説明

熱傷を治療するための組成物および方法

本発明は、治療に有効な量の抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体および製薬上許容される賦形剤を含有する組成物を、患者の熱傷部位に投与することを含んでなる、熱傷を治療するための方法ならびに組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年12月16日に出願され係属中の米国特許出願11/012,210の一部継続出願であり、前記出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、また、2004年9月4日出願の国際出願番号 PCT/US2004/031917および2003年9月30日出願の米国仮出願61/411,845号の優先権を主張するものであり、それぞれの出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、温血動物(例えば哺乳動物、特にヒト)における熱傷および皮膚創傷を治療するための医薬組成物を投与することによって得られる有益な効果に関する。特に、本発明は、炎症に関連した組織損傷に関係しており、とりわけ熱傷に関連した局所的および全身的炎症を処置するための、ならびに熱傷から結果的に生じる炎症と関連した各種疾患を処置するための予防および治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱傷熱傷は、最も古くて、最も複雑な、苦痛を伴う創傷の1つである。古代から、ヒトは熱傷の破壊作用と戦ってきた。熱傷は米国において事故死の2番目の主因であり、熱傷後の治療は患者にとって精神的外傷となり、苦痛で、長たらしく、感情的に消耗するものである。実際、米国では毎年500万人以上が熱傷事故に遭遇していると推定されている。これらの人々の150,000人ほどが入院し、毎年6000人を上回る人々が死亡している(1)。
【0004】
熱による熱傷は、断然最も多く見られるタイプの熱傷である。通常、熱傷を受ける身体部分は皮膚であるが、皮膚の下の組織も熱傷を被ることがあり、また、皮膚が熱傷にならないときでさえ内部器官が熱傷になることもある。例えば、非常に熱い液体または酸のような腐食性物質を飲料すると、食道と胃が熱傷を受ける。また、火災で発生した煙や熱せられた空気を吸い込むと、肺が熱傷になりうる。熱傷を受けた組織は死滅する可能性がある。組織が熱傷によって損なわれると、血管から体液が漏出して(毛細管透過性)、腫脹もしくは浮腫を生じさせる。広範囲の熱傷では、異常に漏出性の血管から大量の体液が失われて、ショック症状を引き起こすことがある。ショック状態では、血圧が非常に低下するので、脳やその他の生命器官に血液がごくわずかしか流れないこととなる。
【0005】
電気による熱傷は9,000°Fより高い温度で引き起こされ、このような高温は、電流が電源から体内を流れるときに電流によって発生する。このタイプの熱傷は、電気アーク熱傷とも呼ばれており、通常は身体への電流の侵入箇所の皮膚を完全に破壊して黒焦げにしてしまう。皮膚が電流源に触れる場合には抵抗(生体が電流の流れを止めるまたは遅らせる能力)が高いため、電気エネルギーの多くはそこで熱に変換されて、表面を焼け焦がす。大部分の電気熱傷は皮膚の下の組織にも重症の損傷を引き起こす。こうした熱傷の大きさおよび深さは様々であり、損傷した皮膚の面積によって示されるものよりかなり広い領域に熱傷が及んでいる可能性がある。大きな電気ショックは呼吸を麻痺させ、心臓のリズムを乱して、危険なまでに不規則な心拍を引き起こすことがある。
【0006】
化学熱傷は、強酸および強アルカリ、フェノール類およびクレゾール類(有機溶剤)、マスタードガス、リンを含めて各種の刺激物質や有毒物質によって引き起こされる。化学熱傷は、熱傷後に何時間にもわたってゆっくりと広がって、組織を死に至らせることがある。
【0007】
放射線による熱傷は、核兵器、原子力事故、実験室での被曝、X線化学療法中の事故、および太陽光線への過度の暴露によって引き起こされる。放射線熱傷が原因で、炎症、浮腫、潰瘍、内皮細胞または他の細胞型に対する損傷、癌(特に血液の悪性疾患)を引き起こす突然変異などが生じる。
【0008】
熱傷を被った後、患者は通常、熱傷領域に重症のタンパク質、筋肉および脂肪の消耗を有する(1)。実際、III度または深部組織の熱傷の後、最初の2週間で生体タンパク質の最大20%が失われる(2)。増大した酸素消費、代謝速度、尿中窒素の排泄、脂肪分解、およびボディマス(body mass)の定常的な減少はすべて、熱傷の大きさに直接関係している。熱傷が治癒するにつれてこれらが正常レベルに戻ると、徐々に化学的バランス、温度およびpHが回復する。これまで、熱傷被害者が耐えられて、しかも命を脅かす炎症反応を防止できる治療法は存在していない。
【0009】
一般的な浮腫
浮腫とは、細胞間(間質)組織間隙または体腔内における過剰な液体の貯留を説明するために一般的に用いられる語句である。浮腫は、静脈血の流出が妨げられたときの足のむくみのような、局所現象として起こりうる。あるいは、浮腫は、うっ血性心不全または腎不全におけるように全身的でありうる。浮腫が重篤で全身に広がった場合には、生体のあらゆる組織および器官に広汎の腫脹が見られ、特に目立つ領域にはそれらの個々の名称が与えられている。例えば、腹膜腔内における浮腫の集合は「腹水」として知られており、胸膜腔内における液体の貯留は胸水と呼ばれており、また、心膜の浮腫は「心内膜液浸出」または「心膜水腫」と呼ばれている。心不全や腎疾患における貯留液のような非炎症性の浮腫液は、タンパク質に乏しく、「漏出液」と称される。これに対して、内皮透過性の増加に関係した炎症性の浮腫は、タンパク質に富み、血漿タンパク質(主にアルブミン)と多形核白血球(以後「PMN」)の滲出によって生じ、滲出液を形成する。
【0010】
こうして、浮腫は、炎症性であろうと非炎症性であろうと、循環系の小動脈、毛細管、および後毛細管小静脈を含む微小循環系内の体液バランスが異常になっている状態である。正常な体液バランスおよび交換は、決定的に、代謝的に活性な、無傷の内皮の存在に依存している。正常な内皮は、血漿と間隙の間で水と小分子の選択的かつ迅速な交換を可能にするのに適した、薄くて扁平な上皮であるが、多くの血漿タンパク質の通過は制限される。
【0011】
浮腫の症状は多種多様な障害によって誘発されうる。それらには次のものが含まれる:静脈の血栓症または他のいずれかの静脈閉塞、心不全が原因でありうる静脈静水圧の上昇;アルブミンの不十分な合成またはアルブミン損失の増加により生じる血漿コロイド浸透圧の低下を伴う低蛋白血症;ナトリウムの腎排出が摂取と調和しないため体内のナトリウムが異常に蓄積することによる、間質液の浸透圧の増加;組織間腔から体液とタンパク質を適度に除去するリンパ管の機能不全;組織損傷に対する炎症反応において起こるような、体液およびタンパク質に対する毛細管透過性の増加;および組織間腔内のムコ多糖含量の増加。
【0012】
現在承認されている浮腫の治療薬には、全身的な炎症(この場合には、浮腫が1つの臨床的徴候にすぎない)の治療に用いられる生物由来のまたは合成の薬剤が含まれる。そのような薬剤は前炎症性分子の合成を阻害するとされており、アスピリン、イブプロフェン(サリチル酸およびプロピオン酸誘導体)、ステロイド、抗ヒスタミン剤のような薬剤が含まれる。こうした薬剤は有効性の程度が様々であり、一般的には、軽い局所的浮腫のみを生じる軽度の炎症問題を治療するのに最も有効である。重症の局所的および全身的浮腫の治療に有効な薬剤は、あるにしても、ごくわずかである。さらに、知るかぎりにおいて、これらの症状に対する予防薬として現在使用しうる有効な薬剤は存在していない。さらに、浮腫の治療には、適切に用いる場合、アルブミン注入およびうっ血性心不全の薬物治療が有用である。
【0013】
熱による熱傷の最新の治療
熱によって引き起こされる熱傷の現在用いられている治療には、局所的薬剤の使用および各種の外科手術が含まれる。熱傷治療用の局所的薬剤は限られている。そのような局所的薬剤の代表的な例としては、限定するものではないが、次のものが挙げられる:バシトラシン、硫酸ポリミキシンB、ネオマイシン、ポリスポリン/ネオスポリン、ポビドン、銀スルファジアジン、ニトロフラ種(Nitrofura sp)、ゲンタマイシン、酢酸マンフェニド(Manfenide Acetate)、ニスタチン、次亜塩素酸ナトリウム溶液、硝酸銀、TAB溶液、およびクロルヘキサジン溶液。しかしながら、これらの薬剤のどれも浮腫を止めることはできない。
【0014】
局所治療(熱傷組織の摘出を行わない)のみを用いることから生じる感染症の認めがたい発生率およびリスクのため、焼痂切開術(escharotomy)および挫滅組織切除法(debridement)と呼ばれる手術が導入された。焼痂切開術は文字通り、焼痂(熱傷組織の厚く、凝固した痂皮)中の穴を切開することを意味する。これは、真皮の全層の、ほぼ全周性の熱傷のための緊急時の処置であり、特に頸部、胸郭および四肢に関係している。熱傷を受けた皮膚は焼痂と呼ばれている。挫滅組織切除は焼痂組織の切除である。皮膚移植片は何層もの皮膚からなり、これは患者の適当な供与領域から採取されて、損傷した皮膚の受容面に移植される。挫滅組織切除を単独で用いても、感染率はまだ非常に高いが、皮膚移植片を用いると感染率が低下する。患者自身の皮膚に代わって、ブタの皮膚および/または同種移植片を使用することもできる。しかし、挫滅組織切除および皮膚移植をそれらの現在用いられている形で導入しても、健康な皮膚の機能を完全には取り戻せない。移植した皮膚には脂腺、汗腺、毛包がなく、また傷害を受けた部位には神経終末がない。さらに、移植した皮膚は過形成性瘢痕のような変形を起こしやすい。現在、こうした極端な痛みを伴う手術を完成させるには何ヶ月も要し、場合によっては何年もかかる。
【0015】
上記を考慮すると、当技術分野では引き続いて、あらゆるタイプの熱傷と関連した浮腫を伴う炎症を治療するための、より良好な組成物および方法を開発することが必要とされている。本発明の方法および組成物は、炎症経路の1つ以上の成分をブロックすることによって、熱傷に関連した負の作用を改善および/または治療するための再現可能な手段を、初めて提供するものである。本発明者らは、下記の発明によって、こうした要求および他の長期にわたる要求を満たしたのである。
【発明の概要】
【0016】
発明の概要本発明は、熱傷を治療するための方法を提供し、前記方法は、治療が必要な被験者の熱傷面に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の組成物を投与することを含んでなる。
【0017】
本発明は、熱傷を治療するための方法を提供し、前記方法は、治療が必要な被験者の熱傷面に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の組成物を投与することを含んでなる。
【0018】
ある態様において、本発明は、熱傷に関連した炎症および浮腫の重症度を低減させることによって疼痛を制御または緩和する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は炎症経路の1つ以上の成分を阻害するものである。
【0019】
ある態様において、本発明は、熱傷に関連した肺浮腫の重症度を低減させることによって疼痛を制御または緩和する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は炎症経路の1つ以上の成分を阻害するものである。
【0020】
本発明は、熱傷に関連した炎症および浮腫の重症度を低減させることによって疼痛を制御または緩和する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は炎症経路の1つ以上の成分を阻害するものである。
【0021】
本発明はまた、熱傷から生じる損傷組織の迅速な治癒および/または再生を促進する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、組織のもとの組成を保持しながら、また熱傷に関連した合併症および瘢痕形成を最小限に抑えながら、損傷組織の迅速な治癒および/または再生を促進するものである。
【0022】
本発明はまた、熱傷から生じる損傷組織の迅速な治癒および/または再生を促進する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、組織のもとの組成を保持しながら、また熱傷に関連した合併症および瘢痕形成を最小限に抑えながら、損傷組織の迅速な治癒および/または再生を促進するものである。
【0023】
別の態様において、本発明はまた、瘢痕および刺青の除去、癌の切除、ポリープの焼灼切除、潰瘍、褥瘡性潰瘍(とこずれ)、挫瘡、または皮膚真菌感染症の治療において使用される、制御された熱により誘導された皮膚損傷と関連した有害作用を予防または改善する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される担体を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、組織のもとの組成を保持しながら、また上記の状態の1以上において熱により誘導された熱傷に関連した合併症および瘢痕形成を最小限に抑えながら、損傷組織の迅速な再生を促進するものである。
【0024】
本発明は、太陽光線への過剰暴露に関連した水疱形成または疼痛を予防または改善する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される担体を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなる。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、医学的状態を治療するためのレーザーの使用および各種の化粧上の処置における誘導された熱障害の使用において用いられる、制御された治療上の熱により誘導された皮膚損傷に関連した有害な炎症反応および/または後遺症を予防または改善する方法に関し、前記方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される担体を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、そのような制御された治療上の熱により誘導された皮膚損傷に関連した有害な炎症反応および/または続発症を予防または改善するものである。
【0026】
本発明の別の態様では、炎症経路の1つ以上の成分を遮断することにより疼痛または炎症を軽減させるための、HR341gまたはその機能性誘導体を含有する医薬組成物の使用方法が提供される。
【0027】
本発明の別の態様では、炎症経路の1つ以上の成分を遮断することにより熱傷に関連した疼痛または炎症を軽減させるための、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体を含有する合成薬剤の使用方法が提供される。
【0028】
特定の実施形態において、上記方法のそれぞれは、処置が必要な被験者に、炎症経路の1つ以上の酵素または成分のアンタゴニストまたは阻害剤1種以上を治療に有効な量で投与することにより達成され、その際、前記酵素のアンタゴニストまたは阻害剤の投与は炎症経路の1つ以上の成分を遮断するのに十分なものである。どのような特定の作用機構にも限定されるものではないが、上記の本発明方法のいずれかを用いて阻害することのできる炎症経路の具体的な酵素または成分としては、とりわけ、次のものが含まれる:ジヒドロ葉酸レダクターゼ、エノラーゼ、インターロイキン-1β変換酵素(ICE)、腫瘍壊死因子α変換酵素(TACE)、酸化窒素シンターゼ、トロンボキサンシンターゼ、シクロオキシゲナーゼ、デニラートシクラーゼ(denylate cyclase)、ヒストンデアセチラーゼ、エラスターゼ、プロテイナーゼ3、トロンビン、またはこれらの任意の組合せ。
【0029】
1つの具体的な実施形態では、上記方法のそれぞれは、処置が必要な被験者に、炎症経路の1つ以上の成分を遮断するのに十分な、治療に有効な量の、ジヒドロ葉酸レダクターゼ酵素のアンタゴニスト1種以上を投与することにより達成される。ある実施形態では、1種以上のジヒドロ葉酸レダクターゼ酵素のアンタゴニストの治療に有効な量は、解糖経路の1つ以上の成分を遮断するのに十分なものである。
【0030】
別の具体的な実施形態では、上記方法のそれぞれは、処置が必要な被験者に、炎症経路の1つ以上の成分を遮断するのに十分な、治療に有効な量の、エノラーゼ酵素のアンタゴニスト1種以上を投与することにより達成される。ある実施形態では、1種以上のエノラーゼ酵素のアンタゴニストの治療に有効な量は、解糖経路の1つ以上の成分を遮断するのに十分なものである。
【0031】
上記の本発明方法のそれぞれにおいて、治療に有効な量の、1種以上の抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤、1種以上のジヒドロ葉酸レダクターゼ酵素のアンタゴニスト、および/または1種以上のエノラーゼ酵素のアンタゴニストは、処置が必要な被験者に、治療に有効な量の1種以上の抗炎症性化合物および/または治療に有効な量の1種以上の免疫調整剤と共に投与することができる。
【0032】
本発明方法の特定の実施形態では、抗炎症性化合物または免疫調整剤として以下のものが挙げられる:インターフェロン、インターフェロン誘導体(ベタセロン、β-インターフェロンを含む)、プロスタン誘導体(イロプロスト、シカプロストを含む)、グルココルチコイド(コルチゾール、プレドニゾロン、メチル-プレドニゾロン、デキサメタゾンを含む)、免疫抑制剤(シクロスポリンA、メトキサレン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキセートを含む)、リポキシゲナーゼ阻害剤(ジロイトン(zileutone)、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357を含む)、ロイコトリエン拮抗剤、ペプチド誘導体(ACTHおよびその類似体を含む)、可溶性TNF受容体、抗TNF抗体、インターロイキンまたは他のサイトカインの可溶性受容体、インターロイキンまたは他のサイトカインまたはT細胞タンパク質の受容体に対する抗体、ならびにカルシポトリオールおよびその類似体(これらは単独でまたは組合せで投与される)。
【0033】
本発明のさらに別の態様では、免疫抑制が必要な哺乳動物患者の免疫系を抑制または調整する方法が提供され、前記方法は、前記患者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、免疫抑制に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなる。
【0034】
本発明のさらに別の態様では、免疫抑制が必要な哺乳動物患者の免疫系を抑制または調整する方法が提供され、前記方法は、前記患者に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、免疫抑制に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなる。
【0035】
本発明のさらに別の態様では、免疫抑制が必要な哺乳動物患者において、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、TNF)、酸化窒素、反応性酸素中間体(ROI)、ロイコトリエン、および/またはプロスタグランジン、あるいは炎症シグナル伝達経路に関与するいずれか1種以上の既知の生物学的分子などを含む、有害でありうる炎症性分子の合成を抑制する方法が提供され、前記方法は、前記患者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、免疫抑制に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、サイトカインまたは炎症シグナル伝達経路の活性化に関与するいずれか1種以上の既知の生物学的分子の合成を抑制して、炎症の遮断もしくは免疫反応の低下またはその両方をもたらすものである。
【0036】
本発明のさらに別の態様では、免疫抑制が必要な哺乳動物患者において、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、TNF)、酸化窒素、反応性酸素中間体(ROI)、ロイコトリエン、および/またはプロスタグランジン、あるいは炎症シグナル伝達経路に関与するいずれか1種以上の既知の生物学的分子などを含む、有害でありうる炎症性分子の合成を抑制する方法が提供され、前記方法は、前記患者に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、免疫抑制に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、サイトカインまたは炎症シグナル伝達経路の活性化に関与するいずれか1種以上の既知の生物学的分子の合成を抑制して、炎症の遮断もしくは免疫反応の低下またはその両方をもたらすものである。
【0037】
本発明のさらに別の態様では、炎症性メディエーターに関連した疾患および熱傷に対する全身応答を改善する方法が提供される。初期の熱傷または炎症および浮腫にはオキシダントとアラキドン酸代謝産物が関係し、これらが引き金となって好中球とマクロファージにサイトカイン(腫瘍壊死因子、IL-1、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、および酸化窒素を含むが、これらに限らない)を放出させる。創傷部および/または胃腸管に存在する病原体からの内毒素が炎症を引き起こして、炎症を増強させ、その結果、微生物が消化管を横切って転移し、さもなければ外傷による影響を受けない離れた箇所に病理を引き起こす。この過大な応答は「2回打撃」仮説("two hit" hypothesis)と呼ばれているが、「熱傷後」はさらに特筆すべきことである。熱傷後の敗血症性応答は、宿主由来の過剰の炎症性メディエーター、特にIL-1、IL-2、TNF、IL-8、NO、反応性酸素中間体(ROI)、およびその合併症により引き起こされる。こうした合併症または「関連疾患応答」(associated disease response: ADR)は浮腫、炎症、および微生物叢の転移が原因で起こる。HR341gおよびその機能性誘導体を含むがこれらに限らない抗サイトカイン剤または抗炎症剤は、浮腫および炎症反応を抑制するので、こうした抗サイトカイン剤または抗炎症剤は、炎症が疾患プロセスの一因となる疾患を治療することができる。
【0038】
典型的なADRのリストには以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない:熱傷後の合併症、例えば、仕切り症候群、アシドーシス、急性腎不全、急性尿細管壊死、蜂巣炎、二次性発作、拘縮、減少した終末器官灌流、内毒素血症、外毒素血症、壊疽、院内肺炎(熱傷/煙吸い込み傷害の患者の50%はこのタイプを発症する)、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、人工呼吸器関連肺炎、敗血症、敗血症性ショック、悪液質、下痢、脳障害、ミオグロブリン尿症、煙の吸い込みにより誘発される肺障害、血栓塞栓性合併症、および炎症性成分を伴う他の非熱傷関連疾患(例えば、貧血、癌、うっ血性心不全、凝固した血管(血栓症)、皮膚筋炎(DM)、皮膚炎、肺胞性蛋白症肺炎、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、慢性吸引性脂肪肺炎、市中肺炎(CAP)、コロナウイルス肺炎、クリプトコックス肺炎、クラミジア肺炎、剥離性間質性肺炎、好酸球性肺炎、インフルエンザ肺炎、パラインフルエンザ肺炎、特発性肺炎、インフルエンザ関連肺炎、特発性間質性肺炎、クレブシェラ肺炎、マイコプラズマ肺炎、非特異性間質性肺炎(皮膚筋炎(DM)と関連)、パスツレラ肺炎、ニューモシスチス肺炎(PCP)、緑膿菌肺炎、RSウイルス感染症、ブドウ球菌性壊死性肺炎、結核性肺炎、通常型間質性肺炎(UIP)、水痘帯状疱疹ウイルス肺炎、トキシックショック症候群、中毒性表皮壊死症(TEN)、および神経炎を含むが、これらに限らない)。以下の疾患のリストは、熱性外傷による代謝混乱に関連づけられる:悪液質、下痢、脳障害、ミオグロブリン尿症、および神経炎。
【0039】
本発明のさらに別の態様では、炎症の抑制を必要とする哺乳動物患者において主要組織適合遺伝子複合体の発現を調節する方法が提供され、前記方法は、前記患者に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、炎症抑制に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、主要組織適合遺伝子複合体の発現を調節するものである。
【0040】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、熱傷に関連した疼痛を治療するために、および/または、熱傷に伴って起こることの多い疾患もしくは障害を予防するために有用であり、ここで前記疾患または障害は下記からなる群より選択される:心筋虚血、組織および筋に関連した虚血、肢関連虚血、発作、敗血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、痙攣、初期組織損傷後の発作の長期化、原発性および転移性脳腫瘍による二次的な脳機能障害、髄膜炎もしくは脳膿瘍、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性脳炎による二次的な局所脳障害、および/または、外傷、臓器もしくは組織の移植による二次的な局所脳障害、移植に起因する移植片対宿主病、自己免疫症候群、例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、若年発症もしくは最近発症糖尿病、後部ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、感染後の自己免疫疾患、例えば、リウマチ熱および感染後の糸球体腎炎、炎症性および過増殖性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性水腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、エリテマトーデス、挫瘡、円形脱毛症、角結膜炎、春季結膜炎、ベーチェット病に関連したブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、角膜上皮異栄養、眼の天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト-小柳-原田症候群、サルコイドーシス、花粉症、可逆性閉塞性気道疾患、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵埃喘息、慢性もしくは難治性喘息、遅発性喘息および気道高応答、気管支炎、胃潰瘍、虚血性疾患および血栓が原因の血管損傷、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患、壊死性腸炎、熱傷に関連した腸障害、Celrac病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎、鼻炎、湿疹、間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症、筋炎、ギヤン-バレー症候群、多発神経炎、単神経炎、神経根障害、赤芽球ろう、再生不良性貧血、低形成貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、骨粗鬆症、サルコイドーシス、肺線維症、特発性間質性肺炎、皮膚筋炎、光線過敏性、皮膚T細胞リンパ腫、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎、心筋症、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、好酸球性筋膜炎、歯肉の障害、男性型脱毛症または老人性脱毛症(抜毛を予防し、毛の発育をうながし、かつ/または毛の発生と成長を促進することによる)、セザリー症候群、アジソン病、器官の虚血再灌流障害、内毒素性ショック、偽膜性腸炎、薬物または放射線が原因の腸炎、虚血性急性腎不全、慢性腎不全、肺癌、肺気腫、多形紅斑皮膚炎、線状IgA水泡性皮膚炎、発癌、癌の転移、ベーチェット病、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、部分的肝切除、急性肝壊死、毒素による壊死、ウイルス性肝炎、ショック、または無酸素症、肝硬変、アルコール性肝硬変、肝不全、劇症肝不全、遅発性肝不全、突然急性化(acute-on-chronic)肝不全、化学療法効果の増強、サイトメガロウイルス感染、癌、外傷、ならびに慢性細菌感染。
【0041】
本発明の1つの態様において、処置が必要な被験者に投与される1種以上の抗サイトカイン剤または抗炎症剤の治療に有効な量は、とりわけ、以下の疾患の1つ以上に関連した病理を軽減するのに十分な量である:心筋虚血、組織および筋に関連した虚血、肢関連虚血、発作、敗血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、痙攣、初期組織損傷後の発作の長期化、原発性および転移性脳腫瘍による二次的な脳機能障害、髄膜炎もしくは脳膿瘍、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性脳炎による二次的な局所脳障害、および/または、外傷、臓器もしくは組織の移植による二次的な局所脳障害、移植に起因する移植片対宿主病、自己免疫症候群、例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、若年発症もしくは最近発症糖尿病、後部ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、感染後の自己免疫疾患、例えば、リウマチ熱および感染後の糸球体腎炎、炎症性および過増殖性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性水腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、エリテマトーデス、挫瘡、円形脱毛症、角結膜炎、春季結膜炎、ベーチェット病に関連したブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、角膜上皮異栄養、眼の天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト-小柳-原田症候群、サルコイドーシス、花粉症、可逆性閉塞性気道疾患、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵埃喘息、慢性もしくは難治性喘息、遅発性喘息および気道高応答、気管支炎、胃潰瘍、虚血性疾患および血栓が原因の血管損傷、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患、壊死性腸炎、熱傷に関連した腸障害、Celrac病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎、鼻炎、湿疹、間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症、筋炎、ギヤン-バレー症候群、多発神経炎、単神経炎、神経根障害、赤芽球ろう、再生不良性貧血、低形成貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、骨粗鬆症、サルコイドーシス、肺線維症、特発性間質性肺炎、皮膚筋炎、光線過敏性、皮膚T細胞リンパ腫、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎、心筋症、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、好酸球性筋膜炎、歯肉の障害、男性型脱毛症または老人性脱毛症(抜毛を予防し、毛の発育をうながし、かつ/または毛の発生と成長を促進することによる)、セザリー症候群、アジソン病、器官の虚血再灌流障害、内毒素性ショック、偽膜性腸炎、薬物または放射線が原因の腸炎、虚血性急性腎不全、慢性腎不全、肺癌、肺気腫、多形紅斑皮膚炎、線状IgA水泡性皮膚炎、発癌、癌の転移、ベーチェット病、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、部分的肝切除、急性肝壊死、毒素による壊死、ウイルス性肝炎、ショック、または無酸素症、肝硬変、アルコール性肝硬変、肝不全、劇症肝不全、遅発性肝不全、突然急性化肝不全、化学療法効果の増強、サイトメガロウイルス感染、癌、外傷、ならびに慢性細菌感染。
【0042】
1つの実施形態において、先に挙げた適応症の1つ以上に関連した病理および/もしくは症状の軽減または抑制は、約10〜20%ほどの軽減または抑制である。別の実施形態では、病理および/もしくは症状の軽減または抑制は約30〜40%ほどである。別の実施形態では、病理および/もしくは症状の軽減または抑制は約50〜60%ほどである。さらに別の実施形態では、先に挙げた適応症のそれぞれに関連した病理および/もしくは症状の軽減または抑制は、約75〜100%ほどである。本明細書においては、上記の範囲はその範囲内の特定したパーセンテージ量をすべて含むものとする。例えば、約75〜100%の範囲は、実際に特定した範囲をそれぞれ列記しなくとも、76〜99%、77〜98%などを包含する。
【0043】
さらに別の態様において、本発明は、先に挙げた疾患または適応症のいずれか1つ以上を有する哺乳動物において、先に挙げた疾患または適応症のいずれか1つ以上に関連した病理もしくは症状を緩和または改善する方法に関し、前記方法は、処置が必要な哺乳動物に、治療に有効な、病理もしくは症状を軽減する量の医薬組成物を投与することを含んでなり、前記医薬組成物は、1種以上の抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤(単独、または1種以上の抗炎症性化合物もしくは免疫調整剤との組合せのいずれか)、および製薬上許容される担体もしくは賦形剤を含有し、ここで前記抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤は炎症経路の1つ以上の成分を阻害するのに十分なものである。
【0044】
本発明はまた、先に挙げた疾患のいずれか1つ、またはそれらの任意の組合せを治療するための、1種以上の抗菌性もしくは抗ウイルス性組成物またはその両方と組み合わせたHR341g医薬組成物の使用に関する。
【0045】
本発明は、被験者の浮腫を治療的または予防的に処置する方法を提供する。
【0046】
浮腫を治療的に処置する方法は、浮腫が生じた後の被験者に、有効量の抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその誘導体を投与することを含んでなる。
【0047】
浮腫を予防的に処置する方法は、浮腫が生じる前の被験者に、有効量の抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその誘導体を投与することを含んでなる。
【0048】
いずれの方法も微小血管液、巨大分子、および血球の透過性を防止し、それにより臨床上の浮腫に直接的に作用し、炎症経路の活性化を必要とする有害な代謝カスケードおよび経路の活性化を抑制する。
【0049】
本発明の1つの態様では、本発明の医薬組成物は経口的に、全身的に、インプラントを介して、静脈内に、局所的に、硬膜下腔内に、または鼻腔内に投与される。
【0050】
本発明の1つの態様では、本発明の医薬組成物は、熱傷を引き起こす事象の5、10、20、30、40、50、または60分以内に熱傷面に投与される。好ましくは、本発明の医薬組成物は、熱傷を引き起こす事象の10〜20分以内に熱傷面に投与される。最も好ましくは、本発明の医薬組成物は、熱傷を引き起こす事象の後、できるだけ早く熱傷面に投与される。本発明の医薬組成物は、できるだけ早く熱傷面に投与すべきであるが、熱傷事象の12時間後までは投与することができる。
【0051】
本発明の1つの実施形態において、治療される熱傷は、熱による熱傷、制御された熱による熱傷、化学熱傷、放射線熱傷、電気熱傷、氷による熱傷、または光線への暴露により生じる熱傷である。
【0052】
上記方法のそれぞれにおいて、熱傷はI度、II度、III度もしくはIV度の熱傷、またはこれらが混在する熱傷である。
【0053】
本発明の方法の特定の実施形態では、被験者または哺乳動物がヒトである。
【0054】
本発明の方法の他の実施形態では、被験者または哺乳動物が獣医学上のおよび/または飼いならされた哺乳動物である。
【0055】
さらに他の態様では、本発明は、熱傷事故または熱傷損傷後できるだけ早く皮膚に医薬組成物を適用するための、突発的な熱傷事故または損傷用のキットを提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、身体および/または衣服が炎に巻き込まれている個体を覆うために使用することができる、消火器で使用するのに適している局所熱傷治療製剤を提供し、前記製剤は抗サイトカイン剤、抗炎症剤、もしくはHR341g、またはその機能性誘導体を含有する。
【0057】
以上、本発明の重要な構成について、以後の発明の詳細な説明がよりよく理解され得るように、そしてまた本発明の貢献がよりよく認識され得るように、むしろ広範に、説明してきた。本発明のさらなる構成も存在し、それらについては以下に記載することにする。
【0058】
これに関連して、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用が以下の詳細な説明および図面に示すような細部に限定されないことを理解すべきである。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施し実行することができる。さらに、本明細書で用いた技術用語および言回しは、説明の目的のためであり、限定として見なされるべきでない。
【0059】
したがって、当業者は、本開示の基礎となる概念が、本発明のいくつかの構成および効果を実施する他の方法を設計するための基礎として容易に使用されうる、ことを理解するであろう。それゆえに、重要なこととして、特許請求の範囲は、そのような均等な構成が本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、それらを包含するとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】I度からIII度熱傷を示す模式図である。
【図1A】無傷の皮膚および下層の血管を示す概略図である。
【図1B】急性熱傷損傷が直ちに皮膚細胞の機械的破壊を引き起こし、潰瘍を形成させる様子を示す概略図である。
【図1C】急性熱傷損傷が直ちに炎症を生じさせ、それにより炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-1、IL-6およびIL-8の産生がもたらされる様子を示す概略図である。
【図1D】IL-8(白血球誘引物質)の影響下に、血管内の白血球が組織内に呼び集められる様子を示す概略図である。
【図1E】TNFαおよびIL-1の影響下に、血管内層を形成する細胞がその完全性を失い、それにより血管に沿って細孔の形成に至る様子を示す概略図である。
【図1F】TNFα、IL-1、IL-6およびIL-8に一酸化窒素(NO)およびフリーラジカル(反応性酸素中間体またはROIとも呼ばれる)のような他の炎症性物質が加わる様子を示す概略図である。
【図1G】TNFα、IL-1、IL-6およびIL-8と他の炎症性物質(例えばNOまたはROI)が血流に接近し、全身性の炎症を生じさせる様子を示す概略図である。
【図1H】TNFα、IL-1、IL-6およびIL-8と他の炎症性物質(例えばNOまたはROI)がひとたび血流に入ると、それらが全身性炎症を生じさせる様子を示す概略図である。
【図1I】HR341gが、炎症過程を開始させるTNFα、IL-1、IL-6およびIL-8の産生を阻害すると考えられることを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明はその最も簡便な形態において、熱傷、浮腫ならびに種々のタイプの熱傷に付随する関連疾患応答を治療するための組成物および方法を提供する。以下は本発明の組成物および方法を用いて治療しうる熱傷のタイプおよび関連した浮腫ならびに他の疾患の簡単な説明である。
【0062】
熱傷のタイプ
表層性熱傷またはI度熱傷
生体は熱傷後に常に浮腫を形成するが、日焼けおよびI度の熱傷は、失われる血漿量が最少であるため、目に見える水疱を生じない。臨床症状としては痛みを伴う紅斑が挙げられる。組織学的には、表皮が部分的に破壊され、基底膜は正常なまま残る。多くの場合、I度熱傷の予後は、数日中に治癒するというものである。
【0063】
中間層熱傷またはII度熱傷
これらの熱傷では、一部のIII度熱傷損傷と同様に、ほとんど常に水疱が形成される。臨床症状としては、紅斑、水疱、圧迫による下層組織の青白化が挙げられる。組織学的には、基底膜が部分的に破壊される。多くの場合、中間層熱傷またはII度熱傷に対する予後は、10〜15日中に治癒するというものである。
【0064】
深達性II度熱傷
臨床症状としては、紅斑、水疱、および圧迫によって下層組織が青白化しないことが挙げられる。組織学的には、基底膜が全体的に破壊され、真皮は部分的に破壊され、表皮細胞は毛包の周囲にとどまる。多くの場合、深達性II度熱傷に対する予後は、3〜4週間のうちに治癒するか、または治癒せず、それゆえ移植を要する場合があるというものである。
【0065】
全層熱傷またはIII度熱傷
これらにおいては、多くの場合皮膚は破壊されるために水疱が形成されることはあまりない。臨床症状としては、褐色化、黒色化または白色化、水疱が形成されず、感覚がなくなることが挙げられる。組織学的には、表皮および真皮は完全に破壊され、皮下組織がいくぶんか損傷する。多くの場合、全層熱傷またはIII度熱傷に対する予後は、外縁部を除いて治癒せず、したがって移植を要するというものである。
【0066】
IV度熱傷
これらの熱傷は下層の筋および腱の破壊を含むことがある。臨床症状としては、黒色化した外観、乾燥、重度の疼痛が挙げられる。組織学的には、皮膚、皮下組織、筋、腱、および骨が破壊される。多くの場合、IV度熱傷に対する予後は、治癒せず、したがって挫滅組織切除および移植を要するというものである。
【0067】
浮腫
浮腫は全てのタイプの熱傷で見られ、熱傷のタイプとしては、例えば、高温、極度の低温、放射線、化学物質および電気により引き起こされるものが挙げられる。これは疼痛、感染、挫滅組織切除、皮膚移植、切断術、瘢痕化、ショックおよび死亡に結びつく。熱傷の治療が完全に成功するとすれば、それは浮腫形成前の機会に行われたものだろう。浮腫は多くの場合、熱傷を受けてから30分から2時間後に形成され始め、形成のピークは48時間で到来する。30分から2時間の時間幅が、本発明の組成物および方法を用いて患者を治療するための時間となる。
【0068】
したがって、全てのタイプの熱傷において炎症を予防および/または治療することにより、浮腫の形成を軽減することができる。本発明の組成物および方法は、全てのタイプの熱傷において必要な、一連の適正な治癒を開始させる引き金となり、したがって熱傷によって通常引き起こされる破壊的な生化学反応を妨げる。
【0069】
さらに、浮腫を予防および/または治療することにより、「熱傷後」の一連の事象をモジュレートすることも可能であり、それにより熱傷がより深くかつ広範に及ぶことを防ぐことができるようになる。本発明の組成物および方法は、進行中の炎症を妨げることにより熱傷後を効果的に軽減することができる。本発明の組成物を熱傷に投与すると、そうしなければ起こるであろう組織の損傷が予防される。本発明の組成物は表皮の壁面および毛包の内面に密着し、それにより熱傷後の期間中それらを保護する。本発明の組成物はまた、微生物が熱傷部に侵入するのも防ぐであろう。したがって患者は、典型的な熱傷に通常関連する種々の感染に侵されないので、苦痛もより軽いであろう。したがって当該組成物は、熱傷による損傷がより重症へと進行するのを予防するものである。
【0070】
炎症を予防および/または治療することにより、大抵の場合に患者の予後を決定する要因となる複雑な化学的変化を抑制することができる。本発明の組成物は、これらの化学的変化を縮小し、身体が、熱傷ではなく軽い創傷または切創のようなより軽度の外傷後と同様に反応するようにする。軽い切創または創傷を受けた後には、身体は血小板により創傷を塞ぎ、そして治癒段階を開始することができる。これが損傷部位の回復を促進する正常な反応である。
【0071】
本発明の組成物および方法を用いれば、細菌により引き起こされる感染を予防および/または治療することも可能であり、同様に多数の関連疾患応答(Associated Disease Response: ADR)を予防および/または治療することが可能である。本発明の組成物および方法の使用は、大部分の熱傷において微生物の繁殖場所となる組織損傷を防止する。この減少した感染率は、軽減された疾患、障害および変形と言い換えられる。続発症での感染サイクルを阻止する能力は、疾患プロセスを停止させることができる。グラム陽性生物およびグラム陰性生物による感染症は、多くの場合、浮腫の後に発症する。これらの病態生理学的局面の有害な結果は、早い段階でのMOD(多臓器不全)に結びつく。微生物の転移は、血漿の漏出部位をブロックすることが可能であれば予防することができる。本発明の組成物は、炎症を制限することにより、好中球の貯留、ならびにその酸素フリーラジカルおよび種々のプロテアーゼの放出を防ぎ、それによりさらなる組織損傷を妨げる。
【0072】
典型的なADRのリストには以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない:熱傷に関連したもの、例えば、仕切り症候群、アシドーシス、急性腎不全、急性尿細管壊死、蜂巣炎、二次性発作、拘縮、減少した終末器官灌流、内毒素血症、外毒素血症、壊疽、院内肺炎(熱傷/煙吸い込み傷害の患者の50%はこのタイプを発症する)、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、人工呼吸器関連肺炎、敗血症、敗血症性ショック、血栓塞栓性合併症;および炎症性成分を伴う他の非熱傷関連疾患(例えば、貧血、癌、うっ血性心不全、減少した終末器官灌流、皮膚筋炎(DM)、皮膚炎、肺胞性蛋白症肺炎、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、慢性吸引性脂肪肺炎、市中肺炎(CAP)、コロナウイルス肺炎、クリプトコックス肺炎、クラミジア肺炎、剥離性間質性肺炎、好酸球性肺炎、インフルエンザ肺炎、パラインフルエンザ肺炎、特発性肺炎、インフルエンザ関連肺炎、特発性間質性肺炎、クレブシェラ肺炎、マイコプラズマ肺炎、非特異性間質性肺炎(皮膚筋炎(DM)と関連)、パスツレラ肺炎、ニューモシスチス肺炎(PCP)、緑膿菌肺炎、RSウイルス感染症、ブドウ球菌性壊死性肺炎、結核性肺炎、通常型間質性肺炎(UIP)、水痘帯状疱疹ウイルス肺炎、トキシックショック症候群、および中毒性表皮壊死症(TEN)を含むが、これらに限定されない)。以下の疾患のリストは、熱性外傷による代謝混乱に関連づけられる:悪液質、下痢、脳障害、ミオグロブリン尿症、および神経炎。
【0073】
III度またはより重度の熱傷では多くの場合必要とされる通常の挫滅組織切除および皮膚移植の必要性もまた防止することができる。本発明の組成物を用いることにより、患者は熱傷損傷に付随する疼痛および外傷性障害にあまり患わされないであろう。患者は軽減された浮腫を発症し、熱傷は自然治癒し、挫滅組織切除や皮膚移植のようなより侵襲的な治療の必要性は低減する。皮膚移植は感染を合併することがあり、見苦しく醜い傷跡を残しうる。挫滅組織切除を必要する重症の熱傷では、個体自身の皮膚が成長する機会が失われる可能性があり、それにより、長期を要し痛みを伴う皮膚移植の方法が必要となる。一部のケースでは、切断術が唯一の解決策である。多くの全層熱傷は、いまや、挫滅組織切除および/または皮膚移植の必要性を削減しつつ、本発明の組成物を用いて治癒することが可能である。
【0074】
炎症を予防することにより、より重症の熱傷に伴って通常起こる過形成性瘢痕形成を予防することも可能である。熱傷のうち部分的な表層性のものから全層性のものまでが、炎症および組織損傷が軽減されれば、感染または過形成性瘢痕形成を伴うことなく治癒しうる。全層熱傷またはIII度熱傷では、真皮がなくなるので、コラーゲン線維が垂直および水平に並ぶことはないが、ランダムで無秩序な塊としては存在する。増殖期が開始するものの、進行は困難である。再編成の間、コラーゲン線維が緻密に配列することが期待されるが、感染、挫滅組織切除、皮膚移植および他の障害のため、そのプロセスは統制のとれたものとはならない。この機能障害が過形成性瘢痕につながるものと思われる。炎症/感染が軽減されれば、患者の残った皮膚を除去する必要性は少なくなり、身体は、ほとんど合併症を伴わず、かつほとんどか全く瘢痕形成せずに回復することができる。本発明の組成物および方法は、身体が一連の適正な回復を開始することを可能にする。
【0075】
HR341g組成物およびその誘導体
天然に存在するか人工的に作られる抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその誘導体であって、熱傷に関連した局所的および全身的炎症を治療するための予防的および治療的方法に用いることができるものの代表例としては、例えば、限定するものではないが、HR341g、アミノプテリン、メトトレキセート、ピラメタミン、およびトリメトプリムまたはそれらのいずれかの組み合わせを含んでなる医薬組成物が挙げられる。
【0076】
アミノプテリン(AMT;4-アミノ-4-デオキシプテロイルグルタミン酸)は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤である。ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)は、7,8-ジヒドロ葉酸とNADPHから5,6,7,8,-テトラヒドロ葉酸とNADP+とを形成する反応を触媒する。テトラヒドロ葉酸は、プリン類、チミジル酸および一部のアミノ酸の生合成に必須である(Rajagopalanら、PNAS vol. 99(21), 13481-13486 (2002)、参照により本明細書中に組み入れられる)。アミノプテリンは細胞の葉酸補酵素が関与する1以上の生合成ステップを妨害することにより抗新生物薬として機能する。アミノプテリンの構造式は以下のとおりである:アミノプテリンの構造
【化1】

【0077】
メトトレキセート(MTX;4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチル-プテロイルグルタミン酸)およびアミノプテリン(AMT;4-アミノ-4-デオキシプテロイルグルタミン酸)は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤であり、細胞の葉酸補酵素が関与する1以上の生合成ステップを妨害することにより抗新生物薬として機能する。MTXの構造は、N10位にAMTにはないメチル基(AMTはその代わり水素を有する)を有する点で、AMTとは異なる。MTXの構造式は以下のとおりである:MTXの構造
【化2】

【0078】
以下の文献はメトトレキセートについて記載している:メトトレキセートの調製[Seeger ら, J. Am. Chem. Soc., 1949, 71 : 1753 参照];メトトレキセートの代謝[Freeman, J. Pharmacol. Exp. Ther. 1958,122 : 154;および Henderson ら, Cancer Res. 1965,25 : 1008, 1018 参照];メトトレキセートの毒性[Condit ら, Cancer 1960, 13: 222-249];メトトレキセートの薬物動態モデル[Bischoff ら, J. Pharm. Sci 1970, 59: 149];メトトレキセートの代謝および薬物動態[Evans, Appl.Pharmacokinet. 1980, 518-548];メトトレキセートの臨床薬理学[Bertino, Cancer Chemother, 1981, 3: 359-375;Jolivet etal., N. Engl. J. Med., 1983, 309: 1094-1104](これらのそれぞれの記載は参照により明示的に本明細書中に組み入れられる)。
【0079】
MTXおよびAMTは、特定の悪性腫瘍に対して臨床的に有効であることが見出されている:例えば、急性リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、乳癌、菌状息肉腫、頭部頸部領域の扁平上皮癌、ならびに骨原性肉腫の患者では良好〜優秀な腫瘍反応が見られている。さらに、MTXは絨毛癌の治療で好まれる薬剤であり、また汎発性乾癬のようなある種の非新生物症状ならびに慢性関節リウマチおよび紅斑性狼瘡のようなある種の自己免疫疾患に対しても用いられる。
【0080】
しかしながら、MTXまたはAMTを用いた化学療法は種々の毒性(それらの薬剤のポリグルタミン酸形成能に部分的に関連している)を伴い、このことが該化合物の有効性および長期使用を制限することに留意すべきである。
【0081】
式IおよびIIは、Albert L. Lehningerの教科書(Biochemistry: The Molecular Basis Of Cell Structure And Function, 第2版, Worth Publishers, Inc., 1977)(その記載は参照により明示的に本明細書中に組み入れられる)中に見出されるもののような、アミノ酸およびペプチド構造についての一般的な化学構造、形式、および表記法を用いて表されていることが理解され、認識されるであろう。さらに、式IおよびIIはその定義により、天然に存在するか人工的に合成される物質のすべての現在知られている具体例および将来の具体例であって、化学式および構造より、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤またはジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤の機能性誘導体(すべての置換型および誘導型を含む)である化合物のクラスを形成するメンバーであるものが本発明の範囲に含まれることを意図するものである。しかしながら、具体例の代表的な非限定例は、米国特許第5,965,106号、同第5,140,104号、同第4,956,461号(これらのそれぞれの記載は参照により明示的に本明細書中に組み入れられる)により記載のように設計および合成されるものである。これらの公開された特許は、天然に存在するか人工的に合成されるジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤またはジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤の機能性誘導体の代表的な具体例を提供するのみならず、本発明の方法論で使用する、そのようなジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤の機能的類似体を合成および精製するための完全かつ詳細な方法ならびに技術をも提供する。
【0082】
さらに、ピラメタミン、およびトリメトプリムは、化学式および構造より、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤またはジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤の機能性誘導体である化合物のクラスを形成するメンバーの一部であることが意図される。したがって、ピラメタミンおよびトリメトプリム、ならびにピラメタミンおよびトリメトプリムのすべての置換されたおよび誘導体化された形態もまた、本発明の方法論の範囲に含まれることが意図される。
【0083】
本発明の方法に用いるジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤化合物またはその機能性誘導体は、4-アミノ-4-デオキシプテロイン酸もしくは4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイン酸と、システイン酸またはホモシステイン酸との反応により調製することができる。したがって、本発明の方法に用いる化合物の代表例は、限定するものではないが、以下のようなMTX誘導体化合物を含む:4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイル-D,L-ホモシステイン酸(mAPA-D,L-HCysA)、4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイル-L-システイン酸(mAPA-L-CysA)、4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイル-L-ホモシステイン酸(mAPA-L-HCysA)、4-アミノ-4-デオキシプテロイル-D,L-ホモシステイン酸(APA-D,L-HCysA)、4-アミノ-4-デオキシプテロイル-L-システイン酸(APA-L-CysA)、および4-アミノ-4-デオキシプテロイル-L-ホモシステイン酸(APA-L-HCysA)。
【0084】
例えば、限定するものではないが、本発明の方法に用いる化合物には、MTXもしくはAMTのグルタミン酸部分がシステイン酸またはホモシステイン酸で置換されているMTXおよびAMT類似体が含まれる。
【0085】
本発明の方法に用いることができるアミノプテリン誘導体のさらなる非限定例は以下のとおりである:α-カルボキシル置換アミノプテリン誘導体、例えば、アミノプテリン誘導体の一実施形態では、α-カルボキシルエステル誘導体、α-カルボキシルアミド誘導体、α-カルボキシルペプチド誘導体、およびα-カルボキシルヒドラジド誘導体をはじめとするα-カルボキシル置換アミノプテリン誘導体を用いてもよい;α-カルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα-メチルエステル、α-エチルエステル、α-プロピルエステル、α-ブチルエステル、α-ペンチルエステル、α-ヘキシルエステル、α-ヘプチルエステルおよびα-オクチルエステルをはじめとするアミノプテリンのα-カルボキシルエステル誘導体が挙げられ(エステルは対応するアルコールのn型またはイソ型から形成してよい)、別の例としては、アミノプテリンのα-ベンジルエステルのような他のエステル誘導体が含まれる;α-カルボキシルアミド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα-アミド、α-ブチルアミド、α-ベンジルアミド、およびα-アミドエタンスルホン酸誘導体が挙げられる;α-カルボキシルペプチド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα-グリシル誘導体、α-アスパルチル誘導体、α-グルタミル誘導体およびα-ポリグルタミル[1-5]誘導体が挙げられる;α-カルボキシルヒドラジド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα-カルボキシルヒドラジド誘導体が挙げられる;γ-カルボキシル置換アミノプテリン誘導体、例えば、アミノプテリン誘導体の一実施形態では、γ-カルボキシルエステル誘導体、γ-カルボキシルアミド誘導体、γ-カルボキシルペプチド誘導体、およびγ-カルボキシルヒドラジド誘導体をはじめとするγ-カルボキシル置換アミノプテリン誘導体を用いてもよい;γ-カルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのγ-メチルエステル、γ-エチルエステル、γ-プロピルエステル、γ-ブチルエステル、γ-ペンチルエステル、γ-ヘキシルエステル、γ-ヘプチルエステルおよびγ-オクチルエステルをはじめとするγ-カルボキシルエステル誘導体が挙げられ(エステルは対応するアルコールのn型またはイソ型から形成してよい)、別の例としては、アミノプテリンのγ-ベンジルエステル誘導体のような他のエステル誘導体が含まれる;γ-カルボキシルアミド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのγ-アミド、γ-ブチルアミド、γ-ベンジルアミド、およびγ-アミドエタンスルホン酸誘導体が挙げられる;γ-カルボキシルペプチド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのγ-グリシル誘導体、γ-アスパルチル誘導体、γ-グルタミル誘導体、およびγ-ポリグルタミル[1-5]誘導体が挙げられる;γ-カルボキシルヒドラジド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのγ-カルボキシルヒドラジド誘導体が挙げられる;α,γ-ホモ二置換アミノプテリン誘導体、例えば、アミノプテリン誘導体の一実施形態では、α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、α,γ-ジカルボキシルアミド誘導体、α,γ-ジカルボキシルペプチド誘導体、およびα,γ-ジカルボキシルヒドラジド誘導体をはじめとするα,γ-ホモ二置換アミノプテリン誘導体を用いてもよい;α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα,γ-ジメチルエステル、α,γ-ジエチルエステル、α,γ-ジプロピルエステル、α,γ-ジブチルエステル、α,γ-ジペンチルエステル、α,γ-ジヘキシルエステル、α,γ-ジヘプチルエステル、およびα,γ-ジオクチルエステルが挙げられ(エステルは対応するアルコールのn型またはイソ型から形成してよい)、別の例としては、アミノプテリンのα,γ-ジベンジルエステル誘導体のような他のジエステル誘導体が含まれる;α,γ-ジカルボキシルアミド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα,γ-ジアミド、α,γ-ジベンジルアミド、およびα,γ-ジアミドメタンスルホン酸誘導体が挙げられる;α,γ-ジカルボキシルペプチド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα,γ-ジグリシル、α,γ-ジアスパルチル、α,γ-ジグルタミル、およびα,γ-ジポリグルタミル[1-5]誘導体が挙げられる;α,γ-ジカルボキシルヒドラジド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα,γ-ジカルボキシルヒドラジド誘導体が挙げられる;α,γ-ヘテロ二置換アミノプテリン誘導体、例えば、アミノプテリン誘導体の一実施形態は、α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、α-エステル,γ-アミド誘導体、およびα-エステル,γ-ヒドラジド誘導体をはじめとするα,γ-ヘテロ二置換アミノプテリン誘導体を含む;α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα-メチルエステル,γ-ブチルエステルおよびアミノプテリンのα-メチルエステル,γ-ベンジルエステルが挙げられる;α-エステル,γ-アミド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα-ベンジルエステル,γ-ブチルアミド誘導体、α-ベンジルエステル,γ-ベンジルアミド誘導体、α-ベンジルエステル,γ-ブチルアミド-p-トルエンスルホン酸誘導体、およびα-ベンジルエステル,γ-ベンジルアミド-p-トルエンスルホン酸誘導体が挙げられる;α-エステル,γ-ヒドラジド誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα-t-ブチルエステル,γ-ヒドラジド誘導体が挙げられる;他のα,γ-ヘテロ二置換誘導体、その非限定例としては、アミノプテリンのα,γ-ジアミド誘導体、α,γ-ジペプチド誘導体、α,γ-ジヒドラジド誘導体、α-エステル,γ-アミド誘導体、α-エステル,γ-ペプチド誘導体、α-アミド,γ-エステル誘導体、α-アミド,γ-ペプチド誘導体、α-アミド,γ-ヒドラジド誘導体、α-ペプチド,γ-エステル 誘導体、α-ペプチド,γ-エステル誘導体、α-ペプチド,γ-アミド誘導体、α-ペプチド,γ-ヒドラジド誘導体、α-ヒドラジド,γ-エステル誘導体、α-ヒドラジド,γ-アミド誘導体、およびα-ヒドラジド,γ-ペプチド誘導体が挙げられる。
【0086】
本発明の方法で用いることができるMTX誘導体のさらなる非限定例は以下のとおりである:α-カルボキシル置換MTX誘導体、例えば、MTX誘導体の一実施形態では、α-カルボキシルエステル誘導体、α-カルボキシルアミド誘導体、α-カルボキシルペプチド誘導体、およびα-カルボキシルヒドラジド誘導体をはじめとするα-カルボキシル置換MTX誘導体を用いてもよい;α-カルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、MTXのα-メチルエステル、α-エチルエステル、α-プロピルエステル、α-ブチルエステル、α-ペンチルエステル、α-ヘキシルエステル、α-ヘプチルエステルおよびα-オクチルエステルをはじめとするMTXのα-カルボキシルエステル誘導体が挙げられ(エステルは対応するアルコールのn型またはイソ型から形成してよい)、さらなる例としては、MTXのα-ベンジルエステルのような他のエステル誘導体が含まれる;α-カルボキシルアミド誘導体、その非限定例としては、MTXのα-アミド、α-ブチルアミド、α-ベンジルアミド、およびα-アミドエタンスルホン酸誘導体が挙げられる;α-カルボキシルペプチド誘導体、その非限定例としては、MTXのα-グリシル誘導体、α-アスパルチル誘導体、α-グルタミル誘導体およびα-ポリグルタミル[1-5]誘導体が挙げられる;α-カルボキシルヒドラジド誘導体、その非限定例としては、MTXのα-カルボキシルヒドラジド誘導体が挙げられる;γ-カルボキシル置換MTX誘導体、例えば、MTX誘導体の一実施形態では、γ-カルボキシルエステル誘導体、γ-カルボキシルアミド誘導体、γ-カルボキシルペプチド誘導体、およびγ-カルボキシルヒドラジド誘導体をはじめとするγ-カルボキシル置換MTX誘導体を用いてもよい;γ-カルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、MTXのγ-メチルエステル、γ-エチルエステル、γ-プロピルエステル、γ-ブチルエステル、γ-ペンチルエステル、γ-ヘキシルエステル、γ-ヘプチルエステル、およびγ-オクチルエステルをはじめとするγ-カルボキシルエステル誘導体が挙げられ(エステルは対応するアルコールのn型またはイソ型から形成してよい)、さらなる例としては、MTXのγ-ベンジルエステル誘導体のような他のエステル誘導体が含まれる;γ-カルボキシルアミド誘導体、その非限定例としては、MTXのγ-アミド、γ-ブチルアミド、γ-ベンジルアミド、およびγ-アミドエタンスルホン酸誘導体が挙げられる;γ-カルボキシルペプチド誘導体、その非限定例としては、MTXのγ-グリシル誘導体、γ-アスパルチル誘導体、γ-グルタミル誘導体、およびγ-ポリグルタミル[1-5]誘導体が挙げられる;γ-カルボキシルヒドラジド誘導体、その非限定例としては、MTXのγ-カルボキシルヒドラジド誘導体が挙げられる;α,γ-ホモ二置換MTX誘導体、例えば、MTX誘導体の一実施形態では、α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、α,γ-ジカルボキシルアミド誘導体、α,γ-ジカルボキシルペプチド誘導体、およびα,γ-ジカルボキシルヒドラジド誘導体をはじめとするα,γ-ホモ二置換MTX誘導体を用いてもよい;α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、MTXのα,γ-ジメチルエステル、α,γ-ジエチルエステル、α,γ-ジプロピルエステル、α,γ-ジブチルエステル、α,γ-ジペンチルエステル、α,γ-ジヘキシルエステル、α,γ-ジヘプチルエステル、およびα,γ-ジオクチルエステルが挙げられ(エステルは対応するアルコールのn型またはイソ型から合成してよい)、さらなる例としては、MTXのα,γ-ジベンジルエステル誘導体のような他のジエステル誘導体が含まれる;α,γ-ジカルボキシルアミド誘導体(非限定例としては、MTXのα,γ-ジアミド、α,γ-ジベンジルアミド、およびα,γ-ジアミドメタンスルホン酸誘導体が挙げられる;α,γ-ジカルボキシルペプチド誘導体、その非限定例としては、MTXのα,γ-ジグリシル、α,γ-ジアスパルチル、α,γ-ジグルタミル、およびα,γ-ジポリグルタミル[1-5]誘導体が挙げられる;α,γ-ジカルボキシルヒドラジド誘導体、その非限定例としては、MTXのα,γ-ジカルボキシルヒドラジド誘導体が挙げられる;α,γ-ヘテロ二置換MTX誘導体、例えば、MTX誘導体の一実施形態は、α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、α-エステル,γ-アミド誘導体、およびα-エステル,γ-ヒドラジド誘導体をはじめとするα,γ-ヘテロ二置換MTX誘導体を含む;α,γ-ジカルボキシルエステル誘導体、その非限定例としては、MTXのα-メチルエステル,γ-ブチルエステルおよびMTXのα-メチルエステル,γ-ベンジルエステルが挙げられる;α-エステル,γ-アミド誘導体、その非限定例としては、MTXのα-ベンジルエステル,γ-ブチルアミド誘導体、α-ベンジルエステル,γ-ベンジルアミド誘導体、α-ベンジルエステル,γ-ブチルアミド-p-トルエンスルホン酸誘導体、およびα-ベンジルエステル,γ-ベンジルアミド-p-トルエンスルホン酸誘導体が挙げられる;α-エステル,γ-ヒドラジド誘導体、その非限定例としては、MTXのα-t-ブチルエステル,γ-ヒドラジド誘導体が挙げられる;他のα,γ-ヘテロ二置換誘導体、その非限定例としては、MTXのα,γ-ジアミド誘導体、α,γ-ジペプチド誘導体、α,γ-ジヒドラジド誘導体、α-エステル,γ-アミド誘導体、α-エステル,γ-ペプチド誘導体、α-アミド,γ-エステル誘導体、α-アミド,γ-ペプチド誘導体、α-アミド,γ-ヒドラジド誘導体、α-ペプチド,γ-エステル誘導体、α-ペプチド,γ-エステル誘導体、α-ペプチド,γ-アミド誘導体、α-ペプチド,γ-ヒドラジド誘導体、α-ヒドラジド,γ-エステル誘導体、α-ヒドラジド,γ-アミド誘導体、およびα-ヒドラジド,γ-ペプチド誘導体が挙げられる。
【0087】
本発明の方法で用いることができる葉酸類似体の他の考えられる例としては、以下が挙げられる:3',5'-ジクロロメトトレキセート、3',5'-ジクロロアミノプテリン、5,8-ジデアザメトトレキセート、5,8-ジデアザ-5,6,7,8-テトラヒドロメトトレキセート、5,8-ジデアザ-5,6,7,8-テトラヒドロアミノプテリン、5,8,10-トリデアザアミノプテリン、5,10-ジデアザテトラヒドロ葉酸、8,10-ジデアザアミノプテリン。
【0088】
上記および他の葉酸類似体のアミン誘導体も本発明の方法での使用が特に意図される。かかるアミン誘導体は、反応性アミン部分を含むかまたはそれを含むように修飾されたいかなる葉酸類似体も包含する。「反応性アミン」との用語は、一段階の化学的縮合反応によって、または化学的縮合反応とそれに続く還元(形成した共有結合を安定化する)によって、窒素原子を介してアルデヒド官能基と共有結合的に連結または結合することができる含窒素官能基を包含するものと意図される。したがって、本発明で有用な葉酸類似体のアミン誘導体としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:メトトレキセート-γ-ヒドラジド、メトトレキセート-α-ヒドラジド、3',5-ジクロロメトトレキセート-γ-ヒドラジド、3',5-ジクロロメトトレキセート-α-ヒドラジド、メトトレキセート-α-α-リシル-グリシル-グリシル-チロシルヒドラジド、メトトレキセート-γ-チロシルヒドラジド、メトトレキセート-α-α-リシルヒドラジド、メトトレキセート-α-α-リシン、メトトレキセート-α-α-リシル-ε-アルギニン-グリシン-グリシン-チロシン、アミノプテリン-γ-ヒドラジド、アミノプテリン-α-ヒドラジド、3'5'-ジクロロアミノプテリン-γ-ヒドラジド、3'5'-ジクロロアミノプテリン-α-ヒドラジド、アミノプテリン-γ-チロシルヒドラジド、アミノプテリン-α-α-リシル-グリシル-チロシルヒドラジド、アミノプテリン-α-α-リシルヒドラジド、アミノプテリン-α-α-リシン、およびアミノプテリン-α-α-リシル-ε-アルギニン-グリシン-グリシン-チロシン。5,8-ジデアザメトトレキセート、5,8-ジデアザ-5,6,7,8-テトラヒドロメトトレキセート、5,8,-ジデアザ-5,6,7,8-テトラヒドロアミノプテリン、5,8,10-トリデアザテトラヒドロ葉酸、および8,10-ジデアザアミノプテリンのような葉酸類似体の反応性アミン含有誘導体もまた、本発明の方法に有用である。
【0089】
また、上記の葉酸類似体もしくはその誘導体のアミン誘導体は、すべてのタイプの熱傷に関連した浮腫を予防するために本発明の方法で用いうる治療用抗体コンジュゲートの調製での使用に特に好適であることが、本発明の範囲内で特に意図される。こうして、これらの誘導体は治療用抗体−葉酸類似体コンジュゲートの調製における中間体に相当する。葉酸類似体の、反応性アミンを介した抗体または抗体フラグメントの酸化型炭水化物部分への選択的連結は、抗体の特異性および免疫反応性を保持するコンジュゲートをもたらす。
【0090】
HR341g、アミノプテリン、メトトレキセートまたはその機能性誘導体を含んでなる抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤医薬組成物を、患者に対して「同時に」投与しうることもまた、本発明の範囲内で特に意図される。同時投与とは、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤を、(a)時間的に同時に(場合によっては一般的な担体中にそれら2つを一緒に製剤化することにより)、または(b)一般的な治療スケジュールの過程で異なる時点に、のうちいずれかで、被験者に対して投与することを意味する。後者の場合には、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤化合物は、意図した効果を実現するために、時間的に十分近接して投与する。活性薬剤を、1つの医薬組成物中に含めて一緒に、または別々に投与してもよい。HR341gの活性薬剤(すなわち、モノフルオロリン酸ナトリウムおよび/またはアミノプテリン、メトトレキセートもしくはその機能性誘導体、ならびにHR341gの他の成分を含んでなる抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤)は、治療上有効であるために十分な組合せレベルで患者体内に存在するべきである。HR341g(例えば、モノフルオロリン酸ナトリウム、および/またはアミノプテリン、メトトレキセートもしくはその機能性誘導体)を含んでなる抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤の投与経路は、同じでも異なってもよい。いずれの投与経路に対しても、1回量または分割量を用いることができる。
【0091】
抗サイトカインまたは抗炎症作用を有し、医薬組成物における活性薬剤が1以上の製薬上許容されるフッ化物含有成分を含む医薬組成分もまた、本発明の範囲内で特に意図される。例えば、医薬組成物中の有効成分は、以下のフッ化物塩の1以上を含んでよい:例えば、NaF、KF、LiF、NHF、MgF、CaF、BaF、SnF、およびAlF(特に、NaF、KFおよびLiF、CaFのようなアルカリ金属塩、およびNHFのようなフッ化アンモニウム塩);NaPOFおよび/またはNaHPOFのようなフルオロリン酸塩(例えばモノフルオロリン酸ナトリウム)、およびNHPF(ヘキサフルオロリン酸アンモニウム);並びに、HSiF(ヘキサフルオロ珪酸)およびNaSiF(ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム)のようなフルオロ珪酸塩。CaFは、典型的には血液に溶解しないが、熱傷により損傷した組織(例えば、第1度、第2度、第3度、および/または第4度熱傷)、またはここに記載された他の外傷は、典型的には浮腫を負い、そして、増加した液体量は、損傷した組織におけるCa2+イオン濃度を実質的に減少させる。このため、損傷した組織における液体量の増加は、より多くの溶解およびより少ないCaFの結晶化という結果になり、これにより、損傷した組織に適用されたCaFからFが放出される。医薬組成物の不活性な成分は、1以上の粘稠化剤、結合剤、リン酸塩、顔料等を含んでよい。医薬組成物が熱傷、および/または、浮腫および/または他の炎症となる別の上述の状態を負った患者に投与されると、フッ化物含有混合物が分離してフッ化物またはフッ化物含有イオンを放出する。フッ化物またはフッ化物含有イオンは、浮腫および/またはその他の炎症を負っている組織に対する抗サイトカインもしくは抗炎症作用を有する。フッ化物含有混合物を含む医薬組成物の投与経路は、HR341gについて記載したものと実質的に同じである。本医薬組成物におけるフッ化物含有混合物の投与は、治療的に有効な濃度および/またはレベルの活性薬剤を患者に提供するべきである。
【0092】
一実施形態では、本発明の方法に用いる医薬組成物は、記載した割合で以下の成分を含むHR341gに基づく組成物を含む:リン酸二カルシウム二水和物(DCP) 21.4%(w/v)、不溶性メタリン酸ナトリウム 13%(w/v);ソルビトールシロップ(70%溶液) 23.3%(w/v)、グアーガム 4.2%(w/v);キサンタンガム 1.7%(w/v);リン酸一ナトリウム 0.28%(w/v);モノフルオロリン酸ナトリウム 8.9%(w/v);アミノプテリン 0.0015%(w/v);二酸化チタン 0.56%(w/v);ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム 0.46%(w/v);水 22.4%(w/v);リン酸三マグネシウム 0.74%(w/v);およびヒドロキシエチルセルロースエステル 2.9%(w/v)。実施例1は本発明の医薬組成物のうちの1つを調製する手順を概説している。
【0093】
他の実施形態において、本発明の方法に用いられる医薬組成物は、下記の成分を記載されたパーセンテージで有してよい:リン酸二カルシウム二水和物(DCP)20-30% (w/v)(例えば23.3% (w/v))、不溶性メタリン酸ナトリウム 11.5〜15%(w/v)(例えば14% (w/v));ソルビトールシロップ(70%溶液) 20〜30%(w/v)(例えば25.3% (w/v))、グアーガム 3〜5.5%(w/v)(例えば4.6% (w/v));キサンタンガム 1.5〜2%(w/v)(例えば1.8% (w/v));リン酸一ナトリウム 0.25〜0.35%(w/v)(例えば0.3% (w/v));フッ化ナトリウム 0.1〜2.0%(w/v)(例えば0.89% (w/v));二酸化チタン 0.5〜0.65%(w/v)(例えば0.61% (w/v));ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム 0.4〜0.6%(w/v)(例えば0.5% (w/v));水 15〜30%(w/v)(例えば24.4% (w/v));リン酸三マグネシウム 0.65〜0.85%(w/v)(例えば0.81% (w/v));およびヒドロキシエチルセルロースエステル 2.5〜3.5%(w/v)(例えば3.2% (w/v))。他の製薬上許容されるフッ化物含有混合物(例えばフッ化塩)は、フッ化ナトリウムを代替でき、0.01から0.1Mの範囲で添加される。
【0094】
別の実施形態では、本発明の方法に用いる医薬組成物は、記載した割合で以下の成分を含むHR341gに基づく組成物を含む:リン酸二カルシウム二水和物(DCP) 21.4%(w/v)、不溶性メタリン酸ナトリウム 13%(w/v);ソルビトールシロップ(70%溶液) 23.3%(w/v);グアーガム 4.2%(w/v);キサンタンガム 1.7%(w/v);リン酸一ナトリウム 0.28% (w/v);モノフルオロリン酸ナトリウム 8.9%(w/v);二酸化チタン 0.56%(w/v);ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム 0.46%(w/v);水 22.4%(w/v);リン酸三マグネシウム 0.74%(w/v);およびヒドロキシエチルセルロースエステル 2.9%(w/v)。
【0095】
いずれの特定の作用機序によっても限定されることを意図するものではないが、以下で本明細書中に示す簡潔な説明は、本発明の組成物の考えられる作用機序の1つを提供する。例えば、単に例示として、限定するものではなく、図1A〜1Iは、熱傷損傷後の浮腫形成について、および炎症性サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-1、IL-6およびIL-8)ならびに他の炎症性分子(例えばNOおよびROI)に対するHR341g投与の効果について、略図の形で説明するものである。
【0096】
特に、図1に関して、図1Aは、無傷の皮膚とその下にある血管を示している。白血球は血液1mlあたり約400万個の濃度で血液中を循環している。図1Bでは、急性熱傷損傷が直ちに皮膚細胞の機械的破壊を引き起こし、潰瘍を形成させる様子を示している。図1Cでは、急性熱傷損傷が直ちに炎症を生じさせ、それにより炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-1、IL-6およびIL-8の産生がもたらされる様子を示している。これらのサイトカインは皮膚の細胞とより深部にある組織の細胞に由来する。図1Dでは、IL-8(白血球誘引物質)の影響下に、血管内の白血球が組織内に呼び集められる様子を示している。白血球は循環系を去るために血管壁のごく小さい部分を溶解し、組織に浸潤して熱傷部位に到達する。白血球は損傷を受けた組織を修復し、感染と戦おうとする。図1Eでは、TNFαおよびIL-1の影響下に、血管内層を形成する細胞がその完全性を失い、それにより血管に沿って細孔の形成に至る様子を示している。このことは血管からの血漿の漏出をもたらし、それが周囲の組織に浮腫液を滞留させる。図1Fでは、TNFα、IL-1、IL-6およびIL-8に一酸化窒素(NO)およびフリーラジカル(反応性酸素中間体またはROIとも呼ばれる)のような他の炎症性物質が加わる様子が示されている。これらの物質の1つの重要な作用は、血管の拡張(低血圧を引き起こす)であり、その結果血圧が低下して、ショック症状が生じることさえある。図1Gでは、TNFα、IL-1、IL-6およびIL-8と他の炎症性物質(例えばNOまたはROI)が血流に接近し、全身性の炎症を生じさせる様子を示している。図1Hでは、TNFα、IL-1、IL-6およびIL-8と他の炎症性物質(例えばNOまたはROI)がひとたび血流に入ると、それらが全身性炎症を生じさせる様子を示している。こうした炎症は、心臓、腎臓、肺および脳といった器官をはじめとする身体のどのような器官系にも損傷を与える可能性がある。全身性炎症はまた発熱も引き起こす。図1Iでは、HR341gが、炎症過程を開始させるTNFα、IL-1、IL-6およびIL-8の産生を阻害すると考えられることを示している。これは、これらの分子が引き起こしうる局所的および全身的な損傷を低減させるだけでなく、HR341gの投与はまた、二次的炎症性分子(例えば一酸化窒素または反応性酸素中間体)の生成をもブロックする。
【0097】
HR341gの抗炎症作用は、下記の効用の1以上を、単体でまたは任意の組み合わせで果たす:挫滅組織切除法(debridement)および皮膚移植により、表皮および真皮の破壊を予防する;過形成性瘢痕および他の変形(発毛低下を含む)を予防する;種々の代謝液の枯渇を止める;分子抗生物質として作用する;プロテアーゼ阻害剤として作用する;細胞上の活性化受容体と細胞内成分との間の細胞シグナル伝達チャンネルを遮断する、シグナル伝達阻害剤として作用する;感染を予防し、真皮および表皮をもとの形状、組織、弾性および強度にまで戻す;治療部位の発毛および育毛を促す;多数の生化学的認識プロセスでのエノラーゼの過剰発現を阻害する。化学酵素的アプローチは基質としてのフッ化物試薬(例えば、限定するものではないが、フッ化物含有塩(例えばNaF、KF等)および他のフッ化物源(例えばモノフルオロリン酸ナトリウム等))による利用に攻撃を受けやすいようである(Harper's Biochemistry, 第25版, Murray ら編, 第19章 (2000)、参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0098】
特に、熱傷の結果として炎症性応答が開始された後には、熱傷患者は次に来る炎症性刺激および感染に対して感受性を増大させていることがわかっている。例えば、リンパ球およびマクロファージ由来のサイトカインのレベルを調べると、熱傷患者では増大した血管透過性および炎症性サイトカイン活性化(インターロイキン-1、インターロイキン-6および腫瘍壊死因子α)が誘導されたことが証明されている。患者は、熱傷後には免疫抑制のリスクが高まっていること、すなわち感染のリスクが増大していることがさらに明らかになった。
【0099】
本発明の組成物および方法は、血中に見出されるヒト末梢血単核細胞によるサイトカイン産生、および皮膚内の線維芽細胞により産生されるサイトカインをブロックすることにより、浮腫を(部分的に)予防する。実際、熱傷は腫瘍壊死因子およびインターロイキン-1を誘導し、次にインターフェロン-γ(IFN-γ)の増加および低下したレベルのインターロイキン-12(IL-12)発現を引き起こす。これら炎症後サイトカインは浮腫形成につながる毛細管の漏出性(増大した透過性)をもたらす。これは本発明の組成物によって防止することができる。例えば、アミノプテリン、メトトレキセートまたはその機能性誘導体を含んでなる抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤(HR341gおよびその機能性誘導体を含む)はサイトカイン阻害剤として働くであろう。例えば、HR341gおよびその機能性誘導体はサイトカインおよび一酸化窒素を阻害することにより毛細管膜透過性を減少させうる。したがって、血管内系の脱水が防止され、細胞間腔での、および表皮真皮境界部への血漿の流出は見られない。血漿が血管内系にとどまるので、浮腫は生じない。
【0100】
使用方法
したがって、その最も簡潔な態様では、本発明は、すべてのタイプの熱傷を治療するための方法を提供し、該方法は、治療が必要な被験者の熱傷面に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその両者、あるいはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の組成物を投与することを含んでなる。
【0101】
別の態様では、本発明は、熱傷に関連した浮腫の重症度を低減させることにより疼痛を制御または緩和する方法に関し、該方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその両者、あるいはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は炎症経路の1つ以上の成分を阻害するものである。
【0102】
別の態様では、本発明はまた、熱傷から生じる損傷組織の迅速な再生を促進する方法に関し、該方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその両者、あるいはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、組織のもとの組成を保持しながら、また熱傷に関連した合併症および瘢痕形成を最小限に抑えながら、損傷組織の迅速な再生を促進するものである。
【0103】
本発明のある実施形態では、治療される熱傷は化学薬品により、放射線により、電気により、日焼けにより、高温により、極度の低温により、もしくは熱により引き起こされた熱傷、またはそれらのいずれかの組み合わせである。
【0104】
したがって、また別の態様では、本発明はまた、瘢痕および刺青の除去、癌の切除、ポリープの焼灼切除、潰瘍、褥瘡性潰瘍(とこずれ)、および/または挫瘡の治療において使用される、制御された熱により誘導された皮膚損傷に関連した有害作用を予防または改善する方法に関し、該方法は、処置が必要な被験者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその両者、あるいはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は、組織のもとの組成を保持しながら、また上記の状態のうち1以上において熱により誘導された熱傷に関連した合併症および瘢痕形成を最小限に抑えながら、損傷組織の迅速な再生を促進するものである。
【0105】
本発明のまた別の態様では、免疫抑制が必要な哺乳動物患者で免疫系を抑制または調節するための方法を提供し、該方法は、前記患者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその両者、あるいはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、免疫抑制に有効な量の治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなる。
【0106】
本発明のまた別の態様では、消炎が必要な哺乳動物患者で、潜在的に有害な炎症性分子(サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-8、IL-12、IL-18、TNF)、一酸化窒素、反応性酸素中間体(ROI)、プロスタグランジン、または炎症シグナル伝達経路に関与するいずれかの1種以上の既知の生物学的分子を含む)の合成を抑制するための方法を提供し、該方法は、前記患者に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、消炎に有効な量の治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物はインターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-8、IL-12、IL-18、TNF)、一酸化窒素、反応性酸素中間体(ROI)、プロスタグランジン、または炎症シグナル伝達経路に関与するいずれかの1種以上の既知の生物学的分子の合成を抑制するものである。
【0107】
本明細書中で用いる「サイトカイン」との用語は、ある細胞集団から放出されるタンパク質の総称的な用語であり、これらは別の細胞に対して細胞間メディエーターとして作用する。サイトカインの例は、腫瘍壊死因子-αおよび-β;コロニー刺激因子(CSF)(例えばマクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、および顆粒球-CSF(G-CSF));インターロイキン(IL)(例えば、IL-1、IL-2、IL-8、IL-12、またはIL-18);ならびに白血病阻害因子(LIF)およびkitリガンド(KL)をはじめとする他のポリペプチド性因子である。本明細書中で用いるサイトカインとの用語は、天然供給源または組換え細胞培養物に由来するタンパク質および天然配列のサイトカインの生物学的に活性な均等物を包含する。
【0108】
本発明のまた別の態様では、免疫抑制が必要な哺乳類患者における主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子の発現をモジュレートするための方法を提供し、該方法は、前記患者に、HR341gまたはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、免疫抑制に有効な量の治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなり、ここで前記医薬組成物は主要組織適合性遺伝子複合体分子の発現をモジュレートするものである。
【0109】
本発明のまた別の態様では、分子内および分子間の基の反応性に影響する多くの経路において発生する分子内求核性反応を制限するための方法を提供し、該方法は、処置が必要な患者に、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する、治療に有効な量の医薬組成物を投与することを含んでなる。多数の酸素基またはROIは熱傷損傷において不安定であり、HR341gのような抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤を用いた治療はこれら酸素フリーラジカルまたは酸化性物質を阻害するであろう。
【0110】
したがって、別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、熱傷に関連した疼痛および組織機能不全を治療するため、および/または熱傷に多くの場合伴う疾患または障害を予防するために有用である。HR341gは炎症を軽減するので、炎症が病変または組織損傷を引き起こすと考えられている疾患を治療するのに用いることができる。典型的なADRのリストには以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない:熱傷に関連したもの、例えば、仕切り症候群、アシドーシス、急性腎不全、急性尿細管壊死、蜂巣炎、二次性発作、拘縮、減少した終末器官灌流、内毒素血症、外毒素血症、壊疽、院内肺炎(熱傷/煙吸い込み傷害の患者の50%はこのタイプを発症する)、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、人工呼吸器関連肺炎、敗血症、敗血症性ショック、血栓塞栓性合併症;および炎症性成分を伴う他の非熱傷関連疾患(例えば、貧血、癌、うっ血性心不全、減少した終末器官灌流、皮膚筋炎(DM)、皮膚炎、肺胞性蛋白症肺炎、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、慢性吸引性脂肪肺炎、市中肺炎(CAP)、コロナウイルス肺炎、クリプトコックス肺炎、クラミジア肺炎、剥離性間質性肺炎、好酸球性肺炎、インフルエンザ肺炎、パラインフルエンザ肺炎、特発性肺炎、インフルエンザ関連肺炎、特発性間質性肺炎、クレブシェラ肺炎、マイコプラズマ肺炎、非特異性間質性肺炎(皮膚筋炎(DM)と関連)、パスツレラ肺炎、ニューモシスチス肺炎(PCP)、緑膿菌肺炎、RSウイルス感染症、ブドウ球菌性壊死性肺炎、結核性肺炎、通常型間質性肺炎(UIP)、水痘帯状疱疹ウイルス肺炎、トキシックショック症候群、および中毒性表皮壊死症(TEN)を含むが、これらに限られない)。以下の疾患のリストは、熱的損傷による代謝混乱に関連づけられる:悪液質、下痢、脳障害、ミオグロブリン尿症、および神経炎。
【0111】
熱傷を治療するのに通常用いられる薬剤および/または外用薬は、その使用および範囲が限られる。表1では、薬剤をその利点および欠点とともに示す。しかしながら、これらが炎症反応をブロックすることは実証されていないので、これらの薬剤のいずれも、熱傷に関連した浮腫を予防または停止することはない。本発明は特に、HR341gとの併用における1種以上の通常の薬剤の包含を提供する。
【表1】




【0112】
上述の本発明の態様および実施形態のそれぞれでは、表1に挙げたもの以外の併用療法もまた特に意図される。特に、本発明の組成物は1種以上のマクロライド系もしくは非マクロライド系抗生物質、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、および/または抗炎症性もしくは免疫調整性薬物または薬剤とともに投与してもよい。
【0113】
本発明の組成物と組み合わせて用いうるマクロライド系抗生物質の例としては、とりわけ、以下の合成、半合成または天然に存在するマクロライド系抗生物質化合物が挙げられる:メチマイシン、ネオメチマイシン、YC-17、リトリン、エリスロマイシンA〜F、オレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、ジリスロマイシン、フルリスロマイシン、クラリスロマイシン、ダベルシン、アジスロマイシン、ジョサマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、ミデカマイシン、ロキタマイシン、ミオカマイシン、ランカシジンおよびこれらの化合物の誘導体。例えば、エリスロマイシンおよびエリスロマイシンから誘導される化合物は、「マクロライド系」として知られる抗生物質の包括的なクラスに属する。好ましいエリスロマイシンおよびエリスロマイシン様化合物にはエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、およびトロレアンドマイシンが含まれる。
【0114】
上記のマクロライド系抗生物質以外で本発明の方法での使用に好適なさらなる抗生物質には、例えば、生命を妨害、阻害または破壊するのに役立ついかなる分子も含まれ、本明細書中で用いるときには、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および抗寄生虫剤が含まれる。これらの薬剤は、その薬剤を産生する生命体から単離してもよいし、または商業源(例えば、Eli Lilly, Indianapolis, Ind.;Sigma, St. Louis, Mo.のような製薬会社)から入手してもよい。
【0115】
抗細菌性抗生物質としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ペニシリン系、セファロスポリン系、カルバセフェム系、セファマイシン系、カルバペネム系、モノバクタム系、アミノ配糖体系、糖ペプチド系、キノロン系、テトラサイクリン系、マクロライド系、オキサゾリジノン系、ストレプトグラミン系、およびフルオロキノロン系。抗生剤の例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:リネゾリド(Zyvox)、ダルホプリスチン、キヌプリスチン、ペニシリン G(CAS登録番号:61-33-6);メチシリン(CAS登録番号:61-32-5);ナフシリン(CAS登録番号:147-52-4);オキサシリン(CAS登録番号:66-79-5);クロクサシリン(CAS登録番号:61-72-3);ジクロクサシリン(CAS登録番号:3116-76-5);アンピシリン(CAS登録番号:69-53-4);アモキシシリン(CAS登録番号:26787-78-0);チカルシリン(CAS登録番号:34787-01-4);カルベニシリン(CAS登録番号:4697-36-3);メズロシリン(CAS登録番号:51481-65-3);アズロシリン(CAS登録番号:37091-66-0);ピペラシリン(CAS登録番号:61477-96-1);イミペネム(CAS登録番号:74431-23-5);アズトレオナム(CAS登録番号:78110-38-0);セファロチン(CAS登録番号:153-61-7);セファゾリン(CAS登録番号:25953-19-9);セファクロール(CAS登録番号:70356-03-5);セファマンドールギ酸ナトリウム(CAS登録番号:42540-40-9);セフォキシチン(CAS登録番号:35607-66-0);セフロキシム(CAS登録番号:55268-75-2);セフォニシド(CAS登録番号:61270-58-4);セフメタゾール(CAS登録番号:56796-20-4);セフォテタン(CAS登録番号:69712-56-7);セフプロジル(CAS登録番号:92665-29-7);ロラカルベフ(CAS登録番号:121961-22-6);セフェタメット(CAS登録番号:65052-63-3);セフォペラゾン(CAS登録番号:62893-19-0);セフォタキシム(CAS登録番号:63527-52-6);セフチゾキシム(CAS登録番号:68401-81-0);セフトリアキソン(CAS登録番号:73384-59-5);セフタジジム(CAS登録番号:72558-82-8);セフェピム(CAS登録番号:88040-23-7);セフィキシム(CAS登録番号:79350-37-1);セフポドキシム(CAS登録番号:80210-62-4);セフスロジン(CAS登録番号:62587-73-9);フレロキサシン(CAS登録番号:79660-72-3);ナリジクス酸(CAS登録番号:389-08-2);ノルフロキサシン(CAS登録番号:70458-96-7);シプロフロキサシン(CAS登録番号:85721-33-1);オフロキサシン(CAS登録番号:82419-36-1);エノキサシン(CAS登録番号:74011-58-8);ロメフロキサシン(CAS登録番号:98079-51-7);シノキサシン(CAS登録番号:28657-80-9);ドキシサイクリン(CAS登録番号:564-25-0);ミノサイクリン(CAS登録番号:10118-90-8);テトラサイクリン(CAS登録番号:60-54-8);アミカシン(CAS登録番号:37517-28-5);ゲンタマイシン(CAS登録番号:1403-66-3);カナマイシン(CAS登録番号:8063-07-8);ネチルマイシン(CAS登録番号:56391-56-1);トブラマイシン(CAS登録番号:32986-56-4);ストレプトマイシン(CAS登録番号:57-92-1);アジスロマイシン(CAS登録番号:83905-01-5);クラリスロマイシン(CAS登録番号:81103-11-9);エリスロマイシン(CAS登録番号:114-07-8);エリスロマイシン・エストレート(CAS登録番号:3521-62-8);エリスロマイシンコハク酸エチル(CAS登録番号:41342-53-4);グルコヘプタン酸エリスロマイシン(CAS登録番号:23067-13-2);ラクトビオン酸エリスロマイシン(CAS登録番号:3847-29-8);ステアリン酸エリスロマイシン(CAS登録番号:643-22-1);バンコマイシン(CAS登録番号:1404-90-6);テイコプラニン(CAS登録番号:61036-64-4);クロラムフェニコール(CAS登録番号:56-75-7);クリンダマイシン(CAS登録番号:18323-44-9);トリメトプリム(CAS登録番号:738-70-5);スルファメトキサゾール(CAS登録番号:723-46-6);ニトロフラントイン(CAS登録番号:67-20-9);リファンピン(CAS登録番号:13292-46-1);ムピロシン(CAS登録番号:12650-69-0);メトロニダゾール(CAS登録番号:443-48-1);セファレキシン(CAS登録番号:15686-71-2);ロキシスロマイシン(CAS登録番号:80214-83-1);コアモキシクラブラン酸;ピペラシリンとタゾバクテムとの併用;ならびにそれらの種々の塩、酸、塩基、および他の誘導体。
【0116】
抗真菌剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:塩酸テルビナフィン、ニスタチン、アムホテリシン B、グリセロフルビン、ケトコナゾール、硝酸ミコナゾール、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、クロトリマゾール、安息香酸、サリチル酸、ボリコナゾール、カスポファンギン、および硫化セレン。
【0117】
抗ウイルス剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:塩酸アマンタジン、リマンタジン、アシクロビル、ファムシクロビル、ホスカルネット、ガンシクロビル・ナトリウム、イドクスウリジン、リバビリン、ソリブジン、トリフルリジン、ヴァラシクロビル、バンガンシクロビル、ペンシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、インターフェロンα、およびエドクスウリジン。
【0118】
抗寄生虫剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:ピレスリン系/ピペロニル・ブトキシド、ペルメスリン、ヨードキノール、メトロニダゾール、クエン酸ジエチルカルバマジン、ピペラジン、ピランテル・パモエート、メベンダゾール、チアベンダゾール、プラジカンテル、アルベンダゾール、プログアニル、キニジングルコネート注、硫酸キニン、リン酸クロロキン、塩酸メフロキン、リン酸プリマキン、アトバクオン、コトリモキサゾール(co-trimoxazole)(スルファメトキサゾール/トリメトプリム)、およびペンタミジン・イセチオネート。
【0119】
別の態様では、本発明の方法において、例えば治療に有効な量の1種以上の抗炎症性もしくは免疫調整性薬物または薬剤の投与により、前記組成物を補充してもよい。「免疫調整性薬物または薬剤」とは、例えば、免疫系の細胞(例えばT細胞、B細胞、マクロファージ、または他の抗原提示細胞(APC))の細胞活性を刺激もしくは抑制することにより、または免疫系の外に存在する成分(次に免疫系を刺激、抑制、またはモジュレートするもの、例えばホルモン、受容体アゴニストもしくはアンタゴニスト、および神経伝達物質)に対して作用することにより、免疫系に対して直接的または間接的に作用する薬剤を意味する。免疫調整剤は、例えば免疫抑制剤または免疫刺激剤でありうる。「抗炎症薬」とは、例えば、炎症反応(すなわち外傷に対する組織反応)を治療する薬剤(例えば、免疫系、血管系、またはリンパ系を治療する薬剤)を意味する。
【0120】
本発明での使用に好適な抗炎症性もしくは免疫調整性薬物または薬剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:インターフェロン誘導体(例えばベタセロン、β-インターフェロン);プロスタン誘導体(例えば、PCT/DE93/0013に開示されている化合物(例えばイロプロスト、シカプロスト));グルココルチコイド(例えば、コルチゾール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン);免疫抑制剤(例えばシクロスポリンA、FK-506、メトキシサレン、サリドマイド、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキセート);リポキシゲナーゼ阻害剤(例えば、ジロイトン、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357);ロイコトリエン拮抗剤(例えば、DE 40091171、ドイツ特許出願 P 42 42 390.2;WO 9201675に開示されている化合物);SC-41930;SC-50605;SC-51146;LY 255283(D. K. Herron ら, FASEB J. 2: Abstr. 4729,1988);LY 223982 (D. M. Gapinski ら J. Med. Chem. 33: 2798-2813, 1990);U-75302およびその類似体(例えば、J. Morris ら, Tetrahedron Lett. 29: 143-146,1988、C. E. Burgosら, Tetrahedron Lett. 30: 5081-5084,1989、B. M. Taylor ら, Prostaglandins 42: 211-224,1991 に記載される);米国特許第5,019,573号に開示される化合物;ONO-LB-457およびその類似体(例えば、K.Kishikawa ら, Adv. Prostagl. Thombox. Leukotriene Res. 21: 407-410, 1990、M. Konno ら, Adv. Prostagl. Thrombox. Leukotriene Res. 21: 411-414,1990 に記載される);WF-11605およびその類似体(例えば、米国特許第4,963,583号に開示される);WO 9118601、WO 9118879;WO 9118880、WO 9118883に開示される化合物;抗炎症性物質(例えば、NPC 16570、NPC 17923(L. Noronha-Blab. ら, Gastroenterology 102 (Suppl.) : A 672,1992 に記載される);NPC 15669およびその類似体(R. M. Burch ら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88: 355-359,1991、S. Pou ら, Biochem. Pharmacol. 45: 2123-2127,1993 に記載される));ペプチド誘導体(例えば ACTHおよびその類似体);IL-1 受容体アンタゴニスト、IL-18 結合タンパク質、活性化タンパク質 C (ザイグリス);可溶性TNF受容体;抗TNF抗体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の可溶性受容体;インターロイキン、他のサイトカイン、およびT細胞タンパク質の受容体に対する抗体(上記の引用文献の記載は、参照により明示的に本明細書中に組み入れられる)。
【0121】
さらなる用途本発明はまた、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体(例えばHR341g)を含んでなる医薬製剤がすべての緊急用応急処置キットとして使用可能となるように、抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤またはその機能性誘導体(HR341gまたはその機能性誘導体を含む)を含んでなる医薬組成物を包含するように装備された緊急用キットでの用途を有する。かかる外用製剤は、事故もしくは外傷の直後または少し後に皮膚に対して適用することができる。例えば、そのような緊急用キットは、緊急の家庭内事故で使用するためにそれぞれの家庭において、また車内(家庭用車両、商業用車両、ならびにほとんどの緊急対応車両およびパトカーを含む)において、非常に価値のあるものと思われる。
【0122】
本発明はまた、すべてのタイプの日焼けにも使用することができ、皮膚癌の予防、水疱形成の予防、緩和、鎮静および日焼けによる疼痛の軽減/除去のために、太陽光線暴露後のケアに用いられるであろう。本発明はまた、人工的日焼けサロンでの用途も有する。
【0123】
本発明はまた、専門的使用のすべての分野での用途を有し、そのような分野としては、例えば、病院、緊急および熱傷治療、診療所、一般開業医院、救急車および緊急車両、危険性の高い産業、消火活動、軍隊、海軍、警察、機械作業場、自動車修理、溶接等、ならびに食堂が挙げられる。
【0124】
本発明はまた、一般的な消火器および防火材料の分野で使用されるだけでなく、HR341gを含有するように改変された義務的な安全設備においても使用しうると考えられる。
【0125】
本発明はさらに、例えば、日焼けのケア、熱傷治療、一部の癌の治療、瘢痕除去、レーザー治療(例えば除毛および他の美容上の方法、ならびにしわの除去を含む)後のケアをはじめとする美容の分野での用途を有する。
【0126】
投与様式および医薬組成物一般的に、本発明の組成物は、上述のような熱傷および創傷に対して局所的ならびに直接的に投与することが意図される。創傷が深い場合、または熱傷が重度である場合には、該組成物が、軟膏剤、膏薬もしくはクリーム剤の形態であって、それを創傷の上に直接塗り広げ、標準的な滅菌包帯パッドまたは他の適当な包帯材料で覆うのが好ましい。あるいはまた、本発明の組成物の軟膏剤、クリーム剤もしくは膏薬を、包帯パッドまたは他の適当な包帯材料の上に直接塗布する。続いてパッドまたは包帯材料を、薬剤の側を下にして創傷もしくは熱傷にかぶせる。この後者のアプローチは、重度の熱傷または浅い創傷に対して包帯を適用する場合にはうまく機能する。さらに、I度熱傷または軽度の擦過傷に対しては、該組成物はエアロゾルの形態で投与してもよい。
【0127】
したがって、本発明の医薬組成物は、例えば、限定するものではないが、4分の1インチの厚さの医薬組成物で損傷面を完全に覆うように創傷に対して適用する。適用上の唯一の制限は、該医薬組成物を熱傷または損傷後の最初の20分以内に適用すべきであることであるが、できるだけ早く(しかし、好ましくは12時間以内に)適用してもよい。包帯交換のスケジュールは、当然、創傷の状態によって決まる。非常に汚染されている(創傷がかなりの量の膿を持っている)かまたは体液が滲んでいる創傷、あるいは重度の熱傷では、包帯交換は4〜6時間毎に行い、それ以外の創傷または熱傷では、交換はあまり頻繁でなく、時には1日1〜2回だけ行う。
【0128】
包帯は1日3〜4回交換するのが有利である。反復的な毎日の包帯交換は、創傷または熱傷が治癒するまで続ける。治癒の時期は創傷のタイプおよび深さまたは熱傷の重症度によって変化する。
【0129】
本発明の医薬組成物は、該組成物を必要とする哺乳動物、被験者または患者に対する、治療しなければ細菌および真菌汚染が通常発生すると考えられる様々な創傷および熱傷の治療において有効である。本医薬組成物はまた、家畜のような他の哺乳動物(限定するものではないが、イヌ、ネコ、他の家庭用ペット、ウマ、飼育動物等を含む)での熱傷および創傷を治療するためにも当然用いることができる。
【0130】
本発明の化合物は当業者が調製することのできる製薬上許容される塩を包含する。本明細書中で用いる「製薬上許容される塩」とは、適切な医学的判断の範囲内で、有害な毒性、刺激、アレルギー反応等を示さずにヒトおよび下等動物の組織と接触して用いるのに好適であり、かつ合理的な利益/リスク比に相応した塩を意味する。製薬上許容される塩は当該技術分野で周知である。例えば、S. M Berge らが、J. Pharmaceutical Sciences, 1977,66 : 1-19の中で製薬上許容される塩について詳細に記述している。塩は、本発明の化合物の最終的な単離・精製の間にその場で(in situ)、または遊離塩基官能基を好適な有機酸と反応させることにより別途、調製することができる。代表的な酸付加塩としては以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンホラート(camphorate)、カンファースルホン酸塩(camphersulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩(hemisulfate)、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩(undecanoate)、吉草酸塩等。代表的なアルカリもしくはアルカリ土類金属塩としては、以下が挙げられる:ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等、および無毒アンモニウム塩、アンモニウムとしての第4級塩、ならびにアミンカチオン塩類(限定するものではないが、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチルアミン塩等を含む)。
【0131】
本発明はまた、1以上の無毒の製薬上許容される担体とともに製剤化された上記の1以上の抗サイトカイン剤もしくは抗炎症剤化合物を含んでなる医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、固体または液体剤形で経口投与用に、非経口注射用に、または直腸投与用に特別に製剤化してもよい。
【0132】
本発明の医薬組成物は、ヒトおよび他の動物に対して、経口的に、経直腸的に、非経口的に、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉末剤、軟膏剤または液滴によるなど)、頬腔内に、または口腔用もしくは鼻腔用スプレー剤として投与することができる。本明細書中で用いる「非経口」投与との用語は、静脈内、筋内、腹腔内、くも膜下腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および注入をはじめとする投与の様式を指す。
【0133】
非経口注射のための本発明の医薬組成物は、製薬上許容される無菌の水性もしくは非水性溶液剤、分散液剤、懸濁液剤、または乳濁液剤、同様に使用前の滅菌注射用溶液剤もしくは分散液剤への再調製のための滅菌粉末剤を含む。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルとしては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物、植物油(例えばオリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング材料の使用により、分散液剤の場合には所望の粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤の使用により、保つことができる。
【0134】
これらの医薬組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のような補助剤を含有してもよい。微生物の活動の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等)を含めることにより、保証されうる。等張化剤(例えば糖、塩化ナトリウム等)を含めることもまた望ましい。注射可能な医薬剤形の持続的な吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような、吸収を遅らせる物質を含めることで得られる。
【0135】
一部のケースでは、薬物の作用を長引かせるために、皮下または筋内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性の低い結晶性または非結晶性物質の懸濁液剤を用いることにより実現することができる。その場合、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、すなわち結晶サイズおよび結晶形に依存しうる。あるいはまた、非経口投与される薬物剤形の遅延吸収は、油性ビヒクル中への薬物の溶解または懸濁によって実現される。
【0136】
注射用デポー剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中の薬物のマイクロカプセル・マトリックスを形成することにより調製する。薬物とポリマーの比率および用いる特定のポリマーの性質により、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。注射用デポー製剤はまた、身体組織に適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョン中への薬物の取込みによっても調製することができる。
【0137】
注射用製剤は、例えば細菌保持フィルターを介した濾過により、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体中に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の剤形中に滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
【0138】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形では、活性化合物は、以下のものと一緒に混合する:少なくとも1種類の不活性な製薬上許容される賦形剤もしくは担体(例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)および/または(a)充填剤もしくは増量剤(例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、(b)結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアガム)、(c)加湿剤(例えばグリセロール)、(d)崩壊剤(例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、一部のシリケート、および炭酸ナトリウム)、(e)溶解遅延剤(例えばパラフィン)、(f)吸収促進剤(例えば第4級アンモニウム化合物)、(g)湿潤剤(例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、(h)吸着剤(例えばカオリンおよびベントナイト粘土)、および(i)滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物)。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0139】
同様のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖および高分子ポリエチレングリコール等のような賦形剤を用いた軟充填および硬充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤として用いてもよい。
【0140】
錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野で周知の他のコーティングのようなコーティングおよびシェルを施して調製することができる。それらは、場合によっては不透明化剤を含有してもよく、また有効成分を、場合によっては遅延形式で、腸管のある部分でのみ、またはそこで優先的に放出する組成物とすることもできる。用いることができる包埋化組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0141】
活性化合物はまた、適当ならば、1以上の上記の賦形剤を用いたマイクロカプセル剤形とすることもできる。
【0142】
経口投与のための液体剤形としては、製薬上許容される乳濁液剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当該技術分野で通常用いられる不活性な希釈剤を含有してもよく、そのようなものとしては例えば、水もしくは他の溶媒、可溶化剤および乳化剤(例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0143】
不活性希釈剤に加えて、経口用組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、香味料、および香料のような補助剤を含むこともできる。
【0144】
懸濁液剤は、活性化合物に加えて、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物のような懸濁化剤を含有してもよい。
【0145】
経直腸または経膣投与のための組成物は、好ましくは座薬であって、それらは本発明の化合物と好適な非刺激性賦形剤もしくは担体(例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、または室温では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸もしくは膣腔内で融解して活性化合物を放出する座薬ワックス)とを混合することにより調製することができる。
【0146】
本発明の医薬組成物はまた、リポソームの形態で投与してもよい。当該技術分野で知られているように、リポソームは一般的にリン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒体中に分散される単層または多層の水和液晶により形成される。リポソーム形成が可能な、無毒の、生理学的に許容され、代謝可能ないずれの脂質を用いてもよい。リポソーム形態での本願の組成物は、本発明の医薬組成物に加えて、安定化剤、保存料、賦形剤等を含有することができる。好ましい脂質は、天然および合成の両方の、リン脂質ならびにホスファチジルコリン(レシチン)である。
【0147】
リポソームを形成させるための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Prescott 編, Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N. Y. (1976), p. 33 以降を参照されたい。
【0148】
本発明の医薬組成物の局所投与のための剤形としては、粉末剤、スプレー剤、軟膏剤、および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、製薬上許容される担体および必要と思われる保存料、バッファー、または噴射剤と、無菌条件下で混合する。眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末剤および溶液剤もまた、本発明の範囲に含まれるものである。
【0149】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式において所望の治療的応答を実現するのに有効な活性化合物の量を達成するために変化させることができる。選択した投与量レベルは、本発明の特定の医薬化合物もしくはその類似体の活性、投与経路、治療する症状の重症度、ならびに治療する患者の病状および先行する病歴に依存するであろう。しかしながら、医薬化合物の用量を所望の治療的効果を実現するために要するよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、当該技術分野の通常の技量の範囲内である。
【0150】
本発明の医薬組成物は、獣医用医薬およびヒト治療の両方で用いることができる。上記の疾患もしくは徴候に伴う病状および疼痛の急性的もしくは慢性的な管理での本発明の医薬組成物の予防上または治療上の用量は、治療される症状の重症度ならびに投与経路によって変化するであろう。用量と、おそらくは投与回数も、個々の患者の年齢、体重、および応答によっても変化するであろう。一般的には、本発明の医薬組成物の総用量範囲は、おおまかには体重1kgあたり約0.001〜約100mg、好ましくは約0.01〜約20mg、より好ましくは約16mgの活性化合物を哺乳動物患者に対して局所的に投与する。所望であれば、有効用量を投与のために複数回用量(例えば2〜4回の分割用量)に分けることができる。
【0151】
あるいはまた、本発明の有効成分の総用量範囲は、おおまかには約1〜500mg/70kg体重/日、または約10〜500mg/70kg体重/日、約50〜250mg/70kg体重/日、より好ましくは約100〜150mg/70kg体重/日である。
【0152】
かかる特定した範囲の列挙により、言及される範囲は列挙した範囲の間に入るすべての用量範囲量をも包含することが意図される。例えば、約1〜500の範囲は、実際にそれぞれの具体的な範囲を列挙しなくとも、2〜499、3〜498等を包含することが意図される。有効成分の実際の好ましい量は、哺乳動物の種、治療される特定の苦痛の性質および重症度、ならびに投与方法に従って、それぞれのケースごとに変化するであろう。
【0153】
範囲内の用量(例えば30mg、50mg、75mg等)が、明白に述べられていなくても、述べられた範囲に包含されることもまた理解されるものであり、述べられた範囲からわずかにはずれた量についても同様である。
【0154】
あるいはまた、本発明の医薬組成物の総用量範囲は、おおまかには、約10-8〜10-3モル範囲/70kg体重、または約10-7〜10-4モル範囲/70kg体重、好ましくは約10-6〜10-2モル範囲/70kg体重、より好ましくは約10-4モル範囲/70kg体重(クリーム剤形では、100マイクロモルまでのアミノプテリンを含有しうる)である。かかる特定した範囲の列挙により、言及される範囲は列挙した範囲の間に入るすべての濃度量をも包含することが意図される。例えば、約10-8〜10-3モル範囲は、実際にそれぞれの具体的な範囲を列挙しなくとも、1.1×10-8〜9.9×10-4、1.2×10-8〜9.8×10-4等を包含することが意図される。有効成分の実際の好ましい量は、哺乳動物の種、治療される特定の苦痛の性質および重症度、ならびに投与方法に従って、それぞ れのケースごとに変化するであろう。いずれの事例においても、局所用クリーム製剤中の有効成分の濃度は、アミノプテリンもしくはその機能性誘導体を1〜100μMの濃度で、および/またはフッ素含有塩を0.01〜1Mの濃度で含有すべきである。具体的には、フッ化物塩が局所用クリーム製剤中に含まれる場合、フッ化物塩(例えばNaF、KF、NHF等)の濃度は約0.1〜1.0Mであるべきである。フルオロリン酸(例えばモノフルオロリン酸ナトリウム)が局所用クリーム製剤中に含まれる場合、濃度は0.1〜1.0Mであるべきである。選択された有効成分の特に好ましい濃度は、アミノプテリンもしくはその機能性誘導体については33.13μM(0.0015%)、フッ化ナトリウムについては約0.05M、および/またはモノフルオロリン酸ナトリウムについては0.663M(8.9%)の濃度である。
【0155】
一般的には、本発明の医薬組成物は、治療される特定の疾患の症状を改善するために、必要に応じて、個々の患者に対して定期的に投与する。組成物を投与する期間の長さおよび総投与量は、治療される特定の苦痛の性質および重症度ならびに当該治療を受けている被験者または患者の身体状態に従って、個々のケースで変える必要があろう。
【0156】
小児、65歳を超える年齢の患者、および腎機能もしくは肝機能低下を有する患者には、初めに少ない用量を投与し、その後、彼らを個々の応答もしくは血中濃度に基づいて評価することがさらに推奨される。一部のケースではこれらの範囲外の投与量を用いる必要があるかもしれず、それは当業者には明らかであると思われる。さらに、医師もしくは主治医は、日常的な試験の範囲で、個々の患者の応答と関連して治療をどのように、いつ中断、調整、または終了させるかを理解しているであろう。
【0157】
「単位用量」との用語は単回用量を表すが、単回用量は所望であれば分割してもよい。本発明の方法に従って、組成物の有効投与量を患者に与えるために、いずれの好適な投与経路を用いてもよいが、局所投与が好ましい。好適な経路としては、例えば、局所、経皮、皮下、筋内、吸入によるもの等の投与形式が挙げられる。好適な剤形としては、鼻腔スプレー、トローチ、分散液剤、懸濁液剤、溶液剤、パッチ等が挙げられるが、局所および/または鼻腔用剤形が好ましい。
【0158】
本発明の化合物の有用な投与量は、それらのin vitro活性、および動物モデルでのin vivo活性を比較することにより決定することができる。マウスおよび他の動物での、ヒトに対する有効投与量の推定のための方法は、当該技術分野で公知であり、例えば米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0159】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例の具体的な詳細に限定されないことを理解すべきである。
【実施例1】
【0160】
はじめに本実施例は、本発明の医薬組成物の調製のための手順を概説するものである。
【0161】
材料および方法HR341gの調製HR341gは、局所用製剤のための以下の手順に従い調製する。簡潔に述べると、リン酸二カルシウム二水和物(DCP)、不溶性メタリン酸ナトリウム、ソルビトールシロップ(70%溶液)、グアーガム、キサンタンガムもしくはプルロニック-F87、リン酸一ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、アミノプテリン、二酸化チタン、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、水、リン酸三マグネシウム、およびヒドロキシエチルセルロースエステルを表2に示した量(w/v)で高剪断ミキサーに加え、0.007インチのスクリーンを通して濾過する。
【表2】

【0162】
この製剤は、以下の段階において、モルテーニ(Molteni)TM5ミキサーまたは当業者に公知のいずれかの他の高剪断ミキサー中で約5キログラムの量で調製することができる。混合は減圧下で行うべきである。
【0163】
第1段階では、成分を以下の順序および量で加える:90℃の水(1105g)およびソルビトールシロップ(417g)をミキサーに入れる。次にリン酸一ナトリウム(15g)、モノフルオロリン酸ナトリウム(477g)およびアミノプテリン(80mg)を加えて、6,000rpmで12分間混合する。第2段階では、グアーガム(225g)、キサンタンガム(90g)、二酸化チタン(30g)、リン酸二カルシウム二水和物(DCP)(1150g)、不溶性メタリン酸ナトリウム(700g)、およびヒドロキシエチルセルロースエステル(157.5g)を容器中で乾式混合し、次にその乾式混合物を第1段階の混合物中にゆっくりと加える。7,000rpmで10分間混合する。第3段階では、ソルビトールシロップ(417g)をミキサーに加え、7,000rpmで5分間混合する。第4段階では、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(25g)およびソルビトールシロップ(417g)を室温の残余のものに加え、7,000rpmで5分間混合する。ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(25g)およびソルビトールシロップ(416g)および室温の水95gを別に混合する。この湿式混合物を次に高剪断ミキサーに加え、7,000rpmで15分間混合する。混合物を0.007インチのスクリーンを通して押し出すことで、クリーム剤の滑らかさを高める。混合物は、ざらざらした感触のない滑らかなものでなければならない。粘性は全体的に一様でなければならない。完了したら、次に混合物をチューブに詰める。
【0164】
結果完成した製品は表3に示した割合であるはずである。
【表3】

【実施例2】
【0165】
はじめに本実施例は、本発明の方法の医薬組成物の試験を概説するものである。3人の仮定的な熱傷患者についての研究を示す。これらの研究は、典型的な患者を表すようにデザインされている。患者A、BおよびCは同じ時期に入院し、総熱傷表面積(TBSA)は30%であった。患者の熱傷は上側胸部領域と上側背部にあった。患者Cはさらに、顔部側面に小さな熱傷を有していた。
【0166】
これらの患者の熱傷後損傷は、浮腫を伴う炎症に起因し、熱傷後数日でピークに達する。また、手術をしなければ、熱傷後48時間で細菌性微生物が熱傷創傷部に侵入する可能性がある。一部の患者では、熱傷に対して極度の全身的炎症応答が見られる。「熱傷後」と呼ばれるものにおいては、「関連疾患応答」がはっきりと現れるまで全身的炎症応答が進行する。
【0167】
材料および方法
患者A
患者Aは熱傷を負ってから15分後に病院に到着する。該患者はII度およびIII度熱傷を患っており、該患者に対してパークランドの式に基づく急速輸液が投与される。2時間以内に炎症および浮腫が発生する。熱傷は局所メディエーターの放出をもたらす。これらのメディエーターが、さらなる炎症および浮腫を生じさせ、また補体活性化が開始され、それによりさらなる全身性のメディエーターが産生される。
【0168】
これらのメディエーターの中でも、アラキドン酸、サイトカイン産生(IL-1およびTNFを含む)、NO、反応性酸素中間体(ROI)が産生される。このことは、局所的および全身的に、好中球隔離(sequestration)ならびに好中球とマクロファージ両者のプライミングをもたらす。
【0169】
熱傷創傷部の炎症の進行は、循環性免疫抑制化合物の生成を伴って拡大する。IL-6が放出され、これにより肝臓での急性期タンパク質産生が開始される。代謝亢進が起こり、筋肉異化をもたらす。炎症が長引けば、患者の体重は減少する。好中球およびマクロファージの両方がプライミングされるので、著しい量の酸化性物質、アラキドン酸代謝物、サイトカインおよびプロテアーゼが産生されうる。この作用は、組織損傷を誘発するさらなる局所的および全身的炎症を引き起こす。高レベルのメディエーター(特にサイトカイン)は損傷を拡大し、またさらなる炎症につながる。
【0170】
患者B
患者Bは損傷を負ってから15分後に病院に到着する。該患者はII度およびIII度熱傷を患い、パークランドの式に基づく輸液が投与される。HR341gを熱傷部位に投与する。浮腫は熱傷部で顕著に減少する。いくらかの炎症は見られるが、これは適正な治癒に必要であり、患者Aのような過剰な反応は見られない。サイトカイン、酸化性物質およびアラキドン酸のようなメディエーターが放出されるが、絶対量は患者Aで見られるよりも少なく、浮腫は管理可能なレベルに留まる。サイトカイン産生および増殖因子は「標的細胞」表面に見られる受容体を介して標的細胞に作用する。大部分の個々の受容体は非常に特異的であり、1種類の分子のみを認識することができる。したがって熱傷性創傷の場合には、数種の細胞が単一の増殖因子に反応するが、それぞれの細胞は異なって応答する。各増殖因子に対する特異的受容体により、細胞性応答もまたユニークとなることが保証される。インターロイキンI(IL-1)はマクロファージ、単球、皮膚細胞により産生され、その放出は発熱を引き起こしうる。IL-2はさらにTリンパ球を刺激し、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する。他のインターロイキンは、広範に、または非常に選択的に、骨髄細胞の増殖を刺激する。患者Bでは、創傷への細胞の動員が増加し、コラーゲン形成および組織化が高まり、創傷部強度が増加する。さらに、患者Bは最小限の関連疾患応答(ADR)を有する。なぜなら、微生物は増殖のために熱傷性創傷の環境を必要とするが、該環境がHR341gにより変化しているためである。
【0171】
患者C
患者Cは顔部熱傷のためすぐに挿管された。患者が肺に損傷を負えば、50%を超えて院内感染肺炎を発症するので、リスクは2倍になる。患者が人工呼吸器につながれた場合には、肺炎を発症する可能性がやはり35%ある。患者が人工呼吸器につながれる前に肺浮腫を発症していれば、患者が死ぬ可能性はほぼ100%である。患者Cは認められる肺への損傷は負っておらず、安全のために患者Cを人工呼吸器につないだ。
【0172】
患者Cは入院後2時間で熱性浮腫を発症する。炎症性変化の結果はTNF、IL-1、IL-2、IL-8、およびIL-6のようなサイトカインの放出により生じる。これらの増加は、骨髄から放出された好中球のさらなるプライミングを引き起こす。IL-1の作用はさらなるIL-2受容体の誘導によるT細胞の増殖を引き起こす。患者Cは、熱傷後の血流動態の不安定化の影響をすぐに示し始める。患者の血圧は変化し、心臓の出力は低下し、そして血液量減少の徴候が現れる。しかしながら、血管内容量は維持され、次の24時間の間に心臓の出力は正常に戻る。全身性の毛細管漏出が非熱傷領域で起こる。しかしながら、この毛細管透過性は非熱傷領域では一過性の変化に過ぎない。血管作動性アミン放出が微小血管透過性の増大の原因である。熱傷により誘導された低タンパク質血症のため浮腫が悪化しうる。
【0173】
次の48時間に、患者はグラム陽性微生物に感染し、72時間後にはグラム陰性病原体に感染する。熱傷後すぐに起こった毛細管漏出に対して処置が行われなかったためである。患者Cの熱傷は不完全に処置された。患者Cの循環性免疫抑制化合物(例えば副腎皮質ステロイド、抗炎症性サイトカイン(例えばIL-10)、血管拡張性プロスタグランジンであるPGE、PGE2、PG12)は劇的に増加する。あるレベルより上に増加したIL-1およびTNFは、代謝亢進および臓器不全を増長する。患者Cは、臨床的に顕著な感染病巣を有しないにもかかわらず、循環性内毒素に侵される。内毒素血症のメカニズムは、細菌が定着した熱傷性創傷からの、または胃腸透過性の増大に起因する消化管での漏出からの吸収である。内毒素はアラキドン酸代謝物、酸素フリーラジカルおよびサイトカインをはじめとする数種類のメディエーターの放出を開始させる。増大した透過性は炎症を増幅し、虚血再灌流傷害の形成をもたらすことがある。患者Cはまた、血流不均衡および増加した骨格筋異化も有する。貧血、および肝臓の急性期タンパク質産生の増加が起こる。
【0174】
結果
患者Aの病状は悪化し、病院スタッフは外科手術を行うことに決める。患者の以前の生活の質を取り戻すためには、数回の手術が必要であると予測される。
【0175】
患者Bは、浮腫が制御されたために回復する。患者は手術の必要がなく、高い生活の質を保ちつつ3ヶ月で退院する。
【0176】
患者Cは外傷から回復することはなかった。患者は数種類のADR、挫滅組織切除、焼痂切開および皮膚移植を経験した。患者はまた、拘縮、過形成瘢痕をはじめとするいくつかの変形、および数回の手術も経験した。患者Cは5年間を超えて入退院を繰り返すであろうし、余生のために医師によるケアを必要とするであろう。
【0177】
同一の炎症性反応に見舞われる熱傷患者はいない。ある閾値を超える炎症は治癒プロセスを妨害する。これらの変化は化学物質平衡を変化させる毛細管漏出を引き起こす。平衡状態の鍵となる成分は、関連した浮腫および不可逆的な虚血を伴う炎症の除去である。炎症性浮腫が低減されれば、患者にとっては、皮膚移植、挫滅組織切除、焼痂切開またはいずれかの他のタイプの外科手術の必要性が減少するであろう。HR341gは熱傷後のさらなる損傷を防ぐことにより炎症および浮腫の形成を阻止する。病院では今日、炎症および浮腫の管理が一番の関心事項となっている。栄養補給および酸素療法などの他の治療との併用でのHR341gは、患者がより早く、完全に回復するのを助けることができる。
【0178】
本出願を通して様々な刊行物が言及されている。これらの刊行物の開示内容は、本発明に関連する技術分野の技術水準をより完全に表すために、参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0179】
均等物
上記の実施例は例示の目的のみのために説明されてきたものであり、本発明の範囲または実施形態を限定することを意図するものではない。具体的に記載されていない他の実施形態が、当業者に明らかであるはずである。そのような他の実施形態は、本発明の範囲および精神に含まれるとみなされる。したがって、本発明はただ特許請求の範囲によって適正に制限されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製薬上許容される担体に含まれる、炎症および哺乳動物の熱傷に関連した浮腫の重症度を低減させる、治療に有効な量の製薬上許容されるフッ化物塩を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記哺乳動物はヒトである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記製薬上許容されるフッ化物塩は、フッ化ナトリウムを含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記製薬上許容されるフッ化物塩は、前記医薬組成物の単位体積当たりの重量で0.1〜1.5%のフッ化ナトリウムを含む請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
重量で約20〜24%のリン酸二カルシウム二水和物(DCP)、重量で約11.5〜15%の不溶性メタリン酸ナトリウム、重量で約20〜30%のソルビトールシロップ溶液、重量で約3.5〜5%のグアーガム、重量で約1.5〜2%のキサンタンガム、重量で約0.25〜0.35%のリン酸一ナトリウム、重量で約0.5〜0.65%の二酸化チタン、重量で約0.4〜0.5%のドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、重量で約15〜30%の水、重量で約0.65〜0.85%のリン酸三マグネシウム、および重量で約2.5〜3.5%のヒドロキシエチルセルロースエステルを含む請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
製薬上有効な量は、体重70kgの前記哺乳動物に対し0.01〜50mgのフッ化物塩の投与である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
局所的に投与される組成物または非経口的に投与される組成物である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記非経口で投与される組成物は、約0.01〜0.1Mの前記製薬上許容されるフッ化物塩を含む請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記製薬上許容されるフッ化物塩は、NaF、KF、LiF、NH4F、MgF2、CaF2、BaF2、SnF2、およびAlF3の1以上を含む、請求項1に記載の医薬組成。
【請求項10】
前記製薬上許容される担体は、リン酸二カルシウム、メタリン酸ナトリウム、粘稠化剤、結合剤、リン酸一ナトリウム、顔料、界面活性剤、および水を含む請求項1に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【公表番号】特表2012−524782(P2012−524782A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507274(P2012−507274)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/031315
【国際公開番号】WO2010/123759
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(512021645)マインドケーキ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】