説明

熱伝導性組成物およびそれを用いた熱伝導性部材

【課題】本発明は、保存安定性に優れる熱伝導性組成物を提供し、熱伝導率の高い熱伝導性部材を提供する。
【解決手段】ガラス粉末(A)と窒化ホウ素粉末(B)および樹脂成分(C)を含有し、熱伝導性組成物の固形分中におけるガラス粉末(A)の割合V1(重量%)と、窒化ホウ
素粉末(B)の割合V2(重量%)とが下記式(1)〜(3)を満たし、かつ、空気比較
式比重計で測定したガラス粉末(A)の比重が2.0〜3.0g/cm3の範囲にあるこ
とを特徴とする熱伝導性組成物。(1)5≦V1≦65(2)15≦V2≦75(3)50≦V1+V2≦80

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物およびそれを用いた熱伝導性部材に関する。詳しくは、ガラス粉末と窒化ホウ素粉末および樹脂組成物とを含有してなる熱伝導性組成物およびそれを用いた熱伝導性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「エレクトロルミネッセンス」を「EL」と略称する)照明装置は、有機EL素子を複数配置した有機EL光源を備えている。有機EL素子は電流駆動素子であり、電流が流れることにより発光している。このような有機EL照明装置では、有機EL素子自身に電流が流れる際に発熱し、素子近傍の温度が高くなることに起因して、輝度寿命や発光特性に悪影響を与えるという不都合が生じることがある。そのため、有機EL照明装置には放熱を考慮した構造を有することが望まれている。
【0003】
しかしながら、有機EL照明装置では、有機EL素子の近傍で発生する熱を効率よく簡便な方法で逃がすことができないという問題があった。
【0004】
そこで従来では、有機EL素子で発生した熱を、パネル内に不活性ガスを流し、冷却する方法が提案されている(特許文献1)。しかしこの特許文献1の方法では、大掛かりな装置が必要となってしまう。
【0005】
また、別の解決手段として有機EL素子周縁の封止空間内を、熱伝導体である液体もしくは流動性を有する固体で充填するという方法が提案されている(特許文献2)。しかしこの特許文献2の方法では、破損時の漏洩が懸念され、さらに熱伝導体である液体等を注入する際に減圧状態にする必要があるため工程が煩雑なものとなるという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献3には、熱可塑性樹脂と、高熱伝導性無機化合物、電気絶縁性低融点無機物を含有する電気絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献4には、高分子量ポリマーと熱伝導性フィラーを含有する熱伝導シートが開示されている。ここで、高熱伝導性無機化合物や、熱伝導性フィラーとしては、窒化ホウ素や酸化アルミニウム等が挙げられている。しかし、この特許文献3、4に記載の組成物は保存安定性に劣り、また、さらなる熱伝導性に優れた放熱材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−196165号公報
【特許文献2】特開2006−179218号公報
【特許文献3】特開2008−169265号公報
【特許文献4】特開2008−277768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、保存安定性に優れる熱伝導性組成物を提供し、熱伝導率の高い熱伝導性部材を提供することを課題としている。特に本発明は、照明装置の発光素子の発熱による悪影響を軽減することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱伝導性組成物は、ガラス粉末(A)、窒化ホウ素粉末(B)および樹脂成分(C)を含有し、熱伝導性組成物の固形分中におけるガラス粉末(A)の割合V1(重量
%)と、窒化ホウ素粉末(B)の割合V2(重量%)とが下記式(1)〜(3)を満たし
、かつ、空気比較式比重計で測定したガラス粉末(A)の比重が2.0〜3.0g/cm3の範囲にあることを特徴とする。
(1)5≦V1≦65
(2)15≦V2≦75
(3)50≦V1+V2≦80
本発明の熱伝導性組成物は、前記窒化ホウ素粉末(B)の50重量%平均粒子径D50が3.0μm≦D50≦40.0μmの範囲にあることが好ましい。
【0010】
本発明の熱伝導性組成物は、前記ガラス粉末(A)が酸化物換算表記で、
SiO2:10〜60重量%、
23:20〜50重量%、
ZnO :1〜30重量%、
Al23:1〜65重量%
の化合物を含有し、かつ、Na2O、K2O、CoO、CuOおよびTiO2から選ばれる
少なくとも1種の化合物を0.1〜20重量%含有するガラス粉末であることが好ましい。
【0011】
本発明の熱伝導性部材は、熱伝導性組成物から製造され、熱伝導率が1W/m・K以上
であることを特徴とする。
【0012】
本発明の熱伝導性部材は、厚さが10μm〜300μmの範囲にある熱伝導性フィルムであることが好ましい。
【0013】
本発明の熱伝導性部材は、有機エレクトロルミネッセンス照明装置の放熱フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保存安定性に優れる熱伝導性組成物を提供することができる。また、本発明は、熱伝導率の高い熱伝導性部材を提供することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば放熱性に優れた放熱フィルム、特に、有機エレクトロルミネッセンス照明装置用の放熱フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0017】
〔熱伝導性組成物〕
本発明の保存安定性に優れた熱伝導性組成物は、ガラス粉末(A)、窒化ホウ素粉末(B)および樹脂成分(C)を含有してなる。
【0018】
また、熱伝導性組成物中には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、溶剤、可塑剤、分散剤、乾燥剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、レベリング剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤および連鎖移動剤などが挙げられる。
【0019】
<ガラス粉末(A)>
本発明のガラス粉末(A)は、本発明の目的を損なわない限りどのような成分を有する
ガラス粉末でも用いることができるが、その比重は少なくとも2.0〜3.0g/cm3
の値をとり、好ましくは2.0〜2.8g/cm3、さらに好ましくは2,0〜2.6g
/cm3であることが望ましい。
【0020】
ガラス粉末(A)は、比重が大きい酸化鉛や酸化ビスマス等の比重が8.0を超える成分を含まない原料を選択して用い、これを粉砕することで上記範囲の比重を有する。
【0021】
ここで、ガラス粉末(A)の比重は、真比重のことを言い、例えば、空気比較式比重計(東京サイエンス1000型、東京サイエンス株式会社製)により測定することができる。
【0022】
ガラス粉末(A)の比重が上記範囲にあると、ガラス粉末(A)の比重が2.1〜2.6g/cm3程度の比重を有する窒化ホウ素粉末(B)の比重に近づく。そのため、該ガラス
粉末(A)を含有してなる熱伝導性組成物は、相分離が起こりにくくなり、熱伝導性組成物の保存安定性が向上するため好ましい。
【0023】
ガラス粉末(A)としては、酸化鉛や酸化ビスマスを含まないガラス粉末である。酸化鉛含有のガラス粉末は、通常その比重が3以上であるため、そのような酸化鉛含有ガラス粉末を含有する熱伝導性組成物は、相分離が起こりやすくなり、保存安定性に劣る恐れがある。また、熱伝導性組成物に酸化鉛や酸化ビスマスを含まないことで、環境への悪影響を抑制することができるため好ましい。
【0024】
本発明のガラス粉末(A)は酸化物換算表記で、
SiO2:10〜60重量%、
23:20〜50重量%、
ZnO :1〜30重量%、
Al23:1〜65重量%
の化合物を含有し、かつ、Na2O、K2O、CoO、CuOおよびTiO2から選ばれる
少なくとも1種の化合物を0.1〜20重量%含有するガラス粉末であることが好ましい。
【0025】
ここで、酸化物換算表記とは、ガラス粉末に含まれている金属成分をその最も一般的な酸化物として表す表記のことを言う。
【0026】
SiO2はガラス粉末(A)中において、10〜60重量%、好ましくは10〜50重
量%、さらに好ましくは10〜40重量%含まれていることが望ましい。
【0027】
SiO2がガラス粉末(A)中に上記量で含まれていると、熱伝導性組成物の保存安定
性が向上し、熱伝導性組成物から得られる熱伝導性部材の熱伝導性、緻密性、強度、耐熱性が向上するため好ましい。
【0028】
23はガラス粉末(A)中において、20〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%含まれていることが望ましい。
【0029】
23がガラス粉末(A)中に上記量で含まれていると、熱伝導性組成物の保存安定性が向上し、熱伝導性組成物から得られる熱伝導性部材の電気絶縁性、緻密性、強度、熱的特性、形状安定性が向上するため好ましい。
【0030】
ZnOはガラス粉末(A)中において、1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%含まれていることが望ましい。
【0031】
ZnOがガラス粉末(A)中に上記量で含まれていると、熱伝導性組成物の保存安定性が向上し、熱伝導性組成物から得られる熱伝導性部材の緻密性、強度が向上するため好ましい。
【0032】
Al23はガラス粉末(A)中において、1〜65重量%、好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは5〜45重量%含まれていることが望ましい。
【0033】
Al23がガラス粉末(A)中に上記量で含まれていると、熱伝導性組成物の保存安定性が向上し、熱伝導性組成物から得られる熱伝導性部材の緻密性、強度が向上するため好ましい。
【0034】
さらに、Na2O、K2O、CoO、CuOおよびTiO2の少なくとも1種の化合物は
ガラス粉末(A)中において、0.1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0035】
Na2O、K2O、CoO、CuOおよびTiO2の少なくとも1種の化合物がガラス粉
末(A)中に上記量で含まれていると、熱伝導性組成物の保存安定性が向上し、熱伝導性組成物から得られる熱伝導性部材の熱伝導性が向上するため好ましい。
【0036】
本発明におけるガラス粉末(A)の平均粒子径は、0.5〜5.0μmであることが好ましく、1.5〜3.5μmであることがより好ましい。平均粒子径が上記範囲にあると、保存安定性に優れる熱伝導性組成物を得ることができ、また、該熱伝導性組成物から製造される熱伝導性部材が熱伝導性に優れるため好ましい。なお、本発明におけるガラス粉末(A)の平均粒子径は、レーザー回折散乱粒子径分布測定法(株式会社堀場製作所製 Partica LA-950)によって測定される値である。
【0037】
また、ガラス粉末(A)の軟化点は400〜610℃であることが好ましく、450〜580℃のガラス粉体を用いることがより好ましい。ガラス粉体の軟化点が上記範囲にあると、熱伝導性組成物中に含まれる樹脂成分(C)を焼成して無機フィルムを成形する場合において、樹脂成分(C)などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粉体(A)が溶融することがなく、形成される熱伝導性部材中に有機物質が残留することがなくなる。そのため、このような熱伝導性部材を照明装置等の放熱フィルム等として用いる場合には、前記有機物質によるアウトガスがセル内に拡散して、有機EL素子等の発光素子の寿命が低下することがなくなり好ましい。
【0038】
また、上記ガラス粉末(A)と共に、例えば、酸化クロム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムなどの無機酸化物を配合してもよい。
【0039】
<窒化ホウ素粉末(B)>
本発明の窒化ホウ素粉末(B)は、比重が2.1〜2.6と比較的小さく、かつ絶縁性のフィラーとしては熱伝導率が非常に高いため、比較的少量の添加でも熱伝導性組成物や熱伝導性部材の熱伝導率を向上させることが可能であるため好ましい。
【0040】
窒化ホウ素粉末(B)としては、本発明の目的を損なわない限り制限されないが、アモルファス窒化ホウ素粉末、六方晶窒化ホウ素粉末および立方晶窒化ホウ素粉末等の窒化ホウ素粉末等が挙げられるが、中でも結晶性の窒化ホウ素粉末が好ましい。
【0041】
本発明の窒化ホウ素粉末(B)の50重量%平均粒子径D50は、3.0μm≦D50≦40.0μm、好ましくは3μm≦D50≦35μm、さらに好ましくは3μm≦D5
0≦30μmの範囲にあることが望ましい。
【0042】
窒化ホウ素粉末(B)の50重量%平均粒子径が上記範囲にあると、保存安定性に優れる熱伝導性組成物が得られ、該熱伝導性組成物から製造される熱伝導性部材は、熱伝導性に優れるため好ましい。
【0043】
なお、本発明の窒化ホウ素粉末(B)は粒度分布を有する粉末であって、該粉末を粒子径の小さいものから累積して累積量が全粒子量の50重量%になる粒子径を50重量%平均粒子径D50としている。この50重量%平均粒子径D50は、レーザー回折散乱粒子径分布測定法(株式会社堀場製作所製 Partica LA-950)によって測定される粒度から求められる平均粒子径である。
【0044】
本発明における窒化ホウ素粉末(B)の形状としては、特に制限されないが、凝集粒状のものが好ましい。通常、窒化ホウ素はその結晶が平らな鱗片状(平板状)であるため、その面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率に比べて約20倍優れているという異方性がある。
【0045】
その鱗片状の窒化ホウ素を用いた熱伝導性組成物を例えばシート状に成形したものは、通常、窒化ホウ素の鱗片状結晶がシートの面方向に配向するので、シートの厚さ方向の熱伝導率が低くなるのに対し、凝集粒状の窒化ホウ素は配向性がないので、厚さ方向の熱伝導率を確保することができるため好ましい。
【0046】
<樹脂成分(C)>
樹脂成分(C)としては、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、これらの重合体にカルボキシル基やエポキシ基などの官能基を付与した重合体、シリコーンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらの中では、熱伝導性組成物の取り扱い性、塗工性および柔軟性の観点から、アクリル系重合体を好ましく用いることができる。
【0047】
なお、アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体の総称であり、具体的には(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を、全構成単位中に50〜100重量%含有する重合体のことを示す。
【0048】
アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー(株)製、商品名:HLC−8220GPC)により測定したポリスチレン換算値で、好ましくは10000〜400000、より好ましくは20000〜200000、特に好ましくは30000〜160000である。Mwが前記範囲を下回ると熱伝導性組成物から製造される熱伝導性部材に適度な強度を付与することが困難となる傾向があり、Mwが前記範囲を上回ると熱伝導性組成物の取り扱い性が劣る傾向がある。Mwは、モノマーの共重合割合および重合温度などの条件を適宜選択することにより制御することができる。
【0049】
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル、および必要に応じて他の単量体を重合することにより製造することができる。なお、アクリル系重合体を製造するに際して、重合開始剤を用いることが好ましい。
【0050】
−(メタ)アクリル酸エステル−
(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(1)で表される。
【0051】
【化1】

【0052】
式(1)中、Zは水素原子またはメチル基を表し、Rは1価の有機基を表す。
【0053】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキルグリシジル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0054】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
フェノキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0057】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
アルキルグリシジル(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0060】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0061】
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、末端に(メタ)アクリロイル基を有する、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートなどのマクロモノマー類を挙げることもできる。
【0062】
これらの(メタ)アクリル酸エステルの中では、アルキル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステルは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
上記アクリル系重合体において、その全構成単位中、上記(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、通常は50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含まれる。
【0065】
−他の単量体−
(メタ)アクリル酸エステルとともに使用可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルフタル酸、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物類;1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどのビニルエーテル類;末端に(メタ)アクリロイル基を有する、ポリスチレン、ポリシリコーンなどのマクロモノマー類などが挙げられる。他の単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
−重合開始剤−
重合開始剤としては、N,N'−アゾビスイソブチロニトリル、4−アジドベンズアル
デヒドなどのアゾ化合物またはアジド化合物;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−[4'−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プ
ロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのカルボニル化合物;ジt−ブチルパーオキサイド、ジt−ヘキシルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などが挙げられる。重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
熱伝導性組成物中において、樹脂成分(C)は、通常、ガラス粉末(A)と窒化ホウ素粉末(B)の和100重量部に対して、5〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜50重量部で用いられる。樹脂成分(C)の量が過小である場合には、ガラス粉末(A)や窒化ホウ素粉末(B)などの無機化合物粉末を確実に結着保持
することができない場合がある。一方、樹脂成分(C)の量が過大である場合には、得られる熱伝導性部材が十分な熱伝導性を呈しない場合がある。
【0068】
<任意成分>
≪溶剤≫
本発明の熱伝導性組成物は溶剤を含有してもよい。
【0069】
本発明の熱伝導性組成物において、用いられる溶剤は、ガラス粉末(A)や窒化ホウ素粉末(B)等の無機粉末との親和性および樹脂成分(C)等や任意成分との溶解性が良好で、かつ、熱伝導性組成物に適度な粘性を付与することができると共に、乾燥処理により容易に蒸発除去できる溶剤であることが好ましい
上記溶剤としては、好ましくは標準沸点(1気圧における沸点)が、60〜200℃であるケトン類、アルコール類およびエステル類(以下、これらを「特定溶剤」ともいう。)が挙げられる。
【0070】
上記特定溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類;
n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノールおよびジアセトンアルコールなどのアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;
酢酸−n−ブチルおよび酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;
乳酸エチルおよび乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;
メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびエチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類などが挙げられる。
【0071】
これらの中では、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルおよびエチル−3−エトキシプロピオネートなどが好ましい。また、上記特定溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
さらに、上記特定溶剤以外の溶剤を用いてもよく、例えば、テレビン油、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0073】
上記溶剤は、熱伝導性組成物の固形分中において、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%となる量で用いられる。溶剤の含有量が上記範囲にあると、熱伝導性組成物の粘度を好適な範囲に維持することができ、熱伝導性部材の成形容易性に優れるため好ましい。また、全溶剤に対する上記特定溶剤の割合は、通常は50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
【0074】
≪可塑剤≫
本発明において、熱伝導性組成物に可塑剤を配合することにより、柔軟性に優れた熱伝導性部材を得ることができる。
【0075】
前記可塑剤としては、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる可塑剤、ポリプロピレングリコール、前述した(メタ)
アクリレート化合物などの共重合性単量体などが挙げられ、これらの中では沸点が150℃以上のものが好ましい。このような可塑剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
【化2】

【0077】
(式(2)中、R3 およびR6 は、それぞれ独立して炭素数が1〜30の1価の鎖式炭化水素基を示し、R4 およびR5 は、それぞれ独立してメチレン基または炭素数が2〜30の2価の鎖式炭化水素基を示す。sは0〜5の整数であり、tは1〜10の整数である。)
【0078】
【化3】

【0079】
(式(3)中、R7は炭素数が1〜30の1価の鎖式炭化水素基を示す。)
上記一般式(2)において、R3 またはR6 で示される1価の鎖式炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(飽和基)またはアルケニル基(不飽和基)であり、鎖式炭化水素基の炭素数は1〜30、好ましくは2〜20、より好ましくは4〜10である。鎖式炭化水素基の炭素数が上記範囲を超える場合には、前述した溶剤に対する溶解性が低くなり、熱伝導性組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0080】
4 またはR5 で示される2価の鎖式炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(飽和基)またはアルケニレン基(不飽和基)である。
【0081】
上記一般式(2)で表される化合物の例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケートおよびジブチルジグリコールアジペートなどが挙げられる。
【0082】
上記一般式(3)において、R7 で示される1価の鎖式炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(飽和基)またはアルケニル基(不飽和基)であり、鎖式炭化水素基の炭素数は1〜30、好ましくは2〜20、より好ましくは10〜18である。
【0083】
上記一般式(3)で表される化合物の例としては、プロピレングリコールモノラウレートおよびプロピレングリコールモノオレートなどが挙げられる。
【0084】
また、可塑剤としてポリプロピレングリコールを用いる場合には、該ポリプロピレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、200〜3,000の範囲にあることが好ましく、300〜2,000の範囲にあることが特に好ましい。Mwが200未満である場合には、熱伝導性フィルムを形成することが困難になる場合があり、また、熱伝導性フィルムを支持フィルムから剥離する際に、該熱伝導性フィルムが凝集破壊を起こすことがある。一方、Mwが3,000を超える場合には、熱伝導性フィルムは基板との接着性に劣る場
合がある。
【0085】
上記可塑剤は、本発明の熱伝導性組成物が、上記可塑剤を含有する場合、通常、熱伝導性組成物から溶剤を除いた全成分の3重量%以上、好ましくは4〜15重量%となる量で用いられる。可塑剤の含有量が過小である場合には、製造される熱伝導性部材に良好な柔軟性を与えることが困難となる場合がある。
【0086】
≪分散剤≫
熱伝導性組成物は、さらに分散剤を含有してもよい。分散剤としては、シランカップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤としては、下記一般式(2)で表される化合物;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリヘキシルシランなどのメタクリロキシ基含有シラン化合物などが挙げられる。
【0087】
【化4】

【0088】
式(4)中、pは3〜20、好ましくは4〜16の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数である。
【0089】
上記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシランが挙げられる。また、分散剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
熱伝導性組成物において、上記分散剤は、ガラス粉末(A)、窒化ホウ素粉末(B)および樹脂成分(C)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5.0重量部、より好ましくは0.5〜3.0重量部の範囲で含まれる。
【0091】
[熱伝導性組成物の組成等]
本発明の熱伝導性組成物は、該熱伝導性組成物の固形分中のガラス粉末(A)の割合V1(重量%)、窒化ホウ素粉末(B)の割合V2(重量%)が下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
(1)5≦V1≦65
(2)15≦V2≦75
(3)50≦V1+V2≦80
ここで、本発明において、熱伝導性組成物の固形分とは、熱伝導性組成物から溶剤を除いた成分のことを言う。
【0092】
本発明の熱伝導性組成物は、ペースト状、固形状、液状等いずれの形状でも構わないが、フィルムへの成形性等の観点からペースト状組成物であることが好ましい。
【0093】
上記式(1)で表される熱伝導性組成物の固形分中のガラス粉末(A)の割合V1(重
量%)は、5≦V1≦65、好ましくは、5≦V1≦55、さらに好ましくは5≦V1≦4
5であることが望ましい。
【0094】
熱伝導性組成物の固形分中のガラス粉末(A)の割合が上記範囲にあると、保存安定性に優れた熱伝導性組成物が得られるため好ましい。
【0095】
上記式(2)で表される熱伝導性組成物の固形分中の窒化ホウ素粉末(B)の割合V2
(重量%)は、15≦V2≦75、好ましくは、20≦V2≦70、さらに好ましくは25≦V2≦65であることが望ましい。
【0096】
熱伝導性組成物の固形分中の窒化ホウ素粉末(B)の割合が上記範囲にあると、該熱伝導性組成物から得られる熱伝導性部材は高い熱伝導率を有するため好ましい。
【0097】
上記式(3)で表されるガラス粉末(A)の割合V1と窒化ホウ素粉末(B)の割合V2の和は、50≦V1+V2≦80、好ましくは、55≦V1+V2≦80、さらに好ましくは60≦V1+V2≦80であることが望ましい。
【0098】
熱伝導性組成物の固形分中のガラス粉末(A)の割合と窒化ホウ素粉末(B)の割合の和が上記範囲にあると、保存安定性に優れた熱伝導性組成物が得られるため好ましい。
【0099】
このような熱伝導性組成物の粘度は、通常は0.5〜7Pa・s、好ましくは0.5〜3Pa・sである。熱伝導性組成物の粘度が上記範囲にあると、熱伝導性部材の製造が容易となるため好ましい。
【0100】
[熱伝導性部材]
本発明の熱伝導性部材は、熱伝導性組成物から製造され、熱伝導率が1W/m・K以上
であることを特徴とする。
【0101】
本発明において、熱伝導性部材は、熱伝導率が1W/m・K以上、好ましくは1.0〜
10.0W/m・K、さらに好ましくは2.0〜5.0W/m・Kの範囲であるのが望ましい。
【0102】
本発明の熱伝導性組成物をロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、サンドミルなどの混練機・分散機を用いて調整することで熱伝導率が上記範囲を有する熱伝導性部材が得られる。
【0103】
ここで、熱伝導率はホットワイヤ法熱伝導率測定方法(QTM−500、京都電子工業株
式会社製)により測定される値である。
【0104】
熱伝導性部材の熱伝導率が上記範囲にあると、熱伝導性に優れた熱伝導性部材が得られるため好ましい。
【0105】
このような熱伝導性部材としては特に制限はされないが、熱伝導性フィルム、さらには、放熱フィルムであることが好ましい。
【0106】
<熱伝導性フィルム>
本発明における熱伝導性フィルムは、照明装置等における光源で発生した熱を放熱するための放熱フィルムとして用いることができる。特に、有機EL光源を用いた場合においては、熱伝導性フィルムが有機EL光源で発生した熱を効率よく放熱させるため、発熱による発光素子の発光特性の悪化を抑制することができ好ましい。
【0107】
本発明において、熱伝導性フィルムの厚さは、用いる用途によって適宜選択すればよいが、10μm〜300μm、好ましくは20μm〜250μm、さらに好ましくは20μm〜200μmであることが望ましい。
【0108】
熱伝導性フィルムの厚さが上記範囲にあると該熱伝導性フィルムを照明装置等における光源で発生した熱を放熱するためのフィルムとして用いる場合、該照明装置等の小型化、薄肉化が可能となり、光源で発生した熱を効率よく放熱することができるため好ましい。
【0109】
また、この熱伝導性フィルムは、その使用目的に応じて、他の樹脂組成物との多層構造からなるものであってもよい。
【0110】
このような熱伝導性フィルムは、前記熱伝導性組成物をそのままフィルム状に成形したものであってもよく、前記熱伝導性組成物を支持フィルム上に塗布した転写フィルムであってもよく、前記熱伝導性組成物を一旦、支持フィルム上に塗布した後、該支持フィルムを剥離除去することでフィルムを成形してもよく、放熱したい部分の上に直接熱伝導性組成物を充填してフィルム状に成形したものであってもよい。
【0111】
フィルムに成形する方法としては従来から公知のいずれの方法も用いることができる。
【0112】
また、本発明で用いる熱伝導性フィルムは、熱伝導性組成物を単にフィルム状に成形したものであってもよく、また、樹脂成分(C)を焼成して形成した無機フィルムであってもよい。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<測定方法>
熱伝導性組成物の保存安定性;
熱伝導性組成物を調製後25℃雰囲気下で静置し、層分離が生じて上澄みが発生するまでの日数を調べた(最長で30日)。30日経過後も上澄みが生じていない場合(>30)に熱伝導性組成物が保存安定性に優れると判断した。
【0113】
ガラス粉末の比重の測定;
空気比較式比重計(東京サイエンス1000型、東京サイエンス株式会社製)を用いてガラス粉末の比重を測定した。
【0114】
熱伝導性フィルムの熱伝導率;
京都電子工業株式会社製ホットワイヤ法熱伝導率測定方法(QTM−500)を用いて熱
伝導性フィルムの熱電等率(W/m・K)を測定した。
【0115】
ガラス粉末および窒化ホウ素の50重量%平均粒子径D50;
レーザー回折散乱粒子径分布測定法(株式会社堀場製作所製 Partica LA-950)を用いてガラス粉末および窒化ホウ素の50重量%平均粒子径D50(μm)を測定した。
<合成例1>
ブチルメタクリレート30部、エチルヘキシルメタクリレート30部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート20部およびN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.75部
を、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下において室温で均一になるまで攪拌した。
【0116】
攪拌後、80℃で3時間重合させ、さらにN,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.25部を加えて1時間重合し、100℃で1時間重合反応を継続させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。
【0117】
得られたポリマー溶液は、重合率が98%であり、このポリマー溶液から析出した共重合体(以下「樹脂(1)」ともいう)のMwは80,000であり、得られた樹脂(1)の300℃での熱重量減少率は5重量%であった。
【0118】
(1)熱伝導性組成物の調製
[実施例1]
ガラス粉末として、表2記載のZnO−B23−SiO2系ガラス粉末(不定形、D5
0=2.5、比重=2.6)35重量%、窒化ホウ素粉末(不定形、D50=4.0、比重=2.6)35重量%、樹脂成分として、合成例1で得られた樹脂(1)30重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを前記総固形分対比40重量%、分散剤として、n−デシルトリメトキシシラン1.5重量%をビーズミルで混練りした後、ステンレスメッシュ(400メッシュ、38μm径)でフィルタリングすることにより、熱伝導性組成物を調製した。得られた熱伝導性組成物中の総固形分含有量(TSC)は70.7%であった。各成分の配合量と、得られた熱伝導性組成物の測定結果を表1に示す。
【0119】
[実施例2〜11、比較例1〜3]
ガラス粉末として表2記載のガラス粉末を用い、樹脂成分、カラス粉末、窒化ホウ素粉末を表1記載の成分・組成で用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導性組成物を調製した。
なお、実施例、比較例で用いた窒化ホウ素の比重はすべて2.6である。
【0120】
得られた熱伝導性組成物の保存安定性を表1に示す。
【0121】
(2)熱伝導性フィルムの作製
上記実施例1〜11、比較例1〜3で得られた熱伝導性組成物を、PETフィルムよりなる支持フィルム上に、ブレードコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で5分間乾燥して溶剤を完全に除去した後、支持フィルムを剥離除去して、平均膜厚20μmの熱伝導性フィルムを形成した。
【0122】
得られた熱伝導性フィルムの熱伝導率を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、保存安定性に優れた熱伝導性組成物を提供することができ、熱伝導性に優れた熱伝導性部材を提供することができる。
【0126】
さらに、熱伝導性に優れた熱伝導性フィルムを提供することができ、詳しくは、有機EL照明装置等の照明装置における光源で発生した熱を放熱するための放熱フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末(A)、窒化ホウ素粉末(B)および樹脂成分(C)を含有し、熱伝導性組成物の固形分中におけるガラス粉末(A)の割合V1(重量%)と、窒化ホウ素粉末(B
)の割合V2(重量%)とが下記式(1)〜(3)を満たし、かつ、空気比較式比重計で
測定したガラス粉末(A)の比重が2.0〜3.0g/cm3の範囲にあることを特徴と
する熱伝導性組成物。
(1)5≦V1≦65
(2)15≦V2≦75
(3)50≦V1+V2≦80
【請求項2】
前記窒化ホウ素粉末(B)の50重量%平均粒子径D50が
3.0μm≦D50≦40.0μm
の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記ガラス粉末(A)が酸化物換算表記で、
SiO2:10〜60重量%、
23 :20〜50重量%、
ZnO :1〜30重量%、
Al23:1〜65重量%
の化合物を含有し、かつ、Na2O、K2O、CoO、CuOおよびTiO2から選ばれる
少なくとも1種の化合物を0.1〜20重量%含有するガラス粉末であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物から製造され、熱伝導率が1W/m・K以上であることを特徴とする熱伝導性部材。
【請求項5】
厚さが10μm〜300μmの範囲にある熱伝導性フィルムであることを特徴とする請求項4に記載の熱伝導性部材。
【請求項6】
有機エレクトロルミネッセンス照明装置の放熱フィルムであることを特徴とする請求項4または5に記載の熱伝導性部材。

【公開番号】特開2010−195959(P2010−195959A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43819(P2009−43819)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】