説明

熱伝導経路プレート、電子部品基板及び電子部品筺体

【課題】面内異方性熱伝導率を有する高熱伝導材料を利用し、任意の熱伝導経路において効率的に熱を拡散、輸送、集約して放熱することを可能にする熱伝導経路プレート、電子部品基板及び電子部品筺体を提供すること。
【解決手段】電子部品が配置され、電気的配線等がなされたプリント配線基板に、熱伝導経路シート108を貼り付け接着することにより構成することができる。電子部品基板への熱伝導経路シートの取り付けは、貼り付け接着の他に、既存の他の基板作製技術を用いても行うことができる。但し、熱伝導経路シート108が導電性の場合、熱伝導経路シート108と配線基板との間には絶縁処理を施すものとする。熱伝導経路シート108は、電子部品レイアウトに応じて、異方性高熱伝導材料の高熱伝導率方向及び形状、並びに熱伝導等方性の高・低熱伝導材料の形状が組み合わせられ、熱輸送効率の高い熱伝導経路が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品基板及び電子部品筺体に関し、より詳細には、熱伝導率異方性の高熱伝導材料を組み合わせた熱伝導経路シートを備えた熱伝導経路プレート、電子部品基板及び電子部品筺体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は高集積化により、発熱が問題となるケースがますます増加し、これらに対応すべく、様々な熱設計、熱対策技術がとられている。
【0003】
熱設計において、熱源からの放熱経路を考えると伝導・対流・輻射に大別される。最も一般的に行われている熱対策の1つは対流熱伝達を利用した空冷であるが、ファンを用いる場合には、騒音、ファン設置のための空間、軽量化等の面で利用できない場面も少なくない。また、輻射はファンを用いる空冷に対して騒音面で優位であるが、温度差と表面積がある程度以上ないと顕著な効果を生まない。そこで、近年の電子機器の静音化・小型化において非常に有効とされるのは、高い熱伝導率を有する材料による熱の拡散・輸送の効果を利用するものである。
【0004】
熱拡散や熱輸送を期待した高熱伝導材料では、一般的に等方性の熱伝導率を有する金属材料のアルミニウムや銅が使用されている。それでも熱伝導率が足りない場合は、液体と熱交換する流体による熱輸送、高い熱伝導率を持ったグラファイトシート、相変化を利用したヒートパイプまたはベーパーチャンバ等蒸発型の伝熱モジュールが用いられている。
【0005】
電子機器において熱対策が求められる代表的な箇所の1つに半導体装置を含む多層配線基板がある。このような配線基板の熱対策には、メタルコア基板(特許文献1参照)やサーマルビア(特許文献2参照)等も用いられている。
【0006】
この多層配線基板は、樹脂基板あるいはメタル基板をコア基板とし、コア基板の両面にビルドアップ法によって配線層を積層して形成することができる。ビルドアップ法によれば、配線層間を電気的に絶縁する電気的絶縁層を形成し、めっき等により電気的絶縁層の表面及びビア穴の内面に導体層を形成する。その後、導体層を所定のパターンにエッチングして配線パターン及びビアを形成し、層間で配線パターンを電気的に接続して多層配線基板を得ることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2006−173290号公報
【特許文献2】特許第3817453号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、小型・高集積化が進む多層配線基板等の半導体装置が実装された基板に対して、従来の放熱部品を用いた冷却装置では以下のような課題ある。
【0009】
ヒートパイプでは、構造上、基板への固定に工数がかかる上、一般的なヒートパイプの直径は約5mm以上なので、基板に溝を作成してヒートパイプを埋め込んでも基板の厚さが大幅に増加するという課題がある。さらに、配置自由度が低く、小型化が困難であるという課題がある。すなわち、熱媒体である作動液の移動方向が重力方向の制約を受けるため、重力方向の変化が予想される携帯端末等への使用は困難であるという課題がある。そのため、携帯電話等の小型・高密度の実装が求められる機器へヒートパイプを適用するのは難しい。
【0010】
メタルコア基板では、熱伝導率も十分ではないが、伝熱過程での等方的な熱の放出・拡散等から、熱源周辺の電子部品に影響が及び易いという課題がある。また、低熱伝導材料を用いて特定部位への伝熱を抑えると熱輸送効率が低下し、十分な放熱効果が得られなくなる場合がある。
【0011】
また、サーマルビアは基板の厚さ方向の熱輸送効果は有するが、基板の面内方向の熱輸送にはほとんど寄与しない。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、面内異方性高熱伝導率を有する高熱伝導材料を用いて、任意の熱伝導経路において効率的に熱を拡散、輸送、集約して放熱することを可能にする熱伝導経路プレート、電子部品基板及び電子部品筺体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、熱伝導経路プレートにおいて、導電部及び絶縁部からなる部材と、面内熱伝導異方性を有する異方性高熱伝導材料がレイアウト的に配置され、前記部材から伝播してくる熱を所定の経路に沿って拡散、輸送、集約するように前記異方性高熱伝導材料が組み合わされた熱伝導経路シートとを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱伝導経路プレートにおいて、前記熱伝導経路シートは、前記部材の所定の場所に熱を伝播させ難くするように低熱伝導材料が組み合わされていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、電子部品基板において、電子部品を実装可能な基板と、 面内熱伝導異方性を有する異方性高熱伝導材料がレイアウト的に配置され、前記基板から伝播してくる熱を所定の経路に沿って拡散、輸送、集約するように前記異方性高熱伝導材料が組み合わされた熱伝導経路シートとを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電子部品基板において、前記熱伝導経路シートは、前記基板と張り合わせ接合されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の電子部品基板において、前記熱伝導経路シートは、前記基板の内部に埋め込まれていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、電子部品筐体において、電子部品を実装可能な基板を設置するための筐体と、面内熱伝導異方性を有する異方性高熱伝導材料がレイアウト的に配置され、前記基板から伝播してくる熱を所定の経路に沿って拡散、輸送、集約するように前記異方性高熱伝導材料が組み合わされた熱伝導経路シートとを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電子部品基板において、前記熱伝導経路シートは、前記筺体と張り合わせ接合されていることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の電子部品基板において、前記熱伝導経路シートは、前記筺体の内部に埋め込まれていることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項6乃至8のいずれかに記載の電子部品筺体において、前記熱伝導経路シートは、前記基板と接することが可能なように前記筐体から露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、異方性高熱伝導率を有する高熱伝導材料をレイアウト的に組み合わせた熱伝導経路シートを部材、基板、筺体を用いることにより、僅かな厚みの変化だけで、任意の熱伝導経路から効率的に熱を拡散、輸送、集約して放熱させることを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明の実施形態に使用可能な異方性高熱伝導材料の一例として炭素繊維複合材料(以下、Al−CF複合材料)の熱伝導率を表1、概念図を図1(a)、繊維垂直断面の電子顕微鏡写真を図1(b)、外観写真を図1(c)に示す。このAl−CF複合材料は、炭素繊維が一方向に整列した構造を呈しており、繊維方向にのみ著しく高い熱伝導率を示す。熱伝導率は繊維方向で700W/mKを達成している。
【0025】
【表1】

【0026】
ここで説明した異方性高熱伝導材料は一例であり、本発明では上記Al−CF複合材料の他に様々な異方性高熱伝導材料を用いることが可能である。
【0027】
異方性高熱伝導材料及び等方性高熱伝導材料との組み合わせを採用した場合の面内の熱伝導率のシミュレーションを行い、放熱効果の検証を行なった。以下に示すシミュレーション結果は、電子機器熱流体解析ソフトIcepak及び流体回路網法ソフトQfinを使用して導出したものである。
【0028】
(シミュレーション1)
図2(a)に板状のアルミニウム(Al)である等方性高熱伝導材料102のみのシートにおける熱の拡散・輸送の様子を示し、図2(b)に、等方性高熱伝導材料102及び図1(a)〜(c)において示した異方性高熱伝導材料103を組み合わせたシートにおける熱の拡散・輸送の様子を示す。それぞれ丸の位置に熱源101を配置し、図2(b)のシートは高熱伝導率方向がX軸方向である異方性熱伝導材料103aとY軸方向である異方性熱伝導材料103bとを組み合わせてQfinにて解析を行った。その結果、図2(a)の等方性高熱伝導材料102のみよりも、図2(b)のように異方性高熱伝導材料103を組み合わせたシートの方が効率よく熱が拡散し、輸送され、熱源101付近の温度が低くなった。このことから、異方性高熱伝導材料103を組み合わせた方が効率的な熱の拡散・輸送による放熱効果が大きいことが分かった。
【0029】
(シミュレーション2)
次に、異方性高熱伝導材料103の組み合わせの最適化を図るため、図3(a)に示すように異方性高熱伝導材料103を組み合わせたシートに熱源101とヒートシンク104を配置し、風を送って冷却を行なうシステムを想定し、その放熱効果をIcepakにて解析した。熱源101が接触する異方性高熱伝導材料103aの高熱伝導率方向は、熱源101からヒートシンク104に向かう方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)とし、異方性高熱伝導材料103aのY軸方向の長さをdとする。ヒートシンク104が設置され、異方性高熱伝導材料103aと接続された異方性高熱伝導材料103bの高熱伝導率方向は、Y軸方向とする。
【0030】
図3(b)に、シートを全て等方性高熱伝導材料(Al)にした場合と異方性高熱伝導材料(Al−CF複合材料)を組み合わせて構成した場合の熱源101の温度と異方性高熱伝導材料103aのY軸方向の長さdとの関係を示す。このシミュレーション結果から、異方性高熱伝導材料(Al−CF複合材料)の組み合わせにおいて長さdを制御することにより、風速(V)を5倍にした等方性高熱伝導材料(Al)よりも効率的な放熱効果を得ることができることが確認できた。
【0031】
(シミュレーション3)
次に、シート上に熱源101とヒートシンク104を配置し、ヒートシンク104が配置された側の筺体にはファン105を設置し、反対側には外部から空気を取り込むためのグリル106を設置したモデルについてシミュレーションを行った。図4に示すように、本シミュレーションではシートを16等分し、等方性高熱伝導材料、異方性高熱伝導材料、低熱伝導材料のブロックを16個組み合わせた。熱源101はブロック11、ヒートシンク104はブロック44に配置した。
【0032】
ここで具体的に以下の3つの場合についてシミュレーションを行った。
ケース1:等方性高熱伝導材料のみを用いた場合
図5に、全ブロックに等方性高熱伝導材料を用いた場合の熱伝導の様子を示す。この場合、ヒートシンク104付近よりも熱に弱い部品が配置されている中心部の温度の方が高くなっている。
ケース2:等方性高熱伝導材料及び中心部に低熱伝導材料を用いた場合
次に、熱源101とヒートシンク104との間、すなわちブロック22、23、32、33のいずれかに、熱に弱い部品が配置される場合を想定してブロックの組み合わせを行った。すなわち、中心部ブロック22、23、32、33には熱が伝播し難い低熱伝導材料を用い、その他のブロックは等方性高熱伝導材料を用いた場合について計算を行った。その結果を図6に示す。ここで、熱源101付近と中心部付近の色が共に濃くなっているが、熱源101付近は45℃程度の高温であることを示し、中心部付近は28℃程度の低温であることを示している。この場合、中心部の温度上昇は抑えられたが、熱源101からの熱の拡散・輸送が阻害され、熱源101の温度が上昇した。
ケース3:異方性高熱伝導材料、等方性高熱伝導材料、及び中心部に低熱伝導材料を組み合わせた場合
そこで、熱が基板の周囲を効率よく伝播するように、異方性熱伝導材料を組み合わせた場合についてシミュレーションを行なった。すなわち、ブロック11、14,41、44に等方性高熱伝導材料を配置し、ブロック22、23、32、33に低熱伝導材料を配置し、ブロック21、31、24、34にY軸方向の熱伝導率が高くなるように異方性高熱伝導材料を配置し、ブロック12、13、42、43にX軸方向の熱伝導率が高くなるように異方性熱伝導材料を配置した。この結果を図7に示す。このように熱伝導経路が制限された状況においても、効率良く熱の輸送がなされるため、中心部の温度とともに熱源101の温度上昇も抑えることができている。
【0033】
以上3つのケースについてのシミュレーション結果をまとめたものを、下記表2及び図8に示す。異方性高熱伝導材料を用いたケース3の構成は、熱源温度、中心部温度共に最も低く抑えられていることが確認できた。
【0034】
【表2】

【0035】
このように、熱伝導率の異方性を積極的に利用し、熱輸送経路を制御することによって効率的に熱を拡散・輸送させ、放熱することができる。
【0036】
次に、図9(a)〜(c)に、熱伝達経路付き熱伝導経路シートの例を示す。
【0037】
図9(a)は、面内異方性高熱伝導率を有する板状の異方性高熱伝導材料103を任意の数組み合わせることにより所定の経路に熱を誘導可能なように構成された熱伝達経路付き熱伝導経路シート108aである。
【0038】
図9(b)は、面内異方性高熱伝導率を有する板状の異方性高熱伝導材料103を任意の数組み合わせ、かつ等方性高熱伝導材料102(Al , Cu等)と組み合わされることにより構成された熱伝達経路付き熱伝導経路シート108bである。この熱伝導経路シート108bは、異方性高熱伝導材料103で構成された経路に熱を誘導することができる。中央に配置された等方性高熱伝導材料102は、周囲の高熱伝導率方向の異なるどの異方性高熱伝導材料103とも同じように熱的に接続するので、異方性高熱伝導材料103に囲まれた領域に効率良く熱を拡散・輸送させることができる。
【0039】
また、高熱伝導率方向が異なる複数の異方性高熱伝導材料103を接続するとき、等方性高熱伝導材料を介して接続することによって熱伝導効率の高い接続となる。この他に、熱伝導効率の高い接続方法として、接続した際に異方性高熱伝導材料103の高熱伝導率方向が互いに直交しないよう、高熱伝導率方向と接続面との角度を調整して接続する方法がある。図9(b)では、高熱伝導率方向が直交した2つの異方性高熱伝導材料103a、103bの間に、これら異方性高熱伝導材料103a、103bとの各接続面に対して高熱伝導率方向が45度になるように成形された異方性高熱伝導材料103cを配置している。
【0040】
図9(c)は、面内異方性高熱伝導率を有する板状の異方性高熱伝導材料103を任意の数組み合わせ、かつ等方性高熱伝導材料102(Al , Cu等)と低熱伝導材料107(FR4等)と組み合わされることにより構成された熱伝達経路付き熱伝導経路シート108cである。この熱伝導経路シート108cは、異方性高熱伝導材料103で構成された経路で効率良く熱を輸送し、放熱するので、熱の上昇を抑えたい場所に対して低熱伝導材料107を用いても、一部に熱が停滞するようなことがない。また、熱伝導効率の高い接続とするため、図9(c)の異方性高熱伝導材料103a、103bは、接続面が高熱伝導率方向に対して45度になるように成形されており、高熱伝導率方向が互いに直交しないよう、高熱伝導率方向と接続面との角度を調整して接続されている。
【0041】
これらの熱伝導経路シートは、効率的な熱の拡散・輸送・集約と任意の領域の温度上昇の抑制を両立することができる。
【0042】
ここでは異方性高熱伝導材料103、等方性高熱伝導材料102、低熱伝導材料107の組み合わせの一部を示したが、本実施形態はこれらの組み合わせに限定されるものではなく、任意の組み合わせが可能である。
【0043】
(実施形態1)
図10(a)に、本発明の一実施形態である異方性高熱伝導材料を組み合わせた熱伝導経路シートと電子部品基板を貼り合わせることによって構成される電子部品基板を示す。本実施形態は、電子部品(IC,コンデンサ等)が配置され、電気的配線等がなされたプリント配線基板に、熱伝導経路シート108を何らかの方法(接着テープ、シリコンジェル、グリース等)により貼り付け接着することにより構成することができる。電子部品基板への熱伝導経路シートの取り付けは、貼り付け接着の他に、既存の他の基板作製技術を用いても行うことができる。但し、熱伝導経路シート108を取り付けられる側が導電性の場合、熱伝導経路シート108との間に絶縁層を設ける等の絶縁処理を施すものとする。熱伝導経路シート108は、電子部品レイアウトに応じて、図9(a)〜(c)に示したように異方性高熱伝導材料の高熱伝導率方向及び形状、並びに熱伝導等方性の高・低熱伝導材料の形状が組み合わせられ、熱輸送効率の高い熱伝導経路が設けられている。
【0044】
また、本実施形態は、図10(b)に示すように、電気的配線等がなされる多層プリント配線基板作成工程中に熱伝導経路シート108を基板内部に埋め込むことによって作製することができる。このように、熱伝導経路シート108の接着を基板作成工程に取り込むことにより、アセンブリ時に熱伝導経路シート108とプリント配線基板を貼り合わせる必要をなくすことができる。
【0045】
このように、本実施形態は厚みが僅かに増加するだけなので、プリント配線基板への実装制約により放熱部品(ヒートシンク・ファン等)が使用できない場合にも、容易に熱伝導経路を設定することができ、熱の効率的な拡散・輸送を可能とする。
【0046】
(実施形態2)
図11(a)、(b)に、本発明の一実施形態に係る熱伝導経路シート108を筺体111内部に埋め込むことにより構成される電子部品筺体を示す。図11(a)、(b)には、便宜上、筺体111の底面のみを実線で描いたが、筺体111は配線基板を格納できる実線と点線で表される形状を有しており、かつ底面以外の面も底面と同様に厚みを有している。このとき、理想的には筺体の基板配置側からシート部材が露出していることが望ましい。但し、熱伝導経路シート108上に配置されるものが導電性の場合、熱伝導経路シート108との間に絶縁層を設ける等の絶縁処理を施すものとする。筐体111への熱伝導経路シート108の取り付けは、貼り付け接着、はめ込み、及び筐体111の射出成形時における埋め込み等によって行なうことができる。熱伝導経路シート108は、電子部品レイアウトに応じて、図9(a)〜(c)に示したように異方性高熱伝導材料の高熱伝導方向及び形状、並びに熱伝導等方性の高・低熱伝導材料の形状が組み合わせられ、熱輸送効率の高い熱伝導経路が設けられている。
【0047】
筺体111側での対策となるため、プリント配線基板内部に埋め込んだ場合と同様にアセンブリ時に熱伝導経路シート108とプリント配線基板を貼り合わせる手間が不要になる。
【0048】
また、筺体111には、図11(a)、(b)に示すように、電子部品(IC,コンデンサ等)109が配置され、電気的配線等がなされるプリント配線基板もしくは熱伝導経路シート108が埋め込まれた多層プリント配線基板をアセンブリ時に配置することができる。そのため、図11(b)のように、本実施形態を実施形態1で示した熱伝導経路シート108が埋め込まれた多層プリント配線基板と併用することにより、熱の拡散効率をさらに高めることができる。また、多層プリント配線基板中の熱伝導経路シートと筺体111中の熱伝導経路シートとをサーマルビアによって接続することにより、筺体111側の熱伝導経路シートをさらに効果的に用いることができる。
【0049】
(実施形態3)
図12(a)、(b)に、本発明の一実施形態に係る電子部品(IC,コンデンサ等)109、ヒートシンク104又はファン等の冷却装置が配置され、電気的配線等がなされるプリント配線基板に熱伝導経路シート108を何らかの方法(接着テープ、シリコンジェル、グリース等)により貼り付け接着することにより構成された電子部品基板を示す。電子部品基板への熱伝導経路シートの取り付けは、貼り付け接着の他に、既存の他の基板作製技術を用いても行うことができる。但し、熱伝導経路シート108を取り付けられる側が導電性の場合、熱伝導経路シート108との間に絶縁層を設ける等の絶縁処理を施すものとする。
【0050】
また、図12(c)に、本発明の一実施形態に係る電子部品(IC,コンデンサ等)109、冷却装置(ヒートシンク、ファン等)104等が配置され、電気的配線等がなされる多層プリント配線基板作成工程中において、熱伝導経路シート108を基板内部に埋め込むことにより構成された電子部品基板を示す。この場合、熱伝導経路シート108の接着を基板作成工程に取り込むことができるので、アセンブリ時に熱伝導経路シート108をプリント配線基板に貼り付ける手間が不要になる。
【0051】
熱伝導経路シート108は、電子部品レイアウトに応じて、図9(a)〜(c)に示したように異方性高熱伝導材料の高熱伝導方向及び形状、並びに熱伝導等方性の高・低熱伝導材料の形状が組み合わせられ、熱輸送効率の高い熱伝導経路が設けられている。
【0052】
本発明は冷却装置104との併用が可能であるので、基板への実装制約等により熱源101から冷却装置104まで距離があっても、高い放熱効果を維持することができる。また、熱源101から放熱部品104までの間に熱に弱い部品(センサー等)112がある場合にも、放熱効果を保ったままで熱に弱い部品への熱の影響を緩和させることができる。
【0053】
また、基板に配置される電子部品109、ヒートシンク104等の冷却装置の個数、及びそれらのレイアウトに応じて熱伝導経路を容易に作製することができるので、任意の場所への熱の集約が可能である。
【0054】
(実施形態4)
図13(a)、(b)に、本発明の一実施形態に係る筺体の射出成形工程中において、熱伝導経路シート108を筺体内部に埋め込む(理想的には筺体の基板配置側からシート材が露出)ことにより構成される電子部品筺体を示す。図13(a)、(b)には、便宜上、筺体111の底面のみを実線で描いたが、筺体111は配線基板を格納できる実線と点線で表される形状を有しており、かつ底面以外の面も底面と同様に厚みを有している。実施形態2と同様に、筐体111への熱伝導経路シート108の取り付けは、貼り付け接着、はめ込み、及び筐体111の射出成形時における埋め込み等によって行なうことができる。但し、熱伝導経路シート108上に配置されるものが導電性の場合、熱伝導経路シート108との間に絶縁層を設ける等の絶縁処理を施すものとする。筺体111側での対策となるため、基板内部に埋め込んだ場合と同様にアセンブリ時に熱伝導経路シート108とプリント配線基板を貼り合わせる手間が不要である。
【0055】
熱伝導経路シート108は、電子部品レイアウトに応じて、図9(a)〜(c)に示したように異方性高熱伝導材料の高熱伝導方向及び形状、並びに熱伝導等方性の高・低熱伝導材料の形状が組み合わせられ、熱輸送効率の高い熱伝導経路が設けられている。
【0056】
本実施形態はヒートシンク104等の冷却装置との併用が可能であるので、プリント配線基板への実装制約等により熱源101から冷却装置まで距離があっても、効率良く放熱することができる。また、熱源101から冷却装置までの間に熱に弱い部品(センサー等)112がある場合にも、放熱効率を下げることなく熱に弱い部品への熱の影響を緩和させることができる。
【0057】
また、基板に配置される電子部品109、冷却装置の個数、及びそれらのレイアウトに応じて熱伝導経路を容易に作製することができるので、任意の場所への熱の集約が可能である。
【0058】
筺体111には、図13(a)、(b)に示すように、電子部品(IC,コンデンサ等)が配置され、電気的配線等がなされるプリント配線基板もしくは熱伝導経路シート108が埋め込まれた多層プリント配線基板をアセンブリ時に配置することができる。そのため、図11(b)のように、本実施形態を実施形態3で示した熱伝導経路シート108が埋め込まれた多層プリント配線基板と併用することにより、熱拡散効率をさらに高めることができる。
【0059】
ここまで実施形態1〜4において、基板や筺体に熱伝導経路シートが取り付けられたものについて説明してきたが、本発明の実施形態は、導電部及び絶縁部からなる放熱対策を必要とする部材に熱伝導経路シートが取り付けられたものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)はAl−CF複合材料の概念図であり、(b)はAl−CF複合材料の繊維垂直断面の電子顕微鏡写真であり、(c)はAl−CF複合材料の外観写真である。
【図2】(a)は等方性高熱伝導材料である板状のアルミニウム(Al)における放熱、熱の拡散・輸送の様子を示す図であり、(b)は等方性高熱伝導材料及び異方性高熱伝導材料を組み合わせた熱伝導経路シートにおける放熱、熱の拡散・輸送の様子を示す図である。
【図3】(a)は異方性高熱伝導材料を組み合わせた熱伝導経路シートに熱源と冷却装置を配置して風を送り冷却を行なうシステムを示す図であり、(b)は等方性高熱伝導材料(Al)のみのシート、及び異方性高熱伝導材料(Al−CF複合材料)を組み合わせた熱伝導経路シートにおける熱源温度と長さdとの関係を示す図である。
【図4】シミュレーション3で用いる16分割された熱伝導経路シートを示す図である。
【図5】全ブロックに等方性高熱伝導材料を用いた場合の熱伝導の様子を示す図である。
【図6】中心部に低熱伝導材料を用い、その周囲に等方性高熱伝導材料を用いた場合の熱伝導の様子を示す図である。
【図7】等方性高熱伝導材料及び異方性熱伝導材料を組み合わせた場合の熱伝導の様子を示す図である。
【図8】シミュレーション3の結果を示すグラフである。
【図9】(a)は異方性高熱伝導材料のみを組み合わせた熱伝導経路シートを示す図であり、(b)は異方性高熱伝導材料と等方性高熱伝導材料を組み合わせた熱伝導経路シートを示す図であり、(c)は異方性高熱伝導材料と等方性高熱伝導材料と低熱伝導材料を組み合わせた熱伝導経路シートを示す図である。
【図10】(a)は熱伝導経路シートと電子部品基板が貼り合わされる電子部品基板を示す図であり、(b)は熱伝導経路シートが内部に埋め込まれる電子部品基板を示す図である。
【図11】(a)は電子部品基板と熱伝導経路シートを筺体内部に埋め込むことにより構成された電子部品筺体を示す図であり、(b)は熱伝導経路シートが内部に埋め込まれる基板と熱伝導経路シートを筺体内部に埋め込むことにより構成された電子部品筺体を示す図である。
【図12】(a)は熱伝導経路シートと冷却装置を有する基板が貼り合わされる電子部品基板を示す図であり、(b)は熱伝導経路シートと熱に弱い部品及び冷却装置を有する基板が貼り合わされる電子部品基板を示す図であり、(c)は熱に弱い部品及び冷却装置を有する熱伝導経路シートが内部に埋め込まれる電子部品基板を示す図である。
【図13】(a)は熱に弱い部品及び冷却装置を有する基板と熱伝導経路シートを筺体内部に埋め込むことにより構成された電子部品筺体を示す図であり、(b)は熱に弱い部品及び冷却装置を有する熱伝導経路シートが内部に埋め込まれる基板と熱伝導経路シートを筺体内部に埋め込むことにより構成された電子部品筺体を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
101 熱源
102 等方性高熱伝導材料
103、103a〜103c 異方性高熱伝導材料
104 ヒートシンク
105 ファン
106 グリル
107 低熱伝導材料
108、108a〜108c 熱伝導経路シート
109 半導体装置
110 回路配線層
111 筐体
112 熱に弱い部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部及び絶縁部からなる部材と、
面内熱伝導異方性を有する異方性高熱伝導材料がレイアウト的に配置され、前記部材から伝播してくる熱を所定の経路に沿って拡散、輸送、集約するように前記異方性高熱伝導材料が組み合わされた熱伝導経路シートと
を備えたことを特徴とする熱伝導経路プレート。
【請求項2】
前記熱伝導経路シートは、前記部材の所定の場所に熱を伝播させ難くするように低熱伝導材料が組み合わされていることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導経路プレート。
【請求項3】
電子部品を実装可能な基板と、
面内熱伝導異方性を有する異方性高熱伝導材料がレイアウト的に配置され、前記基板から伝播してくる熱を所定の経路に沿って拡散、輸送、集約するように前記異方性高熱伝導材料が組み合わされた熱伝導経路シートと
を備えたことを特徴とする電子部品基板。
【請求項4】
前記熱伝導経路シートは、前記基板と張り合わせ接合されていることを特徴とする請求項3に記載の電子部品基板。
【請求項5】
前記熱伝導経路シートは、前記基板の内部に埋め込まれていることを特徴とする請求項3に記載の電子部品基板。
【請求項6】
電子部品を実装可能な基板を設置するための筐体と、
面内熱伝導異方性を有する異方性高熱伝導材料がレイアウト的に配置され、前記基板から伝播してくる熱を所定の経路に沿って拡散、輸送、集約するように前記異方性高熱伝導材料が組み合わされた熱伝導経路シートと
を備えたことを特徴とする電子部品筐体。
【請求項7】
前記熱伝導経路シートは、前記筺体と張り合わせ接合されていることを特徴とする請求項6に記載の電子部品筺体。
【請求項8】
前記熱伝導経路シートは、前記筺体の内部に埋め込まれていることを特徴とする請求項6に記載の電子部品筺体。
【請求項9】
前記熱伝導経路シートは、前記基板と接することが可能なように前記筐体から露出していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の電子部品筺体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−124326(P2008−124326A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308065(P2006−308065)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】