説明

熱交換器

【課題】隣接する部品と熱交換器を連結するベースチューブの周囲に配設されるリングを備え、部品重量を低減し、経済的に製造可能にする。
【解決手段】環状のリング8と終端側のチューブ底3を有するベースチューブ2を備え、チューブ底3の領域に、1つのエンドキャップ12,13が配設され、一方のエンドキャップ13が、外方に向いた環状の折曲げ部14を備え、この折曲げ部が、取外し可能なテンション付与要素15によって包囲され、リング8と結合されており、折曲げ部14とリング8の間に環状のシール要素16が配設された、内燃機関用の熱交換器において、リング8が、板材から製造され、終端側のチューブ底3の間に配設され、横断面がV字型になるように互いに整向された脚部9を備え、これら脚部9が、その端部にフランジ11を備え、ウェブ10を介して互いに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、例えば、フィードバックのために設定された内燃機関の排気ガス成分の熱回収又は冷却をするために使用される。燃焼空気のためにフィードバックをすることにより、特に高い燃焼温度と組み合わせて希薄混合物を使用する場合、環境に有害な排気ガス中の窒素酸化物の成分が減少する。
【0003】
熱交換器により冷却され、燃焼プロセスに供給される排気ガスは、フレッシュエアを含む過剰空気を低減し、同時に燃焼温度を低下させ、これにより、明らかに有害物質の少ない燃焼が生じる。燃焼可能でない成分が増大させられた混合物は、特にエンジンの部分負荷領域で、燃料消費率の低下を可能にする。
【0004】
熱交換器内で、排気ガスは、混合されることなく冷媒と接触し、その結果、両流体の間にある温度差が交換される。熱交換器の効率は、温度交換のために使用可能な面によって決まる。外径寸法が小さいにもかかわらず交換面をできるだけ大きく形成するため、熱交換器内に、例えば、排気ガスを案内する多数のチューブが配設され、これらチューブの周囲を、冷媒が流れる。
【0005】
このため、終端側がチューブ底とそれぞれ結合されたベースチューブが設けられている。ベースチューブ内の排気ガスを案内するチューブは、1つのチューブ束にまとめられ、このチューブ束は、ベースチューブ内で向かい合うチューブ底間に延在し、これらチューブ底と結合されている。この場合、チューブ底と結合されたベースチューブは、冷媒が貫流可能なチャンバを構成し、このチャンバを、チューブ束を介して排気ガスが通過する。
【0006】
排気ガスの予定にない流出と、排気ガスと冷媒の混合を防止するため、個々の構成要素は、内部と外部に対して密閉された熱交換器を形成するように結合されている。
【0007】
熱交換器をその取り付け位置に固定するため、ベースチューブの周囲にリングが配設されており、このリングを介して、隣接する部品との連結が行なわれる。リング自体は、中実材料から機械加工により製造されている。中実に形成することは、相応に重い重量と高い加工費用を生じさせる。
【0008】
経済的な製造をするとの背景と低燃費による環境保護の要求とから、特に、多くの材料の使用とこれから生じるこのようなリングの部品重量には、未だ改善の余地がある。
【0009】
特許文献1では、内燃機関用の熱交換器が、ジャケットチューブと終端側のカバーとを備える。ジャケットチューブもカバーも、向かい合うその端部に、外方に向いた折り曲げられた縁部を備え、これら縁部は、シールリングによって互いに間隔を維持されている。周囲を、折り曲げられた縁部が、溶接されたシャックルを有する締付けクランプによって包囲され、この締付けクランプを介して、熱交換器が固定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第34 35 093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の根底にある課題は、隣接する部品と熱交換器を連結するためにそのベースチューブの周囲に配設されるリングを、低減された部品重量を備え、全体的に経済的に製造可能であるように、改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する熱交換器によって解決される。
【0013】
本発明は、内燃機関用の熱交換器を提供する。この場合、熱交換器は、環状のリングを有するベースチューブを備え、このベースチューブが、終端側のチューブ底を備える。
【0014】
本発明によれば、リングは、板材から製造されており、横断面がV字型になるように互いに整向された脚部を備える。リングの形状は、リングによって包囲されるベースチューブの形状に従う。これにより、リングを中実に形成することに比べて、軽量で、少ない材料の使用で製造可能な解決策が得られる。両脚部は、そのそれぞれの端部でベースチューブに当接し、これにより、リングの傾倒が防止される。形成に応じて、リングは、少なくとも一方のその脚部でベースチューブに当接する。
【0015】
本発明の有利な形成は、従属請求項2〜10の対象である。
【0016】
有利な形成では、リングが、終端側のチューブ底の間に配設されている。従って、特に、熱交換器が、リングの領域で、付加的な部品を介して隣接する部品との連結を受けるとの背景から、重量配分に関してバランスをとった固定が可能になる。熱負荷により熱交換器の長さ変化が生じた場合には、ほぼ同じ割合で、リングの右側と左側に向かって移動が行なわれ、これにより、ベースチューブの一端だけに向かう接続部品の高い負荷が低減される。
【0017】
本発明では、脚部が、そのそれぞれの一端でウェブを介して互いに結合されている。ウェブは、脚部の更なる間隔維持を生じさせ、V字型の横断面の先端が平らになっている。ウェブにより、ベースチューブと両脚部の線接触部が、互いに間隔を維持され、これにより、リングは、ベースチューブ上での傾倒の安全性を向上させる。加えて、ウェブは、先端を有するように形成された横断面形状に対して全高を低減する。両脚部が異なった長さを備える場合でも、これら脚部は、好ましくは同一に形成されている。
【0018】
好ましいやり方では、リングが、円形リング状に形成されている。これにより、リングの製造が容易化される。リングは、例えばロール成形によって、その円形リング形状も、曲げられたストランドの形態でそのそれぞれの端部で互いに結合されたそのV字型の横断面も得ることができる。
【0019】
変形例では、脚部が、それぞれ、ウェブと向かい合うその端部に離間方向に向いたフランジを備える。このフランジは、ベースチューブとの面接触を可能にし、これにより、ベースチューブに適合させたリングの横断面形状が得られる。加えて、リングのその長手方向軸に対して横の断面係数が高まる。
【0020】
リングは、ベースチューブと素材結合により結合されている。この場合、素材結合による結合部は、ベースチューブとリングが接触する周囲上に点状に配設しても、全周にわたり配設してもよい。結合は、例えば接着又は溶接及びはんだ付けによって行なうことができる。
【0021】
本発明による熱交換器の変形例では、リングが、ベースチューブ自体から押出し成形されている。このため、ベースチューブの環状の壁が環状の突出部を備え、これにより、ベースチューブの内周も、リングの領域で拡大される。この変形例では、リングとベースチューブの間の独立した結合部が廃止されている。結合部の削減以外に、材料の使用も低減され、これは、ベースチューブから切り離されたリングの付加的な生産の削減を伴う。
【0022】
一方のチューブ底の領域に、エンドキャップが配設されている。エンドキャップは、外方に向いた環状の折曲げ部を備える。エンドキャップの折曲げ部は、取外し可能なテンション付与要素によって包囲され、リングと結合されている。この場合、リングのV字型の横断面が、テンション付与要素に対する自己調心を可能にする。折曲げ部とリングの間に、環状のシール要素が配設されていてもよい。
【0023】
折曲げ部の形状は、本質的に、リングの脚部の形成に影響を受ける。エンドキャップの折曲げ部を介して、リングに対して、環状の面接触が得られる。
【0024】
テンション付与要素の横断面は、同様に、本質的にV字型の形成を備え、テンション付与要素は、リングの一方の脚部と、これと向かい合う脚部に当接するエンドキャップの折曲げ部を、その自由な側から包囲する。テンション付与要素は、両端が取外し可能な結合要素を介して互いに結合された開放したリング形状を備える。特に、取外し可能な結合要素は、ネジとして形成されており、このネジを回転させることによって、テンション付与要素の周囲の縮小と拡大の両方を行なうことができる。テンション付与要素の周囲を縮小する際にリングとエンドキャップの折曲げ部の両方を介して移動する、テンション付与要素のV字型の横断面は、リングとエンドキャップの折曲げ部を互いに押し付ける。
【0025】
この場合、テンション付与要素は、隣接する部品と結合されているので、熱交換器は、テンション付与要素を介してその位置に固定される。結合要素を取り外すことにより、テンション付与要素が開放され、その後、熱交換器は、その包囲から取り出すことができる。同時に、リングを介してベースチューブと結合されたエンドキャップと熱交換器の結合が解除される。これにより、結合要素を取り外すことによって熱交換器が除去され、同時に開放されるので、交換又は整備作業における作業費が低減される。
【0026】
この場合、リングとエンドキャップの折曲げ部の間に存在するシール要素は、永久弾性素材又は金属素材により形成したり、これらを組み合わせて形成することができる。テンション付与要素の周囲を変更する取外し可能な結合要素を回転させることにより、シール要素は、リングの脚部とエンドキャップの折曲げ部の間で圧縮され、これにより、シール要素のシール作用が向上する。
【0027】
本発明により、経済的に製造可能で、簡単に組み立てられる軽量のリングを有する熱交換器が得られる。特に、リングがベースチューブの環状の突出部である変形例は、付加的な材料と相応の製造プロセスなしで実施可能である。リングとベースチューブの間の僅かな接触面により、高温の排気ガスによって生じた熱交換器の温度の隣接する部品への伝達が低減される。この場合、全体的に、部品重量の低減と安価な製造方法が得られる。
【0028】
本発明を、以下で図面に概略的に図示した実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】2つの方向から見た本発明による熱交換器を示す。
【図2】側面図で細部を省略した、付加的な構成要素を有する図1の本発明による熱交換器を示す。
【図3】本発明による熱交換器の変形例を図2と同様の図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に図示した熱交換器1は、終端側のチューブ底3を有するベースチューブ2を備える。側面図で図示したベースチューブ2は、終端側をチューブ底3によって包囲されたシリンダ状の横断面を備える。このため、チューブ底3は、チューブ底に対して直角に折り曲げられた縁部4を備え、この縁部が、それぞれチューブ底3の周囲で環状に延在する。縁部4は、その内周がベースチューブ2の外周に一致し、これにより、チューブ底3がそのそれぞれの縁部4によってベースチューブ2に嵌合式に取り付けられるように、形成されている。
【0031】
同様に図示したチューブ底3の側面図で、チューブ底が多数の開口5を備えることが確認可能である。開口5は、円形の横断面を有する。開口5内に、それぞれ個々のチューブ6が配設されており、これらチューブは、詳細には図示されていないチューブ束7としてベースチューブ2内でチューブ底3の間に延在し、向かい合うチューブ底の開口5内に支承されている。
【0032】
側面図で細部を省略した、既に図1で図示した熱交換器1の側面図を示す。この場合、熱交換器1は、ベースチューブ2の周囲を取り巻く環状のリング8を備える。リング8は、本質的にV字型の横断面を示す。リング8は、V字型に互いに整向された2つの脚部9による横断面形状を有し、両脚部は、リング8の外周においてウェブ10を介して互いに結合されている。ウェブ10に向かい合う脚部9の端部に、それぞれ、互いに離間方向に向いたフランジ11が配設されている。リング8の側面図で、このリングが円形リング状に形成されていることが確認可能である。脚部9もフランジ11も、ウェブ10と共に個々の板材から形成されている。リング8は、そのフランジ11を介してベースチューブとの面接触を備え、これにより、リング8は、外周に向かってそのウェブ10の方向にV字型に先細る。
【0033】
チューブ底3の領域に、それぞれエンドキャップ12,13が配設されており、これらエンドキャップは、チューブ底3と同様に縁部を備える。エンドキャップ13は、外方に向いた環状の折曲げ部14を備え、この折曲げ部によって、エンドキャップ13は、リング8の一方の脚部9と接触しており、両者のそれぞれの傾斜は一致する。折曲げ部14もリング8も取外し可能なテンション付与要素15によって周囲を包囲される。リング8とエンドキャップ13の折曲げ部14の間に、シール要素16が配設されている。
【0034】
図3は、細部を省略した図2に示したリング8の変形例を図示する。この場合、リング8aは、ベースチューブ2aから押出し成形されている。従って、リング8aは、ベースチューブ2aの外周面から成る環状の突出部である。図2に図示したリング8と同様に、リング8aも、V字型に互いに整向された脚部11aを備え、これら脚部は、リング8aの外周においてウェブ10aを介して互いに結合されている。リング8aの領域で、ベースチューブ2aの内周が拡大されており、ベースチューブ2aの壁が外方に立っている。
【0035】
取付け状態で、テンション付与要素15は、リング8,8aの周囲に案内されており、リングは、直接的又は間接的に例えば自動車の部品と結合されている。同時に、テンション付与要素15を介して、ベースチューブ3とエンドキャップ13の間の結合が得られる。このため、エンドキャップ13は、外方に向いた環状の折曲げ部14を備え、この折曲げ部が、テンション付与要素15を介してリング8,8aと結合されている。リング8,8aと折曲げ部14の間に、相応のシール16が挿入されている。
【0036】
運転中、熱交換器1は、例えばチューブ束7のチューブ6内を流れる高温ガスによって貫流される。高温ガスは、エンドキャップ12,13を通ってチューブ束7に供給され、このチューブ束から出る。入り口と出口を介して、冷媒が、ベースチューブ2とチューブ底3から構成されたチャンバを通って流れ、冷媒は、個々のチューブ6の周囲を流れ、例えば固定具によって方向転換される。冷媒は、排気ガスとの温度交換をし、例えば排気ガスを冷却するために使用される。チューブ6によって構成される大きい表面により、排気ガスと、熱交換器1内を流れる冷媒の間の温度差の連続的な補償が行なわれる。
【0037】
本発明による熱交換器1は、示した実施形や説明した使用に限定されないので、熱交換器は、変形しても、異なった課題のためにも、使用することができる。従って、媒体の冷却以外に、熱交換器は、基本的に熱回収及び加熱のためにも使用される。
【符号の説明】
【0038】
1 熱交換器
2 ベースチューブ
2a ベースチューブ
3 2のチューブ底
4 3の縁部
5 3の開口
6 2内のチューブ
7 6から成るチューブ束
8 リング
8a リング
9 脚部
9a 脚部
10 ウェブ
10a ウェブ
11 フランジ
11a 脚部
12 エンドキャップ
13 エンドキャップ
14 13の折曲げ部
15 テンション付与要素
16 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリング(8,8a)と終端側のチューブ底(3)を有するベースチューブ(2,2a)を備える、内燃機関用の熱交換器において、
リング(8)が、板材から製造されており、横断面がV字型になるように互いに整向された脚部(9,11a)を備えることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
リング(8)が、終端側のチューブ底(3)の間に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
脚部(9,11a)が、そのそれぞれの一端でウェブ(10)を介して互いに結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
リング(8)が、円形リング状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項5】
脚部(9,11a)が、それぞれ、ウェブ(10)と向かい合うその端部に離間方向に向いたフランジ(11)を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の熱交換器。
【請求項6】
リング(8)が、ベースチューブ(2)と素材結合により結合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項7】
リング(8)が、ベースチューブ(2,2a)から押出し成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項8】
一方のチューブ底(3)の領域に、エンドキャップ(13)が配設されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項9】
エンドキャップ(13)が、外方に向いた折曲げ部(14)を備えることを特徴とする請求項8に記載の熱交換器。
【請求項10】
折曲げ部(14)を包囲する取外し可能なテンション付与要素(15)が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−7880(P2012−7880A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139204(P2011−139204)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】