説明

熱伝導性樹脂組成物の製造方法

【課題】混練プロセスにおける炭素繊維の折損を抑制することによって得られる、熱伝導率の高い熱伝導性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】光学顕微鏡で観測した平均繊維径が5μm以上20μm以下であり、平均繊維長が20μm以上500μm以下であり、アスペクト比が4以上50以下であり、繊維軸方向の引張強度が1000MPa以上である炭素繊維と、マトリクス樹脂とを、混練時の樹脂の溶融粘度100Pa・s以上2000Pa・s以下、最大せん断応力が0.1MPa以上2MPa以下で混練することによる熱伝導性樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練プロセスにおける炭素繊維の折損を抑制した熱伝導率の高い熱伝導性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーに代表されるエネルギーの効率的使用方法が注目されている一方で、高速化されたCPUや電子回路のジュール熱による発熱が重篤な問題として認識されつつある。これらを解決するためには、熱を効率的に処理するという、所謂サーマルマネジメントを達成する必要がある。
【0003】
サーマルマネジメントを達成するためには、金属・金属酸化物・金属窒化物・金属酸窒化物・合金といった、熱伝導性の高い無機材料を用いることが多い。金属ダイカストは、その典型的な例と考えることができる。しかし、複雑な形状をした電気部品の筐体を作製するには、熱伝導性フィラーをマトリクス樹脂に混合した組成物を用いることが、デザイン性、費用対効果の面から望ましい。熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、窒化ホウ素、黒鉛系材料等熱伝導率が高いフィラーが広く用いられており、その中でも、炭素繊維はその高熱伝導性、軽量性といった観点から、実用性に優れた材料として注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、直径が50〜200μmの気相法炭素繊維(VGCF)の混練による折損を抑制し、最大で7.5W/mKの熱伝導率が得られることが報告されている。また、特許文献2には、熱可塑性樹脂に特定の炭素繊維と特定の有機化合物を混ぜ合わせて、混練による炭素繊維の折損を抑制できることが報告されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、特殊な混練機を用いていることから生産性に問題があり、さらに、熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率向上のために炭素繊維を多く添加する場合には、溶融粘度が著しく増加し、成形性が悪くなる問題がある。特許文献2に記載の方法は、炭素繊維の折損抑制のために、炭素繊維のX線回折により求められる(002)面の平均層面間隔(d002)が大きく、熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率が低くなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−325345号公報
【特許文献2】特開2010−77407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、混練プロセスにおける炭素繊維の折損を抑制することによって、熱伝導率の高い熱伝導性樹脂組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光学顕微鏡で観測した平均繊維径が5μm以上20μm以下であり、平均繊維長が20μm以上500μm以下であり、アスペクト比が4以上50以下であり、繊維軸方向の引張強度が1000MPa以上である炭素繊維と、マトリクス樹脂とを、混練時の樹脂の溶融粘度100Pa・s以上2000Pa・s以下、最大せん断応力が0.1MPa以上2MPa以下で混練することによる熱伝導性樹脂組成物の製造方法、および該製造方法により得られる熱伝導性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は、混練プロセスにおける炭素繊維の折損を抑制することによって得られる、熱伝導率の高い熱伝導性樹脂組成物を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について順次詳述する。
[熱伝導性樹脂組成物]
本発明は光学顕微鏡で観測した平均繊維径が5μm以上20μm以下であり、平均繊維長が20μm以上500μm以下であり、アスペクト比が4以上50以下であり、繊維軸方向の引張強度が1000MPa以上である炭素繊維と、マトリクス樹脂とを、混練時の樹脂の溶融粘度100Pa・s以上2000Pa・s以下、最大せん断応力が0.1MPa以上2MPa以下で混練することによる熱伝導性樹脂組成物の製造方法、および該製造方法により得られる熱伝導性樹脂組成物である。
【0010】
以下、本発明の熱伝導性樹脂組成物の特徴について詳述する。
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法における炭素繊維としては、熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率を高めるに、ピッチ系黒鉛化短繊維を用いるのが好ましく、その中でもメソフェーズピッチを出発材料とした黒鉛結晶構造の非常に発達したピッチ系黒鉛化短繊維を用いることが特に好ましい。黒鉛化短繊維の熱伝導性は黒鉛結晶の格子構造を伝播するフォノン振動に主に由来するため、熱伝導性を高めるには黒鉛結晶の結晶性を高めること、すなわち黒鉛結晶の格子構造ができるだけ欠陥少なく、かつ大きく広がるようにすることが好ましい。なお、ピッチ系黒鉛化短繊維の製法については後述する。
【0011】
本発明に用いられる炭素繊維は、光学顕微鏡で観測した平均繊維径が5μm以上20μm以下である。平均繊維径が5μm未満の場合、繊維径が細いために繊維強度が弱く、マトリクス樹脂と混練する際に折損し易くなる。また、マトリクス樹脂と混練する際に当該短繊維の本数が多くなるため、マトリクス樹脂と炭素繊維を混練する際の粘度が高くなり、ハンドリングが困難になることがある。逆に平均繊維径が20μmを超えると、マトリクス樹脂と複合する際に短繊維の本数が少なくなるため、当該短繊維同士が接触しにくくなり、熱伝導性組成物とした時に効果的な熱伝導を発揮しにくくなることがある。平均繊維径の好ましい範囲は7〜18μmであり、より好ましくは8〜15μmである。
【0012】
本発明に用いられる炭素繊維は、光学顕微鏡で観測した平均繊維長が20μm以上500μm以下である。平均繊維長が20μm未満の場合、当該短繊維同士が接触しにくくなり、高い熱伝導率を有する熱伝導性組成物を得にくくなることがある。逆に平均繊維長が500μmより大きくなる場合、マトリクス樹脂と炭素繊維を混練する際の粘度が高くなり、ハンドリングが困難になることがある。より好ましくは、平均繊維長が50〜300μmの範囲である。ここで、平均繊維長は個数平均繊維長とし、光学顕微鏡下で測長器を用い、複数の視野において所定本数を測定し、その平均値から求めることができる。
【0013】
本発明に用いられる炭素繊維は、アスペクト比は4以上50以下である。アスペクト比が4未満の場合、当該短繊維同士が接触しにくくなり、高い熱伝導率を有する熱伝導性組成物を得にくくなることがある。逆にアスペクト比が50より大きくなる場合、マトリクス樹脂と炭素繊維を混練する際の粘度が高くなり、ハンドリングが困難になることがある。また、炭素繊維とマトリクス樹脂との混練処理においては、炭素繊維の折損をゼロとすることは困難であり、実質的にアスペクト比が50より大きくケースは少ない。アスペクト比の好ましい範囲は7〜40であり、より好ましくは10〜30である。ここで、アスペクト比とは、炭素繊維の平均繊維長を平均繊維径で除した値である。
【0014】
本発明に用いられる炭素繊維は、繊維軸方向の引張強度が1000MPa以上である。引張強度が1000MPa未満の場合、強度が弱いために、混練処理時の炭素繊維の折損が発生し易くなる。また、ピッチ系黒鉛化短繊維の場合、引張強度の上限は約5000MPaである。引張強度の好ましい範囲は1200MPa以上であり、より好ましくは1500MPa以上である。なお、炭素繊維とマトリクス樹脂の混練時に発生する炭素繊維の折損は、主にせん断力に起因して発生している。また、炭素繊維の耐せん断強度は繊維軸方向の引張強度と正の相関があり、かつ、引張強度は耐せん断強度と比較して測定が簡易なため、本発明では引張強度を用いている。
【0015】
本発明に用いられる炭素繊維は、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3355nm以上0.3365nm以下であることが好ましい。平均層面間隔(d002)は小さい方が結晶性に優れていることを表している。平均層面間隔(d002)が0.3355nmより小さい場合、結晶化が過剰状態となり、弾性率が高くなるために、逆に折損し易くなることがある。逆に平均層面間隔(d002)が0.3365より大きい場合、結晶化が不十分となり、所望の熱伝導率が発現しないことがある。平均層面間隔の好ましい範囲は0.3356〜0.3364であり、より好ましくは0.3357〜0.3363である。
【0016】
本発明に用いられる炭素繊維は、透過型電子顕微鏡による繊維末端観察において、グラフェンシートの端面が閉じていることが好ましい。グラフェンシートの端面が閉じている場合、余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化が起こり難い。このため、炭素繊維に活性点が生じず、熱伝導性組成物にした時、マトリクスの劣化、例えば加水分解を抑制し、湿熱耐久性能を向上することが可能となる。50万〜400万倍に拡大した透過型電子顕微鏡による視野範囲で、グラフェンシートの端面は80%超閉じていることが好ましい。80%以下であると余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化を引き起こし、マトリクスとの反応を促進する可能性があるため好ましくない。グラフェンシート端面の閉鎖率の好ましい範囲は90%以上であり、より好ましくは95%以上である。
【0017】
またグラフェンシート端面構造は、黒鉛化の前に粉砕を実施するか、黒鉛化の後に粉砕を実施するかにより、大きく異なる。すなわち、黒鉛化後に粉砕処理を行った場合、黒鉛化で成長したグラフェンシートが切断破断され、グラフェンシート端面が開いた状態になり易い。一方、黒鉛化前に粉砕処理を行った場合、黒鉛の成長過程でグラフェンシート端面がU字上に湾曲し、湾曲部分が炭素繊維に露出した構造になり易い。このため、グラフェンシート端面閉鎖率が80%を超えるような炭素繊維を得るためには、粉砕を行った後に黒鉛化処理することが好ましい。
【0018】
尚、グラフェンシートが閉じているとは、炭素繊維を構成するグラフェンシートそのものの端部が炭素繊維端部に露出することなく、グラファイト層が略U字上に湾曲し、湾曲部分が炭素繊維端部に露出している状態である。
【0019】
また、本発明に用いられる炭素繊維は走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平坦であることを特徴とする。ここで、実質的に平坦であるとは、フィブリル構造のような激しい凹凸を炭素繊維表面に有しないことを意味する。炭素繊維の表面に激しい凹凸のような欠陥が存在する場合には、マトリクス樹脂との混練に際して表面積の増大に伴う粘度の増大を引き起こし、成形性を悪化させる。よって、表面凹凸のような欠陥はできるだけ小さい状態が望ましい。より具体的には、走査型電子顕微鏡において1000倍で観察した像での観察視野に、凹凸のような欠陥が10箇所以下であることとする。
本発明に用いられる炭素繊維は、後述するが粉砕処理を行った後に黒鉛化処理を実施することによって、好ましく得ることができる。
【0020】
本発明においては熱伝導性樹脂組成物は、マトリクス樹脂100体積部に対して、10体積部以上100体積部の炭素繊維を含有することが好ましい。炭素繊維の含有量が10体積部未満の場合、高い熱伝導性が得られ難い。逆に炭素繊維の含有量が100体積部を超えると、熱伝導性フィラーを樹脂に分散させ、均一な熱伝導性樹脂組成物を得るのが困難になりやすく、また樹脂の流動性が不十分となりやすい。炭素繊維の含有量の好ましい範囲は20〜90体積部であり、より好ましくは30〜80体積部である。
【0021】
本発明においては熱伝導性樹脂組成物の成形性、機械物性などのその他特性をより高めるために、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼化アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素ウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維などの繊維状フィラーを必要な機能に応じて適宜添加してもよい。これらを2種類以上併用することも可能である。ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク及びセラミックビーズなどの非繊維状フィラーも必要に応じて適宜添加することが可能である。これらは中空であってもよく、さらにはこれらを2種類以上併用することも可能である。ただ、上記化合物は、密度が炭素繊維より大きなものが多く、軽量化を目的とするときには、添加量や添加比率に気を配る必要がある。
また、必要に応じて他の添加剤を複数、組成物に添加しても構わない。他の添加剤としては離型剤、難燃剤、乳化剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤を挙げることができる。
【0022】
[熱伝導性樹脂組成物の混練方法]
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法における、炭素繊維とマトリクス樹脂との混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダ等の公知の溶融混練装置を用いて好ましく実施できるが、炭素繊維の折損を抑制する観点で、単軸押出機を用いることが好ましい場合が多い。またニ軸押出機を用いて繊維状の炭素繊維をマトリクスに混練する場合には、溶融混練時の樹脂せん断力が比較的小さいタイプのスクリュ構成を取ることが好ましく、また、炭素繊維はサイドフィーダー等から投入し、混練時間を短めに設定することが好ましい場合が多い。
【0023】
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法における、炭素繊維とマトリクス樹脂との混練は、混練時の溶融粘度が100Pa・s以上2000Pa・s以下である。溶融粘度が100Pa・s未満の場合、樹脂の溶融粘度が小さいために、混練機内での炭素繊維のマトリクスへの分散が不十分となることがある。逆に2000Pa・sより大きい場合、樹脂の溶融粘度が大きいために、混練機内でサージングを発生し、吐出が不安定になることがある。なお、混練機内の熱伝導性樹脂組成物の溶融粘度は混練温度、スクリュ回転数、スクリュとシリンダ間のクリアランス、マトリクス樹脂の溶融粘度、炭素繊維の含有量で変わるため、好適範囲内となるように適宜調整を実施する。混練時の溶融粘度の好ましい範囲は、200〜1800Pa・sであり、より好ましくは300〜1600Pa・sである。
【0024】
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法における、炭素繊維とマトリクス樹脂との混練は、混練時の最大せん断応力が0.1MPa以上2MPa以下である。混練時の最大せん断応力が0.1MPa未満の場合、混練機内での炭素繊維のマトリクスへの分散が不十分となることがある。逆に2MPaより大きい場合、炭素繊維の折損が激しく発生し、熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率が小さくなってしまう。なお、混練時のせん断応力が最大となるのは、大概のケースでは、せん断速度が最大となる部分、すなわち、スクリュとシリンダ間のクリアランスの最狭幅部であり、最も炭素繊維の折損が発生する部分である。また、混練時のせん断応力は、混練時の樹脂の溶融粘度に比例して大小するため、上述した方法により、樹脂の溶融粘度を適宜調整する。混練時の最大せん断応力の好ましい範囲は、0.2〜1.5MPaであり、より好ましくは、0.3〜1.0MPaである。
【0025】
[マトリクス樹脂]
熱伝導性樹脂組成物のマトリクス樹脂としては、例えばポリエステル類及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート)、ポリスチレン類(ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンなど)及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂など)、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、ポリプロピレン類やポリエチレン類などのポリオレフィン類、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、ポリイミド類及びその共重合体、ポリアミドイミド類及びその共重合体、ポリカーボネート類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体、エラストマー、液晶性ポリエステル類などの液晶性ポリマー等が挙げられる。なかでもポリカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート類、ポリブチレンテレフタレート類、ポリエチレン−2,6−ナフタレート類、ナイロン類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリエーテルケトン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリスチレン類、液晶性ポリエステル類、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合樹脂類からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂が好ましい。これらから一種を単独で用いても、二種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0026】
[ピッチ系黒鉛化短繊維の製造方法]
以下本発明に用いられるピッチ系炭素短繊維の好ましい製造法について述べる。
本発明に用いられるピッチ系炭素短繊維の原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げられる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が好ましく、特にメソフェーズピッチが好ましい。メソフェーズピッチのメソフェーズ率としては少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。なお、メソフェーズピッチのメソフェーズ率は、溶融状態にあるピッチを偏光顕微鏡で観察することで確認出来る。
【0027】
さらに、原料ピッチの軟化点としては、230℃以上340℃以下が好ましい。不融化処理は、軟化点よりも低温で処理する必要がある。このため、軟化点が230℃より低いと、少なくとも軟化点未満の低い温度で不融化処理する必要があり、結果として不融化に長時間を要するため好ましくない。一方、軟化点が340℃を超えると、紡糸に340℃を超える高温が必要となり、ピッチの熱分解を引き起こし、発生したガスで糸に気泡が発生するなどの問題を生じるため好ましくない。軟化点のより好ましい範囲は250〜320℃、さらに好ましくは260〜310℃以下である。なお、原料ピッチの軟化点はメトラー法により求めることが出来る。原料ピッチは、二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。組み合わせる原料ピッチのメソフェーズ率は少なくとも90%以上であり、軟化点が230〜340℃であることが好ましい。
メソフェーズピッチは溶融法により紡糸され、その後不融化、炭化、粉砕、黒鉛化によってピッチ系黒鉛化短繊維となる。場合によっては、粉砕の後、分級工程を入れることもある。
【0028】
以下各工程の好ましい態様について説明する。
紡糸方法には、特に制限はないが、所謂溶融紡糸法を適応することができる。具体的には、口金から吐出したメソフェーズピッチをワインダーで引き取る通常の紡糸延伸法、熱風をアトマイジング源として用いるメルトブロー法、遠心力を利用してメソフェーズピッチを引き取る遠心紡糸法などが挙げられる。中でもピッチ系炭素繊維前駆体の形態の制御、生産性の高さなどの理由からメルトブロー法を用いることが望ましい。このため以下本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維の製造方法に関してはメルトブロー法について記載する。
【0029】
ピッチ系炭素繊維前駆体を形成する紡糸ノズルの形状はどのようなものであっても良い。通常真円状のものが使用されるが、適時楕円などの異型形状のノズルを用いても何ら問題ない。ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)としては、2〜20の範囲が好ましい。LN/DNが20を超えると、ノズルを通過するメソフェーズピッチに強いせん断力が付与され、繊維断面にラジアル構造が発現する。ラジアル構造の発現は、黒鉛化の過程で繊維断面に割れを生じさせることがあり、機械特性の低下を引き起こすことがあるため好ましくない。一方、LN/DNが2未満では、原料ピッチにせん断を付与することが出来ず、結果として黒鉛の配向が低いピッチ系炭素繊維前駆体となる。このため、黒鉛化しても黒鉛化度を十分に上げることが出来ず、熱伝導性を向上させ難く好ましくない。機械強度と熱伝導性の両立を達成するには、メソフェーズピッチに適度のせん断を付与する必要がある。このため、ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)は2〜20の範囲が好ましく、さらには3〜12の範囲が特に好ましい。
【0030】
紡糸時のノズルの温度、メソフェーズピッチがノズルを通過する際のせん断速度、ノズルからブローされる風量、風の温度等についても特に制約はなく、安定した紡糸状態が維持できる条件、即ち、メソフェーズピッチのノズル孔での溶融粘度が1〜100Pa・sの範囲にあれば良い。
【0031】
ノズルを通過するメソフェーズピッチの溶融粘度が1Pa・s未満の場合、溶融粘度が低すぎて糸形状を維持することが出来ず好ましくない。一方、メソフェーズピッチの溶融粘度が100Pa・sを超える場合、メソフェーズピッチに強いせん断力が付与され、繊維断面にラジアル構造を形成するため好ましくない。メソフェーズピッチに付与するせん断力を適切な範囲にせしめ、かつ繊維形状を維持するためには、ノズルを通過するメソフェーズピッチの溶融粘度を制御する必要がある。このため、メソフェーズピッチの溶融粘度を1〜100Pa・sの範囲にするのが好ましく、5〜25Pa・sの範囲にすることがさらに好ましい。
【0032】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、平均繊維径が5〜20μm以下であることを特徴とするが、ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径の制御は、ノズルの孔径を変更する、あるいはノズルからの原料ピッチの吐出量を変更する、あるいはドラフト比を変更することで調整可能である。ドラフト比の変更は、100〜400℃に加温された毎分100〜20000mの線速度のガスを細化点近傍に吹き付けることによって達成することができる。吹き付けるガスに特に制限は無いが、コストパフォーマンスと安全性の面から空気が望ましい。
【0033】
ピッチ系炭素繊維前駆体は、金網等のベルトに捕集されピッチ系炭素繊維前駆体ウェブとなる。その際、ベルト搬送速度により任意の目付量に調整できるが、必要に応じ、クロスラップ等の方法により積層させてもよい。ピッチ系炭素繊維前駆体ウェブの目付量は生産性及び工程安定性を考慮して、150〜1000g/mが好ましい。
【0034】
このようにして得られたピッチ系炭素繊維前駆体ウェブは、公知の方法で不融化処理し、ピッチ系不融化繊維ウェブにする。不融化は、空気、或いはオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素、臭素を空気に添加したガスを用いた酸化性雰囲気下で実施できるが、安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すると連続処理が望ましい。不融化処理は150〜350℃の温度で、一定時間の熱処理を付与することで達成される。より好ましい温度範囲は、160〜340℃である。昇温速度は1〜10℃/分が好適に用いられ、連続処理の場合は任意の温度に設定した複数の反応室を順次通過させることで、上記昇温速度を達成できる。昇温速度のより好ましい範囲は、生産性及び工程安定性を考慮して、3〜9℃/分である。
【0035】
ピッチ系不融化繊維ウェブは、600〜2000℃の温度で、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気中で炭化処理され、ピッチ系炭素繊維ウェブになる。炭化処理は、コスト面を考慮して、常圧かつ窒素雰囲気下での処理が望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すれば連続処理が望ましい。
【0036】
炭化処理されたピッチ系炭素繊維ウェブは、所望の繊維長にするために、切断、破砕・粉砕等の処理が実施される。また、場合によっては、分級処理が実施される。処理方式は所望の繊維長に応じて選定されるが、切断にはギロチン式、1軸、2軸及び多軸回転式等のカッターが好適に使用され、破砕、粉砕には衝撃作用を利用したハンマ式、ピン式、ボール式、ビーズ式及びロッド式、粒子同士の衝突を利用した高速回転式、圧縮・引裂き作用を利用したロール式、コーン式及びスクリュ式等の破砕機・粉砕機等が好適に使用される。所望の繊維長を得るために、切断と破砕・粉砕を多種複数機で構成してもよい。処理雰囲気は湿式、乾式のどちらでもよい。分級処理には、振動篩い式、遠心分離式、慣性力式、濾過式等の分級装置等が好適に使用される。所望の繊維長は、機種選定のみならず、ロータ・回転刃等の回転数、供給量、刃間クリアランス、系内滞留時間等を制御することによっても得ることができる。また、分級処理を用いる場合には、所望の繊維長は篩い網孔径等を調整することによっても得ることができる。
【0037】
上記の切断、破砕・粉砕処理、場合によっては分級処理を併用して作成したピッチ系炭素短繊維は、2000〜3500℃に加熱し黒鉛化して最終的なピッチ系黒鉛化短繊維とする。黒鉛化は、アチソン炉、電気炉等にて実施され、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気下等で実施される。
【0038】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、収束剤もしくは熱伝導性組成物に用いるマトリクスとの親和性をより高め、ハンドリング性の向上を目的として、表面処理をしても良い。表面処理の方法として特に限定は無いが、具体的には、電着処理、めっき処理、オゾン処理、プラズマ処理、酸処理などが挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)炭素繊維の平均繊維径は、JIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本測定し、その平均値から求めた。
(2)炭素繊維の平均繊維長は、粒度・形状測定器(株式会社セイシン企業製PITA−1)を用いて1500本測定し、その個数平均値から求めた。
(3)炭素繊維の(002)面の平均層面間隔(d002)は、X線回折法で求めた。測定手法は集中法とし、解析手法としては、学振法を用いた。
(4)炭素繊維の引張強度は、120本の炭素繊維の糸を張り、各々の繊維径を測定した後に、120本の機械強度を引張試験機(ORIENTEC RTC−1150A)で測定し、全数平均値を求めることで決定した。
(5)炭素繊維の端面は、透過型電子顕微鏡で100万倍の倍率で観察し、400万倍に写真上で拡大し、グラフェンシートを確認した。
(6)ピッチ系黒鉛化短繊維の表面は走査型電子顕微鏡で1000倍の倍率で観察し、凹凸を確認した。
(7)熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率は、4mm厚の熱伝導性樹脂組成物の成形体から3mm×10mmの短冊状にサンプルを切り出し、横に並べて一体化させ、ネッチ製LFA−447を用いて面内方向の熱伝導率を求めた。
(8)炭素繊維の残存平均繊維長は、マトリクス樹脂を焼飛ばし、残留繊維を粒度・形状測定器(株式会社セイシン企業製PITA−1)を用いて1500本測定し、その個数平均値から求めた。
【0040】
[実施例1]
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmφの孔の口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分5500mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径14.5μmのピッチ系短繊維を作製した。この時の紡糸温度は328℃であり、溶融粘度は13.5Pa・sであった。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付450g/mのピッチ系炭素繊維前駆体からなるピッチ系炭素繊維前駆体ウェブとした。
このピッチ系炭素繊維前駆体ウェブを空気中で170℃から320℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化し、さらに800℃で焼成を行った。このピッチ系炭素繊維ウェブを一軸回転式粉砕機で粉砕し、3000℃で黒鉛化した。
ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は9.8μm、平均繊維長は120μm、アスペクト比は12.2、(002)面の平均層面間隔(d002)は0.3361nm、繊維軸方向の引張強度は1600MPaであった。ピッチ系黒鉛化短繊維の端面は透過型顕微鏡の観察によりグラフェンシートが閉じていることを確認した。また、表面は走査型電子顕微鏡の観察により、凹凸は1個であり実質的に平坦であった。
上記で得られたピッチ系黒鉛化短繊維50体積部、ポリカーボネート樹脂(帝人化成製 パンライト(登録商標)L−1225WX)100体積部をドライブレンドし、単軸押出機を用いて溶融混練し、熱伝導性樹脂のペレットを得た。混練温度は280℃、スクリュ回転数130rpm、スクリュ径70mm、スクリュとシリンダ間の最狭クリアランス0.5mmとした。この混練時の熱伝導性樹脂組成物の溶融粘度は550Pa・sであり、最大せん断応力は0.5MPaであった。このペレットを用いて射出成形機(東芝機械製EC40NII)を用いて厚み4mmの熱伝導性成形品を得た。熱伝導性成形品の熱伝導率は14.7W/mKであった。また、残存平均繊維長は61μm、残存繊維のアスペクト比は6.2であった。
【0041】
[実施例2]
ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径を17.5μm、平均繊維長を120μm、アスペクト比を6.5とした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は10.6W/mKであった。また、残存平均繊維長は74μm、残存繊維のアスペクト比は4.2であった。
【0042】
[実施例3]
ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径を9.8μm、平均繊維長を350μm、アスペクト比を35.7とした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は15.0W/mKであった。また、残存平均繊維長は63μm、残存繊維のアスペクト比は6.4であった。
【0043】
[実施例4]
ピッチ系黒鉛化短繊維の繊維軸方向の引張強度を3000MPaとした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は15.6W/mKであった。また、残存平均繊維長は65μm、残存繊維のアスペクト比は6.6であった。
【0044】
[実施例5]
実施例1で作製したピッチ系黒鉛化短繊維を用いて、混練時の熱伝導性樹脂組成物の溶融粘度を1200Pa・s、最大せん断応力を1.1MPaとした以外は同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は9.8W/mKであった。また、残存平均繊維長は53μm、残存繊維のアスペクト比は5.4であった。
【0045】
[実施例6]
ピッチ系黒鉛化短繊維の(002)面の平均層間間隔(d002)を0.3357nmとした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は15.8W/mKであった。また、残存平均繊維長は60μm、残存繊維のアスペクト比は6.1であった。
【0046】
[実施例7]
実施例1で作製したピッチ系黒鉛化短繊維30体積部をポリカーボネート樹脂(帝人化成製 パンライト(登録商標)L−1225WX)100体積部にドライブレンドした以外は同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は8.8W/mKであった。また、残存平均繊維長は63μm、残存繊維のアスペクト比は6.4であった。
【0047】
[実施例8]
実施例1で作製したピッチ系黒鉛化短繊維を用いて、単軸押出機を二軸押出機に変更した以外は同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は12.9W/mKであった。また、残存平均繊維長は58μm、残存繊維のアスペクト比は5.9であった。
【0048】
[実施例9]
ピッチ系黒鉛化短繊維の(002)面の平均層間間隔(d002)を0.3388nmとした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は7.2W/mKであった。また、残存平均繊維長は64μm、残存繊維のアスペクト比は6.5であった。
【0049】
[実施例10]
実施例1で作製したピッチ系黒鉛化短繊維5体積部をポリカーボネート樹脂(帝人化成製 パンライト(登録商標)L−1225WX)100体積部にドライブレンドした以外は同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は1.2W/mKであった。また、残存平均繊維長は78μm、残存繊維のアスペクト比は8.0であった。
【0050】
[比較例1]
ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径を3.8μm、平均繊維長を120μm、アスペクト比を31.5とした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は7.9W/mKであった。また、残存平均繊維長は12μm、残存繊維のアスペクト比は3.2であった。
【0051】
[比較例2]
ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径を9.8μm、平均繊維長を880μm、アスペクト比を89.8とした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製してみたところ、マトリクス樹脂の熱分解点まで溶融温度を上げても、溶融粘度が2500Pa・sとなり、サージングが発生してしまい、熱伝導性樹脂組成物を安定して得ることができなかった。
【0052】
[比較例3]
ピッチ系黒鉛化短繊維の繊維軸方向の引張強度を200MPaとした以外は実施例1と同様のピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。また、そのピッチ系黒鉛化短繊維を使用して、実施例1と同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製した。この熱伝導性成形品の熱伝導率は8.1W/mKであった。また、残存平均繊維長は36μm、残存繊維のアスペクト比は3.7であった。
【0053】
[比較例4]
実施例1で作製したピッチ系黒鉛化短繊維を用いて、混練温度を下げることにより、混練時の熱伝導性樹脂組成物の溶融粘度を2600Pa・s、最大せん断応力を2.4MPaとした以外は同様の方法で熱伝導性樹脂組成物を作製してみたところ、サージングが発生してしまい、熱伝導性樹脂組成物を安定して得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学顕微鏡で観測した平均繊維径が5μm以上20μm以下であり、平均繊維長が20μm以上500μm以下であり、アスペクト比が4以上50以下であり、繊維軸方向の引張強度が1000MPa以上である炭素繊維と、マトリクス樹脂とを、混練時の樹脂の溶融粘度100Pa・s以上2000Pa・s以下、最大せん断応力が0.1MPa以上2MPa以下で混練することによる熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
炭素繊維が、メソフェーズピッチを原料としたピッチ系黒鉛化短繊維であり、X線回折により求めた(002)面の平均層面間隔(d002)が0.3355nm以上0.3365nm以下であり、透過型電子顕微鏡によるフィラー端面観察においてグラフェンシートが閉じており、かつ走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平坦である請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
マトリクス樹脂100体積部に対して、10体積部以上100体積部以下の炭素繊維を含有する請求項1〜2のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
マトリクス樹脂が、ポリカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート類、ポリブチレンテレフタレート類、ポリエチレン−2,6−ナフタレート類、ナイロン類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリエーテルケトン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリスチレン類、液晶性ポリエステル類、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合樹脂類からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
炭素繊維とマトリクス樹脂との混練に単軸押出機を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−82296(P2012−82296A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228588(P2010−228588)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】