説明

熱可塑性エラストマーを用いた吸着パッド

【課題】リサイクル可能な吸着パッドであって、吸着性に優れ、かつ、被吸着物の変形を生じさせない吸着パッドの提供。
【解決手段】筒状の基部と、前記基部の一端に連結するスカート状の吸着部とを具備する吸着パッドであって、前記吸着部が、熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物からなり、前記熱可塑性エラストマーが、側鎖に、カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、共有結合性架橋部位および/または含窒素複素環とを含有する、吸着パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーを用いた吸着パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等で被吸着物を搬送するため等に、真空発生源に連結された吸着パッドが用いられている。吸着パッドの被吸着物と接触する部分(以下「吸着部」という。)の材質としては、通常、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが用いられている。
近年、吸着パッドをリサイクル可能にすること等を目的として、吸着部に熱可塑性エラストマーを用いることが検討されている。例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いた吸着パッドが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の熱可塑性エラストマーを用いた吸着パッドは、吸着性に劣り、また、被吸着物の変形を生じさせることがあった。
そこで、本発明は、リサイクル可能な吸着パッドであって、吸着性に優れ、かつ、被吸着物の変形を生じさせない吸着パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、鋭意研究の結果、特定の熱可塑性エラストマーを用いることにより、リサイクル性に優れ、吸着性に優れ、かつ、被吸着物の変形を生じさせない吸着パッドが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(8)を提供する。
(1)筒状の基部と、前記基部の一端に連結するスカート状の吸着部とを具備する吸着パッドであって、
前記吸着部が、熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物からなり、
前記熱可塑性エラストマーが、側鎖に、カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、共有結合性架橋部位および/または含窒素複素環とを含有する、吸着パッド。
(2)前記熱可塑性エラストマー組成物が、更に、重量平均分子量10万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、可塑剤とを含有する、上記(1)に記載の吸着パッド。
(3)前記熱可塑性エラストマー組成物が、更に、ポリプロピレンブロックとエチレンプロピレンブロックとを有するエチレンプロピレン共重合体を含有する、上記(1)または(2)に記載の吸着パッド。
(4)前記熱可塑性エラストマーが、前記共有結合性架橋部位において、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一つの結合により架橋することができる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の吸着パッド。
(5)前記水素結合性架橋部位を含有する側鎖が、下記式(1)で表される構造を含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の吸着パッド。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)
(6)前記水素結合性架橋部位を含有する側鎖が、α位またはβ位で主鎖に結合する下記式(2)または(3)で表される構造を含有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸着パッド。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)
(7)前記共有結合性架橋部位が、下記式(4A)で表される構造を含有する、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の吸着パッド。
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Rは単結合、酸素原子もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)
(8)前記共有結合性架橋部位が、α位またはβ位で主鎖に結合する下記式(7A)で表される構造を含有する、上記(7)に記載の吸着パッド。
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、Rは単結合、酸素原子もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸着パッドは、リサイクル性に優れ、吸着性に優れ、かつ、被吸着物の変形を生じさせない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の吸着パッドは、筒状の基部と、前記基部の一端に連結するスカート状の吸着部とを具備する吸着パッドであって、
前記吸着部が、熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物からなり、
前記熱可塑性エラストマーが、側鎖に、カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、共有結合性架橋部位および/または含窒素複素環とを含有する、吸着パッドである。
【0016】
図1は、本発明の吸着パッドの一例を示す模式図である。図1(A)は斜視図であり、図1(B)は正面図であり、図1(C)は図1(A)中のIC−IC線に沿った端面図である。
図1に示される吸着パッド10は、筒状の基部12と、基部12の一端に連結するスカート状の吸着部14とを具備する。
基部12は、筒状であり、その一端に吸着部14が連結され、他端に開口を有している。基部12は、使用時には、この開口で真空発生源に連結される。
吸着部14は、スカート状であり、基部12の一端に連結している。吸着部14の開口端(基端12に連結されていない方の端部)は、使用時には、被吸着物と密着する。
【0017】
図1においては、基部12が円筒状であり、吸着部14が蛇腹状になっているが、本発明の吸着パッドは図1の形状に限定されず、例えば、従来公知の種々の形状とすることができ、また、基部および吸着部以外の種々の部材を具備していてもよい。
なお、図1中の寸法は、後述する実施例で用いた吸着パッドの寸法であり、本発明の吸着パッドの寸法を限定するものではない。
【0018】
本発明においては、吸着部が、特定の熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる。以下、熱可塑性エラストマー組成物について、詳細に説明する。
【0019】
熱可塑性エラストマー組成物に用いられる熱可塑性エラストマーは、側鎖に、カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、共有結合性架橋部位および/または含窒素複素環とを含有する。
熱可塑性エラストマー組成物が優れたリサイクル性を保持し、かつ、機械的強度に優れる理由は、明らかではないが、熱可塑性エラストマーが、側鎖に、カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、共有結合性架橋部位および/または含窒素複素環とを含有することで、カルボニル含有基による水素結合(相互作用)以外に、共有結合性架橋部位における共有結合および/または含窒素複素環による水素結合も形成しているためであると考えられる。
【0020】
カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位は、エラストマー性ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、化学的に安定な結合(即ち、共有結合)で導入されている。また、共有結合性架橋部位 および/または含窒素複素環は、エラストマー性ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、化学的に安定な結合(即ち、共有結合)で導入されている。
【0021】
熱可塑性エラストマーの主鎖は、エラストマー性ポリマーである。エラストマー性ポリマーは、常温でゴム状弾性を示すポリマー(即ち、エラストマー)であれば特に限定されないが、そのガラス転移点が25℃以下であるのが好ましい。エラストマー性ポリマーとしては、例えば、従来公知の天然高分子および合成高分子を用いることができる。
具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴム等のオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴムが挙げられる。
【0022】
また、上記エラストマー性ポリマーは、樹脂成分を含むエラストマー性ポリマーであってもよく、その具体例としては、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマーが挙げられる。
【0023】
更に、エラストマー性ポリマーは、液状または固体状であってもよく、その分子量は特に限定されないが、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムでは、重量平均分子量が100,000〜1,500,000であるのが好ましく、300,000〜1,000,000であるのがより好ましい。
本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography(GPC))により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いるのが好ましい。
【0024】
本発明においては、上記エラストマー性ポリマーを2種以上混合して用いることができる。この場合の各エラストマー性ポリマー同士の混合比は、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の比率とすることができる。
また、上記エラストマー性ポリマーのガラス転移点は、上述したように25℃以下であるのが好ましく、エラストマー性ポリマーが2以上のガラス転移点を有する場合または2種以上のエラストマー性ポリマーを混合して用いる場合は、ガラス転移点の少なくとも一つが25℃以下であるのが好ましい。上記エラストマー性ポリマーのガラス転移点がこの範囲であると、熱可塑性エラストマー組成物からなる吸着部が室温でゴム状弾性を示すため好ましい。
本発明において、ガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。ガラス転移点の測定においては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
【0025】
このようなエラストマー性ポリマーは、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)等のオレフィン系ゴムであるのが、ガラス転移点が25℃以下であり、得られる熱可塑性エラストマー組成物からなる吸着部が室温でゴム状弾性を示すため好ましい。また、オレフィン系ゴムを用いると、得られる熱可塑性エラストマー組成物が架橋した時の引張強度が向上し、二重結合が存在しないため組成物の劣化が抑制される。
【0026】
本発明においては、上記スチレン−ブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量、水添エラストマー性ポリマー等の水添率等は、特に限定されず、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の範囲に調整することができる。
また、上記エラストマー性ポリマーの主鎖として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)を用いる場合、そのエチレン含有量は、好ましくは10〜90モル%であり、より好ましくは40〜90モル%である。エチレン含有量がこの範囲であると、熱可塑性エラストマー(組成物)としたときの耐圧縮永久歪み、機械的強度、特に引張強度に優れるため好ましい。
【0027】
熱可塑性エラストマーは、上述したエラストマー性ポリマーの側鎖に、カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、共有結合性架橋部位および/または含窒素複素環とを含有する。
水素結合性架橋部位は、カルボニル含有基を有するものであれば特に限定されないが、更に、含窒素複素環を有するのが好ましい態様の一つである。
カルボニル含有基は、カルボニル基を含むものであれば特に限定されず、その具体例としては、アミド、エステル、イミド、カルボキシ基、カルボニル基が挙げられる。このような基を導入しうる化合物は特に限定されず、その具体例としては、ケトン、カルボン酸およびその誘導体が挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の炭化水素基を有する有機酸が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族、脂環族および芳香族のいずれであってもよい。また、カルボン酸誘導体としては、例えば、カルボン酸無水物、チオカルボン酸(メルカプト基含有カルボン酸)、エステル、ケトン、アミノ酸、アミド類、イミド類、ジカルボン酸およびそのモノエステルが挙げられる。
【0028】
カルボン酸およびその誘導体等としては、具体的には、例えば、マロン酸、マレイン酸、スクシン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−フェニレンジ酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、メルカプト酢酸等のカルボン酸および置換基を含有するこれらのカルボン酸;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等のカルボン酸無水物;マレイン酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、酢酸エチル等の脂肪族エステル;フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、エチル−m−アミノベンゾエート、メチル−p−ヒドロキシベンゾエート等の芳香族エステル;キノン、アントラキノン、ナフトキノン等のケトン;グリシン、チロシン、ビシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、プロリン、N−(p−アミノベンゾイル)−β−アラニン等のアミノ酸;マレインアミド、マレインアミド酸(マレインモノアミド)、コハク酸モノアミド、5−ヒドロキシバレルアミド、N−アセチルエタノールアミン、N,N′−ヘキサメチレンビス(アセトアミド)、マロンアミド、シクロセリン、4−アセトアミドフェノール、p−アセトアミド安息香酸等のアミド類;マレインイミド、スクシンイミド等のイミド類が挙げられる。
中でも、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等の環状酸無水物であるのが好ましく、無水マレイン酸であるのがより好ましい。
【0029】
含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば特に限定されない。複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、硫黄原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。本発明に用いられる熱可塑性エラストマーは、複素環構造を有するため、架橋を形成する水素結合が強くなり、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張強度に優れる。
また、含窒素複素環は置換基を有していてもよく、置換基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
更に、上記含窒素複素環は、芳香族性を有していても有していなくてもよいが、芳香族性を有していると得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張強度がより高くなり、機械的強度がより向上するため好ましい。
【0030】
含窒素複素環は、5員環または6員環であるのが好ましい。
このような含窒素複素環としては、具体的には、例えば、ピロロリン、ピロリドン、オキシインドール(2−オキシインドール)、インドキシル(3−オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、インドリル、フタルイミジン、β−イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、含窒素5員環については、下記の化合物、下記式(10)で表されるトリアゾール誘導体および下記式(11)で表されるイミダゾール誘導体が好ましく例示される。また、これらは上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子を付加され、または脱離されたものであってもよい。
【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
式中、置換基X、YおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基またはアミノ基を表す。なお、上記式(10)中、XおよびYの少なくとも一つは水素原子ではなく、上記式(11)中、X、YおよびZの少なくとも一つは水素原子ではない。
このような置換基X、Y、Zとしては、水素原子、アミノ基以外に、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基(o−、m−またはp−)、ジメチルフェニル基、メシチル基等のアリール基が挙げられる。
これらのうち、アルキル基、特に、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、2−エチルヘキシル基であるのが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性が良好となるため好ましい。
【0034】
また、含窒素6員環については、下記の化合物が好ましく例示される。これらについても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子を付加され、または脱離されたものであってもよい。
【0035】
【化7】

【0036】
また、上記含窒素複素環とベンゼン環または上記含窒素複素環同士が縮合したものも用いることができ、具体的には、下記の縮合環が好適に例示される。これらの縮合環についても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子を付加され、または脱離されたものであってもよい。
【0037】
【化8】

【0038】
このような含窒素複素環のうち、トリアゾール環、ピリジン環、チアジアゾール環、イミダゾール環およびヒダントイン環であるのが、得られる熱可塑性エラストマー組成物のリサイクル性、耐圧縮永久歪み、硬度および機械的強度、特に引張強度に優れるため好ましい。
【0039】
水素結合性架橋部位が含窒素複素環を有する場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環が、互いに独立の側鎖により主鎖に導入されていてもよいが、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環が一つの側鎖により主鎖に導入されているのが好ましく、下記式(1)で表される一つの側鎖により主鎖に導入されているのがより好ましい。
【0040】
【化9】

【0041】
式中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。
【0042】
ここで、含窒素複素環Aは、具体的には、上記で例示した含窒素複素環が挙げられる。
また、置換基Bとしては、具体的には、例えば、単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子または後述する有機基が挙げられる。
アミノ基NR′の炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、異性体を含む、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
有機基としては、例えば、これらの原子または基を含んでいてもよい、炭素数1〜20のアルキレン基もしくはアラルキレン基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基(アルキレンオキシ基、例えば、−O−CH2CH2−基)、アルキレンアミノ基(例えば、−NH−CH2CH2−基)、アルキレンチオエーテル基(アルキレンチオ基、例えば、−S−CH2CH2−基)、アラルキレンエーテル基(アラルキレンオキシ基)、アラルキレンアミノ基またはアラルキレンチオエーテル基が挙げられる。
【0043】
上記置換基Bの酸素原子、硫黄原子およびアミノ基NR′ならびにこれらの原子または基を末端に有する有機基中の酸素原子、アミノ基NR′および硫黄原子は、隣接するカルボニル基と組み合わされ、共役系のエステル基、アミド基、イミド基、チオエステル基等を形成するのが好ましい。
これらのうち、置換基Bは、共役系を形成する、酸素原子、硫黄原子またはアミノ基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基またはアルキレンチオエーテル基であるのが好ましく、アミノ基(NH)、アルキレンアミノ基(−NH−CH2−基、−NH−CH2CH2−基、−NH−CH2CH2CH2−基)、アルキレンエーテル基(−O−CH2−基、−O−CH2CH2−基、−O−CH2CH2CH2−基)であるのがより好ましい。
【0044】
上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環は、下記式(2)または(3)で表される一つの側鎖として、そのα位またはβ位で上記ポリマー主鎖に導入されているのがより好ましい。
【0045】
【化10】

【0046】
式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。
【0047】
ここで、含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様であり、置換基BおよびDはそれぞれ独立に、上記式(1)の置換基Bと基本的に同様である。
ただし、上記式(3)における置換基Dは、上記式(1)の置換基Bで例示したもののうち、単結合;酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基の共役系を形成するものであるのが好ましく、単結合であるのがより好ましい。即ち、上記式(3)のイミド窒素と共に、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキレンアミノ基またはアラルキレンアミノ基を形成するのが好ましく、上記式(3)のイミド窒素に含窒素複素環が直接結合しているのがより好ましい。具体的には、上記置換基Dとしては、単結合;上記した酸素原子、硫黄原子またはアミノ基を末端に含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキレンエーテルまたはアラルキレンエーテル基等;異性体を含む、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、フェニレン基、キシリレン基等が挙げられる。
【0048】
上記熱可塑性エラストマーが有する上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環との割合は特に限定されず、2:1(上記式(3)のイミド構造等の場合は1:1)であると相補的な相互作用を形成しやすくなり、また、容易に製造することができるため好ましい。
【0049】
このような水素結合性架橋部位を含有する側鎖は、主鎖部分100モル%に対して、0.1〜50モル%の割合(導入率)で導入されているのが好ましく、0.3〜30モル%の割合で導入されているのがより好ましい。
0.1モル%未満では架橋時の引張強度が十分でない場合があり、50モル%を超えると架橋密度が高くなりゴム弾性が失われる場合がある。即ち、導入率が上記した範囲内であると、上記熱可塑性エラストマーの側鎖同士の相互作用によって、分子間で効率良く架橋が形成されるため、架橋時の引張強度が高く、リサイクル性に優れるため好ましい。
上記導入率は、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環が独立に導入されている場合には、カルボニル含有基と含窒素複素環との割合に従って、両基を一組として考えればよく、いずれかの基が過剰の場合は、多い方の基を基準として考えればよい。
また、上記導入率は、例えば、主鎖部分がエチレン−プロピレンゴム(EPM)である場合には、エチレンおよびプロピレンモノマー単位100ユニットあたり、側鎖部分の導入されたモノマーが、0.1〜50ユニット程度である。
【0050】
共有結合性架橋部位は、「共有結合を生成する化合物」と、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも一つの結合を生起しうる官能基とが反応して架橋した部位である。
本発明において、「共有結合を生成する化合物」としては、例えば、1分子中にアミノ基および/またはイミノ基を2個以上(アミノ基およびイミノ基をともに有する場合はこれらの基を合計して2個以上)有するポリアミン化合物;1分子中にヒドロキシ基を2個以上有するポリオール化合物;1分子中にイソシアネート(NCO)基を2個以上有するポリイソシアネート化合物;1分子中にチオール基(メルカプト基)を2個以上有するポリチオール化合物が挙げられる。
【0051】
ポリアミン化合物としては、例えば、以下に示す脂環族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、含窒素複素環アミンが挙げられる。
【0052】
脂環族アミンとしては、具体的には、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、ジ−(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0053】
脂肪族ポリアミンとしては、具体的には、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、N,N′−ジメチルエチレンジアミン、N,N′−ジエチルエチレンジアミン、N,N′−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N′−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N′−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N′,N″−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミンが挙げられる。
【0054】
芳香族ポリアミンおよび含窒素複素環アミンとしては、具体的には、例えば、ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、テトラメチルキシリレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0055】
上記ポリアミン化合物は、その水素原子の一つ以上を、アルキル基、アルキレン基、アラルキレン基、オキシ基、アシル基、ハロゲン原子等で置換してもよく、また、その骨格に、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0056】
ポリアミン化合物は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
【0057】
上記で例示したポリアミン化合物のうち、ヘキサメチレンジアミン、N,N′−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が、耐圧縮永久歪み、機械的強度、特に引張強度の改善効果が高く好ましい。
【0058】
ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格等は特に限定されず、例えば、以下に示すポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオールおよびこれらの混合ポリオールが挙げられる。
【0059】
ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0060】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトン等の開環重合体等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0061】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)等の低分子ポリオール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0062】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナート(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネート等のジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と上記で例示したポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0063】
ポリチオール化合物は、チオール基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格等は特に限定されず、その具体例としては、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4′−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(チオコールまたはチオール変性高分子(樹脂、ゴム等))が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0064】
このような「共有結合を生成する化合物」と反応することで、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも一つの結合を生起しうる官能基としては、環状酸無水物基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
【0065】
上述した「共有結合を生成する化合物」と、上述したアミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも一つの結合を生起しうる官能基とが反応して架橋して、共有結合性架橋部位が形成される。
熱可塑性エラストマーにおいては、この共有結合性架橋部位を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも一つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2〜20個有しているのがより好ましく、2〜10個有しているのが更に好ましい。
本発明においては、この共有結合性架橋部位が、第三級アミノ基(−N=)を含有しているのが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐圧縮永久歪みおよび機械的強度(特に、破断伸び、破断強度)がより改善される理由から好ましい。これは、第三級アミノ基が、カルボニル含有基および含窒素複素環と水素結合により相互作用することで、架橋密度をより向上させることによるものと考えられる。したがって、「共有結合を生成する化合物」としては、上記で例示したもののうち、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)であるのが好ましい。
【0066】
また、本発明においては、上記共有結合性架橋部位が、下記式(4)〜(6)のいずれかで表される構造を少なくとも一つ含有しているのが好ましく、式中のGが第三級アミノ基を含有しているのがより好ましい。
【0067】
【化11】

【0068】
式中、E、J、KおよびLはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基であり、Gは酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、分岐していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0069】
ここで、置換基E、J、KおよびLは、それぞれ独立に、上記式(1)の置換基Bと基本的に同様である。
また、置換基Gとしては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、1,11−ウンデシレン基、1,12−ドデシレン基等のアルキレン基;N,N−ジエチルドデシルアミン−2,2′−ジイル、N,N−ジプロピルドデシルアミン−2,2′−ジイル、N,N−ジエチルオクチルアミン−2,2′−ジイル、N,N−ジプロピルオクチルアミン−2,2′−ジイル、N,N−ジエチルステアリルアミン−2,2′−ジイル、N,N−ジプロピルステアリルアミン−2,2′−ジイル、;ビニレン基;1,4−シクロへキシレン基等の2価の脂環式炭化水素基;1,4−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,3−フェニレンビス(メチレン)基等の2価の芳香族炭化水素基;プロパン−1,2,3−トリイル、ブタン−1,3,4−トリイル、トリメチルアミン−1,1′,1″−トリイル、トリエチルアミン−2,2′,2″−トリイル等の3価の炭化水素基;下記式(12)および(13)で表される4価の炭化水素基;およびこれらを組み合わせて形成される置換基が挙げられる。
【0070】
【化12】

【0071】
中でも、上記式(4A)で表される構造を含有するのが好ましい態様の一つである。上記式(4A)中、Rは単結合、酸素原子もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。
【0072】
更に、本発明においては、上記共有結合性架橋部位が、上述した上記エラストマー性ポリマーの主鎖にα位またはβ位で結合する下記式(7)〜(9)のいずれかで表される構造を少なくとも一つ含有するのが好ましく、式中のGが第三級アミノ基を含有しているのがより好ましい。下記式(7)〜(9)のいずれかで表される構造としては、具体的には、下記式(14)〜(25)で表される化合物が好適に例示される。
【0073】
【化13】

【0074】
ここで、置換基E、J、KおよびLは、それぞれ独立に、上記式(4)〜(6)の置換基E、J、KおよびLと基本的に同様であり、置換基Gは、上記式(4)の置換基Gと基本的に同様である。
【0075】
【化14】


(式中、lは、1以上の整数を表す。)
【0076】
【化15】

【0077】
【化16】


(式中、l、mおよびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)
【0078】
【化17】

【0079】
また、上述した上記エラストマー性ポリマーの主鎖にα位またはβ位で結合する上記式(7A)で表される構造を含有するのが好ましい態様の一つである。上記式(7A)中、Rは単結合、酸素原子もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。
【0080】
本発明においては、上記共有結合性架橋部位が、環状酸無水物基と、ヒドロキシ基、または、アミノ基および/またはイミノ基との反応により形成されたものであるのが好ましい。
【0081】
熱可塑性エラストマーは、側鎖に、上述したカルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、上述した共有結合性架橋部位とを含有する。共有結合性架橋部位と、水素結合性架橋部位とは、同じ側鎖に含有されていてもよく、異なる側鎖に含有されていてもよい。
【0082】
熱可塑性エラストマーは、そのガラス転移点が25℃以下であるのが好ましい。熱可塑性エラストマーが2以上のガラス転移点を有する場合または2種以上の熱可塑性エラストマーを併用する場合は、ガラス転移点の少なくとも一つが25℃以下であるのが好ましい。ガラス転移点が25℃以下であると、吸着部が室温でゴム状弾性を示す。
【0083】
熱可塑性エラストマーを得るための製造方法は特に限定されず、通常の方法を選択することができ、具体的には、環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーに、含窒素複素環を導入しうる化合物を反応させる反応工程(以下「反応工程A」という。)を行った後、共有結合を生成する化合物を反応させる反応工程(以下「反応工程B」という。)を行う方法、環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーに、共有結合を生成する化合物を反応させる反応工程(以下「反応工程C」という。)を行った後、含窒素複素環を導入しうる化合物を反応させる反応工程(以下「反応工程D」という。)を行う方法が好適に例示される。
【0084】
上記反応工程Aは、含窒素複素環を導入しうる化合物と、環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーとを混合させ、含窒素複素環を導入しうる化合物と環状酸無水物基とが化学結合しうる温度(例えば、80〜200℃)で反応させ、環状酸無水物基を開環させる工程である。この反応により、得られる熱可塑性エラストマーの側鎖が上記式(2)または(3)で表される構造を含有することになる。
また、上記反応工程Aにおいて、含窒素複素環を導入しうる化合物は、環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーの環状酸無水物基の一部と反応させるのが、未反応の環状酸無水物基が共有結合性架橋部位となる観点から好ましい。一部とは、環状酸無水物基100モル%に対して1モル%以上であるのが好ましく、30モル%以上であるのがより好ましく、50モル%以上であるのが更に好ましい。この範囲であると、含窒素複素環を導入した効果が発現し、リサイクル性がより高まる。
【0085】
ここで、「環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマー」とは、主鎖を形成する原子に環状酸無水物基が化学的に安定な結合(即ち、共有結合)で導入されているエラストマー性ポリマーのことをいい、上記エラストマー性ポリマーと環状酸無水物基を導入しうる化合物とを反応させることにより得られるものである。
環状酸無水物基を導入しうる化合物としては、具体的には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物が挙げられる。
【0086】
環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーは、通常行われる方法、例えば、上記エラストマー性ポリマーに、通常行われる条件、例えば、加熱下でのかくはん等により環状酸無水物をグラフト重合させる方法で製造してもよく、また市販品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、LIR−403(クラレ社製)、LIR−410A(クラレ社試作品)等の無水マレイン酸変性イソプレンゴム;LIR−410(クラレ社製)等の変性イソプレンゴム;クライナック110、221、231(ポリサー社製)等のカルボキシ変性ニトリルゴム;CPIB(日石化学社製)、HRPIB(日石化学社ラボ試作品)等のカルボキシ変性ポリブテン;ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、ユカロン(三菱化学社製)、タフマーM(例えば、MA8510(三井化学社製))等の無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム;タフマーM(例えば、MH7020(三井化学社製))等の無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴム;アドテックスシリーズ(無水マレイン酸変性EVA、無水マレイン酸変性EMA(日本ポリオレフィン社製))、HPRシリーズ(無水マレイン酸変性EEA、無水マレイン酸変性EVA(三井・ジュポンポリオレフィン社製))、ボンドファストシリーズ(無水マレイン酸変性EMA(住友化学社製))、デュミランシリーズ(無水マレイン酸変性EVOH(武田薬品工業社製))、ボンダイン(エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸三元共重合体(アトフィナ社製))、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1943(旭化成社製))、クレイトン(無水マレイン酸変性SEBS、FG1901X(クレイトンポリマー社製))、タフプレン(無水マレイン酸変性SBS、912(旭化成社製))、セプトン(無水マレイン酸変性SEPS(クラレ社製))、レクスパール(無水マレイン酸変性EVA、ET−182G、224M、234M(日本ポリオレフィン社製))、アウローレン(無水マレイン酸変性EVA、200S、250S(日本製紙ケミカル社製))等の無水マレイン酸変性ポリエチレン;アドマー(例えば、QB550、LF128(三井化学社製))等の無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0087】
含窒素複素環を導入しうる化合物としては、上記で例示した含窒素複素環そのものであってもよく、無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基)を有する含窒素複素環であってもよい。
【0088】
上記反応工程Bは、上記反応工程Aで得られた反応物と、共有結合を生成する化合物とを混合し、熱可塑性エラストマーにおける共有結合性架橋部位と化合物が共有結合しうる温度(例えば、80〜200℃)で反応させる工程である。この反応により、上記式(7)〜(9)で表される架橋が形成される。
上記反応工程Bにおいては、共有結合を生成する化合物は、共有結合による架橋が適当な個数(例えば、1分子中に1〜3個)となるように、反応工程Aで得られた反応物における共有結合性架橋部位と反応させればよい。
【0089】
上記反応工程Cは、共有結合を生成する化合物と、環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーとを混合し、共有結合を生成する化合物と環状酸無水物基とが共有結合しうる温度(例えば、80〜200℃)で反応させ、環状酸無水物基を開環させる工程である。この反応により、上記式(7)〜(9)で表される構造が形成される。
上記反応工程Cにおいては、共有結合を生成する化合物は、共有結合による架橋が適当な個数(例えば、1分子中に1〜3個)となるように、環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーにおける環状酸無水物基と反応させればよい。
【0090】
上記反応工程Dは、上記反応工程Cで得られたエラストマー性ポリマーと、含窒素複素環を導入しうる化合物とを混合し、エラストマー性ポリマーに残存する環状酸無水物基と化合物とが化学結合しうる温度(例えば、80〜200℃)で反応させ、環状酸無水物基を開環させる工程である。この反応により、上記式(2)または(3)で表される構造が形成される。
上記反応工程Dにおいて、含窒素複素環を導入しうる化合物は、上記反応工程Cで得られたエラストマー性ポリマーに残存する環状酸無水物基の一部または全部と反応させるのが、未反応の環状酸無水物基が共有結合性架橋部位となる観点から好ましい。一部とは、環状酸無水物基100モル%に対して1モル%以上が好ましく、50モル%以上であるのがより好ましく、80モル%以上であるのが更に好ましい。この範囲であると、含窒素複素環を導入した効果が発現し、架橋時の引張強度がより高まる。
【0091】
上記の製造方法においては、熱可塑性エラストマーの側鎖の各基(構造)、即ち、未反応の環状酸無水物基、上記式(2)、(3)および(7)〜(9)で表される構造は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
【0092】
熱可塑性エラストマーにおける上記含窒素複素環の結合位置について説明する。なお、含窒素複素環を便宜上「含窒素n員環化合物(n≧3)」とする。
以下に説明する結合位置(「1〜n位」)は、IUPAC命名法に基づくものである。例えば、非共有電子対を有する窒素原子を3個有する化合物の場合、IUPAC命名法に基づく順位によって結合位置を決定する。具体的には、上記で例示した5員環、6員環および縮合環の含窒素複素環に結合位置を記した。
熱可塑性エラストマーでは、直接または有機基を介して共重合体と結合する含窒素n員環化合物の結合位置は特に限定されず、いずれの結合位置(1位〜n位)でもよい。好ましくは、その1位または3位〜n位である。
【0093】
含窒素n員環化合物に含まれる窒素原子が1個(例えば、ピリジン環)の場合は、分子内でキレートが形成されやすく組成物としたときの引張強度等の物性に優れるため、3位〜(n−1)位が好ましい。
含窒素n員環化合物の結合位置を選択することにより、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性エラストマー同士の分子間で、水素結合、イオン結合、配位結合等による架橋が形成されやすく、リサイクル性に優れ、機械的特性、特に引張強度に優れる。
【0094】
熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマーを1種以上含有する。2種以上含有する場合の混合比は、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて、任意の比率とすることができる。
【0095】
本発明においては、熱可塑性エラストマー組成物が、更に、重量平均分子量10万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、可塑剤とを含有するのが好ましい態様の一つである。
この態様においては、リサイクル性が良好であり、機械的強度、耐圧縮永久歪み等の物性に優れる。これは、スチレン系熱可塑性エラストマーが非相溶であり、流動性が低く、独立した相を形成し、また、スチレン系熱可塑性エラストマーがオイルとの親和性が高いため、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびオイルがスチレン系熱可塑性エラストマーがオイルを吸った状態で、熱可塑性エラストマーの架橋構造中に取り込まれることになるためであると考えられる。
なお、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のポリオレフィン系樹脂を用いた場合であっても同様の理由から耐圧縮永久歪が改善されることになるが、本発明においては、上記熱可塑性エラストマーを用いているため、これらの樹脂を用いた場合と比較して、耐圧縮永久歪みの改善度合いが向上し、機械的強度にも優れることになる。
特に、熱可塑性エラストマーとして、第二級アミノ基とカルボニル含有基とを含有する側鎖を有する熱可塑性エラストマーを用いることが、架橋時の引張強度が高くなり、耐圧縮永久歪みがより改善される理由から好ましく、第二級アミノ基と含窒素複素環とカルボニル含有基とを含有する側鎖を有する熱可塑性エラストマーを用いることが、架橋時の引張強度が高くなり、耐圧縮永久歪がより改善される特性を保持しつつ、引張強度等の機械的強度が更に向上する理由からより好ましい。
【0096】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物および共役ジエンからブロック共重合体として得られるスチレン系熱可塑性エラストマーであって、末端に、架橋点に相当する芳香族ビニルによるブロック重合部を有し、重量平均分子量が10万以上のものであれば特に限定されない。
上記芳香族ビニル化合物としては、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
また、上記共役ジエンとしては、具体的には、例えば、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0097】
本発明においては、上記スチレン系熱可塑性エラストマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、上記芳香族ビニル化合物を重合させて得られる重合体(ブロック(A))と、上記共役ジエンを重合させて得られる重合体(ブロック(B))との共重合(ブロック共重合)により得る方法が好適に例示される。
ここで、上記ブロック(A)の数平均分子量は、3,000〜50,000の範囲であるのが好ましい。分子量がこの範囲であると、得られるスチレン系熱可塑性エラストマーの機械的強度が良好となり、熱可塑性エラストマー組成物を得る際の耐圧縮永久歪が良好となる。
また、上記ブロック(B)の数平均分子量は、10,000〜200,000の範囲であるのが好ましい。分子量がこの範囲であると、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物を得る際の混合溶融時の粘度が良好となる。
更に、ブロック共重合体として得られるスチレン系熱可塑性エラストマーは、1個以上のブロック(A)と1個以上のブロック(B)を有するものであり、そのブロック形態は、A−(B−A)nまたは(A−B)mで示すことができる。このうち、A−B−Aの形態であるのが流動性や機械的物性が良好になる理由から好ましく、A−BとA−B−Aとを併用する形態であってもよい。
【0098】
また、本発明においては、上記スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン含有率が10〜60質量%であるのが好ましく、30〜50質量%であるのがより好ましい。スチレン含有率がこの範囲であると、熱可塑性エラストマー組成物を得る際の混合溶融時の粘度が良好となり、熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度および耐圧縮永久歪がより向上する。
【0099】
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、例えば、スチレン−イソプレンブロック共重合体水添物(SEPS:スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体)、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(以下「SEEPS」という。)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(以下「SEBS」という。)等が挙げられる。
本発明においては、このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとして、セプトン2006(SEPS、クラレ社製)、セプトン4055およびセプトン4077(SEEPS、クラレ社製)等の市販品を用いることができる。
【0100】
熱可塑性エラストマー組成物においては、上記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、上記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜500質量部であるのが好ましく、30〜200質量部であるのがより好ましく、50〜150質量部であるのが更に好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量がこの範囲であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度および耐圧縮永久歪がより向上する。
【0101】
可塑剤としては、一般的な樹脂組成物およびゴム組成物に用いられる公知の可塑剤を用いることができる。具体例としては、パラフィンオイル、プロセスオイル、アロマオイル等のオイル;液状ポリイソプレン(LIR)、液状ポリブタジエン(LBR)、液状エチレン−プロピレンゴム(LEPM)等の液状ゴム;テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸およびこれらの誘導体;ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);ポリブテン;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、オイル、ポリブテンを用いるのがオイルブリード性、加工性の観点から好ましい。
【0102】
熱可塑性エラストマー組成物においては、上記可塑剤の含有量は、上記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜500質量部であるのが好ましく、5〜300質量部であるのがより好ましく、10〜200質量部であるのが更に好ましい。可塑剤の含有量がこの範囲であると、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性および加工性がより向上する。
【0103】
本発明においては、熱可塑性エラストマー組成物が、更に、ポリプロピレンブロックとエチレンプロピレンブロックとを有するエチレンプロピレン共重合体を含有するのが好ましい態様の一つである。この態様は、柔軟性に優れ、高温での流動性や機械的強度に優れる。
【0104】
エチレンプロピレン共重合体は、ポリプロピレンブロックとエチレンプロピレンブロックを有するものであり、より詳しくは、ポリプロピレン成分からなるブロック(ポリプロピレンブロック)と、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分からなるブロック(エチレンプロピレンブロック)とが連なったブロック共重合体である。
このようなエチレンプロピレン共重合体を含有することにより、得られる熱可塑性エラストマー組成物は、優れた柔軟性を保持し、高温での流動性や機械的強度にも優れる。これは、結晶性および硬度の高いポリプロピレンブロックの存在により耐熱性、モジュラス、破断強度等の機械的強度が良好となり、ランダム共重合体であるエチレンプロピレンブロックの存在により柔軟性および高温での流動性が良好となるためであると考えられる。
【0105】
本発明においては、上記エチレンプロピレン共重合体は、1〜50モル%の割合で上記ポリプロピレンブロックを有しているのが好ましく、10〜25モル%の割合で上記ポリプロピレンブロックを有しているのがより好ましい。ポリプロピレンブロックの割合がこの範囲であると、熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度がより良好となる。
【0106】
また、本発明においては、上記ポリプロピレンブロックが、エチレンプロピレン共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度がより良好となる観点から立体規則性であるのが好ましく、機械的強度が更に良好となる観点からアイソタクチックであるのが好ましい。
【0107】
更に、本発明においては、上記エチレンプロピレンブロック中、プロピレンとエチレン以外に他のポリブテン成分等も必要に応じて5質量%以下程度で含まれていてよい。
【0108】
本発明においては、上記エチレンプロピレン共重合体の含有量は、上記熱可塑性エラストマー100質量部に対して1〜200質量部であるのが好ましく、30〜150質量部であるのがより好ましい。エチレンプロピレン共重合体の含有量がこの範囲であると、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性を保持しつつ、高温での流動性や機械的強度がより良好となる。
【0109】
従来、ポリオレフィン系樹脂よりなる軟質材料は、バナジウム系触媒を用いて製造された非晶質エチレン−プロピレンゴム(EPR)等をポリプロピレンに混在することによって製造されている。
これに対し、本発明で用いるエチレンプロピレン共重合体は、ポリプロピレンとプロピレン・エチレンランダム共重合体のエラストマー成分を、一つの重合槽で、チタン化合物や有機アルミニウム化合物等を用いて同時に重合することによって製造するのが好ましい。また、別途合成したポリプロピレンを別の合成タンクに移し、そこにエチレンおよびプロピレンを投入し、触媒等の存在下で重合することによって製造してもよい。
【0110】
このようなエチレンプロピレン共重合体は、上記エチレンプロピレンブロック中のエチレン分を増加させた、いわゆるリアクタータイプの共重合体であるのが好ましく、例えば、出光興産社製のプライムTPOの軟質タイプとして市販されているもの、具体的には、M142Eの商品名で市販されているものが好適に用いられる。
【0111】
熱可塑性エラストマー組成物は、補強剤としてカーボンブラックおよび/またはシリカを含有しているのが好ましい。カーボンブラックの種類は、用途に応じて適宜選択される。一般に、カーボンブラックは粒子径に基づいて、ハードカーボンとソフトカーボンとに分類される。ソフトカーボンはゴムに対する補強性が低く、ハードカーボンはゴムに対する補強性が強い。本発明では、特に、補強性の強いハードカーボンを用いるのが好ましい。
カーボンブラックの含有量(カーボンブラック単独で用いる場合)は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜200質量部であり、1〜100質量部であるのが好ましく、1〜80質量部であるのがより好ましい。
【0112】
シリカは、特に限定されず、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、けいそう土等が挙げられ、その含有量(シリカ単独で用いる場合)は熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜200質量部であり、1〜100質量部であるのが好ましく、1〜80質量部であるのがより好ましい。これらのうち、沈降シリカが好ましい。
補強剤としてシリカを用いる場合には、シランカップリング剤を併用できる。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si75)、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランが挙げられる。また、後述するアミノシラン化合物も用いることができる。
【0113】
カーボンブラックおよびシリカを併用する場合の含有量(カーボンブラックおよびシリカの合計量)は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜200質量部であり、1〜100質量部であるのが好ましく、1〜80質量部であるのがより好ましい。
【0114】
熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびエチレンプロピレン共重合体以外のポリマー、カーボンブラックおよびシリカ以外の補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下「金属塩」という。)、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー等の各種添加剤等を含有することができる。
【0115】
上記添加剤等は、一般に用いられるものを使用することができ、以下に具体的に、その一部を例示するが、これら例示したものに限られない。
熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびエチレンプロピレン共重合体以外のポリマーとしては、上記した理由と同様にガラス転移温度が25℃以下のポリマーが好ましい。具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)等が挙げられ、特にIIR、EPM、EBMの不飽和結合を有さないポリマーまたは不飽和結合の少ないポリマー(例えば、EPDM)が好ましい。また、水素結合可能な部位を有するポリマーも好ましく、例えば、ポリエステル、ポリラクトン、ポリアミドが挙げられる。
また、熱可塑性エラストマー組成物において、熱可塑性エラストマー以外のポリマーは、1種単独で用いてもまたは2種以上併用してもよく、ポリマーの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜100質量部であるのが好ましく、1〜50質量部であるのがより好ましい。
【0116】
カーボンブラックおよびシリカ以外の補強剤としては、具体的には、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレーが挙げられる。これらの補強剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜100質量部であるのが好ましく、1〜80質量部であるのがより好ましい。
【0117】
上記アミノ基導入充填剤の基体となる充填剤(以下、単に「基体となる充填剤」ともいう。)としては、例えば、上記組成物に所望により添加することができるとして例示した補強剤が挙げられ、アミノ基の導入のしやすさ、導入割合(導入率)の調整等が容易である観点から、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウムであるのが好ましく、シリカであるのがより好ましい。
【0118】
上記基体となる充填剤に導入されるアミノ基(以下、単に「アミノ基」という場合がある。)は、特に限定されず、その具体例としては、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、複素環を構成するアミノ基、これらアミノ基の複数の混合アミノ基が挙げられる。
ここで、本発明において、脂肪族アミン化合物が有するアミノ基を脂肪族アミノ基、芳香族アミン化合物が有する芳香族基に結合したアミノ基を芳香族アミノ基、複素環アミン化合物が有するアミノ基を複素環アミノ基という。
これらのうち、熱可塑性エラストマーとの相互作用を適度に形成し、熱可塑性エラストマー中に効果的に分散可能であるという観点から、複素環アミノ基、複素環アミノ基を含む混合アミノ基または脂肪族アミノ基であるのが好ましく、複素環アミノ基または脂肪族アミノ基であるのが好ましい。
【0119】
上記アミノ基の級数は、特に限定されず、第一級(−NH2)、第二級(イミノ基、>NH)、第三級(>N−)または第四級(>N+<)のいずれであってもよい。
上記アミノ基が第一級であると、熱可塑性エラストマーとの相互作用が強くなる傾向があり、組成物を調製する際の条件等によってはゲル化する場合がある。一方、上記アミノ基が第三級であると、熱可塑性エラストマーとの相互作用が弱くなる傾向があり、組成物としたときの耐圧縮永久歪み等の改善効果が小さい場合がある。
このような観点から、上記アミノ基の級数は、第一級または第二級であるのが好ましく、第二級であるのがより好ましい。
【0120】
即ち、上記アミノ基としては、複素環アミノ基、複素環アミノ基を含む混合アミノ基または第一級もしくは第二級の脂肪族アミノ基であるのが好ましく、複素環アミノ基または第一級もしくは第二級の脂肪族アミノ基であるのがより好ましい。
【0121】
上記アミノ基は、上記基体となる充填剤の表面に少なくとも一つ有すればよいが、組成物としたときの耐圧縮永久歪み等の改善効果に優れる観点から、複数有するのが好ましい。
【0122】
上記アミノ基を複数有する場合は、複数のアミノ基のうち少なくとも一つは複素環アミノ基であるのが好ましく、更に第一級または第二級のアミノ基(脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、複素環アミノ基)を有するのがより好ましい。
また、上記アミノ基は、組成物に要求される物性に応じてアミノ基の種類および級数を任意に調整できる。
【0123】
上記アミノ基導入充填剤は、上記基体となる充填剤に、上記アミノ基を導入して得られる。
上記アミノ基を導入する方法は、特に限定されず、その具体例としては、一般的に各種充填剤、補強剤等に用いられる表面処理法(例えば、表面改質法、表面被覆法)が挙げられる。好ましい方法としては、例えば、上記基体となる充填剤と反応可能な官能基およびアミノ基を有する化合物を充填剤に反応させる方法(表面改質法)、アミノ基を有するポリマーで上記基体となる充填剤の表面をコーティングする方法(表面被覆法)、または、充填剤の合成過程においてアミノ基を有する化合物等を反応させる方法が挙げられる。
【0124】
上記アミノ基導入充填剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の比率とすることができる。
上記アミノ基導入充填剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜200質量部であるのが好ましく、10質量部以上であるのがより好ましく、30質量部以上であるのが更に好ましい。
【0125】
上記アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物について説明する。
上記アミノ基含有化合物中のアミノ基は、上記アミノ基導入充填剤において説明したものと基本的に同様であり、また、アミノ基の含有数は1個以上であれば特に限定されず、2個以上であることが熱可塑性エラストマーと2以上の架橋結合を形成することができ、物性の改善効果に優れるため好ましい。
【0126】
上記アミノ基含有化合物中のアミノ基の級数は特に制限されず、上記アミノ基導入充填剤におけるアミノ基と同様、第一級(−NH2)、第二級(イミノ基、>NH)、第三級(>N−)または第四級(>N+<)のいずれであってもよく、熱可塑性エラストマー組成物に要求されるリサイクル性、耐圧縮永久歪み、硬度および機械的強度、特に引張強度等の物性に応じて任意に選択できる。第二級アミノ基を選択すると機械的強度に優れる傾向があり、第三級アミノ基を選択するとリサイクル性に優れる傾向がある。特に、第二級アミノ基を2個有すると、得られる熱可塑性エラストマー組成物のリサイクル性、耐圧縮永久歪みおよび機械的強度に優れ、かつこれらの物性のバランスにも優れるため好ましい。
また、上記アミノ基含有化合物が、2個以上のアミノ基を含有する場合においては、アミノ基含有化合物中における第一級アミノ基数が2個以下となるようにするのが好ましく、1個以下とするのがより好ましい。第一級アミノ基を3個以上有すると、アミノ基および熱可塑性エラストマー中の官能基(特に、カルボニル含有基であるカルボキシ基)によって形成される(架橋)結合が強固になり、優れたリサイクル性を損なう場合がある。
【0127】
つまり、熱可塑性エラストマー中の官能基と上記アミノ基含有化合物中のアミノ基との結合力等を勘案してアミノ基の級数、数およびアミノ基含有化合物の構造を適宜調整、選択することができる。
【0128】
このようなアミノ基含有化合物としては、具体的には、N,N′−ジメチルエチレンジアミン、N,N′−ジエチルエチレンジアミン、N,N′−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N′−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N′−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N′−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N′,N″−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等の第二級の脂肪族ジアミン;テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン等の第三級の脂肪族ジアミン;アミノトリアゾール、アミノピリジン等の芳香族第一級アミンと複素環状アミンとを含むポリアミン;ドデシルアミン等の直鎖アルキルモノアミン;ジピリジル等の第三級複素環状ジアミン等が、耐圧縮永久歪み、機械的強度、特に引張強度等の改善効果が高い理由から好適に例示される。
これらのうち、第二級の脂肪族ジアミン、芳香族第一級アミンと複素環状アミンを含むポリアミンまたは第三級複素環状ジアミンがより好ましい。
【0129】
これらの例示以外にも、上記アミノ基含有化合物としては、アミノ基を有する高分子化合物を用いることができる。
【0130】
アミノ基を有する高分子化合物は、特に限定されず、その具体例としては、ポリアミド、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアミノスチレン、アミノ基含有ポリシロキサン等のポリマー、または、各種ポリマーをアミノ基を持つ化合物で変性したポリマーが挙げられる。
これらのポリマーの平均分子量、分子量分布、粘度等の物性は、特に限定されず、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の物性とすることができる。
【0131】
また、アミノ基を有する高分子化合物は、アミノ基を有する縮合性または重合性の化合物(モノマー)を重合(重付加、重縮合)させたポリマーであるのが好ましく、加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物の単独縮合体またはシリル化合物とアミノ基を有さないシリル化合物との共縮合体であるアミノ基を有するポリシロキサンであるのが、入手が容易で製造しやすく、分子量の調整、アミノ基の導入率の調整等が容易であるためより好ましい。
【0132】
加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物は、特に限定されず、例えば、アミノシラン化合物が挙げられ、具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(以上、日本ユニカー社から入手可能)等の脂肪族第一級アミノ基を有するアミノシラン化合物;N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン(以上、日本ユニカー社から入手可能)、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(例えば、Dynasilane1189(デグサヒュルス社製))、N−エチル−アミノイソブチルトリメトキシシラン(例えば、Silquest A−Link 15 silane、OSiスペシャリティーズ社製)等の脂肪族第二級アミノ基を有するアミノシラン化合物;N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー社から入手可能)等の脂肪族第一級および第二級アミノ基を有するアミノシラン化合物;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社から入手可能)等の芳香族第二級アミノ基を有するアミノシラン化合物;イミダゾールトリメトキシシラン(ジャパンエナジー社から入手可能)、アミノトリアゾールとエポキシシラン化合物またはイソシアネートシラン化合物等とを触媒の存在下または非存在下、室温以上の温度で反応させて得られるトリアゾールシラン等の複素環アミノ基を有するアミノシラン化合物が挙げられる。
これらのうち、耐圧縮永久歪み等の物性の改善効果が高い観点から、上記した、脂肪族第一級アミノ基を有するアミノシラン化合物、脂肪族第二級アミノ基を有するアミノシラン化合物および脂肪族第一級および第二級アミノ基を有するアミノシラン化合物であるのが好ましい。
【0133】
アミノ基を有さないシリル化合物は、加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物と異なる化合物であってアミノ基を含まない化合物であれば、特に限定されず、その具体例としては、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物が挙げられる。これらのうち、入手が容易で取り扱いやすく、得られる共縮合体の物性に優れる観点から、アルコキシシラン化合物が好ましい。
アルコキシシラン化合物としては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランが挙げられる。
ハロゲン化シラン化合物としては、具体的には、例えば、テトラクロロシラン、ビニルトリフルオロシランが挙げられる。
これらのうち、安価で取扱い等が安全である観点から、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランが好ましい。
【0134】
加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物およびアミノ基を有さないシリル化合物は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0135】
このようなアミノ基を有する高分子化合物は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の比率とすることができる。
【0136】
また、アミノ基を有する高分子化合物の含有量は、上記アミノ基含有化合物と同様、熱可塑性エラストマーの側鎖に対する高分子化合物中の窒素原子数(当量)で規定することもできるが、高分子化合物の構造、分子量等により熱可塑性エラストマーとの相互作用を有効に形成できないアミノ基が存在する場合がある。
そのため、アミノ基を有する高分子化合物の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜200質量部であるのが好ましく、5質量部以上であるのがより好ましく、10質量部以上であるのが更に好ましい。
【0137】
上記金属塩は、金属元素を少なくとも一つ含む化合物であれば特に限定されず、Li、Na、K、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、GaおよびAlからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む化合物であるのが好ましい。
上記金属塩としては、具体的には、例えば、これらの1種以上の金属元素を含むギ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩等の炭素数1〜20の飽和脂肪酸塩、(メタ)アクリル酸塩等の不飽和脂肪酸塩、金属アルコキシド(炭素数1〜12のアルコールとの反応物)、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、塩化物、酸化物、水酸化物、ジケトンとの錯体が挙げられる。
ここで、「ジケトンとの錯体」とは、例えば、1,3−ジケトン(例えば、アセチルアセトン)等が金属原子に配位した錯体をいう。
【0138】
これらのうち、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐圧縮永久歪みがより改善される観点から、金属元素としてはTi、Al、Znが好ましく、金属塩としてはこれらの酢酸塩、ステアリン酸塩等の炭素数1〜20の飽和脂肪酸塩、金属アルコキシド(炭素数1〜12のアルコールとの反応物)、酸化物、水酸化物、ジケトンとの錯体が好ましく、ステアリン酸塩等の炭素数1〜20の飽和脂肪酸塩、金属アルコキシド(炭素数1〜12のアルコールとの反応物)、ジケトンとの錯体がより好ましい。
【0139】
上記金属塩は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の比率とすることができる。
【0140】
上記金属塩の含有量は、熱可塑性エラストマーに含有するカルボニル基に対して、0.05〜3.0当量であるのが好ましく、0.1〜2.0当量であるのがより好ましく、0.2〜1.0当量であるのが更に好ましい。上記金属塩の含有量がこの範囲であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐圧縮永久歪み、硬度および機械的強度、特に引張強度等の物性が改善されるため好ましい。
【0141】
また、上記金属塩は、その金属のとりうるすべての水酸化物、金属アルコキシド、または、カルボン酸塩等を用いることができる。例えば、水酸化物を例にとると、金属が鉄の場合は、Fe(OH)2、Fe(OH)3をそれぞれ単独で用いても、混合して用いてもよい。
更に、上記金属塩は、上述したように、Li、Na、K、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、GaおよびAlからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む化合物であるのが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲でこれら以外の金属元素を含有してもよい。これら以外の金属元素の含有率は、特に限定されないが、例えば、上記金属塩中の全金属元素に対して、1〜50モル%であるのが好ましい。
【0142】
上記無水マレイン酸変性ポリマーは、上記エラストマー性ポリマーを無水マレイン酸で変性して得られるポリマーのことであり、無水マレイン酸変性ポリマーの側鎖は、無水マレイン酸残基および含窒素複素環以外の官能基を有していてもよいが、無水マレイン酸残基のみを有しているのが好ましい。
【0143】
上記無水マレイン酸残基は、上記エラストマー性ポリマーの側鎖または末端に導入(変性)され、エラストマー性ポリマーの主鎖に導入されることはない。また、上記無水マレイン酸残基は、環状酸無水物基であり、環状酸無水物基(部分)が開環することもない。
したがって、上記無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーとしては、例えば、下記式(26)のように、無水マレイン酸のエチレン性不飽和結合部分がエラストマー性ポリマーと反応して得られる、側鎖に環状酸無水物基を有し含窒素複素環を有しない熱可塑性のエラストマーが挙げられ、その具体例としては、上記した環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーで例示したものが挙げられる。
【0144】
【化18】


(式中、Qはエチレン残基またはプロピレン残基であり、p、qおよびrはそれぞれ独立に0.1〜99の数を表す。)
【0145】
無水マレイン酸変性量は、優れたリサイクル性を損なわず、耐圧縮永久歪みを改善できる観点から、上記エラストマー性ポリマーの主鎖部分100モル%に対して、好ましくは0.1〜50モル%であり、より好ましくは0.3〜30モル%であり、更に好ましくは0.5〜10モル%である。
【0146】
上記無水マレイン酸変性ポリマーは、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、吸着パッドの用途、要求物性等に応じて任意の比率とすることができる。
【0147】
上記無水マレイン酸変性ポリマーの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜100質量部であるのが好ましく、5〜50質量部であるのがより好ましい。上記無水マレイン酸変性ポリマーの含有量がこの範囲であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性および機械的強度が改善されるため好ましい。
なお、熱可塑性エラストマーの製造時、具体的には、上記反応工程AまたはBにおいて、未反応物として環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーが残存する場合は、残存するカルボニル含有基変性エラストマーを除去せずに、そのまま熱可塑性エラストマー組成物に含有させることもできる。
【0148】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
顔料としては、具体的には、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0149】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、ベントン、無水ケイ酸、ケイ酸誘導体、尿素誘導体が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系が挙げられる。
難燃剤としては、具体的には、例えば、TCP等のリン系、塩素化パラフィン、パークロルペンタシクロデカン等のハロゲン系、酸化アンチモン等のアンチモン系、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0150】
溶剤としては、具体的には、例えば、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系;テトラクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系;酢酸エチル等のエステル系が挙げられる。
界面活性剤(レベリング剤)としては、具体的には、例えば、ポリブチルアクリレート、ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン化合物、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
脱水剤としては、具体的には、例えば、ビニルシランが挙げられる。
【0151】
防錆剤としては、具体的には、例えば、ジンクホスフェート、タンニン酸誘導体、リン酸エステル、塩基性スルホン酸塩、各種防錆顔料が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、公知のシランカップリング剤、アルコキシシリル基を有するシラン化合物、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤が挙げられる。より具体的には、例えば、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的に、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0152】
可塑剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜50質量部であるのが好ましく、1〜30質量部であるのがより好ましい。その他の添加剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0153】
熱可塑性エラストマーは自己架橋できるものもあるが、本発明の目的を損わない範囲で加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等を併用することもできる。
加硫剤としては、硫黄系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
硫黄系加硫剤としては、具体的には、例えば、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイドが挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)が挙げられる。
そのほかに、酸化マグネシウム、リサージ(酸化鉛)、p−キノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0154】
加硫助剤としては、具体的には、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アミン類;酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ステアリン酸、アクリル酸、マレイン酸等の脂肪酸;アセチル酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ブタン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、マレイン酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛が挙げられる。
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)等のチウラム系;ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒド・アンモニア系;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)等のチアゾール系;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系が挙げられる。更にアルキルフェノール樹脂やそのハロゲン化物等を用いることもできる。
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸等の有機酸;N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−フェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体等のニトロソ化合物;トリクロルメラニン等のハロゲン化物;2−メルカプトベンズイミダゾール;N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(例えば、FLEXSYS社製のサントガードPVI)が挙げられる。
これら加硫剤等の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0155】
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、熱可塑性エラストマーと、必要に応じて含有してもよい各種添加剤等とを、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等により混合すればよい。
【0156】
熱可塑性エラストマー組成物を(加硫剤により)永久架橋させる場合の硬化条件は、配合する各種成分等に応じて適宜選択することができ、特に制限されない。例えば、130〜200℃の温度で、5〜60分で硬化させる硬化条件が好ましい。
【0157】
熱可塑性エラストマー組成物は、約80〜約200℃に加熱することにより三次元の架橋結合(架橋構造)が解離して軟化し、流動性が付与される。分子間または分子内で形成されている側鎖同士の相互作用が弱まるためであると考えられる。
軟化し、流動性が付与された熱可塑性エラストマー組成物を約80℃以下に放置すると、解離した三次元の架橋結合(架橋構造)が再び結合して硬化する。この繰り返しにより、熱可塑性エラストマー組成物のリサイクル性が発現し、吸着部のリサイクルが可能となる。
【0158】
本発明においては、基部は、その材料を特に限定されず、例えば、従来公知の吸着パッドに用いられるものを用いることができるが、上述した吸着部に用いられるのと同一の熱可塑性エラストマー組成物を用いるのが好ましい。
中でも、射出成形等により、基部と吸着部とを一体的に成形するのが好ましい。
【0159】
本発明の吸着パッドは、リサイクル可能であり、吸着性に優れ、かつ、被吸着物の変形を生じさせないため、広範な用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0160】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
1.熱可塑性エラストマー組成物の調製
(1)熱可塑性エラストマー組成物1
200℃に加熱した加圧ニーダーに、無水マレイン酸変性EPM(三井化学社製試作品)、オレフィン系軟質樹脂(Thermoplastic olefinic elastomer(TPO)、プライムTPO M142E、出光興産社製)、無水マレイン酸変性PP(アドマーQF500、三井化学社製)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS、セプトン4077、クラレ社製)およびフェノール系老化防止剤(IRGANOX1010、長瀬産業社製)を第1表に示す割合で投入し、5分間素練りした後、ポリブテン(HV−100、新日本石油化学社製)を第1表に示す割合で添加した。10分間混合させた後、3官能アルコール(ユニオックスG450、日本油脂社製)を第1表に示す割合で添加した。更に、5分間練った後、酸化チタン(タイペークR−820、テイカ社製)、カラーマスター(PIGMENT GREEN 401E、山陽色素社製)および内部離型剤(ストラクトールHT204、エスアンドエスジャパン社製)を第1表に示す割合で添加した。5分間練った後、放出して、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物1を得た。
【0161】
(2)熱可塑性エラストマー組成物2
200℃に加熱した加圧ニーダーに、無水マレイン酸変性EPM(三井化学社製試作品)、オレフィン系軟質樹脂(Thermoplastic olefinic elastomer(TPO)、プライムTPO M142E、出光興産社製)、無水マレイン酸変性PP(アドマーQF500、三井化学社製)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン(SEEPS、セプトン4077、クラレ社製)およびフェノール系老化防止剤(IRGANOX1010、長瀬産業社製)を第1表に示す割合で投入し、5分間素練りした後、ポリブテン(HV−100、新日本石油化学社製)を第1表に示す割合で添加した。10分間混合させた後、3官能アルコール(ユニオックスG450、日本油脂社製)を第1表に示す割合で添加した。15分間練った後、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(TMG、日本カーバイド工業社製)を第1表に示す割合で添加した。更に、5分間練った後、酸化チタン(タイペークR−820、テイカ社製)、カラーマスター(PIGMENT GREEN 401E、山陽色素社製)および内部離型剤(ストラクトールHT204、エスアンドエスジャパン社製)を第1表に示す割合で添加した。5分間練った後、放出して、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物2を得た。
【0162】
【表1】

【0163】
2.熱可塑性エラストマー組成物の評価
上記で得られた熱可塑性エラストマー組成物1および熱可塑性エラストマー組成物2ならびにオレフィン系熱可塑性エラストマー(サーモラン3705N、三菱化学社製、動的架橋タイプ)について、以下のようにしてJIS A硬度および100%モジュラス(M100)を測定した。結果を第2表に示す。
また、これらについて、以下のようにしてリサイクル試験を行い、破壊時の引張応力(TB)および破壊時の伸び(EB)の変化率を測定した。結果を第2表に示す。
【0164】
(1)JIS A硬度
熱可塑性エラストマー組成物1等を200℃で10分間熱プレス成形した後、厚さ2cm×縦15cm×横15cmの平板サンプルを作製し、JIS K6253−1997の規定に準じて、JIS A硬度を測定した。
【0165】
(2)100%モジュラス(M100
熱可塑性エラストマー組成物1等を200℃で10分間熱プレス成形した後、JIS K6251−1993に準じて、加硫後のゴム組成物から厚さ2mmのダンベル状試験片(ダンベル状3号形)を打ち抜き、引張速度500mm/minの条件で引張試験を行い、100%モジュラス(M100)を測定した。
【0166】
(3)リサイクル試験
熱可塑性エラストマー組成物1等を200℃で10分間熱プレス成形し、15cm×15cm×2mmのシートを作製した。このシートからJIS3号ダンベル形状の試験片を打ち抜いた。試験片を500mm/minの速度で引っ張り、破壊時の引張応力(TB)および破壊時の伸び(EB)を測定した。
また、別途、熱可塑性エラストマー組成物1等を200℃で10分間熱プレス成形し、15cm×15cm×2mmのシートを作製し、得られたシートをはさみを用いて細断した。細断後、ペレット化し、上記と同様の方法によりシートを作製するというリサイクル工程を行った。このリサイクル工程を更に繰り返し、合計3回行った。その後、上記と同様の方法により、TBおよびEBを測定した。
BおよびEBのそれぞれについて、初期の値から3回リサイクル後の値を減じて得た値を初期の値で除して、TB変化率およびEB変化率を算出した。
【0167】
3.吸着パッドの作製
(実施例1および2ならびに比較例1)
第2表に示すように、上記で得られた熱可塑性エラストマー組成物1および熱可塑性エラストマー組成物2ならびにオレフィン系熱可塑性エラストマー(サーモラン3705N、三菱化学社製、動的架橋タイプ)のいずれかを用いて、射出成形を行い、図1に示す形状および寸法の吸着パッドを得た。
【0168】
4.吸着パッドの評価
上記で得られた吸着パッドに、真空発生器を接続した後、297mm×210mm×2mmのポリプロピレン製のプラスチック板の吸着および脱着を繰り返し30万回行い、吸着性および被吸着物の変形の有無を評価した。なお、吸着時の吸着パッドの内部の真空度は、−93.3kPaとした。
結果を第2表に示す。表中、吸着性については、プラスチック板の吸着を安定して行うことができたものを「良好」、安定して行うことができなかったものを「不良」とした。また、被吸着物の変形については、プラスチック板の変形が見られなかったものを「なし」、見られたものを「あり」とした。
【0169】
【表2】

【0170】
第2表から、本発明の吸着パッド(実施例1および2)は、吸着性に優れ、被吸着物の変形がないことが分かる。これは、硬度が低く、柔軟性が高いため、被吸着物の形状に対する追従性に優れるからであると考えられる。また、本発明の吸着パッドは、リサイクル後の物性の変化率が低い。
これに対して、従来、吸着パッドに用いられてきた熱可塑性エラストマーを用いた場合(比較例1)は、吸着性に劣り、被吸着物の変形が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の吸着パッドの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0172】
10 吸着パッド
12 基部
14 吸着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の基部と、前記基部の一端に連結するスカート状の吸着部とを具備する吸着パッドであって、
前記吸着部が、熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物からなり、
前記熱可塑性エラストマーが、側鎖に、カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位と、共有結合性架橋部位および/または含窒素複素環とを含有する、吸着パッド。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマー組成物が、更に、重量平均分子量10万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、可塑剤とを含有する、請求項1に記載の吸着パッド。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマー組成物が、更に、ポリプロピレンブロックとエチレンプロピレンブロックとを有するエチレンプロピレン共重合体を含有する、請求項1または2に記載の吸着パッド。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーが、前記共有結合性架橋部位において、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一つの結合により架橋することができる、請求項1〜3のいずれかに記載の吸着パッド。
【請求項5】
前記水素結合性架橋部位を含有する側鎖が、下記式(1)で表される構造を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の吸着パッド。
【化1】


(式中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)
【請求項6】
前記水素結合性架橋部位を含有する側鎖が、α位またはβ位で主鎖に結合する下記式(2)または(3)で表される構造を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の吸着パッド。
【化2】


(式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR′(R′は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)
【請求項7】
前記共有結合性架橋部位が、下記式(4A)で表される構造を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の吸着パッド。
【化3】


(式中、Rは単結合、酸素原子もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)
【請求項8】
前記共有結合性架橋部位が、α位またはβ位で主鎖に結合する下記式(7A)で表される構造を含有する、請求項7に記載の吸着パッド。
【化4】


(式中、Rは単結合、酸素原子もしくは硫黄原子またはこれらの原子もしくは基を含んでいてもよい有機基である。)

【図1】
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【公開番号】特開2007−167973(P2007−167973A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365132(P2005−365132)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(590000558)株式会社妙徳 (37)
【Fターム(参考)】