説明

熱処理装置

【課題】対象物を冷却する際に、急速な冷却を効率的に行うことが可能な熱処理装置を提供すること。
【解決手段】筐体と、対象物に熱媒体Mを噴射するノズル30と、前記筐体の下部に配置された熱媒体タンク25と、前記熱媒体タンク25内に貯留された前記熱媒体Mを前記ノズル30に循環させる熱媒体循環回路40とを備え、前記熱媒体循環回路40に、冷水供給部60と、排出手段49とが設けられた熱処理装置1であって、前記冷水供給部60は、冷水循環回路42と、前記冷水Cが貯留可能とされた冷水タンク62と、前記冷水タンク62に冷水を供給する冷水用給水器65とを有し、前記熱媒体タンク25からの熱媒体Mの流路を、前記排出手段49と前記冷水循環回路42とを切り替えて接続する流路切替手段85と、前記流路切替手段85の接続を選択する冷却制御部とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装された食材等の対象物に対して、熱処理を行うための熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、食材や調理された食品を大量に保存する場合、食材や調理された食品を真空包装袋に入れて真空包装して保存することが広く行われている。
このように真空包装された食材(以下、パック食材という)等の保存に際しては、調理された食材を真空包装後に加熱して調理、殺菌する場合があり、このようにパック食材等の加熱を効率的に行うための熱処理装置として、例えば、特許文献1に示されるような加熱装置に関する技術が開示されている。
【0003】
一方、パック食材を調理する場合には、調理後の風味や食感を確保しつつ殺菌する必要があり、例えば、スチームコンベクションオーブンを用いて加熱した後に、所定の時間内にブラストチラーを用いて冷却する場合がある。
かかるパック食材を加熱、冷却する関連技術として、例えば、特許文献2に示されるようなレトルト用の加熱冷却装置に関する技術が開示されている。
【0004】
このような、熱処理装置による食材の調理に際しては、例えば、HACCP(Hazard Analysis Critical Contorol Point)等で定められた条件に適合するように食材の芯温等を所定時間内に所定の温度まで加熱、冷却することが要求されており、調理後の冷却に関しては、例えば、90分以内に3℃以下まで冷却させることが必要である。
【特許文献1】特開2003−319767号公報
【特許文献2】特許第3546082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、加熱された対象物を、上記条件を満足するように急速な冷却を効率的に行うことが課題であった。
しかしながら、対象物を冷却するためには冷却用の熱媒体が大量に必要であるうえ、熱処理装置が加熱機能と冷却機能の双方を有している場合には、熱媒体循環回路等に加熱に用いた熱媒体が残留している場合があり、加熱に用いた熱媒体、すなわち温水が冷水に混合されて冷却工程における冷却効率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、パック食材等の対象物を冷却する際に、急速な冷却を効率的に行うことができ、好適にはより少量の熱媒体により効率よく冷却することが可能な熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1記載の発明は、対象物が収納可能とされた筐体と、前記筐体内部に配置され、前記対象物に熱媒体を噴射するノズルと、前記筐体の下部に配置され前記ノズルから噴射された前記熱媒体を受けるとともに貯留する熱媒体タンクと、前記熱媒体タンク内に貯留された前記熱媒体を前記ノズルに循環させる熱媒体循環回路とを備え、前記熱媒体循環回路に、前記ノズルに冷水を供給する冷水供給部と、前記熱媒体循環回路から前記熱媒体を排出可能とする排出手段とが設けられた熱処理装置であって、前記冷水供給部は、前記熱媒体循環回路を構成する冷水循環回路と、前記冷水循環回路の上流側と下流側とに接続され、前記冷水が貯留可能とされた冷水タンクと、前記冷水タンクに冷水を供給する冷水用給水器とを有し、前記熱媒体タンクからの熱媒体の流路を、前記排出手段と前記冷水循環回路とを切り替えて接続する流路切替手段と、前記流路切替手段の接続を選択する冷却制御部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る熱処理装置によれば、対象物を冷却するために噴射された冷水を、冷却制御部により制御された流路切替手段によって、排出手段と冷水循環回路とを切り替えて流通させることができるので、例えば、対象物の冷却に際して対象物の温度が高い間は冷却に用いた熱媒体を冷水循環回路に流通させずに排出し、対象物の温度が低くなった後に冷水を循環させて冷却することにより急速な冷却が効率的に行われる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の熱処理装置であって、前記冷却制御部は、前記流路切替手段の接続を前記冷水循環回路とし、前記冷水供給部から冷水を供給することを特徴とする。
【0010】
この発明に係る熱処理装置によれば、対象物を冷却するために噴射された冷水を、冷水循環回路を経由して循環させて対象物に繰り返し接触させることにより、冷却工程で対象物に噴射された後の冷水が有する残余の冷却能力を効率的に用いるとともに節水することが可能である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の熱処理装置であって、前記冷却制御部は、前記流路切替手段の接続を前記冷水循環回路とする前に前記流路切替手段の接続を前記排出手段とし、前記冷水供給部から冷水を供給することを特徴とする。
【0012】
この発明に係る熱処理装置によれば、冷水循環回路に冷水を循環する前に流路切替手段の接続を排出手段として冷水供給部から供給する冷水を排出手段から排出させて、対象物を冷却した際の熱を冷水供給部に持ち込むことなく高温の対象物に冷水供給部から供給される冷水を噴射するので、対象物の粗熱を効率的に除去することができる。
また、前回の冷却工程で冷却した際に対象物等から分離して冷水に混入した付着物等が排出手段から排出されるので、冷水タンク内の冷水の清浄が効率的に確保される。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の熱処理装置であって、前記冷却制御部は、前記対象物の温度を測定する品温センサと、前記熱媒体タンク内の熱媒体の温度を検出するタンク水温センサと、前記ノズルから噴射される熱媒体の温度を測定する噴射温度測定センサと、前記ノズルからの噴射時間を測定する噴射時間タイマの少なくともいずれか1つを有する第1の切替手段を備え、前記第1の切替手段の信号に基づいて前記流路切替手段の接続を前記排出手段とし、前記冷水供給部から冷水を供給するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る熱処理装置によれば、対象物の粗熱除去、冷却状況等を第1の切替手段により検出して冷水供給部から冷水を供給するので、冷水供給部からの冷水による冷却を効率的に行うことが可能である。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、前記冷却制御部は、前記排出手段から熱媒体が排出された排出時間を測定する第1の排出時間タイマと、前記冷水タンク内の冷水の液位を検出するレベルセンサと、前記熱媒体タンク内の熱媒体の温度を検出するタンク水温センサの少なくともいずれか1つを有する第2の切替手段を備え、前記第2の切替手段からの信号に基づいて前記流路切替手段の接続を前記冷水循環回路とすることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る熱処理装置によれば、冷水循環回路を循環するのに必要とされる量の冷水を、第2の切替手段により確実に確保して冷水循環回路に循環させるので、冷水循環回路を用いた冷却を効率的に行うことができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、前記熱媒体循環回路は、前記冷水供給部と並列に配置され前記熱媒体を前記熱媒体タンクから前記ノズルに循環させる循環通路と、前記熱媒体循環回路に給水する給水装置とを備え、前記流路切替手段は、前記循環通路への接続が可能とされ、前記冷却制御部は、前記冷水供給部から前記冷水を供給する前に前記流路切替手段の接続を前記循環通路とし、前記給水装置から給水するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る熱処理装置によれば、冷水供給部から冷水を供給する前に、流路切替手段の接続を循環通路とするとともに、給水装置からの水を熱媒体循環回路に循環させるので、温度が高い対象物からの粗熱を通常の水により除去し、粗熱が除去されて温度が低くなった後の対象物を冷水により冷却するので冷水を効率的に用いることができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、前記冷却制御部は、前記ノズルから前記熱媒体を噴射する前に前記流路切替手段の接続を前記排出手段とし、前記熱媒体タンクから前記熱媒体を排出させるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る熱処理装置によれば、ノズルから熱媒体を噴射して対象物を冷却する前に、熱媒体タンクから熱媒体を排出させて熱媒体タンク内に保持される熱媒体の有する熱容量を小さくするので効率的な冷却を行うことができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項7に記載の熱処理装置であって、前記排出手段から熱媒体が排出された排出時間を測定する第2の排出時間タイマと、前記熱媒体タンク内の熱媒体の液位を検出するレベルセンサの少なくともいずれか1つを有する第3の切替手段を備え、前記冷却制御部は、前記第3の切替手段からの信号に基づいて前記ノズルから前記熱媒体を噴射するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る熱処理装置によれば、熱媒体タンク内の熱媒体を第3の切替手段によって設定した量まで排出させることが可能とされ、熱媒体タンク内に保持される熱媒体の有する熱容量を正確かつ効率的に小さくして効率的な冷却を行うことができる。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、前記冷却制御部は、前記冷水供給部から前記冷水を供給する間、前記冷水用給水器による給水を停止するように構成されていることを特徴とする。
【0024】
この発明に係る熱処理装置によれば、冷水供給部から前記冷水を供給する、冷水用給水器による給水を停止することで、冷水タンク内の冷水より温度が高い冷水用給水器からの給水による冷水タンク内の冷水温度上昇を防ぐことができ、冷却タンク内の冷水を常に低温で循環させることで、冷却時間を短縮することができる。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項9に記載の熱処理装置であって、前記冷水供給部は、前記冷水タンク内に貯留された冷水を冷却する冷却装置を有し、前記冷却制御部は、前記冷水供給部からの前記冷水の供給を停止している間、前記冷水用給水器から前記冷水タンクに給水し、前記冷水用給水器からの給水量を、前記冷却装置により前記冷水タンク内の冷水の温度が維持可能な範囲に調整するように構成されていることを特徴とする。
【0026】
この発明に係る熱処理装置によれば、冷水供給部からの前記冷水の供給を停止している間に、冷水タンク内の冷水の温度が冷却装置によって維持可能な範囲で冷水用給水器から冷水タンクに給水するので、冷水タンクに冷水を効率的かつ確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る熱処理装置によれば、対象物を冷却する際に、急速な冷却を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図1から図4を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、この発明に係る加熱冷却装置(熱処理装置)の概略構成を示す図であり、符号1は、加熱冷却装置を示している。
【0029】
加熱冷却装置1は、加熱冷却装置本体20と、熱媒体循環回路40と、給水装置46と、加熱部51と、冷水供給部60と、冷却制御部70と、流路切替手段85とを備え、ノズル30から噴射した熱媒体Mにより例えばパック食材(対象物)Wを加熱、冷却することができるようになっている。
この実施の形態において、熱媒体Mは水が温度調整された構成とされ、パック食材Wを加熱する場合には温水Hの状態で、冷却する場合には冷水Cの状態で用いられるようになっている。また、この明細書における冷水Cには、給水装置46から給水される常温水が含まれる。
【0030】
加熱冷却装置本体20は、筐体21と、ノズル30と、熱媒体タンク25とを備え、筐体21は、図2、図3に示すように、外形が略直方体とされ、ひとつの側面部に矩形状の開口部22が形成され、この開口部22を介してパック食材Wを積載するための台車24が加熱冷却装置本体20内に出し入れ可能とされるとともに、開口部22には開口扉23が設けられ開口部22を液密に開閉可能とされている。
【0031】
また、筐体21の内部には、パック食材Wに挿入可能な位置に品温センサT1が配置され、この品温センサT1によりパック食材Wの品温、例えば、芯温等の測定が可能とされている。
【0032】
台車24は、加熱冷却装置本体20内部に収納自在に構成され、熱媒体Mが流通可能な貫通孔が複数形成されパック食材Wが収納される受け皿、いわゆるホテルパンが、上下方向に間隔をあけて複数積載可能とされている。
また、台車24は、台車24を移動自在に支持する車輪24Aによって加熱冷却装置本体20内部に設けられた台車用テーブル24Bに載置可能とされている。
【0033】
熱媒体タンク25は、加熱冷却装置本体20の筐体21の下部に、熱媒体Mが貯留可能に設けられており、ノズル30から噴射された熱媒体Mを受けることができるようになっている。
また、熱媒体タンク25には、レベルセンサLA及びタンク水温センサT2が設けられていて、熱媒体タンク25内の熱媒体Mの液位及び温度が検出可能とされている。
【0034】
また、熱媒体タンク25には、加熱部51が接続されて、熱媒体タンク25内に貯留された熱媒体Mを加熱することができるようになっており、加熱部51は、蒸気供給管51Aと、蒸気供給バルブ51Vと、蒸気供給管51Bとを備え、蒸気供給管51Aは上流側が蒸気供給源に接続され、蒸気供給管51Bは下流側が熱媒体タンク25内の熱媒体Mに浸漬可能に接続されている。
【0035】
蒸気供給バルブ51Vは、この実施の形態において、タンク水温センサT2により測定された熱媒体Mの温度に基づいて開度が制御可能とされ、予熱工程及び加熱工程において熱媒体タンク25内に調整された量の蒸気を注入して熱媒体Mを加熱するとともに温度調整するようになっている。
【0036】
蒸気供給バルブ51Vは、予熱工程において、タンク水温センサT2により検出される熱媒体タンク25内の熱媒体Mが設定温度に到達するまでの間開度調整され、加熱工程においては、噴射温度測定センサT3により検出される熱媒体Mの温度が設定温度以下の場合に開度調整され、設定温度に対して所定の範囲内に到達したら開度がゼロになるように構成されている。
【0037】
また、熱媒体タンク25には、液位上限位に対応する位置にオーバーフロー配管25Aが接続されるとともに熱媒体タンク25の底部に排出配管29が接続されており、給水装置46による給水及び熱媒体タンク25内に注入された蒸気の凝縮により熱媒体Mの容積が増加した場合に熱媒体Mがオーバーフロー配管25Aから排出されるとともに、必要に応じて電磁バルブ29Vを開いて排出配管29から熱媒体Mが排出可能とされている。
【0038】
また、熱媒体タンク25には、例えば、熱媒体Mが噴射された際にパック食材W表面に付着していた液汁等が熱媒体循環回路40内の熱媒体Mに混入、熱媒体循環回路40内を循環し、長期間の後に熱媒体タンク25及び熱媒体循環回路40内に液汁成分が付着、堆積するのを防止するために、熱媒体タンク25内に液体洗剤を注入するための薬注器55が設けられている。
【0039】
薬注器55は、液体洗剤を保持する保持タンク55Tと、液体洗剤を熱媒体タンク25内に供給する吐出ポンプ55Pとを備え、吐出ポンプ55Pの吐出側の管路の先端は熱媒体タンク25の上限液位に対応する位置よりわずかに上方に位置されている。
薬注器55による液体洗剤の注入は、例えば、1週間に一回程度実施され、注入された液体洗剤は、熱媒体タンク25及び熱媒体循環回路40を熱媒体Mとともに循環して熱媒体循環回路40内部に付着、堆積した液汁等の固化成分を洗浄、除去するようになっている。
【0040】
ノズル30はノズル分配管32に設けられるとともに加熱冷却装置本体20内に収納された台車24の両側方に配置されて、台車24に積載されたパック食材Wに熱媒体Mを噴射してパック食材Wを加熱、冷却するようになっている。
ノズル分配管32は、図2、図3に示すように、例えば、台車24の両側方に、加熱冷却装置本体20の上方から下方に延在してそれぞれ2組ずつ設けられており、ノズル30はそれぞれのノズル分配管32の長手方向に沿って等間隔に配置されている。
【0041】
熱媒体循環回路40は、温水Hと冷水Cが流通する主循環回路41と、冷水供給部60と、この冷水供給部60の上流側に配置された排出手段49と、切替回路43とを備えている。
冷水供給部60は、冷水Cのみが流通する冷水循環回路42と、冷水Cが貯留可能とされ冷水循環回路42の上流側に冷水Cが流入可能に接続され、冷水循環回路42の下流側に冷水Cが流出可能に接続された冷水タンク62と、冷水用給水器65とを備え、冷水循環回路42は、切替回路43により主循環回路41と選択的に切り替え自在とされている。
【0042】
主循環回路41は、上流側端部は熱媒体タンク25の底部に接続されるとともに、循環ポンプ41P、流量調整弁F1、モータバルブV1、フロースイッチF2がこの順に配置され、ノズル分配管32に接続され、流量調整弁F1とフロースイッチF2側の間には、バイパス回路部(循環通路)41Aが形成されている。
【0043】
このバイパス回路部41Aの下流側にはノズル30から噴射される熱媒体Mの温度を測定するための噴射温度測定センサT3が配置され、噴射温度測定センサT3により検出された信号に基づいて、蒸気供給バルブ51Vの開度が調整され温水Hの温度が調整可能とされている。
また、流量調整弁F1とバイパス回路部41Aの間には排出手段49が設けられ、排出手段49は排出バルブ49Vと排出バルブ49Vを介して接続された排出管路49Aとからなり、排出バルブ49Vを開くことにより熱媒体循環回路40内の熱媒体Mが外部に排出可能とされている。
【0044】
主循環回路41には、給水装置46が接続され、給水装置46は、給水配管46Aと、原水タンク46Tと、給水ポンプ46Pと、軟水装置47と、電磁バルブ46Vとを備え、給水配管46Aの上流側は給水源Aに接続され、給水ポンプ46P、軟水装置47、電磁バルブ46Vがこの順序で配置され、下流側が循環ポンプ41Pの上流側に接続されている。
【0045】
給水装置46は、給水ポンプ46Pを駆動しながら電磁バルブ46Vを開くことにより熱媒体循環回路40への常温水(以下、この明細書において、特別に必要がある場合を除き冷却用の熱媒体Mとしての冷水Cという)の給水が可能とされており、熱媒体タンク25内の熱媒体Mの量が減少してレベルセンサLAにより検出される熱媒体Mの液位が設定値以下となった場合の水の補給、ノズル30から冷水Cを噴射するための給水、及び噴射温度測定センサT3により検出される熱媒体Mの温度が設定温度よりも高い場合の温度調整のための給水が可能とされている。
【0046】
軟水装置47は、イオン交換樹脂を用いて給水に含まれる硬度分を除去するためのものであり、イオン交換樹脂が充填され上下方向に液体が流通可能とされた樹脂筒の下部から原水を上向流として通水することにより硬水が軟水化されるようになっている。
【0047】
なお、軟水装置47は、例えば、樹脂筒と、原水タンクと、塩水タンクとを備えた構成とされることにより、塩水タンクからの飽和塩水と原水とを混合して樹脂筒内を流下させてイオン交換樹脂が再生可能とされるとともに、塩水を樹脂筒外に排出した後に樹脂筒内に原水のみを流下させてイオン交換樹脂を水洗、塩分を系外に除去してイオン交換樹脂が自動再生可能とされていることが望ましいが、給水に含まれる硬度分が除去できればこれに限るものではない。
【0048】
冷却制御部70は、図4に示すように、冷却制御回路71と、第1の切替手段81と、第2の切替手段82と、第3の切替手段83と、循環ポンプ41Pと、循環ポンプ42Pと、流路切替手段85と、冷却装置64と、循環ポンプ63Pと、給水装置46と、冷水用給水器65とを備え、冷却制御回路71は、第1の切替手段81、第2の切替手段82、第3の切替手段83からの信号が入力され、循環ポンプ41P、循環ポンプ42P、流路切替手段85、冷却装置64、循環ポンプ63P、給水装置46、冷水用給水器65に制御信号を出力するようになっている。
【0049】
この実施の形態において、第1の切替手段81は、品温センサT1により構成されていて、パック食材Wの温度が設定値まで下がったことを品温センサT1が検出することにより、流路切替手段85の接続を主循環回路41から排出手段49に切り替えて、給水装置46から給水された冷水Cを主循環回路41を循環させて行う冷却から、冷水供給部60から供給された冷水Cを排出手段49から排出させながら行う冷却に切り替えるようになっている。
なお、第1の切替手段81は、品温センサT1と、タンク水温センサT2と、噴射温度測定センサT3と、ノズル30からの熱媒体Mの噴射時間を測定する噴射時間タイマ(図示せず)の少なくともいずれか1つを有して構成され、これらのうち複数により構成される場合には、そのうちの1つを選択して用い、又は品温センサT1、タンク水温センサT2、噴射温度測定センサT3、噴射時間タイマのうち2つ以上が協働して作用するようにしてもよい。
【0050】
この実施の形態において、第2の切替手段82は、排出手段から熱媒体が排出された排出時間を測定する第1の排出時間タイマTM1と、冷水タンク62内の冷水Cの液位を検出するレベルセンサLBとを備えており、必要に応じて、第1の排出時間タイマTM1又はレベルセンサLBを選択して用いるようになっており、第2の切替手段82からの信号に基づいて流路切替手段85の接続を排出手段49から冷水循環回路42に切り替えて、冷水供給部60から供給された冷水Cを排出させて行う冷却から循環させて行う冷却に切り替えられるようになっている。
【0051】
なお、第2の切替手段82は、レベルセンサLBと、第1の排出時間タイマTM1と、タンク水温センサT2の少なくともいずれか1つを備えることにより構成することが可能であり、タンク水温センサT2による場合には、パック食材Wを冷却した後にタンク25内に流入する冷水Cの温度により切り替えられる。
また、第2の切替手段82が、上記2つ以上のセンサ等により構成される場合には、切り替えをその全部又は選択された一部によって行うことが可能であり、その場合に複数のセンサ等を協働して作用させるようにしてもよい。
【0052】
この実施の形態において、第3の切替手段83は、熱媒体タンク25内の熱媒体Mの液位を検出するレベルセンサLAと、排出手段49から熱媒体Mが排出された排出時間を計測する第2の排出時間タイマTM2とを備えており、熱媒体タンク25内の熱媒体Mが排出手段49から排出されて液位が低下してレベルセンサLAの位置に到達した信号に基づいて第2の排出時間タイマTM2がカウントを開始し、第2の排出時間タイマTM2により設定された時間が経過するまでの間、さらに熱媒体Mを排出させるようになっている。
なお、第3の切替手段83は、レベルセンサLAと第2の排出時間タイマTM2のいずれか1つにより構成してもよいし、レベルセンサLAと第2の排出時間タイマTM2とから構成する場合に、上記のように2つが協働して作用する構成のほか、いずれか1つを選択して用いる構成としてもよい。
【0053】
流路切替手段85は、排出手段49と切替回路43とを備え、熱媒体タンク25からの熱媒体Mの流路を、主循環回路41と、冷水循環回路42と、排出手段49とを切り替えて接続するように構成されている。
【0054】
切替回路43は、モータバルブV1と、モータバルブV2と、モータバルブV3とを備えており、モータバルブV1はバイパス回路部41Aに、モータバルブV2はバイパス回路部41Aの上流端部と冷水循環回路42の上流端部との間に、モータバルブV3はバイパス回路部41Aの下流端部と冷水循環回路42の下流端部との間に設けられている。
【0055】
したがって、流路切替手段85は、モータバルブV2、モータバルブV3、排出バルブ49Vが閉じられてモータバルブV1が開かれることにより主循環回路41に接続され、モータバルブV1、排出バルブ49Vが閉じられてモータバルブV2、モータバルブV3が開かれることにより冷水供給部60の冷水循環回路42に接続され、モータバルブV1、モータバルブV2が閉じられて排出バルブ49Vが開かれることにより排出手段49に接続されるように構成されている。
【0056】
冷水循環回路42は、上流端部がモータバルブV2を介してバイパス回路部41Aの上流端部に接続され、冷水タンク62、冷水循環ポンプ42P、フロースイッチF3が、この順番で配置され、下流端部がモータバルブV3を介してバイパス回路部41Aの下流端部に接続されている。
【0057】
冷水タンク62は、加熱された1台車あたりのパック食材Wを冷却した場合の熱エネルギーによって冷水Cの水温が大きく上昇しない程度の充分な量の冷水Cが貯留可能とされており、冷水循環回路42の上流側から流入する冷水Cが底部に接続された管路から流出可能とされている。
【0058】
また、冷水タンク62は底部に接続された管路63を介して冷却装置64と接続されるとともに、冷水タンク62と冷却装置64とは冷水供給部60を構成していて、冷水供給部60は、冷水循環回路42を循環してきた冷水Cを冷却して冷水Cの水温を調整可能とされている。
また、冷水タンク62には、冷水用給水器65と、排水回路66とが接続され、冷水Cの液位を検出するためのレベルセンサLBが設けられている。
【0059】
冷水用給水器65は、給水管路65Aと、電磁バルブ65Vと、ボールタップLCとを備え、上流側が給水源Bに接続されるとともに下流側が冷水タンク62に接続されており、ボールタップLCが冷水Cの液位の低下を検出すると給水源Bから冷水タンク62に給水可能とされている。
【0060】
排水回路66は、管路66A、管路66B、バルブ66Vを備えており、管路66Aは上流側が冷水タンク62の上限液位に対応する位置に接続されていて冷水タンク62内の冷水Cが上限液位を超えた場合に冷水Cをオーバーフローさせて冷水タンク62内の冷水Cの上限液位を維持するようになっている。
また、管路66Bはバルブ66Vを介して冷水タンク62の底部に接続され、このバルブ66Vを操作することにより冷水タンク62内の液位を任意に調整できるようになっている。
【0061】
冷水用給水器65は、冷却制御部70の制御信号によって制御され、この実施の形態においては、冷水供給部60からノズル30への冷水Cの供給が停止されている間にのみ電磁バルブ65Vが開かれて冷水タンク62に給水するようになっている。
冷却制御部70から電磁バルブ65Vに出力された制御信号は、例えば、電磁バルブ65Vの開時間と閉時間の比を調整することによって給水量が調整されるようになっている。
なお、電磁バルブ65Vに代えて開度が制御可能なバルブを用いてもよい。
【0062】
冷却装置64は、例えば、コンプレッサにより圧縮された冷媒を断熱膨張させることによって冷水Cから熱を奪い取って冷水Cを冷却させる構成とされており、冷却装置64の上流側は冷水タンク62の底部に管路63Aを介して接続され、管路63Aには、循環ポンプ63P及びフロースイッチF4がこの順に配置されている。
また、冷却装置64の下流側は冷水タンク62の底部に管路63Bを介して接続され、管路63Bには、フロースイッチF5が配置されている。
かかる構成により、冷水タンク62から冷却装置64に導かれた冷水Cは冷却されて温度調整可能とされている。
【0063】
また、冷水循環回路42の上流側と下流側との間は、凍結防止用バイパス42Bにより接続され、凍結防止用バイパス42Bには電磁バルブ42Vが設けられていて、冬季に冷水Cが凍結する虞がある場合に電磁バルブ42Vを開いて冷水循環ポンプ42Pにより冷水Cを凍結防止用バイパス42B経由で冷水循環回路42内に循環させることにより、冷水Cの凍結が防止可能とされている。
【0064】
次に、加熱冷却装置1の作用について説明する。
加熱冷却装置1による加熱、冷却は、自動運転により、例えば、以下に示すような待機工程、予熱工程、加熱工程、冷却工程の順序で移行し、手動運転による場合は、各工程の運転条件が満足されている範囲で任意の操作が可能である。
まず、パック食材Wが収納された台車24を筐体21内の所定の位置に配置する。
〔待機工程〕
(1)レベルセンサLAにより検出される熱媒体タンク25内の液位が設定値に到達していない場合には待機工程に移行して給水装置46から熱媒体タンク25内に給水され、液位が設定値以上になったら予熱工程に移行する。
(2)タンク水温センサT2により検出される熱媒体Mの温度が設定温度に到達していない場合には予熱工程に移行し、設定温度以上の場合には加熱工程に移行する。
【0065】
〔予熱工程〕
(1)起動スイッチ(図示せず)をONにする。
(2)加熱部51の蒸気供給バルブ51Vが熱媒体Mの温度に対応した開度に制御され、熱媒体タンク25内の熱媒体Mに蒸気を注入する。
(3)タンク水温センサT2により検出される熱媒体タンク25内の熱媒体Mの温度が設定温度に到達したら予熱が完了する。
【0066】
〔加熱工程〕
予熱工程が完了したら、加熱工程に移行する。
加熱工程における熱媒体Mの温度調整は、この実施の形態では噴射温度測定センサT3が検出した温度を基準として熱媒体タンク25内の熱媒体Mの温度を調整して行われる。
【0067】
(1)起動スイッチをONにする(予熱工程から加熱工程への移行が自動の場合には、起動スイッチをONにする操作は必要ないものとする。)。
(2)加熱工程は、熱媒体循環回路40を熱媒体Mが主循環回路41を流通する構成とする。熱媒体Mが主循環回路41を経由するためには、モータバルブV1を開くとともに、モータバルブV2、モータバルブV3を閉じる。
(3)次いで、循環ポンプ41Pを駆動して、熱媒体循環回路40内に熱媒体M(温水H)を循環させて、熱媒体タンク25内の熱媒体Mを主循環回路41経由でノズル分配管32に送りノズル30からパック食材Wに熱媒体Mを噴射する。
(4)ノズル分配管32内を通過する熱媒体Mの温度が噴射温度測定センサT3により検出され、ノズル分配管32内の熱媒体Mの温度が設定温度の範囲よりも高い場合には、給水装置46の電磁バルブ46Vが開かれて熱媒体タンク25内に給水され、噴射温度測定センサT3により検出されたノズル分配管32内の熱媒体Mの温度が設定温度の範囲よりも低い場合には蒸気供給バルブ51Vが開度調整されて熱媒体タンク25内に蒸気が注入され、加熱される。
(5)加熱工程において注入した蒸気の凝縮及び給水装置46からの給水による熱媒体Mの容積の増加はオーバーフロー配管25Aを経由して熱媒体タンク25から排出されて熱媒体Mの液位が維持される。
(6)噴射された温水Hによりパック食材Wが加熱され、パック食材Wの温度が上昇し、例えば、温度センサT1により検出されるパック食材Wの芯温が所定の値に到達したら、図示しないタイマがカウントを開始して所定時間の経過により加熱工程は終了する。
【0068】
上記加熱工程において、レベルセンサLAにより検出される温水Hの液位が、設定下限以下になった場合には、給水装置46から熱媒体循環回路40に給水され、液位が所定の範囲内に到達したら電磁バルブ46Vが閉じられて熱媒体循環回路40への給水が停止される。
【0069】
なお、待機工程、予熱工程、加熱工程に先立ってパック食材Wが収納された台車24を筐体21内の所定の位置に配置する場合について説明したが、予熱工程が完了した後に開口扉23を開けてパック食材Wが収納された台車24を筐体21内の所定の位置に配置して加熱工程を行うことも可能である。
これにより、パック食材Wを加熱工程から加熱するので、予熱工程時の熱による影響を受けることなく、加熱開始の初期から急速な加熱を効率的に行うことができる。さらに、作業者に対して予熱工程が完了したこと、すなわちパック食材Wが収納された台車24を筐体21内に搬入するタイミングを知らせる報知手段を設ける構成とすることも可能である。
【0070】
〔冷却工程〕
(1)起動スイッチをONにする(加熱工程から冷却工程への移行が自動の場合には、起動スイッチをONにする操作は必要ないものとする。)。
(2)熱媒体タンク25内の熱媒体Mが温水Hの場合等、熱媒体タンク25内の熱媒体Mを熱媒体循環回路40に循環させると冷水供給部60の冷水Cの温度が上昇する場合は、冷却工程に移行する際に、まず、排出バルブ49Vを開き、モータバルブV1、モータバルブV2、及び給水装置46の電磁バルブ46Vを閉じてから循環ポンプ41Pを起動する。
(3)循環ポンプ41Pが起動されると、熱媒体タンク25内の温水H(熱媒体M)は、排出手段49の排出バルブ49Vを経由して熱媒体循環回路40の外部に加圧排出される。このとき、給水装置46からの給水は停止されている。
なお、この動作は、熱媒体タンク25内の熱媒体Mの温度に関わらず行うことも可能である。
(4)この実施の形態においては、熱媒体タンク25内の熱媒体Mの液位がレベルセンサLAの位置まで低下したら第2の排出時間タイマTM2がカウントを開始し、第2の排出時間タイマTM2によりカウントされる時間が設定された時間に到達することにより、冷却制御部70は、熱媒体タンク25内の熱媒体Mの液位が予め設定した液位まで低下したものと判断する。
(5)熱媒体タンク25内の熱媒体Mの液位が予め設定した液位まで低下したら、冷却制御部70は、循環ポンプ41Pを継続して動かしながら、排出バルブ49V、モータバルブV2、モータバルブV3を閉じ、モータバルブV1を開く。
次いで、電磁バルブ46Vを開いて給水装置46から熱媒体循環回路40に給水し、給水装置46から給水された冷水C(常温水)は主循環回路41を経由してノズル分配管32に送られノズル30から噴射される。
このとき、給水装置46からの給水により熱媒体タンク25の水位は上昇するが、過剰の冷水Cをオーバーフロー配管25Aから排出させることで、熱媒体タンク25の水位は維持される。タンク水温は、徐々に給水温度に近づき、パック食材Wを給水温度付近、すなわち常温域まで冷却する。
(6)ノズル30から噴射された冷水Cによりパック食材Wが冷却され、品温センサT1により検出されるパック食材Wの温度が設定値まで下がったら、冷却制御部70は、電磁バルブ46Vを閉じて給水装置46からの給水を停止し、あわせて排出バルブ49Vを開きモータバルブV1を閉じる。このとき、循環ポンプ41Pは継続して動かした状態、モータバルブV2は閉じた状態が維持される。
(7)次いで、循環ポンプ42Pを起動して、冷水タンク62内の冷水Cをノズル分配管32に送ってノズル30から噴射してパック食材Wを冷却しながら、冷却に用いた冷水Cを排出手段49の排出バルブ49Vを経由して外部に排出する。
冷水タンク62内の冷水Cを排出手段49から排出させながらパック食材Wを冷却する間、電磁バルブ65Vは閉じられて冷水用給水器65からの給水は停止されている。
(8)冷水タンク62内の冷水Cの液位がレベルセンサLBにより設定された液位まで低下したら、排出バルブ49Vを閉じるとともにモータバルブV2を開いて冷水Cが冷水供給部60を循環するように流路切替手段85の接続を冷水供給部60の冷水循環回路42に切り替える。
この実施の形態において、第2の切替手段82はレベルセンサLBが選択されており、レベルセンサLBにより検出される冷水タンク62内の液位が設定位置となったら冷却制御部70に入力される。
上記冷水Cを排出させながらの冷却に関しては、冷水タンク62内の冷水Cを予め冷却装置64により設定温度まで冷却しておくことが好適である。
(9)流路切替手段85の接続切替は、モータバルブV1、排出バルブ49Vを閉じるとともにモータバルブV2、モータバルブV3を開き、流路切替手段85の接続を冷水循環回路42として、冷水Cが熱媒体循環回路40の冷水供給部60を経由する構成とする。このとき、循環ポンプ41P及び循環ポンプ42Pは継続して動かした状態が維持される。
(10)次いで、熱媒体タンク25内の冷水Cを冷水循環回路42経由で熱媒体循環回路40内を循環させて、ノズル分配管32に移動しノズル30から冷水Cを噴射してパック食材Wを冷却する。
(11)冷水Cが冷水循環回路42を経由するようにした後は、冷水用給水器65からの給水は停止されたまま、循環ポンプ63Pを駆動して冷水Cを冷水タンク62と冷却装置64との間で循環して冷却装置64の設定温度まで冷却する。その結果、パック食材Wを冷却することにより冷水供給部60に持ち込まれた熱が除去される。
(12)冷却工程は、例えば、品温センサT1により測定されるパック食材Wの芯温が設定された温度に到達することにより、又は、その後所定時間が経過したことがタイマ(図示せず)により確認されることにより完了する。
【0071】
冷水供給部60からノズル30に冷水Cが供給されている間、冷水用給水器65から冷水タンク62への給水は停止される。
また、冷水用給水器65から冷水タンク62への給水は、冷水供給部60からノズル30への冷水Cの供給が停止されている間に行われ、その給水量は冷却装置64の冷却能力によって冷水タンク62内の冷水Cの温度が維持される範囲内とされる。
【0072】
冷水タンク62への給水は、ボールタップLCにより液位が制御されており、冷水Cの液位がボールタップLCの設定液位を超えると停止され、冷水Cの液位の低下を検出すると給水される。ただし、冷水供給部60から冷水Cを供給している間は、電磁バルブ65Vが閉じられており、ボールタップLCによる液位制御は行われないようになっている。
【0073】
この実施の形態における冷却工程では、冷水供給部60を使用することにより、冷水Cが有する冷却能力の範囲内でパック食材Wを最大限冷却する構成とされているが、パック食材Wを常温域までしか冷却する必要がない場合は、上記(7)から(11)までの動作の全部又は一部を省略する構成とすることができる。
【0074】
上記実施形態に係る加熱冷却装置1によれば、パック食材Wを冷却する際に、冷水Cを排出しながら冷却した後に冷水Cを循環しながら冷却するので冷水循環回路42内への熱の持込みを抑制して急速な冷却を効率的に行うことができる。
【0075】
また、第3の切替手段83により、熱媒体タンク25の水位が所定の水位となるまでの間、熱媒体タンク25から熱媒体Mを排出させて水位を低下させるので、熱媒体タンク25内に保持される熱媒体Mが有する熱容量が小さくなり、効率的な冷却が可能とされる。
【0076】
また、高温状態のパック食材Wは、給水装置46から給水された常温水(冷水C)に熱媒体タンク25内に残留した温水Hが混合された熱媒体Mにより冷却を開始し、パック食材Wの冷却が進むにつれて常温水(冷水C)を熱媒体Mとし、その後冷水供給部60から供給される低温の冷水Cを熱媒体Mとすることにより、冷却工程において用いる熱媒体Mの状態を段階的に変化させて冷却するので、熱媒体Mの冷却能力を充分に利用した効率的な冷却をすることができる。
【0077】
また、パック食材Wの温度が高い間の粗熱除去のための冷却を給水装置46から給水された冷水C(常温水)を主循環回路41に循環させながら行うので、冷水C(常温水)を節水するとともに冷水タンク62に貯留され冷却された冷水Cを効率的に用いることができる。
【0078】
また、前回の冷却工程で用いられた後に冷水タンク62に貯留した使用済の冷水Cを用いることにより、冷却工程において新たに給水する冷水Cの量を削減して節水とコスト削減を実現することができる。
また、使用済の冷水Cを排出手段49から系外に排出させることにより、前回の冷却において混入した、例えば、パック食材Wから混入してきた液汁等を除去して、循環させる冷水Cを清浄にすることができる。
【0079】
また、流路切替手段85が排出手段49側とされて冷水供給部60からの冷水Cが排出手段から排出される間、冷水用給水器65による給水が停止されるので、冷水用給水器65により新たに給水される冷水Cへの使用済の冷水Cの混入が抑制され、冷水循環回路42内の冷水Cを効率的に清浄にすることができる。
【0080】
また、第2の切替手段82を構成しているレベルセンサLBにより検出される冷水タンク62内の冷水Cの液位に基づいて排出手段49と冷水循環回路42側とを切り替えるので、冷水循環回路42内を循環する際に必要な量の冷水Cを確実に確保したうえで、冷水循環回路42を循環させる冷水C以外の冷水Cをすべて用いて冷却能力を最大限活用した効率的な冷却を行うことができる。
【0081】
また、冷水供給部60から冷水Cを供給する間、冷水用給水器65による給水を停止するので、排出手段49から冷水Cを排出する場合には前回の冷却工程で使用し冷水タンク62内に残留した水を早く排出させることが可能とされる。
また、冷水供給部60から冷水Cを供給する間、冷水用給水器65からの給水を停止するので、冷水タンク62内の冷水Cより温度が高い冷水用給水器65からの給水による冷水タンク62内の冷水温度上昇を防ぐことができ、冷却タンク62内の冷水Cを常に低温で循環させることで、冷却工程時間を短縮することができる。
【0082】
また、冷水供給部60からの冷水Cの供給を停止している間に、冷水タンク62内の冷水Cが、冷却装置64によって冷水Cの温度が維持可能な範囲の量の水が冷水用給水器65から冷水タンク62に給水されるので、冷水タンク62に所定温度に冷却された冷水Cを効率的かつ確実に確保することができる。また、冷水供給部60から冷水Cを供給する間、冷水用給水器65による給水を停止することによれば、予熱工程、加熱工程等の間を利用して冷水用給水器65から冷水タンク62に給水することにより、冷水タンク62への給水時間が、一連の加熱、冷却工程に係る運転時間に影響するのを抑制することができる。
【0083】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、熱処理装置が、加熱機能と冷却機能の双方を備えた加熱冷却装置1である場合について説明したが、冷却機能のみを備えた冷却装置に適用することも可能である。
【0084】
また、上記実施の形態においては、熱媒体タンク25の水位が設定された後に、給水装置46から給水された冷水Cを主循環回路41経由で循環させながらノズル30から噴射させる場合について説明したが、熱媒体タンク25の水位が設定された後に流路切替手段85による接続を排出手段として給水装置46からの給水をさせることなく、冷水タンク62内の冷水Cをノズル30に供給して噴射させ排出手段49から排出させる構成としてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態においては、熱媒体タンク25内に保持される熱媒体M(温水H)を排出手段49から排出させて水位を低下させてから、給水装置46からの冷水Cを用いてパック食材Wを冷却する場合について説明したが、熱媒体タンク25の温水Hの水位を低下させることなく、流路切替手段85の接続を冷水循環回路42として給水装置46から冷水C(常温水)を給水して循環させることも可能である。
このような構成を採用する場合には、温水Hを単独で排出手段49から排出させる必要がないため、冷却工程の準備時間を短縮することができる。
【0086】
また、熱媒体タンク25の温水Hの水位を低下させることなく、流路切替手段85の接続を排出手段49として冷水供給部60から冷水Cを供給してパック食材Wを冷却しつつ熱媒体タンク25の温水H及び冷水Cを排出手段49から排出させる構成としてもよい。
この場合、給水装置46から給水しつつ主循環回路41を循環させて行う冷却を省略しもよい。
このような構成を採用することにより、冷却工程の準備時間の短縮に加え、加熱工程で用いて熱媒体タンク25内に貯留された温水Hが冷水供給部60に循環されることがないため、ノズル30に供給する冷水Cの温度を低温に維持してパック食材Wの冷却を効率的に行うことができる。
【0087】
なお、上記実施の形態においては、冷水供給部60からの冷水Cを供給している間のみに、冷水用給水器65による給水を停止する場合について説明したが、排出手段49から冷水Cを排出させながら冷却している間と、冷水用循環回路42を経由して冷水供給部60に冷水Cが循環されている間のいずれか一方又は双方において、冷水用給水器65と給水装置46のいずれか一方又は双方から給水することも可能である。
例えば、冷水循環回路42に冷水Cを循環させる際に冷水タンク62の水位が変動して冷水循環回路42への給水が必要な場合に、電磁バルブ65Vを開いて冷水タンク62に給水してもよい。また、冷却装置64の冷却能力が大きく、冷水タンク62内の水温が上がらない場合に、電磁バルブ65Vを開いて冷水タンク62に給水してもよい。
【0088】
また、上記実施の形態においては、冷水供給部60が冷却装置64を備える場合について説明したが、冷水供給部60が冷却装置64を備えない構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、冷却装置64による冷水Cの冷却を、冷水供給部60からの冷水Cの供給が停止している間に行う構成としたが、冷水供給部60から冷水Cを供給している間も行う構成としてもよく、また、冷却装置64により冷水Cを冷却している際の冷水用給水器65から冷水タンク62への給水を、冷水タンク62内の水温の維持の範囲外の給水量にて行ってもよい。
【0089】
また、上記実施の形態においては、給水装置46が軟水装置47を備えていて軟水化された軟水を熱媒体Mとして給水する場合について説明したが、軟水装置47を備えない構成の給水装置46を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態に係る加熱冷却装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る加熱冷却装置の内部を正面から見た図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る加熱冷却装置の図2におけるX−X視した横断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る加熱冷却装置の冷却制御部の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
C 冷水
H 温水
M 熱媒体
W パック食材(対象物)
LB レベルセンサ
T1 品温センサ
T2 タンク水温センサ
T3 噴射温度測定センサ
TM1 第1の排出時間タイマ
TM2 第2の排出時間タイマ
1 加熱冷却装置(熱処理装置)
21 筐体
25 タンク
30 ノズル
40 熱媒体循環回路
41 主循環回路
41A バイパス回路(循環通路)
42 冷水循環回路
46 給水装置
49 排出手段
49A 排出管路(排出手段)
49V 排出バルブ(排出手段)
51 加熱部
60 冷水供給部
62 冷水タンク
64 冷却装置
70 冷却制御部
81 第1の切替手段
82 第2の切替手段
83 第3の切替手段
85 流路切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が収納可能とされた筐体と、
前記筐体内部に配置され、前記対象物に熱媒体を噴射するノズルと、
前記筐体の下部に配置され前記ノズルから噴射された前記熱媒体を受けるとともに貯留する熱媒体タンクと、
前記熱媒体タンク内に貯留された前記熱媒体を前記ノズルに循環させる熱媒体循環回路とを備え、
前記熱媒体循環回路に、前記ノズルに冷水を供給する冷水供給部と、前記熱媒体循環回路から前記熱媒体を排出可能とする排出手段とが設けられた熱処理装置であって、
前記冷水供給部は、
前記熱媒体循環回路を構成する冷水循環回路と、
前記冷水循環回路の上流側と下流側とに接続され、前記冷水が貯留可能とされた冷水タンクと、
前記冷水タンクに冷水を供給する冷水用給水器とを有し、
前記熱媒体タンクからの熱媒体の流路を、前記排出手段と前記冷水循環回路とを切り替えて接続する流路切替手段と、
前記流路切替手段の接続を選択する冷却制御部とを備えていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却制御部は、
前記流路切替手段の接続を前記冷水循環回路とし、前記冷水供給部から冷水を供給することを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記冷却制御部は、
前記流路切替手段の接続を前記冷水循環回路とする前に前記流路切替手段の接続を前記排出手段とし、前記冷水供給部から冷水を供給することを特徴とする請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記冷却制御部は、
前記対象物の温度を測定する品温センサと、前記熱媒体タンク内の熱媒体の温度を検出するタンク水温センサと、前記ノズルから噴射される熱媒体の温度を測定する噴射温度測定センサと、前記ノズルからの噴射時間を測定する噴射時間タイマの少なくともいずれか1つを有する第1の切替手段を備え、
前記第1の切替手段の信号に基づいて前記流路切替手段の接続を前記排出手段とし、前記冷水供給部から冷水を供給するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記冷却制御部は、
前記排出手段から熱媒体が排出された排出時間を測定する第1の排出時間タイマと、
前記冷水タンク内の冷水の液位を検出するレベルセンサと、
前記熱媒体タンク内の熱媒体の温度を検出するタンク水温センサの少なくともいずれか1つを有する第2の切替手段を備え、
前記第2の切替手段からの信号に基づいて前記流路切替手段の接続を前記冷水循環回路とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記熱媒体循環回路は、前記冷水供給部と並列に配置され前記熱媒体を前記熱媒体タンクから前記ノズルに循環させる循環通路と、前記熱媒体循環回路に給水する給水装置とを備え、
前記流路切替手段は、前記循環通路への接続が可能とされ、
前記冷却制御部は、
前記冷水供給部から前記冷水を供給する前に前記流路切替手段の接続を前記循環通路とし、前記給水装置から給水するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記冷却制御部は、
前記ノズルから前記熱媒体を噴射する前に前記流路切替手段の接続を前記排出手段とし、前記熱媒体タンクから前記熱媒体を排出させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記排出手段から熱媒体が排出された排出時間を測定する第2の排出時間タイマと、
前記熱媒体タンク内の熱媒体の液位を検出するレベルセンサの少なくともいずれか1つを有する第3の切替手段を備え、
前記冷却制御部は、
前記第3の切替手段からの信号に基づいて前記ノズルから前記熱媒体を噴射するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記冷却制御部は、
前記冷水供給部から前記冷水を供給する間、前記冷水用給水器による給水を停止するように構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記冷水供給部は、
前記冷水タンク内に貯留された冷水を冷却する冷却装置を有し、
前記冷却制御部は、
前記冷水供給部からの前記冷水の供給を停止している間、前記冷水用給水器から前記冷水タンクに給水し、
前記冷水用給水器からの給水量を、前記冷却装置により前記冷水タンク内の冷水の温度が維持可能な範囲に調整するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−17818(P2009−17818A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182475(P2007−182475)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】