説明

熱交換器組立体及び熱エネルギー移送方法

本発明は、廃水管路内に導入できる熱交換器組立体(1)に関し、この熱交換器組立体(1)は、熱源(13)及び廃水(3)と熱接触するように設計された少なくとも1つの第1の熱交換器(11)と、廃水及びヒートシンク(23)と熱接触するように設計された少なくとも1つの第2の熱交換器(21)とを備え、1又は複数の第2の熱交換器(21)は、廃水の流れ方向、すなわち下流に、1又は複数の第1の熱交換器(11)から距離を置いて位置する。本発明は、熱エネルギー移送方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器組立体及び熱エネルギー移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、下水管路内に後から設置した熱交換装置によって下水からエネルギーを回収することが知られており、回収できる熱エネルギー量は下水温に左右されるが、この温度はさらに逸脱する。例えば、家庭下水は雨水よりも温かく、これにより雨が降っているときには、通常、少量の家庭下水が大量の雨水と混ざり合うので、下水管路内の下水温は低下する。下水温の低下により、熱エネルギー抽出ポイントにおける下水からのエネルギー回収効率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製造が容易であるとともに熱エネルギー抽出ポイントにおける効率を改善した熱交換器組立体、及び実施が容易であるとともに熱エネルギー抽出ポイントにおいて下水から回収できる熱エネルギー量を増加させる熱エネルギー移送方法を提供することである。本発明の目的は、独立請求項の主題により達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
熱交換器組立体
本発明の態様は、下水管路内に導入するための熱交換器組立体に関し、この熱交換器組立体は、
熱源を下水に熱接触させるように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器と、
下水をヒートシンクに熱接触させるように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器と、
を備え、少なくとも1つの第2の熱交換器は、下水管路内の下水の流れ方向Fに沿って、すなわち下流に配置され、少なくとも1つの第1の熱交換器から離間される。
【0005】
熱源は、ヒートシンクに熱的に接続されることが有利である。すなわち、熱源からの熱エネルギーは、下水管路内を流れる下水によりヒートシンクへ向けて移動する。下水という用語は、具体的には、雨水、汚水、及び混合水を含む。下水管路は、下水を含む全ての容積であると考えられ、詳細には下水管路自体を含むが、堰、絞り、集水槽、濾過器、汲み上げシステム、補助管路などの、下水管路に油圧接続された下水技術構造も含む。
【0006】
熱エネルギーは、熱源を発端として、少なくとも1つの第1の熱交換器により、下水管路内に存在する下水へ移動する。換言すれば、適切な使用中、下水管路内に位置する少なくとも1つの第1の熱交換器が、下水管路内の下水を加熱するために下水に熱接触する。熱エネルギーをヒートシンクへ移動させるために、適切な使用中に下水管路内に位置する少なくとも1つの第2の熱交換器によって下水から熱エネルギーが少なくとも部分的に抽出される。熱源及びヒートシンクは、下水管路の外側に位置することが有利である。少なくとも1つの第1の熱交換器は、下水管路内の少なくとも1つの第2の熱交換器から離間して配置される。下水は、通常は下水管路の傾斜に従う下水の流れ方向Fに沿って、少なくとも1つの第1の熱交換器から少なくとも1つの第2の熱交換器へ流れる。換言すれば、少なくとも1つの第2の熱交換器は、海水面に対して少なくとも1つの第1の熱交換器よりも深い位置に配置され、又は第1の熱交換器の下流に位置する。例外的な場合、下水は、ポンプシステム又は少なくとも1つの堰により、重力及び下水管路の傾斜に逆らって搬送され、これにより下水の流れ方向F及び従って「下流」方向が、ポンプシステムの搬送方向によって決まるようになる。
【0007】
本発明による熱交換装置により、熱エネルギーを熱源からヒートシンクへ単純かつ費用効果の高い方法で移送できるという利点がある。さらに、本発明による熱交換器組立体は、第1の熱交換器と第2の熱交換器の間で既存の下水管路を通じて除去が行われるので、たとえ熱源とヒートシンクとの間、又は第1の熱交換器と第2の熱交換器の間の距離が比較的大きいとしても、製造が容易であるという利点がある。従って、少なくとも1つの第1の熱交換器を設置するための熱源領域内、及び少なくとも1つの第2の熱交換器を設置するためのヒートシンク領域内でしか組立作業が必要にならない一方で、第1の熱交換器と第2の熱交換器の間の下水管路は影響を受けないままであるという利点がある。使用する下水管路に起因して、熱源とヒートシンクの間で熱交換媒体を移送するための別個の供給ライン又は移送ラインを敷設しなくてもよい。同時に、熱源とヒートシンクの間の最大距離は、既存の下水管路の長さ及び下水管路内で生じる熱損失にしか依存しない。従って、本発明による熱交換器組立体では、数メートル、又は約100mから数キロメートルの距離にわたって熱エネルギーの移送を行うことができる。
【0008】
少なくとも1つの第1の熱交換器及び/又は少なくとも1つの第2の熱交換器は、下水管路内の下水と接触するように、すなわち少なくとも熱接触するように構成される。熱接触とは、第1又は第2の熱交換器から下水中へ熱エネルギーが移行することを示し、逆もまた同様である。熱接触に加え、接触は、特に第1及び/又は第2の熱交換器が下水によって直接湿潤することを含むことができる。第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器の下水と接触する領域又は部分は、熱伝導性の剛性材料、特に耐食性ステンレス鋼で形成することが好ましい。
【0009】
第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器の外部形状又は形式は、関連する下水管路のそれぞれの断面に適合するように設計されると理解される。第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器は、これらの熱交換器を、導管マンホールを通じて下水管路内に導入して角の位置に配置できるように形成されることが好ましい。換言すれば、第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器は、特に約100cm又は約65cm未満のわずかな長手方向延長部を有する熱交換器要素を備え、この要素から第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器が組み立てられる。この場合、基礎溝を介して下水管路を露出し、この下水管路内に第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器を取り付ける必要がないという利点がある。
【0010】
或いは、下水管路区分の壁に第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器を形成することもできる。例えば、第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器の下水管路内の下水との接触面が、下水管路の内壁の一部として形成されるようにして、第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器を下水管路の壁に埋め込むことができる。さらに、例えば、下水と第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器との間の熱交換が、下水管路の材料を介して間接的に行われるようにして、第1の熱交換器及び/又は第2の熱交換器を下水管路の壁に埋め込むこともできる。このような、熱交換器を埋め込んだ下水管路の区分を工業的に製造し、これらの区分を下水管路の構造で使用し、又は既存の下水管路の区分を、熱交換器を備えたこのようなセグメントに置き換えできることが好ましい。
【0011】
熱交換器組立体は、温水送り込みライン(hot water forward−run line)又は温水前進配管(hot water advance piping)、及び冷水戻りライン(cold water return−run line)又は冷水戻り配管(cold water return piping)を備え、熱源により加熱された第1の熱交換媒体を、温水送り込みラインによって少なくとも1つの第1の熱交換器に供給することができ、少なくとも1つの第1の熱交換器により冷却された第1の熱交換媒体を、冷水戻りラインによって熱源に供給できることが好ましい。
【0012】
熱源から下水中への熱エネルギーの移動は、加熱状態のときに温水送り込みライン又は温水前進配管を介して熱源から熱交換器へ移送される第1の熱交換媒体によって行われることが好ましい。第1の熱交換媒体の熱エネルギーを、第1の熱交換器と熱接触する下水中へ第1の熱交換器によって移動させるためには、第1の熱交換媒体と下水の間に熱勾配が存在する必要がある。換言すれば、これらの間に熱平衡が存在してはならず、下水は、熱交換媒体よりも低い温度を示す必要がある。熱交換器組立体の適切な動作中、熱源により加熱された第1の熱交換媒体が、温水送り込みラインによって第1の熱交換器に継続的に供給される。第1の熱交換器では、第1の熱交換媒体が、冷却された状態の冷水戻りラインを介して熱源に戻るために、第1の熱交換器と接触する下水の温度に応じて冷却される。このようにして、熱源からの熱エネルギーが下水へ移動する。第1の熱交換媒体が熱源から第1の熱交換器へ循環して戻る流れは、ポンプによって実現されることが好ましい。さらに、熱交換媒体は、実質的に水で構成されることが好ましい。或いは、油、又は熱容量が十分に大きな異なる流体を第1の熱交換媒体として使用することもできる。
【0013】
熱交換器組立体は、冷水送り込みライン又は冷水前進配管、及び温水戻りライン又は温水戻り配管を備え、ヒートシンクにより冷却された第2の熱交換媒体を、冷水送り込みラインによって少なくとも1つの第2の熱交換器へ供給することができ、少なくとも1つの第2の熱交換器により加熱された第2の熱交換媒体を、温水戻りラインによってヒートシンクへ供給できることが好ましい。
【0014】
熱エネルギーを少なくとも1つの第2の熱交換器からヒートシンクへ移動させるために、第2の熱交換媒体を第2の熱交換器内で加熱し、温水戻りライン又は温水戻り配管によってヒートシンクへ供給する。下水に含まれる熱エネルギーを利用するには、下水と第2の熱交換媒体の間に熱勾配が存在する必要がある。すなわち、下水は、第2の熱交換媒体よりも高い温度を示す必要がある。この理由で、熱交換器組立体の適切な動作中、第2の熱交換媒体は、ヒートシンクによって下水の温度よりも低い温度に冷却される。この冷却された第2の熱交換媒体が、冷水送り込みラインによって第2の熱交換器へ継続的に供給され、この第2の熱交換媒体が第2の熱交換器内で温まり、温水戻りラインを介してヒートシンクへ戻る。第2の熱交換媒体が熱源から第2の熱交換器へ継続的に循環して戻る流れは、ポンプによって実現されることが好ましい。第2の熱交換媒体は、実質的に水又は水溶液で構成される。或いは、油、又は熱容量が十分に大きな流体を使用することもできる。
【0015】
熱交換器組立体は、第1の熱交換器の下流かつ第2の熱交換器の上流に配置された第1の温度センサに、及び/又は第2の熱交換器の下流に配置された第2の温度センサに接続された制御ユニットを備えることが好ましい。
【0016】
この制御ユニットによって、下水管路内の下水の下水温を所定の範囲内に保持できるという利点がある。このようにして、過度に冷たい又は過度に熱い下水が、第2の熱交換器の下流から下水管路内へ移送されることが有利に防がれる。さらに、第1の温度センサに接続された制御ユニットにより、下水が第1の熱交換器によって所定の下水温を超えるのを阻止できるという利点がある。
【0017】
熱交換器組立体は、下水管路に油圧接続可能な第2の下水管路と、下水を第2のヒートシンクと熱接触させるように構成された少なくとも1つの第3の熱交換器とを備え、下水管路及び第2の下水管路を通るそれぞれの下水流量を制御できることが好ましい。
【0018】
熱交換器組立体は、第4の熱交換器を有する第3の下水管路、第5の熱交換器を有する第4の下水管路などを備えることもでき、この第3及び第4の下水管路は、各々が下水管路に接続可能であることが理解される。従って、少なくとも1つの関連するヒートシンクと熱接触するように構成された複数の熱交換器に下水を入れ込んで、これを少なくとも1つの第1の熱交換器を介して熱源によって加熱し、下水管路を介して供給できるという利点がある。
【0019】
下水管路に油圧接続できる第2の下水管路は、油圧接続が少なくとも時々中断されることはあるが、必要に応じてこれを確立できることを意味する。詳細には、下水管路と第2の下水管路との間の油圧接続は、それぞれの下水管路内の下水量に依存することができる。
【0020】
熱交換器組立体は、第1の熱交換器からの下水を第2の熱交換器及び第3の熱交換器に所定の割合で流すことができる少なくとも1つの遮断装置を備えることが好ましい。換言すれば、この少なくとも1つの遮断装置は、下水管路と第2の下水管路の間の油圧接続を制御することができる。ここで、この少なくとも1つの遮断装置は、下水管路内又はその上に形成してもよく、或いは第2の下水管路内又はその上に形成してもよい。具体的には、この少なくとも1つの遮断装置は、下水管路内を第2の熱交換器へ向けて流れる下水の量を制御するように構成された、堰又はスライダ、或いはスライドゲート又はゲート弁を備えることができる。下水管路と第2の下水管路の間の油圧接続を、少なくとも1つの遮断装置の上流に配置して、下水管路内の少なくとも1つの遮断装置が閉じているときに、下水管路からの下水が第2の下水管路内に流れ込むようにすることができる。具体的には、下水管路内の少なくとも1つの遮断装置を閉じることで、下水管路からの下水が、第2の下水管路の傾斜に逆らって第2の下水管路内を第3の熱交換器へ向かって上昇するようにすることができる。第1の熱交換器を第2の下水管路内の第3の熱交換器よりも高いレベルに配置して、第1の熱交換器からの下水が、下水管路内を下水の流れ方向Fに沿って少なくとも1つの遮断装置へ流れ、その後第2の下水管路の傾斜に逆らって第3の熱交換器へ流れることにより、熱エネルギーが第1の熱交換器から第2の熱交換器に移動できるようにすることが好ましい。
【0021】
さらに、少なくとも1つの遮断装置を第2の下水管路内に配置して、少なくとも1つの遮断装置が閉じているとき又は部分的に閉じているときに、第1の熱交換器の方向からの下水量全体が下水管路内に残るようにすることが好ましい。
【0022】
熱交換器組立体は、第1の熱交換器の下流に配置された第1の流量制御装置を備えることが好ましい。この第1の流量制御装置を、堰、排砂弁、又はスロットルにすることができると好ましい。第1の流量制御装置は、下流へ流れる下水の量を制御するように構成される。具体的には、第1の流量制御装置は、この第1の流量制御装置の上流の下水管路内の貯留下水を堰き止めるように構成される。この目的のために、第1の流量制御装置は、下水管路の流れ断面に対して、好ましくは約0%〜約100%の範囲で相対的流れ断面を変更することができる。具体的には、第1の流量制御装置の相対的流れ断面は、少なくともいくつかの部分で無限に調整可能である。
【0023】
第1の流量制御装置は、下水管路内の第1の熱交換器の直ぐ下流に配置されることが好ましい。第1の流量制御装置は、第1の熱交換器から100m未満離れて配置されることが好ましく、この距離は50m未満であることがさらに好ましく、10m未満であることが特に好ましい。
【0024】
この第1の流量制御装置によって、第1の熱交換器の領域内の下水管路内で貯留下水を堰き止めることができるという利点がある。第1の熱交換器によって熱源から下水へ移動できる熱エネルギー量は、第1の熱交換器と下水の接触時間、及び実質的に下水量に依存するので、下水管路内の下水を第1の熱交換器の領域内で堰き止めることにより、下水へ移動できる熱エネルギーを有利に増加させることができる。具体的には、熱源に蓄積する熱エネルギーを第1の熱交換器を介して下水に消散させるために、第1の流量制御装置によって第1の熱交換器の領域内に十分な量の下水を貯え、下水中に所定の畜熱容量が与えられるようにすることができる。詳細には、熱源が動作していないときに、冷たい下水が加熱されずに第1の熱交換器を過ぎて流れるのを防ぐことができる。第1の流量制御装置によって下水を堰き止めることにより、後で第1の熱交換器を介して熱源によって加熱するために、冷たい下水を貯えることができる。第1の流量制御装置は、堰き止められた下水が所定の量に達した場合、又は貯まった下水が第1の熱交換器によって所定の温度に加熱された場合、下水管路の流れ断面を少なくとも部分的に広げることが好ましい。このようにして、下水管路による排水が確実に行われること、及び見込まれる最大熱エネルギー量を下水によって移送できることを有利に保証することができる。
【0025】
さらに、熱交換器組立体は、第2の熱交換器の下流に配置された第2の流量制御装置を備えることが好ましい。第2の流量制御装置の動作原理は、第1の流量制御装置の動作原理と類似する。しかしながら、第2の流量制御装置は、下水に含まれる熱エネルギーの第2の熱交換器による利用を改善することができる。第2の流量制御装置によって下水管路内の第2の熱交換器の下流に下水を堰き止めることにより、長い接触時間にわたって大量の下水を第2の熱交換器に提供することができる。このようにして、特に所定の下水温に到達するか又はこれを下回るまで、下水に含まれる熱エネルギーを下水から抽出することができる。第2の流量制御装置は、上流に堰き止められた下水が所定の量又は所定の温度に達した場合、下水管路の流れ断面を少なくとも部分的に広げることが好ましい。さらに、第2の流量制御装置は、下水管路内の第2の熱交換器の直ぐ下流に配置されることが好ましい。さらに、第2の流量制御装置は、下水管路内で第2の熱交換器から100m未満離れて配置できることが好ましく、この距離は50m未満であることがさらに好ましく、10m未満であることが特に好ましい。
【0026】
熱交換器組立体は、第3の熱交換器の下流に配置された第3の流れ制御装置を備えることが好ましい。第3の流量制御装置の効果、好ましい実施形態、及び好ましい配置は、第2の流量制御装置のものに対応する。
【0027】
熱交換器組立体は、第1の熱交換器を上回るレベルH1及び/又は第1の熱交換器の領域内の下水温TW1を検出する第1の測定装置を備えることが好ましい。ここで、レベルH1を検出するステップは、具体的には超音波又は水圧測定によって下水管路内の水レベル又は下水レベルを測定するステップを含むことができる。下水温TW1を検出するステップは、具体的には温度センサによって下水温を測定するステップを含む。
【0028】
さらに、第1の測定装置を第1の流量制御装置に接続して、第1の測定装置によって得られたデータに基づいて第1の流量制御装置を制御できるようにすることが好ましい。
【0029】
熱交換器組立体は、第2の熱交換器を上回るレベルH2及び/又は第2の熱交換器の領域内の下水温TW2を検出する第2の測定装置を備えることが好ましい。さらに、熱交換器組立体は、第3の熱交換器を上回るレベルH3及び/又は第3の熱交換器の領域内の下水温TW3を検出する第3の測定装置を備えることが好ましい。
【0030】
レベルH2及びH3を検出するステップは、具体的には超音波又は水圧測定によって下水管路内の水レベル又は下水レベルを測定するステップを含むことができる。それぞれの下水温TW2及びTW3を検出するステップは、具体的には温度センサによって下水温を測定するステップを含むことができる。第2及び第3の測定装置を、関連する第2及び第3の流量制御装置にそれぞれ接続して、それぞれ関連する測定装置から得られたデータに基づいて第2及び第3の流量制御装置を制御できるようにすることが好ましい。
【0031】
方法
本発明の態様は、熱エネルギー移送方法に関し、この方法は、
温かい第1の熱交換媒体を提供するステップと、
下水の流れ方向Fを有する下水管路に配置されて下水と熱接触する第1の熱交換器内に、又はこれを介して温かい第1の熱交換媒体を供給するステップと、
第1の熱交換器によって下水を加熱するステップと、
下水管路内に下水の流れ方向Fに沿って第1の熱交換器から離間して配置されて下水と熱接触する第2の熱交換器内で下水の熱エネルギーによって第2の熱交換媒体を加熱するステップと、
加熱した第2の熱交換媒体をヒートシンクに供給するステップと、
ヒートシンクによって第2の熱交換媒体を冷却するステップと、
を含む。
【0032】
ヒートシンクから離れた熱源からの熱エネルギーを、単純にヒートシンクへ移送できるという利点がある。これにより、熱源からの熱エネルギーを利用して、これまで経済的に利用されていなかった既存のヒートシンクに熱エネルギーを提供できるという利点がある。例えば、印刷機、工作機械、冷却設備、又は化学反応器などの固定機械のような工業プラントの冷却中に上昇し、これまでに環境内に排気又は下水として放出されていなかった熱エネルギーを、ヒートシンク又は熱消費者、例えば住宅に熱エネルギーを提供する熱ポンプに移送することができる。廃熱を生み出す工業プラントと暖房に熱を必要とする住宅地域がいずれも下水システム又は下水管路に接続されるので、本発明による方法を利用して、下水管路内の下水を介して熱源からヒートシンクへ単純かつ経済的に熱エネルギーを移送することができる。上述したように、本発明による方法を実施するために必要な熱交換器組立体は製造も容易である。ここで、すでに貯まった下水は、熱エネルギー搬送媒体として有利に使用され、具体的には、熱源の熱エネルギーをヒートシンクへ移送するために、熱源により加熱された下水がさらに下水管路に導入されることはない。
【0033】
温かい第1の熱交換媒体を提供するステップは、第1の熱交換媒体を熱源によって加熱するステップを含むことができ、この加熱された第1の熱交換媒体は、少なくとも部分的に第1の熱交換器に供給される。
【0034】
この方法は、
下水管路内の第1の熱交換器の下流に配置された第1の温度センサによって下水温T1を測定するステップと、
測定した下水温T1が、所定の最大値T1,maxを超えた場合、加熱された第1の熱交換媒体を第1の熱交換器に供給するのを中断又は低減するステップと、
をさらに含むことが好ましい。
【0035】
下水温T1は、第1の熱交換器の下流の所定の最大値T1,maxを超えないことが有利であり、これにより下水温T1が過度に高いことによって下水の蒸発率が所定値を超えることが有利に防がれる。通常、下水管路に流入する家庭用及び工業用下水の下水温は約8℃〜約20℃であり、通常、下水管路内への入口点における下水温は35℃を超えることはない。第1の熱交換器の下流で下水温T1を制御することにより、下水を加熱することによって過度の臭気が生じることが有利に防がれる。さらに、熱源から下水に消散する熱エネルギーを、下水量に応じて制御することができる。第1の熱交換器による下水への熱エネルギー消散により、下流の下水温T1は約8℃〜約60℃であることが好ましい。第1の熱交換器の下流の最大下水温T1,maxは、約20℃〜約60℃であることが好ましく、約25℃〜約40℃であることがさらに好ましく、約30℃であることが特に好ましい。
【0036】
この方法は、
下水管路内の第2の熱交換器の下流に配置された第2の温度センサによって下水温T2を測定するステップと、
測定した下水温T2が、所定の最大値T2,maxを超えた場合、加熱された第1の熱交換媒体を第1の熱交換器に供給するのを中断又は低減するステップと、
をさらに含むことが好ましい。
【0037】
下水温T2が、第2の熱交換器の下流の所定の最大値T2,maxを超えて、最終的に下水処理プラント又は生物生息空間に達することが有利に防がれる。これにより、過度に熱い下水が下水処理プラント又は生物生息空間に作用することによって下水処理プラント又は生物生息空間の微小動物相が悪影響を受ける可能性が有利に防がれる。第2の熱交換器の下流の最大下水温T2,maxは、35℃未満であることが好ましく、25℃未満であることがさらに好ましく、約12℃であることが特に好ましい。
【0038】
この方法は、
下水管路内の第2の熱交換器の下流に配置された第2の温度センサによって下水温T2を測定するステップと、
測定した下水温T2が、所定の最低値T2,minを下回った場合、冷たい第2の熱交換媒体を第2の熱交換器に供給するのを中断又は低減するステップと、
をさらに含むことが好ましい。
【0039】
下水温T2が所定の最低値T2,minを下回った場合、下水からヒートシンクまでの熱エネルギーの移送を中断又は減少させ、これにより過度に冷たい下水が下水処理プラント又は生物生息空間に作用することが防がれるという利点がある。これにより、下水処理プラント又は生物生息空間内の微生物の生物活動が、低い下水温に合わせて減少することが有利に防がれる。最低下水温T2,minは、8℃よりも高いことが好ましく、約25℃であることが好ましい。
【0040】
この方法は、第1の熱交換器の下流に配置された第1の流量制御装置により、下水管路の第1の熱交換器の領域内を通る下水の流れを抑制し又は堰き止めるステップを含むことが好ましい。このステップにより、第1の熱交換器の領域内に所定量の冷却下水が提供されて、熱源が、第1の熱交換器によって所定の最低量の熱エネルギーを下水に消散できるようになるという利点がある。例えば、これにより、工業過程中に生じた熱エネルギーの消散を確実にして、工業過程を中断なく実施することが有利に保証されるようにすることができる。さらに、所定の下水温に達するまで下水を第1の熱交換器の領域内で有利に堰き止めて、第2の熱交換器におけるその後の熱交換効率が高まるようにすることが有利である。具体的には、必ずしも下水の流れを第1の流量制御装置によって完全に堰き止める必要はなく、下水の流れを第1の熱交換器の領域内の単位時間当たりの所定の下水流量に減少させれば十分と考えられる。さらに、下水管路内の第1の熱交換器の領域内の下水の流れを抑制し又は堰き止めるステップは、第1の流量制御装置によって一時的にその全体を中止できることが好ましい。具体的には、流量制御装置を突然開くことにより、第1の熱交換器の領域内で堰き止められた下水が、下水管路の下水の流れ方向Fに沿って急激なフラッシングの形で流れ出て、第1の熱交換器の領域内に沈降した粒子が、下水管路の下水の流れ方向Fに沿ってさらに移送されるようにすることができる。このようにして、同時に下水管路の洗浄を行えるという利点がある。
【0041】
この方法は、下水が第1の熱交換器を上回る所定のレベルH1を有する場合、及び/又は下水が第1の熱交換器の領域内で所定の下水温TW1を有する場合に第1の流量制御装置を開くステップを含むことが好ましい。下水管路の主な目的は排水であるため、第1の熱交換器を上回る所定のレベルH1に達した場合、下水管路内の下水の堰き止めを第1の流量制御装置によって中止して、下水が下水管路内で過度に堰き止められることが有利に防がれるようにすることができる。これには、下水管路及び第1の流量制御装置による適切な排水を確実にすることができるという利点がある。この結果、一方では、第1の熱交換器による熱源から下水への熱エネルギーの消散効率が低下し、他方では、下水温の上昇によって不快な臭気が生じる可能性があるので、第1の熱交換器の領域内の下水は、所定の下水温TW1を超えるべきでないことが好ましい。従って、第1の熱交換器の領域内の所定の下水温TW1に達し又はこれを超えた場合、第1の流量制御装置が、下水管路の下水の流れ方向Fに沿って下水を排水するようにすることができる。ここで、下水温TW1は、第1の熱交換器における熱交換効率、第1の熱交換器の下流に配置された第2の熱交換器における熱交換効率、第1の熱交換器と第2の熱交換器の間の距離、及び第1の熱交換器と第2の熱交換器の間の途中における下水の熱損失、並びに局所的公式要件に応じて選択される。下水温TW1を適切に選択することにより、第1の熱交換器及び第2の熱交換器が、所与の条件にとって最適な範囲で動作し、熱源から第1の熱交換器、下水、第2の熱交換器を介してヒートシンクへ移送可能な熱エネルギー量が最大になるようにすることができる。
【0042】
この方法は、
第2の熱交換器を介してヒートシンクにより抽出された熱エネルギーE1を検出するステップと、
第3の熱交換器を介して第2のヒートシンクにより抽出された熱エネルギーE2を検出するステップと、
第2の熱交換器及び第3の熱交換器へ流れる下水の量を、第2の熱交換器を介してヒートシンクに所定量の熱エネルギーW1を提供でき、第3の熱交換器を介して第2のヒートシンクに所定量の熱エネルギーW2を提供できるように制御するステップと、
を含むことが有利である。
【0043】
関連するヒートシンクにおいて必要とされる熱エネルギーに応じて、第2の熱交換器及び第3の熱交換器に提供される下水量を制御できることが有利である。従って、関連するヒートシンクが増加した熱エネルギー量E1を抽出する場合、第2の熱交換器に増加した下水量を提供することができる。
【0044】
具体的には、この方法は、第1の熱交換器を介して熱源により消散された熱エネルギーEA1を検出するステップを含むことが好ましい。提供できる熱エネルギーEA1を、必要なエネルギーE1+E2の関係にすることができれば有利である。提供できる熱エネルギーEA1が、必要なエネルギーE1+E2よりも少ない場合、熱エネルギーEA1を、所定の比率に基づいて第2の熱交換器と第3の熱交換器に分配し、この必要な熱エネルギーの割合をヒートシンクと第2の熱交換器にそれぞれ提供できるようにすることができる。提供される熱エネルギーの割合は、両ヒートシンクで同じであることが好ましい。依然として必要な熱エネルギーを、それぞれのヒートシンクの場所で他の手段により生成し、この場所に提供する必要がある。或いは、第2の熱交換器及び第3の熱交換器へ流れる下水の量の制御を、抽出した熱エネルギーE1が第2の熱交換器を介してヒートシンクに実質的に完全に提供され、又は抽出した熱エネルギーE2が第3の熱交換器を介して第2のヒートシンクに実質的に完全に提供されるようなものにすることができる。この結果、残りのヒートシンクにほんのわずかの熱エネルギーを提供することができ、又は全く提供できないようになると考えられる。
【0045】
関連する流量制御装置により、第2の熱交換器の領域内又は第3の熱交換器の領域内に特定量の温かい下水を堰き止め、この堰き止められた下水に含まれる熱エネルギーが、関連するヒートシンクに熱エネルギーを提供するのに十分なものであることが好ましいので、本方法は、第2の熱交換器の上方に位置する下水中に存在する熱エネルギーEA2を測定するステップ、及び/又は第3の熱交換器の上方に位置する下水中に存在する熱エネルギーEA3を測定するステップを含むことが好ましい。このようにして、ヒートシンク及び第2の熱交換器に提供できる熱エネルギーを、改善された方法で推定できるという利点が得られる。
【0046】
前述の本発明の態様についての説明は、それぞれの態様に限定されるものではない。具体的には、熱交換器組立体に関する説明は、熱エネルギー移送方法にも当てはまり、逆もまた同様である。
【0047】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】熱交換器組立体の実施形態の斜視図である。
【図2】熱交換器組立体の別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、熱交換器組立体1の好ましい実施形態の斜視図である。熱交換器組立体1は、3つの第1の熱交換器11を備え、これらの各々は、温水送り込みライン又は温水前進配管15、及び冷水戻りライン又は冷水戻り配管17を有する。熱交換器組立体1は、互いに隣接して又は互いに離間して1つ、2つ、4つ、5つ、又はそれよりも多くの第1の熱交換器11を有することもできると理解される。第1の熱交換器11、温水送り込みライン15、及び冷水戻りライン17は、第1の熱交換媒体19で満たされる。第1の熱交換媒体19は、熱源13と直接的に又は間接的に熱接触する。このような熱源13は、工作機械、印刷機、又は発電用プラントなどの、冷却された工業的に使用される機械とすることができる。さらに、例えば熱源は、発熱化学反応を冷却する装置などの化学反応器を含むこともできる。さらに、熱源は、冷却ユニット又は空調システムの冷却フィンなどの、熱力学サイクル又は熱交換器の一部であってもよい。
【0050】
熱源13が第1の熱交換媒体19と熱接触することにより、熱エネルギーが熱源13から第1の熱交換媒体19へ移動し、すなわち第1の熱交換媒体19が熱源13によって加熱される。第1の熱交換媒体19は、温水送り込みライン15を介して、例えば循環ポンプ(図示せず)によって第1の熱交換器11に供給される。第1の熱交換器11は、下水管路5内を流れる下水3と熱接触するように下水管路5内に導入される。例えば、第1の熱交換器11を、下水管路5の底部に載っただけのようにして、又はコンクリートに埋め込むことによって下水管路5に固定接続されるようにして既存の下水管路5内に導入することができる。或いは、下水管路5が、熱交換器として形成された壁を有することもできる。第1の熱交換媒体19が第1の熱交換器11を介して下水3と熱接触することにより、第1の熱交換媒体19の熱エネルギーが部分的に下水3へ移動し、すなわち第1の熱交換器11の領域内で、加熱された第1の熱交換媒体によって下水3が加熱される。同時に、下水3への熱エネルギーの消散により、第1の熱交換媒体19は第1の熱交換器11内で冷却される。冷却された熱交換媒体19は、冷水戻りライン17を介して熱源13に戻される。
【0051】
下水管路5の傾斜に応じて、加熱された下水3は、下水の流れ方向Fに沿って下水管路5内を流れる。数百メートルから数キロメートルの流路を移動すると、下水3は、少なくとも1つの第2の熱交換器21に到達する。第2の熱交換器21は、下水3と熱接触するようにして下水管路5内に導入される。第2の熱交換器21内には第2の熱交換媒体29が存在し、これが下水3によって加熱される。第2の熱交換器21は、温水戻りライン又は温水戻り配管27、及び冷水送り込みライン又は冷水前進配管25によってヒートシンク23に油圧接続される。下水3によって加熱された第2の熱交換媒体29は、好ましくは循環ポンプ(図示せず)によって温水戻りライン27を介してヒートシンク23に供給される。ヒートシンク23は、第2の熱交換媒体29と熱接触して、第2の熱交換媒体29内に貯えられた熱エネルギーが、ヒートシンク23によって第2の熱交換媒体29から部分的に抽出されるようになる。ヒートシンク23は、アパートを暖房するための熱ポンプの一部であってもよい。温水戻りライン27内の第2の熱交換媒体29の温度によっては、ヒートシンク23を、外気用ラジエータ又は床暖房システムとして形成することもできる。
【0052】
第2の熱交換媒体29は、ヒートシンク23内でこの第2の熱交換媒体29から熱エネルギーが抽出されることにより冷却される。冷却された第2の熱交換媒体29は、第2の熱交換器21内で下水3によって再び加熱されるために、冷水送り込みライン25を介して第2の熱交換器21に戻される。
【0053】
熱交換器組立体1は、第1の熱交換器11の下流に配置された第1の温度センサ33を備えることが好ましい。第1の温度センサ33は、第1の熱交換器11により加熱された下水3の温度T1を検出する。下水3の蒸発率を制限し、又は不快な臭気を抑えるために、下水温T1は所定の最大値T1,maxを超えないことが好ましく、この温度は、約60℃であることが好ましく、50℃であることがさらに好ましく、40℃であることが特に好ましい。下水温T1を所定の最大値T1,maxに制限するために、第1の温度センサ33を制御ユニット31に接続する。制御ユニット31は、測定した下水温T1が所定の最大値T1,maxを超えた場合、加熱された第1の熱交換媒体19を第1の熱交換器11に供給するのを中断又は低減する。
【0054】
さらに、熱交換器組立体1は、第2の熱交換器21の下流に配置された第2の温度センサ35を備えることが好ましい。第2の温度センサ35は、第2の熱交換器21によって下水3から熱エネルギーが抽出された後の下水管路5内の下水3の温度T2を検出する。通常、下水3は、下水処理プラント(図示せず)の下水管路5によって供給されるので、下水管路5内の下水3の下水温T2は、下水処理プラント内の微生物によって下水3の生物学的浄化が行われるように、約8℃〜約35℃の範囲とすべきことが好ましく、約10℃〜約30℃の範囲とすべきことがさらに好ましく、約25℃とすべきことが特に好ましい。下水温T2が過度に低いと、微生物の活動が低下すると考えられるのに対し、下水温T2が過度に高いと、下水処理プラント内の微生物が死んでしまう。
【0055】
第2の温度センサ35は、測定した下水温T2が所定の最大値T2,maxを超えた場合に、加熱された第1の熱交換媒体19を第1の熱交換器11に供給するのを中断又は低減する制御ユニット31に接続されることが好ましい。このようにして、過度に熱い下水3が下流の下水処理プラントに供給されることが有利に防がれる。さらに、測定した下水温T2が所定の最低値T2,minを下回った場合、例えば、冷たい第2の熱交換媒体29を第2の熱交換器21に供給するのを中断又は低減することにより、下水3からの熱抽出を第2の熱交換器21によって中断又は減少することが好ましい。第2の熱交換器21による下水3からの熱抽出の中断又は減少は、制御弁などの制御ユニット31によって行うこともできる。或いは、第2の温度センサ35に接続されて熱抽出の中断又は減少を制御する別の制御ユニットを設けてもよい。このようにして、過度に冷たい下水3が下水処理プラントに作用するのを有利に防ぐ。
【0056】
下水管路5内に1又はそれ以上の第1の熱交換媒体11を互いに離間して配置することができ、又は下水管路5内に1又はそれ以上の第1の熱交換器11を互いに接続して配置することができ、この場合、耐引張接続構成及び圧密接続構成により、個々の熱交換器の端部領域において複数の第1の熱交換媒体11の接続を確立できることが好ましいと理解される。同様に、下水管路5内に1又はそれよりも多くの第2の熱交換器21を互いに離間して配置すること又は互いに接続することもできる。
【0057】
図2は、熱交換器組立体1の好ましい実施形態の斜視図である。熱交換器組立体1は、2つの第1の熱交換器11を備え、これらの各々は、温水送り込みライン又は温水前進配管15、及び冷水戻りライン又は冷水戻り配管17を有する。熱交換器組立体1は、互いに隣接して又は互いに離間して1つ、3つ、4つ、5つ、又はそれよりも多くの第1の熱交換器を有することもできると理解される。図1に示す実施形態に対応して、第1の熱交換器11には、熱源13によって加熱された暖かい熱交換媒体19が温水送り込みライン15を介して提供される。第1の熱交換器11は、下水管路5内を流れる下水3と熱接触するようにして下水管路5に導入される。熱交換器11は、図1で説明したような形で下水管路5内に導入することができる。熱交換器11によって下水3が加熱され、冷却された熱交換媒体19が、冷水戻りライン17を介して熱源13に戻される。
【0058】
第1の熱交換器11の下流には、下水管路5の下水の流れ方向Fに沿って流れる下水の量を制御できる第1の流量制御装置37が配置される。具体的には、流量制御装置37によって流量制御装置37の上流に下水を堰き止めて、第1の熱交換器11の領域内に増加した下水量を提供できるようにすることができる。或いは、これにより、下水3に消散できる熱エネルギー量EA1を増加させることができる。図示の熱交換器組立体1は、第1の熱交換器11を上回るレベルH1及び/又は第1の熱交換器11の領域内の下水温TW1を検出する第1の測定装置37aをさらに備える。第1の測定装置37aを第1の流量制御装置37に接続して、下水3が第1の熱交換器11を上回る所定のレベルH1を有する場合、及び/又は下水3が第1の熱交換器11の領域内で所定の下水温TW1を有する場合に第1の流量制御装置37を開くことができるようにする。
【0059】
下水管路5の傾斜に応じて、加熱された下水3が、下水の流れ方向Fに沿って下水管路5内を流れる。第1の熱交換器11の下流には、少なくとも1つの第2の熱交換器21が配置される。この第2の熱交換器21は、下水3と熱接触するようにして下水管路5に導入される。この第2の熱交換器21に、冷水送り込みライン又は冷水前進配管25を介して冷たい熱交換媒体29を供給する。熱交換媒体29は、下水3によって加熱され、温水戻りライン27を介してヒートシンク23に供給され、このヒートシンクが、貯えられた熱エネルギーを第2の熱交換媒体29から少なくとも部分的に抽出する。その後、冷却された熱交換媒体29が、冷水送り込みライン25を介して第2の熱交換器21に供給される。
【0060】
図2に示す熱交換器組立体1は、下水管路5に油圧接続された第2の下水管路39をさらに備える。下水管路5と第2の下水管路39の油圧接続は、下水管路5内の第1の熱交換器11と第2の熱交換器21の間に配置された接続シャフト53によって確立される。第2の下水管路39内には、第2の下水管路39内を流れる下水3と熱接触するようにされた第3の熱交換器41が配置される。第2の熱交換器21に対応して、第3の熱交換器41には、冷水送り込みライン又は冷水前進配管45を介して冷たい熱交換媒体41、具体的には冷水49が提供され、この冷たい熱交換媒体49が、第3の熱交換器41を介して下水3により加熱される。この加熱された第3の熱交換媒体49は、温水戻りライン又は温水戻り配管47を介して、好ましくは循環ポンプ(図示せず)によって第2のヒートシンク43に供給される。第2のヒートシンク43は、第3の熱交換媒体49と熱接触し、この第3の熱交換媒体49に貯えられた熱エネルギーが、第2のヒートシンク43によって第3の熱交換媒体49から部分的に抽出されるようになる。この結果、冷却された第3の熱交換媒体49が、下水3によって再び第3の熱交換器41で加熱されるために、冷水送り込みライン45を介して第3の熱交換器41に戻される。
【0061】
図2に示す第2の下水管路39は、第2の下水管路39内の下水の流れ方向が第3の熱交換器41から下水管路5に向かうような傾斜を有する。第1の熱交換器11によって加熱された下水3を第3の熱交換器41に供給するために、下水管路5内のシャフト53の下流に遮断装置55が配置される。遮断装置55を少なくとも部分的に閉じることにより、第1の熱交換器11の方向からの所定の割合の下水3を堰き止めて、この下水がシャフト53を介して第2の下水管路41の傾斜に反して上昇し、第3の熱交換器41へ流れるようにすることができる。第1の熱交換器11は、第3の熱交換器41よりも高い海水面レベルに存在して、下水3が、重力のみによって第1の熱交換器11から第3の熱交換器41に流れるようになることが好ましい。或いは、下水をより高いレベルに汲み上げるために、下水管路5に下水汲み上げシステムを接続して、下水が第2の下水管路5の傾斜に反して第3の熱交換器41へ向けて流れるようにすることもできる。
【0062】
第3の熱交換器41へ流れた下水3を第3の熱交換器41の領域内に保持するために、熱交換器組立体1は、第2の下水管路39の第3の熱交換器41の領域内を通る下水の流れを抑制し又は堰き止める第3の流量制御装置51を備え、ここで再び下水3によって加熱することができる。これにより、下水3が第3の熱交換器41と接触する時間が有利に延び、下水3から増加した熱エネルギー量を抽出できるようになるという利点が得られる。熱交換器組立体1は、第3の熱交換器41を上回るレベルH3、及び/又は第3の熱交換器41の領域内の下水温TW3を検出する第3の測定装置51aを備えることが好ましい。さらに、第3の測定装置51aを第3の流量制御装置51に接続して、下水3が第3の熱交換器41を上回る所定のレベルH3を有する場合、及び/又は下水3が第3の熱交換器41の領域内の所定の下水温TW3に達した場合に、第3の流量制御装置51が少なくとも部分的に開くようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0063】
1 熱交換器組立体
3 下水
5 下水管路
11 第1の熱交換器
13 熱源
15 温水送り込みライン又は温水前進配管
17 冷水戻りライン又は冷水戻り配管
19 第1の熱交換媒体
21 第2の熱交換器
23 ヒートシンク
25 冷水戻りライン又は冷水前進配管
27 温水戻りライン又は温水戻り配管
29 第2の熱交換媒体
31 制御ユニット
33 第1の温度センサ
35 第2の温度センサ
37 第1の流量制御装置
39 第2の下水管路
41 第3の熱交換器
43 第2のヒートシンク
45 冷水送り込みライン又は冷水前進配管
47 温水戻りライン又は温水戻り配管
49 第3の熱交換媒体
51 第3の流量制御装置
37a 第1のレベルの測定装置
51a 第3のレベルの測定装置
53 接続シャフト
55 遮断装置
F 下水の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水管路(5)内に導入するための熱交換器組立体(1)であって、
熱源(13)を下水(3)と熱接触させるように構成された少なくとも1つの第1の熱交換器(11)と、
前記下水(3)をヒートシンク(23)と熱接触させるように構成された少なくとも1つの第2の熱交換器(21)と、を備え、
前記少なくとも1つの第2の熱交換器(21)が、前記下水管路(5)内の下水の流れ方向Fに沿って下流に配置され、前記少なくとも1つの第1の熱交換器(11)から離間されていることを特徴とする熱交換器組立体(1)。
【請求項2】
温水送り込みライン(15)及び冷水戻りライン(17)を備え、前記熱源(13)により加熱された第1の熱交換媒体(19)を前記温水送り込みライン(15)によって前記少なくとも1つの第1の熱交換器(11)に供給することができ、前記少なくとも1つの第1の熱交換器(11)により冷却された前記第1の熱交換媒体(19)を前記冷水戻りライン(17)によって前記熱源(13)に供給することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器組立体(1)。
【請求項3】
冷水送り込みライン(25)及び温水戻りライン(27)を備え、前記ヒートシンク(23)により冷却された第2の熱交換媒体(29)を前記冷水送り込みライン(25)によって前記少なくとも1つの第2の熱交換器(21)に供給することができ、前記少なくとも1つの第2の熱交換器(21)により加熱された前記第2の熱交換媒体(29)を前記温水戻りライン(27)によって前記ヒートシンク(23)に供給することができる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱交換器組立体(1)。
【請求項4】
前記第1の熱交換器(11)の下流かつ前記第2の熱交換器(21)の上流に配置された第1の温度センサ(33)及び/又は前記第2の熱交換器(21)の下流に配置された第2の温度センサ(35)に接続された制御ユニット(31)を備える、ことを特徴とする請求項1から請求項3の1項に記載の熱交換器組立体(1)。
【請求項5】
前記下水管路(5)に油圧接続可能な第2の下水管路(39)と、
前記下水(3)を第2のヒートシンク(43)と熱接触させるように構成された少なくとも1つの第3の熱交換器(41)と、を備え、
前記下水管路(5)及び前記第2の下水管路(39)内のそれぞれの下水流量が制御可能である、ことを特徴とする請求項1から請求項4の1項に記載の熱交換器組立体(1)。
【請求項6】
前記第1の熱交換器(11)の方向からの下水が、前記第2の熱交換器(21)及び前記第3の熱交換器(41)へ所定の比率で流れるようにすることができる少なくとも1つの遮断装置を(55)さらに備える、ことを特徴とする請求項5に記載の熱交換器組立体(1)。
【請求項7】
前記第1の熱交換器(11)の下流に配置された第1の流量制御装置(37)、及び/又は
前記第2の熱交換器(21)の下流に配置された第2の流量制御装置、及び/又は
前記第3の熱交換器(41)の下流に配置された第3の流量制御装置(51)、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6の1項に記載の熱交換器組立体(1)。
【請求項8】
前記第1の熱交換器(11)を上回るレベルH1及び/又は前記第1の熱交換器(11)の領域内の下水温TW1を検出する第1の測定装置(37a)、及び/又は
前記第2の熱交換器(21)を上回るレベルH2及び/又は前記第2の熱交換器(21)の領域内の下水温TW2を検出する第2の測定装置、及び/又は
前記第3の熱交換器(41)を上回るレベルH3及び/又は前記第3の熱交換器(41)の領域内の下水温TW3を検出する第3の測定装置(51a)、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項7の1項に記載の熱交換器組立体(1)。
【請求項9】
熱エネルギー移送方法であって、
温かい第1の熱交換媒体(19)を提供するステップと、
前記温かい第1の熱交換媒体(19)を、下水の流れ方向Fを有する下水管路(5)内に配置されて前記下水(3)と熱接触する第1の熱交換器(11)内に又はこれを介して供給するステップと、
前記第1の熱交換器によって前記下水(3)を加熱するステップと、
前記下水管路(5)内に前記下水の流れ方向Fに沿って前記第1の熱交換器(11)から離間して配置されて前記下水(3)と熱接触する前記第2の熱交換器(21)内で又はこれを介して、前記下水(3)の前記熱エネルギーによって第2の熱交換媒体(29)を加熱するステップと、
前記加熱した第2の熱交換媒体(29)をヒートシンク(23)に供給するステップと、
前記ヒートシンク(23)によって前記第2の熱交換媒体(29)を冷却するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記下水管路(5)内の前記第1の熱交換器(11)の下流に配置された第1の温度センサ(33)によって前記下水温T1を測定するステップと、
前記測定した下水温T1が所定の最大値T1,maxを超えた場合、前記加熱された第1の熱交換媒体(19)を前記第1の熱交換器(11)に供給するのを中断又は低減するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記下水管路(5)内の前記第2の熱交換器(21)の下流に配置された第2の温度センサ(35)によって前記下水温T2を測定するステップと、
前記測定した下水温T2が所定の最大値T2,maxを超えた場合、前記加熱された第1の熱交換媒体(19)を前記第1の熱交換器(11)に供給するのを中断又は低減するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記下水管路(5)内の前記第2の熱交換器(21)の下流に配置された第2の温度センサ(35)によって前記下水温T2を測定するステップと、
前記測定した下水温T2が、所定の最低値T2,minを下回った場合、冷たい第2の熱交換媒体(29)を前記第2の熱交換器(21)に供給するのを中断又は低減するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項9から請求項11の1項に記載の方法。
【請求項13】
前記下水管路(5)内の前記第1の熱交換器(11)の領域内を通る前記下水の流れを前記第1の流量制御装置(37)によって抑制し又は堰き止めるステップ、及び/又は
前記下水管路(5)内の前記第2の熱交換器(21)の前記領域内を通る前記下水の流れを前記第2の流量制御装置によって抑制し又は堰き止めるステップ、及び/又は
前記第2の下水管路(39)内の前記第3の熱交換器(41)の前記領域内を通る前記下水の流れを前記第3の流量制御装置(51)によって抑制し又は堰き止めるステップ、をさらに含むことを特徴とする請求項9から請求項11の1項に記載の方法。
【請求項14】
前記下水が、前記第1の熱交換器(11)を上回る所定のレベルH1を有する場合、及び/又は前記下水が、前記第1の熱交換器(11)の前記領域内で所定の下水温TW1を有する場合に、前記第1の流量制御装置(37)を開くステップ、及び/又は
前記下水が、前記第2の熱交換器(21)を上回る所定のレベルH2を有する場合、及び/又は前記下水が、前記第2の熱交換器(21)の前記領域内で所定の下水温TW2を有する場合に、前記第2の流量制御装置を開くステップ、及び/又は
前記下水が、前記第3の熱交換器(41)を上回る所定のレベルH3を有する場合、及び/又は前記下水が、前記第3の熱交換器(41)の前記領域内で所定の下水温TW3を有する場合に、前記第3の流量制御装置(51)を開くステップ、をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の熱交換器(21)を介して前記ヒートシンク(23)により抽出された熱エネルギーE1を検出するステップと、
前記第3の熱交換器(41)を介して前記第2のヒートシンク(43)により抽出された前記熱エネルギーE2を検出するステップと、
前記第2の熱交換器(21)及び前記第3の熱交換器(41)へ流れる前記下水量を、前記第2の熱交換器(21)を介して所定の熱エネルギー量W1を前記ヒートシンク(23)に提供でき、前記第3の熱交換器(41)を介して所定の熱エネルギー量W2を前記第2のヒートシンク(43)に提供できるように制御するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項9から請求項14の1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−504741(P2013−504741A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529138(P2012−529138)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005393
【国際公開番号】WO2011/032645
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512022929)ウーリヒ カナルテクニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】