説明

熱可塑性ポリウレタン、その製造方法およびそれにより製造された光起電モジュール

【課題】
容易に加工して実質的に気泡を含まない光起電モジュールを製造することができる熱可塑性ポリウレタンを提供すること。
【解決手段】
反応押出機において、a)脂肪族ジイソシアネートを含むイソシアネート、b)(i)平均で少なくとも1.8であるが3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび600〜10000g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオールおよび(ii)平均で少なくとも1.8であるが3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび60〜500g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオールを鎖延長剤として含むイソシアネート反応性成分およびc)連鎖停止剤を反応させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電モジュールのための封入材料として特に有用である熱可塑性ポリウレタン、そのような熱可塑性ポリウレタンで封入された光起電モジュールの製造方法および該方法により製造された光起電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光起電モジュールまたはソーラーモジュールは、光、特に日光からの電流の直接的生成に有用な光起電構造要素である。太陽光電流の生成のための方法のコストおよび効率に影響を及ぼす主要な要因は、用いる太陽電池の効率および製造コストおよびソーラーモジュールの寿命である。
【0003】
ソーラーモジュールは、ガラスの複合材料、太陽電池の回路、埋封材料および裏面構造物を従来含有する。ソーラーモジュールの個々の層は、以下においてより十分に議論される機能を果たす必要がある。
【0004】
フロントガラス(トップ層)は、機械的なおよび風化による影響からの太陽電池の保護のために用いる。このガラスは、350nmから1,150nmの光学スペクトル範囲における吸収損失を維持するために極めて高い透明性を有さなければならず、従って、電流を生成するために従来使用されるシリコン太陽電池の効率の損失を最小化する。350〜1150nmのスペクトル範囲における90〜92%の透過率度を有する低鉄硬化フリントガラス(3または4mm厚)を通常用いる。
【0005】
埋封材料は、モジュール複合材料の成分を接着するために用いられる。EVA(エチレン/酢酸ビニル)フィルムは、埋封材料として通常用いる。EVAは、約150℃における貼合わせ作業の間に溶融し、その結果、はんだ付けされるか、または導電性接着剤により互いに接続される太陽電池の中間領域中へ流れる。溶融工程の間、EVAは、熱架橋する。気泡の形成は、反射に起因する損失をもたらすが、真空中および機械的圧力下での貼合わせにより防止される。
【0006】
モジュールの裏面は、太陽電池および湿気および酸素から埋封材料を保護する。また、引っ掻き等からのソーラーモジュールの組立の間の機械的保護として、および電気絶縁として用いる。裏面構造物もまた、ガラスから作られていてもよいが、複合材料から作られることが多い。PVF(ポリビニルフルオライド)−PET(ポリエチレンテレフタレート)−PVFまたはPVF−アルミニウム−PVFは、複合材料フィルムのための極めて一般に用いられる材料の一つである。
【0007】
ソーラーモジュール構造物(モジュール正面および裏面のための)において用いる封入材料は、水蒸気および酸素に対して良好なバリア特性を有さなければならない。太陽電池それ自体は、水蒸気または酸素により攻撃されないが、金属接触の腐食およびEVA埋封物質の化学分解が生じる。破壊された太陽電池接触は、太陽電池の全てが通常、電気的に直列につながるのでモジュールの完全な不具合をもたらす。EVAの分解は、光の吸着に起因する出力の対応する低下および視覚的な劣化と共に、モジュールの黄変において現れる。現在、全モジュールの約80%は、複合材料フィルムで裏面上に封入され、ソーラーモジュールの約15%において、ガラスが正面および裏面に使用される。ガラスを、正面および裏面の何れにも用いる場合、高透明性であるがゆっくりと(数時間にわたって)硬化する注型性樹脂が、場合によっては、EVAの代わりに埋封材料として使用される。
【0008】
比較的高い投資コストにも関わらず競争力のあるソーラー電流の製造費用を達成するために、ソーラーモジュールは、長い作業寿命を達成しなければならない。それ故、今日のソーラーモジュールは、20〜30年の寿命に設計される。天候に対する高い安定性に加えて、モジュールの温度安定性に対する高い要求がある。作業中のモジュールの温度は、充分な日光により+80℃および氷点未満の温度(夜間)の周期において変化し得る。従って、ソーラーモジュールは、広範囲な安定性試験(IEC61215による標準試験)に付され、該試験には、耐候試験(UV照射、湿気加熱、温度変化)が含まれ、また雹衝撃試験および電気絶縁性能の試験が含まれる。
【0009】
モジュール組み立ては、太陽光電池モジュールに対する製造コストの比較的高い割合を表す。この高い割合は、高い材料コスト(耐雹性フロントガラス3〜4mm厚、裏面上の複合材料)および長い加工時間、すなわち、低生産性に起因する。モジュール複合材料の個々の層は、なお手動で組立ておよび配向される。さらに、EVAホットメルト接着剤の溶融および遅い架橋と、約150℃における真空中でのモジュール複合物の積層が、モジュール1個当たり約20〜30分のサイクル時間をもたらす。
【0010】
比較的厚いフロントガラスシート枠(3〜4mm)のため、通常のソーラーモジュールは重く、安定で高価な保持構造を必要とする。また、現在利用可能なソーラーモジュールによる熱の除去は、不十分である。十分な日光により、モジュールは80℃にまで熱くなる。このような温度は、温度に関する太陽電池の効率の低下を引き起こし、太陽電池の費用を増加させる。
【0011】
モジュール製造コストを削減させるための種々の提案がなされてきたが、未だ受け入れられていない。国際出願WO94/22172は、真空プレート貼合せ機(真空ホットプレス)の代わりにローラー貼合せ機を使用することを記載している。このようなローラー貼合わせ機で製造されたプラスチックフィルムは、ソーラーモジュールを封入させるために限られた程度でしか適さない。
【0012】
これらのフィルムは、十分な耐衝撃性または気候に対して十分に安定性ではなく、非常に壊れ易い太陽電池の有効な機械的保護を提供するのに充分に柔軟ではない。
【0013】
特許出願JP−A09−312410およびJP−A09−312408は、ソーラーモジュールのための接着層として熱可塑組成ポリウレタンまたはエラストマーを使用することを記載する。これらの用途に開示のソーラーモジュールは、ソーラーカー用に設計されている。車両に使用される太陽電池は、機械的振動から保護されなければならない。これは、EVAよりかなり柔軟である極めて軟質のTPUを用いることにより実現される。接着は、真空を用いて行われ、これは、既に述べたように長い加工時間を必要とする。しかしながら、気泡が端部において漏れ出る経路が長すぎて、気泡は通常の加工時間中に脱出することができず、接着剤中に「凍結」されるので、真空貼合せ機を用いて2mモジュールを製造することができない。このような気泡の存在により、反射による損失が生ずる。JP−A09−312410に記載の熱可塑性ポリウレタンは、真空容器中での加熱中に、確かに柔軟になるが、太陽電池間の中間空間を充填するのに充分な液状ではない。その結果、役に立たないソーラーモジュールが得られる。
【0014】
公開出願WO99/52153およびWO99/52154は、ソーラーモジュールを封入するための、ポリカーボネート層およびフッ素ポリマー層を有する複合材料フィルムまたは複合材料の使用を開示する。徐々にのみ加工することができるEVAホットメルト接着剤は、その接着のために使用される。
【0015】
ホットメルト接着剤としてのEVAは、約150℃にて溶融させなければならない。この場合、EVAは、水のような液状である。モジュール構造物が非常に重い場合、溶融EVAが、貼合せの際に面へ圧縮され、従って接着層の有効厚みは減少する。架橋プロセスは、約150℃で開始し、15〜30分の間で時間を必要とする。この長い加工時間のため、EVAは、減圧貼合せ機内で不連続でしか加工することできない。加工窓は、EVAについて非常に狭い。さらにEVAは、UV照射下で黄変を示す。このような黄変は、例えばセリウムをUV吸収剤としてEVA上のガラス枠中にドープすることにより、最小化される(F.J.Pern、S.H.Glick、Sol.Energy Materials & Solar Cells 61、2000年、第153〜188頁)。
【0016】
公開出願DE−A3013037は、表面および裏面のそれぞれの上にポリカーボネートシートを有するソーラーモジュールの対称構造物を記載し、太陽電池のための埋封層(接着層)は、1,000MPaの最大Eモジュラスを有し、これは、あまりに硬く、熱膨張の間に脆い太陽電池を分裂させる。
【0017】
プラスチックは、ケイ素(2×10−6−1)またはガラス(4×10−6−1)よりもかなり高い熱膨張率(50〜150×10−6−1)を有する。それ故、太陽電池が、ガラスではなくプラスチックで封入されている場合、シリコン太陽電池を、適当な柔軟接着剤層によりプラスチックから機械的に分離しなければならない。しかしながら接着剤層はまた、全ソーラーモジュール複合材料になお充分な機械的ひずみ剛性を付与するために、柔軟過ぎてはならない。EVAは、ケイ素およびプラスチックの異なる膨張率の問題並びにひずみ剛性の問題を、不充分にしか解決しない。
【0018】
ポリウレタンは、EVAのための可能性のある代替物として考えられてきたプラスチック材料の一つである。
【0019】
米国特許第4,071,505号は、分子量を慎重に制御したポリウレタンエラストマーを開示する。しかしながら、この特許は、開示されたポリウレタンエラストマーが、光電池における使用に適応させる特性を有することを教示も開示もしない。
【0020】
US2007/0131274は、特定の熱可塑性接着剤層により製造された光起電モジュールおよびこのようなモジュールの製造方法を開示する。これらの光起電モジュールを製造するのに用いる熱可塑性接着剤層は、75ショアA〜70ショアDの硬度、90〜150℃の軟化温度および2MPaのE’−モジュラスを有する熱可塑性ポリウレタンである。この熱可塑性ポリウレタン接着剤は、脂肪族ジイソシアネート、1.8〜3.0を越えない官能価を有するポリオールおよび鎖延長剤を0.85〜1.2のNCO/OH当量比において反応させることにより製造される。しかしながら、この出願は、これらの材料を組み合わせる方法が、最終生成物についての影響を有することを教示も示唆もしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第94/22172号パンフレット
【特許文献2】特開平09−312410号公報
【特許文献3】特開平09−312408号公報
【特許文献4】国際公開第99/52153号パンフレット
【特許文献5】国際公開第99/52154号パンフレット
【特許文献6】独国特許出願公開第3013037号明細書
【特許文献7】米国特許第4071505号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0131274号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】F.J.Pern、S.H.Glick、Sol.Energy Materials & Solar Cells 61、2000年、第153〜188頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、容易に加工して実質的に気泡を含まない光起電モジュールを製造することができる熱可塑性ポリウレタンを提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的は、光起電モジュールの製造のための加工特性および物理特性を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法を提供することである。
【0025】
また、本発明の目的は、簡単で素早い費用のかからない製造方法、軽量および優れた物理特性により区別される光起電モジュールを提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、光起電モジュールを製造するのに用いる場合、実質的に気泡を含まない接着剤層を製造する熱可塑性ポリウレタンを提供することである。
【0027】
本発明の更なる目的は、容易に加工して実質的に気泡を含まない透明および耐久性のある接着剤層を形成することができる熱可塑性ポリウレタンを有する光起電モジュールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
当業者に明らかとなる上記目的および他の目的は、反応押出機において、a)脂肪族ジイソシアネートを含むイソシアネート、b)(i)平均で少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび600〜10000g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオールおよび(ii)平均で少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび60〜500g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオールを鎖延長剤として含むイソシアネート反応性成分およびc)連鎖停止剤を反応させることにより達成される。成分a)、b)およびc)は、(a)におけるNCO基と(b)および(c)における全OH基の当量比が0.85〜1.2であるような量で用いる。本発明の重要な特徴は、以下の手順の1つによる連鎖停止剤c)の反応性押出機中への導入である:(1)a)およびb)と同時に、a)、b)およびc)のそれぞれを別個に導入するか、または(2)c)およびb)を組み合わせることにより形成された流れおよびa)から構成される流れを、c)をb)と組み合わせてから16時間以内に反応性押出機中へ同時に導入するか、または(3)a)をb)の一部と反応させることにより形成されたプレポリマー流れを導入すると同時に、b)およびc)の残存部の流れを分離するか、または(4)a)とb)の一部を反応させることにより形成されたプレポリマー流れおよびb)およびc)の残存部を組み合わせることにより形成された第2流れを同時に導入する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、実施例において製造された試料AについてのTMA傾斜を説明する。
【図2】図2は、実施例において製造された試料BについてのTMS傾斜を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、光起電モジュールの製造に有用な熱可塑性ポリウレタンおよびその製造方法を提供する。
【0031】
本発明はまた、以下の構造物を有する光起電モジュールを提供する:
A)ガラス、または水蒸気について低透湿性を有する、耐衝撃性、UV安定性、耐候安定性の透明プラスチックから構成される、エネルギー源に面する少なくとも1つの外部被覆層、
B)ガラス、または水蒸気について低透湿性を有する耐候安定性プラスチックから構成される、エネルギー源とは反対に面する少なくとも1つの外側層、および
C)互いに電気的に接続されている少なくとも1以上の太陽電池が埋封されている、A)およびB)の間において熱可塑性ポリウレタンから構成される少なくとも1つの接着剤層。
【0032】
熱可塑性ポリウレタンから構成される接着剤層C)は、75ショアA〜70ショアD、好ましくは92ショアA〜70ショアDの硬度およびDMS法により測定される2MPaのE’−モジュラスにおいて90〜150℃の軟化温度Tsof、少なくとも10g/cm、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも60〜150以下の溶融流れを有する脂肪族熱可塑性ポリウレタンである。
【0033】
該熱可塑性ポリウレタンは、(i)脂肪族ジイソシアネート、(ii)平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子および600〜10,000g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオール、(iii)連鎖延長剤として平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子および60〜500g/molの数平均分子量を有する少なくとも1種のツェレビチノフ活性ポリオールおよび(iv)連鎖停止剤の反応生成物である。該連鎖延長剤およびポリオール中のOH基の合計数に対する該脂肪族ジイソシアネートのNCO基の当量比は、一般に、0.85〜1.20、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.00となる。
【0034】
本発明の重要な特徴は、連鎖停止剤c)を反応性押出機中へ導入する方法である。本発明に従えば、連鎖停止剤c)は、以下の手順の1つにより導入し得る:
(1)a)およびb)と同時に、a)、b)およびc)のそれぞれを別個に導入するか、または
(2)c)およびb)を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)と同時に反応性押出機中へ、c)をb)と組み合わせてから16時間以内に同時に導入するか、または
(3)別個の流れとして、a)をb)の一部と反応させることにより形成されたプレポリマーから構成された流れと、b)の残存部から構成される流れと同時に、または
(4)c)およびb)の一部を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)とb)の一部を組み合わせることにより形成されたプレポリマー流れと同時に導入するが、但し、これらの流れは、b)およびc)の一部を組み合わせてから16時間以内に組み合わせる。
【0035】
本発明の熱可塑性ポリウレタン接着剤は、向上した熱老化、透明性および加工性を特徴とする。
【0036】
本発明の熱可塑性ポリウレタンの動的機械特性は、以下の動的機械分析法により評価した(DMA法)。
【0037】
長方形(30mm×10mm×1mm)を、射出成形シートから打ち抜いた。この試験シートを、一定の予備荷重下で周期的に非常に小さな変形に付し(場合により貯蔵弾性率に依存する)、クランプ上で作用する力を、温度および刺激周波数の関数として測定した。
【0038】
追加的に適用した予備荷重は、負の変形振幅の時点でなお、試験片が充分に引っ張られたままに維持するように働く。
【0039】
軟化温度Tsofを、E’=2MPaでの耐熱性の特性温度として決定した。
【0040】
DMS測定を、SeikoからのセイコーDMSモデル210を、1Hzで温度範囲−150℃〜200℃において加熱速度2℃/分で使用して行った。
【0041】
本発明のポリウレタンの熱機械特性を、以下の方法(TMA法)により分析した。
【0042】
TMA測定は、PerkinElmer Diamond TMAにより行った。正方形試料(1/4インチ角)を約0.5mm厚のTPUフィルムから裁断した。これらを、1mm径石英製貫通プローブを取り付けられた石英TMAステージ上へ置いた。試料は、2℃/分にて、乾燥窒素パージ下、プローブ上で150mN静的力により30℃〜160℃加熱した。
【0043】
軟化温度は、%高さ対温度曲線上で主に貫通前および貫通後で接線の交差により計算した。
【0044】
被覆層A)は、好ましくは、シートまたは1以上のフィルムを含む。
【0045】
層B)は、好ましくは、シートまたは1以上のフィルムを含む。
【0046】
被覆層A)は、好ましくは、ストリップ中に存在するフィルムまたはシートであり、該ストリップは、いわゆる太陽電池ストリング上に配列している。
【0047】
プラスチックの接着剤層C)に埋封された太陽電池は、好ましくは太陽電池ストリング中に配列している。
【0048】
太陽電池ストリングは、太陽電池により最高の可能電圧を発生させるために、好ましくは直列にはんだ付けされているか、または互いに直列に導電接着剤により接続されている。
【0049】
導電接着剤を使用する場合、これらを、好ましくは直接にプラスチック接着層の内側に、いわゆる接着ビードの形態で、これらが、貼合わせ中に太陽電池の対応する接触上へ直接落下し、太陽電池を直列に接続させる重複領域を有するように配置させる。その結果、貼合せ前のはんだ付けを省略することができ、電気接続および封入は、1工程で行う。
【0050】
また、500μm未満の厚みを有するガラスフィルムは、好ましくは、被覆層A)および熱可塑性ポリウレタンの接着剤層C)における太陽電池の間に存在する。
【0051】
本発明により製造されたソーラーモジュールは、好ましくは表面上に透明被覆A)、太陽電池を封入する接着剤層C)および不透明または透明であり得る裏面B)を含む。
【0052】
透明被覆は、以下の特性を有するべきである:350nm〜1,150nmの高い透明度、高い衝撃強度、UV安定性および耐候安定性および水蒸気についての低い透湿性。
【0053】
この透明被覆A)を、以下の物質:ガラス、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、フッ素含有ポリマー、熱可塑性ポリウレタンまたは特定の透明性、衝撃強度、安定性および透湿性基準を充足するこれら物質の任意の所望の組合せから製造することができる。透明カバーA)は、シート、フィルムまたは複合材料フィルムとして作ることができる。
【0054】
裏面B)は、天候について安定であり、水蒸気について低透湿性および高電気抵抗を有すべきである。裏面を、前面A)のために言及した物質に加えて、ポリアミド、ABS若しくは耐候安定性の他のプラスチック、または内側に電気絶縁層を備えている金属シート若しくはホイルから製造することもできる。裏面B)を、シート、フィルムまたは複合フィルムとして構成することができる。
【0055】
接着剤層C)は、以下の特性:350nm〜1,150nmの高い透明度、並びにケイ素、太陽電池のアルミニウム裏面接点、スズめっき表面接点、太陽電池の反射防止層、被覆の物質および裏面の物質に対する良好な接着性を有すべきである。接着剤層C)は、被覆および/または裏面に貼合わせることができる1以上の接着フィルムをから構成することができる。
【0056】
接着剤層C)は、各層に用いる材料の異なった熱膨張率により生ずる応力を補うために、軟質であるべきである。接着剤層C)は、200MPa未満1MPaを超え、好ましくは140MPa未満10MPaを超えのEモジュラス、および太陽電池のはんだ接続の融点(典型的に180℃〜220℃)未満の融点または導電接着剤のビカー軟化点(熱安定性)(典型的に200℃を超える)未満の融点を有するべきである。接着剤層C)は、高電気抵抗、低吸水性、UV照射および熱酸化に対する高耐性を有すべきであり、化学不活性であり、架橋無しで加工容易であるべきである。接着剤層C)はまた、少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも60であるが150未満の溶融流れを有さなければならない。
【0057】
接着剤層C)は、取り込まれた気泡を形成する可能性を低下させるために、軟化点に達すると急速に溶融すべきである。接着剤層C)は、−3.0%高さ変化/℃、好ましくは−4.0%高さ変化/℃より大きい負の値のTMAにおける接線の傾きを有するべきである。
【0058】
本発明の好ましい実施態様では、被覆A)および裏面B)は、プラスチックのフィルムまたはシートである。被覆A)および裏面B)の全厚みは、少なくとも2mm、好ましくは少なくとも3mmである。その結果として、太陽電池は、機械的影響から充分に保護される。接着剤層C)は、少なくとも1つの全厚み300〜1,000μmを有する熱可塑性ポリウレタン接着フィルムを含む。
【0059】
本発明の別の好ましい実施態様は、被覆A)および裏面B)が、該成分に適していると上で記載した材料の1つから作られた1mm未満の厚みを有する少なくとも1つのフィルムをそれぞれ含有するソーラーモジュールであり、該複合物は、金属またはプラスチックの適当な支持物に固定されており、これにより系全体に必要な剛性が付与される。プラスチック層のための好ましい支持体は、ガラス繊維強化プラスチックである。
【0060】
本発明の別の好ましい実施態様は、被覆A)が、該成分に適していると上で記載した任意の材料の1mm未満の厚みを有するフィルムを含み、裏面B)が、重量のかなりの低減と共に剛性を向上させるために、プラスチックの多層シートを含むソーラーモジュールである。
【0061】
本発明の別の好ましい実施態様では、被覆A)および/または裏面B)は、正確に太陽電池ストリングの大きさを有するストリップ形態でフィルムまたはシートを含む。これらのストリップは、接着剤層C)上に固定され、数mm〜数cmの間隔において固定され、接着フィルムだけを有する領域(すなわち、被覆A)または裏面B)を有さない領域)(例えばフィルムヒンジとして働く)が、太陽電池のストリングの間に存在する。このようなソーラーモジュールは、輸送の容易性のために、折り畳むことおよび/または巻き取ることができる。この太陽モジュールは、キャンプ分野、アウトドア分野または他の移動用途、例えば携帯電話、ノートパソコン等における使用を見出すように、より好ましくは軽量プラスチックから構成される。
【0062】
本発明はまた、本発明の光起電モジュールの製造方法を提供し、該方法は、光起電モジュールを減圧プレート貼合せ機(減圧ホットプレス)またはローラー貼合せ機において製造することを特徴とする。
【0063】
貼合せ中の温度は、好ましくは、使用する熱可塑性ポリウレタンの軟化温度Tsofより少なくとも20℃および最大で40℃高い。
【0064】
被覆プレートA)または被覆フィルムA)および接着剤層C)を含む複合材料、太陽電池ストリングおよび裏面B)に複合材料フィルムまたはシートおよび接着剤層(プラスチックのフィルム)を含む複合材料を、好ましくはローラー貼合せ機上に供給し、それによりプレスおよび接着して、ソーラーモジュールを生ずる。
【0065】
ローラー貼合せ機は、反対方向に動く少なくとも2つのロールから構成される。これらのロールは、定まった速度で回転し、定まった温度にて定まった圧力を用いて様々な物質の複合材料を互いにプレスする。
【0066】
本発明の方法の好ましい実施態様では、シートまたはフィルムA)および接着剤フィルムC)の貼合せを、第1工程においてローラー貼合せ機内で製造する。このローラー貼合せ機は、フィルムを押し出すための押出機の直接下流であり得る。その後、以下の複合材料/層を、第2工程においてローラー貼合せ機において重ねて、すなわち、被覆A)と接着フィルムC)との複合材料、ソーラーストリング、裏面B)と接着フィルムとの複合材料を導入する。この実施態様では、接着剤フィルムを、被覆A)または裏面B)の内側上へそれぞれ貼り合すか、または共押出する。被覆A)または裏面B)の場合に1mmを超える厚みでは、該層は、その低い熱伝動の故に、ローラー貼合せ機におけるロールによってもはや加熱することができない。そのような場合では、シートを対応する温度へ予備加熱するために、放射加熱または他の種類の予備加熱が必要である。ローラー貼合せ機内の温度は、接着剤フィルムが太陽電池/太陽電池ストリングの間の全ての中間空間を満たし、それにより太陽電池を破壊せずに互いに溶接するために充分高くあるべきである。
【0067】
この方法では、モジュールの品質に悪影響を及ぼす完成モジュールにおいて気泡を有さない任意の所望の大きさのソーラーモジュールを製造することが可能です。
【0068】
フィルムをローラー貼合せ機内で加工する供給速度は、好ましくは0.1m/分〜3m/分、より好ましくは0.2m/分〜1m/分である。
【0069】
本発明の方法の別の好ましい実施態様では、ソーラーモジュールを、連続ソーラーモジュールとして製造する。即ち、被覆A)、裏面B)および太陽電池ストリングを、ローラー貼合せ機により連続法で互いに接着する。この実施態様では、はんだ付けまたは接着接続太陽電池ストリングを、裏面フィルム上に貼合せ方向に対して直角に配置させる。ストリングがロールに達する前に、それらを、当業者に周知の手段で、その左右で前後のストリングを用いてそれぞれはんだ付けするか、または導電接着剤を用いて互いに接続する。任意の所望の長さのモジュールを、こうして製造することができる。モジュールを貼り合せた後、それを様々な長さに分割することができ、その幅は、常にストリング長さに対応し、その長さは、ストリング幅の数倍に対応する。
【0070】
本発明の重要な特徴は、接着剤層C)として用いる熱可塑性ポリウレタン接着剤である。熱可塑性ポリウレタン接着剤は、(i)脂肪族ジイソシアネート、(ii)平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子および600〜10,000g/molの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオール、(iii)連鎖延長剤として平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子および60〜500g/molの数平均分子量を有する少なくとも1種のツェレビチノフ活性ポリオールおよび(iv)連鎖停止剤を反応させることにより形成される。該連鎖延長剤およびポリオール中のOH基の合計に対する該脂肪族ジイソシアネートのNCO基の当量比は、一般に、0.85〜1.20、好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.00となる。
【0071】
本発明の重要な特徴は、連鎖停止剤c)を、反応性押出機中へ導入する方法である。本発明によれば、連鎖停止剤c)は、任意の以下の手順により導入し得る:
(1)a)およびb)と同時に、a)、b)およびc)のそれぞれを別個に導入するか、または
(2)c)およびb)を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)と共に反応性押出機中へ、c)をb)と組み合わせてから16時間以内に同時に導入するか、または
(3)別個の流れとして、a)をb)の一部と反応させることにより形成されたプレポリマーから構成された流れと、b)の残存部から構成される流れと同時に、または
(4)c)およびb)の一部を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)とb)の一部を組み合わせることにより形成されたプレポリマー流れと同時に導入するが、但し、これらの流れは、b)およびc)の一部を組み合わせてから16時間以内に組み合わせる。
【0072】
本発明に用いる熱可塑性ポリウレタン接着剤を製造するために用いることができる脂肪族ジイソシアネートは、脂肪族および脂環式ジイソシアネートまたはこれらジイソシアネートの混合物、例えばHOUBEN−WEYL 「Methodender Organischen Chemie(有機化学の方法)」、第E20巻、「Makromolekulare Stoffe(高分子材料)」、Georg ThiemeVerlag、 シュトゥットガルト, ニューヨーク 1987年、第1587〜1593頁または Justus Liebigs Annalen der Chemie、第562巻、第75〜136頁に記載のジイソシアネートである。
【0073】
適当なジイソシアネートの特定の例としては、脂肪族ジイソシアネート、例えばエチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,12−ドデカンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートおよび対応する異性体混合物、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネートおよび対応する異性体混合物が挙げられる。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびジシクロへキシルメタンジイソシアネートおよびその異性体混合物が好ましい。言及したジイソシアネートを、単独でまたは互いに混合物の形態で使用することができる。ジイソシアネートは、15mol%(全ジイソシアネートについて計算)までのポリイソシアネートと一緒に使用することもできるが、ポリイソシアネートの量は、多くとも、熱可塑性としてなお加工し得る生成物が形成されるように添加すべきである。
【0074】
本発明の熱可塑性ポリウレタン接着剤を製造するために使用されるツェレビチノフ活性ポリオールは、平均少なくとも1.8であるが3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子および数平均分子量M600〜10,000、好ましくは600〜6,000を有するポリオールである。
【0075】
これらは、アミノ基、チオール基またはカルボキシル基含有化合物に加えて、特に、2〜3個、好ましくは2個のヒドロキシル基を含有する化合物、とりわけ数平均分子量M600〜10,000を有する化合物、より好ましくは数平均分子量M600〜6,000を有する化合物、例えばヒドロキシル基を含有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートおよびポリエステル−アミド等を含む。
【0076】
適当なポリエーテルジオールを、アルキレン基中に2〜4個の炭素原子を有する1以上のアルキレンオキシドと2個の結合活性水素原子を含有するスターター分子とを反応させることにより製造することができる。適当なアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、エピクロロヒドリンおよび1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシドである。エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物を、好ましく使用する。アルキレンオキシドを、単独で、交互に、連続にまたは混合物として使用することができる。可能なスターター分子の例は、水、アミノアルコール、例えばN−アルキル−ジエタノールアミン、例えばN−メチルジエタノールアミン、およびジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサメチレンジオールである。スターター分子の混合物も、所望により使用することができる。
【0077】
適当なポリエーテルオールは、さらに、ヒドロキシル基を含有するテトラヒドロフランの重合生成物である。
【0078】
3官能性ポリエーテルも、2官能性ポリエーテルを基準に30重量%までの量で用いることも可能であるが、多くとも、熱可塑性としてなお加工し得る生成物が形成するような量で使用することができる。
【0079】
実質的に直鎖のポリエーテルジオールは、好ましくは数平均分子量M600〜10,000、より好ましくは600〜6,000を有する。これらを、単独および互いに混合物の形態の両方で使用することができる。
【0080】
適当なポリエステルジオールは、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸および多価アルコールから製造することができる。可能なジカルボン酸の例は、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸等、および芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸等である。ジカルボン酸を、単独でまたは混合物、例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で使用することができる。ポリエステルジオールを製造するために、対応するジカルボン酸の代わりにジカルボン酸誘導体を用いることが有利であり得る。適当な誘導体の例は、1〜4個の炭素原子をアルコール基中に有するカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物およびカルボン酸塩化物である。適当な多価アルコールの例は、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよびジプロピレングリコールである。多価アルコールを、単独でまたは互いの混合物として、所望の特性に応じて使用することができる。
【0081】
炭酸と、上記ジオール、特に4〜6個の炭素原子を有するジオール、例えば1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールとのエステル、ω-ヒドロキシカルボン酸、例えばω-ヒドロキシカプロン酸の縮合生成物、またはラクトン、例えば任意に置換されているω-カプロラクトンの重合生成物もまた適している。
【0082】
エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンを、好ましくはポリエステルジオールとして使用する。
【0083】
ポリエステルジオールは、平均分子量M600〜10,000、好ましくは600〜6,000を有し、単独でまたは互いに混合物の形態で使用することができる。
【0084】
本発明の実施に有用な鎖延長剤(連鎖延長剤とも称する)として有用なツェレビチノフ活性ポリオールとしては、平均して1.8〜3.0個のツェレビチノフ活性水素原子および数平均分子量60〜500を有する任意の既知のポリオールが挙げられる。これらは、アミノ基、チオール基またはカルボキシル基含有化合物に加えて、2〜3個、好ましくは2個のヒドロキシル基を有する化合物を含むものと理解される。
【0085】
好ましく使用する連鎖延長剤は、2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えばエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールである。しかしながら、テレフタル酸と2〜4個の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、例えばテレフタル酸ビスエチレングリコールまたはテレフタル酸ビス−1,4−ブタンジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、エトキシル化ビスフェノール、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールA、(シクロ)脂肪族ジアミン、例えばイソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチルプロピレン−1,3−ジアミンまたはN,N’−ジメチルエチレンジアミン、および芳香族ジアミン、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルイレンジアミンまたは3,5−ジエチル−2,6−トルイレンジアミン、または第1級モノ−、ジ−、トリ−またはテトラアルキル置換4,4’−ジアミノジフェニルメタンも適当である。エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノンまたは1,4−ジ−(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAを、より好ましくは連鎖延長剤として使用する。上記連鎖延長剤の混合物も使用することができる。さらに、少量のトリオールも添加することができる。
【0086】
既知の連鎖停止剤から選択される少なくとも1つの単官能性化合物は、本発明の熱可塑性ポリウレタン接着剤中に含ませなければならない。連鎖停止剤は通常、脂肪族熱可塑性ポリウレタンの重量を基準に2重量%まで、好ましくは0.2〜0.8重量%の量で含ませる。より具体的には、連鎖停止剤は、押出機中へポンプ輸送することができるほど十分に低い粘度を有さなければならない。選択された連鎖停止剤はまた、組み込まれる熱可塑性ポリウレタンの溶融流れを10ccm/10分を越え、好ましくは20ccm/10分を越え、より好ましくは60ccm/10分を越えるが150ccm/10分未満へ増加させなければならない。適当な連鎖停止剤としては、モノアミン、例えばブチル−およびジブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、N−メチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジンおよびシクロへキシルアミン、およびモノアルコール、例えばオクタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、種々のアミルアルコール、シクロヘキサノールおよびエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0087】
本発明のより好ましい実施態様では、熱可塑性ポリウレタンを、連鎖停止剤を別個の流れとして、ジイソシアネート、ポリオールおよび鎖延長剤を反応させる押出機へ添加することにより製造する。
【0088】
ポリオール、鎖延長剤および連鎖停止剤の相対量を、好ましくは、イソシアネート基の合計とツェレビチノフ活性水素原子の合計の比が、0.85:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.1:1であるように選択する。
【0089】
本発明の熱可塑性ポリウレタン接着剤は、TPU総量を基準に20質量%までの従来使用される補助物質および添加剤を必要に応じて含み得る。
【0090】
典型的な補助物質および添加剤は、触媒、顔料、染料、防炎加工剤、老化および天候の影響に対する安定剤、可塑剤、滑剤および離型剤、静真菌および静菌活性物質およびフィラー並びにこれらの混合物である。
【0091】
適当な触媒としては、先行技術で既知の従来使用される第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロへキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等、および特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物またはスズ化合物、例えばスズジアセテート、スズジオクテート、スズジラウレートまたは脂肪族カルボン酸のスズジアルキル塩、例えばジブチルスズジアセテートまたはジブチルスズジラウレートなどである。好ましい触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステルおよび鉄および錫の化合物である。TPU中の触媒総量は通常、TPUの総量を基準に約0〜5重量%、好ましくは0〜2重量%である。
【0092】
他の添加剤の例は、滑剤、例えば脂肪酸エステル、その金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル−アミドおよびシリコーン化合物、粘着防止剤、阻害剤、加水分解、光、熱および変色に対する安定剤、防炎加工剤、染料、顔料、無機および/または有機フィラー並びに補強剤である。
【0093】
補強剤は、とりわけ、繊維補強物質、例えば無機繊維であり、これを、先行技術により製造し、またサイズ剤を用いて装填することもできる。言及した補助物質および添加剤のより詳細な情報は、技術文献、例えばJ.H. SaundersおよびK.C.Frischによる研究論文「High Polymers」、第16巻、ポリウレタン、パート1および2、Verlag Interscience Publishers1962年および1964年、R.GaechterおよびH.MuellerによるTaschenbuch fuer Kunststoff−Additive(プラスチック添加剤のハンドブック)(Hanser Verlag ミュンヘン 1990年)またはDE−A2901774中に見出すことができる。
【0094】
TPUに組み込むことができるさらなる添加剤は、熱可塑性プラスチック、例えばポリカーボネートおよびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー、特にABSである。他のエラストマー、例えばゴム、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマーおよび他のTPU等を使用することもできる。
【0095】
さらに市販可塑剤、例えばホスフェート、フタレート、アジペート、セバケートおよびアルキルスルホン酸エステルは、組み込むのに適している。
【0096】
TPUの製造を、不連続または連続に行うことができる。TPUを、連続に、例えば混合ヘッド/ベルトプロセスまたはいわゆる押出機プロセスにより製造することができる。押出機プロセスでは、例えば多軸形押出機中へ、各成分の計量供給を、同時に、即ちワンショット法で、または連続に、即ちプレポリマー法により行ってよく、または1つの流れとしてイソシアネート反応性成分の少なくとも一部および第2流れとしてイソシアネートに加えて連鎖停止剤を押出機中へ計量投入することにより行うことができる。プレポリマーを初期にバッチ式で導入するか、または押出機の一部または別の先行プレポリマーユニット中で連続的に製造することができる。
【0097】
本発明を、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。
【実施例】
【0098】
TPUの試料を以下の処方に従って製造した:
【0099】
【表1】

【0100】
試料Aについて、反応性押出機中へ、連鎖停止剤を1つの流れに、イソシアネートを第2流れに、残りの原料の全てを第3流れにポンプ輸送した。これらの3つの流れのそれぞれを、反応性押出機中へ同時にポンプ輸送した。
【0101】
試料Bについて、連鎖停止剤を、イソシアネートを除いて他の原料と混合し、16時間にわたって貯蔵した。次いで、このブレンドを、1つの流れとして押出機へ添加し、イソシアネートを、第2流れとして同時に添加した。
【0102】
次いで、連鎖停止剤添加の異なった方法により製造されたこれらの2つの試料から作られたTPUペレットを、溶融流れについて、初期および2時間熱老化後のいずれにおいても分析し、試料物質を、10分間、湿った環境へ暴露し、容器中へ密封し、次いで2時間110℃オーブン中に設置した。この試験は、TPUの数週間〜数ヶ月にわたる自然老化を想定した。
【0103】
以下の表に示される結果は、連鎖停止剤を、ポリオール/添加剤ブレンドへ、押出機中での反応よりかなり前に暴露した場合、溶融流れは老化し、樹脂を貼合わせのためのフィルム中へ被覆する場合、加工上の問題を生じさせ得ることを示す。
【0104】
【表2】

【0105】
溶融流れが余りに低下する場合、光起電モジュールを製造する場合に、貼合わせ工程の間に問題を生じさせ得る。
【0106】
TPUフィルムを、素早く軟化し、所定の温度を超えて加熱した後に流れる場合にこの用途において極めて良好に貼り合わせる。この軟化および流れを計測する1つの方法は、TMAである。これは、直線の傾斜を、軟化するためのオンセット温度から貫通プローブが元の20%のフィルム高さ減少した点へ測定することにより行う。負の値が大きくなるほど、フィルムは、軟化温度に達すると容易に流れる。
【0107】
試料Aは、気泡が貼合わせの間に取り込まれる機会を減少させながら、より高い溶融流れを維持した。貼合わせのための減少時間は、試料Aについて予期される。
【0108】
試料Bは、試料Aより低い溶融流れおよび多くの気泡が貼合わせ中に取り込まれる機会を示す著しく低いTMAを有した。
【0109】
【表3】

【0110】
例示の目的で本発明を上記に詳しく説明したが、そのような詳細は、単なる例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定され得ることを除き、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって変更され得ると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)脂肪族ジイソシアネートを含むイソシアネート成分、
b)(i)平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび600〜10000g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオール、
(ii)鎖延長剤として平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび60〜500g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオール
を含むイソシアネート反応性成分、および
c)連鎖停止剤
の、0.85〜1.2の(b)および(c)中のOH基に対する(a)中のNCO基の当量比において形成された反応生成物であり、連鎖停止剤c)は、反応性押出機中へ、任意の以下の手順:
(1)a)およびb)と同時に、a)、b)およびc)のそれぞれを別個に導入するか、または
(2)c)およびb)を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)と共に反応性押出機中へc)をb)と組み合わせてから16時間以内に導入するか、または
(3)別個の流れとして、a)をb)の一部と反応させることにより形成されたプレポリマーから構成される流れと、b)の残存部から構成される流れと同時に、または
(4)c)およびb)の一部を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)とb)の一部を組み合わせることにより形成されたプレポリマー流れと同時に導入するが、但し、これらの流れは、b)およびc)の一部を組み合わせてから16時間以内に組み合わせること
により導入される、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
連鎖停止剤c)を、反応性押出機中へ手順(1)により導入する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
OH基に対するNCOの当量比は、0.9〜1.0である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
c)はオクタノールである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
軟化の発現後のTMA傾斜の良好な正接を特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
20〜150の溶融流れを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
60〜150の溶融流れを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
可視スペクトルにおいて%透過率値90〜99%を有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
70ショアA〜70ショアDの硬度を有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
良好な熱老化を、2時間後、110℃において有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、反応押出機において、
a)脂肪族ジイソシアネートを含むイソシアネート成分、
b)(i)平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび600〜10,000g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオール、
(ii)鎖延長剤として平均少なくとも1.8〜3.0以下のツェレビチノフ活性水素原子を有しおよび60〜500g/モルの数平均分子量を有する少なくとも1つのツェレビチノフ活性ポリオール
を含むイソシアネート反応性成分、および
c)連鎖停止剤
を反応させる工程
を含み、成分a)、b)およびc)を、0.85〜1.2の(b)および(c)中のOH基に対する(a)中のNCO基の当量比が得られるような量で用い、および
連鎖停止剤c)を、反応性押出機中へ、任意の以下の手順:
(1)a)およびb)と同時に、a)、b)およびc)のそれぞれを別個に導入するか、または
(2)c)およびb)を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)と共に反応性押出機中へc)をb)と組み合わせてから16時間以内に同時に導入するか、または
(3)別個の流れとして、a)をb)の一部と反応させることにより形成されたプレポリマーから構成される流れと、b)の残存部から構成される流れと同時に、または
(4)c)およびb)の一部を組み合わせることにより形成された流れにおいて、該流れを、a)とb)の一部を組み合わせることにより形成されたプレポリマー流れと同時に導入するが、但し、これらの流れを、b)およびc)の一部を組み合わせてから16時間以内に組み合わせること
により導入する、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンから製造されたフィルム。
【請求項13】
請求項12に記載のフィルムは、ソーラーパネルの成分を封入する、ソーラーパネル。
【請求項14】
A)ガラス、または水蒸気について低透湿性を有する、耐衝撃性、UV安定性、耐候安定性の透明プラスチックを含む、エネルギー源に面する少なくとも1つの外部被覆層、
B)ガラス、または水蒸気について低透湿性を有する耐候安定性プラスチックを含む、エネルギー源から反対に面する少なくとも1つの外側層、および
C)互いに電気的に接続されている少なくとも1以上の太陽電池が埋封されている、A)およびB)の間において配置される請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンを含む少なくとも1つの気泡を含まない透明接着剤剤
を含んでなる、光起電モジュール。
【請求項15】
A)ガラス、または水蒸気について低透湿性を有する、耐衝撃性、UV安定性、耐候安定性の透明プラスチックを含む、エネルギー源に面する少なくとも1つの外部被覆層、
B)ガラス、または水蒸気について低透湿性を有する耐候安定性プラスチックを含む、エネルギー源から反対に面する少なくとも1つの外側層、および
C)互いに電気的に接続されている少なくとも1以上の太陽電池が埋封されている、A)およびB)の間において配置される請求項5に記載の熱可塑性ポリウレタンを含む少なくとも1つの気泡を含まない透明接着剤剤
を含んでなる、光起電モジュール。
【請求項16】
20〜150の溶融流れを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項17】
60〜150の溶融流れを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項18】
良好な熱老化を、2時間後、110℃において有する、請求項16に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項19】
良好な熱老化を、2時間後、110℃において有する、請求項17に記載の熱可塑性ポリウレタン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−36036(P2013−36036A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−172564(P2012−172564)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】