説明

熱可塑性ポリマー用潤滑剤

本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、少なくとも1つの顔料、または少なくとも1つの充填材、もしくはそれらの混合物、および6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個のC原子を含有する直鎖ジオールの少なくとも1つジエステルを含むポリマー組成物であって、ここに、分子中に種々の脂肪酸残基を含むジエステルの割合が、前記のジエステルの総量に対して10重量%未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、少なくとも1つの顔料または少なくとも1つの充填材もしくはそれらの混合物、および6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個のC原子を含有する直鎖ジオールの少なくとも1つジエステルを含む、ポリマー化合物であり、ここに、種々の脂肪酸残基を有する前記のジエステルの量が、前記のジエステルの総量に対して10重量%未満である。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーは、あらゆる種類のモールドの生産において極めて一般的なものである。通常、熱可塑性ポリマーはそのようなモールドを作製するため、幾つかの段階で処理されるが、通常、少なくとも1つの工程ではポリマーを加熱することを要し、前記加熱は、しばしば熱可塑性ポリマーがさらなる処理に適したレオロジー特性を発揮する温度までである。さらなる処理工程は、しばしば熱可塑性ポリマーと他の成分との激しい混合および前記ポリマーの剪断と関連する。そのようなさらなる処理工程と関連して、熱可塑性ポリマーと他の成分との混合物の異なる成分の内部混合が、モールドを形成するために用いられる。
【0003】
モールド生産における材料の作業性を改善するために、いわゆる潤滑剤が、熱可塑性ポリマーと場合により他の成分との混合物に頻繁に添加される。
【0004】
かくして、例えばDE38 12 014は、Ca/Zn安定化剤におけるエチレングリコールエステルの使用を開示する。エチレングリコールエステルの場合、技術的なパルミチン酸/ステアリン酸カット(Palmitin-/Stearinsaure-Schnitten)(約1:1)とのエチレングリコールのエステルが用いられる。
【0005】
特に、顔料または充填材を含む熱可塑性ポリマーであって、アルキルグリコールエステルが用いられる場合、表面の光沢は、頻繁に望まれている多くのものが依然としてあることが認められている。そのような熱可塑性ポリマーから生産されるモールドに対し、不都合な効果を与え得る表面、具体的には粗い、時にはマットな表面が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE38 12 014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、既存の最先の課題の不利益を克服する熱可塑性ポリマーに関する潤滑剤についての必要性が存在する。特に、結果として熱可塑性ポリマーの構造における改善をもたらす熱可塑性プラスチック用の潤滑剤についての需要があった。例えば、熱可塑性ポリマー、特にそのような熱可塑性ポリマーから作製されたモールドが、改善された表面構造を達成できる潤滑剤についての特別な需要があった。ほとんどマットでなく、またはほとんど粗くない、特に改善された光沢を有する表面の熱可塑性プラスチックから形成されたモールドを提供する、潤滑剤についての需要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに、6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個の炭素原子を含有する直鎖ジオールの1つ以上のジエステルを含有し、顔料または充填材を含むポリマー化合物は、当該ポリマー組成物中に、分子中に種々の脂肪酸残基を有する前記ジエステルの量が前記のジエステルの総量に対して10重量%未満である場合に、光沢または粗さに関して、改善された価値を有する表面のモールドを生産することができることを見出した。
【0009】
本発明の対象は、したがって、組成物成分として、
Z1 ポリマー組成物に対して少なくとも15重量%の、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー;
Z2 ポリマー組成物に対して0.001〜15重量%の、6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個のC原子を含有する直鎖ジオールのジエステル;および
Z3 ポリマー組成物に対して0.1〜80重量%の、少なくとも1つの顔料または少なくとも1つの充填剤もしくはそれらの混合物を含み、
ジオール上に種々の脂肪酸残基を有する前記のジエステルの量が、前記のジエステルの総量に対して10重量%未満、または前記のジエステルの総量に対して8重量%未満である、ポリマー化合物である。
【0010】
本発明の意味におけるポリマー化合物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、直鎖ジオールの1つのジエステル、および1つの顔料または充填材を含む、クレームの意味における組成物と理解されるべきである。本発明の意味においてポリマー組成物は、原則として、いずれの形態、例えば粉末、顆粒、製造された半製品物質のいずれの形態、例えばペレット、ロッド、立方体またはそれらの類似形態であってよい。
【0011】
本発明の意味におけるポリマー組成物は、本発明に照らして、ポリマー組成物に対して少なくとも15重量%の、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。
【0012】
原則として、本発明によれば、それらの特徴、特にそのポリマーから形成されるモールドの表面の特徴、例えば光沢や粗さについての特徴が当業者に公知であるすべてのポリマーを、改善されるべき熱可塑性ポリマーに用いることができる。本発明のポリマー組成物の成分として好ましいポリマーは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエーテル、ゴム、好ましくはポリイソプレン、天然ゴム、特にNBRゴム、ポリブタジエン、少なくとも2つの上記成分からなる共重合体、特にポリエチレン/ポリプロピレン−共重合体、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。PE、PP、PVC、PETおよびPLAが好ましく、PVCが特に好ましい。
【0013】
本発明の実施形態において、本発明にかかるポリマー化合物は熱可塑性であり、80℃未満、好ましくは140℃以下、特に好ましくは270℃以下では融解しない。一般に、本発明にかかる熱可塑性化合物は350℃以下で融合する。本発明にかかる熱可塑性ポリマー化合物においては、前記の融合特性を有する熱可塑性ポリマーが、熱可塑性化合物で用いられる(複数の)ポリマーに対して、それぞれ50重量%超、好ましくは75重量%超、特に好ましくは90重量%超で用いられる。
【0014】
本発明にかかるポリマー化合物は、本発明に照らして、ポリマー組成物に対して少なくとも15重量%の、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーの含有量に関する上限は、例えばポリマー化合物全体に対してそれぞれ99.899重量%であってよく、あるいは例えば98重量%、96重量%、94重量%、92重量%、90重量%またはこれら未満、例えば85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、60重量%、55重量%もしくは50重量%またはこれら未満であってよい。さらに、ポリマー化合物は、本発明に関して、熱可塑性ポリマーをほとんど含んでいなくてもよく、例えば45重量%もしくはそれ未満、例えば40重量%もしくはそれ未満、35重量%もしくはそれ未満、30重量%もしくはそれ未満、25重量%もしくはそれ未満、または20重量%もしくはそれ未満を含んでいてもよい。所望の用途に応じて、熱可塑性ポリマー量の下限は、ポリマー組成物全体に対して、それぞれ例えば15重量%、例えば16、17、18、19または20重量%であってよい。
【0015】
本発明にかかるポリマー組成物は、熱可塑性の特徴を発揮すべきである。しかしながら、これは、非−熱硬化性ポリマーの構成成分の量、例えばデュロマー(Duromeren)(場合により本明細書中でデュロプラスチック(Duroplasten genannt)とも称する)の量を有する本発明にかかるポリマー化合物を排除するものではないが、その量は全体の成分の熱可塑性の特徴に不利な影響を与える量を越えてはならず、熱可塑性処理は著しい不利益が受容される場合にのみ可能である。
【0016】
成分Z1のような少なくとも1つの熱可塑性ポリマーに加えて、本発明の意味でのポリマー組成物は、成分Z2として、ポリマー組成物全体に対して0.001〜15重量%の、6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個のC原子を含有する直鎖ジオールのジエステルも有する。本発明の範囲内において、ジオール上に種々の脂肪酸を有する前記のジエステルの量は、前記のジエステルの総量に対して10重量%未満であるか、または前記のジエステルの総量に対して8重量%未満である。
【0017】
本発明の意味で用いられるジエステルに関する基準として、2〜8個のC原子を含有する直鎖ジオールが好ましい。好ましい直鎖ジオールは、例えば、エチレングリコール、n−プロピレングリコール、n−ブチレングリコール、n−ペンタメチレングリコール、n−ヘキサメチレングリコール、n−ヘプタメチレングリコールまたはn−オクタメチレングリコールである。本発明の好ましい実施形態は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコールまたはヘキサメチレングリコールのジエステルであり、特にエチレングリコール、プロピレングリコールまたはブチレングリコールのジエステルであって、多くの場合、エチレングリコールのエステルが卓越した特徴を発揮する。
【0018】
本発明に関して用いられる直鎖ジオールのジエステルの酸成分は、6〜44個のC原子を含有するカルボン酸を有する。本発明の意味における「酸成分」は、エステル加水分解の間に、例えば水性媒体中での酸性またはアルカリ性の初期の加水分解という状況で、反応混合液中で酸として検出し得るエステルの分子フラクションである。本発明に関して使用可能なジエステルは、1つの分子上に2つの同一の酸成分を有する。本発明に関し、ポリマー組成物に照らして用いられるジエステルは、酸成分が異なるジエステル分子のフラクションをさらに有することが可能である。本発明に関して、そのような種々の酸成分を有するジエステル分子の割合は、ポリマー組成物のジエステルの総ての割合に対して、それぞれ10重量%未満、例えば9.5重量%または9重量%未満または8重量%未満または7.5重量%未満または7重量%未満または6、5、4、3、2もしくは1重量%未満であるべきである。本発明に関して上記のポリマー組成物で用いられるジエステルもまた、前記のジエステルの総量に対して、ジオール上に種々の脂肪酸残基を有するジエステルの割合を、それぞれ少なくとも0.1重量%、または0.01重量%、または0.001重量%有していてよい。
【0019】
本発明の意味において、ジエステルが、8〜22個のC原子、特に10〜20個または12〜18個のC原子を含有する直鎖、飽和または不飽和モノカルボン酸である場合に、特に有効であることが証明された。
【0020】
基本的に、以下は、脂肪酸としての使用に適したものである:カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ウンデシレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、カドレイン酸、エイコセン酸、鯨油酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、カレンド酸、プニカ酸、α−エレオステアリン酸、アラキドン酸、ティムノドン酸、クルパノドン酸、セルボン酸、または22個までのC原子を含有する不飽和脂肪酸の2量化を通じて利用される、いわゆる二量体脂肪酸(Dimerfettsauren)。本発明の好ましい実施形態に照らして、本発明にかかるジエステルの酸残基は、8〜22個のC原子を含有する直鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸である。好ましくは、かかる酸は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸またはベヘン酸であり、特にパルミチン酸、ステアリン酸またはアラキジン酸である。
【0021】
本発明に関するポリマー組成物は、ジエステルまたは2以上のジエステルの混合物を含んでいてよい。しかしながら、この関係において、非対称に置換されたジエステル、すなわち種々の酸成分を有するジエステルに関する上記の上限が観察される。次いで、本発明にかかるポリマー組成物は、例えば2つの異なるジエステルの混合物、または3つの異なるジエステルの混合物、あるいは4以上の異なるジエステルの混合物を含んでいてよい。
【0022】
成分Z3として、本発明のポリマー組成物は、少なくとも1つの顔料または少なくとも1つの充填材、あるいは1つ以上の充填材と1つ以上の顔料との混合物を含む。
【0023】
基本的には、すべての無機もしくは有機顔料が、ポリマー組成物に適しており、そのようなものとして、特に計画された処理の関係でポリマー組成物に適している。顔料は、ポリマー組成物に色を付与するが、しかしながら、ポリマー組成物を白または黒に着色する顔料が好適である。特に好ましい顔料は、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウムベースの顔料、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛白)およびリトポン(亜硫酸塩/硫酸バリウム)、カーボンブラック、カーボンブラック−二酸化チタン混合物、酸化鉄顔料、酸化アンチモン、酸化クロム、スピネル、例えばコバルトブルーおよびコバルトグリーン、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、群青、または有機顔料、例えばアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料またはアントラキノン顔料である。
【0024】
以下の材料は、充填材として特に適切なものである:炭酸カルシウム、白雲石、ジプサム、珪灰石、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸塩、カオリン、タルク、ガラス繊維、ガラスビーズ、ウッドビーズ、マイカ、金属酸化物または金属水酸化物、カーボンブラック、グラファイト、岩粉、重晶石、ガラス繊維、タルク、カオリンまたはチョーク、あるいは充填効果または顔料効果に加えて、例えばポリマー組成物に対して安定化効果も与えることがある金属硫酸エステル、例えば重金属硫酸エステル。
【0025】
全ポリマー組成物における顔料もしくは充填材、または1つ以上の顔料と1つ以上の充填材との混合物の割合は、ポリマー組成物に対して0.1〜80重量%である。本発明に関して、ポリマー組成物は、少量の顔料または充填材のみを含み、例えば0.5〜約10または1〜約5重量%である。また、本発明に関するポリマー組成物は、大量の顔料または充填材もしくはそれらの混合物を含み、例えば、それぞれポリマー組成物全体に対して、約10%〜約75重量%または約20%〜約70重量%または約25%〜約60重量%または約30%〜約55重量%または約35%〜50%または約40%〜約45重量%であることが可能である。
【0026】
本発明のさらなる実施形態において、ポリマー組成物は、安定化剤、他の潤滑剤、軟化剤、ブロッキング防止剤、抗凝結剤(antibeschlagmitteln)、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料、推進剤、充填材、油脂、油、抗酸化剤、溶剤およびそれらの2以上の混合物からなる群より選択される組成物成分として、他の添加剤を含む。プラスチック製造に関して標準的な他の添加剤もまた添加することができる。
【0027】
安定化剤は、高温での分解または化学的な変化からPVCなどのプラスチックを保護する。したがって、安定化剤は耐候性を改善する。例えば、鉛(Blei)、カルシウム、亜鉛、バリウムまたはスズに基づく化合物が用いられる。
【0028】
他の潤滑剤は、例えばポリマー鎖間の摩擦を低下させることによってポリマー処理を容易にするために、及びその流動体の壁への吸着を低下させるのを助けるために用いられる。頻繁に用いられる潤滑剤は、金属石鹸、例えば鉛、及びいわゆる安定化剤としても同時に作用し得るステアリン酸カルシウムおよび二ラウリン酸カルシウムがある。
【0029】
軟化剤は、プラスチックに展性および屈曲性を与える。多くの軟化剤は、フタル酸基(DEHP、DINPおよびDIDP)ならびにアジピン酸塩およびクエン酸塩に属する。
【0030】
かぶり防止剤は、表面上での凝結の形成を予防するために設計される。そのようなかぶり防止剤は、例えば、DE 10 2004 038 980 AIおよびPlastics Additives Handbook、第5版、Hanser Verlag、609頁〜626頁に列記されており、Cognis Oleochemicals GmbHから注文することができる。
【0031】
ブロッキング防止剤は、コートした表面の相互の、もしくは基材への堆積(「ブロッキング」)を妨げるか、または低下させる添加剤である(例えば付着またはパッケージされた場合に)。特定の仕事量での経過時間、乾燥の程度、層の厚み、圧力または温度に応じて、コーティング材料に通常添加され、乾燥相の間に、表面に達する適切な離型剤が選択されるべきである。この目的に関して、特に、パラフィン、ポリエチレン、ワックス、ワックスエステル、シリコン油、ステアリン酸塩、変性シリカおよびタルクが用いられる。
【0032】
溶剤として、水または有機溶剤、例えばアルコール、例えばポリグリコール、特にポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、もしくは上記の混合物を用いることができる。
【0033】
デュロマー(「デュロプラスチック」)ならびに熱硬化性ポリマーは両方とも、原則として、本発明に関して用いることができる。ポリマー組成物は、好ましくは熱可塑性または伸縮性のポリマー組成物である。熱可塑性ポリマー組成物は、特定の温度範囲以上で可逆的に変形可能である。本発明のさらなる実施形態において、ポリマー組成物は、架橋されていないか、または例えばエラストマー製造のために架橋され得る。
【0034】
安定化剤は、高温での分解または化学的な変化からPVCなどのプラスチックを保護して、耐候性を改善する。例えば、鉛、カルシウム、亜鉛、バリウムまたはスズに基づく化合物が用いられる。
【0035】
水または有機溶剤、例えばアルコールを溶剤として用いることができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物が用いられる。熱可塑性ポリマー組成物は、特定の温度範囲以上で可逆的に変形可能である。本発明の他の実施形態において、ポリマー組成物は、非網状(nicht vernetzte)、網状(vernetzbare)のポリマー組成物、例えばエラストマーの製造のためのポリマー組成物がある。
【0037】
本発明の他の対象は、モールドの製造のための方法であり、本発明のポリマー組成物はモールドなどを作製するために処理される。本発明の意味において「モールド」は、成形して、3次元の空間形態を作り出すための高分子物質である。それは、熱変形により得られるモールドであってもよい。そのようなモールドは、例えば確立された処理にしたがって、熱可塑性物質の処理により得られる。しかしながら、モールドは、網状のモールドまたは加硫処理されたモールドであってもよい。そのようなモールドは、例えばエラストマーを処理することにより得られる。
【0038】
本発明の他の対象は、本発明に関するポリマー組成物を含むモールド、または本発明に関するポリマー組成物から作製されるモールドである。
【0039】
本発明に関する熱可塑性ポリマー組成物は、一般に成形されて、一般に許容される処理に従って、本発明に関するモールドを作り出すことができる。前記方法において、ポリマー調製は、公知の方法に従って、例えば添加剤の作用により、またはポリマー組成物を顆粒、粉末、ペーストまたは溶液などの適切な形態に変換することにより、初期には硬化させてもよい。要すれば、ポリマー組成物は機械的に処理し、すなわち分散、混錬または顆粒化する。モールドを作製するための処理は、例えば射出成形または押し出し成形の方法がある。要すれば、モールドの一部を、再加工し、すなわち成形し、切り出し、表面処理または接合する。修復可能なポリマー組成物は、押圧または成形後に硬化して、モールドの一部にする。
【0040】
成形品の製造に用いる方法の他の態様は、以下の工程を含む:
I)本発明に関する熱可塑性ポリマー組成物を供給する工程;
II)前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度にまで、または前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度超の温度にまで、前記熱可塑性組成物を加熱する工程;
III)工程II)で生成され、および加熱された熱可塑性組成物から成形品を作製する工程。
【0041】
成形品を製造することに関する、本発明にかかる方法の工程I)において、本発明にかかる熱可塑性組成物を、まず利用可能に作製し、前記組成物は好ましくは本発明にかかる方法の第一の形態に従う方法により提供される。
【0042】
次いで、方法の工程II)において、熱可塑性組成物を、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度にまで、または熱可塑性ポリマーのガラス転移温度未満の温度にまで加熱する。この文脈において、次いで、熱可塑性組成物の加熱は、用いた熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(T)の5℃下の温度から最大で前記ガラス転移温度の100℃上までの範囲であり、特に好ましくは、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(T)の1℃下の温度からガラス転移温度の50℃上までの範囲であり、ここで、温度範囲の上限の境界は、基本的に、用いる熱可塑性ポリマーの熱分解温度に依存する。
【0043】
原則として、方法の工程I)およびII)は、同時にまたは別個に実施されてよい。方法の工程I)およびII)の同時の実施は、例えば熱可塑性組成物が融解・混合方法により生成される場合に有用である。この場合には、また、融解・混合方法により生成した組成物を直接成形品に変換することが有利であり得る。方法の工程I)およびII)の連続実施は、例えば熱可塑性ポリマーが乾燥混合方法により生成される場合であるが、あるいは熱可塑性ポリマーが融解・混合方法により生成される場合で、成形品が生成直後に形成されず、代わりに方法の工程V)に従って冷却させる場合には、良い考えである。
【0044】
成形品を製造するための本発明の方法の工程III)において、成形品は、方法の工程II)で生成および加熱された熱可塑性ポリマーから作り出される。成形品の製造方法として、以下が考えられる:射出成形、押し出し成形、圧縮成形、層成形(das Schichtformen)、積層成形、中空成形(das Hohlformen)、真空成形およびトランスファー成形があり、押し出し成形が特に好ましい。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、方法の工程III)で得られた成形品の少なくとも一部は、他の方法の工程IV)において、方法の工程III)に対するマス横断面(seinem Massequerschnitt)が減少する。
【0046】
本発明の対象は、また、方法の工程として、本発明にかかる材料および成形品を供給する工程、ならびに材料を成形品により少なくとも部分的に取り囲む工程を含む、梱包材を製造する方法である。
【0047】
熱可塑性成形品を製造するための本発明に関する方法の他の実施形態は、少なくとも1つの付加的な方法の工程IV)において、方法の工程III)で得られた成形品の少なくとも一部が成形品のブランクとして供給され、そのマス横断面が減少するものである。マス横断面は、本発明に関する熱可塑性モールドの塊で強固に構成される成形品の、ある領域の横断面である。例えば、容器または器の場合、マス横断面は、前記容器または器の壁の厚みである。糸または繊維の形態の成形品の場合、マス横断面は、糸または繊維の厚みである。ボード、レイヤー、織物、フィルムなどの平らな形態の場合、マス横断面は、平らな形態の厚みである。マス横断面の減少に関し、当業者に公知の適切な方法のすべてが、原則として考えられる。これらには、一方向または二方向への引き延ばし、一方向または二方向への引き抜き、紡糸または吹き付けが挙げられ、好ましくは本発明にかかる熱可塑性組成物が容易に引き延ばし、引き抜き、紡糸もしくは吹き付けできるよう柔らかくなるか、または液体にさえなる両方の高温が挙げられる。横断面減少を実施する部分的な範囲は、工程III)で得られた成形品の好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは80%を占める。一般に、繊維が工程III)で得られる成形品から得られる場合、引き延ばし又は引き抜きが実施される。フィルムの製造では、1つ以上の方向の引き抜き又は引き延ばしが実施され得る。このように、押し出し成形器を使うシートは、押し出し成形器からの排出速度と比べて高速のローラーで傷付き得る。他方で、容器または器が得られる場合、工程IV)で引き抜き及び紡糸、主として吹き付けが用いられる。この目的について、マス横断面は、ガス圧力の適用により減少する。このガス圧力は、概して工程III)で得られる成形品の少なくともガラス転移温度にまで一般に加熱される可塑性組成物を引き延ばすことができるように選択される。通常、引き延ばしは、モールドの最終形態を有する形態の使用により制限される。2以上の方法の工程I)〜IV)を、さらなる方法の工程により補足することができ、および/または少なくとも時間的に重なってもよい。これは、特に方法の工程III)およびIV)に適用する。
【0048】
最初に記載した課題の少なくとも1つの解決手段は、方法工程として以下を含む、梱包材の製造方法により引き続き提供される:
a)材料および成形品、特にフィルムを提供する工程であって、前記の成形品は上記方法で得ることができる;
b)前記の材料を前記の成形品で少なくとも部分的に取り囲む工程。
【0049】
方法の工程a)で提供される材料は、例えば医薬品、化粧品または食品であってよい。材料の少なくとも部分的な取り囲みは、例えば、DE−A−103 56 769に記載の方法により実施することができる。
【0050】
本発明のこの使用および潤滑剤としての使用を通じて、本発明の基礎をなす課題が取り扱われる。
【0051】
実施例の項
1.本発明にかかる潤滑剤の製造:
実施例1:
ジステアリルフタレート(Distearylphthalat)、Loxiol G 60、Cognis-Oleochemicals
【0052】
実施例2:
エチレングリコール・ジパルミテート
90gのエチレングリコール(Fluka)、571gのパルミチン酸(Edenol C16 98-100、Cognis-Oleochemicals)および0.3gのスズ(II)オキサラート Goldschmidt)を窒素下で加熱した。エステル化反応は、約170℃にて開始し、水の形成を伴う。3時間後に、さらに真空し、そして4時間以内に約15mbarにまで低下した真空を適用することによって、反応水を抜き取った。最終的な温度は、230℃であった。6未満の酸価で、反応は終了した。それを、90℃にまで冷却し、濾過した。収量;568g、酸価=3.9、露点;70.5℃。
【0053】
実施例2:
Rilanit AGS、Cognisからのステアリン酸/パルミチン酸混合物(約50%:50%)によるエチレングリコールエステル
2.乾式混合の作製
PVC粉末およびさまざまな添加剤から、乾式混合物を、Henschel製の混合機中で作製し(材料の重量=3kg、加熱温度=120℃、続いて冷却)、組成は、以下の表から得られるものである。硫酸鉛もまた、顔料としてこれらの実施例で作用する。
実施例: Bl B2 B3
PVC Evipol SH 6520 100 100 100
三塩基性硫酸鉛 2 2 2
ステアリン酸鉛28% 0.5 0.5 0.5
ステアリン酸カルシウム 0.5 0.5 0.5
ジステアリルフタレート 1 − −
エチレングリコール・ジパルミテート − 1 −
RilanitAGS − − 1
【0054】
3.フラット・リボンの作製
乾式混合物を、Weber製の2軸スクリュー押し出し機にて押し出し、フラット・リボンを作製した(押し出しのパラメータ:速度=15rpm;温度=190℃)。最終のリボンの光沢は、DIN 67530により決定した。5回の測定を実施し、平均を得た。
光沢% B1 B2 B3
55.1 65.7 40.0
55.2 63.6 44.1
54.3 59.3 48.0
48.5 62.1 39.3
50.9 61.8 43.3
平均値: 52.8 62.5 44.36
【0055】
本発明かかる潤滑剤(B2)は、非常に滑らかな表面および非常に高い光沢を与えた。ジステアリルフタレート(B1)は、当該適用で一般に用いられる潤滑剤であり、本明細書中での比較のために存在する。最も悪い表面は、非対称のエチレングリコールエステル(B3)を含む潤滑剤により得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、組成物成分として、
Z1 前記ポリマー組成物に対して少なくとも15重量%の、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー;
Z2 前記ポリマー組成物に対して0.001〜15重量%の、6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個のC原子を含有する直鎖ジオールのジエステル;および
Z3 前記ポリマー組成物に対して0.1〜80重量%の、少なくとも1つの顔料または少なくとも1つの充填材、もしくはそれらの混合物を含み、
ジオール上に種々の脂肪酸残基を有する前記のジエステルの量が、前記ジエステルの総量に対して10重量%未満、または前記ジエステルの総量に対して8重量%未満である、ポリマー組成物。
【請求項2】
対称性のジエステルが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールのジエステルである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記の対称性のジエステルが、8〜22個のC原子を含有する直鎖飽和または不飽和モノカルボン酸のジエステルである、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記の対称性のジエステルが、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびベヘン酸からなる群より選択される脂肪酸を含有するエチレングリコールのジエステルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ジエステルまたは2以上のジエステルの混合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ジエステルまたは2以上のジエステルの混合物を、約0.01〜約10重量%または約0.1〜約5重量%の量で含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ジオール上に種々の脂肪酸残基を有するジエステルの量が、前記のジエステルの総量に対して、それぞれ少なくとも0.1重量%または0.01重量%または0.001重量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン・テレフタレート、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリスチロール、ポリウレタン、ポリエーテル、ゴムおよび前記の少なくとも2つからなる共重合体からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
充填材もしくは2以上の充填材、顔料または少なくとも2つもしくは2以上の顔料、あるいは充填材と顔料との混合物が、ポリマー組成物全体に対して0.05〜60重量%または1〜50重量%で含まれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの又は複数の添加物を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
添加剤として、安定化剤、他の潤滑剤、軟化剤、ブロッキング防止剤、かぶり防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、推進剤、油脂、油、抗酸化剤、酸補足、核形成剤および溶剤、ならびにそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
ポリマー組成物の製造方法であって、少なくとも以下の組成物成分
Z1 前記ポリマー組成物に対して少なくとも15重量%の、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー;
Z2 前記ポリマー組成物に対して0.001〜15重量%の、6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖ジオールのジエステル;および
Z3 前記ポリマー組成物に対して0.1〜80重量%の、少なくとも1つの顔料または少なくとも1つの充填材、もしくはそれらの混合物を接触させ、
分子中に種々の脂肪酸残基を有するジエステルの量が、前記のジエステルの総量に対して10重量%未満、または前記のジエステルの総量に対して8重量%未満であることを特徴とする、製造方法。
【請求項13】
成形品を製造する方法であって、
I)請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリマー組成物を供給する工程;
II)前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度にまで、または前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度超の温度にまで、前記熱可塑性組成物を加熱する工程;
III)工程II)で生成され、および加熱された熱可塑性組成物から成形品を作製する工程を含む、方法。
【請求項14】
工程III)で得られた成形品の少なくとも一部分の領域は、さらなる方法の工程IV)において、工程III)に対するマス横断面が減少することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記成形品が、容器、フィルムおよび繊維からなる群より選択される、請求項13または14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
梱包材を製造する方法であって、
a)材料および請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法で得られる成形品を供給する工程;
b)前記の材料を前記の成形品で少なくとも部分的に取り囲む工程;
を含む、方法。
【請求項17】
6〜44個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和モノカルボン酸を有する2〜8個のC原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖ジオールのジエステルの使用であって、ジオール上に種々の脂肪酸残基を有するジエステルの量が、熱可塑性ポリマーの潤滑剤として、前記のジエステルの総量に対して10重量%未満であるか、または前記のジエステルの総量に対して8重量%未満である、使用。

【公表番号】特表2012−510548(P2012−510548A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538958(P2011−538958)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065869
【国際公開番号】WO2010/063631
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511133646)エメリー・オレオケミカルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】EMERY OLEOCHEMICALS GMBH
【Fターム(参考)】