この一連のサイクルを繰り返す。
【0022】
上記動作における消費電力について、図2を用いて説明する。図2に示すごとく、油圧シリンダ1が上昇〜加圧の過程においては、モータ6を回転させることにより大流量の油13を吐出しているので、消費電力Pは上昇する。
【0023】
次に加圧動作後保圧時間帯に入る。この状態の時は、シリンダ移動の時に必要な大量の油13は必要なく、圧力を保持できる少量の油13、すなわちエアブースターによる少量の油の供給でよく、モータ6を停止することができ、消費電力Pを零に抑制することができる。
【0024】
また、待機時間帯においても、モータ6を停止させることができ、前記と同様に、消費電力Pを零に抑制することができる。
【0025】
本実施形態では、保圧時間が3〜4時間の場合、従来方式より90%以上の電力削減が、また、上昇〜加圧〜保圧〜下降の一連のサイクルでも従来方式より85%以上の電力を削減することが可能である。
【0026】
さらに、油13の使用量が少なくてすむことより、油13の劣化が遅くなり、結果として、油13の交換を延長できる。
【0027】
なおまた、本発明は、プリント配線板のみでなく、例えば印刷物の転写プレスなど、各種部材のプレス工程で保圧状態を必要とするものであれば、使用することが可能であり同様な効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明にかかる熱プレス方法およびその装置は、油圧ポンプの吐出圧力をモニタリングすることにより油圧ポンプモータのON−OFFとエアブースターの圧力制御をする構成であり、消費電力を大幅に削減できるという効果を有し、各種部材の加工や組立などに用いる熱プレス方法およびその装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態における熱プレス装置の要部構成図
【図2】同装置における消費電力の説明図
【図3】従来の熱プレス装置の要部構成図
【図4】同装置における消費電力の説明図
【符号の説明】
【0030】
1 油圧シリンダ
2 制御弁
3 圧力センサ
4 油圧ポンプ
5 エアブースター
6 モータ
7 圧力信号
8 電空レギュレータ
9 オイルタンク
10 プリント配線板
11 固定熱盤
12 可動熱盤
13 油
14 金属板
15 切替弁
31 電磁比例リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する固定熱盤と可動熱盤を備え、いずれか一方、あるいは両方が移動する事により、被プレス体を加熱・加圧する熱プレス方法であって、前記可動熱盤は油圧ポンプにより油を供給した油圧シリンダにより移動し、油圧ポンプからの吐出圧は圧力センサにより検出されており、前記圧力センサからの吐出圧をモニタリングし、前記吐出圧の負荷状態に応じて、油圧ポンプ用モータのON−OFFとエアブースターの圧力を制御し、加圧動作完了後の保圧時間帯においては、油圧ポンプ用モータを停止させる事を特徴とする熱プレス方法。
【請求項2】
被プレス体に相対する固定熱盤と可動熱盤と、可動熱盤を移動させる油圧シリンダと、油圧シリンダを駆動させる油圧ポンプと、油圧ポンプからの吐出圧力を検出する圧力センサと、圧力センサよりの圧力信号をエア圧力に変換する電空レギュレータと、エアブースターとを備えた熱プレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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