説明

熱交換器のシール構造

【課題】 硬度75゜以下となる弾性の大きいゴムリングを使用する場合であっても、十分なシール性(密閉性)を確保するとともに、耐薬品性のより優れた素材の選定を可能にして耐久性(メンテナンス性)及び信頼性の向上を図る。
【解決手段】 弾性リング7として硬度75゜以下のゴムリング7rを使用するとともに、ジャケット6における一対の平行片部6a…の先端縁部6as…と対向するシール溝4の壁面4w間のクリアランスCが第一部材2と第二部材3を組付けた際に所定の大きさLc以下となるように平行片部6a…の幅方向長さLwを選定し、かつ平行片部6a…の表面に形成する複数のリング凸条8aa,8ab…における先端縁部6as…に最も近いリング凸条8aa…と当該先端縁部6as…間の距離を所定の長さLr以下となるように選定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液に対する熱交換を行う薬液用熱交換器等に用いて好適な熱交換器のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弗化水素酸,硝酸,硫酸等の腐食性の大きい薬液に対して熱交換を行う薬液用熱交換器としては、既に、本出願人らが提案した特許文献1で開示される耐薬品性熱交換器が知られている。
【0003】
同文献1に開示される耐薬品性熱交換器は、熱良導性素材から成り所定の間隔を隔てて対向して配設された一対の伝熱基板と、該一対の伝熱基板の対向面を覆う耐薬品性被覆層と、耐薬品性素材から成り、一対の伝熱基板間に介在して該伝熱基板に耐薬品性被覆層を介して圧接し該伝熱基板と共に熱交換室を囲む側壁体と、該熱交換室を外部に開放する流体出入口とを備え、側壁体の、耐薬品性被覆層との圧接部に熱交換室をループ状に囲む一連のシール溝を設け、該シール溝にガスケットに収納して熱交換室をシールしている耐薬品性熱交換器であって、ガスケットが、ゴム弾性素材から成るループ状心材と、少なくとも該心材の外側周面を除いて該心材を覆う耐薬品性素材から成るジャケットとにより構成されており、該ジャケットの、シール溝底面とシール溝開口面とに対向する周面には夫々突条が周設されており、熱交換室に遠い側のシール溝周壁面には、心材の外周面が当接した構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−280786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の耐薬品性熱交換器、特に熱交換器のシール構造は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
即ち、この種の薬液用熱交換器では、弗化水素酸等の侵食性の高い薬液に対して熱交換(冷却又は加熱)を行うため、熱交換器における各部の形成素材は耐薬品性に優れたフッ素系樹脂素材を用いている。しかし、耐薬品性に優れたフッ素系樹脂素材であっても長期使用により薬液に侵食され、特に、シール構造に用いるガスケットの劣化は液漏れ等を招く原因となる。また、近年では処理時間を速めるため、薬液の温度を常温域から中高温域での使用が増加傾向にあるとともに、薬液も高純度化(強酸化,強アルカリ化)されているため、薬液の侵食性がより高まっている。
【0007】
したがって、ガスケットに対しては、より耐薬品性に優れた素材への変更が求められるが、ゴム素材の場合、耐薬品性に優れていても硬度(弾性)が適さない場合がある。具体的には、図7に示す従来のシール構造Mrの場合、弾性リング(心材)51として、硬度75〜80゜程度のフッ素系樹脂素材を使用した際には特に問題を生じないが、硬度75゜以下となる弾性の大きい素材Rrを使用した際には、ジャケット52における一対の平行片部52a,52bの先端縁部52as,52bsと対向するシール溝60の壁面60w間における隙間(クリアランス)Cra,Crbに弾性リング51の一部が入り込む現象が生じる。また、平行片部52a,52bの表面に形成する複数のリング凸条54a,55a,54b,55bは、主に、幅方向の位置的バランスを考慮して設けるため、先端縁部52as,52bsに最も近いリング凸条54a,54bと当該先端縁部52as,52bs間における平行片部52a,52bが弾性リング51の膨らみによる加圧により外側へ広がる方向に変形する現象が生じる。この結果、ガスケット50が接する二つの対向面61a,61bに対する圧接力が低下し、十分なシール性(密閉性)を確保することができなくなるなど、シール構造に対する更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した熱交換器のシール構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、流体Wが流通する熱交換室Aを形成する第一部材2と第二部材3の対向面間に設け、第一部材2と第二部材3の少なくとも一方の対向面に形成したリング形のシール溝4と、このシール溝4に収容する、径方向外側が開放されたコの字形の断面を有する全体がリング形のジャケット6及びこのジャケット6の内側に収容した弾性リング7を組合わせて構成したガスケット5とを有する熱交換器1のシール構造Mを構成するに際して、弾性リング7として硬度75゜以下のゴムリング7rを使用するとともに、ジャケット6における一対の平行片部6a,6bの先端縁部6as,6bsと対向するシール溝4の壁面4w間のクリアランスCが第一部材2と第二部材3を組付けた際に所定の大きさLc以下となるように平行片部6a,6bの幅方向長さLwを選定し、かつ平行片部6a,6bの表面に形成する複数のリング凸条8aa…,8ba…における先端縁部6as,6bsに最も近いリング凸条8aa,8baと当該先端縁部6as,6bs間の距離を所定の長さLr以下となるように選定したことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、ジャケット6は、フッ素系樹脂素材Rfにより形成することができるとともに、ゴムリング7rは、EPDM系合成ゴム素材Reにより形成することができる。また、流体Wには薬液Wdを適用するとともに、第一部材2と第二部材3はフッ素系樹脂素材Rfにより形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る熱交換器のシール構造によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 弾性リング7として硬度75゜以下となる弾性の大きいゴムリング7rを使用する場合であっても、ガスケット5が接する二つの対向面に対する圧接力の低下を回避することができるため、十分なシール性(密閉性)を確保できる。また、素材を選定する際における選定自由度も高められるため、耐薬品性のより優れた素材の選定が可能になるなど、耐久性(メンテナンス性)及び信頼性の向上にも寄与できる。
【0013】
(2) 好適な態様により、ゴムリング7rを、EPDM系合成ゴム素材Reにより形成すれば、EPDM系合成ゴム素材Reの物性により、十分なシール性(密閉性)の確保、更には耐久性(メンテナンス性)及び信頼性を向上させる観点から最適なパフォーマンスを得ることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、流体Wとして薬液Wdを適用するとともに、第一部材2と第二部材3をフッ素系樹脂素材Rfにより形成すれば、耐薬品性に優れる最適な薬液用熱交換器(薬液温度調節用熱交換器)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適実施形態に係るシール構造を備える熱交換器の一部抽出拡大図を含む断面構成図、
【図2】同熱交換器に用いるインナブロックの斜視図、
【図3】同熱交換器に用いるインナブロックの一部断面平面図、
【図4】同シール構造の一部を示す断面図、
【図5】同シール構造に用いるガスケットの一部を示す断面図、
【図6】本発明の各種変更実施形態に係るシール構造の一部を示す断面図、
【図7】背景技術の説明図、
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明の理解を容易にするため、本実施形態に係るシール構造Mを除いた熱交換器1の基本構成について、図1〜図3を参照して説明する。
【0018】
例示の熱交換器1は、薬液用熱交換器(薬液温度調節用熱交換器)である。熱交換器1は、交換器本体10を備え、この交換器本体10は、矩形に形成した一定の厚さを有するインナブロック11と、このインナブロック11を両側から挟む一対のアウタブロック12,13を備える。
【0019】
インナブロック11は、例えば、PTFE等の耐薬品性に優れたフッ素系樹脂素材Rfにより形成する。このインナブロック11は本発明における第一部材2を構成する。インナブロック11は、表裏面を円形に刳貫いて形成した熱交換室(熱交換空間)Aを有する。また、図2及び図3に示すように、インナブロック11の一端面における離間した位置には、例えば、フッ素系樹脂素材により形成した流入側パイプ14と流出側パイプ15をそれぞれ接合する。そして、インナブロック11の内部に、流入側パイプ14と熱交換室Aを連通接続する流入路16、及び流出側パイプ15と熱交換室Aを連通接続する流出路17をそれぞれ形成する。さらに、熱交換室Aの内部には、例えば、フッ素系樹脂素材により形成した二つの仕切プレート18,19を熱交換室Aの内壁面を利用して取付ける。仕切プレート18,19は、長手方向の一側に設けた切欠部18o,19oが通水口となる。これにより、熱交換室Aの内部には、薬液Wd(流体W)が流通する流通経路が形成される。図3の点線矢印が流通経路に沿って流れる薬液Wd(W)を示している。なお、18s,19sは切欠部18o,19oに対して反対側に位置する各仕切プレート18,19に切欠形成した液抜口を示す。
【0020】
一方、アウタブロック12は、例えば、アルミニウム等の熱伝導性の良好な素材により形成した外側プレート12oと、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂素材Rfにより形成した内側プレート(内側シート)12iの二層構造により構成する。なお、アウタブロック13もアウタブロック12と同様に構成できるため、アウタブロック12を二つ用意し、一方をアウタブロック12として使用し、他方をアウタブロック13として使用すればよい。アウタブロック13において、13oは外側プレート、13iは内側プレート(内側シート)をそれぞれ示す。このアウタブロック12,13における内側プレート12i,13iは本発明における第二部材3…を構成する。
【0021】
このような構成部材を用いるため、図1に示すように、インナブロック11の両面を、内側プレート12i,13iを対面させたアウタブロック12,13によりそれぞれ挟むとともに、複数のボルトナット21…により固定すれば、交換器本体10を得ることができる。図中、22…はボルトナット21…の挿通孔を示す。これにより、インナブロック11の熱交換室Aは、一対のアウタブロック12,13に挟まれることにより密閉される。さらに、交換器本体10における外側プレート12o,13oの外面には、ペルチェ素子を用いたサーモモジュール23,24の内面側をそれぞれ付設するとともに、このサーモモジュール23,24の外面側に冷却水を流通させて冷却を行う冷却器25,26を付設する。これにより、基本構成となる熱交換器1が得られる。なお、冷却器25,26には温水を流通させることにより加熱器として利用することもできる。
【0022】
そして、この熱交換器1におけるインナブロック11と内側プレート12i(アウタブロック12)間、及びインナブロック11と内側プレート13i(アウタブロック13)間には、それぞれ本実施形態に係るシール構造Mを設ける。
【0023】
次に、本実施形態に係る熱交換器のシール構造Mについて、図1〜図5を参照して具体的に説明する。
【0024】
シール構造Mは、インナブロック11(第一部材2)と内側プレート12i(第二部材3)の対向面11fと12fにおける一方の対向面11fに形成するシール溝4と、このシール溝4に収容するガスケット5を備える。シール溝4は、図1に示すように、断面形状を矩形に形成するとともに、図2及び図3に示すように、全体形状を熱交換室Aの外周に沿ったリング形に形成する。
【0025】
一方、ガスケット5は、径方向外側が開放されたコの字形の断面を有する全体がリング形のジャケット6と、このジャケット6の内側に収容する弾性リング7の組合わせにより構成する。ジャケット6は、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂素材Rfにより形成する。ジャケット6は、図5に示すように、断面がコの字形になるため、両側には、先端縁部6as,6bsが対峙する一対の平行片部6a,6bを有する。この平行片部6a,6bの幅方向長さLwは、次の条件を満たすように設定する。即ち、図4に示すように、インナブロック11とアウタブロック12を組付けた際に、一対の平行片部6a,6bの先端縁部6as,6bsと対向するシール溝4の壁面4w間のクリアランスCが所定の大きさLc以下となるように、平行片部6a,6bの幅方向長さLwを選定する。なお、所定の大きさLc以下には0も含まれる。所定の大きさLcは、後述する硬度75゜以下となるゴムリング7rを使用した場合であっても、クリアランスCにゴムリング7rの一部が入り込まない大きさを考慮して選定する。
【0026】
また、一方の平行片部6aの表面(外面)には離間した大径と小径の二つのリング凸条8aa,8abを一体形成するとともに、他方の平行片部6bの表面(外面)には離間した大径と小径の二つのリング凸条8ba,8bbを一体形成する。各リング凸条8aa,8ab,8ba,8bbは、断面が三角山形となるように、周方向に沿って形成する。この際、図4に示すように、一方の平行片部6aの表面に形成する二つのリング凸条8aa,8abにおける先端縁部6asに最も近いリング凸条8aaと当該先端縁部6as間の距離を、所定の長さLr以下となるように選定する。同様に、他方の平行片部6bの表面に形成する複数のリング凸条8ba,8bbにおける先端縁部6bsに最も近いリング凸条8baと当該先端縁部6bs間の距離も、所定の長さLr以下となるように選定する。なお、所定の長さLr以下には0も含まれる。所定の長さLrは、後述する硬度75゜以下となるゴムリング7rを使用した場合であっても、平行片部6a,6bの先端縁部6as,6bs側がゴムリング7rの膨らみによる加圧により広がる方向に変形しない長さ、即ち、変形を阻止できる長さ(位置)を考慮して選定する。
【0027】
他方、弾性リング7は、硬度75゜以下、望ましくは硬度70〜75゜のゴムリング7rを使用する。この条件を満たすゴムリング7rの素材としては、EPDM系合成ゴム素材Reが最適である。EPDM系合成ゴム素材Reは、フッ素系樹脂素材RfのPTFEよりも耐薬品性に優れている。反面、硬度が小さくなる(弾性が大きくなる)という物性を有しているため、この物性に伴う弊害を、上述したジャケット6側の幾何学的形状により補っている。このように、ゴムリング7rを、EPDM系合成ゴム素材Reにより形成すれば、EPDM系合成ゴム素材Reの物性により、十分なシール性(密閉性)の確保、更には耐久性(メンテナンス性)及び信頼性を向上させる観点から最適なパフォーマンスを得ることができる。
【0028】
また、ゴムリング7rは断面を矩形に形成し、図5に示すように、ジャケット6における平行片部6a,6b間に収容する。図5は、シール溝4に収容する前の状態のガスケット5、即ち、ガスケット5の自然状態を示している。したがって、ガスケット5の自然状態の厚さHoは、図4に示すインナブロック11とアウタブロック12間に挟まれることにより圧縮された状態の厚さHuよりも圧縮分Hsだけ厚くなっている。また、圧縮されていない自然状態のガスケット5では、ゴムリング7rの先端が平行片部6aの先端縁部6asから幅Dsだけ突出している。
【0029】
このように構成するガスケット5は、インナブロック11にアウタブロック12を組付ける際に、インナブロック11のシール溝4に収容すればよい。これにより、インナブロック11とアウタブロック12間に本実施形態に係るシール構造Mが設けられる。そして、前述したボルトナット21…により固定した際には、ガスケット5はインナブロック11とアウタブロック12間に挟まれて圧縮され、ジャケット6における一対の平行片部6a,6bの先端縁部6as,6bsと対向するシール溝4の壁面4w間のクリアランスCは所定の大きさLc以下となる。なお、以上は、インナブロック11とアウタブロック12間に設けるシール構造Mについて説明したが、インナブロック11とアウタブロック13間に設けるシール構造Mも同一構造により構成できる。
【0030】
よって、このような本実施形態に係るシール構造Mによれば、弾性リング7として硬度75゜以下となる弾性の大きいゴムリング7rを使用する場合であっても、ガスケット5が接する二つの対向面に対する圧接力の低下を回避することができるため、十分なシール性(密閉性)を確保できる。また、素材を選定する際における選定自由度も高められるため、耐薬品性のより優れた素材の選定が可能になるなど、耐久性(メンテナンス性)及び信頼性の向上にも寄与できる。特に、流体Wとして薬液Wdを適用するとともに、インナブロック11と内側プレート12i,13iをフッ素系樹脂素材Rfにより形成するため、耐薬品性に優れる最適な薬液用熱交換器(薬液温度調節用熱交換器)を実現することができる。
【0031】
次に、本発明の変更実施形態に係るシール構造Mについて、図6(a),(b)を参照して説明する。
【0032】
図6(a)は、リング凸条8aa…の数量を変更した変更実施形態を示す。図1〜図5の基本実施形態では、一方の平行片部6aに二つのリング凸条8aa,8abを設けた場合を示したが、三つ以上のリング凸条8aa…を設けてもよい。図6(a)は、三つのリング凸条8aa,8ab,8acを設けた例を示す。この場合であっても、平行片部6aに形成する三つのリング凸条8aa…における先端縁部6asに最も近いリング凸条8aaと当該先端縁部6as間の距離を所定の長さLr以下となるように選定すればよい。
【0033】
図6(b)は、リング凸条8aa…の断面形状を変更した変更実施形態を示す。図1〜図5の基本実施形態では、各リング凸条8aa,8abの断面形状を三角山形に形成した場合を示したが、図6(b)は、断面形状を半円形に形成した場合を示す。このように、各リング凸条8aa…の断面形状は三角山形に限定されるものではなく、必要に応じて各種形状により又は組合わせにより実施可能である。なお、図6(a),(b)では、一方の平行片部6a側についてのみ説明したが、他方の平行片部6b側も同様に構成する。また、図6(a),(b)において、図1〜図5と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0034】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値,素材等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、ジャケット6は、フッ素系樹脂素材Rfにより形成する場合を示したが、他の素材により形成する場合を排除するものではない。また、ゴムリング7rは、EPDM系合成ゴム素材Reにより形成した場合を示したが、硬度75゜以下のゴムリング7rであれば、他のゴム素材であっても適用できる。さらに、シール溝4はインナブロック11に形成した場合を示したが、アウタブロック12,13側に設けてもよいし、インナブロック11とアウタブロック12,13の双方に跨がって設けてもよい。なお、本発明における「リング形」とは円形のみならず楕円や矩形などの他の形状を含むものであり、いわば「ループ形」と同義である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る熱交換器のシール構造は、流体Wとして薬液Wdを使用する薬液用熱交換器に用いて最適であるが、液漏れ防止等の観点からは耐久性に優れ、信頼性の高い熱交換器を実現できるため、一般的な冷却水や加熱水を使用する熱交換器に用いても好適であり、様々な流体を使用する各種熱交換器のシール構造として利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1:熱交換器,2:第一部材,3:第二部材,4:シール溝,4w:シール溝の壁面,5:ガスケット,6:ジャケット,6a:平行片部,6b:平行片部,6as:平行片部の先端縁部,6bs:平行片部の先端縁部,7:弾性リング,7r:ゴムリング,8aa…:リング凸条,8ba…:リング凸条,W:流体,Wd:薬液,A:熱交換室,M:シール構造,C:クリアランス,Lw:平行片部の幅方向長さ,Rf:フッ素系樹脂素材,Re:EPDM系合成ゴム素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する熱交換室を形成する第一部材と第二部材の対向面間に設け、前記第一部材と前記第二部材の少なくとも一方の対向面に形成したリング形のシール溝と、このシール溝に収容する、径方向外側が開放されたコの字形の断面を有する全体がリング形のジャケット及びこのジャケットの内側に収容した弾性リングを組合わせて構成したガスケットとを有する熱交換器のシール構造において、前記弾性リングとして硬度75゜以下のゴムリングを使用するとともに、前記ジャケットにおける一対の平行片部の先端縁部と対向する前記シール溝の壁面間のクリアランスが前記第一部材と前記第二部材を組付けた際に所定の大きさ以下となるように前記平行片部の幅方向長さを選定し、かつ前記平行片部の表面に形成する複数のリング凸条における前記先端縁部に最も近いリング凸条と当該先端縁部間の距離を所定の長さ以下となるように選定してなることを特徴とする熱交換器のシール構造。
【請求項2】
前記ジャケットは、フッ素系樹脂素材により形成することを特徴とする請求項1記載の熱交換器のシール構造。
【請求項3】
前記ゴムリングは、EPDM系合成ゴム素材により形成することを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換器のシール構造。
【請求項4】
前記流体に薬液を適用するとともに、前記第一部材と前記第二部材はフッ素系樹脂素材により形成することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の熱交換器のシール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−159939(P2010−159939A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3699(P2009−3699)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】