説明

熱交換器固定構造

【課題】空調装置の製造時には部品点数を抑制して組み立て作業性を向上させ、しかも、熱交換器のメンテナンス時にはケーシングを分解することなく熱交換器を着脱できるようにしてメンテナンス時の作業性も向上させる。
【解決手段】熱交換器11を収容するケーシング12は、熱交換器11を着脱するための着脱孔52と、ケーシング12内に収容された熱交換器11が着脱孔52からケーシング12外へ出るのを阻止するように着脱孔12の少なくとも一部を覆うように形成されたストッパ部41とを備えている。ストッパ部41は、切断可能な被切断部42を介してケーシング12に一体成形されるとともに、被切断部42が切断された状態でケーシング12に固定される固定部41aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングに収容された熱交換器を固定する熱交換器固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、車両用空調装置は、熱交換器と、熱交換器を収容するケーシングとを備えており、ケーシングに導入した空調用空気を熱交換器によって温度調節して車室の各部に供給するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のケーシングには、熱交換器を収容するための収容孔が形成され、さらに、収容孔からケーシング内に収容された熱交換器をケーシングの外側から押さえて固定するための部材がビスによって取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−6646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、熱交換器をケーシングの外側から固定するための部材をケーシングとは別の部材で構成してビス止めするようにした場合には、部品点数が増えるとともに、工具を用いた作業が要求されるので、空調装置の製造時における組み立て作業性が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、製造時に分解された状態にあるケーシングに熱交換器を組み付けるようにすることで収容孔を無くすことが考えられる。こうすることで、熱交換器をケーシングの外側から固定するための部材及びビスを省略することができる。
【0007】
ところが、収容孔を無くしてしまうと、熱交換器の修理や交換等のメンテナンス時にケーシングをわざわざ分解して熱交換器を取り出さなければならない。ケーシングを分解するのは車両に搭載したままでは困難であるので、ケーシングを車両から降ろして行わなければならず、メンテナンス時の作業性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空調装置の製造時には部品点数を抑制して組み立て作業性を向上させ、しかも、熱交換器のメンテナンス時にはケーシングを分解することなく熱交換器を着脱できるようにしてメンテナンス時の作業性も向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、熱交換器と、該熱交換器が収容されて固定されるケーシングとを備え、該ケーシングに導入した空調用空気を上記熱交換器により温度調節して車室の各部に供給する車両用空調装置に設けられる熱交換器固定構造において、上記ケーシングは、上記熱交換器を着脱するための着脱孔と、該ケーシング内に収容された上記熱交換器が上記着脱孔から該ケーシング外へ出るのを阻止するように上記着脱孔の少なくとも一部を覆うように形成されたストッパ部とを備え、上記ストッパ部は、切断可能な被切断部を介して上記ケーシングに一体成形され、上記ストッパ部には、上記被切断部が切断された状態で、該ストッパ部を上記着脱孔の少なくとも一部を覆う姿勢として上記ケーシングに固定するための固定部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、空調装置の製造時には、分解された状態にあるケーシングに熱交換器を収容して組み立て、組み立て後には熱交換器が着脱孔から出てしまうのがストッパ部により阻止されて熱交換器がケーシングに固定される。このストッパ部はケーシングに一体成形されているのでビス止め等は不要であり、部品点数の増加が抑制されるとともに、工具を用いた作業は不要である。
【0011】
一方、空調装置を車両に搭載した後に熱交換器をメンテナンスする際には、被切断部を切断することでストッパ部がケーシングから離脱する。これにより、ケーシングを分解することなく、着脱孔を利用して熱交換器を着脱することが可能になる。熱交換器を着脱孔からケーシングに収容した状態で、ストッパ部をケーシングに固定することで、熱交換器が着脱孔から出るのをストッパ部により阻止することが可能になる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、固定部は、ケーシングに対し締結部材により固定されることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、熱交換器を着脱孔からケーシングに収容した際に、ストッパ部をケーシングに対し確実に固定することが可能になる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、ストッパ部には、ケーシングの着脱孔の周縁部に係合する係合部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、係合部がケーシングの着脱孔の周縁部に係合してストッパ部が位置決めされるので、締結作業時にストッパ部の位置ずれが抑制される。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、係合部はリブで構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、係合部を利用してストッパ部の補強が可能になる。
【0018】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、被切断部は、ストッパ部から突出する片状に形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、被切断部が切断し易い形状となり、ストッパ部をケーシングから容易に離脱させることが可能になる。
【0020】
第6の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、被切断部は、ストッパ部から突出する片状に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、ストッパ部の剛性が向上し、この剛性の向上したストッパ部のリブが熱交換器の外面に圧接することで、熱交換器をストッパ部によりケーシングにしっかりと固定することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、熱交換器がケーシングの着脱孔から出るのを阻止するストッパ部をケーシングに一体成形したので、空調装置の製造時の組み立て作業性を向上させることができる。そして、被切断部を切断してストッパ部をケーシングから離脱させることができるとともに、その離脱させたストッパ部を固定部によりケーシングに再び固定することができるので、熱交換器のメンテナンス時には、ケーシングを分解することなく、熱交換器を着脱孔から着脱することができ、作業性を向上させることができる。
【0023】
第2の発明によれば、固定部をケーシングに対し締結部材により固定するようにしたので、熱交換器を着脱孔からケーシングに収容した際に熱交換器がケーシングから出てしまうのを確実に阻止できる。
【0024】
第3の発明によれば、ストッパ部に、ケーシングの着脱孔の周縁部に係合する係合部を設けたので、ストッパ部を所定位置に確実に締結固定することができる。
【0025】
第4の発明によれば、係合部を利用してストッパ部の剛性を向上させて熱交換器が着脱孔から出てしまうのを確実に防止できる。
【0026】
第5の発明によれば、被切断部を片状に形成したので、ストッパ部をケーシングから容易に離脱させることができ、作業性をより一層向上させることができる。
【0027】
第6の発明によれば、ストッパ部に、熱交換器の外面に圧接するリブを設けたので、熱交換器をケーシングに対ししっかりと固定することができ、振動等による異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態にかかる車両用空調装置の左側面図である。
【図2】空調装置の縦断面図である。
【図3】ヒータコアが組み付けられた状態にあるケーシングのヒータコア着脱孔近傍を拡大して示す斜視図である。
【図4】ヒータコアが組み付けられる前の図3相当図である。
【図5】図3のV−V線における断面図である。
【図6】ケーシングから一旦離脱させたストッパ板をケーシングに固定した場合の図3相当図である。
【図7】図6のVII−VII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態にかかる熱交換器固定構造が適用された車両用空調装置1を示すものである。この空調装置1は、自動車の車室(図示せず)に配設されている。尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0031】
空調装置1は、図示しない送風機から送風された空気を温度調節して車室の各部に送風するように構成された空調ユニット3を備えている。空調ユニット3及び送風機は、車室の前端部にあるインストルメントパネル(図示せず)内部に配設されている。空調ユニット3は、インストルメントパネル内部の左右方向略中央部に位置付けられ、送風機は左側(助手席の前方)に位置付けられている。送風機と空調ユニット3とは、中間ダクト4によって接続されている。
【0032】
図2に示すように、空調ユニット3は、エバポレータ10及びヒータコア(熱交換器)11と、これらを収容するケーシング12とを備えている。また、ケーシング12内には、エアミックスダンパ13、デフロスタダンパ14、ベントダンパ15及びヒートダンパ16が配設されている。
【0033】
ケーシング12は、樹脂材を成形してなるものであり、左右方向に分割された部材を組み合わせて構成されている。ケーシング12は、左右方向以外にも、上下方向に分割された部材を組み合わせて構成してもよい。
【0034】
ケーシング12の内部には、送風機から送風された空気が流れる空気通路Rが形成されている。空気通路Rの上流端はケーシング12の前端部に位置しており、ケーシング12の左側壁に形成された空気流入口20に連通している。空気流入口20は上下方向に長い矩形状とされている。
【0035】
空気通路Rは、全体として後側へ向けて延びている。空気通路Rは、冷風通路R1、温風通路R2、エアミックス空間R3、デフロスタ吹出通路R4、ベント吹出通路R5及びヒート吹出通路R6を有している。
【0036】
冷風通路R1には、上記エバポレータ10が空気の流れを横切るようにして配設されている。エバポレータ10は、空気を冷却するための冷却用熱交換器であり、冷凍サイクルの一要素を構成する周知のものである。エバポレータ10は、図示しないが、一対のヘッダタンクと、これらヘッダタンクを接続するように延びる複数のチューブと、チューブ間に配設されたフィンとを備えたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。ケーシング12内に導入された空気の全量がエバポレータ10を通過する。
【0037】
このエバポレータ10の空気通過面は、空気流入口20の長手方向に沿って略鉛直に延びている。つまり、エバポレータ10は、上端部及び下端部にそれぞれヘッダタンクが位置するように配置されている。
【0038】
エバポレータ10の上端部に位置するヘッダタンクには、図1に示すように、冷媒配管10a,10aの基端が接続されている。エバポレータ10には、冷媒配管10a,10aを介して冷媒(熱交換媒体)が給排されるようになっている。尚、冷媒配管10a,10aの基端は、例えば、エバポレータ10の上下方向中央部に接続してもよく、エバポレータ10の上端部に限られるものではない。
【0039】
ケーシング12の左側壁には、空気流入口20の後側に隣接するようにエバポレータ着脱孔48(図1にのみ示す)が形成されている。エバポレータ10は、エバポレータ着脱48からケーシング12内へ収容され、また、エバポレータ10の修理や交換時にはエバポレータ着脱孔48から取り出して再び収容することが可能となっている。エバポレータ着脱孔48は、中間ダクト4の一部によって閉塞されるようになっている。これにより、エバポレータ10がエバポレータ着脱孔48からケーシング12外へ出るのが阻止される。また、冷媒配管10a,10aの基端側は中間ダクト4内に収容されている。
【0040】
図2に示すように、ケーシング12の底壁部には、エバポレータ10よりも後側の部位からケーシング12内へ向けて上方へ突出する突出板22が形成されている。突出板22よりも前側には、エバポレータ10の表面に発生した凝縮水を排水するためのドレン部21(図1に示す)が形成されている。
【0041】
ケーシング12の突出板22よりも後側の部分が上記温風通路R2である。突出板22の上側には、温風通路R2と冷風通路R1とを連通させるための上流側開口部23が形成されている。ケーシング12の底壁部の突出板22よりも後側は、前側に比べて下方に位置するように膨出している。温風通路R2は、上流側開口部23から下方へ延びた後、上方へ向けて湾曲して延びている。
【0042】
温風通路R2には、上記ヒータコア11が空気の流れを横切るようにして配設されている。ヒータコア11は、空気を加熱するための加熱用熱交換器である。ヒータコア11は、エバポレータ10と同様に、一対のヘッダタンク11b(図3に示す)と、これらヘッダタンク11bを接続するように延びる複数のチューブ(図示せず)と、チューブ間に配設されたフィン(図示せず)とを備えたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。ヒータコア11の空気通過面は上側へ行くほど後側に位置するように傾斜して延びている。また、ヒータコア11は、その左端部及び右端部にそれぞれヘッダタンク11bが位置するように配置されている。
【0043】
突出板22の上端部には、ヒータコア11の上端部を保持するためのサポート部24が形成されている。このサポート部24は、上流側開口部23よりも後方へ延びる板状に形成されている。
【0044】
図3に示すように、ヒータコア11の左端部に位置するヘッダタンク11bには、2本のヒータ配管11a,11aの基端がそれぞれ接続されている。ヒータコア12には、ヒータ配管11a,11aを介してエンジンの冷却水が給排されるようになっている。これらヒータ配管11a,11aの基端は、ヘッダタンク11bの下端から上方に離れている。また、ヒータ配管11a,11aの基端は、互いに上下方向に間隔をあけて配置されている。
【0045】
図1にも示すように、ケーシング12の左側壁には、エバポレータ着脱孔48から後側に離れた部位に、ヒータコア着脱孔52が形成されている。ヒータ配管11a,11aは、ヒータコア着脱孔52を通ってケーシング12外へ突出して下方へ延びた後、前方へ折れ曲がって延びている。
【0046】
ヒータコア着脱孔52は、上下方向に長く形成されており、ヒータコア11の傾斜角度に対応して上側へ行くほど後に位置するように傾斜して延びている。ヒータコア着脱孔52の4つの角部は略円弧状に形成されている。
【0047】
ヒータコア着脱孔52の上端部は、ケーシング12の上下方向略中央部に位置しており、エバポレータ着脱孔48の上端部よりも下である。ヒータコア着脱孔52の下端部は、ケーシング12の底壁部近傍に位置している。
【0048】
図4に示すように、ケーシング12のヒータコア着脱孔52の周縁部には、ケーシング12の外方へ突出する周壁部40が形成されている。この周壁部40は、ヒータコア着脱孔52の全周に亘って連続している。
【0049】
ケーシング12には、ケーシング12内に収容されたヒータコア11がヒータコア着脱孔52からケーシング12外へ出るの阻止するためのストッパ板(ストッパ部)41が設けられている。ストッパ板41は、ヒータコア着脱孔52の下側を覆うように形成されており、切断可能な被切断部42を介してケーシング12に一体成形されている。
【0050】
ストッパ板41は、ヒータコア着脱孔52の長手方向に沿って延びており、上下寸法が前後寸法よりも長く設定された略長方形状となっている。ストッパ板41の下側の角部は、ヒータコア着脱孔52の下側の角部の形状に対応するように略円弧状に形成されている。
【0051】
図3にも示すように、被切断部42は、この実施形態では7つ設けられている。前側の3つの被切断部42は、ストッパ板41の前縁部に上下方向に間隔をあけて配置されて前方へ突出する細い片状に形成され、また、後側の3つの被切断部42は、ストッパ板41の後縁部に上下方向に間隔をあけて配置されて後方へ突出する細い片状に形成され、また、残りの被切断部42は、ストッパ板41の下縁部に配置されて下方へ突出する細い片状に形成されている。これら被切断部42の先端部が周壁部40の先端部に一体化している。被切断部42が細い片状であることにより、ニッパー等の工具を用いて被切断部42を簡単に切断することができるようになっている。尚、被切断部42の数は、7つに限られるものではなく、任意に設定することができる。また、被切断部42の位置も任意に設定することができる。
【0052】
ストッパ板41の幅(前後寸法)は、ヒータコア着脱孔52の幅(前後寸法)よりも短く設定されており、ストッパ板41の周縁部と周壁部40との間には、隙間Sが形成されている。この隙間Sには、被切断部42を切断する際の工具の先端部が入るようになっている。また、ストッパ板41の長さ(上下寸法)は、ヒータコア着脱孔52の幅よりも長く設定されている。
【0053】
ストッパ板41の下部には、貫通孔41aが形成されている。この貫通孔41aは、ストッパ板41をケーシング12から離脱させた後に再びケーシング12に取り付ける際に固定用のネジ(締結部材)Bを挿通させるためのものであり、本発明の固定部に相当するものである。
【0054】
図3に示すように、ストッパ板41のケーシング12外側面には、2本の第1リブ41bが形成されている。これら第1リブ41bは、ストッパ板41の長手方向に延びており、前後に間隔をあけて配置されている。第1リブ41bの長さは、ヒータコア着脱孔52の幅と略同じか、若干短めに設定されている。これにより、図7に示すように、第1リブ41bがケーシング12内側へ向くようにしてストッパ板41を再び取り付けたときに第1リブ41bの縁部が周壁部40の内面に接触して係合した状態となり、ストッパ板41が位置決めされるようになる。
【0055】
第1リブ41bの高さは、第1リブ41bがケーシング12内側へ向くようにしてストッパ板41を固定したときにリブ41bの先端部がヒータコア11のヘッダタンク11bの外面に圧接するように設定されている。
【0056】
また、図5にも示すように、ストッパ板41のケーシング12内側面にも、第1リブ41bと同じ形状の第2リブ41cが第1リブ41bと同様に設けられている。
【0057】
図3に示すように、ケーシング12の周壁部40の後側には、上記ネジBが螺合するボス44が形成されている。ボス44は、ケーシング12の外面から突出し、周壁部40の下側部分と一体化している。これにより、ボス44の倒れ変形が抑制される。また、ボス44には、ネジ穴44aが形成されている。このネジ穴44aは、図1に示すように空調装置1の側面視でヒータ配管11aと重ならないように位置付けられている。尚、ボス44には、ネジBの代わりにボルト等を螺合させるようにしてもよい。
【0058】
また、図2に示すように、ケーシング12内の突出板22の上方には、隔壁25が設けられている。ケーシング12内の隔壁25よりも上側の部分がエアミックス空間R3である。隔壁25の前側には、冷風通路R1に連通する冷風吹出口26が形成されている。この冷風吹出口26は、上流側開口部23と略同じ形状とされている。隔壁25の冷風吹出口26よりも後側には、温風吹出口27が形成されている。
【0059】
ケーシング12内の突出板22と隔壁25との間には、上記エアミックスダンパ13が配設されている。
【0060】
ケーシング12の上部には、デフロスタダクト部45が形成されている。デフロスタダクト部45は、エアミックス空間R3の上部に連通し、上方へ延びており、上記デフロスタ吹出通路R4を形成するためのものである。上記デフロスタダンパ14は、デフロスタ吹出通路R4の上流端に配設されている。このデフロスタダンパ14によりデフロスタ吹出通路R4の上流端が開閉されるようになっている。
【0061】
ケーシング12の後側上部には、ベントダクト部50が形成されている。ベントダクト部50は、エアミックス空間R3の前部に連通し、前方へ延びており、上記ベント吹出通路R5を形成するためのものである。
【0062】
ケーシング12の前側には、ヒートダクト部55が形成されている。このヒートダクト部55は、上記ヒート吹出通路R6を形成するためのものである。ヒートダクト部55の内部は、エアミックス空間R3に連通している。
【0063】
ヒートダクト部55の上流側の右側壁には、運転席側フロントヒート開口部55aが形成されている。また、図1に示すように、ヒートダクト部55の上流側の左側壁には、助手席側フロントヒート開口部55bが形成されている。運転席側及び助手席側フロントヒート開口部55a,55bには、図示しないが、フロントヒートダクトがそれぞれ接続されている。上記ヒートダンパ16は、ヒート吹出通路R6の上流端に配設されている。
【0064】
次に、上記のように構成された空調装置1の組み立て手順について説明する。まず、ケーシング12が左右に分割された状態で、ヒータコア11、エアミックスダンパ13、デフロスタダンパ14、ベントダンパ15及びヒートダンパ16を組み付ける。その後、左右の部材を合わせてケーシング12を構成する。
【0065】
ケーシング12を構成した後、そのケーシング12にはストッパ板41が設けられていてヒータコア着脱孔52の下側が覆われているので、ヒータコア11がヒータコア着脱孔52からケーシング12外へ出ることはなく、ヒータコア11がケーシング12に固定された状態となる。このとき、図5に示すように、ストッパ板41の第2リブ41cの先端がヒータコア11のヘッダタンク11bの側面に圧接し、ヒータコア11のがたつきが抑制される。ケーシング12の組立時、ストッパ板41はケーシング12に一体成形されているので、部品点数が少なく、作業性は良好である。
【0066】
尚、ヒータ配管11a,11aは、ケーシング12を組み立てた後にヒータコア11のヘッダタンク11bに接続するようにしてもよいし、予めヘッダタンク11bに接続しておいてヒータコア11と同時にケーシング12に組み付けるようにしてもよい。
【0067】
また、エバポレータ10は、ケーシング12を組み立てた後、エバポレータ着脱孔48からケーシング12内へ収容する。
【0068】
次に、ヒータコア11を修理したり交換する場合について説明する。この場合、空調装置1は車両に搭載したまま行う。まず、ヒータコア11をケーシング12から取り出す際には、被切断部42を工具により切断してストッパ板41をケーシング12から離脱させる。このとき、図3に示すように、ストッパ板41の周縁部と周壁部41との間には、工具の先端部が入る隙間Sが形成されているので、被切断部42の切断が工具を用いて簡単に行える。さらに、被切断部42が片状であるため、工具による切断作業が容易である。
【0069】
ストッパ板41をケーシング12から離脱させると、ヒータコア着脱孔52の全体が開放される。そして、ヒータコア11をヒータコア着脱孔52から取り出す。その後、新たなヒータコア11又は修理が完了したヒータコア11をヒータコア着脱孔52からケーシング12内に収容する。
【0070】
次いで、ストッパ板41をケーシング12に固定する。すなわち、図6に示すようにストッパ板41の長手方向をヒータコア着脱孔52の幅方向と略一致させてヒータコア着脱孔52の下側を覆うように、かつ、図7に示すように第1リブ41bがケーシング12内へ突出するようにストッパ板41の姿勢を設定する。さらに、ストッパ板41の貫通孔41aをボス44のネジ穴44aに一致させる。このとき、第1リブ41bが周壁部41の内面に接触して係合することで、ストッパ板41の位置決めがなされる。
【0071】
しかる後、ネジBをストッパ板41の貫通孔41aに挿通させてボス44のネジ穴44aに螺合させてストッパ板41をケーシング12に固定する。このとき、第1リブ41bが周壁部41に係合してストッパ板41が位置決めされているので、ネジBを回してもストッパ板41がネジBと一緒に回ってしまうことはない。また、ストッパ板41の長さがヒータコア着脱孔52の幅よりも長く設定されているので、ストッパ板41の長手方向両側が周壁部40の先端に接触し、ストッパ板41が安定する。
【0072】
ストッパ板41がケーシング12に取り付けられると、第1リブ41bの先端がヒータコア11のヘッダタンク11bの側面に圧接する。これにより、ヒータコア11のがたつきが抑制される。
【0073】
また、空調装置1を車両に搭載した状態で上記作業を行うことになるが、この作業時には、空調装置1の下側の周囲に乗員の足下用空間があり、この足下用空間を利用してストッパ板41の切り離し及び固定を行うことができ、作業性は良好である。
【0074】
以上説明したように、この実施形態によれば、ヒータコア11がケーシング12のヒータコア着脱孔52から出るのを阻止するストッパ板41をケーシング12に一体成形したので、空調装置1の製造時の組み立て作業性を向上させることができる。そして、被切断部42を切断してストッパ板41をケーシング12から離脱させることができるとともに、その離脱させたストッパ板41をケーシング12に固定することができるので、ヒータコア11のメンテナンス時には、ケーシング12を分解することなく、ヒータコア11をヒータコア着脱孔52から着脱することができ、作業性を向上させることができる。
【0075】
また、ストッパ板41をケーシング12に対しネジBにより固定するようにしたので、ヒータコア11をヒータコア着脱孔52から再びケーシング12に収容した際にヒータコア11がケーシング12から出てしまうのを確実に阻止できる。
【0076】
また、ストッパ板41に、ケーシング12のヒータコア着脱孔52の周縁部に係合する第1リブ41bを設けたので、ストッパ板41を所定位置に確実に締結固定することができる。さらに、この第1リブ41bを利用してストッパ板41の剛性を向上させてヒータコア11がヒータコア着脱孔52から出てしまうのを確実に防止できる。
【0077】
また、被切断部42を片状に形成したので、ストッパ板41をケーシング12から容易に離脱させることができ、作業性をより一層向上させることができる。
【0078】
また、ストッパ板41に、ヒータコア11のヘッダタンク11bの外面に圧接する第1リブ41b及び第2リブ41cを設けたので、ヒータコア11をケーシング12にしっかりと固定することができ、振動等による異音の発生を抑制できる。
【0079】
また、ストッパ板41の両面に同じ形状のリブ41b,41cを設けたので、ケーシング12から一旦離脱させたストッパ板41のどちらの面をケーシング12内側にして固定してもよく、作業性を良好にできる。
【0080】
尚、上記実施形態では、ストッパ板41はヒータコア着脱孔52の下側のみを覆うように形成したが、これに限らず、ヒータコア着脱孔52の上側のみを覆うように形成してもよいし、ヒータコア着脱孔52の全体を覆うように形成してもよい。また、複数のストッパ板41を設けてもよい。
【0081】
また、ケーシング12から一旦離脱させたストッパ板41をケーシング12に固定する際には、第2リブ41cがケーシング12内へ突出するように向けてもよい。
【0082】
また、ストッパ板41は、2箇所以上をケーシング12に締結するようにしてもよい。
【0083】
また、ネジBは、補修部品として新品のヒータコア11と一緒にしておいてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、被切断部42を片状にしているが、これに限らず、例えば、ストッパ板41よりも薄肉にしてケーシング12から容易に切断できるように形成してもよい。
【0085】
また、ストッパ板41は、締結部材以外にも、例えばケーシング12に係合する爪を設けておき、この爪をケーシング12に係合させることによって固定するようにしてもよい。
【0086】
また、本発明は、ヒータコア11以外にも、エバポレータ10を固定する場合に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明は、例えば車両用空調装置のヒータコアを固定する場合に用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 車両用空調装置
10 エバポレータ(熱交換器)
11 ヒータコア(熱交換器)
12 ケーシング
41 ストッパ板(ストッパ部)
41a 貫通孔(固定部)
41b 第1リブ(係合部)
41c 第2リブ(係合部)
42 被切断部
52 ヒータコア着脱孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、該熱交換器が収容されて固定されるケーシングとを備え、該ケーシングに導入した空調用空気を上記熱交換器により温度調節して車室の各部に供給する車両用空調装置に設けられる熱交換器固定構造において、
上記ケーシングは、上記熱交換器を着脱するための着脱孔と、該ケーシング内に収容された上記熱交換器が上記着脱孔から該ケーシング外へ出るのを阻止するように上記着脱孔の少なくとも一部を覆うように形成されたストッパ部とを備え、
上記ストッパ部は、切断可能な被切断部を介して上記ケーシングに一体成形され、
上記ストッパ部には、上記被切断部が切断された状態で、該ストッパ部を上記着脱孔の少なくとも一部を覆う姿勢として上記ケーシングに固定するための固定部が設けられていることを特徴とする熱交換器固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器固定構造において、
固定部は、ケーシングに対し締結部材により固定されることを特徴とする熱交換器固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器固定構造において、
ストッパ部には、ケーシングの着脱孔の周縁部に係合する係合部が設けられていることを特徴とする熱交換器固定構造。
【請求項4】
請求項3に記載の熱交換器固定構造において、
係合部はリブで構成されていることを特徴とする熱交換器固定構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の熱交換器固定構造において、
被切断部は、ストッパ部から突出する片状に形成されていることを特徴とする熱交換器固定構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の熱交換器固定構造において、
ストッパ部には、熱交換器の外面に圧接するリブが設けられていることを特徴とする熱交換器固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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