説明

熱交換器

【課題】 熱交換性能の低下を抑制できる熱交換器を提供する。
【解決手段】 内部に触媒反応部15を有する内筒10と、内筒10の外側であって、内筒10との間に、内筒10から排出された触媒反応後の反応ガスが流れる反応ガス流路1を構成するように配置された排気筒20と、排気筒20に設けられ、反応ガス流路1を流れる反応ガスが排出されるガス出口22と、排気筒20の外側であって、排気筒20との間に、温水が流れる温水流路2を構成するように配置された温水筒30とを備え、排気筒20を介して、反応ガスと温水との間の熱交換を行う熱交換器において、反応ガス流路1の内部に、バッフル板40を配置する。このとき、バッフル板40の形状を、反応ガス流路1のガス出口22に近い側の領域1aでの流路断面積が、ガス出口22に遠い側の領域1bでのそれよりも、小さくなる形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器の1つとして、いわゆるバヨネット型熱交換器がある。図8に、この熱交換器の断面図を示す。この熱交換器は、多重管構造であり、例えば、図8に示すように、内側から順に、内筒10、排気筒20、温水筒30が配置されている。
【0003】
内筒10は、内部で燃料と空気とを触媒反応させる筒である。内筒10は、底を有していない円筒であり、一端(図中上側)に、空気入口11および燃料入口12を有し、他端(図中下側)にガス出口13を有している。また、内筒10は、その内部に、混合部14と、触媒反応部15とを有している。
【0004】
混合部14では、空気入口11を介して空気供給部16から供給された空気と、燃料入口12を介して燃料供給部17から供給された燃料とが混合される。そして、混合された混合ガスは、触媒反応部15に供給され、触媒反応部15で触媒反応される。その後、触媒反応後のガス(以下では、反応ガスと呼ぶ)は、ガス出口13から、図中下方向に向かって排出される。
【0005】
排気筒20は、内筒10の外側に配置され、内筒10の外面と排気筒20の内面とにより、環状の反応ガス流路1を構成する筒である。具体的には、排気筒20は、円筒であり、内筒10を流れるガスの下流側(図中下側)に底面21を有している。また、排気筒20は、内筒10を流れるガスの上流側(図中上側)に、1つのガス出口22を有している。
【0006】
このため、内筒10のガス出口13から排出された反応ガスは、図中矢印で示すように、排気筒20の底面21で折り返して、反応ガス流路1を図中上方向に向かって流れる。そして、反応ガスは、図中実線および破線の矢印で示すように、ガス出口22から外部に排出されるようになっている。
【0007】
温水筒30は、排気筒20の外側に配置され、排気筒20の外面と温水筒30の内面とにより、環状の温水流路2を構成する筒である。具体的には、温水筒30は、排気筒20と同様に、円筒であり、内筒10を流れるガスの下流側(図中下側)に底面31を有している。また、温水筒30は、図中下側に熱媒体としての水を温水流路2に導く温水入口32を有し、図中上側に温水流路内の温水を外部へ導く温水出口33を有している。
【0008】
このため、温水入口32から温水筒30に供給された水は、反応ガス流路1を流れる反応ガスと同様に、図中下側から上方向に向かって、温水流路2を流れ、温水出口33から外部に排出される。このとき、排気筒20を介して、反応ガス流路内の反応ガスと、温水流路内の水との間で熱交換が行われる。
【0009】
この熱交換器では、このように、反応ガス流路1と温水流路2とにより熱交換部が構成されており、触媒反応時に生成する熱により、温水流路内を流れる水が加熱されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−33009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記した熱交換器では、排気筒20にガス出口22が1カ所にのみ設けられていたため、反応ガス流路1を流れる反応ガスは、ガス出口22で集約されて、熱交換器の外部に排出されるようになっていた。
【0011】
このことから、反応ガス流路1において、ガス出口22から近い側(図中左側)の部分1aでは、反応ガスが流れやすく、ガス出口22から遠い側(図中右側)の部分1bでは、
反応ガスが流れ難くなり、反応ガス流路1において、反応ガスの偏流が生じていた。
【0012】
このため、反応ガス流路1のうちのガス出口22から近い側の部分1aでは、大量のガスが流れることから、温水流路2を流れる水との熱交換が不十分のまま、反応ガスが出口から排出されていた。この結果、熱交換器全体として、熱交換性能が低下していることがわかった。
【0013】
なお、このような問題は、排気筒20に設けられたガス出口22の数が1つの場合に限らず、複数配置されている場合であっても、反応ガス流路1を流れる反応ガスが集約してガス出口から排出される構成の熱交換器において、同様に生じる問題である。
【0014】
本発明は、上記点に鑑み、熱交換性能の低下を抑制できる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1の熱媒体流路(1)内に、バッフル板(40)が配置されており、バッフル板(40)は、第1の熱媒体流路(1)における出口(22)に近い側の領域(1a)の流路断面積を、出口(22)に遠い側の領域(1b)の流路断面積よりも、小さくする形状であることを特徴としている。
【0016】
これにより、第1の熱媒体流路を流れる第1の熱媒体が、集約して、排出されるように、第1の熱媒体の出口が、第2の筒に設けられている場合において、第1の熱媒体流路内における第1の熱媒体の偏流を抑制することができる。
【0017】
この結果、バッフル板を有していない熱交換器と比較して、第1の熱媒体が第2の熱媒体と熱交換を十分に行わないまま排出されるのを低減することができる。したがって、本発明によれば、第1の熱媒体流路を流れる第1の熱媒体が、集約して、排出されるように、第1の熱媒体の出口が、第2の筒に設けられている場合であっても、熱交換器の熱交換性能が低下するのを抑制することができる。
【0018】
バッフル板の形状としては、例えば、バッフル板の幅が、出口に近い側の領域では大きく、出口に遠い側の領域では小さい形状とすることができる。もしくは、バッフル板の形状を、出口に近い側の領域にのみ存在する形状とすることができる。
【0019】
また、バッフル板の形状を、板に複数の穴を有する形状とし、出口に近い側の領域では、出口に遠い側の領域よりも、穴を小さくしたり、穴の数を少なくしたりすることもできる。
【0020】
請求項1に記載の発明に関して、請求項2に示すように、第1の熱媒体流路(1)の内部には、第2の筒(20)に設けられたフィン(50)が存在しており、フィン(50)を、第1の熱媒体流路(1)のうちの出口に近い側の領域(1a)の方が、出口に遠い側の領域(1b)よりも、フィンピッチが狭くなるように、配置することが好ましい。
【0021】
これにより、請求項1に記載の発明と比較して、第1の熱媒体流路内における第1の熱媒体の偏流をより抑制することができる。
【0022】
なお、請求項3に示すように、請求項2に記載の発明を、請求項1に記載の発明と独立して実施することもできる。
【0023】
このようにしても、第1の熱媒体流路を流れる第1の熱媒体が、集約して、排出されるように、第1の熱媒体の出口が、第2の筒に設けられている場合において、第1の熱媒体流路内における第1の熱媒体の偏流を抑制することができる。
【0024】
この結果、このようなフィンピッチでフィンが配置されていない熱交換器と比較して、第1の熱媒体が第2の熱媒体と熱交換を十分に行わないまま排出されるのを低減することができる。したがって、本発明によれば、第1の熱媒体流路を流れる第1の熱媒体が、集約して、排出されるように、第1の熱媒体の出口が、第2の筒に設けられている場合であっても、熱交換器の熱交換性能が低下するのを抑制することができる。
【0025】
また、請求項1ないし3に記載の発明に関して、請求項4に示すように、第1の筒(10)と第2の筒(20)とを、第1の熱媒体流路(1)における出口に近い側の領域(1a)の方が、出口に遠い側の領域(1b)よりも、流路断面積が小さくなるような形状および配置とすることが好ましい。
【0026】
これにより、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発明と比較して、偏流をより抑制することができる。
【0027】
なお、請求項5に示すように、請求項4に記載の発明を、請求項1ないし3に記載の発明と独立して、実施することもできる。
【0028】
これにより、第1の熱媒体流路を流れる第1の熱媒体が、集約して、排出されるように、第1の熱媒体の出口が、第2の筒に設けられている場合において、第1の熱媒体流路内における第1の熱媒体の偏流を抑制することができる。
【0029】
この結果、第1の筒と第2の筒とが、第1の熱媒体流路の流路断面積が均等となる形状および配置となっている熱交換器と比較して、第1の熱媒体が第2の熱媒体と熱交換を十分に行わないまま排出されるのを低減することができる。
【0030】
したがって、本発明によれば、第1の熱媒体流路を流れる第1の熱媒体が、集約して、排出されるように、第1の熱媒体の出口が、第2の筒に設けられている場合であっても、熱交換器の熱交換性能が低下するのを抑制することができる。
【0031】
また、請求項4、5に記載の発明に関して、第1の熱媒体流路のうちの出口に近い側の領域(1a)の方の流路断面積を、出口に遠い側の領域(1b)よりも小さくする手段として、例えば、第1の筒もしくは第2の筒の形状を楕円形状にする手段を採用することができる。
【0032】
また、その他には、例えば、請求項6に示すように、第1の筒(10)の中心(10a)を、第2の筒(20)の中心(20a)に対して、出口(22)側に偏心させる手段を採用することもできる。
【0033】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態における熱交換器の断面図を示す。また、図2に図1中のA−A線方向における熱交換器の断面図を示す。なお、図2では、内筒10の内側を省略している。また、図1、2では、図8に示す熱交換器と同様の構成部には、図8と同一の符号を付している。
【0035】
以下では、図8の熱交換器と異なる点を主に説明する。また、本実施形態では、この熱交換器を、車両に搭載された燃料電池システムにおける燃料電池スタック等の暖機手段として用いる場合を例として説明する。
【0036】
本実施形態の熱交換器は、図8に示す熱交換器と同様に、第1の筒としての内筒10と、第2の筒としての排気筒20と、第3の筒としての温水筒30とを備えている。そして、内筒10と排気筒20とにより、第1の熱媒体流路としての反応ガス流路1が構成され、排気筒20と温水筒30とにより、第2の熱媒体流路としての温水流路2が構成されている。本実施形態では、反応ガスが第1の熱媒体に相当し、温水が第2の熱媒体に相当する。
【0037】
なお、内筒10、排気筒20、温水筒30は、ステンレス等の耐熱性金属により構成されている。また、内筒10、排気筒20、温水筒30は、例えば、断面が真円で、それぞれの直径が異なる円筒であり、同心円状に配置されている。また、本実施形態においても、排気筒20に設けられているガス出口22は、1つである。
【0038】
本実施形態の熱交換器では、反応ガス流路1内にバッフル板40が配置されている。バッフル板40は、反応ガス流路1内のガス流れを整流するためのものである。
【0039】
具体的には、バッフル板40は、図1、2に示すように、1枚の平板であり、ステンレス等の耐熱性金属により構成されている。なお、図2中の斜線の領域がバッフル板40である。バッフル板40の設置箇所は、内筒10の外面であり、ガス出口22の近傍である反応ガス流路1におけるガス流れの下流側、すなわち、ガス出口22と同様の高さの位置である。
【0040】
バッフル板40の形状は、図2に示すように、リング形状であり、その中央に内筒10が配置されている。言い換えると、バッフル板40は、刀剣や釜が有する鍔のような形状である。
【0041】
そして、バッフル板40の幅40aは、各領域で異なっており、連続的に変化している。バッフル板40の幅40aは、バッフル板40のうちのガス出口22に近い部分40bの方が、ガス出口22に遠い部分40cよりも、大きくなっている。言い換えると、バッフル板40の面積が、ガス出口22に近い部分40bの方が、ガス出口22に遠い部分40cよりも、大きくなっている。
【0042】
このため、反応ガス流路1は、バッフル板40が配置されている箇所において、反応ガスの流路断面積が、ガス出口22に近い側の領域1aでは小さく、ガス出口22に遠い側の領域1bでは大きくなっている。
【0043】
また、本実施形態の熱交換器は、燃料電池システムが通常有する冷却水経路と接続されている。この冷却水経路は、燃料電池スタックを所定温度以下に維持するために、冷却水を燃料電池に供給するものである。本実施形態では、この冷却水が温水流路2を流れるようになっている。
【0044】
次に、本実施形態の作動を説明する。空気供給部16、燃料供給部17から内筒10に空気と燃料が供給されることで、混合部14で混合ガスが生成され、この混合ガスが、内筒10の触媒反応部15で触媒反応し、反応ガスが内筒10のガス出口13から排出される。
【0045】
そして、排出された反応ガスは、ガス出口22に向かって、反応ガス流路1を流れる。このとき、排気筒20を介して、この反応ガスと、温水流路2を流れる冷却水との間で熱交換が行われ、冷却水が加熱され、冷却水が温水となる。熱交換後の反応ガスは、ガス出口22から排出され、熱交換後の温水は、冷却水経路を介して、燃料電池スタック内に供給される。
【0046】
このように、燃料電池システムの冷却経路を利用して、燃料電池スタック等が加熱され、燃料電池スタック等の暖機が行われる。
【0047】
次に、本実施形態の特徴を説明する。以上説明したように、本実施形態の熱交換器は、反応ガス流路1の内部に、バッフル板40が配置されている。そして、このバッフル板40の形状は、反応ガス流路1におけるガス出口22に近い側の領域1aの流路断面積を、ガス出口22に遠い側の領域1bの流路断面積よりも小さくする形状となっている。なお、流路断面積とは、ガス流れに対して垂直な方向における反応ガス流路1の断面積を意味する。
【0048】
このように、反応ガス流路1のうち、ガス出口22に近い側の領域1aでのガス流路の大きさを、ガス出口22に遠い側の領域1bよりも小さくすることで、ガス出口22に近い側の領域1aでの反応ガスの流れを抑制することができる。
【0049】
これにより、反応ガス流路1を流れる反応ガスの流れを均等にでき、排気筒20に設けられているガス出口22が1つの場合に生じる反応ガス流路1での反応ガスの偏流を抑制することができる。
【0050】
この結果、バッフル板40を有していない従来の熱交換器と比較して、反応ガスが温水と熱交換を十分に行わないまま排出されるのを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、ガス出口20が1つしか設けられていない場合に生じる熱交換器の熱交換性能の低下を抑制することができる。すなわち、従来よりも熱交換性能を向上させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、バッフル板40の形状において、バッフル板40のガス出口22に近い部分40bの方が、ガス出口22に遠い部分40cよりも、バッフル板40の幅40aが大きい形状とする場合を例として説明した。これに対して、バッフル板40の形状を、ガス出口22に近い部分40bのみが存在して、ガス出口22から離れた側の部分40cが存在しない形状とすることもできる。このようにしても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
また、本実施形態では、バッフル板40を1枚とする場合を例として説明したが、複数枚とすることもできる。また、本実施形態では、バッフル板40の設置箇所を、反応ガス流路1のガス出口22近傍とする場合を例として説明したが、反応ガス流路1内であれば、ガス出口22近傍に限らず、他の位置(高さ)とすることもできる。また、バッフル板40を、内筒10の外面でなく、排気筒20の内面に設置することもできる。
【0053】
(第2実施形態)
図3に、本発明の第2実施形態における熱交換器の断面図を示す。また、図4に図3中のA−A線方向における熱交換器の断面図を示す。なお、図3、4では、図8に示す熱交換器と同様の構成部には、図8と同一の符号を付している。本実施形態では、熱交換器にバッフル板40を設ける代わりに、反応ガス流路1に設けられているフィン50のピッチを不均一とする場合を説明する。
【0054】
本実施形態の熱交換器は、図3、4に示すように、排気筒20の内面に複数のフィン50が設けられている。このフィン50は、通常、熱交換器に設けられているものであり、反応ガス流路1を流れる反応ガスと接触し、反応ガスの熱を、排気筒20を介して、温水流路2を流れる温水に伝えるものである。
【0055】
フィン50としては、例えば、プレートフィンを用いることができる。フィン50は、図4に示すように、フィンピッチが不均一となるように、配置されている。すなわち、反応ガス流路1のガス出口22に近い側の領域1aでは、フィンピッチ50aが狭く、反応ガス流路1のガス出口22に遠い側の領域1bでは、フィンピッチ50bが広くなっている。なお、フィンピッチは連続的に変化している。
【0056】
このように、本実施形態では、反応ガス流路1において、ガス出口22に近い側の領域1aではフィン50を密に配置し、ガス出口22に遠い側の領域1bではフィン50を疎に配置している。
【0057】
これにより、反応ガス流路1において、ガス出口22に近い側の領域1aでは、反応ガスの圧損を大きくし、出ガス出口22に遠い側の領域1bでは、反応ガスの圧損を小さくすることができる。このため、ガス出口22に近い側の領域1aでの反応ガスの流れを抑制することができる。
【0058】
このことから、本実施形態によれば、反応ガス流路1を流れる反応ガスの流れを均等にでき、排気筒20に設けられているガス出口22が1つの場合に生じる反応ガス流路1での反応ガスの偏流を抑制することができる。
【0059】
この結果、このようなフィンピッチでフィン50が配置されていない熱交換器と比較して、反応ガスが温水と熱交換を十分に行わないまま排出されるのを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、ガス出口20が1つしか設けられていない場合に生じる熱交換器の熱交換性能の低下を抑制することができる。すなわち、従来よりも熱交換性能を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、プレートフィンを用いる場合を例として説明したが、他のフィンを用いることもできる。この場合、反応ガス流路1において、ガス出口22に近い側の領域1aでは、反応ガスの圧損を大きくし、出ガス出口22に遠い側の領域1bでは、反応ガスの圧損を小さくするように、フィンを配置すれば良い。
【0061】
例えば、フィン50として、コルゲートフィンを用いることができ、この場合、隣り合うフィンの間隔を、本実施形態のように、不均一とする。
【0062】
(第3実施形態)
図5に、本発明の第3実施形態における熱交換器の断面図を示す。また、図6に図5中のA−A線方向における熱交換器の断面図を示す。なお、図5、6では、図8に示す熱交換器と同様の構成部には、図8と同一の符号を付している。本実施形態では、第1、第2実施形態と異なり、内筒10の中心を排気筒20の中心から偏心させる場合を説明する。
【0063】
本実施形態の熱交換器が図8に示す熱交換器と異なる点は、図5、6に示すように、内筒10の中心10aの位置と、排気筒20の中心20aの位置とが異なっている点である。
【0064】
図3に示すように、本実施形態の内筒10および排気筒20は、第1実施形態と同様に、断面が真円の円筒形状である。しかし、本実施形態では、第1実施形態の熱交換器(図1、2に示す熱交換器)に対して、内筒10の中心10aの位置が、排気筒20の中心20aからガス出口22側に移動している。
【0065】
このため、反応ガス流路1において、ガス出口22に近い側の領域1aが狭く、一方、ガス出口22に遠い側の領域1bが広くなっている。
【0066】
このように、本実施形態では、内筒10および排気筒20の断面を真円形状として、内筒10と排気筒20との配置を、反応ガス流路1におけるガス出口22に近い側の領域1aの方が、ガス出口22に遠い側の領域1bよりも流路断面積が小さくなるように、内筒10の中心10aの位置を、排気筒20の中心20aの位置から、ガス出口22側に偏心させた配置としている。
【0067】
これにより、図8に示す従来の熱交換器と比較して、ガス出口22に近い側の領域1aでの反応ガスの流れを抑制することができる。
【0068】
このため、排気筒20に設けられているガス出口22が1つの場合に生じる反応ガス流路1での反応ガスの偏流を抑制することができる。この結果、内筒10と排気筒20とが同心円状に配置されていた従来の熱交換器と比較して、反応ガスが温水と熱交換を十分に行わないまま排出されるのを抑制することができる。
【0069】
したがって、本実施形態によれば、ガス出口20が1つしか設けられていない場合に生じる熱交換器の熱交換性能の低下を抑制することができる。すなわち、従来よりも熱交換性能を向上させることができる。
【0070】
(他の実施形態)
(1)図7に他の実施形態における熱交換器の断面図を示す。図7は、図1中のA−A線方向における熱交換器の断面図であり、図2に対応している。なお、図7では、図2と同様の構成部には、図2と同一の符号を付している。
【0071】
第1実施形態では、バッフル板40の形状が、ガス出口22に近い側の領域1aにおける反応ガスの流路断面積を、ガス出口22に遠い側の領域1bにおける流路断面積よりも小さくする形状の例として、バッフル板40の幅(大きさ)40bを、ガス出口22に近い部分40bと、ガス出口22に遠い部分40cとで、異ならせる場合を説明したが、以下に説明する方法を採用することもできる。
【0072】
すなわち、図7に示すように、バッフル板40を、1枚の平板で構成し、反応ガス流路1のガス流れにおける断面と略同じ大きさとする。すなわち、バッフル板40の大きさを、内筒10と排気筒20との間の間隔と同じ大きさで、反応ガス流路1を塞ぐような大きさとする。
【0073】
そして、その板にパンチング等により複数の穴を設ける。例えば、図7に示すように、同じ大きさの複数の穴40dを設ける場合、ガス出口22に近い部分40aでは、穴40dの数を少なくし、ガス出口22に遠い部分40bでは、穴40dの数を多くする。
【0074】
このようにして、反応ガス流路1において、ガス出口22に近い側の領域1aにおける反応ガスの流路断面積を、ガス出口22に遠い側の領域1bにおける流路断面積よりも小さくすることもできる。この場合においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、図示しないが、バッフル板40のガス出口22に近い側と、ガス出口22から遠い側とにおいて、穴の数を同じとするが、ガス出口22に近い側では、穴を小さくし、ガス出口22から遠い側では、穴を大きくすることもできる。
【0076】
また、図示しないが、バッフル板40のガス出口22に近い側と、ガス出口22から遠い側とにおいて、ガス出口22に近い側では、穴を小さく、かつ、穴の数を少なくし、一方、ガス出口22から離れた側では、穴を大きく、かつ、穴の数を多くすることもできる。
【0077】
(2)第3実施形態では、内筒10と排気筒20とがともに、筒が真円形状である場合を例として説明したが、内筒10と排気筒20のどちらか一方、もしくは、両方を楕円形状とすることもできる。
【0078】
すなわち、図示しないが、内筒10と排気筒20の形状を真円ではなく、楕円形状とすることで、反応ガス流路1において、ガス出口22に近い側の領域1aを狭くし、ガス出口22に遠い側の領域1bを広くすることもできる。
【0079】
(3)上記した各実施形態では、内筒10の内部に触媒反応部15が配置されている場合を例として説明したが、触媒燃焼部15を省略することもできる。この場合、他のガス加熱手段を設け、高温ガスを生成するか、外部より、内筒10の内部に高温ガスを供給する。
【0080】
また、高温でなく低温のガスを供給することもできる。この場合、温水流路2を流れる冷却水等の熱媒体から熱を奪い、熱媒体を冷却することもできる。
【0081】
(4)上記した各実施形態では、ガス出口22の数を1つとする場合を例として説明したが、ガス出口22の数を、1つに限らず、他の数とすることもできる。
【0082】
(5)上記した各実施形態では、内筒10、排気筒20、温水筒30の形状を、円筒形状とする場合を例として説明したが、断面が多角形である筒形状とすることもできる。
【0083】
(6)上記した各実施形態では、車両に搭載されている燃料電池スタックの暖機手段に、本発明の熱交換器を適用する場合を例として説明したが、家庭用の燃料電池スタックの暖機手段に、本発明の熱交換器を適用することもできる。
【0084】
また、燃料電池に限らず、車両に搭載されるガソリンエンジン、ハイブリッドエンジンの暖機手段に、本発明の熱交換器を適用することもできる。
【0085】
(7)上記した各実施形態では、熱交換器の構成を、互いに各実施形態とは独立した構成とする場合を例として説明したが、各実施形態を組み合わせることもできる。すなわち、第1実施形態と第2実施形態、第1実施形態と第3実施形態、第2実施形態と第3実施形態、第1〜第3実施形態のすべてというように、組み合わせることもできる。
【0086】
このように、組み合わせることで、各実施形態単独の場合と比較して、反応ガス流路1における反応ガスの偏流を、より抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1実施形態における熱交換器の断面図である。
【図2】図1中のA−A線方向での熱交換器の断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における熱交換器の断面図である。
【図4】図3中のA−A線方向での熱交換器の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における熱交換器の断面図である。
【図6】図5中のA−A線方向での熱交換器の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における熱交換器の断面図である。
【図8】従来における熱交換器の断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1…反応ガス流路、2…温水流路、
10…内筒、10a…内筒の中心位置、11…空気入口、12…燃料入口、
13…ガス出口、14…混合部、15…触媒反応部、
16…空気供給部、17…燃料供給部、
20…排気筒、20a…排気筒の中心位置、22…ガス出口、
30…温水筒、40…バッフル板、40d…穴、
50…フィン、50a…フィンピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱媒体を排出する第1の筒(10)と、
前記第1の筒(10)の外側であって、前記第1の筒(10)との間に、前記第1の筒(10)から排出された前記第1の熱媒体が流れる第1の熱媒体流路(1)を構成するように配置された第2の筒(20)と、
前記第2の筒(20)に設けられ、前記第1の熱媒体流路(1)を流れる前記第1の熱媒体が排出される出口(22)と、
前記第2の筒(20)の外側であって、前記第2の筒(20)との間に、第2の熱媒体が流れる第2の熱媒体流路(2)を構成するように配置された第3の筒(30)とを備え、
前記第2の筒(20)を介して、前記第1の熱媒体と前記第2の熱媒体との間の熱交換を行う熱交換器において、
前記第1の熱媒体流路(1)内に、バッフル板(40)が配置されており、
前記バッフル板(40)は、前記第1の熱媒体流路(1)における前記出口(22)に近い側の領域(1a)の流路断面積を、前記出口(22)に遠い側の領域(1b)の流路断面積よりも、小さくする形状であることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第1の熱媒体流路(1)の内部には、前記第2の筒(20)に設けられたフィン(50)が存在しており、前記フィン(50)は、前記第1の熱媒体流路(1)のうちの前記出口に近い側の領域(1a)の方が、前記出口に遠い側の領域(1b)よりも、フィンピッチが狭いことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
第1の熱媒体を排出する第1の筒(10)と、
前記第1の筒(10)の外側であって、前記第1の筒(10)との間に、前記第1の筒(10)から排出された前記第1の熱媒体が流れる第1の熱媒体流路(1)を構成するように配置された第2の筒(20)と、
前記第2の筒(20)に設けられ、前記第1の熱媒体流路(1)を流れる前記第1の熱媒体が排出される出口(22)と、
前記第2の筒(20)の外側であって、前記第2の筒(20)との間に、第2の熱媒体が流れる第2の熱媒体流路(2)を構成するように配置された第3の筒(30)とを備え、
前記第2の筒(20)を介して、前記第2の熱媒体と前記第3の熱媒体との間の熱交換を行う熱交換器において、
前記第1の熱媒体流路(1)の内部には、前記第2の筒(20)に設けられたフィン(50)が存在しており、前記フィン(50)は、前記第1の熱媒体流路(1)のうちの前記出口に近い側の領域(1a)の方が、前記出口に遠い側の領域(1b)よりも、フィンピッチが狭いことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
前記第1の筒(10)と前記第2の筒(20)とは、前記第1の熱媒体流路(1)における前記出口に近い側の領域(1a)の方が、前記出口に遠い側の領域(1b)よりも、流路断面積が小さくなるような形状および配置であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項5】
第1の熱媒体を排出する第1の筒(10)と、
前記第1の筒(10)の外側であって、前記第1の筒(10)との間に、前記第1の筒(10)から排出された前記第1の熱媒体が流れる第1の熱媒体流路(1)を構成するように配置された第2の筒(20)と、
前記第2の筒(20)に設けられ、前記第1の熱媒体流路(1)を流れる前記第1の熱媒体が排出される出口(22)と、
前記第2の筒(20)の外側であって、前記第2の筒(20)との間に、第2の熱媒体が流れる第2の熱媒体流路(2)を構成するように配置された第3の筒(30)とを備え、
前記第2の筒(20)を介して、前記第2の熱媒体と前記第3の熱媒体との間の熱交換を行う熱交換器において、
前記第1の筒(10)と前記第2の筒(20)とは、前記第1の熱媒体流路(1)における前記出口に近い側の領域(1a)の方が、前記出口に遠い側の領域(1b)よりも、流路断面積が小さくなる形状および配置であることを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
前記第1の筒(10)の中心(10a)が、前記第2の筒(20)の中心(20a)に対して、前記出口(22)側に偏心していることを特徴とする請求項4または5に記載の熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−179374(P2006−179374A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372914(P2004−372914)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】