説明

熱可塑性ポリウレタンおよびその使用法

【課題】良好なガラス付着性(貯蔵後および/または風化後でさえ)を有し、同時に、良好な押出性を有し、貯蔵または風化において黄変しないTPUを提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタンは、(a)有機ジイソシアネート成分を、(b)イソシアネート反応性成分、および(c)ツェレビチノフ活性水素原子を有するの連鎖延長剤と、(d)一般構造式:


のシラン、(e)任意のの触媒、(f)光安定剤、(g)任意の添加剤および/または助剤、および(h)任意の連鎖停止剤の存在下で、a)のイソシアネート基とb)、c)および任意のh)のイソシアネート反応性基のモル比が約0.9:1〜約1.1:1で、反応させて得た反応生成物を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なガラス付着性を示す熱可塑性ポリウレタンおよびその熱可塑性ポリウレタンからの複合体および太陽電池モジュールの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、良好なエラストマー性および溶融加工性故にかなりの技術的重要性を有する。TPUの製造、性質および用途の概要は、例えば、Kunststoff Handbuch [G.Becker,D.Braun],第7巻,Polyurethane、Munich,Vienna,Carl Hanser Verlag、1983年の中で説明されている。
【0003】
TPUは、通常、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカーボネートジオールのような線形(直鎖)ポリオール(例えば、マクロジオール)と、有機ジイソシアネートおよび短鎖の通常二官能価のアルコール類(すなわち、連鎖延長剤)から合成される。TPUは、連続または非連続に製造されてよい。最も周知の製造方法は、GB-A-1 057 018に記載のベルト法およびDE-A-19 64 834に記載の押出法である。
【0004】
溶融加工可能なポリウレタンエラストマーの合成は、段階的様式(すなわちプレポリマー計量法)または1工程で全ての成分を同時に反応させる方法(すなわちワンショット計量法)のいずれで行われてもよい。
【0005】
付着性の問題が熱可塑性ポリウレタンを、ガラスとの複合体で使用する際に生じる。この理由から、ガラスとの付着性を向上させるために、しばしばシランが使用されている。
【0006】
U.S.4,718,956において、ガラスへのTPUの一時的な付着に適しているオクタデシルトリエトキシシランが記載されている。
WO 2004/054113において、TPUに組み込まれうる二官能シランの使用が記載されている。
【0007】
シランは、WO 00/75213またはPolymer Eng. Sci.[S. Dassinら]2002, 42(8), 1724-1739に記載されるように、TPUにグラフト化されてよい。
【0008】
しかしながら、シランをTPUにグラフト化することまたはTPUにシランを組み込むことは、不都合にも、TPUの押出特性および物性を変えうる。
【特許文献1】GB-A-1 057 018
【特許文献2】DE-A-19 64 834
【特許文献3】U.S.4,718,956
【特許文献4】WO 2004/054113
【特許文献5】WO 00/75213
【非特許文献1】Kunststoff Handbuch [G.Becker,D.Braun],第7巻
【非特許文献2】Polymer Eng. Sci.[S. Dassinら]2002, 42(8), 1724-1739
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は従って、良好なガラス付着性(貯蔵後および/または風化後でさえ)を有し、同時に、良好な押出性を有し、貯蔵または風化において黄変しないTPUを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、TPUに特定のシランを含むことによって達成することができる。
本発明は、熱可塑性ポリウレタンに関する。これら熱可塑性ポリウレタンは、
(a)1つ以上の有機ジイソシアネート成分を、
(b)数平均分子量450g/モル〜10,000g/モルを有し、平均で、少なくとも1.8から多くとも3.0個のツェレビチノフ活性水素原子を有する、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分、および
(c)数平均分子量60g/モル〜400g/モルを有し、平均で、約1.8〜約3.0個のツェレビチノフ活性水素原子を有する、1つ以上の連鎖延長剤と、
(d)熱可塑性ポリウレタン100重量%に基づいて約0.05重量%〜約5重量%の、一般構造式:
【化1】

[式中、
nは、1〜12の整数を示し、
は、NHR(Rは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基、または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。)またはOR(Rは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基、または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。)を示し、
は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。]
で示される少なくとも1つのシラン、
(e)場合により1つ以上の触媒、
(f)熱可塑性ポリウレタン100重量%に基づいて0.1重量%〜10重量%の、1つ以上の光安定剤、
(g)場合により、1つ以上の添加剤および/または助剤、および
(h)場合により、1つ以上の連鎖停止剤
の存在下で、a)のイソシアネート基とb)、c)および任意のh)のイソシアネート反応性基のモル比が約0.9:1〜約1.1:1で、反応させて得た反応生成物を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において成分a)として使用される適した有機ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、ヘテロ環および芳香族ジイソシアネート、例えばJustus Liebigs Annalen der Chemie, 562, 第75〜136頁に記載されるものが挙げられる。
【0012】
以下の化合物は適した例として特に挙げられる:適した脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのような化合物が挙げられ;適した脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、さらに対応する異性体混合物、4,4’−、2,4’−および2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、さらに対応する異性体の混合物のような化合物が挙げられ;適した芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、ウレタン変性液状4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−1,2−ジフェニルエタンおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族および/または脂環式ジイソシアネートが、好ましくは本発明で好ましく使用される。
【0013】
特に、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが特に、本発明の好ましいイソシアネートである。これらのジイソシアネートは、個別に、または互いの混合物の形態で使用されうる。それらは、(合計ジイソシアネートに対して計算した)15モル%までのポリイソシアネートと共に使用されうる。しかしながら、ポリイソシアネートは、多くとも、なお溶融加工可能である生成物が得られるような量で添加されうる。
【0014】
本発明の連鎖延長剤、即ち成分c)として使用するのに適した化合物は、典型的には、60〜400の分子量を有する。さらに、連鎖延長剤として使用される化合物は、平均して、約1.8〜約3.0個のツェレビチノフ活性水素原子を有することが好ましい。ツェレビチノフ活性水素原子を有する化合物としては、例えばアミノ基、チオール基、カルボキシル基またはヒドロキシ基を含有する化合物が挙げられる。これらはヒドロキシ基であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい連鎖延長剤は、2〜3個の、さらに好ましくは2個のヒドロキシル基を含有するものである。
【0015】
上記したように、2〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジオールから選択される1つ以上の化合物は、好ましくは連鎖延長剤、即ち成分c)として使用される。そのような化合物は、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメタノールシクロヘキサンおよびネオペンチルグリコールである。しかし、テレフタル酸と2〜4個の炭素原子を有するグリコールとのジエステルも適している。そのような化合物の例は、テレフタル酸ビス−エチレングリコールおよびテレフタル酸ビス−1,4−ブタンジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、エトキシル化ビスフェノール、例えば、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ビスフェノールA、(環状)脂肪族ジアミン、例えば、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチル−1,3−プロピレンジアミン、N,N'−ジメチルエチレンジアミン、芳香族ジアミン、例えば、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミンおよび3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミン、および第一級モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラアルキル置換4,4’−ジアミノジフェニルメタンである。連鎖延長剤として使用される特に好ましい化合物は、エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドロキノンまたは1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ビスフェノールAである。少量のトリオールを添加して使用してもよい。
【0016】
本発明の成分b)として使用するのに適した化合物には、平均で、少なくとも約1.8から多くとも約3.0個のツェレビチノフ活性水素原子を含む化合物が挙げられる。ツェレビチノフ活性水素原子を含む化合物としては、例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシ基またはヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。これらがヒドロキシル基であることが好ましい。本発明の成分b)の好ましい化合物は、2〜3個、さらに好ましくは2個のヒドロキシル基を有するものである。本発明において、これらの化合物は、数平均分子量Mn450〜10,000を有する。数平均分子量Mn約450〜約6000、さらに好ましくは数平均分子量Mn約600〜約4500を有することが好ましい。このような化合物の例としては、ヒドロキシル基を有するポリエステル、ポリエーテルおよび/またはポリカーボネート並びにポリエステルアミドおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
成分b)として使用される適したポリエーテルジオールは、アルキレン基に2〜4個の炭素原子を含有する1つ以上のアルキレンオキシドと、結合形態で2個(または2個以上)の活性水素原子を含有する出発物質とを反応させることによって調製され得るものが挙げられる。例として挙げられるアルキレンオキシドとして、例えば、次のとおりである:
エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシド。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物が好ましく使用される。アルキレンオキシドは、個々に、または連続して、または混合物の形態で使われてもよい。適切な出発分子としては、例えば、水、アミノアルコール、例えば、N−アルキルジエタノールアミン(例えばN−メチルジエタノールアミン)、ジオール、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。場合により、好適な出発分子の混合物を使用してもよい。さらに、適切なポリエーテルオールは、テトラヒドロフランのヒドロキシル基含有重合生成物である。二官能ポリエーテルの重量に基づいて、約0重量%〜約30重量%の割合の三官能ポリエーテルを使用してもよい。三官能ポリエーテルの最大量は、溶融加工可能な最終生成物を生じる量である。ここで成分b)として使用される実質的に線形のポリエーテルジオールは、好ましくは、数平均分子量Mn450〜6000を有する。これらは、個々に、またはお互いの混合物の形態の両方で使用される。
【0018】
好適なポリエステルジオールとしては、例えば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸と、多価アルコールとから調製されるものが挙げられる。好適なジカルボン酸として、例えば、以下の化合物を挙げることができる:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、またはフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸。ジカルボン酸は、個々に、または混合物の形態で、例えば、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で使用されてもよい。
【0019】
ポリエステルジオールを調製するために、ジカルボン酸を使用する代わりに、対応するジカルボン酸誘導体、例えば、アルコール基中に1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物、またはカルボン酸塩化物を使用することが有利である場合がある。好適な多価アルコールの例としては、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するグリコールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールまたはジプロピレングリコールが挙げられる。所望の特性に応じて、多価アルコールは、個々に、またはお互いの混合物の形態のいずれかで使用されてもよい。上記のジオール、特に4〜6個の炭素原子を有するジオール、例えば、1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールと炭酸とのエステル、ω−ヒドロキシカプロン酸などのω−ヒドロキシカルボン酸の縮合生成物、または例えば場合により置換されたω−カプロラクトンなどのラクトンの重合生成物も適している。好ましいポリエステルジオールとして、エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール/1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール/1,4−ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンが挙げられる。ポリエステルジオールは、数平均分子量Mn約450〜約10,000を有し、それぞれ個々にまたはお互いの混合物の形態のいずれかで使用されうる。
【0020】
イソシアネートに対して一官能である化合物は、連鎖停止剤、すなわち本発明の成分h)としての使用に適している。これら連鎖停止剤は、TPU100重量%に基づいて2重量%までの割合で使用されてもよい。適切な化合物としては、例えば、ブチルアミンおよびジブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、N−メチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジンまたはシクロヘキシルアミンなどのモノアミン;例えば、ブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、種々のアミルアルコール、シクロヘキサノールおよびエチレングリコールモノメチルエーテルなどのモノアルコールも挙げられる。
【0021】
本発明において、ツェレビチノフ活性水素化合物、即ち成分b)、c)およびh)の相対量は、成分a)中のイソシアネート基の合計と成分b)、c)およびh)のツェレビチノフ活性水素原子の合計の比が約0.9:1〜約1.1:1であるように好ましく選択される。
【0022】
本発明による熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、さらに、常套の助剤および添加剤、すなわち成分(g)を、TPU100重量%に基づいて約10重量%まで含有してもよい。典型的な助剤および添加剤は、潤滑剤および離型剤、例えば脂肪酸エステル、それらの金属セッケン、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミドおよびシリコーン化合物、可塑剤、粘着防止剤、禁止剤、加水分解安定化剤、熱安定剤および変色安定化剤、顔料、色素、無機フィラーおよび/または有機フィラー、静真菌性・静菌性活性物質、およびそれらの混合物であるが、これらに限定されない。
【0023】
助剤および添加剤についてのさらに詳細な説明は、専門書に見られる。特に、詳細に、例えば、J. H. SaundersおよびK.C.Frischのモノグラフ、 “High Polymers”,第XVI巻,“Polyurethane”、parts 1 and 2,Verlag Interscience Publishers 1962および1964;R. Gaechter および H. Muellerの“Taschenbuch fuer Kunststoff-Additive” (Hanser Verlag Munich);DE-A 29 01 774に記載されている。
【0024】
本発明において成分f)として適した光安定剤としては、好ましくはUV安定化剤、酸化防止剤および/またはHALS(ヒンダオードアミン光安定剤)成分が挙げられる。適した光安定剤に関するより詳細な説明は、専門書に見られ、例えば、“Plastics Additives Handbook”, 2001、第5版,Carl Hanser Verlag, Munichに記載されている。
【0025】
シラン、即ちここでの成分d)またはこれらの混合物として使用される適した化合物は以下のとおりである。シランは、TPU100重量%に基づいて、約0.05〜約5重量%の量で使用されうる。ここでシランとして使用するのに適した化合物は、以下の構造式I:
【化2】

[式中、
nは、1〜12の整数を示し、
は、NHR(Rは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基、または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。)またはOR(Rは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基、または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。)を示し、
は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。]
で示されるものである。
【0026】
ここでの成分d)として適している例として、例えば、Silquest A 1524(GE Toshiba Silicones)が挙げられる。Silquest A 1524は、上記の式中RがNHであり、RがCHおよびn=3であるシランである。
シランを、TPUの製造の間および添加工程ならびに配合の間および押出時に添加してよい。
【0027】
TPUに混合してもよい添加剤としては、熱可塑性物質、例えば、ポリカーボネートおよびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)ターポリマー、好ましくは、ABSが挙げられる。他のエラストマー、例えばゴム、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、さらに他のTPUを使用してよい。
【0028】
本発明において成分(e)として使用される適切な触媒としては、技術分野から知られている常套の第三級アミンが挙げられる。第三級アミンの例としては、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ならびに有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物または錫化合物、例えばスズジアセテート、スズジジオクテート、スズジラウレートまたは脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩(例えば、ジブチルスズジアセテートまたはジブチルスズジラウレート等)または他の類似化合物が挙げられる。好ましい触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物、スズ化合物、ジルコニウム化合物およびビスマス化合物である。本発明において、本発明のTPU中の触媒の合計量は、TPU100重量%に基づいて、好ましくは0重量%〜5重量%、好ましくは0重量%〜2重量%である。
【0029】
助剤および添加剤は、製造工程の間に本発明に添加されても、さらなる配合工程または押出工程でTPUに組み込まれてよい。
【0030】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、ガラスとの複合体、特に太陽電池モジュールの製造に適している。
【0031】
熱可塑性ポリウレタンおよびガラスを含む複合体の製造において、熱可塑性ポリウレタンのシートまたはフィルムをガラスシートの上に配置し、加熱することによって複合体を形成する。本発明の熱可塑性ウレタンがシートまたはフィルムを形成するために使用される。
【0032】
以下の実施例により、本発明の方法の詳細を説明する。先の説明に記載された本発明は、これらの実施例によってその精神または範囲のいずれをも限定されない。当業者は、以下の手順の条件の既知の改変を行うことができることを容易に理解する。他の記載がない限り、全ての温度は摂氏(℃)であり、全てのパーセントは重量%である。
【実施例】
【0033】
実施例において、以下の成分を使用した:
ポリエステルA:分子量Mn=2000g/モルを有するポリエステルジオール(Bayer MaterialScience AGから市販)
HDI:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
HDO:1,6−ヘキサンジオール
BDO:1,4−ブタンジオール
Irganox 1010:抗酸化剤(Ciba Specialty Chemicals GmbHから市販)
Tinuvin 328:ベンゾトリアゾール系光安定剤(Ciba Speciality Chemicals GmbHから市販)
DBTL:ジブチルスズジラウレート
Silquest A-1100:3−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE Toshiba Siliconesから市販のシラン)
Silquest A-137:オクチルトリエトキシシラン(GE Toshiba Siliconesから市販のシラン)
Silquest Y-11597:トリス−(3−トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート(GE Toshiba Siliconesから市販のシラン)
Silquest A-1524:ウレイドプロピルトリメトキシシラン(GE Toshiba Siliconesから市販のシラン)
【0034】
シートの形態でのTPU製造:
ポリエステルA 1075g、HDO 109g、BDO 13.5g、0.5重量%のIrganox 1010(TPU100重量%に基づく)および約60ppmのDBTL(ポリオールの量に対して)の混合物を130℃に加熱し、櫂形撹拌機を用いて毎分500回転(rpm)の速度で攪拌し、その後、HDI 271gを添加した。その後、粘度が最大に上昇するまで攪拌し、TPUを取り出した。最後に、この物質を80℃で30分間、熱的後処理に付して、その後ペレット化した。さまざまなシランの正確な量(シランの詳細および相対量については表参照)を、ドラム被覆によってペレットに塗布した。シラン被覆ペレットを、次いで射出成形し、厚さ2mmのシートを形成した。
【0035】
太陽電池モジュールの製造:
上記のとおり製造したそれぞれのTPUシートを、まず4mm厚さで12×12cmの寸法を有する低い鉄含量の白色ガラスシートに置いた。その上に、単結晶性シリコン太陽電池を置き、次いで、第2TPUシートを置き、最後に、180μmゲージのポリフッ化ビニルフィルム(即ち、Tedlar Icosolar 2442(Isovolta AGから市販))を置いた。このモジュールは、減圧貼り合わせ器内で下向きにガラスシートを備え、155℃に加熱した。モジュールを次いで、5分間排気し、6分間プレスした。
【0036】
湿潤加熱試験:
それぞれの上記のとおり製造した太陽電池モジュールについて、測定を85℃のかわりに80℃で行うこと以外は、標準IEC61215に従って湿潤加熱試験を行った。一定の時間間隔後に、(i)付着がなお効果的であるかどうか、(ii)材料が黄変したかどうかおよび(iii)TPUの分解がおこっていないかどうか(溶液粘度の測定によって決定される)を測定するために、特性試験をそれぞれの太陽電池モジュールについて行った。
【0037】
溶液粘度の測定:
N−メチル−2−ピロリドン99.7gを、ジブチルアミン0.1重量%およびTPU0.4gと秤量した。それぞれの試料をマグネチックスターラーで攪拌した。
試料を約70℃で約1時間溶解させ、室温で一晩放置した。
試料およびブランク試料(即ち、純粋な溶媒)を、25℃でショット粘度測定ステーションを使用して測定した。
相対溶液粘度は、特定の試料とブランク試料との粘度の比率である。
ショット粘度測定ステーションは、AVS400粘度測定ステーション、ASV/S測定スタンド、ガラス製恒温バス、モデル50110ウベローデ粘度計からなる。
【0038】
黄変指数の測定:
黄変指数は、Minolta CR-100 Chroma Meterを使用して測定した。
黄変指数は、DIN 6167に従って決定した。
装置を、それぞれの一連の測定前に、常に再較正した。測定閃光を開始した後、ディスプレイは、白色検量シートの裏面に記載された値を示さなければならない。

他の対の値については、装置を、製造業者の取扱説明書に従って較正しなければならない。検量板の参照黄変指数(YI)は3.75である。
黄変指数(YI)を、次式によって計算した:
【数1】

黄変指数は、(試験片および参照シートの)中央部分に互いに重なるように白色セラミック参照シート上に試験片を置いて測定した。次いで、測定閃光を開始した。
xおよびy値を読み取り、黄変指数(IV)を上記式に従って計算した。結果を以下の表に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
アミノシランを比較例1において使用した。対応するTPUはかなり許容できない黄変を示した。
比較例2および3について、太陽電池モジュールは、湿り加熱試験において、層剥離を示した。
本発明のシランを実施例4において使用した。耐候性であり、黄変せずおよび層剥離しないガラス複合体が、この実施例から得られた。
【0041】
本発明を例示するために前記に詳しく説明したが、そのような説明は例示するものにすぎず、特許請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図および範囲を逸脱せずに当業者によってそれらに変更を加えうると理解されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンであって、
(a)1つ以上の有機ジイソシアネート成分を、
(b)数平均分子量450g/モル〜10,000g/モルを有し、平均で、少なくとも1.8から多くとも3.0個のツェレビチノフ活性水素原子を有する、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分、および
(c)数平均分子量60g/モル〜400g/モルを有し、平均で、約1.8〜約3.0個のツェレビチノフ活性水素原子を有する、1つ以上の連鎖延長剤と、
(d)熱可塑性ポリウレタン100重量%に基づいて0.05重量%〜5重量%の、一般構造式:
【化1】

[式中、
nは、1〜12の整数を示し、
は、NHR(Rは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基、または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。)またはOR(Rは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基、または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。)を示し、
は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアリール基または1〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を示す。]
で示される少なくとも1つのシラン、
(e)場合により1つ以上の触媒、
(f)熱可塑性ポリウレタン100重量%に基づいて0.1重量%〜10重量%の、1つ以上の光安定剤、
(g)場合により、1つ以上の添加剤および/または助剤、および
(h)場合により、1つ以上の連鎖停止剤
の存在下で、a)のイソシアネート基とb)、c)および任意のh)のイソシアネート反応性基のモル比が約0.9:1〜約1.1:1で、反応させて得た反応生成物を含んでなる、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
a)有機ジイソシアネート成分が1つ以上の脂肪族ジイソシアネートおよび/または1つ以上の脂環式ジイソシアネートを含んでなる請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
ガラスシート上に熱可塑性ポリウレタンシートを配置することおよび加熱することを含んでなる、熱可塑性ポリウレタンおよびガラスを含んでなる複合体の製造方法において、改良が、熱可塑性ポリウレタンが請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンを含んでなることである方法。
【請求項4】
ガラスシート上に熱可塑性ポリウレタンシートを配置すること、熱可塑性ポリウレタンシートの露出面上に太陽電池を配置すること、太陽電池の露出面上の第2ポリウレタンシートを配置すること、第2熱可塑性ポリウレタンシートの露出面上にフィルムシートを配置することおよび加熱することを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法において、改良が、熱可塑性ポリウレタンのシートの一方または両方が請求項1の熱可塑性ポリウレタンを含んでなることである方法。

【公開番号】特開2006−169536(P2006−169536A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−364419(P2005−364419)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】