説明

熱交換器

【課題】熱交換性能を向上させることができるようにする。
【解決手段】流路R1の側面には、流路R1が蛇行するように屈曲された屈曲部21が複数形成されているとともに、流路R1の底面には、熱交換流体の進行方向に沿って波状に起伏された起伏部22が複数形成されている。隣り合う屈曲部21・21間の間隔は、隣り合う起伏部22・22間の間隔よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路内を流れる熱交換流体と流路外の熱交換対象物との間で熱交換を行わせる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼板やアルミニウム板等の薄板金属の表面に、エッチング技術等を用いて熱交換流体を流通させるための流路を形成した熱交換器が開発されている。このような熱交換器として、特許文献1には、金属薄板状プレートに複数の伝熱フィンを設け、この金属薄板状プレートを交互に積み重ねることにより、対向する2つの金属薄板状プレート間に熱交換流体の流路を形成した熱交換器が開示されている。伝熱フィンを、先端から後端に向かって曲線状の断面形状に形成し、伝熱フィンの間を流れる流体の流路面積を略一定とすることにより、流路を流れる熱交換流体の縮流や拡流による圧力損失を小さくすることができ、熱交換器のコンパクト化と低コスト化とを維持しつつ、熱交換器の伝熱性能を損なうことなく、熱交換流体の圧力損失を小さく抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−170549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の熱交換器のように、流路の側面が屈曲していると、流路内において主流に逆行するような流れ(渦)が発生し易くなり、この渦によって圧力損失が増大し、熱交換が妨げられる結果、熱交換性能が低下するという問題がある。なお、特許文献1において流体の流路面積を略一定としているように、流路面積を減少させると圧力損失が大きくなるので、通常、流路面積を減少させるようなことはしない。
【0005】
本発明の目的は、熱交換性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における熱交換器は、流路内を流れる熱交換流体と、前記流路外の熱交換対象物との間で熱交換を行わせる熱交換器であって、前記流路の側面には、前記流路が蛇行するように屈曲された屈曲部が複数形成されているとともに、前記流路の底面には、前記熱交換流体の進行方向に沿って波状に起伏された起伏部が複数形成されており、隣り合う前記屈曲部間の間隔が、隣り合う前記起伏部間の間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、流路の側面が屈曲していると、流路内において主流に逆行するような流れ(渦)が発生し易くなり、この渦によって圧力損失が増大し、熱交換が妨げられる結果、熱交換性能が低下するという問題がある。そこで、流路の底面に複数の起伏部を形成することで、流路の底面を熱交換流体の進行方向に沿って波状に起伏させる。すると、起伏部が流路面積を減少させるので、圧力損失が大きくなる傾向となるが、起伏部が渦の発達を抑制し、隣り合う屈曲部間において渦が広範囲に生じ難くなるので、圧力損失が減少するとともに熱伝達特性が向上する。また、流路の内面において境界層が形成され難くなるので、境界層の発達が抑制される。これにより、熱交換性能を向上させることができる。なお、境界層とは、流路の内面に形成される温度の遷移域のことであり、熱抵抗として作用することで熱交換性能を低下させるものである。
【0008】
また、本発明における熱交換器において、前記起伏部は、仰角と俯角とが同じであってよい。上記の構成によれば、起伏部の仰角と俯角とを同じにして、熱交換流体の流れをスムーズにすることで、渦の発達を抑制することができる。ここで、仰角とは水平を基準とした上向きの角度であり、俯角とは水平を基準とした下向きの角度である。
【0009】
また、本発明における熱交換器において、前記流路の最下部から前記流路の上面までの高さをAとし、前記起伏部の頂点から前記流路の上面までの高さをaとし、前記起伏部の仰角をθとすると、0.72<a/A≦0.85、且つ、5°≦θ≦25°の条件を満足してよい。上記の構成によれば、0.72<a/A≦0.85、且つ、5°≦θ≦25°の条件を満足すると、熱伝達特性因子jの値を摩擦係数fの値で除した値が、起伏部を有しない蛇行した流路に対して、1.15よりも大きい割合で上昇する。このことから、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【0010】
また、本発明における熱交換器において、前記流路の最下部から前記流路の上面までの高さをAとし、前記起伏部の頂点から前記流路の上面までの高さをaとし、前記起伏部の仰角をθとすると、0.58<a/A≦0.72、且つ、5°≦θ≦30°の条件を満足してよい。上記の構成によれば、0.58<a/A≦0.72、且つ、5°≦θ≦30°の条件を満足すると、熱伝達特性因子jの値を摩擦係数fの値で除した値が、起伏部を有しない蛇行した流路に対して、1.15よりも大きい割合で上昇する。このことから、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【0011】
また、本発明における熱交換器において、前記流路の最下部から前記流路の上面までの高さをAとし、前記起伏部の頂点から前記流路の上面までの高さをaとし、前記起伏部の仰角をθとすると、a/A=0.58、且つ、5°≦θ≦45°の条件を満足してよい。上記の構成によれば、a/A=0.58、且つ、5°≦θ≦45°の条件を満足すると、レイノルズ数が500未満のときに、熱伝達特性因子jの値を摩擦係数fの値で除した値が、起伏部を有しない蛇行した流路に対して、1.15よりも大きい割合で上昇する。このことから、レイノルズ数が500未満のときに、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱交換器によると、流路の底面に複数の起伏部を形成することで、流路の底面を熱交換流体の進行方向に沿って波状に起伏させる。すると、起伏部が流路面積を減少させるので、圧力損失が大きくなる傾向となるが、起伏部が渦の発達を抑制し、隣り合う屈曲部間において渦が広範囲に生じ難くなるので、圧力損失が減少するとともに熱伝達特性が向上する。また、流路の内面において境界層が形成され難くなるので、境界層の発達が抑制される。これにより、熱交換性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】熱交換器を示す概略斜視図である。
【図2】金属薄板が積層された状態を示す図である。
【図3】本実施形態の流路と比較例の流路とを示す斜視図である。
【図4】流体の流れを解析した解析結果を示す図である。
【図5】図4に示すA−B壁面のNu数を比較した図である。
【図6】レイノルズ数と熱伝達特性因子との関係を示す図である。
【図7】レイノルズ数と摩擦係数との関係を示す図である。
【図8】レイノルズ数とj/f値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
(熱交換器の構成)
本実施形態に係る熱交換器1は、図1に示すように、概ね長方体状の箱型に形成された本体2を有している。本体2の内部には、流路構成部材10が設けられている。
【0016】
流路構成部材10は、図2に示すように、第1金属薄板11及び第2金属薄板12を交互に複数積層して形成されている。なお、第1金属薄板11、第2金属薄板12としては、例えば、ステンレス鋼板を用いることができるが、鉄、銅、アルミニウム、アルミニウム合金などを用いてもよい。
【0017】
第1金属薄板11は、表面に複数の流路(溝)R1が形成された長方形状の薄板である。複数の流路R1は、長方形状の薄板の長手方向に延びるように形成されている。各流路R1の水平幅は、例えば2mmである。また、各流路R1の底面から上面までの高さは、後述する起伏部22によって高低するが、最大高さは例えば1mmである。
【0018】
第2金属薄板12は、第1金属薄板11と同じ大きさの長方形状の薄板である。第2金属薄板12の表面には、第1金属薄板11に形成された流路R1とは直交する方向(長方形状の薄板の短手方向)に延びる複数の流路(溝)R2が形成されている。各流路R2の水平幅は、例えば2mmである。また、各流路R2の底面から上面までの高さは、後述する起伏部22によって高低するが、最大高さは例えば1mmである。
【0019】
ここで、流路R1および流路R2は、一の金属薄板に形成された溝の側面及び底面と、その上に積層される他の金属薄板の下面とで、流れ方向に対して直交する方向を全て覆われている。
【0020】
図1に示すように、熱交換器1の本体2には、本体2の側面を形成するように、第1供給ヘッダー3、第1排出ヘッダー4、第2供給ヘッダー5、および、第2排出ヘッダー6が設けられている。
【0021】
第1供給ヘッダー3には供給管3aから、例えば冷水等の熱交換流体が供給される。そして、この熱交換流体は、第1供給ヘッダー3を介して、複数の第1金属薄板11に形成された複数の流路R1に分配される。
【0022】
第1供給ヘッダー3から供給された熱交換流体は、第1金属薄板11に形成された複数の流路R1を通過して第1排出ヘッダー4に流れ込む。第1排出ヘッダー4は、第1供給ヘッダー3に対向する側面を形成するように本体2に設けられている。第1排出ヘッダー4には、第1金属薄板11に形成された複数の流路R1から排出された熱交換流体が供給される。そして、熱交換流体は、第1排出ヘッダー4に設けられた排出管4aを通じて排出される。
【0023】
第2供給ヘッダー5には供給管5aから、熱交換流体との熱交換の対象となる熱交換対象物である流体(以下、対象流体)が供給される。そして、この対象流体は、第2供給ヘッダー5を介して、第2金属薄板12に形成された複数の流路R2に分配される。
【0024】
第2供給ヘッダー5から供給された対象流体は、第2金属薄板12に形成された複数の流路R2を通過して第2排出ヘッダー6に流れ込む。これにより、第2金属薄板12に形成された流路R2を流れる対象流体と、第1金属薄板11に形成された流路R1を流れる熱交換流体との間で、流路構成部材10を介しての熱交換が行われることとなる。
【0025】
第2排出ヘッダー6は、第2供給ヘッダー5に対向する側面を形成するように本体2に設けられている。第2排出ヘッダー6には、第2金属薄板12に形成された複数の流路R2から排出された対象流体が供給される。そして、対象流体は、第2排出ヘッダー6に設けられた排出管6aを通じて排出される。
【0026】
(流路の詳細)
第1金属薄板11に形成された流路R1は、図2に示すように、第1金属薄板11の長手方向に沿って蛇行している。即ち、流路R1の側面には、流路R1が蛇行するように屈曲された屈曲部21が複数形成されている(図3参照)。また、第2金属薄板12に形成された流路R2は、第2金属薄板12の短手方向に沿って蛇行している。即ち、流路R2の側面には、流路R2が蛇行するように屈曲された屈曲部21が複数形成されている(図3参照)。流路R1および流路R2に形成された各屈曲部21の屈曲角度は、例えば120°である。また、流体の進行方向に隣り合う屈曲部21・21間の距離は、例えば5mmである。
【0027】
流路R1の斜視図を図3(a)に示す。流路R1の底面には、熱交換流体の進行方向に沿って波状に起伏された起伏部22が複数形成されている。なお、流路R2の底面にも、流路R1と同様の起伏部22が複数形成されている。比較例として、流路R1とは起伏部22を設けていない点で異なる、底面がフラットな流路C1の斜視図を図3(b)に示す。複数の起伏部22により、流路R1の伝熱面積は流路C1の伝熱面積よりも広くなっている。
【0028】
ここで、各起伏部22は、流路R1の底面から流体の進行方向に所定の角度で隆起していき、頂点を境に流体の進行方向に所定の角度で流路R1の最下部まで沈降していく形状にされている。即ち、各起伏部22の仰角と俯角とは同じである。ここで、仰角とは水平を基準とした上向きの角度であり、俯角とは水平を基準とした下向きの角度である。これにより、流体の進行方向に沿った起伏部22の断面形状は、二等辺三角形になっている。なお、起伏部22の頂点はとがっていてもよいし、丸みを帯びていてもよい。
【0029】
また、流体の進行方向に隣り合う屈曲部21・21間には、起伏部22が4つずつ設けられている。即ち、流体の進行方向に隣り合う屈曲部21・21間の間隔は、流体の進行方向に隣り合う起伏部22・22間の間隔よりも大きい。なお、流体の進行方向に隣り合う屈曲部21・21間に設けられる起伏部22の数は4つに限定されず、5つ以上であっても3つ以下であってもよい。
【0030】
このような起伏部22は、エッチングで流路R1,R2を形成する際に、マスク等を用いて場所により腐食時間を変化させることで形成されている。なお、起伏部22は、流路R1,R2の底面に転写により形成されてもよい。
【0031】
(流路内の流れ解析)
次に、図3(a)に示した流路R1内における流体の流れを解析した解析結果(速度ベクトル図)を図4(a)に示す。尚、図4は、流路R1内を流れる熱交換流体のレイノルズ数Reを500としたときの速度ベクトル図である。
【0032】
レイノルズ数Reは式(1)で定義される。
Re=uD/ν ・・・式(1)
【0033】
ここで、式(1)において、u:熱交換流体の流速、D:狭流路幅基準の水力直径、ν:熱交換流体の動粘性係数、である。
【0034】
比較のため、流路R1とは起伏部22を設けていない点で異なる流路C1内における流体の流れを同じ条件で解析した解析結果(速度ベクトル図)を図4(b)に示す。ここで、隣り合う屈曲部21・21間の一方の壁面側において、上流側の屈曲部21の位置にA点、下流側の屈曲部21の位置にB点をそれぞれ設定し、A点とB点との間の壁面をA−B壁面とする。
【0035】
図4(b)に示すように、比較例の流路C1においては、A点とB点との間にわたって循環するような渦がA−B壁面に沿って発生している。この場合、A−B壁面側において、熱交換流体と流路構成部材10との間の熱交換効率が大きく悪化してしまう。
【0036】
一方、図4(a)に示すように、本実施形態の流路R1においては、渦は、A−B壁面側のA点近傍にのみ発生している。この場合、A−B壁面に沿った逆向きの流れが少なくなるため、熱交換流体と流路構成部材10との間の熱交換効率が向上する。
【0037】
図4に示すA点からB点までのA−B壁面のNu数(熱伝達率)を本実施形態と比較例とで比較したグラフを図5に示す。本実施形態の複数の起伏部22を備えた流路R1では、比較例の起伏部22を備えない流路C1と比べて、B点側におけるNu数(熱伝達率)が大きく向上していることがわかる。
【0038】
このように、側面が屈曲しているだけの流路C1においては、流路C1内において主流に逆行するような流れ(渦)が発生し易くなり、この渦によって圧力損失が増大し、熱交換が妨げられる結果、熱交換性能が低下するという問題がある。そこで、本実施形態の流路R1では、底面に複数の起伏部22を形成することで、底面を熱交換流体の進行方向に沿って波状に起伏させている。すると、起伏部22が流路面積を減少させるので、圧力損失が大きくなる傾向となるが、起伏部22が渦の発達を抑制し、隣り合う屈曲部21・21間において渦が広範囲に生じ難くなるので、圧力損失が減少するとともに熱伝達特性が向上する。また、流路R1の内面において境界層が形成され難くなるので、境界層の発達が抑制される。これにより、熱交換性能を向上させることができる。なお、境界層とは、流路の内面に形成される温度の遷移域のことであり、熱抵抗として作用することで熱交換性能を低下させるものである。
【0039】
また、起伏部22の仰角と俯角とを同じにして、熱交換流体の流れをスムーズにすることで、渦の発達を抑制することができる。
【0040】
(熱伝達特性等に関する解析結果)
次に、本実施形態の熱交換器1における流路R1(図3(a)参照)、及び比較例の流路C1(図3(b)参照)について、流路を流れる流体のレイノルズ数Reと熱伝達特性因子jとの関係の解析結果を図6に示す。また、流路を流れる流体のレイノルズ数Reと摩擦係数fとの関係の解析結果を図7に示す。また、流路を流れる流体のレイノルズ数Reとj/f値との関係の解析結果を図8に示す。
【0041】
熱伝達特性因子jは、以下の式(2)、式(3)に基づいて解析により求められる。熱伝達特性因子jは、熱伝達特性を表す因子であり、流路を流れる流体から流路構成部材10への熱伝達特性が高いほど、大きい値となる。
【0042】
【数1】

【0043】
ここで、式(2)、式(3)において、Nu:ヌセルト数、Re:レイノルズ数、Pr:プラントル数、h:流体と流路構成部材との間の熱伝達率、k:流体の熱伝導率、d:水力直径、である。
【0044】
摩擦係数fは、以下に示す式(4)に基づいて求めた値であり、流路内を通過する流体の圧力損失が大きいほど、大きい値となる。
【0045】
【数2】

【0046】
ここで、式(4)において、ΔP:圧力損失、u:流速、d:水力直径、ρ:流体の密度、L:流路長、である。
【0047】
図6に示すように、熱伝達特性因子jの値は、レイノルズ数Reの値によらず、比較例よりも本実施形態の方が大きくなっている。このことから、本実施形態の流路R1の方が、比較例の流路C1よりも熱伝達特性が優れていることがわかる。
【0048】
また、図7に示すように、摩擦係数fの値は、レイノルズ数Reの値によらず、比較例よりも本実施形態の方が小さくなっている。このことから、本実施形態の流路R1の方が、比較例の流路C1よりも圧力損失が小さいことがわかる。
【0049】
その結果、図8に示すように、熱伝達特性因子jの値を摩擦係数fの値で除したj/f値は、レイノルズ数Reの値によらず、比較例よりも本実施形態の方が大きくなっている。
【0050】
このように、本実施形態の流路R1は、底面に形成された複数の起伏部22が流路面積を減少させるので、圧力損失が大きくなる傾向となるが、起伏部22が渦の発達を抑制し、隣り合う屈曲部21・21間において渦が広範囲に生じ難くなるので、圧力損失が減少するとともに熱伝達特性が向上する。また、複数の起伏部22により流路R1の内面において境界層が形成され難くなっている。よって、比較例の流路C1に比べて本実施形態の流路R1の熱交換性能を向上させることができる。
【0051】
なお、複数の起伏部22で流路の底面を波状に起伏させる代わりに、複数の凸部で流路の底面を凹凸状に起伏させることが考えられる。しかし、両者を比較した結果、図8に示すように、底面を波状に起伏させた比較例の方が、底面を凹凸状に起伏させた比較例2よりも、j/fの値が大きくなった。このことから、底面を凹凸状に起伏させるよりも、底面を波状に起伏させた方が熱交換性能がより向上することがわかる。
【0052】
(j/f値の評価結果)
次に、図3において、流路R1の最下部から流路R1の上面(他の金属薄板の下面)までの高さ(流路C1の底面から流路C1の上面までの高さ)をAとし、起伏部22の頂点から流路R1の上面(他の金属薄板の下面)までの高さをaとし、起伏部22の仰角をθとしたときに、流路C1に対する流路R1のj/f値の上昇割合を表1、表2に示す。a/Aは起伏部22の頂点の高さを表し、値が小さいほど頂点は高い。ここで、起伏部22の頂点の高さをa/A=0.58よりも高くすると、流路面積が減少しすぎるので、a/A≧0.58とした。また、起伏部22の仰角θを45°よりも大きくすると、起伏部22間のピッチ(間隔)が狭くなりすぎるので、θ≦45°とした。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表1、表2から、起伏部22の頂点の高さが一定であれば、仰角θが大きくなるにつれて上昇割合が減少していく傾向にあることがわかる。これは、頂点の高さを一定として仰角θを大きくするほど起伏部22・22間のピッチが狭くなっていき、ピッチが狭くなるにつれて、頂点間の距離が短くなり、起伏部22の起伏に沿って流れる流体の量が減少することで、起伏部22が渦の発達を抑制する作用が弱まっていくためと考えられる。この傾向を踏まえて、0.72<a/A≦0.85、且つ、5°≦θ≦25°の条件を満足すると、レイノルズ数Reの値によらず、j/f値の上昇割合は1.15よりも大きくなる。このことから、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【0056】
また、0.58<a/A≦0.72、且つ、5°≦θ≦30°の条件を満足すると、レイノルズ数Reの値によらず、j/f値の上昇割合は1.15よりも大きくなる。このことから、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【0057】
また、a/A=0.58、且つ、5°≦θ≦45°の条件を満足すると、レイノルズ数Reが500未満のときに、j/f値の上昇割合は1.15よりも大きくなる。このことから、レイノルズ数Reが500未満のときに、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【0058】
(効果)
以上に述べたように、流路の側面が屈曲していると、流路内において主流に逆行するような流れ(渦)が発生し易くなり、この渦によって圧力損失が増大し、熱交換が妨げられる結果、熱交換性能が低下するという問題がある。そこで、本実施形態に係る熱交換器1においては、流路R1,R2の底面に複数の起伏部22を形成することで、流路R1,R2の底面を流体の進行方向に沿って波状に起伏させている。すると、起伏部22が流路面積を減少させるので、圧力損失が大きくなる傾向となるが、起伏部22が渦の発達を抑制し、隣り合う屈曲部21・21間において渦が広範囲に生じ難くなるので、圧力損失が減少するとともに熱伝達特性が向上する。また、流路R1,R2の内面において境界層が形成され難くなるので、境界層の発達が抑制される。これにより、熱交換性能を向上させることができる。
【0059】
また、、起伏部22の仰角と俯角とを同じにして、流体の流れをスムーズにすることで、渦の発達を抑制することができる。
【0060】
また、0.72<a/A≦0.85、且つ、5°≦θ≦25°の条件を満足すると、熱伝達特性因子jの値を摩擦係数fの値で除した値が、起伏部を有しない蛇行した流路に対して、1.15よりも大きい割合で上昇する。このことから、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。なお、上述したように、Aは流路R1,R2の最下部から流路R1,R2の上面までの高さであり、aは起伏部22の頂点から流路R1,R2の上面までの高さであり、θは起伏部22の仰角である。
【0061】
また、0.58<a/A≦0.72、且つ、5°≦θ≦30°の条件を満足すると、熱伝達特性因子jの値を摩擦係数fの値で除した値が、起伏部を有しない蛇行した流路に対して、1.15よりも大きい割合で上昇する。このことから、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【0062】
また、a/A=0.58、且つ、5°≦θ≦45°の条件を満足すると、レイノルズ数が500未満のときに、熱伝達特性因子jの値を摩擦係数fの値で除した値が、起伏部を有しない蛇行した流路に対して、1.15よりも大きい割合で上昇する。このことから、レイノルズ数が500未満のときに、上記条件を満足させることで、熱交換性能を好適に向上させることができる。
【0063】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0064】
例えば、流路R1,R2の底面だけでなく、流路R1,R2の上面、即ち、一の金属薄板の上に積層された他の金属薄板の下面に複数の起伏部22が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 熱交換器
2 本体
3 第1供給ヘッダー
3a 供給管
4 第1排出ヘッダー
4a 排出管
5 第2供給ヘッダー
5a 供給管
6 第2排出ヘッダー
6a 排出管
10 流路構成部材
11 第1金属薄板
12 第2金属薄板
21 屈曲部
22 起伏部
R1,R2 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を流れる熱交換流体と、前記流路外の熱交換対象物との間で熱交換を行わせる熱交換器であって、
前記流路の側面には、前記流路が蛇行するように屈曲された屈曲部が複数形成されているとともに、前記流路の底面には、前記熱交換流体の進行方向に沿って波状に起伏された起伏部が複数形成されており、
隣り合う前記屈曲部間の間隔が、隣り合う前記起伏部間の間隔よりも大きいことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記起伏部は、仰角と俯角とが同じであることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記流路の最下部から前記流路の上面までの高さをAとし、前記起伏部の頂点から前記流路の上面までの高さをaとし、前記起伏部の仰角をθとすると、
0.72<a/A≦0.85、且つ、5°≦θ≦25°の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記流路の最下部から前記流路の上面までの高さをAとし、前記起伏部の頂点から前記流路の上面までの高さをaとし、前記起伏部の仰角をθとすると、
0.58<a/A≦0.72、且つ、5°≦θ≦30°の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記流路の最下部から前記流路の上面までの高さをAとし、前記起伏部の頂点から前記流路の上面までの高さをaとし、前記起伏部の仰角をθとすると、
a/A=0.58、且つ、5°≦θ≦45°の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate