説明

熱収縮性樹脂チューブ

【課題】金属管に形成される樹脂被覆層の剥離部分を適切にかつ確実に被覆して耐チッピング性を確保することができる熱収縮性樹脂チューブを提供する。
【解決手段】金属管10は、耐チッピング性を有する厚膜状の樹脂被覆層12を備えている。そして、金属管10には、樹脂被覆層12剥離部分に配置されている締結ナット14の後端面と残存している樹脂被覆層12との間にて、金属管10のフッ素樹脂層11を覆う熱収縮性樹脂チューブ15が密着して設けられている。ここで、樹脂チューブ15は縮径された先端部15aを締結ナット14に形成した収容段部14a内に内挿してフッ素樹脂層11を覆っている。これにより、金属管10の接続に伴って締結ナット14が相対的に移動しても樹脂チューブ15は樹脂被覆層12の剥離部分を常に被覆しており、金属管10の全長に渡って耐チッピング性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられるブレーキ配管、燃料配管或いはその他の配管として配設される比較的細径の金属管であって、車両走行中における飛び石(チッピング)等に対する耐食性を向上させる厚膜状の樹脂被覆層を有する金属管に用いられる熱収縮性樹脂チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の金属管として、例えば、下記特許文献1に示された重合被覆金属管及びその製造方法は知られている。この従来の重合被覆金属管は、金属管の外周面に施された表面処理層に密着力を有する押出成形可能な樹脂からなる第1層と、この第1層の外周面に設けられて耐チッピング性を有し、かつ、押出成形可能な樹脂(ポリプロピレンやポリエチレン等)からなる第2層とを重合被覆するようになっている。そして、この従来の重合被覆金属管においては、第1層と第2層間の剥離強度が小さく、これにより、第2層を容易に剥離することができ、又、第2層とともに第1層が剥離してしまうことを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−315295号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、上記従来の重合被覆金属管においては、継手等の相手部材と接続するために、軸線方向にて所定の長さ(加工代)だけ樹脂被覆層に相当する第2層を第1層から剥離し、例えば、この剥離部分に締結ナットが組み付けられた後に、軸圧縮加工によって所定の端末加工形状(例えば、フレア等)を成形する端末加工が施される場合がある。ここで、剥離部分については、締結ナットを組み付けた(挿通した)状態で金属管をチャッキングして端末加工を施す必要があるため、締結ナットの軸方向長さ、軸圧縮加工時に必要なチャック代及び成形代を合計した長さを加工代として少なくとも確保する必要がある。
【0005】
そして、所定の端末加工形状が施された金属管を相手部材に接続する場合には、剥離部分に組み付けた(挿通した)締結ナットを相手部材である継手等のネジ部に螺合させることにより、締結ナットの前端面が端末加工部分を背面側から相手部材に対して押圧して接続する。すなわち、このような金属管の接続においては、螺合に伴って、より詳しくは、端末加工部分を相手部材に対して押圧することに伴って締結ナットが金属管に対して相対的に移動することになる。従って、金属管を相手部材に接続した後の状態においては、締結ナットの後端面と残存している樹脂被覆層(第2層)の端面との間、すなわち、剥離部分にて締結ナットの移動量とチャック代分だけ金属管の外周面である第1層が常に露出することになる。
【0006】
このように、金属管の外周面が露出した状態において、この金属管が自動車の下部(例えば、足回り部分等)に配設されると、この露出した部分が飛び石や泥水によって損傷したり、更には、耐食性劣化が生じたりする可能性がある。このため、樹脂被覆層を有する金属管においては、加工上の要求から樹脂被覆層を剥離した場合、この剥離部分を再度被覆して、全長に渡り耐チッピング性を確保することが望まれている。
【0007】
このような要望に対し、例えば、従来から金属管の耐チッピング性を確実に確保するために広く採用されている熱収縮性樹脂チューブによって金属管における剥離部分を再度被覆することが考えられる。具体的に熱収縮性樹脂チューブによって剥離部分を被覆する場合には、例えば、上述した端末加工が施された後に締結ナットを端末加工部分に到達するまで移動させておき、移動させた締結ナットの後端面に接触した状態で熱収縮性樹脂チューブを仮組み付けする。そして、このように仮組み付けした熱収縮性樹脂チューブを加熱炉内にて加熱して熱収縮させると、剥離部分は、熱収縮して密着した熱収縮性樹脂チューブによって被覆される。
【0008】
ところが、金属管を相手部材に対して接続するときには、上述したように、締結ナットは金属管に対して相対的に移動する。これにより、金属管を相手部材に接続するまでは、締結ナットの後端面と熱収縮性樹脂チューブの先端部とが接触した状態であるため、金属管の外周面である第1層は露出することはないものの、金属管を相手部材に接続した後は、締結ナットが金属管に対して相対的に移動するすなわち金属管の外周面に密着した熱収縮性樹脂チューブに対して相対的に移動するため、締結ナットの後端面と熱収縮性樹脂チューブの先端部との間に隙間が生じる。従って、熱収縮性樹脂チューブを設けた場合であっても、金属管の外周面である第1層が常に露出することになる。
【0009】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、厚膜状の樹脂被覆層を有する金属管に形成される樹脂被覆層の剥離部分を適切にかつ確実に被覆して耐チッピング性を確保することができる熱収縮性樹脂チューブを提供することにある。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、外周面上にて全長に渡り耐チッピング性を有する厚膜状の樹脂被覆層が形成された金属管であって、少なくとも所定の端末加工形状を形成する端末加工に必要な加工代に相当する部分における前記樹脂被覆層が剥離され、この剥離された部分に前記金属管を相手部材に螺着するための締結ナットを前記金属管の軸線方向にて変位可能に組み付けた状態で前記端末加工によって前記所定の端末加工形状が形成される金属管に適用されて、加熱に伴って半径方向に収縮して前記金属管の外周面に密着する熱収縮性樹脂チューブおいて、螺着に伴って前記相手部材に向けて前記端末加工による端末加工部分を前端面により押圧している前記締結ナットの後端面と残存している厚膜状の樹脂被覆層の端面との間にて、前記締結ナットの前記後端面から少なくとも先端部を前記締結ナットに内挿した状態で熱収縮により密着して前記金属管の外周面を覆うことにある。
【0011】
これによれば、従来から金属管の耐チッピング性を確実に確保するために広く採用されている熱収縮性樹脂チューブは、少なくとも締結ナットの後端面と残存している厚膜状の樹脂被覆層の端面との間にて露出している金属管の外周面を覆うことができる。このため、加工上の要求から厚膜状の樹脂被覆層が剥離された部分(加工代に相当する部分)については、同部分に組み付けられる締結ナットによって金属管の外周面を直接的に外部に露出させることなく覆うことができるとともに、熱収縮性樹脂チューブによって金属管の外周面を露出させることなく覆うことができる。そして、この場合、熱収縮性樹脂チューブは、締結ナットに少なくとも先端部を内挿した状態で金属管の外周面を覆うことができる。これにより、締結ナットと熱収縮性樹脂チューブとの境界については、熱収縮性樹脂チューブの先端部が締結ナットに内挿されることによって、言い換えれば、締結ナットと熱収縮性樹脂チューブとが一部ラップすることによって、締結ナットによって金属管を相手部材に接続した後においても、金属管の外周面を外部に露出させることなく確実に覆うことができる。従って、加工上の要求から厚膜状の樹脂被覆層の剥離された部分が直接的に外部に露出されないように再度被覆することができて、金属管の全長に渡って耐チッピング性を確保することができる。
【0012】
この場合、前記先端部側の外径が前記締結ナットに内挿可能となるように縮径されるとともに基端部側の内径が前記残存している厚膜状の樹脂被覆層を収容可能となるように成形されるとよい。そして、この場合、前記先端部側の外径は、例えば、部分的な加熱を伴う予収縮によって前記締結ナットに内挿可能となるように縮径されるとよい。
【0013】
これによれば、熱収縮性樹脂チューブは、先端部側の外径が、例えば、部分的な加熱を伴う予収縮によって締結ナットに対して容易にかつ確実に内挿できるように予め縮径される一方で、基端部側の内径が残存している厚膜状の樹脂被覆層を収容できるように成形される。そして、この場合においては、加工代に相当する部分において厚膜状の樹脂被覆層が剥離されると、熱収縮性樹脂チューブに続いて締結ナットが剥離された部分に組み付けられ、その後、端末加工によって所定の端末加工形状が形成される。続いて、締結ナットを熱収縮性樹脂チューブとともに形成された所定の端末加工形状に向けて移動させ、移動した熱収縮性樹脂チューブの先端部を締結ナットに内挿するとともに基端部側が残存している厚膜状の樹脂被覆層を収容した状態によって加熱炉内で金属管を加熱すると、熱収縮性樹脂チューブは、そのままの組み付け位置で熱収縮し、金属管の外周面に密着する。
【0014】
これにより、金属管を相手部材に接続するために締結ナットを螺着するときに、締結ナットが金属管に対して相対的に移動しても、熱収縮性樹脂チューブの先端部が締結ナットに内挿された状態を維持することができ、締結ナットと熱収縮性樹脂チューブとを一部ラップさせることによって金属管の全長に渡って金属管の外周面を外部に露出させることがない。従って、加工上の要求から厚膜状の樹脂被覆層が剥離された部分を再度被覆することができて、金属管の全長に渡って耐チッピング性を確保することができる。
【0015】
更に、これらの場合、前記先端部を、前記締結ナットの前記後端面側の内周部分に形成されていて、少なくとも前記先端部の外径よりも大きな内径を有するとともに前記相手部材への螺着作業に必要な前記締結ナットの軸方向変位を許容する深さを有する収容段部に内挿するとよい。
【0016】
これによれば、締結ナットの後端面側の内周部分に熱収縮性樹脂チューブの先端部を収容する収容段部を形成することができる。これにより、熱収縮性樹脂チューブは締結ナットと確実に一部ラップした状態で金属管の外周面を覆うことができ、その結果、金属管の全長に渡って耐チッピング性を確保することができる。又、収容段部を形成することによって、金属管を相手部材に組み付ける螺着作業において、作業に必要な締結ナットの軸方向変位を確実に確保することができるため、作業性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る金属管の構成を示す概略図である。
【図2】図1の金属管において、端末加工前の剥離部分における締結ナット及び熱収縮性樹脂チューブの組み付け状態を説明するための図である。
【図3】締結ナットの構造を説明するための概略的な断面図である。
【図4】熱収縮性樹脂チューブの構造を説明するための概略図である。
【図5】加熱温度と熱収縮率との関係を概略的に示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係り、金属管に対して端末加工を施す際の締結ナット及び熱収縮性樹脂チューブの配置を説明するための概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係り、加熱処理によって熱収縮性樹脂チューブを熱収縮させる際の締結ナット及び熱収縮性樹脂チューブの配置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、一実施形態に係り、本発明の熱収縮性樹脂チューブが適用された金属管10を概略的に示している。
【0019】
金属管10は、特に、自動車のブレーキ配管や、燃料配管、その他の配管を形成するものである。このため、金属管10は、図示を省略するが、予め銅合金のメッキ膜を有して一重又は多重に巻いて造管された溶接或いはろう付け管からなる素管を有しており、この素管の外周面には耐食性を高めるために亜鉛等のメッキ層が形成されるとともにこのメッキ層の外周面にはクロメート層が形成されている。そして、金属管10は、クロメート層の外周面に形成されたエポキシ系樹脂プライマーを介して、図1に示すように、ポリフッ化ビニルまたはポリフッ化ビニリデンからなるフッ素樹脂層11が形成されている。尚、この場合、フッ素樹脂層11に代えて、例えば、ポリアミド系樹脂からなるナイロン樹脂層を形成することも可能である。更に、図1に示すように、金属管10は、その全長に渡って耐チッピング性を向上させるために、フッ素樹脂層11の外周面に、例えば、層厚が0.8mm〜1mm程度のポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂からなる厚膜状の樹脂被覆層12が形成されている。
【0020】
そして、金属管10においては、図1及び図2に示すように、加工上の要求から樹脂被覆層12を剥離した、言い換えれば、外周面であるフッ素樹脂層11が露出した剥離部分13が形成されており、所定の端末加工形状を成形する端末加工前に、この剥離部分13に対して締結ナット14及び熱収縮性樹脂チューブ15が挿入されるようになっている。
【0021】
締結ナット14は、金属管10を相手部材としての継手(図示省略)に対して一体的に(気密或いは液密に)接続するものである。具体的に、締結ナット14としては、金属管10の端末(端部)に対して端末加工(軸圧縮加工)によって形成される所定の端末加工形状によって種々のナットを採用することができ、例えば、ブレーキ配管等に広く採用されるダブルフレア形状が形成される場合には、図3に示すように、このダブルフレア部を継手(図示省略)のシート面に圧接させるために広く用いられているフレアナットを採用することができる。そして、本発明に係る締結ナット14においては、図3に示すように、少なくとも熱収縮性樹脂チューブ15の先端部15aを収容する(内挿を許容する)ための収容段部14aが形成されている。
【0022】
収容段部14aは、後述するように、予め縮径されて成形された熱収縮性樹脂チューブ15の先端部15aの外径に比して大きな内径(具体的には、締結ナット14と内挿した先端部15aとが径方向にて干渉しない大きさの内径)を有している。又、収容段部14aは、熱収縮性樹脂チューブ15の先端部15aを収容する(内挿を許容する)とともに、先端部15aを収容した状態にて更に締結ナット14の軸線方向変位(例えば、締結ナット14の締結作業に必要とされる5mm程度の変位)を許容する深さを有している。
【0023】
熱収縮性樹脂チューブ15は、加熱に伴って、半径方向にて収縮する一方で、軸方向への伸縮を生じにくい特性を有しており、例えば、ポリオレフィン樹脂等から、図4に示すように、先端部15aの外径が基端部側である一般部15bの外径に比して小さい、所謂、口絞り形状に予め成形されている。そして、熱収縮性樹脂チューブ15は、図2に示したように、先端部15a及び一般部15bともに略同一の肉厚を有する中空状に形成されており、先端部15aの内径寸法が組み付けられる金属管10の剥離部分13すなわちフッ素樹脂層11の外径よりも僅かに大きな内径とされ、一般部15bの内径寸法が組み付けられる金属管10の残存している樹脂被覆層12の外径よりも僅かに大きな内径とされている。又、熱収縮性樹脂チューブ15の軸方向長さは、所定の端末加工形状が施された後の剥離部分13にて、締結ナット14を端末加工部分に当接するまで移動させて先端部15aを内挿した状態で一般部15b(基端部側)が樹脂被覆層12を収容できる長さに設定される。
【0024】
ここで、熱収縮性樹脂チューブ15は、図5に概略的に示すように、加熱温度(より具体的には、熱収縮温度)の上昇に伴ってその収縮率が予め設定された収縮率まで上昇する特性を有している。このため、先端部15aの外径(内径)を選択的に収縮させる場合には、例えば、図4に示した先端部15aの形状に対応した形状を有する加熱治具(加熱型)に対して熱収縮性樹脂チューブ15の先端側を接触させながら加熱する。そして、例えば、図5に示したグラフに基づき、一般部15bの外径(内径)から先端部15aの外径(内径)まで収縮するときの収縮率に対応する温度で所定時間だけ維持することによって、熱収縮性樹脂チューブ15の先端部15aのみを予収縮させる。尚、この場合、先端部15a以外の一般部15bが予収縮することを防止するために、先端部15a以外の部分を熱収縮温度以下に冷却することが好ましい。
【0025】
次に、本実施形態において、熱収縮性樹脂チューブ15が金属管10の剥離部分13を被覆する工法を順に説明する。
【0026】
まず、全長に渡り樹脂被覆層12が形成されている金属管10において剥離部分13を形成する。この剥離部分13については、締結ナット14の軸方向長さと、所定の端末加工形状(例えば、ダブルフレア形状)を成形するための成形代と、軸圧縮加工によって端末加工形状を成形するために必要なチャック代とを合計した長さすなわち加工代に基づいて決定される。従って、例えば、金属管10の端末(端部)から少なくとも加工代を確保する程度まで樹脂被覆層12が周知の方法によって剥離されて、フッ素樹脂層11が露出した剥離部分13が形成される。
【0027】
続いて、剥離部分13に対して、図2に示したように、熱収縮性樹脂チューブ15を挿入し、その後、締結ナット14を挿入する。この状態では、締結ナット14及び熱収縮性樹脂チューブ15は、剥離部分13において、金属管10の軸方向に沿って自由に移動可能な状態となっている。
【0028】
このように、剥離部分13に締結ナット14及び熱収縮性樹脂チューブ15を挿入すると、図6に示すように、金属管10を端末加工装置にセットし、所定の端末加工形状を成形する。このとき、図6に示すように、締結ナット14及び熱収縮性樹脂チューブ15をともに金属管10の端末から後退させておく。
【0029】
そして、所定の端末加工形状が成形されると、図7に示すように、剥離部分13にて、締結ナット14及び熱収縮性樹脂チューブ15をともに、締結ナット14が端末加工部分に当接するまで移動(前進)させる。そして、熱収縮性樹脂チューブ15の先端部15aを締結ナット14の収容段部14a内に内挿(進入)させた状態(以下、仮止め状態と称呼する。)で加熱用治具(図示省略)にセットする。このように、仮止め状態によって加熱用治具にセットした後、加熱炉内にて所定温度で所定時間だけ加熱すると、熱収縮性樹脂チューブ15は、仮止め状態における位置にて先端部15a及び一般部15bが半径方向に熱収縮し、図1に示したように、先端部15aを締結ナット14の収容段部14a内に内挿し、かつ、金属管10における剥離部分13(すなわち、フッ素樹脂層11)及び樹脂被覆層12に接着層を介して密着する。ここで、締結ナット14には所定の深さを有する収容段部14aが形成されている。このため、例えば、相手部材としての継手に対して金属管10を接続するために締結ナット14を螺着するときに、熱収縮性樹脂チューブ15が金属管10のフッ素樹脂層11(外周面)に密着している状態であっても、この締結作業に必要となる締結ナット14の軸方向への変位を確保することができ、同作業の作業性を損なうことがない。
【0030】
以上の説明からも理解できるように、この実施形態によれば、熱収縮性樹脂チューブ15は、少なくとも締結ナット14の後端面と残存している樹脂被覆層12の端面との間にて露出する金属管10のフッ素樹脂層11すなわち外周面を覆うことができる。このため、加工上の要求から存在する剥離部分13(加工代に相当する部分)については、同部分に組み付けられる締結ナット14によって金属管10のフッ素樹脂層11を直接的に外部に露出させることなく覆うことができるとともに、熱収縮性樹脂チューブ15によって金属管10のフッ素樹脂層11を露出させることなく覆うことができる。そして、この場合、熱収縮性樹脂チューブ15は、締結ナット14に少なくとも先端部15aを内挿した状態で金属管10のフッ素樹脂層11を覆うことができる。これにより、締結ナット14と熱収縮性樹脂チューブ15との境界については、先端部15aが締結ナット14に内挿されることによって、言い換えれば、締結ナット14と熱収縮性樹脂チューブ15とが一部ラップする。これにより、締結ナット14によって金属管10を相手部材に接続した後においても、すなわち、締結ナット14が金属管10のフッ素樹脂層11(外周面)に密着している熱収縮性樹脂チューブ15に対して相対的に移動しても、金属管10のフッ素樹脂層11を外部に露出させることなく確実に覆うことができる。従って、加工上の要求から生じる剥離部分13を確実に再度被覆することができて、金属管10の全長に渡って耐チッピング性を確保することができる。
【0031】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態においては、締結ナット14を用いて相手部材としての継手に接続する場合を説明した。この場合、端末加工前に金属管10の剥離部分13に組み付けられる他の結合部材を用いて実施可能であることは言うまでもない。この場合においても、上記各実施形態及び変形例と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0033】
10…金属管、11…フッ素樹脂層、12…(厚膜状の)樹脂被覆層、13…剥離部分、14…締結ナット、14a…収容段部、15…熱収縮性樹脂チューブ、15a…先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面上にて全長に渡り耐チッピング性を有する厚膜状の樹脂被覆層が形成された金属管であって、少なくとも所定の端末加工形状を形成する端末加工に必要な加工代に相当する部分における前記樹脂被覆層が剥離され、この剥離された部分に前記金属管を相手部材に螺着するための締結ナットを前記金属管の軸線方向にて変位可能に組み付けた状態で前記端末加工によって前記所定の端末加工形状が形成される金属管に適用されて、加熱に伴って半径方向に収縮して前記金属管の外周面に密着する熱収縮性樹脂チューブおいて、
螺着に伴って前記相手部材に向けて前記端末加工による端末加工部分を前端面により押圧している前記締結ナットの後端面と残存している厚膜状の樹脂被覆層の端面との間にて、
前記締結ナットの前記後端面から少なくとも先端部を前記締結ナットに内挿した状態で熱収縮により密着して前記金属管の外周面を覆うことを特徴とする熱収縮性樹脂チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載した熱収縮性樹脂チューブにおいて、
前記先端部側の外径が前記締結ナットに内挿可能となるように縮径されるとともに基端部側の内径が前記残存している厚膜状の樹脂被覆層を収容可能となるように成形されることを特徴とする熱収縮性樹脂チューブ。
【請求項3】
請求項2に記載した熱収縮性樹脂チューブにおいて、
前記先端部側の外径は、
部分的な加熱を伴う予収縮によって前記締結ナットに内挿可能となるように縮径されることを特徴とする熱収縮性樹脂チューブ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載した熱収縮性樹脂チューブにおいて、
前記先端部を、
前記締結ナットの前記後端面側の内周部分に形成されていて、少なくとも前記先端部の外径よりも大きな内径を有するとともに前記相手部材への螺着作業に必要な前記締結ナットの軸方向変位を許容する深さを有する収容段部に内挿することを特徴とする熱収縮性樹脂チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104481(P2013−104481A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248389(P2011−248389)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000113942)マルヤス工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】