説明

熱伝導性粘着シートの製造方法

【課題】 比較的低い弾性率を有しつつ熱伝導率に優れた熱伝導性粘着剤層を形成することができる熱伝導性粘着シートの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 熱伝導性粒子とアクリルポリマー成分とを含む熱伝導性粘着剤組成物を調製する組成物調製工程と、該熱伝導性粘着剤組成物でシート状の熱伝導性粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程とを実施することにより前記熱伝導性粘着剤層を有する粘着シートを製造する熱伝導性粘着シートの製造方法であって、前記組成物調製工程では、前記熱伝導性粘着剤組成物の構成成分として炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を配合することを特徴とする熱伝導性粘着シートの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱伝導性及び粘着性がありシート状に成形された熱伝導性粘着剤層を有する熱伝導性粘着シートが知られている。斯かる熱伝導性粘着シートは、熱伝導性粘着剤層が電子機器等の発熱源と筐体やヒートシンク等との間に配されて用いられる。また、熱伝導性粘着剤層の粘着性によって、例えば電子機器等の発熱源をヒートシンクに固定するように用いられ、発熱源からの熱をヒートシンクへ効率的に伝える役割を担う。
【0003】
斯かる熱伝導性粘着シートの製造方法としては、例えば、無機窒化物粒子などの熱伝導性粒子とアクリルポリマー成分とを含む熱伝導性粘着剤組成物を用いてシート状の熱伝導性粘着剤層を形成する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この種の熱伝導性粘着シートの製造方法により得られる熱伝導性粘着剤層は、熱伝導性粘着剤組成物に比較的多量の熱伝導性粒子を含むことから、熱伝導性が十分なものになり得るものの、その分、弾性率が高くなり粘着性が低くなるという問題がある。
【0005】
即ち、この種の熱伝導性粘着シートの製造方法により得られる熱伝導性粘着剤層は、弾性率を比較的低いものにすることにより粘着性を十分に保つことと、熱伝導率を十分に保つこととを両立することが比較的困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−292157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑みてなされたものであり、比較的低い弾性率を有しつつ熱伝導率に優れた熱伝導性粘着剤層を有する熱伝導性粘着シートを製造できる熱伝導性粘着シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱伝導性粘着シートの製造方法は、熱伝導性粒子とアクリルポリマー成分とを含む熱伝導性粘着剤組成物を調製する組成物調製工程と、該熱伝導性粘着剤組成物でシート状の熱伝導性粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程とを実施することにより前記熱伝導性粘着剤層を有する粘着シートを製造する熱伝導性粘着シートの製造方法であって、前記組成物調製工程では、前記熱伝導性粘着剤組成物の構成成分として炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を配合することを特徴とする。
【0009】
斯かる熱伝導性粘着シートの製造方法によれば、前記熱伝導性粘着剤組成物の構成成分として炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を配合することにより、これらの有機化合物を含まない熱伝導性粘着剤組成物で形成された熱伝導性粘着剤層より、熱伝導性粘着剤層の弾性率を低くでき、しかも熱伝導性を高くできる。
【0010】
また、本発明に係る熱伝導性粘着シートの製造方法においては、好ましくは、前記組成物調製工程で、前記熱伝導性粒子100重量部に対して、炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を10〜40重量部用いる。
斯かる数値範囲を採用することにより、より低い弾性率を有しつつ、熱伝導率により優れた熱伝導性粘着剤層を形成することができるという利点がある。
【0011】
また、本発明に係る熱伝導性粘着シートの製造方法においては、好ましくは、炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を含む前記熱伝導性粘着剤組成物で熱伝導性粘着剤層を形成することにより、該有機化合物を含まない熱伝導性粘着剤組成物で形成した熱伝導性粘着剤層の弾性率に対して、前記熱伝導性粘着剤層の弾性率を90%以下にする。
【0012】
また、本発明に係る熱伝導性粘着シートの製造方法においては、好ましくは、前記組成物調製工程で、前記熱伝導性粘着剤組成物の構成成分として、トルエン、ヘキサン、メタノール、及びエタノールからなる群より選ばれた少なくとも1種を配合する。
斯かる有機化合物を用いることにより、より低い弾性率を有しつつ、熱伝導率により優れた熱伝導性粘着剤層を形成することができるという利点がある。
【0013】
また、本発明に係る熱伝導性粘着シートの製造方法においては、好ましくは、前記組成物調製工程で、前記熱伝導性粒子として少なくとも窒化ホウ素粒子を用いる。
【0014】
また、本発明に係る熱伝導性粘着シートの製造方法においては、好ましくは、前記熱伝導性粘着剤層を熱伝導率が0.5W/m・K以上になるように形成する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、比較的低い弾性率を有しつつ熱伝導率に優れた熱伝導性粘着剤層を有する熱伝導性粘着シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】熱伝導性粘着剤層の引張弾性率の相対値と熱伝導率の相対値とをプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る熱伝導性粘着シートの製造方法の実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態に係る熱伝導性粘着シートの製造方法は、熱伝導性粒子とアクリルポリマー成分とを含む熱伝導性粘着剤組成物を調製する組成物調製工程と、該熱伝導性粘着剤組成物でシート状の熱伝導性粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程とを実施することにより前記熱伝導性粘着剤層を有する粘着シートを製造する熱伝導性粘着シートの製造方法であって、前記組成物調製工程では、前記熱伝導性粘着剤組成物の構成成分として炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を配合するものである。
また、粘着剤層形成工程の後に、必要に応じて、支持体としてのフィルムを熱伝導性粘着剤層の表面に貼り付けることにより熱伝導性粘着シートを完成させる仕上げ工程を実施する。
【0019】
前記組成物調製工程では、熱伝導性粒子と、アクリルポリマー成分と、炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物とが配合されたペースト状乃至液状の熱伝導性粘着剤組成物を調製する。
【0020】
前記熱伝導性粒子は、熱伝導性粘着剤層の構成成分として配合されることにより、配合されない場合より熱伝導性粘着剤層の熱伝導性を高めるものである。
【0021】
前記熱伝導性粒子としては、無機窒化物粒子、金属水酸化物粒子、金属酸化物粒子などを用いることができる。
【0022】
前記無機窒化物粒子としては、例えば、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ガリウム粒子等を用いることができる。なかでも、より熱伝導性に優れ電気絶縁性に優れるという点で、窒化ホウ素粒子を用いることが好ましい。
前記金属水酸化物粒子としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの各粒子を用いることができる。
なかでも、金属水酸化物粒子としては、熱伝導性がより高く、電気絶縁性に優れるという点で、水酸化アルミニウム粒子を用いることが好ましい。
前記金属酸化物粒子としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル、アンチモンドープ酸化スズなどの各粒子を用いることができる。
なかでも、金属酸化物粒子としては、熱伝導性がより高く、電気絶縁性に優れるという点で、酸化アルミニウム粒子を用いることが好ましい。
前記熱伝導性粒子としては、その他にも、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、白金、カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンドなどの各粒子を用いることができる。
【0023】
前記熱伝導性粒子としては、上記の各種粒子の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
前記熱伝導性粒子の形状としては、特に限定されず、例えば、球状、針状、又は板状などが挙げられる。
【0025】
前記熱伝導性粒子の大きさは、形状が球状の場合には、1次平均粒子径が好ましくは0.1〜1000μm、より好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜20μmである。1次平均粒子径が1000μm以下であると、熱伝導性粘着剤層の厚さに対する熱伝導性粒子の大きさの比が小さくなり得ることから、熱伝導性粘着剤層の厚さのバラツキを生じにくい。
また、前記熱伝導性粒子の大きさは、形状が針状または板状の場合には、最大長さが好ましくは0.1〜1000μm、より好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜20μmである。該最大長さが1000μm以下であることにより、熱伝導性粒子同士の凝集が起こりにくくなり、取り扱いが容易になるという利点がある。
また、熱伝導性粒子の形状が針状である場合に、長軸長さ/短軸長さ若しくは長軸長さ/厚さで表されるアスペクト比、又は、形状が板状の場合に、対角長さ/厚さ若しくは長辺長さ/厚さで表されるアスペクト比は、1〜10000であることが好ましく、10〜1000であることがより好ましい。
【0026】
前記熱伝導性粒子としては、一般的な市販品を用いることができる。窒化ホウ素としては、商品名「HP−40」(水島合金鉄社製)、商品名「PT620」(モメンティブ社製)等を、水酸化アルミニウムとしては、商品名「ハイジライトH−32」、商品名「ハイジライトH−42」(昭和電工社製)等を、酸化アルミニウムとしては、商品名「AS−50」(昭和電工社製)等を、水酸化マグネシウムとしては、商品名「KISUMA 5A」(協和化学工業社製)等を、アンチモンドープ酸化スズとしては、商品名「SN−100S」、「SN−100P」、「SN−100D(水分散品)」(石原産業社製)等を、酸化チタンとしては、商品名「TTOシリーズ」(石原産業社製)等を、酸化亜鉛としては、商品名「SnO−310」、「SnO−350」、「SnO−410」(住友大阪セメント社製)等を例えば用いることができる。
【0027】
前記熱伝導性粒子は、アクリルポリマー成分100重量部に対し、好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは50〜500重量部、さらに好ましくは100〜400重量部を用いる。ポリマー成分100重量部に対して熱伝導性粒子を10重量部以上用いることにより、熱伝導性粘着剤層の熱伝導性がより高いものになるという利点があり、熱伝導性粒子を1000重量部以下用いることにより、熱伝導性粘着剤層の可とう性が高いものとなり、粘着力がより優れたものになり得るという利点がある。
【0028】
前記アクリルポリマー成分としては、一般的に用いられているアクリルポリマーを用いることができる。
【0029】
前記アクリルポリマーは、モノマー単位として、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル系モノマーをモノマー単位として含有している。
CH2=C(R1)COOR2 ・・・(1)
(ただし、R1は水素またはメチル基であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基である)
【0030】
上記一般式(1)において、R2のアルキル基は、好ましくは炭素数3〜12であり、より好ましくは4〜8である。また、R2のアルキル基は、直鎖状アルキル基または分岐鎖状アルキル基のいずれであってもよいが、ガラス転移点がより低いという点で分岐鎖状アルキル基が好ましい。
【0031】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
また、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル系モノマーは、アクリルポリマーにおける含有量が、50〜98重量%であることが好ましく、60〜98重量%であることがより好ましく、70〜98重量%であることがさらに好ましい。前記(メタ)アクリル系モノマーがアクリルポリマー中に50重量%以上含まれることにより、熱伝導性粘着剤層の粘着性がより優れたものになり得るという利点がある。
【0034】
前記アクリルポリマーは、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーなどの極性基含有モノマーを用いて重合されたものが好ましい。
【0035】
また、前記アクリルポリマーは、全モノマーに対して前記極性基含有モノマーを0.1〜20重量%用いて重合されたものが好ましく、0.2〜10重量%用いて重合されたものがより好ましく、0.2〜7重量%用いて重合されたものがさらに好ましい。全モノマーに対して前記極性基含有モノマーを0.1〜20重量%用いて重合することにより、得られるアクリルポリマーの粘着性がより優れたものになり得るという利点がある。
【0036】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、分子中に1以上のヒドロキシ基を有する重合性モノマーである。該ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどを用いることができる。なかでも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0037】
前記カルボキシル基含有モノマーは、分子中に1以上のカルボキシル基を有する重合性モノマーである。前記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などを用いることができる。なかでも、アクリル酸、又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0038】
前記アクリルポリマーの合成においては、アクリルポリマーのガラス転移点や熱伝導性粘着剤層の剥離性を調整すべく、上述した(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマー以外の他の重合性モノマーを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0039】
前記他の重合性モノマーとしては、例えば、アクリルポリマーの凝集力又は耐熱性を向上させるべく、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどを用いることができる。また、アクリルポリマー中において架橋化基点として働きアクリルポリマーの粘着力を向上させるべく、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、又はビニルエーテルモノマーなどの架橋性官能基を有するモノマーなどを適宜用いることができる。
前記他の重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などを用いることができる。
【0041】
前記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどを用いることができる。
【0042】
前記ニトリル基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを用いることができる。
【0043】
前記ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドンなどを用いることができる。
【0044】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどを用いることができる。
【0045】
前記アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンなどを用いることができる。
【0046】
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどを用いることができる。
【0047】
前記イミド基含有モノマーとしては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、イタコンイミドなどを用いることができる。
【0048】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを用いることができる。
【0049】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどを用いることができる。
【0050】
前記他の重合性モノマーとしては、さらに要すれば、例えば、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのベンゼン環含有(メタ)アクリル酸エステル類などを用いることもできる。
【0051】
前記他の重合性モノマーは、全モノマーに対して、0〜50重量%用いて重合されたものが好ましく、0〜35重量%用いて重合されたものがより好ましく、0〜25重量%用いて重合されたものがさらに好ましい。
【0052】
前記アクリルポリマーは、重量平均分子量が60万以上であることが好ましく、70万〜300万であることがより好ましく、80万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が60万以上であることにより、アクリルポリマーを含む熱伝導性粘着剤層の耐久性がより優れたものになり得るという利点があり、300万以下であることにより、熱伝導性粘着剤組成物の粘度が十分低いものとなり得ることから、作業性に優れるという利点がある。
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0053】
前記アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、熱伝導性粘着剤層の粘着性が適度なものになり得るという点で、−5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましい。アクリルポリマーのガラス転移温度が−5℃以下であることにより、アクリルポリマーの流動性が高くなり、熱伝導性粘着剤層と接する被着体(筐体やヒートシンク、電子機器等の発熱源)への濡れが十分なものとなり得る。従って、熱伝導性粘着剤層の粘着力がより高まり得る。なお、アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマーの種類やモノマーの組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。
【0054】
前記アクリルポリマーは、従来公知の各種ラジカル重合によって調製できる。各種ラジカル重合としては、溶液重合、塊状重合、乳化重合などを適宜選択することができる。なお、アクリルポリマーは、単独重合体(ホモポリマー)であっても共重合体(コポリマー)であってもよく、共重合体である場合には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれであってもよい。
【0055】
前記アクリルポリマーを溶液重合によって調製する場合には、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどを用いることができる。該重合溶媒は、アクリルポリマーが調製された後、通常、加熱による揮発等によって取り除かれる。
前記アクリルポリマーの具体的な溶液重合方法としては、窒素などの不活性ガス気流下で、全モノマーの100重量部に対して、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.01〜0.2重量部用い、重合溶媒としての酢酸エチル中で、50〜90℃程度の温度により、2〜30時間程度の重合反応を行う方法が例示される。
【0056】
また、前記アクリルポリマーの重合においては、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤を用いることもできる。これら重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤としては、特に限定されず、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。なお、連鎖移動剤を用いることにより、アクリルポリマーの分子量を適宜調整することができる。
【0057】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2−2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルブロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(商品名「VA-057」 和光純薬社製)などのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。該重合開始剤は、全モノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部用いることが好ましく、0.02〜0.5重量部用いることがより好ましい。
【0059】
前記連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプ卜酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどを用いることができる。
【0060】
前記連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。前記連鎖移動剤は、全モノマー100重量部に対して、通常、0.01〜0.1重量部用いる。
【0061】
前記アクリルポリマーを乳化重合によって調製する場合には、乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
前記乳化剤としては、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された反応性乳化剤を用いることもできる。該反応性乳化剤としては、具体的には、例えば、商品名「アクアロンHS―10」、「アクアロンHS−20」、「アクアロンKH−10」、「アクアロンBC−05」、「アクアロンBC−10」、「アクアロンBC−20」(いずれも第一工業製薬社製)、「アデカリアソープSE10N」(ADEKA社製)などを用いることができる。
前記乳化剤は、モノマー100重量部に対して、安定的な乳化重合をおこなうという点で、0.3〜5重量部用いることが好ましく、0.5〜1重量部用いることがより好ましい。
【0063】
前記反応性乳化剤は、重合後にポリマー中に取り込まれるため、親水性基を有する反応性乳化剤が単独で反応後に残存しにくく、熱伝導性粘着剤層の耐水性が優れたものになり得るという点で好ましい。
【0064】
上述した炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物としては、例えば以下のものを用いることができる。
前記炭素数8以下の環式有機化合物は、好ましくは炭素数8以下の6員環有機化合物であり、より好ましくは炭素数8以下であり且つ炭素が環を構成してなる6員環有機化合物であり、該化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンなどを用いることができる。
前記ヒドロキシ基を有する炭素数3以下の有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどを用いることができる。
前記ケトン基を有する炭素数3以下の有機化合物としては、例えば、アセトンなどを用いることができる。
前記アルデヒド基を有する炭素数3以下の有機化合物としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ジメチルホルムアミドなどを用いることができる。
前記カルボキシル基を有する炭素数3以下の有機化合物としては、例えば、酢酸、蟻酸などを用いることができる。
前記ニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物としては、例えば、アセトニトリルなどを用いることができる。
これらの中でも、特に、メタノール、エタノール、トルエン、又はヘキサンが好ましい。即ち、メタノール、エタノール、トルエン、及びヘキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0065】
上述した炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物は、前記熱伝導性粒子100重量部に対して、10〜40重量部用いることが好ましく、20〜35重量部用いることがより好ましい。
斯かる有機化合物を前記熱伝導性粒子100重量部に対して10重量部以上用いることにより、前記熱伝導性粘着剤層の弾性率をより低いものにできるという利点がある。また、前記熱伝導性粒子100重量部に対して40重量部を超えて用いると、後述するアクリルポリマー成分溶解用溶剤に溶解されるアクリルポリマーの溶解性が熱伝導性粘着剤組成物において低いものとなる場合があり得る。
【0066】
前記組成物調製工程では、本発明の効果を損なわない範囲で、前記熱伝導性粘着剤組成物に、上述した熱伝導性粒子、アクリルポリマー成分、炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物以外に、アクリルポリマー成分溶解用溶剤、架橋剤、シランカップリング剤、粘着付与剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料などといったゴム、プラスチック配合薬品として一般に用いられるものを適宜加えることができる。
【0067】
前記組成物調製工程では、熱伝導性粘着剤組成物におけるアクリルポリマー成分の溶解性をより十分なものにする点、又は、熱伝導性粘着剤組成物の粘度を適度に低いものとし熱伝導性粘着剤組成物を取り扱いやすくするという点で、熱伝導性粘着剤組成物にアクリルポリマー成分溶解用溶剤をさらに配合することが好ましい。
前記アクリルポリマー成分溶解用溶剤は、アクリルポリマー成分を溶解し得るものであれば特に限定されない。
該アクリルポリマー成分溶解用溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを用いることができる。
【0068】
前記組成物調製工程では、熱伝導性粘着剤層の接着力、耐久力をより優れたものにするという点で、熱伝導性粘着剤組成物に前記架橋剤を含有させることが好ましい。
該架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤など、従来公知の架橋剤を用いることができ、なかでも、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
前記架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
前記架橋剤は、前記アクリルポリマー成分100重量部に対し、0.02〜5重量部用いることが好ましく、0.04〜3重量部用いることがより好ましく、0.05〜2重量部用いることがさらに好ましい。
前記架橋剤をアクリルポリマー成分100重量部に対し0.02重量部以上用いることにより、熱伝導性粘着剤層の凝集力や耐久性をより確実に十分なものとすることができ、5重量部以下用いることにより、アクリルポリマー成分の過剰な架橋形成が抑制され、熱伝導性粘着剤層の粘着性がより優れたものになり得るという利点がある。
【0070】
前記イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネー卜などの脂環族イソシアネー卜、ヘキサメチレンジイソシアネー卜などの脂肪族イソシアネー卜などを用いることができる。
具体的には、前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級指肪族ポリイソシアネー卜類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネー卜類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名「コロネートL」 日本ポリウレタン工業社製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネー卜3量体付加物(商品名「コロネートHL」 日本ポリウレタン工業社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名「コロネートHX」 日本ポリウレタン工業社製)などのイソシアネート付加物;ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物;イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどを用いることができる。
【0071】
前記組成物調製工程では、架橋された熱伝導性粘着剤層のゲル分率が、40〜90重量%となるように架橋剤の量を調整することが好ましく、50〜85重量%となるように架橋剤の量を調整することがより好ましく、55〜80重量%となるように架橋剤の量を調整することがさらに好ましい。ゲル分率が40重量%以上であることにより、凝集力がより十分になり熱伝導性粘着剤層の耐久性がより優れたものになり得るという利点があり、ゲル分率が90重量%以下であることにより、熱伝導性粘着剤層の粘着性がより優れたものになり得るという利点がある。
【0072】
なお、熱伝導性粘着剤層のゲル分率(重量%)は、熱伝導性粘着剤層から乾燥重量W1(g)の試料を採取し、これを酢酸エチルに浸漬した後、前記試料の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W2(g)を測定し、(W2/W1)×100を計算して求めた値である。
【0073】
前記組成物調製工程では、熱伝導性粘着剤層の接着力、耐久力をより優れたものにし、熱伝導性粒子とアクリルポリマー成分との親和性をより向上させる目的で、熱伝導性粘着剤組成物に前記シランカップリング剤を含有させることができる。
【0074】
前記シランカップリング剤としては、従来公知のものを適宜用いることができ、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ基含有シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などを用いることができる。
【0075】
前記シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。前記シランカップリング剤は、前記アクリルポリマー成分100重量部に対し、0.01〜10重量部用いることが好ましく、0.02〜5重量部用いることがより好ましく、0.05〜2重量部用いることがさらに好ましい。
前記シランカップリング剤を前記アクリルポリマー成分100重量部に対し0.01重量部以上用いることにより、熱伝導性粒子の表面がより確実にシランカップリング剤によって被覆され、熱伝導性粒子とアクリルポリマー成分との親和性がより高まり得るという利点があり、前記アクリルポリマー成分100重量部に対し10重量部以下用いることにより、熱伝導性粘着剤層の熱伝導性がより高まり得る。
【0076】
前記組成物調製工程では、熱伝導性粘着剤層の接着力、耐久力をより向上させる目的で、粘着付与剤を用いることができる。
【0077】
前記粘着付与剤としては、従来公知のものを適宜用いることができる。該粘着付与剤としては、具体的には例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、およびエラストマーなどを用いることができる。
【0078】
前記粘着付与剤は、アクリルポリマー成分100重量部に対し、10〜100重量部の量で熱伝導性粘着剤組成物に含有させることが好ましく、20〜80重量部含有させることがより好ましく、30〜50重量部含有させることがさらに好ましい。
【0079】
前記熱伝導性粘着剤組成物に含まれる各成分を混合する方法としては、従来公知のミキサーなどを用いて均一に混合する方法などを採用することができる。
【0080】
続いて、前記粘着剤層形成工程について詳しく説明する。
【0081】
前記粘着剤層形成工程では、支持体付熱伝導性粘着シートを製造すべく、例えば、前記熱伝導性粘着剤組成物をフィルムなどの支持体上にコーティングし、熱伝導性粘着剤組成物に含まれる揮発性成分を揮発させて除去することにより、シート状の熱伝導性粘着剤層を支持体上に形成することができる。
なお、熱伝導性粘着剤組成物に含まれる揮発性成分としては、上述した炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物などが挙げられ、アクリルポリマー成分溶解用溶剤を用いた場合は、斯かる溶剤も挙げられる。
【0082】
前記支持体としては、シート状の熱伝導性粘着剤層から容易に剥離され得るものを好適に用いることができ、具体的には、紙、布、不織布などの多孔質材料、プラスチックフィルム、並びに金属箔などを用いることができる。
前記支持体の形状としては、シート状、ネット状、発泡体状、又はこれらのラミネート体などが挙げられる。前記支持体としては、表面平滑性に優れる点からシート状のプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0083】
前記支持体として用いられるプラスチックフィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0084】
前記フィルムには、必要に応じて、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤もしくは脂肪酸アミド系離型剤、又はシリカ粉などを用いた、離型処理又は防汚処理をすることができる。また、前記フィルムには、必要に応じて、一般的な帯電防止剤を塗布すること、繰り込むこと、蒸着することなどによる帯電防止処理をすることもできる。
【0085】
前記フィルムの表面に、シリコーン系離型剤処理、長鎖アルキル系離型剤処理、フッ素系離型剤処理などの処理を適宜おこなうことにより、フィルムが熱伝導性粘着剤層から剥離しやすくなる剥離性をより高めることができる。
前記フィルムの厚さは、通常、5〜200μm、好ましくは5〜100μmである。
【0086】
前記熱伝導性粘着剤組成物を支持体にコーティングする方法としては、従来公知の一般的な方法を採用することができ、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコートなどにより、ペースト状乃至液状の熱伝導性粘着剤組成物を支持体にコーティングすることができる。
【0087】
形成された前記熱伝導性粘着剤層の厚さは、20μm〜5mmであることが好ましく、50μm〜2mmであることがより好ましく、100μm〜1mmであることがさらに好ましい。
【0088】
前記熱伝導性粘着シートの製造方法では、好ましくは、前記熱伝導性粘着剤層を熱伝導率が0.5W/m・K以上となるように形成することが好ましい。熱伝導率が0.5W/m・K以上となるように形成することにより、熱伝導性粘着剤層が、例えば半導体モジュールのヒートシンクなどに接着されて用いられる場合でも、十分な熱伝導性能を発揮することができる。
前記熱伝導性粘着剤層を熱伝導率が0.5W/m・K以上となるように形成することは、例えば、前記アクリルポリマー成分と前記熱伝導性粒子との量比を変化させることによりおこなうことができる。具体的には、例えば、前記アクリルポリマー成分に対する前記熱伝導性粒子の重量比を高めることにより、熱伝導性粘着剤層の熱伝導率を高めることができる。
【0089】
前記熱伝導性粘着シートの製造方法では、炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を含む前記熱伝導性粘着剤組成物で熱伝導性粘着剤層を形成することにより、該有機化合物を含まない熱伝導性粘着剤組成物で形成した熱伝導性粘着剤層の弾性率に対して、前記熱伝導性粘着剤層の弾性率を90%以下にすることが好ましい。即ち、該有機化合物を含む前記熱伝導性粘着剤組成物を用いることにより、該有機化合物を含まない熱伝導性粘着剤組成物で形成した熱伝導性粘着剤層の弾性率に対して、前記熱伝導性粘着剤層の弾性率を90%以下にするように熱伝導性粘着剤層を形成することが好ましい。
前記熱伝導性粘着剤層の弾性率を低下させることは、例えば、熱伝導性粘着剤組成物に含まれる、炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物の量を増やすことによっておこなうことができる。
なお、“熱伝導性粘着剤層の弾性率を90%以下にする”とは、炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を用いなかった点以外は同様にして作製した熱伝導性粘着剤層の弾性率に対して、熱伝導性粘着剤層の弾性率を90%以下にすることを意味する。
【0090】
前記熱伝導性粘着シートの製造方法では、要すれば、前記粘着剤層形成工程を行った後、フィルムなどの支持体をさらに熱伝導性粘着剤層の表面に貼り付けることにより熱伝導性粘着シートを完成させる仕上げ工程を実施することができる。
該仕上げ工程を実施することにより製造された熱伝導性粘着シートは、シート状の熱伝導性粘着剤層の両側にフィルムなどの支持体が配されてなる。そして、斯かる熱伝導性粘着シートは、例えば、2つの支持体が熱伝導性粘着剤層から剥離されて、熱伝導性粘着剤層が半導体モジュールのヒートシンクなどに接着された状態で使用され得る。
【0091】
なお、本発明においては、発明の効果が著しく損なわれない範囲において、従来公知の技術事項を適宜採用し得る。
【0092】
例えば、上記実施形態では、シート状の熱伝導性粘着剤層の一方側又は両側に支持体が配されてなる熱伝導性粘着シートの製造方法について説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、例えば、シート状の熱伝導性粘着剤層のみでなる熱伝導性粘着シートの製造方法であってもよい。
【実施例】
【0093】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
(実施例1)
「アクリルポリマーの合成」
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌機を備えた反応容器中に下記の原料を加え、
アクリル酸ブチル((メタ)アクリル系モノマー): 70重量部
2−エチルヘキシルアクリレート((メタ)アクリル系モノマー): 30重量部
アクリル酸(カルボキシル基含有モノマー): 3重量部
4−ヒドロキシブチルアクリレート(ヒドロキシ基含有モノマー): 0.05重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤): 0.1重量部
トルエン(重合溶媒): 155重量部
系内を十分室素ガスで置換した後、80℃で3時間加熱してアクリルポリマー溶液を得た。このアクリルポリマー溶液から重合溶媒を留去してアクリルポリマーを得た。
「組成物調製工程」
・原料
上記アクリルポリマー: 100重量部
酢酸エチル(アクリルポリマー成分溶解用溶剤): 55重量部
メタノール: 30重量部
窒化ホウ素粒子(商品名「HP−40」水島合金鉄社製): 100重量部
イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン社製)
: 1重量部
合成したアクリルポリマー100重量部を反応容器中で酢酸エチル55重量部に分散させた。次に、メタノール30重量部を加え混合した後に、熱伝導性粒子としての上記窒化ホウ素粒子100重量部を加え、上記架橋剤1重量部をさらに加えた。
この混合溶液を800rpmで3分混練撹拌した後、1200rpmで3分間脱泡撹拌した。このようにして組成物調製工程をおこない、液状の熱伝導性粘着剤組成物を調製した。
「粘着剤層形成工程」
次いで、調製した熱伝導性粘着剤組成物を、片面が離型処理された厚さ38μmのポリエステルフィルム(支持体)(シリコーン離型処理品、商品名「ルミラー S−10 #38」東レ社製)の離型処理された面上に、硬化後の厚さが120μmとなるようにロールコーターにて塗布した。そして、室温で5分間、水平に静置した後に、130℃の乾燥オーブン(エスペック社製)で10分間の熱風乾燥を行った。このようにして粘着剤層形成工程をおこない、シート状の熱伝導性粘着剤層を形成した。
「仕上げ工程」
乾燥されて硬化した熱伝導性粘着剤層と、片面が離型処理された厚さ38μmのポリエステルフィルム(上記のポリエステルフィルム)の離型処理面とが接するように貼り合わせ、仕上げ工程をおこない、熱伝導性粘着シートを製造した。
【0095】
(実施例2)
メタノールに代えてトルエンを用いた点以外は、実施例1と同様にして熱伝導性粘着シートを製造した。
【0096】
(実施例3)
メタノールに代えてエタノールを用いた点以外は、実施例1と同様にして熱伝導性粘着シートを製造した。
【0097】
(実施例4)
メタノールに代えてヘキサンを用いた点以外は、実施例1と同様にして熱伝導性粘着シートを製造した。
【0098】
(比較例1)
メタノールを用いることに代えて何も用いなかった(添加しなかった)点以外は、実施例1と同様にして熱伝導性粘着シートを製造した。
【0099】
(比較例2)
メタノールに代えて水を用いた点以外は、実施例1と同様にして熱伝導性粘着シートを製造した。
【0100】
<引張弾性率の測定>
各実施例及び各比較例の熱伝導性粘着シートの熱電導性粘着剤層から、初期長さ10mm、断面積0.1〜0.5mm2となるように測定用サンプルを採取し、測定混度23℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/分で引張試験を行い、サンプルの伸びの変化量(mm)を測定した。得られた応力歪み曲線(S−S曲線)の初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線が100%伸びに相当するときの引張強度を断面積で割り、引張弾性率とした。
【0101】
<熱伝導率の測定>
熱伝導率の測定のために、各実施例及び各比較例の熱伝導性粘着シートにおけるポリエステルフィルムを剥離し、ハンドローラーを用いて熱電導性粘着剤層を厚さ2μmのPETに貼り付けた後、熱電導性粘着剤層のもう一方の粘着面にも同様にPETを貼り付け、測定サンプルを得た。熱伝導率の測定は、熱拡散率測定装置(ai-phase;アイフェイズ社製)を用いて行い、熱拡散率に比熱及び密度をかけることにより熱伝導率を算出した。なお、比熱及び密度の値としては、それぞれ1.54J/gK、1.61g/cm3を用いた。
【0102】
各実施例及び各比較例における引張弾性率及び熱伝導率をそれぞれ表1に示す。また、比較例1の引張弾性率及び熱伝導率を100としたときの、各実施例及び各比較例における引張弾性率及び熱伝導率の比率をそれぞれ表1に示す。また、各実施例及び各比較例において熱伝導性粘着剤組成物に添加した化合物(メタノール、トルエン、エタノール、ヘキサン、水)の溶解度パラメーターを表1に示す。また、各実施例及び各比較例における引張弾性率の比率及び熱伝導率の比率をプロットしたグラフを図1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
各実施例、各比較例の結果から、熱伝導性粘着剤組成物に特定の有機化合物(メタノール等)を加え、斯かる有機化合物を用いなかった熱電導性粘着剤層の引張弾性率に対して、引張弾性率を90%以下とすることにより、熱電導性粘着剤層の熱伝導率を向上できることが確認された。一方、熱伝導性粘着剤組成物に水を添加した比較例では、熱電導性粘着剤層の引張弾性率の低下が十分でなく(弾性率の相対値が90%以上)、また、熱電導性粘着剤層の熱伝導率を向上させることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性粒子とアクリルポリマー成分とを含む熱伝導性粘着剤組成物を調製する組成物調製工程と、該熱伝導性粘着剤組成物でシート状の熱伝導性粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程とを実施することにより前記熱伝導性粘着剤層を有する粘着シートを製造する熱伝導性粘着シートの製造方法であって、
前記組成物調製工程では、前記熱伝導性粘着剤組成物の構成成分として炭素数8以下の環式有機化合物、又は、ヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を配合することを特徴とする熱伝導性粘着シートの製造方法。
【請求項2】
前記組成物調製工程では、前記熱伝導性粒子100重量部に対して、炭素数8以下の環式有機化合物、又はヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基、若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を10〜40重量部用いる請求項1記載の熱伝導性粘着シートの製造方法。
【請求項3】
炭素数8以下の環式有機化合物、又はヒドロキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基、若しくはニトリル基を有する炭素数3以下の有機化合物を含む前記熱伝導性粘着剤組成物で熱伝導性粘着剤層を形成することにより、該有機化合物を含まない熱伝導性粘着剤組成物で形成した熱伝導性粘着剤層の弾性率に対して、前記熱伝導性粘着剤層の弾性率を90%以下にする請求項1又は2に記載の熱伝導性粘着シートの製造方法。
【請求項4】
前記組成物調製工程では、前記熱伝導性粘着剤組成物の構成成分として、トルエン、ヘキサン、メタノール、及びエタノールからなる群より選ばれた少なくとも1種を配合する請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性粘着シートの製造方法。
【請求項5】
前記組成物調製工程では、前記熱伝導性粒子として少なくとも窒化ホウ素粒子を用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性粘着シートの製造方法。
【請求項6】
前記熱伝導性粘着剤層を熱伝導率が0.5W/m・K以上になるように形成する請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導性粘着シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−162706(P2011−162706A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28850(P2010−28850)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】