説明

熱分解性ポリマー被覆金属粉末

本発明は、例えば半田合金およびペーストの形成において使用される金属粉末のなどのポリマーで被覆された金属粉末に関する。金属粉末は、シアノアクリレートの硬化性組成物で被覆されている。本発明は、例えば半田合金およびペーストの形成において使用される金属粉末などのポリマーで被覆された金属粉末に関する。金属粉末は、シアノアクリレートの硬化性組成物で被覆され、硬化した時点で金属粉末上の被膜はシアノアクリレートポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、例えば半田合金、球およびペーストの形成において使用される金属粉末などのポリマーで被覆された金属粉末に関する。金属粉末は、例えばシアノアクリレートポリマーまたはジシクロペンタジエン(「DCPD」)オリゴマーのような熱分解性ポリマーで被覆される。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
半田は、半導体パッケージおよび半導体デバイスの組立において広く使用されている。
【0003】
例えば、半田ボールまたは球は、例えばフリップチップ用途のような半導体パッケージの組立で使用されている。
【0004】
半田ペーストは一般的に、電気部品を回路基板に表面実装の半田付けをするために使用されている。半田ペーストは、その粘着特性を用いて回路基板の選択された領域に塗布することができるために有用であり、基板が半田リフロー工程を経て永久的な接合を形成するのに先立って追加的な接着剤を用いずに電気部品を所定の場所に保持する能力を提供する。
【0005】
半田ペーストは、典型的には半田粉末、ロジンのような樹脂状成分、有機酸もしくはアミンのような活性剤、レオロジー制御剤、増粘剤ならびに溶媒を含む。半田ペーストは、典型的にはスクリーン印刷、ディスペンシング、および転写印刷のような技術によって回路基板上に被覆される。その後、電気部品を回路基板上に配置して半田ペーストをリフローし、それによって半田が融解するのに充分に加熱され、その後半田が固化するのに充分に冷却される。
【0006】
半田ペーストの使用に関係する産業での1つの問題として、半田ペーストが短く予想できない保存可能期間、例えば、典型的に約1ヶ月〜6ヶ月である場合が多いことである。保存可能期間が予想できないのは、少なくとも部分的には、半田粉末が製造されたときから半田粉末がフラックスと混合されて半田ペーストを形成するときまでの時間のずれが一様でないためであり、それによって、結果として半田粉末における酸化の程度が一様でなくなる。そのような酸化した粉末は、酸化していない粉末ほど良くはリフローしない。さらに、半田粉末が本質的に腐食性であるフラックスと混ぜ合わせられた場合、半田粉末はフラックスと反応することが多く、それによって半田粉末を酸化し、フラックスの酸性度、すなわち有効性を下げる。その結果、半田ペーストの性能は時間とともに損なわれる場合が多い。さらに、半田粉末とフラックスとの反応は、典型的には半田ペーストの粘度を実質的に増加をさせ、それは印刷ピッチによるが、半田ペーストの印刷を不可能ではないにしても困難にする可能性がある。
【0007】
半田ペーストを冷蔵条件下で保存することによって半田粉末とフラックスとの反応速度を低下させ、その結果として半田ペーストの保存可能期間を増加させる試みがなされてきた。しかしながら、フラックスが半田ペーストに取り込まれるのに先立って、半田粉末における様々な酸化の程度を補うために、半田ペーストを冷蔵しておくことは有効ではない。
【0008】
また、半田ペーストと反応性のない材料で半田粉末が被覆されたことが公表されている。例えば、米国特許第4,994,326号明細書は、半田ペースト用の媒体に不溶または難溶である被覆剤が被膜として使用されることを開示しており、それは、例えばシリコーンオイル、シリコーンベースの高分子化合物、フッ素化シリコーンオイル、フルオロシリコーン樹脂およびフッ素化炭化水素ベースの高分子化合物などのシリコーンおよびフッ素をベースとするものが挙げられる。
【0009】
また、同米国特許第4,994,326号明細書は、半田粉末に塗布される比較的多量の被覆材料を開示している。比較的多量の被覆材料は半田粉末の酸化を抑制するのに有効でありうる一方で、被覆材料は半田のリフローを阻害することができるバリアを形成する可能性があるために、一般的に多量の被覆材料は望ましくない。さらに、そのような多量の被覆材料によって、物理的な障害物および/または不純物を生じる可能性があり、それによって、例えば半田の広がりを悪くし、不連続な半田接続を起こす可能性のあるフラックスによる不充分な基体の濡れといった、劣ったリフロー特性がもたらされる結果となる。
【0010】
加えて、同米国特許第4,994,326号明細書は、半田粉末の被覆において溶媒として用いられるフッ素化炭化水素の使用を開示している。現在では、フッ素化炭化水素は環境汚染物質として考えられており、それらの使用は一般に望ましくない。
【0011】
米国特許第6,416,863号明細書は、半田金属粉末をカプセル化する方法に関し、およびこれを特許請求しており、ここで、該粉末は半田粉末の表面上で重合反応を起こすことで薄いポリマー保護層を備えており、その方法は下記のステップ:
a)粉末および疎水性液体の懸濁液を製造するステップ、
b)ステップ(a)の疎水性層上にブラシ型構造を形成するために、C〜C20の鎖長を有するカチオン性界面活性剤を連続攪拌しながら添加することによって、各々の金属粒子上に疎水性表面層を生成するステップ、
c)ステップa)およびb)の混合物を、粘性な均質塊が形成されるまで攪拌するステップ、
d)ラジカル重合可能であり、ガラス転移温度Tgが半田粉末の凝固点よりも少なくとも60℃低い熱可塑性ポリマーを形成するモノマーをステップc)の塊に添加するステップ、
e)ステップb)の疎水性層を取り込んで界面重合反応を開始して、フラクシング特性を有する熱可塑性ポリマーの保護層を形成するために有機開始剤を添加するステップ、
f)ステップe)の塊を連続攪拌しながら水性調合液中に導入し、これによって、前記調合液は、懸濁液の安定化のために乳化剤を含み、および50℃〜90℃に調節して、この温度を少なくとも120分間維持することによって該重合反応を制御するステップ、および
g)ステップe)およびf)のカプセル化された半田粉末を冷却、洗浄および回収するステップ、
を有する。カプセル壁を形成するのに適したモノマーは、ラジカル重合可能なモノマー、好ましくはメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステルまたはメチルメタクリレートであると公表されている。
【0012】
米国特許第5,328,522号明細書は、
(i)フラックス、および
(ii)被覆された半田粉末は、被覆された半田粉末の全重量を基準として約0.001〜約0.5重量%の量で、および被覆された半田粉末のリフロー特性を実質的に阻害することなく半田ペースト中の半田粒子の酸化を抑制するのに有効な量で、該半田粒子より低い融点を有するパリレンで被覆された半田粒子を含む、被覆された半田粉末、
を含む半田ペーストに関し、およびこれらを特許請求している。
【0013】
米国特許第4,452,861号明細書(Okamoto)は、シアノアクリレートポリマーでカプセル化された固体粒子を記載している。該粒子は、反応性または腐食性環境による劣化を防ぐためにカプセル化されている。このシアノアクリレートポリマーは、陰極線管などにおいて被膜材として用いられる蛍光体粒子などを被覆するために使用される。セリウム活性化カルシウムスルフィド蛍光体粉末は、被覆される例示的な材料である。
【0014】
米国特許出願公開第2005/0171273号明細書は、異方性伝導性接合を形成するための硬化性組成物を記載しており、前記組成物は:
(i)ある量の、第1の実質的に未硬化の硬化性成分、および
(ii)第2の硬化性成分の硬化生成物で被覆された伝導性粒子、
を含み、ここで、該被覆された伝導性粒子は第1の硬化性成分内に分散している。
【0015】
最新技術は存在するが、それでもなお金属粒子上の被覆剤としての硬化性組成物、特に半田ペーストでの使用に適する硬化性組成物を提供することは望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は少なくとも1種の反応性モノマーから形成された熱分解性ポリマーを有する金属粉末であって、それらの表面の少なくとも一部分が前記ポリマーで被覆された金属粉末を提供する。
【0017】
前記反応性モノマーの硬化生成物は、主たる機能として、例えば酸化およびフラックス媒体との化学反応のような環境による劣化から、物理的に金属粒子を隔絶させる役割を有する。一般に該ポリマー被膜は、被覆された金属粒子が含まれている金属粉末および/または半田ペーストが使用のために保存されている間、酸化に対して物理的なバリアとして機能する。
【0018】
被覆で使用するための反応性モノマーは、シアノアクリレートが望ましい。シアノアクリレートは金属粒子に曝されることによって硬化し、すなわち、硬化が容易であるという優位な観点からシアノアクリレートは保護剤として好ましい選択である。例えば加工温度に曝す際、例えば半田リフローの間に到達するような温度でシアノアクリレートポリマーが分解する場合、その残留物は単純にシアノアクリレートモノマーである。シアノアクリレートポリマーは天井温度を有し、その温度以上ではポリマーはその製造原料のモノマーへと戻る。しかしながら、ほとんどのポリマーはその劣化温度よりも高い天井温度を有する。従って実際には、それらのポリマーの天井温度は観察されない。シアノアクリレートポリマーのような他のポリマーは非常に低い天井温度(約120〜約150℃の範囲であることが多い)を有する。
【0019】
シアノアクリレートモノマーは、一般に、式:
【0020】
【化1】

によって表すことができ、ここで、Rは、任意にヒドロキシルまたはアルコキシ官能基および/またはエーテル結合基を有していてもよいC〜C40アルキル、C〜C40シクロアルキル、またはC〜C40アルケニル基である。
【0021】
適したシアノアクリレートモノマーは、アルキル、アルケニルおよびアルコキシシアノアクリレートエステルであり、より具体的には、そのようなエステルのアルキルまたはアルケニル基は、10個までの炭素原子を有する。該シアノアクリレートモノマーは、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、n−ヘキシル、イソ−ヘキシル、n−ヘプチル、イソ−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、アリル、メトキシエチル、エトキシエチル、3−メトキシブチルおよびメトキシイソプロピルシアノアクリレートエステルから選択してよい。
【0022】
シアノアクリレートは、被膜が金属粒子上にあるかどうかの被覆の割合、または粒子上の被膜の被覆の割合に関する検査を可能にするために、更に染料および顔料(シアノアクリレートと相溶性)を含んでいてよい。
【0023】
適した着色剤の例としては、1−ヒドロキシ−4−[4−メチルフェニルアミノ]−9,10アントラセンジオン(D+C バイオレットNo.2);6−ヒドロキシ−5−[(4−スルホフェニル)アゾ]−2−ナフチレンスルホン酸(FD+CイエローNo.6)二ナトリウム塩;9−(o−カルボキシフェニル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,7−テトラヨード−3H−キサンテン−3−オン二ナトリウム塩一水和物(FD+C レッドNo.3);2−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1H−インドール−5−スルホン酸二ナトリウム塩(FD+CブルーNo.2);およびフタロシアニナト(2−)銅が挙げられる。
【0024】
被覆されるべき金属粒子がシアノアクリレートと反応するのが幾らか遅い場合には、シアノアクリレート中で硬化促進剤を用いてよい。これらの硬化促進剤としては、国際特許出願公開第WO01/85861号に開示された促進剤が挙げられ、その全てを参照して本明細書に組みこまれる。本発明で使用するのに適した他の硬化促進剤の例としては、米国特許第6,475,331号明細書(Grismala)および同6,294、629号明細書(O’Dwyer)が挙げられ、それらは共にその全てを参照して本明細書に組みこまれる。
【0025】
他のポリマーもまた、そのポリマーの天井温度が該ポリマーの劣化温度より低く、および金属粒子の融点より低いという条件において、金属粉末用の保護剤として使用することができる。つまり、有用な天井温度を有するポリマーは25℃〜250℃の範囲の天井温度を有する。金属粒子が半田粉末である場合、25℃〜250℃の範囲の天井温度を有するポリマーは有用でありうる。80℃〜200℃の範囲の天井温度は特に有用である。例えば、DCPDポリマーは有用である。
【0026】
ある用途では、金属粒子は2つの基体の間、例えば半導体パッケージ用途などで2つの伝導性基体の間に配置することができ、その様に配置されているために、粒子は該粒子が橋絡する基体間の伝導経路を形成するのに充分に非被覆状態にあるべきである。そのような状況では、基体を橋絡することは、金属粒子を”平坦化”(圧力をかけることによる変形)して充分に被膜を破壊するために充分でありうる。
【0027】
金属粒子は、単一の大きさ、すなわち実質的に同じ寸法であってよい。このことは、形成された接合間隔が半導体パッケージまたは組立品の場合、例えば、接合間隔がある特定の大きさであることが望ましい場合に重要でありうる。しかしながら、少なくとも1つの寸法が平均値で例えば約0.5〜約100μm、望ましくは約3〜約50μmの比較的広い直径分布を有するように、様々な寸法の粒子を使用してよい。特に、被覆された粒子の形状が球状であることが望ましい。
【0028】
粒子上の被膜は、約3μm未満、より具体的には、約0.001〜約0.2μm、例えば、0.004〜約0.4μm、例えば、約0.01〜約0.1μmの範囲であることが望ましい。また、粒子上の被膜は、被覆工程の後の粒子における重量増加の関数として決定することができる。
【0029】
金属粒子上のポリマー被覆は、環境の汚染物質に対して、または、例えば半田ペーストのような配合物の場合には、配合物を形成するために使用される他の成分に対して、金属粒子の反応性を軽減することによって、金属粒子および被覆された金属粒子が使用される配合物の安定性に役立つ。
【0030】
半田リフロー工程の中で、半田ペーストの塗布後、金属粒子のポリマー被覆の少なくとも幾らかは、金属粒子(つまりここでは半田粉末)の表面を曝すようにリフロー間に達した昇温状態に曝すことによって、少なくとも部分的に除去される。また、ポリマー被覆は、物理的破壊によって(例えば、粒子を変形させて被膜の破壊を生じさせるのに充分な圧力を粒子にかけることによって)少なくとも部分的に除去することもできる。
【0031】
ポリマーで被覆された金属粒子は、多くの用途で用いることができる。主たる最終用途の1つは、例えばフリップチップ用途および半田球用途の様な、一般に電子機器産業における用途、特に半田ペーストにおける用途であろう。
【0032】
ポリマーで被覆された金属粒子および配合物(例えば、それらを使用して製造される半田ペースト、および半田球)は、半導体チップと基体との間の相互接続を形成するのに特に有用である。
【0033】
あらゆる型/形状の金属粒子を使用することができる。特に、粒子は球状または球状の傾向を有するものであってよい。金属粒子の好適な金属としては、例えば錫、銀、銅、鉛、亜鉛、インジウム、ビスマスのような元素金属、および例えば、錫/銀/銅、錫/ビスマス、錫/鉛および錫/インジウム/ビスマス合金のような希土類元素金属または合金、が挙げられる。
【0034】
また、本発明は、ポリマー被膜を金属粒子上に形成する方法に関し、以下のステップ:
a)複数の金属粒子を提供するステップ、
b)シアノアクリレート、または、例えばDCPDポリマーのような他の熱分解性ポリマーを、大部分の金属粒子の表面の少なくとも一部分を実質的に被覆するのに適した条件下で付与するステップ、および
c)シアノアクリレートの場合に、金属粒子上にポリマー被膜としてシアノアクリレートを硬化させるステップ、を含む。
【0035】
また、本発明は、半田ペーストを形成する方法に関し、以下のステップ:
a)シアノアクリレート、または、例えばDCPDポリマーのような他の熱分解性ポリマーで被覆された半田粉末を提供するステップ、
b)ロジン、活性剤、レオロジー制御剤、増粘剤、または溶媒から選択される2種以上の半田ペースト成分を提供するステップ、および
c)前記シアノアクリレート、または、例えばPCPDポリマーのような他の熱分解性ポリマーで被覆された半田粉末と前記半田ペースト成分とを混合して半田ペーストを形成するステップ、を含む。
【0036】
金属粒子をアクリレート成分の蒸気に曝すことによって、その粒子の表面上に重合されたシアノアクリレートの均一な被膜を形成することができる。蒸着は粒子に均一な被膜が塗布されることを可能にする。例えば、粒子は雰囲気の温度で発生する任意の適した蒸気に曝されてよく、その温度は蒸気を生成するために適切に上昇させてもよい。シアノアクリレートの場合、蒸気を粒子表面と接触させることは、反応性モノマーを重合するために充分でありうる。流動床反応器は、被覆された金属粒子を製造するために使用することができる。反応性モノマーの蒸気は、反応器の流動床に注入することができる。典型的な被膜は、典型的には1μm未満の厚さであってもよい。当業者であれば、例えば、実質的に硬化されていないある量の反応性モノマー中に粒子を置くことなど、ポリマー被膜を形成するために反応性モノマーを付与する他の方法は、直ちに明らかであることは理解されるであろう。
【0037】
本発明は、ここで下記の非限定的な実施例(単数または複数)を参照して記載される。
【実施例】
【0038】
実施例1
<シアノアクリレート被覆方法>
シアノアクリレート被覆方法を、重合が金属表面自体によって開始され、形成されるべきシアノアクリレートポリマーが金属表面上で成長するように、あらゆる外部触媒を排除するように設計した。
【0039】
500gのタイプ4半田粉末(錫、銅および銀合金)(平均サイズが30μm)を2Lの大きさの丸底フラスコに、1Lの無水トルエンと共に入れた。次いで、0.2gのブチルシアノアクリレートを入れ、フラスコをロータリーエバポレーターに設置し、フラスコを100rpmで回転して均一な混合を行った。1時間後、この反応混合物をろ過して溶媒を除去し、半田粉末を新たなトルエンで2度リンスして、半田粉末上に直接形成しなかったすべてのシアノアクリレートポリマー残渣を除去した。被覆された半田粉末を室温で乾燥させた。
【0040】
実施例2
<半田ペーストの配合物>
被覆された半田粉末(タイプ4;錫、銅および銀合金)をフラックスおよび他の半田ペースト成分と混ぜ合わせて半田ペーストを形成した[数種の半田粉末(シアノアクリレートで被覆された半田粒子)は、実施例1に記載したものと同様である]。数種の半田ペーストを、ポリマーで被覆された半田粉末を使用して形成した(ここで、該ポリマー被膜は、1つの例ではメチルメタクリレート、別の例ではマレイミドから形成した)。
【0041】
保存可能期間後、保管寿命後の半田ペーストの性能を2つの方法によって試験した。以下にその各々の方法を記載する。
1.半田ボール試験
2.粘度試験
【0042】
<半田ボール試験>
半田ペーストをステンレススチール製ステンシルによりスライドガラス上に印刷し、次いでペーストをリフローし、半田ボールの形跡を調べた。
1.スキージーとしてかみそり刃を用い、ステンシルでペーストをスライドガラス上に印刷する。ステンシルは厚さ0.1mmであり、ステンシルに沿って直径約5mmの孔が均等な間隔で3つある。
2.スライドガラスを250℃で5秒間、またはリフローするまで半田浴で加熱する。
3.スライドを浴から取り出し、冷却前に主なボールを転がしてスライドから除く。
4.10倍率の双眼顕微鏡上にあるスライドを、各々の印刷上の半田ボール数を数えることによって評価する。
5.数の少ないほうの2つの印刷について平均を取り、下の表と比較する。
【0043】
【表1】

【0044】
<粘度試験>
ブルックフィールド粘度計は回転粘度測定法の原理を用いている。粘度は、試料中に浸漬しているT字型スピンドルを一定の速度で回転するのに必要なトルクを感知することによって測定される。トルクは浸漬したスピンドルに関する粘性抵抗、すなわちペーストの粘度に比例する。記載された方法で調製された半田ペーストについて、特定の温度で試験を実施する。
1.試料を25℃で6時間置く。
2.6時間後、試料を25℃から取り出し、内部プランジャーを開いて除去する。プランジャーに接着しているすべてのペーストをかき集め、試料に加える。
3.空気が入り込まない様に注意しながら、スパチュラでペーストをゆっくり30秒間撹拌する。
4.ヘリパススタンドにTFスピンドルが取付けられたブルックフィールド粘度計RVDV−II+を使用する。回転速度を5rpmにセットする。
5.ヘリパススタンドの移動の最低点を、ペーストの表面から40mm下にいくようにセットする。スピンドルをペーストの表面から3mm下にセットする。
6.スピンドル回転およびヘリパススタンドの降下を開始する。
7.降下の最低点で粘度を記録する。
【0045】
半田粉末を、シアノアクリレート、すなわちブチルシアノアクリレートに対して上に記載したのと同様な方法で、メチルメタクリレートおよびマレイミドポリマーで被覆した。該ポリマーは熱分解性ではなく、およびそれらの天井温度に達する前に劣化を始めるために、そのような半田粉末は半田ペースト配合物で使用するのに適していないことが、そのように被覆された半田粉末についての半田ボール試験を実施することによって示された。コントロールは、被覆されていない半田粉末である。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
この結果は、この半田ボール試験ではコントロールと比較してメチルメタクリレートで被覆された半田粉末が不合格であったことを示し、その一方で、シアノアクリレートから形成したポリマー被膜は、シアノアクリレートポリマーが半田リフロー温度で熱分解性であるために、半田粉末用の保護剤として充分な性能であったことを示す。
【0049】
<粘度試験>
以下の表を参照すると、メチルメタクリレートポリマーで被覆された半田粉末は、コントロールと比較して粘度試験における性能が改善されなかった。
【0050】
【表4】

【0051】
以下の表を参照すると、オクチルシアノアクリレートポリマーで被覆された半田粉末は、コントロールと比較して経時的に有利な粘度増加を示し、5週間の粘度試験を不合格にならずに耐久することができたのに対し、コントロールは5週間の粘度試験を耐久することができなかった。
【0052】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の表面上の少なくとも一部分が熱分解性ポリマーで被覆された金属粒子であって、前記熱分解性ポリマーは、前記熱分解性ポリマーの劣化温度より低く、および前記金属粒子の融点より低い天井温度を有する、金属粒子。
【請求項2】
前記熱分解性ポリマーが、シアノアクリレートポリマーまたはジシクロペンタジエンポリマーである、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項3】
前記シアノアクリレートポリマーが、下記の構造:
【化1】

(式中、Rは、ヒドロキシルまたはアルコキシ官能基および/またはエーテル結合基を有していてもよいC〜C40アルキル、C〜C40シクロアルキル、またはC〜C40アルケニル基である)に包含されるシアノアクリレートモノマーから形成される、請求項2に記載の金属粒子。
【請求項4】
前記シアノアクリレートが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、n−ヘキシル、イソ−ヘキシル、n−ヘプチル、イソ−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、アリル、メトキシエチル、エトキシエチル、3−メトキシブチルおよびメトキシイソプロピルシアノアクリレートエステルからなる群より選択される、請求項3に記載の金属粒子。
【請求項5】
前記金属粒子が半田である、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項6】
前記金属粒子が、元素金属から形成される、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項7】
前記金属粒子が、合金から形成される、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項8】
前記金属粒子が、錫、銀、銅、鉛、亜鉛、インジウム、ビスマス、および希土類元素金属からなる群より選択される元素金属から形成される、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項9】
前記金属粒子が、錫/銀/銅、錫/ビスマス、錫/鉛、および錫/インジウム/ビスマス合金からなる群より選択される合金から形成される、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項10】
請求項1に記載の被覆された金属粒子を含む半田ペースト組成物。
【請求項11】
前記被覆された金属粒子が、全成分に関して約10〜約98重量%の量で存在する、請求項10に記載の半田ペースト組成物。
【請求項12】
前記金属粒子上の前記ポリマー被膜が、約5μm未満の厚さである、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項13】
前記金属粒子上の前記ポリマー被膜が、約0.0001〜約3.0μmの範囲の厚さである、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項14】
前記金属粒子上の前記ポリマー被膜が、約0.001〜約1μmの範囲の厚さである、請求項1に記載の金属粒子。
【請求項15】
ポリマーで被覆された金属粒子を形成するための方法であって、以下のステップ:
a)複数の金属粒子を提供するステップ、
b)モノマーまたは熱分解性ポリマーを、大部分の前記金属粒子の表面の少なくとも一部を実質的に被覆するのに適した条件下で塗布するステップ、および
c)前記モノマーの場合、前記モノマーを前記金属粒子上にポリマー被膜として硬化させるステップ、を含む方法。
【請求項16】
半田ペーストを形成するための方法であって、以下のステップ:
a)シアノアクリレートポリマーで被覆された半田粉末を提供するステップ、
b)半田ペースト成分を提供するステップ、および
c)前記ポリマーで被覆された半田粉末を前記半田ペースト成分と混合して半田ペーストを形成するステップ、を含む方法。

【公表番号】特表2012−509991(P2012−509991A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537646(P2011−537646)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/065296
【国際公開番号】WO2010/059924
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【Fターム(参考)】