説明

熱伝導組成物および熱伝導シート

【課題】性能が安定した熱伝導シートを得るための、熱伝導組成物の提供を目的とする。
【解決手段】(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、(メタ)アクリル系モノマー(B)と、金属水酸化物(C)と、分散剤(D)とを含む熱伝導組成物であり、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、酸性の官能基を含有し、重量平均分子量が100,000以上であり、前記分散剤(D)が酸性基を有し、前記組成物中の(メタ)アクリル系モノマー(B)に溶解することができる分散剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導組成物および熱伝導シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ等の電子機器の小型化および高性能化が進んでおり、それに伴いこれらの電子機器から発生する熱の放熱対策が重要となってきている。その対策として、発熱する電子部品等とヒートシンクや放熱フィンといった放熱部材との間に熱伝導率が高い熱伝導シートを配置することが行われている。この熱伝導シートに求められる特性としては、接着性および高熱伝導性といった特性や、シート状態での安定性である。
【0003】
これらの特性を満たすことを目的とした提案が、種々なされている。例えば、炭素数が1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレートと、分子内に極性基を有する共重合性単量体とからなるアクリル系単量体と、難燃性を有する粒子と、非難燃性かつ熱伝導電気絶縁性を有する粒子と、光重合開始剤と、分散剤とを含む組成物の光重合物である熱伝導電気絶縁難燃性粘着体が提案されている(例えば特許文献1)。また、アクリル共重合体と、金属酸化物の粒子と、水和金属化合物とを含有する難燃性熱伝導電気絶縁難粘着体であり、このアクリル共重合体が、炭素数1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレート系単量体に、金属酸化物の粒子、水和金属化合物の粒子、分散剤および光重合開始剤を含有する光重合用の組成物を調製した後に、光重合して得られるアクリル共重合体である粘着体が提案されている(例えば特許文献2)。さらに、特許第4385573号公報(特許文献3)においては、炭素数が1〜14個のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレート、光重合開始剤、熱伝導電気絶縁粒子、特定の高分子系分散剤を含む熱伝導電気絶縁感圧接着剤組成物、および前記組成物を使用した粘着シートが提案されている。このような粘着シートは、前記特性を満たし、さらに、塗工適性も良好である。
【0004】
しかしながら、特許文献3においては、アクリレート系成分としては「(メタ)アルキルアクリレート単量体の部分重合物を除」き、すなわち、単量体の(メタ)アルキルアクリレートに限定されている。さらに、特許文献3においては、高分子系分散剤により単量体に熱伝導電気絶縁粒子を配合した際の分散性が改善され、さらに、適度な流動性を発現することは記載されているものの、単量体をどの程度、溶解可能であるかについては不明であった。同様に、特許文献1および2においても、分散剤が単量体をどの程度溶解可能かについて記載が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−2527号公報
【特許文献2】特許第4228269号公報
【特許文献3】特許第4385573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、分散剤が単量体に十分に溶解できない場合、熱伝導シート材料の構成成分が、得られた熱伝導シートの表面に浮き出る(ブリードアウト)等して、熱伝導シートの粘着力が低下する恐れがある。そこで、本発明は、性能が安定した熱伝導シートを得るための、熱伝導組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、(メタ)アクリル系モノマー(B)と、金属水酸化物(C)と、分散剤(D)とを含む熱伝導組成物であり、
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、酸性の官能基を含有し、重量平均分子量が100,000以上であり、
前記分散剤(D)が酸性基を有し、前記組成物中の(メタ)アクリル系モノマー(B)に溶解することができる分散剤である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱伝導組成物を用いれば、性能が安定した熱伝導シートを得ることができるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、従来の熱伝導シートが、一般的に、シロップを重合させて得られたポリマーから形成されることに着目した。このシロップとは、モノマーとポリマーとの液状混合物、または、モノマーとモノマーの部分重合体との液状混合物を指す。このモノマーとしては主に(メタ)アクリルエステルが用いられ、また、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシ基含有モノマーも併せて用いられる。このカルボキシ基含有モノマーは、得られるポリマーの凝集力やシートに成形された際の接着力を向上させるために用いられる。また、ポリマーとしては主に(メタ)アクリル系ポリマーが使用されている。この(メタ)アクリル系ポリマーにも、前記カルボキシ基含有モノマーが構成単位として含まれている場合が多い。
【0010】
しかしながら、このようなシロップと、金属水酸化物(電気絶縁性かつ難燃性粒子)との混合物を重合させてポリマーを形成する場合、得られた生成物の粘度が著しく上昇し、熱伝導シートへの成形が困難となる問題が生じる。この問題について、本発明者らは種々検討したところ、以下の現象が明らかとなった。
(a)シロップにカルボキシ基を有するポリマーが含まれる場合、得られる生成物の粘度が著しく上昇する。
(b)金属水酸化物存在下にシロップを重合させる場合、得られる生成物の粘度が著しく上昇する。
(c)シロップを重合させる際に用いる分散剤が、塩基性分散剤である場合、得られる生成物の粘度が著しく上昇する。一方、この分散剤が酸性分散剤である場合、得られる生成物の粘度は増加しない傾向にある。
【0011】
このような現象が起きるメカニズムは明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。カルボキシ基を有するポリマー中のカルボキシル基と、金属水酸化物の塩基性部位とが何らかの相互作用を起こし、ポリマーと金属水酸化物との巨大なオリゴマーが形成され、その結果、得られる生成物の見かけ分子量が増加して粘度が著しく上昇すると考えられる。
【0012】
本発明者らは、このように問題が起こる原因を推測し、この問題を解決するために、酸性基を有する分散剤をシロップに加えた場合、金属水酸化物の塩基性部分をマスクし、その結果、シロップにカルボキシル基を有するポリマーが含まれていても、そのポリマーのカルボキシル基との相互作用を抑制することを見出した。
【0013】
また、本発明者らは、分散剤として、(メタ)アクリル系モノマーに十分に溶解することができる分散剤を用いることにより、性能が安定した熱伝導シートが得られることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは、得られた熱伝導シートの表面にブリードアウトすることを抑制し、粘着力、長期間経過後の粘着力、保持力および熱伝導率において、優れた性能を有する熱伝導シートを得ることが可能な熱伝導組成物、すなわち、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、(メタ)アクリル系モノマー(B)と、金属水酸化物(C)と、分散剤(D)とを含む熱伝導組成物であり、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、酸性の官能基を含有し、重量平均分子量が100,000以上であり、前記分散剤(D)が酸性基を有し、前記組成物中の(メタ)アクリル系モノマー(B)に溶解することができる分散剤である熱伝導組成物を完成した。
【0014】
以下、本発明の熱伝導組成物について説明する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」は「メタアクリル酸」と「アクリル酸」の両方を意味し、「(メタ)アクリル」は、「メタアクリル」と「アクリル」の両方を意味する。
【0015】
[(メタ)アクリル系ポリマー(A)]
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、前記のように酸性の官能基を含有する。このような(メタ)アクリル系ポリマー(A)を熱伝導組成物に含むことにより、シート化した際の粘着力を十分に得ることができる。
【0016】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、前記のように、酸性の官能基を含有するため、例えば、酸性の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを少なくとも1種含有し、任意にその他の(メタ)アクリル系モノマーとを重合することにより得ることができる。前記酸性の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。その他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素数18以下のアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸の炭素数18以下のアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸の炭素数18以下のアルキルエステルとしては、中でも、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましい。上記酸性の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーおよびその他の(メタ)アクリル系モノマーは、1種または2種以上の混合物をそれぞれ使用してもよい。前記酸性の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の原料であるモノマー合計100重量部に対して、例えば1〜30重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。
【0017】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、前記酸性の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを少なくとも1種類と、任意にその他の(メタ)アクリル系モノマーと、極性基含有単官能モノマーとを重合することにより得てもよい。そのような極性基含有単官能モノマーとしては、例えば、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の極性基とを有するモノマーが挙げられる。重合性の二重結合とヒドロキシル基とを含有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル等が挙げられる。重合性の二重結合とカルボキシ基とを含有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルエチルフタル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。重合性の二重結合とアミノ基とを含有するモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。重合性の二重結合と置換アミノ基とを含有するモノマーとしては、N.N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。重合性の二重結合とエポキシ基とを含有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。前記極性基含有単官能モノマーの含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の原料であるモノマー合計100重量部に対して、例えば1〜30重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。
【0018】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、前記モノマー類を公知の方法を用いて重合することにより製造することができる。そのような公知の方法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等のラジカル重合法を用いることができる。ラジカル重合法においてはモノマーの他にラジカル重合開始剤を用いる。ラジカル重合開始剤としては、後記するラジカル重合開始剤を用いることができる。前記重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の材料であるモノマー合計100重量部に対して、例えば0.001〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0019】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、100,000以上であり、好ましくは300,000以上3,000,000以下であり、より好ましくは500,000以上2,000,000以下である。前記重量平均分子量は、例えば、GPC等により測定することができる。
【0020】
[(メタ)アクリル系モノマー(B)]
本発明における(メタ)アクリル系モノマー(B)は、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の原料であるモノマー、すなわち、酸性の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、その他の(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。また、前記極性基含有単官能モノマーも併せて用いてもよい。前記熱伝導組成物における前記(メタ)アクリル系モノマー(B)の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計100重量部に対して、例えば50〜99重量部、好ましくは70〜95重量部である。この含有量が99重量部を超えれば、得られる熱伝導組成物の粘度調整が困難になり、また、この含有量が50重量部未満であれば、得られる熱伝導組成物の粘度が高くなりすぎるため好ましくない。
【0021】
[金属水酸化物(C)]
前記金属水酸化物は、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種以上であるのが好ましい。これらの金属水酸化物であれば、熱伝導性が高く、電気的に絶縁性であり、かつ、難燃性を付与できるという性質を有するからである。
【0022】
前記熱伝導組成物における前記金属水酸化物の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計100重量部に対して、例えば80〜500重量部、好ましくは100〜400重量部である。この含有量が80重量部以上であれば、得られる伝熱性シートの熱伝導性が高くできるからである。また、この含有量が500重量部以下であれば、得られる伝熱性シートの粘着力が高くでき、かつ、柔軟性を維持することができるからである。
【0023】
前記金属水酸化物は、粒状であってもよい。粒状である場合、その平均粒径は、例えば0.5〜50μmであり、好ましくは1〜30μmである。この平均粒径は、水中に分散させた金属水酸化物フィラーをレーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定した際のD50の値である。
【0024】
[分散剤(D)]
前記分散剤(D)は、前記のように、前記組成物中の(メタ)アクリル系モノマー(B)に溶解することができる分散剤である。このような分散剤を用いることにより、熱伝導組成物から得られた熱伝導シートの表面において、ブリードアウトすることを抑制できる。このようなブリードアウトの抑制により、粘着力、長期間経過後の粘着力、保持力および熱伝導率において優れた性能を有する熱伝導シートを得ることが可能になった。
【0025】
「組成物中の(メタ)アクリル系モノマーに溶解することができる」とは、具体的には、25℃において(メタ)アクリル系モノマー(B)と分散剤(D)とを混合した際、少なくとも(メタ)アクリル系モノマー(B)に分散剤(D)が20重量%以上溶解することができることを意味する。「溶解することができる」とは、(メタ)アクリル系モノマー(B)と分散剤(D)とを混合した際、白濁や不溶物等が観察されない状態をいう。
【0026】
前記分散剤(D)としては、例えば、ポリマー系の分散剤および低分子系の分散剤を用いることができる。
【0027】
前記ポリマー系の分散剤としては、疎水基を主鎖に有し、親水性の極性基を主鎖あるいは側鎖に有する両親媒性のポリマーが挙げられる。前記疎水基を主鎖に有するポリマーとしては、例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系、ポリエーテル系等およびそれらの複合物系のポリマーが挙げられる。前記親水性の極性基としては、例えば、カルボキシ基(−COOH)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)2)、スルホ基(−SO3H)、アルキルオキシカルボニル基(−COOR)、−COOM1、−P(=O)(OM1)(OM2)、−SO31、ヒドロキシル基、アミノ基、およびアミド基等の基が挙げられ、中でも、カルボキシ基、ホスホノ基、−P(=O)(OM1)(OM2)、スルホ基のような酸性の官能基が好ましく、カルボキシ基、ホスホノ基および/もしくはスルホ基がより好ましい。前記式中、Rは、アルキル基を意味し、M1およびM2は、互いに独立して、アルカリ金属のカチオンを意味する。前記ポリマー系の分散剤は、熱伝導組成物安定性およびシート保存下でブリードアウト等の問題解決の観点から、好ましい。
【0028】
前記低分子系の分散剤としては、脂肪酸系、アルキルベンゼン系、スルホン酸系、リン酸系、コハク酸系等のアニオン系の界面活性剤が挙げられる。前記ポリマー系の分散剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のDIPERBYK(登録商標)シリーズ、ルーブリゾール株式会社製のSOLSPERSE(登録商標)シリーズおよびSOLPLUS(登録商標)シリーズ、ウイルバー・エリス社のEFKA(登録商標)シリーズ、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパー(登録商標)シリーズ等を用いることができる。
【0029】
前記分散剤は、その酸価が20mgKOH/g以上であるのが好ましく、40mg/KOH以上であるのがより好ましい。このような酸価を有する分散剤を用いた場合、金属水酸化物の塩基性部分をマスクし、その結果、シロップにカルボキシ基を有するポリマーが含まれていても、そのポリマーのカルボキシ基との相互作用を抑制可能だからである。
【0030】
前記熱伝導組成物における前記分散剤の含有量は、前記金属水酸化物100重量部に対して例えば0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5.0重量部である。前記含有量が0.1重量部以上であれば、熱伝導組成物中の(メタ)アクリル系モノマーを十分に分散することができるためである。また、前記含有量が10重量部以下であれば、熱伝導組成物の粘着力や保持力へ与える悪影響を抑制可能だからである。また、前記熱伝導組成物における前記分散剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対して例えば0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。
【0031】
[重合開始剤]
本発明の熱伝導組成物は、更に重合開始剤を含んでもよい。前記重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤および熱重合開始剤を単独または混合して用いることができる。前記光重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。前記ラジカル重合開始剤は、紫外線等のエネルギーによりフリーラジカルを発生するものであり、例えば、ビベンゾイル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。前記光重合開始剤としては、市販の光重合開始剤を用いることもでき、例えば、イルガキュア(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュア(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、イルガキュア(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1)、イルガキュア(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド)、イルガキュア(登録商標)907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)、イルガキュア(登録商標)500、イルガキュア(登録商標)1000、イルガキュア(登録商標)1700、イルガキュア(登録商標)1800、イルガキュア(登録商標)1850(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、ダロキュア(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等や、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物が挙げられる。前記熱重合開始剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物およびアゾ系熱重合開始剤を単独または混合して用いることができる。前記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド等が挙げられる。前記無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。前記アゾ系熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル吉草酸ニトリル)等が挙げられる。前記重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計100重量部に対して、例えば0.01〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0032】
[架橋剤]
本発明の熱伝導組成物は、さらに架橋剤を含んでもよい。前記架橋剤としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記架橋剤の含有量は、樹脂成分である(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計100重量部に対して、例えば0.05〜2重量部である。
【0033】
[粘着付与剤]
本発明の熱伝導組成物は、さらに粘着付与剤を含んでもよい。前記粘着付与剤としては、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
【0034】
[熱伝導組成物]
本発明の熱伝導組成物は、前記のように(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、(メタ)アクリル系モノマー(B)と、金属水酸化物(C)と、分散剤(D)とを含む。この熱伝導組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)と含むシロップに、さらなる(メタ)アクリル系モノマー(B)と金属水酸化物(C)と分散剤(D)を配合し、攪拌機を用いて十分に混合した後、必要であれば他の添加剤を配合して混合することにより得ることができる。前記攪拌機は、特に限定されないが、例えば、ディスパー、ホモミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー、プラネタリミキサー、ロールミル、ニーダー、ボールミル等を用いることができる。
【0035】
得られた熱伝導組成物の安定性は、例えば、熱伝導組成物製造直後に対する24時間放置後の粘度の変化率を比較して測定することができる。この粘度の変化率は、150%以内であれば好ましい。
【0036】
[熱伝導シート]
また、本発明の熱伝導シートは、本発明の熱伝導組成物を紫外線照射することにより、重合および硬化させて得られる。このような熱伝導シートは、例えば、シリコーン樹脂等で離形層を有した樹脂フィルム基材上に前記熱伝導組成物を塗布し、その上に更なる離形層を有した樹脂フィルム基材を配置し、それに紫外線などを照射してて光重合させることにより製造することができる。前記塗布方法としては、ドクターブレードを用いる方法、ナイフコート法、ダイコート法等が挙げられる。前記樹脂フィルム基材としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の樹脂材料を、フィルム状またはシート状に加工したものを用いることができる。上記基材の厚さは、例えば10〜50μm程度である。前記離形層は、従来公知の方法により作成することができる。前記離形層は、例えば、シリコーン樹脂層が用いられる。このシリコーン樹脂層は、前記樹脂フィルム基材上に、シリコーン樹脂を塗工し、加熱または紫外線照射により樹脂を硬化させて製造することができる。紫外線の照射は、重合時の酸素による重合阻害を抑制するため、窒素ガス・アルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うか、ポリエチレンテレフタレートなどの紫外線透過可能な樹脂フィルムによって被覆させ、外界の酸素を遮断した状態で行うのが好ましい。上記重合に用いる光源としては、特に限定されないが、ブラックライトランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。前記離形層を有した樹脂フィルム基材は、必要に応じて除去してもよいし、そのままの状態(つまり、離形層を有した樹脂フィルム基材付き熱伝導シート)であってもよい。また、上記樹脂材料をフィルム状またはシート状に加工する別の方法としては、例えば、押し出し成形、カレンダー成形、圧縮成形、射出成形、上記樹脂材料を溶剤に溶解させてキャスティングする方法が挙げられる。
【0037】
(熱伝導率)
本発明の熱伝導シートの熱伝導率は、例えば0.5W/m・K以上であり、好ましくは0.7W/m・K以上である。
【0038】
(粘着力)
本発明の熱伝導シートの粘着力(初期粘着力)は、90°ピール試験(JIS Z0237)による粘着力が1.0N/10mm以上であることが好ましい。1.0N/10mm未満であると、例えば、発熱する電子部品等とヒートシンクや放熱フィンといった放熱部材との間で剥離が生じる懸念がある。本発明の熱伝導シートは、長期間経過後(例えば100時間経過後)も、同様の粘着力を有するのが好ましい。
【0039】
(保持力)
本発明の熱伝導シートの保持力は、JIS Z0237に従い測定され、24時間後のズレが生じないのが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基いて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「重量部」を意味する
【0041】
(製造例1)シロップAの作製:酸性官能基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む
温度計、攪拌プロペラ、冷却管、および窒素ガス注入管を取り付けた容量1リットルの四つ口フラスコ内に、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」と呼ぶ)を450部、アクリル酸(以下、「AA」と呼ぶ)を50部、および、イルガキュア(登録商標)369(光重合開始剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)を1.5部、投入した。容器温度を50℃になるよう調整し、照度5mW/cm2のブラックライトを前記容器内の混合物に照射しながら30分間重合を行い、シロップAを得た。得られたシロップA中のポリマー分は21%、ポリマー分の重量平均分子量は100万であった。
【0042】
(製造例2)シロップBの作製:酸性官能基を有さない(メタ)アクリル系ポリマーを含む
製造例1と同様の容器内に2EHAを500部、イルガキュア(登録商標)369(光重合開始剤)を1.5部、投入した。容器温度を50℃になるよう調整し、照度5mW/cm2のブラックライトを前記容器内の混合物に照射しながら30分間重合を行い、シロップBを得た。得られたシロップB中のポリマー分は19%、ポリマー分の重量平均分子量は70万であった。
【0043】
(実施例1)
前記シロップA((メタ)アクリル系ポリマー(A))を24部(ポリマー分21%、5.04部相当、残部18.96部は2EHAとAA)、(メタ)アクリル系モノマー(B)として2EHAを14.4部およびAAを1.6部、水酸化アルミニウム(金属水酸化物(C)、ハイジライト(登録商標)H−32、昭和電工社製)を60部、DISPERBYK−102(分散剤(D)、酸価101mgKOH/g、ビックケミー社製)を1.8部、「イルガキュア369」(光重合開始剤(E)、チバスペシャリティケミカルズ社製)を0.12部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(架橋剤、以下、「HDDA」と呼ぶ、ダイセル・サイテック社製)を0.12部加え、ディスパーにて攪拌し熱伝導組成物Aを作製した。
【0044】
次に、基材として片面に離形層(材質:シリコーン層)を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み50μm)を準備し、このPETフィルムの離形層側にギャップ間隔を500μmになるよう調整したドクターブレードを用いて、上記熱伝導組成物Aを塗布した。その後、その離形層が接するように、塗膜の上に上記と同じPETフィルムを貼り合せ、積層体を作製した。この積層体に、365nmに照度ピークを有するブラックライトにて積算光量300mJ/cm2の条件で紫外線を照射させ、シートAを作製した。
【0045】
(実施例2)
分散剤(D)として、SOLSPERSE(登録商標)41000(酸価50mgKOH/g、ルーブリゾール社製)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導組成物Bを作製した。また、熱伝導組成物Aの代わりに熱伝導組成物Bを用いた以外は実施例1と同様にしてシートBを作製した。
【0046】
(比較例1)
分散剤(D)として、SOLSPERSE(登録商標)36000(酸価45mgKOH/g、ルーブリゾール社製)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導組成物Cを作製した。また、熱伝導組成物Aの代わりに熱伝導組成物Cを用いた以外は実施例1と同様にしてシートCを作製した。なお、このSOLSPERSE(登録商標)36000は、後述する分散剤(D)の溶解性測定により、(メタ)アクリル系モノマー(B)を溶解することができないことが判明している。
【0047】
(比較例2)
分散剤(D)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして熱伝導組成物Dを作製した。作製した熱伝導組成物Dは配合直後から熱伝導組成物の増粘が見られ、塗布が困難となり、シート化には至らなかった。
【0048】
(比較例3)
分散剤(D)として、SOLSPERSE(登録商標)71000(酸価なし、リーブリゾール社製)にした以外は、実施例1と同様にして熱伝導組成物Eを作製した。作製した熱伝導組成物は配合直後から熱伝導組成物の増粘が見られ、塗布が困難となりシート化には至らなかった。
【0049】
(比較例4)
シロップAに代えてシロップBを使用した以外は実施例1と同様にして熱伝導組成物Fを作製した。また、熱伝導組成物Aの代わりに熱伝導組成物Fを用いた以外は実施例1と同様にしてシートDを作製した。
【0050】
(比較例5)
シロップを使用せず、(メタ)アクリル系モノマー(B)のうち2EHAの含有量を14.4重量部から36部に、AAの含有量を1.6重量部から4重量部へ変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導組成物Gを作製した。熱伝導組成物Gは熱伝導組成物安定性としては問題なかったが、粘度が20mPa・s程度と非常に低く塗布が困難となりシート化に至らなかった。粘度が非常に低いのは、熱伝導組成物G中にポリマー成分を含まないためと考えられる。
【0051】
(メタ)アクリル系モノマーに対する分散剤(D)の溶解性、得られた熱伝導組成物の安定性、得られたシートの初期粘着力、80℃100時間後の粘着力、保持力、熱伝導率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0052】
(重量平均分子量)
シロップAおよびシロップBの重量平均分子量(Mw)は、GPCシステムを用いて以下の条件により測定した。
装置:GPCシステム(1050シリーズ HP社製)
カラム:(KF805L、2本直列式 昭和電工株式会社製)、
ポンプ:1050型ポンプ(HP社製)
展開溶媒:THF
流速:1mL/分
カラム温度:40℃
検出器:RI検出器(ERC−7515A、ERMA社製)
分子量標準物質:スチレン
【0053】
(分散剤(D)の溶解性)
各例において使用した分散剤(D)を20g、(メタ)アクリル系モノマー(B)として2EHAを80gガラス瓶に入れ、その混合物をマグネチックスターラーにて30分間撹拌した。その混合物を25℃に調温された恒温槽に1時間放置し、分散剤の(メタ)アクリル系モノマー(B)への溶解性を目視にて判定した。具体的には、混合物に白濁や不溶物等が観察されない場合を「○」、混合物に白濁や不溶物等が観察された場合を「×」とした。なお、実際の例においては、(メタ)アクリル系モノマー(B)として2EHAとAAの混合物を用いているが、2EHAとAAの溶解性についてはほぼ同一視できるため、便宜上、(メタ)アクリル系モノマー(B)として2EHAのみを用いて溶解性を測定した。
【0054】
(熱伝導組成物安定性)
得られた熱伝導組成物の粘度をB型粘度計「ビスメトロンVS−A1」(芝浦システム社製)を用いて、熱伝導組成物攪拌直後および、25℃の雰囲気下で24時間放置後の粘度を測定した。熱伝導組成物の安定性は、攪拌直後の粘度に対し24時間放置後の粘度の変化率から判定した。なお、粘度変化率が150%を超えると塗工中に熱伝導組成物が凝集して作業が困難になる。

粘度変化率(%)=24時間放置後熱伝導組成物粘度/攪拌直後熱伝導組成物粘度 ×100

○:粘度変化率150%以内
×:粘度変化率150%以上
【0055】
(粘着力)
得られた熱伝導シートの片面上に、PETフィルム(厚さ50μm、幅25mm×長さ250mm)を配置した。熱伝導シートの別の面上に、ステンレス鋼(SUS304)板を配置し、ステンレス鋼板上を重さ2kgのローラーにて速度300mm/分で1往復圧着した。このようにして得られた積層体を24時間室温で放置後、90°ピール試験をJIS Z0237に従い剥離速度300mm/分にて行った。
【0056】
(80℃100時間後の粘着力)
得られた熱伝導シートを80℃雰囲気下の高温槽にて100時間保存し、100時間後に熱伝導シートを取り出した。その後、前記(粘着力)で説明した方法と同様の方法を用いて、熱伝導シートの粘着力を測定した。
【0057】
(保持力)
得られた熱伝導シートの片面上に、アルミニウム箔(厚さ50μm)を配置した。熱伝導シートの別の面上に、ステンレス鋼(SUS304)板(面積25mm×25mm)を配置し、ステンレス鋼板の上を重さ5kgのローラーにて速度300mm/分で1往復圧着した。このようにして得られた積層体を24時間室温で放置後、80℃恒温槽にて10分間放置した。その後、積層体に1kgfの荷重をかけ、24時間後のズレ距離および落下した場合は落下時間をJIS Z0237に従って測定した。
【0058】
(熱伝導率)
得られた熱伝導シートを、幅50mm×長さ150mmにカットし、迅速熱伝導率計「QTM−500」(京都電子工業社製)を用いて熱伝導率を測定した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、実施例1および2においては、熱伝導組成中に酸性の官能基を含有する(メタ)アクリル系部分ポリマー(A)を含有していても、特定の溶解性を有し、酸性基を含有する分散剤を熱伝導組成物へ添加することにより、熱伝導組成物の安定化を得、かつシート化した際に初期粘着力、80℃100時間後の粘着力、熱伝導率といった特性が良好な熱伝導シートを作製できることが確認できた。
【0061】
一方、比較例1では、(メタ)アクリル系モノマー(B)に対して酸性基を含有するが溶解性の低い分散剤を用いたために、熱伝導組成物の安定性に関しては問題なかったものの、熱伝導シートを80℃といった高温で保存した際に、粘着力が初期に比べ保存後に低下していた。これは、分散剤の溶解性が低いために、熱伝導シート表面にブリードアウトしてきて粘着力の低下をもたらしたものと考えられる。
【0062】
比較例2では、分散剤を添加していないために、熱伝導組成物が増粘した。この結果は、特定の溶解性を有する分散剤を熱伝導組成物へ添加していないためと考えられる。また、比較例3では分散剤を添加したものの、同様に熱伝導組成物が増粘した。この結果は、酸性基を含有しない分散剤を熱伝導組成物へ添加したためと考えられる。
【0063】
比較例4では、(メタ)アクリル系ポリマー(A)として酸性の官能基を有さない2EHAのホモポリマーを用いたため、シート化した際に、粘着力が低下した。また、保持力試験において、粘着面のズレが生じていた。これらの問題は実際に製品に展開した際に、剥がれが生じるといった不具合が発生する懸念がある。
【0064】
比較例5では、熱伝導組成物中に(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含まないため、熱伝導組成物の粘度が非常に低くなり、塗布時に熱伝導組成物の垂れ等が発生し、均一なシート化が困難であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、(メタ)アクリル系モノマー(B)と、金属水酸化物(C)と、分散剤(D)とを含む熱伝導組成物であり、
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、酸性の官能基を含有し、重量平均分子量が100,000以上であり、
前記分散剤(D)が酸性基を有し、前記組成物中の(メタ)アクリル系モノマー(B)に溶解することができる分散剤である熱伝導組成物。
【請求項2】
前記分散剤(D)の酸価が20mgKOH/g以上である請求項1に記載の熱伝導組成物。
【請求項3】
前記金属水酸化物(C)が、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種以上である請求項1または2に記載の熱伝導組成物。
【請求項4】
前記熱伝導組成物における前記金属水酸化物(C)の含有量が、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と(メタ)アクリル系モノマー(B)の合計100重量部に対して、80〜500重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導組成物。
【請求項5】
前記熱伝導組成物における前記分散剤(D)の含有量が、前記金属水酸化物100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導組成物。
【請求項6】
前記分散剤(D)が、アニオン系界面活性剤ならびに、疎水基を主鎖に有し、親水性の極性基を主鎖あるいは側鎖に有する両親媒性のポリマーの少なくとも一方を含む請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導組成物。
【請求項7】
光重合開始剤(E)を更に含む請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の前記熱伝導組成物を紫外線照射することにより、重合および硬化させて得られる熱伝導シート。
【請求項9】
熱伝導率が、0.5W/m・K以上である請求項8に記載の熱伝導シート。

【公開番号】特開2012−162612(P2012−162612A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22773(P2011−22773)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】