説明

熱可塑性廃プラスチックの減容装置

【課題】熱風を用いた熱可塑性廃プラスチックの減容装置おいて、密閉が破れた場合にも内部の温度が大幅に下がらず、かつ外部へ放出される臭気成分の量を減らす。
【解決手段】減容装置の投入口10付近に、鉄製の平板を積層してなる蓄熱体30を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性プラスチックの廃棄物の処理装置に関し、詳しくは熱可塑性の発泡プラスチックの廃棄物を熱風を利用して減容処理する密閉型の減容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性のプラスチックを発泡させたものは、そのすぐれた様々な特性により、保温材、断熱材、梱包材などとして様々な分野において広く用いられている。
【0003】
そのため、廃棄物(以下、「熱可塑性廃プラスチック」という。)として排出される量も膨大なものとなるが、発泡性プラスチックは比重が小さく体積が大きいので、廃棄処理又は再生処理するために効率的に回収・保管するにはあらかじめ減容処理を行う必要がある。
【0004】
この熱可塑性廃プラスチックの減容処理の方法としては、熱風、加熱水蒸気又はヒーターにより溶融して減容する方法が知られている。
【0005】
また、減容処理装置としては、例えば、回転切断歯により粉砕した廃プラスチックを溶融してスクリューで押し出すことにより、連続的に減容処理する装置が特許文献1に開示されている。
【0006】
しかしながら、このような連続式の処理装置は開放型の構造となるため二次空気の量が多くなり、熱可塑性廃プラスチックが溶融する際に発生する分解ガスを脱臭する脱臭装置が大型化してしまうという問題あった。
【0007】
従って、現在では、二次空気の量を少なくして脱臭装置を小型化できる密閉式の減容装置が多く用いられており、例えば、循環する熱風により減容処理を行う密閉式の減容装置が特許文献2に開示されている(図6参照)。
【0008】
しかし、このような減容装置においては、熱可塑性廃プラスチック11の投入口10や受け箱6の搬出入口13、14を開閉する際に装置内部の密閉が破られて内部の熱が逃げることにより内部の温度が大きく低下してしまうため、運転温度の回復に時間がかかり減容処理の効率が低下してしまうという課題があった。
【0009】
また、密封が破られた際に熱分解ガスが外部へ放出されてしまうため、その中に含まれる臭気成分により周辺環境に悪影響を与えるという課題もあった。
【特許文献1】特公昭54−17353号公報
【特許文献2】特公平6−24727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、密閉が破られても内部の温度が大きく低下せず短時間で運転温度を回復することができ、しかも外部への臭気成分の放出が少ない熱可塑性廃プラスチックの減容装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、開閉可能な投入口を介して供給された熱可塑性廃プラスチックを、加熱され循環する熱風により溶融して減容する熱可塑性廃プラスチックの減容装置において、前記投入口の近傍に蓄熱体を配置したことを特徴とする熱可塑性廃プラスチックの減容装置である。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、前記投入口の扉が開かれたときには、前記熱風の加熱及び循環が停止又は低下することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置である。
【0013】
ここで、「低下」とは、熱風の加熱及び循環がほぼ停止状態になることを意味する。
請求項3に記載の本発明は、前記蓄熱体は、複数の金属製の平板を所定の間隔をおいて積層してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置である。
【0014】
請求項4に記載の本発明は、前記蓄熱体は、複数の金属製の平板と複数の板状のヒーターとを所定の間隔をおいて積層してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置である。
【0015】
請求項5に記載の本発明は、前記蓄熱体は、複数の金属製の平板を所定の間隔をおいて積層し、前記平板間に交互に反対の電位差が生じるように電圧を加えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、加熱され循環する熱風を用いた熱可塑性廃プラスチックの減容装置の内部に蓄熱体を設けた。
【0017】
このような構成により、蓄熱体に減容装置内の熱エネルギーを保持することができるため、投入口などが開かれて密閉が破られた場合でも減容装置内部の温度の大幅な低下を防ぐことができ、その後に投入口などが閉じられた場合には短時間で運転温度を回復することができる。
【0018】
また、投入口が開いた場合に熱風の加熱・循環が停止又は低下するようにしたため、減容装置内の温度低下を更に防ぐことができ、再び投入口が閉じられた場合には、より短時間で運転温度を回復することができる。
【0019】
上記の蓄熱体を複数の金属製の平板を所定の間隔をおいて積層した構造とすることにより、溶融した熱可塑性廃プラスチックからの熱分解ガスに含まれる臭気成分を蓄熱体で捕捉することができるため、外部への放出量を低減することもできる。
【0020】
また、上記の蓄熱体を複数の金属製の平板と複数の板状のヒーターとを所定の間隔をおいて積層した構造とすることにより、減容装置内部の温度の大幅な低下を更に防ぐことができる。
【0021】
更に、上記の蓄熱体を複数の金属製の平板を所定の間隔をおいて積層し、前記平板間に交互に反対の電位差が生じるように電圧を加えるようにしたことにより、熱可塑性廃プラスチックの小片を集塵して、スチレンガスの発生を防ぐこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る熱可塑性廃プラスチックの減容装置を図1に示す。図1は、減容装置の構造を示す断面図であり、図6と同じ部分には同一の符号を付している。
【0023】
この熱可塑性廃プラスチックの減容装置(以下、「減容装置」という。)は、鉄板1で内張された耐熱レンガ2からなる本体3の内部に設けられた加熱部4、養生室5、受け箱6、加熱脱臭部8、耐熱送風機9及び投入口10から主に構成される。
【0024】
投入口10は、減容装置の内部に熱可塑性廃プラスチック11を供給するためのものであり、開閉可能な扉などにより減容装置内部を密閉できるようになっている。
【0025】
加熱部4は投入口10を介して外部から投入された熱可塑性廃プラスチック11を溶融して減容するものであり、その下部には受け箱6の上方へ通じる漏斗状のシュート12が設けられている。
【0026】
養生室5は減容装置の下部に設置されており、扉式の搬出口13を介して挿入された受け箱6内に収納された熱可塑性廃プラスチック11の減容を更に進めるものである。減容処理された熱可塑性廃プラスチック11は、同じく扉式の搬出口14を通じて受け箱7とともに取り出される。
【0027】
加熱脱臭部8は、熱可塑性廃プラスチック11が溶融の際に発生する熱分解ガスをヒータで加熱・酸化して除去するものであり、加熱部4の上方に配置されて熱風通路15へと接続している。
【0028】
耐熱送風機9は、加熱脱臭部8で再加熱されて熱風通路15を通ってきた熱風16を、減容装置の内部で循環するように再び送り出すものである。
【0029】
また、投入口10、搬出口13及び搬出口14にはマイクロスイッチ(図示せず)が設けられており、扉が開かれたときには、加熱脱臭装置8及び耐熱送風機9の運転が停止又は低速状態まで減速するようになっている。
【0030】
蓄熱体30は、あらかじめ熱エネルギーを保持して、減容装置の密閉が破られた場合には内部の温度低下を防ぐとともに、熱風17に含まれる臭気成分を除去するものである。そのため、設置場所としては、熱風17の流路であって投入口10の近傍がよいが、メンテナンス及び臭気成分のフィルター効果を高める観点から、加熱脱臭部8の入口付近に近づけて設置されるのが望ましい。
【0031】
蓄熱体の実施形態を図2に示す。図2は、蓄熱体の構造を示す斜視図である。
蓄熱体30は、金属製の平板からなる蓄熱板31を所定の間隔をおいて積層した構造を有している。本図においては、蓄熱体30は各蓄熱板31の間にスペーサ32を挟み両端部からボルト23で締付固定することにより製作されているが、製作方法はこれに限られず、例えば蓄熱板31の周辺部を複数の棒状体に溶接してカゴ状に形成する方法などでもよい。
【0032】
また、各蓄熱板31の固定位置を互いにずらすことにより、熱風17が当たる表面積を増加させてフィルター効果を高めることができる。
【0033】
なお、蓄熱板31の枚数は、図2に示すものに限られるものではなく、装置の大きさや性能に応じて変わることはもちろんである。
【0034】
この蓄熱体30を減容装置の内部に設置する際には、熱風17の流れに対して蓄熱板31が並行になるような向きに固定される。
【0035】
密閉が破られたときに蓄熱体30から熱エネルギーを放出させて内部の温度低下を防ぐためには、蓄熱板31の材料の比熱は空気よりも小さい必要があり、例えば鉄、銅、アルミニウムなどを用いることができるが、耐熱性及び強度の観点から鉄を用いることが望ましい。
【0036】
このような構造を有する減容装置の動作を以下に説明する。
減容装置正面に設けられた投入口10を介して内部へ供給された熱可塑性廃プラスチック11は、投入口10が閉じられて内部が密封された状態で加熱部4内で下方から吹き上げる高温(例えば、運転温度である約215℃)の熱風17により徐々に溶融され、シュート12に沿って下方へ向かって流動落下して受け箱6の中に収納される。
【0037】
この受け箱6の上方からは、シュート12の下端部と養生室5の上部隔壁との間に設けられたスリット状の開口部18から熱風が吹き付けるようになっているため、受け箱6に収納された熱可塑性廃プラスチック11は溶融が進み更に減容される。
【0038】
熱可塑性廃プラスチック11が溶融する際に発生した熱分解ガスは、熱風17と共に加熱脱臭部8へ吸引されて加熱により酸化除去される。熱分解ガスが除去された熱風16は、再び耐熱送風機9により上部ジャケット19へ送り出され、養生室5や下部ジャケット20を通じて加熱部4へ循環される。
【0039】
所定量の熱可塑性廃プラスチック11が受け箱6の中に収納されたことが確認されると、受け箱6は養生室5の受け箱7の位置に移動され、しかるのちに搬出口7から外部へ取り出される。
【0040】
ここで、熱可塑性廃プラスチック11を溶融した後の熱風17の大部分は、蓄熱体30に吹き付けて蓄熱板31間の隙間を通ってから加熱脱臭部8へ吸引される。
【0041】
このとき、蓄熱板31の材料である鉄の比熱は空気の比熱の半分以下であるため、熱風17の有する熱は容易に蓄熱体30に移動して熱エネルギーとして保持される。また、熱分解ガスに含有される臭気成分の一部は、蓄熱板31に衝突して、その表面にタール状となって付着することにより捕捉される。
【0042】
このような状態で、例えば新たな熱可塑性廃プラスチック11を供給するため投入口10が開かれて減容装置内部の密閉が破られると、加熱脱臭装置8と耐熱送風機9の運転が停止又は低速状態に減速するため熱風17の加熱・循環がほとんどなくなるとともに、蓄熱体30に蓄えられた熱エネルギーが放出されることにより、減容装置内部の温度の大幅な低下を防ぐことができる。
【0043】
また、臭気物質の一部が蓄熱体30に捕捉されているため、外部環境へ放出される量を減少させることができる。
【0044】
なお、このように蓄熱体30には臭気成分が付着するため、図3に示すように、減容装置の天井部に交換扉40を設けて外部から蓄熱体30を交換可能な構造とすることが好ましい。
【0045】
そして、新たな熱可塑性廃プラスチック11の減容処理のため再び投入口10が閉じられると、加熱脱臭装置8と耐熱送風機9が運転状態に復帰し、循環する熱風17により蓄熱体30の熱エネルギーが減容装置内の全体へ運ばれるため、短時間のうちに運転温度を回復することができる。
【0046】
なお、蓄熱体30については、図4に示すように、それぞれの蓄熱板31の表面にプレートヒーター34を設けて、蓄熱体30の温度を上げることで減容装置内部の温度低下を更に小さくすることができる。
【0047】
また、加熱部4内で熱可塑性廃プラスチック11の小片が舞い上がり、加熱脱臭部8において燃焼してスチレンガス等を発生させることを防ぐため、図5に示すように、各蓄熱板31間に交互に反対の電荷が生じるように微弱な直流電圧をかけて、静電気の効果により小片を集塵することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明にかかる熱可塑性廃プラスチックの減容装置の断面図である。
【図2】蓄熱体の実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明にかかる熱可塑性廃プラスチックの減容装置の別の実施形態である。
【図4】蓄熱体の別の実施形態を示す斜視図である。
【図5】蓄熱体の更に別の実施形態を示す斜視図である。
【図6】従来の熱可塑性廃プラスチックの減容装置の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 鉄製ライナー 2 耐熱レンガ3 本体
4 加熱部 5 養生室 6 受け箱
7 収容後の受け箱 8 加熱脱臭部9 耐熱送風機
10 投入口 11 熱可塑性廃プラスチック12 シュート
13 搬入口 14 搬出口 15 熱風通路
16 熱風通路内の熱風 17 加熱部内の熱風 18 開口部
19 上部ジャケット20 下部ジャケット
30 蓄熱体 31 蓄熱板 32 スペーサ
33 ボルト 34 プレートヒーター 35 直流電圧源
36 導線
40 交換扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な投入口を介して供給された熱可塑性廃プラスチックを、加熱され循環する熱風により溶融して減容する熱可塑性廃プラスチックの減容装置において、
前記投入口の近傍に蓄熱体を配置したことを特徴とする熱可塑性廃プラスチックの減容装置。
【請求項2】
前記投入口が開いたときには前記熱風の加熱及び循環が停止又は低下することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置。
【請求項3】
前記蓄熱体は、複数の金属製の平板を所定の間隔をおいて積層してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置。
【請求項4】
前記蓄熱体は、複数の金属製の平板と複数の板状のヒーターとを所定の間隔をおいて積層してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置。
【請求項5】
前記蓄熱体は、複数の金属製の平板を所定の間隔をおいて積層し、前記平板間に交互に反対の電位差が生じるように電圧を加えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性廃プラスチックの減容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−190851(P2007−190851A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12392(P2006−12392)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000129482)株式会社クラウド (8)
【Fターム(参考)】