説明

熱供給システムの経済性評価システム、方法およびプログラム

【課題】 熱供給システムに関する経済性評価に関して、正確な熱供給コストを算出することで熱供給システムを正しく評価し、適切な熱供給を行えるようにすることを目的とする。
【解決手段】 熱供給コストとして、電気、ガスに加えて水道の熱供給コストも算出することで、熱供給システムの正確な評価を行うことを可能とし、最適な電力およびガスの供給量にて熱供給を行う。またセンサーと連動することで最適な熱供給コストにて自動的に熱量供給装置を動作させる。熱供給の対象に個別の熱量供給装置およびセンサーがある場合は、中央の熱供給と連動して個別の熱供給を自動的に制御するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱供給システムにおける経済的な性能評価を行うシステム、方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱供給の経済性評価は、機器ごとの機能維持・向上を主眼として電気・ガスのエネルギー量からCOP(Coefficient of Performance)または効率を算定することにより実施されている。例えばある部屋、ビルもしくは工場などのエネルギーの供給単位としてのひとかたまりの拠点(以降拠点と称す)にエネルギーを供給するに際して電気、ガスなどがエネルギー源として利用されている。また、該拠点内にはさまざまな機器が設置されており、空調などを目的とした熱供給については、例えば同じビルのフロアーであっても同じ熱供給量であるということは少ない。 ということで、該拠点の熱供給の実態が判明したとしても全ての拠点における熱供給の実態が同じということはまれである。また、電気、ガスを使用した熱供給においては実態として水を消費していた。
【0003】
このようにある拠点に対する熱供給の経済性評価を行うとその熱供給コストを最低にする電気、ガスなどのエネルギーの供給量は、拠点の建物の構造や設置されている機器類などに依存したものとなることが予想され、熱供給コストの評価は、個別に行う必要があった。また熱供給の経済性評価に関して以下の3つの特許文献が存在し、さまざまな提案を行っている。
【0004】
まず、特許文献1は、経済性に優れ、実用的な熱源機器の運転方法を高速に決定するために、熱源機器の効率等の性能を定式化し、消費燃料(電力)料金などの運転コストを評価関数として数理計画法を用いて経済性を追求する方法や、前記評価関数を最適にする運転方法を高速に作成できるプラント運転計画の作成方法を提案している。特許文献2は、住宅の建築自体の冷暖房熱特性の程度と、設備機器の効率を含めた石油・ガス・電気の化石燃料消費量と、エネルギー及び経済性の将来予測を踏まえた建設・運転維持費用とを社会・地球環境への影響やユーザーの使い勝手等を含めて評価することで省エネルギーの住宅を判別することを目的とした住宅の省エネルギー性能評価システムを提案している。
【0005】
特許文献3は、運転管理者の作業負荷を軽減し、経済的、あるいは省エネルギー的にみて最適な空調熱源設備の制御を実施するに際し、空調 熱源設備の管理制御が運転管理者の熟練を要することなく、管理制御を実施するときの運転管理者の判断基準を客観的かつ合理的にでき、空調熱源設備の制御と 管理の整合性が保たれる空調熱源設備の管理制御装置を提供することを目的として提案を行っている。
【特許文献1】特開平06−236202号公報
【特許文献2】特開平06−274093号公報
【特許文献3】特開平10−300167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した従来の熱供給の経済性評価には、熱供給として利用されている水道水のコストが含まれていない。このことによりシステム全体としての正確な熱供給コストが把握できていないという問題が有った。電気とガスについては熱供給コストとして算出されるが、実際に使用されている水道のコストをコスト計算の対象としていないため、電気、ガスおよび水道を含めたトータルなコストが正確に出されていなかった。さらに、正確に算出されていなかった熱供給コストを基に熱供給のコストが一番安くなるエネルギーの供給構成を考えても間違った結果を導いてしまうのは明らかである。
【0007】
本発明はかかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、供給熱量に対するエネルギーコストの算出として電気、ガスに加えて水道の熱供給コストを算定することにより、エネルギー別の熱供給コストの把握を可能とする。さらに把握した熱供給コストによりシステムの運用方法を見直すことで熱供給コストの低減を図ることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に関する熱供給の経済性評価システムは、熱供給を行うシステムの供給熱量に対するエネルギーコストを熱供給コストとして算出するシステムであって、電力、ガス、および、水の各エネルギーコストを含んだ熱供給コストを算出する熱供給コスト算出手段と、第1の温度値および第2の温度値を与えられた時に、第1の温度値から第2の温度値へと気温を上昇もしくは降下させるのに必要な供給熱量を算出すると共に前記熱供給コストに基づいて当該熱量のエネルギー配分を演算する熱供給量算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明により、指定された第1の温度値から第2の温度値へと気温を上昇もしくは降下させるに際して、システムに供給されるエネルギーとして水の供給量を含めた電力およびガスの供給量をそれぞれ算出し、それぞれの求めた供給量を用いて、熱供給コストが最低となる電力、ガスの供給量を求める。求めた電力およびガスの供給値を用いて手動で熱量供給装置を作動させることが可能となり、その時の熱供給コストを最低とすることが可能である。このように第1の温度値と第2の温度値を与えると最小の熱供給コストとなる電力、ガスおよび水の供給量を算出することができる。
【0010】
さらに上記システムに、温度検出を行うセンサーから伝えられる温度を受信する温度計測手段と、指定された供給量に従って電力の供給を制御する電力供給量制御手段と、指定された供給量に従ってガスの供給を制御するガス供給量制御手段とを備え、受信した温度により前記熱供給コスト算出手段を用いて求めた電力およびガスの供給量をそれぞれ前記電力供給量制御手段とガス供給量制御手段に通知することにより、適切な電力およびガスの熱量供給を行うように構成するのも好ましい。
【0011】
本発明のように構成することで、熱供給量算出手段が求めた熱供給コストが最低となる電力およびガスの供給量を、実際に電力およびガスの供給量を制御する電力供給量制御手段およびガス供給量制御手段に通知することで自動的に熱供給コストが最低値になる電力およびガスをシステムに供給することができる。
【0012】
また上記構成において、前記温度計測手段はある周期ごとに温度を取得し、前記熱供給量算出手段はある周期ごとに前記温度計測手段より得られた温度により前記熱供給コスト算出手段を用いて適切な電力およびガスの供給量を算出し、電力供給量制御手段およびガス供給量制御手段を用いて適切な熱供給を行うように構成するのも好ましい。
【0013】
本発明のように構成することで、周期的に最適な電力およびガスの供給量を求めることとなり、気温の上下があった際にも柔軟に第2の温度値を保持するように自動的に動作することが可能となる。
【0014】
さらに上記構成において、複数のセンサーからの検出温度を取得し、特定のセンサーから取得した温度が指定された第2の温度値とある一定値以上差がある時に、外部に通知する外部通知手段をさらに備えるように構成するのも良い。
【0015】
本発明のように構成することで、例えば部屋全体は全体の空調システムで温度の管理を行い、センサーを設置している部屋の場所もしくは区画の温度が全体の空調システムで指定している温度と比較して差が有る時には、個別の空調装置などを用いて空調が行えるように外部に通知することができる。知らせを受けたその区画の担当者などは手動で個別の空調装置を動作させることが可能となる。
【0016】
上記構成に加えて、前記外部通知手段からの情報を取得し、第2の指定された温度値にするために個別の熱量供給装置を制御する個別熱量供給装置制御手段をさらに備えることも好ましい。
【0017】
本発明のように構成することによって、部屋内の温度が指定された第2の温度値になっていないことがセンサーからの通知により判明した場合には、外部通知手段より温度が指定の温度になっていないことなどの通知を受け、所望した温度になっていない箇所の温度を所望の温度にするために、個別の空調装置を制御して自動的に所望の温度値にすることが可能となる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に関する熱供給の経済性評価方法は、熱供給を行うシステムの供給熱量に対するエネルギーコストを熱供給コストとして算出する方法であって、電力、ガス、および、水の各エネルギーコストを含んだ熱供給コストを算出する熱供給コスト算出ステップと、第1の温度値および第2の温度値を与えられた時に、第1の温度値から第2の温度値へと気温を上昇もしくは降下させるのに必要な供給熱量を算出すると共に前記熱供給コストに基づいて当該熱量のエネルギー配分を演算する熱供給量算出ステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
さらに上記方法に加えて、温度検出を行うセンサーから伝えられる温度を受信する温度計測ステップと、指定された供給量に従って電力の供給を制御する電力供給量制御ステップと、指定された供給量に従ってガスの供給を制御するガス供給量制御ステップと、を含み、前記温度計測ステップは、受信した温度により前記熱供給コスト算出ステップを用いて適切な電力およびガスの供給熱量を求め、前記求めた電力およびガスの供給熱量に基づいて、それぞれ前記電力供給量制御ステップと前記ガス供給量制御ステップを用いて適切な電気およびガスの供給を行うように構成するのも好ましい。
【0020】
さらに上記方法に加えて、前記温度計測ステップはある周期ごとに温度を計測し、前記熱供給量算出ステップはある周期ごとに前記熱供給コスト算出ステップを用いて適切な電力およびガスの供給量を算出し、前記算出した供給熱量に基づいて前記電力供給量制御ステップと前記ガス供給量制御ステップを用いて適切な熱供給を行うように構成するのも良い。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明に関する熱供給の経済性評価プログラムは、熱供給を行うシステムの供給熱量に対するエネルギーコストを熱供給コストとして算出するコンピュータ上で動作するプログラムであって、電力、ガス、および、水の各エネルギーコストを含んだ熱供給コストを算出する熱供給コスト算出処理と、第1の温度値および第2の温度値をパラメータとして与えられ、第1の温度値から第2の温度値へと気温を上昇もしくは降下させるのに必要な供給熱量を、前記熱供給コスト算出処理を用いて算出する熱供給量算出処理と、をコンピュータ上で動作させることを特徴とする。
【0022】
さらに上記熱供給の経済性評価プログラムは、温度検出を行うセンサーから伝えられる温度を受信する温度計測処理と、指定された供給量に従って電力の供給を制御する電力供給量制御処理と、指定された供給量に従ってガスの供給を制御するガス供給量制御処理と、を含み、前記熱供給量算出処理にて、受信した温度により前記熱供給コスト算出処理を用いて求めた電力およびガスの供給量に基づいて、電力およびガスの供給量をそれぞれ電力供給量制御処理とガス供給量制御処理を用いて適切な電力およびガスの供給を行うように構成するのも良い。
【0023】
また、上記熱供給の経済性評価プログラムに、前記温度計測処理はある周期ごとに温度を計測し、前記熱供給量算出処理はある周期ごとに前記熱供給コスト算出処理を用いて適切な電力およびガスの供給量を算出し、電力およびガスの供給量を制御して適切な熱供給を行うように構成するのも好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、電気、ガスの熱供給コストに水道の熱供給コストを加えて算定することで従来と比較してより正確なエネルギーの熱供給コストが算定できるようになり、算定した熱供給コストにより、対象の熱供給システムに対する水道のコストを含めた電力およびガスの最適なエネルギーの供給量を決定することが可能となる。さらに把握した熱供給コストによりシステムの運用方法を見直すことで熱供給コストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1に、本発明の第1の実施形態に関わる熱供給の経済性評価システムの全体構成を示す。この熱供給の経済性評価システムは、熱量供給制御サーバ2と部屋の温度を計測して熱量供給制御サーバ2にその時の部屋の温度を通知するセンサー5から構成されている。熱量供給制御サーバ2はさらに以下に示す手段もしくは機能群から構成される。送受信部12は、センサー5からの温度情報を受信し、中央演算処理部13へ通知する機能を有する。
【0026】
中央演算処理部13は、センサー5から受信した部屋の温度に対応した最適な熱量供給の算出や、その時の機器の制御などを行うさまざまな機能を有している。記憶部14は、中央演算処理部13が使用する最適な電力およびガスの供給量を算出するために必要な情報などを格納している。入力部15および表示部16はマンマシンインタフェースを制御しており、熱量供給制御サーバ2に対して値を投入したり、その時の応答を表示したりする機能を有する。
【0027】
電力供給制御手段17は、指定された電力量を熱量供給装置3が供給するように制御する機能を有する。ガス供給制御手段18は、指定されたガス供給量を熱量供給装置3が供給するように制御する機能を有する。外部通知手段19は、本実施形態では部屋の温度が1℃上昇または降下したときに管理者にその事実を通知する機能を有する。
【0028】
個別熱供給制御手段20は、中央で行っている熱供給に対して指定している温度に達していない場所が有った場合に、個別の例えば空調装置を制御して指定の温度に達するように個別熱量供給装置31を制御する機能を有する。中央演算処理部13はさらに以下の機能を有する手段を有している。熱供給コスト算出手段133は、指定された温度から指定された温度にするために熱供給を行う際に必要な水のコストを含んだ電力およびガスの最適な供給量を算出する機能を有する。
【0029】
熱供給量算出手段134は、上述の熱供給コスト量算出手段133を制御する機能を有する。温度計測手段135は、センサーから受信される温度を取得する機能を有する。
【0030】
記憶部14はさらに、最適な電力量を求めるのに必要な情報を格納している電力情報データベース(DB)141、最適なガス供給量を算出するのに必要な情報を格納しているガス情報データベース(DB)142を有している。
【0031】
センサー5は、部屋の温度を感知する温度感知部55、感知した温度を熱量供給制御サーバ2に通知する通信制御部56から構成されている。また、図9に、熱量供給制御サーバ2、熱量供給装置2、個別熱量供給装置31、センサー5間の関係を示す。電力、ガス、および、水はそれぞれ電力会社、ガス会社、水道局より拠点4に送られてくるが、その前に全体の熱量供給を行う熱量供給装置3および個別の熱量供給を行う個別熱量供給装置31に送られ、その熱量の流量を熱量供給制御サーバ2が行い、熱量供給制御サーバ2からの指示に従い熱量供給装置3および個別熱量供給装置31は指示された電力およびガスの供給を行っている。
熱供給の経済性評価システムは上記のように構成され、以下に動作について説明する。
【0032】
図2に、本発明の第1の実施形態における、温度を1℃降下させるために必要な熱供給コストを示す。本実施形態においては、温度を規定の温度から1℃降下させるのに必要な電力とガスの供給量の組み合わせを示しているが、1℃のみではなく数℃で表が与えられていても良い。また、この図には実際に事前に計測して得た値を記載することとしている。
【0033】
電力およびガスの供給量の関係はある関数にて表現することが可能であって、その関数に現在の温度と遷移させたい温度を投入することで演算を行った上でミニマム値となる、水を熱供給コストとして含んだ電力およびガスの供給量を得ることができればその関数を用いて図2の表を埋めることも可能である。
【0034】
図2において、30℃から29℃まで例えば部屋の室内温度を下げるのに必要な水道のコストを含んだ電力およびガスの供給量の組み合わせを記載している。図中上から、供給する電力量であるA301、A302、A303〜の電力量を使用し、そのそれぞれの電力使用量のコストは、110円、120円、130円、140円〜であり、さらに使用電力量に対して使用される水道水のコストはそれぞれ10円、11円、12円、14円〜であるものとしている。
【0035】
その他電力とは、本実施形態では、例えばある一定量を超えたことにより電力料金として基本契約料金に変化があった場合などに記載することとしている。その他ガスも同様である。
【0036】
図2において次に、ガス供給量および供給量に対応したガス料金、水を利用する場合には利用する水に対応する水道料金およびその他ガスの料金が記載されている。上記の電力を供給する場合に要する水道料金を含んだ電気料金とガスを供給する場合に要する水道料金を含んだガス料金を加算することで温度を30℃から29℃に下げるのに要する水を熱供給コストに含んだ電力とガスの熱供給コストが得られものである。
【0037】
図2より、本実施形態では30℃から29℃へと温度を下げる場合は、電力量をA304、ガス供給量をB304にすれば最低の329円で1℃温度を下げられるということが分かる。図示していないが29℃から28℃など、同様にある温度力1℃温度を下げるもしくは上げるのに水をコストとして含んだ熱供給コストの最安値は上述30℃から29℃に下げるのと同様に決定することができる。
【0038】
また、本実施形態では上記電力量と熱供給量にてどれくらいの時間を要して1℃下げることができるかについては論じてなく、1℃下げるのに最低の熱供給コストをもって定義しているものである。
【0039】
図3は、例えば30℃から25℃まで温度を降下させる時に熱供給の経済性評価システムがその部屋に対して行う熱量供給の推移について示している。図2で示したように30℃から29℃に下げる場合は、電力がA304で、ガス供給量がB304である。次に29℃から28℃に下げるのに最適な電力の供給量はA291であり、ガスの供給量はB291である。 これらの値は図2に示したように29℃から28℃への表を完成させると得られるものであり、本説明では仮にA291とB291としている。以下25℃まで同様であり、28℃から27℃まで下げるのに最適な電力の供給量はA288であり、ガスの供給量はB288である。27℃から26℃に下げるには電力およびガスの供給量はそれぞれA275,B275であり、26℃から25℃に下げるための最適な電力およびガスの供給量はそれぞれA263およびB263である。
【0040】
このように本実施形態では1℃温度を下げるもしくは上げるのに最適な電力およびガスの供給量を決定することができるので、熱量供給の管理者はその温度になった時に電力およびガスについて上記供給量を指定することで熱供給コストが最低値になる熱量供給ができることになる。
【0041】
より詳細に図4および5を用いて説明する。図4は本実施形態では熱供給量制御サーバ2内の熱供給量算出手段134が行う動作である。現在部屋の室温が30℃である時に25℃にセットして空調を動作させた場合について説明する。熱供給量算出手段134は、温度として現在の室温である30℃と目標の室温である25℃を与えられる(S41)。
【0042】
本実施形態では参照するデータが1℃ごとのデータであるため、30℃と30℃から1℃減算した29℃をパラメータとして30℃から29℃に温度を下げるための水を熱供給コストとして含んだ最適な電力量とガスの供給量を算出するために図5にその動作フローを示している、「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」を起動する(S42)。
【0043】
「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」からの出力を受け、取得した熱供給コストが最安値になる電力およびガスの」供給量を画面である表示部16画面に出力する(S43)。目標の温度まで終了したか判断し、終了していない場合はパラメータを両者ともマイナス1(S45)してステップS42に戻る。「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」は今回は29℃および28℃をパラメータとして受けて動作することになる(S42)。本動作を目標の温度まで繰り返す(S44)。
【0044】
目標の温度まで終了したら処理を終了する(S44のnoのルート)。上記においては、30℃から25℃までなので「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」を4回起動し、得られた電力およびガスの供給量を4回画面表示することになる。本実施形態では、画面表示にしているが、処理を自動的に行いたい場合などは他の機器に通知するように行うことが可能である。さらに画面表示についても予め決められた電話番号、FAX番号、電子メールに結果を通知することも可能である。
【0045】
次に、「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」を図5を用いて説明する。起動されるとまずパラメータより基準の温度と目標の温度を取得する(S51)。次に基準の温度と目標の温度に対応する図2に示すある部屋の温度を30℃から29℃に下げるために必要なエネルギーとして水道をコストに含んだ電力量とガス供給量の組み合わせ参照し、初回はその時の電力量およびガス供給量を最安値として設定する(S52)。
【0046】
熱供給コストの30℃の基準の温度の表を参照し、最安値の値と比較する(S53)。安かった場合(S54)は、最安値として参照中の電力量とガス供給量を設定する(S55)。安くない場合は何もしない(S54)。全ての組み合わせを検索したか判断し(S56)、全て終了した場合は最安値の電力量とガス供給量を出力し(S57)処理を終了する。全ての組み合わせが終了していない場合はステップS53に戻って再度熱供給コストを比較する。以上のようにしてある温度での最低の電力量とガス供給量を決定する。
【0047】
次に部屋、フロアー、ビルなどにおいて温度センサーが設置されており、熱量供給制御サーバ2に接続されている場合の動作フローについて説明する。前述の図4および5の説明と同様に、30℃から25℃へと温度を下げる場合について説明する。図6では、左側の破線で囲まれた部分はセンサー5、真中の破線で囲まれた部分は熱量供給制御サーバ2、右側の破線で囲まれたは電力およびガス供給を行う熱量供給装置3を表している。
【0048】
まずセンサー5が現在の温度である30℃を温度感知部55にて感知して、通信制御部56が熱量供給制御サーバ2に通知する(S61a)。熱量供給制御サーバ2は送受信部12にてセンサー5からの温度を受信し、送受信制御手段131を経て温度計測手段135が受信する。温度計測手段135は得た温度を熱供給量算出手段134に通知する。
【0049】
熱供給量算出手段134は受信した(S61b)温度を基に現在の温度を基準の温度として、目標値として25℃まで下げることと判断する(S62b)。熱供給量算出手段134は、30℃から1℃づつ指定された部屋の温度を下げるのに必要な電力量とガス供給量の熱供給コストが最低となる組み合わせを算出するために図5に示す、「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」をパラメータとして基準温度が30℃、目標温度が29℃で起動する(S63b)。
【0050】
「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」は前述と同様に図2に示す表「ある部屋の温度を1℃下げるために必要なエネルギー(熱供給コスト)」を参照して熱供給コストが最低となる電力量とガス供給量の組み合わせを出力する。最適な電力量とガス供給量を「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」より取得した熱供給量算出手段134は、求めた電力量およびガス供給量を使用して電力およびガスの供給装置に温度を指定して動作するように指示する(S64b)。
【0051】
指示を受けた(S61c)電力およびガス供給装置は、指定された電力量およびガス供給量にて部屋に熱供給を行う(S62c)。次にセンサー5が29℃を感知し、熱供給量制御サーバ2に通知する(S62a)。部屋が29℃になったことを受信した熱供給量算出手段134は上記と同様に次は基準の温度を29℃とし目標温度を28℃として、「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」を起動する(S66b)。
【0052】
「1℃ごとの適切な電力量とガス供給量を求めるルーチン」は前述と同様に29℃から28℃に部屋の温度を下げるのに必要な電力量とガス供給量の熱供給コストが最安値になる値を算出して出力する。29℃から28℃に部屋の温度を下げるのに最適な電力量とガス供給量を取得した熱量供給算出手段134は、前述と同様に電力およびガス供給装置に対して得た電力量とガス供給量で動作するように指示する(S67b)。
【0053】
電力およびガス供給装置は指定された(S63c)電力量およびガス供給量にて動作する(S64c)。その後は同様に28℃、27℃、26℃をセンサー5は感知し熱供給量制御サーバ2に通知する(S63a)。通知を受けた熱供給量制御サーバ2はセンサー5からの温度を受け(S68b)、前述と同様に動作する。センサー5が目標値である25℃を感知し、熱供給量制御サーバ2に通知した(S64a)時、熱供給量制御サーバ2の熱供給量算出手段134は、目標値に達したと判断する。
【0054】
その後は通常の継続運転を行うように指示したりする(S6Ab)。本実施形態において継続運転とは、温度を目標値に継続する動作のことをさすものとしている。電力およびガス供給装置は指示を受け(S65c)決められた動作を行う。
【0055】
上記において、温度を下げることのみについて記載しているが、図2に示す表を温度を上げるに際して別途作成し、その作成した表を基に温度を上昇させる時に、電力およびガス供給量がその水道のコストを含んだ熱供給コストが最安値となる値を検索してその後は上述のように動作することで対応することができる。
【0056】
また、図2に示す表については、入力部15および表示16を用いて電力情報データベース(DB)141およびガス情報データベース(DB)142に登録することで行う。もしくは予め別のコンピュータなどでファイルを作成しておき、上記データベースにインポートすることで行うことも可能である。さらに図2では、電力量とガス供給量が1つの情報として登録されているが、別々に登録されていて、熱供給量算出手段134が、それらの情報を別々に参照するという方法でも良い。
本発明の第1の実施の形態は以上のように構成され動作する。
【0057】
本発明によれば、ある基準温度から目標の温度まで温度を上昇もしくは降下させるのに必要な電力量およびガス供給量について、水道のコストを含んだ熱供給コストの最安値を算出することが可能となり、さらに対象の部屋にセンサーが有る場合は、センサーから温度を取得し、自動的に最適な電力量およびガス供給量を指定して電力およびガス供給装置に指示して空調を行うことが可能となる。
【0058】
次に本発明の第2の実施形態について以下に説明する。第2の実施形態では1つのフロアーに複数の例えば店舗などの区画が存在し、その区画にセンサーが設置されている。この場合には、中央の空調設備だけで部屋の隅々を目標の温度にすることは難しい。よって各区画に個別の空調設備を設置している場合に、目標値に達しなかった場所を個別の空調設備用いて連動して空調を行えるようにするものである。
【0059】
図7に本発明の第2の実施形態に関わるあるビルのあるフロアーの熱供給に関する構成を示す。21は熱供給を行う対象のビルであり、211は、そのある階のフロアーである。本実施形態では、そのフロアー211には4つの区画222a〜222dが設けられていて、それぞれにセンサー223aから223dが設けられている。224は中央の空調設備である熱量供給装置3用に設けられているセンサーである。
【0060】
図8に、中央のセンサーと個別のセンサーが有る場合の動作フローを示す。図8を用いて複数のセンサー5と個別の熱量供給装置31がある場合の動作フローを説明する。図8において左側から、中央センサー5、個別センサー5、熱量供給制御サーバ2、個別熱量供給装置31を示している。ステップS81a、S81a、S82a、S81c、S82cの動作については第1の実施形態で説明した内容と同じ動作を行う。この状況において中央の熱量供給装置は、30℃から25℃までフロアーの温度を下げたので正しく動作している。がしかし、フロアーの形によっては図7に示しているセンサー223a〜223dで感知される温度は25℃に達していないことがあり得る。
【0061】
その場合、個別のセンサー5から感知した温度である、例えば27℃を熱量供給制御サーバ2に通知される(S81b)。熱量供給制御サーバ2内の温度計測手段135は温度が27℃であることを受信し(S83c)、熱供給量算出手段134に通知する。熱供給量算出手段134は、通知された値が目標値である25℃と異なるか判断する(S84c)。目標値と異なった場合は、そのセンサー5が設置している場所を検索し、対応する個別熱量供給装置31を特定する。それから個別熱供給制御手段20は、特定した個別熱量供給装置31を起動する(S85c)。目標値と同じであった場合は何もしない。
【0062】
個別熱量供給装置31は熱供給量算出手段134からの指示を受け、熱供給を開始する(S81d)。その後、センサー5から通知される温度が目標値である25℃に達したことを受信した場合は、熱供給量算出手段134は継続運転を指示して終了する。
【0063】
本実施形態において継続運転とは、温度を目標値に継続する動作のことをさすものとしている。また、図8においてセンサー5よび個別熱量供給装置31は1つのみ記載しているが、複数存在する場合は複数のセンサー5と複数の個別熱量供給装置31が同様な動作を行う。熱量供給制御サーバ2は複数存在しても良いがその場合は互いに連携して動作するものとする。
第2の実施形態は以上のように構成され動作する。
【0064】
本発明によれば、1つのフロアーに複数の区画があり、その区画にセンサーと個別の熱量供給装置31がある場合には、中央の熱量供給装置3によって中央のセンサーの近辺が目標の温度になった際にも、その他の区画で温度が目標値に達していないことを個別のセンサーによって知った場合には自動的に個別の熱量供給装置31を起動することで、中央の熱量供給装置3と連携してフロアーの隅々を目標の温度にすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
電気、ガスその他のエネルギーを供給する産業にて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に関わる熱供給量制御サーバおよびセンサーの機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における熱供給コストを登録しているデータの構成例である。
【図3】本発明の第1の実施形態における熱供給の遷移を表す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における電力およびガスの熱供給量の最適値を算出するルーチンの動作フロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における1℃ごとの電力およびガスの適切な熱供給を算出するルーチンの動作フロー図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるセンサーを用いた動作フロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における複数の区画およびセンサーを設置されている時のフロアーの構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における複数の区画およびセンサーを設置されている時の動作フロー図である。
【図9】本発明の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 熱供給の経済性評価システム
2 熱供給量制御サーバ
3 熱量供給装置
4 拠点
5 センサー
12 送受信部
13 中央演算処理部
14 記憶部
15 入力部
16 表示部
17 電力供給制御手段
18 ガス供給制御手段
19 外部通知手段
20 個別熱供給制御手段
21 ビル
31 個別熱量供給装置
55 温度感知部
56 通信制御部
131 送受信処理部
132 入出力処理手段
133 熱供給コスト算出手段
134 熱供給量算出手段
135 温度計測手段
141 電力情報DB
142 ガス情報DB
211 フロアー
222a、222b、222c、222d フロアーの区画
223a、223b、223c、223d 個別センサー
224 中央センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱供給を行うシステムの供給熱量に対するエネルギーコストを熱供給コストとして算出するシステムであって、
電力、ガス、および、水の各エネルギーコストを含んだ熱供給コストを算出する熱供給コスト算出手段と、
第1の温度値および第2の温度値を与えられた時に、第1の温度値から第2の温度値へと気温を上昇もしくは降下させるのに必要な供給熱量を算出すると共に前記熱供給コストに基づいて当該熱量のエネルギー配分を演算する熱供給量算出手段と、
を備えたことを特徴とする熱供給の経済性評価システム。
【請求項2】
温度検出を行うセンサーから伝えられる温度を受信する温度計測手段と、
指定された供給量に従って電力の供給を制御する電力供給量制御手段と、
指定された供給量に従ってガスの供給を制御するガス供給量制御手段と、
を備え、
前記熱供給量算出手段は、受信した温度により前記熱供給コスト算出手段を用いて求めた電力およびガスの供給量をそれぞれ前記電力供給量制御手段とガス供給量制御手段に通知することにより、適切な電力およびガスの熱量供給を行うことを特徴とする請求項1に記載の熱供給の経済性評価システム。
【請求項3】
前記温度計測手段はある周期ごとに温度を取得し、
前記熱供給量算出手段はある周期ごとに前記温度計測手段より得られた温度により前記熱供給コスト算出手段を用いて適切な電力およびガスの供給量を算出し、前記電力供給量制御手段および前記ガス供給量制御手段を用いて適切な熱供給を行うことを特徴とする請求項2に記載の熱供給の経済性評価システム。
【請求項4】
複数のセンサーからの検出温度を取得し、特定のセンサーから取得した温度が指定された第2の温度値とある一定値以上差がある時に、外部に通知する外部通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項2または3に記載の熱供給の経済性評価システム。
【請求項5】
前記外部通知手段からの情報を取得し、第2の指定された温度値にするために個別の熱量供給装置を制御する個別熱量供給装置制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の熱供給の経済性評価システム。
【請求項6】
熱供給を行うシステムの供給熱量に対するエネルギーコストを熱供給コストとして算出する方法であって、
電力、ガス、および、水の各エネルギーコストを含んだ熱供給コストを算出する熱供給コスト算出ステップと、
第1の温度値および第2の温度値を与えられた時に、第1の温度値から第2の温度値へと気温を上昇もしくは降下させるのに必要な供給熱量を算出すると共に前記熱供給コストに基づいて当該熱量のエネルギー配分を演算する熱供給量算出ステップと、
を含むことを特徴とする熱供給の経済性評価方法。
【請求項7】
温度検出を行うセンサーから伝えられる温度を受信する温度計測ステップと、
指定された供給量に従って電力の供給を制御する電力供給量制御ステップと、
指定された供給量に従ってガスの供給を制御するガス供給量制御ステップと、
を含み、
前記温度計測ステップは、受信した温度により前記熱供給コスト算出ステップを用いて適切な電力およびガスの供給熱量を求め、前記求めた電力およびガスの供給熱量に基づいて、それぞれ前記電力供給量制御ステップと前記ガス供給量制御ステップを用いて適切な電気およびガスの供給を行うことを特徴とする請求項6に記載の熱供給の経済性評価方法。
【請求項8】
前記温度計測ステップはある周期ごとに温度を計測し、
前記熱供給量算出ステップはある周期ごとに前記熱供給コスト算出ステップを用いて適切な電力およびガスの供給量を算出し、前記算出した供給熱量に基づいて前記電力供給量制御ステップと前記ガス供給量制御ステップを用いて適切な熱供給を行うことを特徴とする請求項7に記載の熱供給の経済性評価方法。
【請求項9】
熱供給を行うシステムの供給熱量に対するエネルギーコストを熱供給コストとして算出するコンピュータ上で動作するプログラムであって、
電力、ガス、および、水の各エネルギーコストを含んだ熱供給コストを算出する熱供給コスト算出処理と、
第1の温度値および第2の温度値をパラメータとして与えられ、第1の温度値から第2の温度値へと気温を上昇もしくは降下させるのに必要な供給熱量を、前記熱供給コスト算出処理を用いて算出する熱供給量算出処理と、
をコンピュータ上で動作させることを特徴とする熱供給の経済性評価プログラム。
【請求項10】
温度検出を行うセンサーから伝えられる温度を受信する温度計測処理と、
指定された供給量に従って電力の供給を制御する電力供給量制御処理と、
指定された供給量に従ってガスの供給を制御するガス供給量制御処理と、
を含み、
前記熱供給量算出処理にて、受信した温度により前記熱供給コスト算出処理を用いて求めた電力およびガスの供給量に基づいて、電力およびガスの供給量をそれぞれ電力供給量制御処理とガス供給量制御処理を用いて適切な電力およびガスの供給を行うことを特徴とする請求項9に記載の熱供給の経済性評価プログラム。
【請求項11】
前記温度計測処理はある周期ごとに温度を計測し、
前記熱供給量算出処理はある周期ごとに前記熱供給コスト算出処理を用いて適切な電力およびガスの供給量を算出し、電力およびガスの供給量を制御して適切な熱供給を行うことを特徴とする請求項10に記載の熱供給の経済性評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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