説明

熱交換システム及びその制御方法

【課題】 液体を熱媒とする熱交換システムに関し、異常判定の精度を高める。
【解決手段】 熱交換器(24)で液体(水W)を加熱し、その液体を放熱負荷に循環させて放熱させる熱交換システムであって、液体を循環させる流路(循環路12、14、16)に接続されて液体を溜めるタンク(開放タンク18)と、このタンク内の液体の液位を検出する液位検出手段(水位センサ42)と、流路を通して熱交換器及び放熱負荷に液体を循環させるポンプ(循環ポンプ20)と、流路又はタンクに液体を補給する補給手段(補給弁38)と、液位検出手段の検出液位に応じて補給手段に液体を補給させることにより、タンク内の液位を所定範囲内に維持するとともに、検出液位が異常液位に到達した場合、ポンプを駆動して流路に液体を循環させた後の検出液位が異常液位である場合に異常を表す出力を発生する制御手段(制御部10)とを備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水等の液体を熱媒に用いた熱交換システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バーナ等の燃焼熱を熱源に用いて加熱された温水等を熱媒に用いた熱交換システムは、熱媒を暖房端末に循環させることにより、床暖房や室内暖房等を行う暖房システムとして利用されている。斯かるシステムでは、熱媒を循環させる熱媒回路に開放タンクを設けて大気に開放することにより、熱媒の熱膨張を吸収させている。自然蒸発等により熱媒が減少した場合には、熱媒の補給を行い、熱媒回路に空気の混入を防止する必要がある。
【0003】
このような熱交換システムにおいて、液漏れ等の熱媒の異常を知ることは安定した熱交換を維持する上で極めて重要である。
【0004】
このような熱交換システムに関し、次のような先行特許文献がある。
【特許文献1】特開2003−114056号公報 この特許文献1には、循環路内に設置されたタンクの水位により熱交換部の液漏れ異常を判定することが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、タンクの水位により熱交換部の液漏れを判定しており、熱交換部以外を原因とする水位変化を考慮していないため、誤判定の危険性が高く、正確性に欠けるものである。
【0006】
そこで、本発明は、異常判定の精度を高めた熱交換システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
斯かる目的を詳細に記載すると、液位のレベル異常により異常と判定するに際し、正常時に発生するレベル異常の原因を除去することにより、判定精度を高めたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の熱交換システムは、熱交換器で液体を加熱し、その液体を放熱負荷に循環させて放熱させる熱交換システムであって、前記液体を循環させる循環路に接続されて前記液体を溜めるタンクと、このタンク内の液体の液位を検出する液位検出手段と、前記循環路を通して前記熱交換器及び前記放熱負荷に前記液体を循環させるポンプと、前記循環路又は前記タンクに前記液体を補給する補給手段と、前記液位検出手段の検出液位に応じて前記補給手段に前記液体を補給させることにより、前記タンク内の液位を所定範囲内に維持するとともに、前記検出液位が異常液位に到達した場合、前記ポンプを駆動して前記循環路に前記液体を循環させた後の検出液位が異常液位である場合に異常を表す出力を発生する制御手段とを備えた構成である。
【0009】
斯かる構成とすれば、タンクの液位変化に応じて液体の補給制御が行われ、熱交換に必要な最適な液位が維持されるが、異常液位を検出した場合には、ポンプを駆動して液体の強制循環を行う。これにより、異常液位が流路内の空気侵入、液崩れ、熱膨張等による一過性の原因が除かれることになる。そして、強制循環後の検出液位が異常液位である場合には、異常であると判定し、その出力を発生させている。従って、検出液位が異常液位となった場合に、それが一過性のものか異常に基づくものかを峻別でき、異常の判定精度が高められる。
【0010】
上記目的を達成するためには、前記液体の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出温度が所定温度以下である場合に異常判定動作に移行する構成としてもよい。斯かる構成とすれば、温度上昇に伴う液体の熱膨張の影響を回避でき、所定温度以上での異常判定動作はエアパージを伴い意図しない暖房運転を行うことになるため、所定温度以下で行うとエアパージによる不快感をユーザに与えることがない。
【0011】
上記目的を達成するためには、前記制御手段の前記出力により、動作異常を表示する表示部を備えた構成としてもよい。即ち、表示部の動作異常の表示をメンテナンス情報として利用することができる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の熱交換システムの制御方法は、熱交換器で液体を加熱し、その液体を放熱負荷に循環させて放熱させる熱交換システムの制御方法であって、前記熱交換器及び前記放熱負荷に循環させる前記液体を溜める処理と、このタンク内の液体の液位を検出する処理と、前記流路を通して前記熱交換器及び前記放熱負荷に前記液体を強制的に循環させる処理と、前記流路又は前記タンクに前記液体を補給する処理と、液位検出手段の検出液位に応じて補給手段に前記液体を補給させることにより、前記タンク内の液位を所定範囲内に維持するとともに、前記検出液位が異常液位に到達した場合、前記流路に前記液体を強制的に循環させた後の検出液位が異常液位である場合に異常と判定する処理とを含む構成である。
【0013】
上記目的を達成するためには、前記異常と判定する処理において、前記タンク内の液位が異常液位の発生頻度を参照する処理を含む構成としてもよい。斯かる構成とすれば、水撃作用や熱膨張等の一過性の液位上昇による異常判定を回避でき、判定誤差の排除が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次の効果が得られる。
【0015】
(1) 検出液位が異常液位を生じても、一過性の原因に基づくものを除くことができ、異常の判定精度を高めることができ、信頼性の高い熱交換システムを実現することができる。
【0016】
(2) 液位のレベル異常により異常と判定するに際し、正常時に発生するレベル異常の原因を除去するので、判定精度を高めることができる。
【0017】
(3) 液体の検出温度が所定温度以下の場合に異常判定動作を行う構成とすれば、流路内のエアパージによる不快感をユーザに与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】

本発明の実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の熱交換システム及びその制御方法の一例として暖房装置の概要を示している。
【0019】
この暖房装置2は、熱源部4、放熱負荷としての暖房端末6、8、温水加熱制御、補水液又はシステムの異常判定制御等を行う制御手段として制御部10(図2)を備えており、図1は熱源部4及び暖房端末6、8を示している。熱源部4は熱交換器等で構成され、暖房端末6は高温暖房端末として例えば、ファンコンベクタ、暖房端末8は低温暖房端末として例えば、床暖房端末で構成される。
【0020】
熱源部4には熱媒を構成する液体として水Wを循環させる複数の循環路12、14、16が設けられている。各循環路12、14、16は銅パイプや樹脂管等で構成される。そして、循環路12には開放タンク18、循環ポンプ20、温度センサ22、熱交換器24、三路分岐部26等が設置されている。循環路12は開放タンク18の水Wを熱交換器24等に循環させる回路、循環路14は高温の水Wを暖房端末6に循環させる回路、循環路16は高温の水Wを暖房端末8に循環させる回路である。開放タンク18は水Wを溜めるとともに外気に開放するタンクであり、循環ポンプ20はその水Wを循環路12、14、16に強制循環させるための手段である。温度センサ22は循環する水Wの温度を検出する。熱交換器24は、熱源として例えば、バーナ25の燃焼ガス等の燃焼熱と水Wとの間で熱交換に用いられる。バーナ25には図示しない開閉弁及び比例弁を介して燃料ガスがガス供給管より供給される。熱交換器24の熱源としては、燃焼熱の他に電熱及びその他の排熱を熱源に用いてもよい。また、熱交換器24は、燃焼熱、電熱及びその他の排熱を以て加熱された液体と水Wとの間で熱交換を行う液−液熱交換器で構成してもよい。
【0021】
そして、循環路12の開放タンク18と三路分岐部26との間に形成された管路をバイパスとし、循環路14、16が形成されている。循環路14は三路分岐部26で分岐された暖房回路を構成しており、暖房端末6が設置されている。この暖房端末6には暖房端末6側で開閉される熱動弁28が設置されている。循環路16は循環路12に低温調節弁30により分岐された暖房回路を構成しており、暖房端末8及び熱動弁32が設置されている。低温調節弁30と循環路14との間には循環路14側を循環して高温化された水Wを循環路16側に混入させるための分岐回路34が形成されている。
【0022】
また、開放タンク18には水Wの補給のために補給管36が接続され、水Wの補給には例えば、上水が用いられる。補給管36には、上水の供給時に開かれる補給弁38が取り付けられている。また、開放タンク18にはオーバーフローレベルに到達した水Wを排出させるため、オーバーフローパイプ40が設けられている。
【0023】
そして、開放タンク18には液位を検出する液位検出手段として水位センサ42が設置されており、この水位センサ42には低液位、高液位、異常液位等を電気的に検出するため、共通電極C44及び電極L46、電極H48、電極UL50が設置されている。共通電極C44と電極L46が没する範囲を低水位、共通電極C44と電極H48が没する範囲を高水位、共通電極C44と電極UL50が没する範囲を異常水位とする。
【0024】
次に、制御部10について、図2を参照して説明する。図2は、制御部10の一例を示している。
【0025】
制御部42は、例えば、コンピュータで構成され、プロセッサ52、インターフェイス(I/F)及びアナログ・ディジタル(A/D)変換部54、I/F56、ROM58、RAM60、クロック部62、駆動部64、出力部66、送受信部68、70等を備えており、温度センサ22、水位センサ42等の検出信号や入力信号を受け、各種の制御出力や駆動出力を発生する。
【0026】
プロセッサ52は、CPUからなる演算制御手段であるが、エアパージインターバルタイマ、エアパージタイマ等の計時手段を構成する。計時手段としては、プログラムタイマを用いてもよく、ハードウェアで構成してもよい。
【0027】
I/F及びA/D変換部54は、温度センサ22とプロセッサ52とのインターフェイスであるととともに、温度センサ22の検出温度をディジタル信号に変換する。
【0028】
I/F56は、水位センサ42とプロセッサ52とのインターフェイスであり、水位センサ42の検出水位であるスイッチング信号をプロセッサ52に入力する。
【0029】
ROM58には、給湯制御プログラム、液位制御プログラム、異常判定制御プログラム等の制御プログラムや固定データが格納されている。RAM60には、演算途上のデータ等が一時的に格納される。クロック部62はクロック信号を発生し、このクロック信号が、システムの駆動や各種タイマ、エアパージインターバルタイマ、エアパージタイマ等の計時に用いられる。
【0030】
駆動部64には各種の駆動出力が得られ、この駆動出力により、熱動弁32、低温調節弁30、補給弁38等の開閉や、循環ポンプ20の駆動、その停止が行われる。
【0031】
そして、プロセッサ52に得られる情報提示出力は出力部66から情報提示部67に出力され、制御途上の情報提示や異常告知が行われる。この情報提示部67は、LCD表示器等で構成される。
【0032】
また、制御部10には外部制御手段として例えば、リモコン装置72が接続され、このリモコン装置72は送受信部68を介してプロセッサ52と情報の授受が行われる。リモコン装置72から運転開始又はその停止を表す信号等が入力される。また、図示しないが、リモコン装置72には情報提示部が設けられ、情報提示部67と同様の動作情報や異常情報等の情報提示が行われる。
【0033】
また、送受信部70には暖房端末6の送受信部74が接続され、この送受信部74には制御部76を介して熱動弁28が接続されている。制御部10から熱動弁28の開閉が行われる。
【0034】
このように構成すれば、開放タンク18に供給された熱媒としての水Wは循環ポンプ20の駆動により循環路12に流れ、熱交換器24、暖房端末6、8に循環する。矢印Aは水Wの循環方向を示している。熱交換器24に循環する水Wは、バーナ25の燃焼熱を受けて加熱される。
【0035】
このような熱交換動作において、補水動作を説明すると、開放タンク18には水Wが補給管36を通して供給される。循環ポンプ20を駆動すると、その水Wが開放タンク18から循環路12等に循環し、熱交換器24、暖房端末6、8等に流れる。水Wは、熱交換器24で熱交換により加熱されて膨張するが、その膨張や循環路12等の内圧上昇が開放タンク18の大気開放により吸収されるとともに、過剰分はオーバーフローパイプ40から外部に排出される。
【0036】
低温調節弁30の開閉制御により、熱交換器24で加熱されて循環路14を経た高温の水Wが流れる分岐回路34側の流量と、開放タンク18からの水Wの流量とを混合し、暖房端末8側の放熱温度を加減することができる。
【0037】
暖房端末6は、熱動弁28を内蔵する高温負荷端末として、例えば、ファンコンベクタであり、熱交換器24で加熱された高温の水Wが循環する。熱動弁28は、暖房端末6で制御され、高温の水Wの通水/通水遮断を切り換える。
【0038】
暖房端末8は、低温負荷端末として、例えば、床暖房端末であり、熱交換器24で加熱された高温の水Wと開放タンク18からの水Wとが混合された低温の水Wが循環する。熱動弁32は、暖房端末8とは独立して設置され、制御部10により制御され、低温の水Wの通水/通水遮断を切り換える。
【0039】
開放タンク18内の水位は水位センサ42で検出され、電極L46から低水位、電極H48から高水位、電極UL50から異常水位を表すスイッチング信号が検出信号として取り出され、これら検出信号が制御部10に加えられる。そして、低水位の場合には補給弁38が開かれ、水Wが補給され、その補給は高水位まで行われる。
【0040】
バーナ25による熱交換器24の加熱や暖房端末6、8による放熱等の使用の結果、水分蒸発が生じ、電極L46の検出レベルから低水位未満の検出信号が検出されたとき、補給弁32を開いて補水動作を実行し、電極H48が高水位を検出するまで補水を行う。
【0041】
液位が上昇し、電極UL50が上限レベルである異常水位を検出したとき、異常発生の可能性がある。液位上昇の原因には、補給弁38の液漏れ等の他に、水崩れや熱による熱媒の体積膨張によるものもあるが、これらは異常ではない。
【0042】
水崩れは、配管を通して配管内に空気が浸透することにより循環路12、14、16内へ空気が混入する現象であり、循環路12、14、16を形成する配管が例えば、樹脂の場合、水密性は備えているが、気密性が低いことにより生じる。循環路12、14、16内において、特に暖房端末6、8にて長時間未使用の状態のときに配管内に空気が進入することにより、開放タンク18内の液位を上昇させ、異常水位を検出させることがある。水崩れが原因の液位上昇を解消するためにエアパージが行われる。
【0043】
また、暖房装置2を作動させると熱媒が熱せられ、熱媒の体積が膨張する。この熱媒の体積膨張も開放タンク18内の液位を上昇させ、異常水位を検出させることがある。熱媒の体積膨張が原因の液位上昇を解消するために、暖房装置2作動時の熱媒の最高温度から熱媒の温度が所定温度低下した後に、再度液位の検出が行われる。
【0044】
次に、水崩れ検知制御について、図3を参照して説明する。図3は、熱交換システムの制御方法の一例である水崩れ検知制御を表すフローチャートである。
【0045】
エアパージインターバルタイマを所定時間に設定することにより、水崩れ検知は、所定時間毎に行う。例えば、10日(240時間)に1回行い(ステップS1)、電源投入時や停電復帰時にも初期検知として水崩れ検知を行う。暖房装置を安全に運転するためには初期検知を行う必要があるため電源投入時や停電復帰時には、240時間経過したものとみなしている。水崩れ検知には、エアパージ処理を伴い、エアパージ時には騒音が発生するため、斯かる時間間隔を設定し、頻繁に騒音が発生することを回避している。
【0046】
水崩れ検知に入ると、開放タンク18の出側における水Wの温度が温度センサ22で検出され、その検出温度が40℃未満か否かを判定する(ステップS2)。エアパージ中、暖房端末6、8に水Wが流れるので、水Wの温度が40℃以上の場合、暖房端末6、8が暖まり、使用者に不快感を与えるため、水崩れ検知を行わない。
【0047】
水Wの温度が40℃未満の場合、全動作が終了しているか否かを判定する(ステップS3)。暖房装置において暖房運転等何か他の動作があるときには、エアパージを行わない。
【0048】
電極UL50が異常水位を検出(UL=on)しているか否かを判定する(ステップS4)。検出には10秒間の遅延間隔を置き、一時的に異常水位を検出することによる誤判定を排除する。10秒間の遅延間隔を以て異常水位を検出していなければ異常はない。
【0049】
ステップS4で電極UL50が異常水位を検出していれば、循環路12、14、16のエアパージを行う(ステップS5)。
【0050】
エアパージが終了したらエアパージインターバルタイマを初期化する(ステップS6)。
【0051】
電極UL50が異常水位を検出(UL=on)しているか否かを判定し(ステップS7)、そのレベルを検出していなければ、異常なしとしてステップS1に戻る。この場合は、開放タンク18内の液位の上昇は水崩れによるものと推定する。異常水位を検出している場合には異常表示を行う(ステップS8)。
【0052】
次に、エアパージ動作について、図4を参照して説明する。図4は、熱交換システムの制御方法の一例であるエアパージ動作を表すフローチャートである。
【0053】
接続している暖房端末が水落ちしていないかを区別した上でエアパージを開始する。本実施形態においては、接続している暖房端末のみのエアパージを行う。即ち、高温負荷端末である暖房端末6、低温負荷端末である暖房端末8のエアパージを行うものとする。エアパージを行うために暖房端末8への通水を制御する熱動弁32を作動させ開く。暖房端末6に内蔵された熱動弁28は、制御部10で直接作動させて開にすることはできないので、暖房端末6に熱動弁開始信号、例えば凍結防止動作信号を送信して作動させ、熱動弁28を開く。エアパージは燃焼無しの凍結防止動作とみなすことができる。低温調節弁30は揚程を稼ぐことができる位置とする(ステップS10)。
【0054】
回転数を所定の回転数例えば、4800rpmで固定して循環ポンプ20を駆動し、エアパージを開始する(ステップS11)。ポンプ動作は連続駆動でもよいし、ON/OFF駆動させてもよい。
【0055】
エアパージ中に他の動作があるか否かを判定する(ステップS12)。
【0056】
他の動作があれば、エアパージを終了して(ステップS16)、エアパージインターバルタイマを初期化し(ステップS17)、ステップS1に戻り、次の水崩れ検知は所定時間後即ち、240時間後に行う。
【0057】
ステップS12でエアパージ中に他の動作がなければ、エアパージタイマによりエアパージ時間を計時する(ステップS13)。例えばエアパージ時間を8分とし、8分経過するまではステップS10〜S13を繰り返し、エアパージを継続する。エアパージタイマが8分を計時すると、循環ポンプ20を停止する(ステップS14)。
【0058】
熱動弁32の作動を終了させ、熱動弁32を閉じる。暖房端末6に熱動弁終了信号、例えば凍結防止動作終了信号を送信し、暖房端末6の熱動弁28を閉じ、エアパージを終了し(ステップS15)、ステップS6に移行する。
【0059】
次に、異常判定制御について、図5を参照して説明する。図5は、熱交換システムの制御方法の一例である異常判定制御を表すフローチャートである。
【0060】
ステップS21では、電極UL50が異常水位を検出(UL=on)しているか否かを判定する。検出していなければ、異常はない。検出していれば、異常の可能性があるためステップS22以降の処理を行う。なお、頻繁にエアパージを行わないように、例えばエアパージインターバルタイマを240時間に設定し、240時間毎に検知を行うようにしてもよい。
【0061】
ステップS22では、全動作が終了しているか否かを判定する。全動作が終了していなければ、ステップS21へ戻る。全動作が終了していれば、ステップS23に移行し、開放タンク18の出側流路における水Wの温度即ち、温度センサ22の検出温度が、所定温度例えば、40℃未満であるか否かを判定する。検出温度が40℃未満であれば、異常判定動作に移行するため、ステップS24に移行してエアパージを行う。本実施形態においては、検出温度が40℃未満の場合としているように、熱媒の温度が低下しているときにエアパージを行う理由は、エアパージ中作動する暖房端末等が使用者に不快感を与えないようにするためである。
【0062】
ステップS24では、循環路12、14、16内に混入した空気を除去するためのエアパージを開始する。接続されている暖房端末6、8にそれぞれ対応する熱動弁28、32や低温調節弁30を開き、熱媒が流れるようにする。
【0063】
ステップS25では、循環ポンプ20を駆動する。ポンプ動作は連続駆動でもよいし、ON/OFF駆動させてもよい。このとき、バーナ25の燃焼は行わない。ステップS26では、エアパージ時間を計測するエアパージタイマを起動する。
【0064】
ステップS27では、エアパージ中に他の動作があるか否かを判定する。エアパージ中にエアパージ以外の動作が開始されると、ステップS34へ移行し、循環ポンプ20の駆動を停止し、熱動弁28、32及び低温調節弁30を閉じ、エアパージ動作を中止する。
【0065】
ステップS28では、エアパージタイマが所定時間例えば、8分間経過したか否かを確認する。8分間経過していない場合には、ステップS27に戻る。8分間経過した場合には、ステップS29に移行する。
【0066】
ステップS29では、循環ポンプ20の駆動を停止する。ステップS30では、熱動弁28、32及び低温調節弁30を閉じ、エアパージ動作を終了する。
【0067】
ステップS31では、電極UL50が異常水位を検出(UL=on)しているか否かを判定する。この時点で検出していなければ、開放タンク18内の液位上昇は循環路12、14、16内への空気の混入と考えられるため異常とせず、ステップS21に戻る。電極UL50が異常水位を検出していれば、補給弁38の液漏れ故障の可能性が高く、ステップS32に移行する。
【0068】
ステップS32では、異常表示として異常の発生を情報提示部67に表示したり、警告音を発して使用者に告知を行う。例えば、補給弁38の故障である旨の表示を行う。
【0069】
ステップS33では、異常処理として異常発生に伴う処理例えば、機器停止や復旧作業を行い、ステップS21に戻る。
【0070】
補給弁38に微少な漏れが発生し、暖房運転のON/OFFが頻繁な場合には、液漏れの異常判定ができないおそれがある。そこで、異常水位検出の発生頻度に基づいて異常判定を行ってもよい。通常状態であれば、熱媒である水Wの自然蒸発により開放タンク18の液位が徐々に低下する。よって、補水なしに異常水位を検出した場合、その検出信号が一定の回数Nだけ繰り返し得られたとき、液漏れと判断し、情報提示部67の異常表示を行ってもよい。
【0071】
なお、上記実施形態では、エアパージ方法として、各端末毎及び全系統同時に行う場合を例示したが、それらの組み合わせでエアパージを行ってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、熱媒として水を用いた場合を例示したが、水に代えて水以外の不凍液等の液体を用いてもよく、その液体の液位の変化により正常か異常かを判断すればよく、本発明は、水を熱媒に用いることに限定されるものではない。
【0073】
また、上記実施形態では、一つの暖房管路に単一の暖房端末(暖房端末6又は8)を構成しているが、一つの暖房管路にヘッダを設置するとともに、複数の暖房端末に対応する複数の熱動弁を設置し、各熱動弁を介して複数の暖房端末を設置する構成としてもよい。
【0074】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明の詳細な説明に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、補給弁の液漏れ等の異常検出に有用であり、特に、水崩れや熱媒の熱による体積膨張の影響を排して異常検出を行うので異常の誤検出防止に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る暖房装置の概要を示す図である。
【図2】制御部の概要を示すブロック図である。
【図3】熱交換システムの水崩れ検知制御を示すフローチャートである。
【図4】熱交換システムのエアパージ制御を示すフローチャートである。
【図5】熱交換システムの異常判定制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
2 暖房装置
4 熱源部
6、8 暖房端末(放熱負荷)
10 制御部(制御手段)
18 開放タンク
20 循環ポンプ
22 温度センサ(温度検出手段)
24 熱交換器
38 補給弁(補給手段)
42 水位センサ(液位検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器で液体を加熱し、その液体を放熱負荷に循環させて放熱させる熱交換システムであって、
前記液体を循環させる流路に接続されて前記液体を溜めるタンクと、
このタンク内の液体の液位を検出する液位検出手段と、
前記流路を通して前記熱交換器及び前記放熱負荷に前記液体を循環させるポンプと、
前記流路又は前記タンクに前記液体を補給する補給手段と、
前記液位検出手段の検出液位に応じて前記補給手段に前記液体を補給させることにより、前記タンク内の液位を所定範囲内に維持するとともに、前記検出液位が異常液位に到達した場合、前記ポンプを駆動して前記流路に前記液体を循環させた後の検出液位が異常液位である場合に異常を表す出力を発生する制御手段と、
を備えたことを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
前記液体の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出温度が所定温度以下である場合に異常判定動作に移行することを特徴とする請求項1記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記制御手段の前記出力により、動作異常を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱交換システム。
【請求項4】
熱交換器で液体を加熱し、その液体を放熱負荷に循環させて放熱させる熱交換システムの制御方法であって、
前記熱交換器及び前記放熱負荷に循環させる前記液体をタンクに溜める処理と、
前記タンク内の液体の液位を検出する処理と、
前記流路を通して前記熱交換器及び前記放熱負荷に前記液体を強制的に循環させる処理と、
前記流路又は前記タンクに前記液体を補給する処理と、
液位検出手段の検出液位に応じて補給手段に前記液体を補給させることにより、前記タンク内の液位を所定範囲内に維持するとともに、前記検出液位が異常液位に到達した場合、前記流路に前記液体を強制的に循環させた後の検出液位が異常液位である場合に異常と判定する処理と、
を備えたことを特徴とする熱交換システムの制御方法。
【請求項5】
前記異常と判定する処理において、前記タンク内の液位が異常液位の発生頻度を参照する処理を含むことを特徴とする請求項4記載の熱交換システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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