説明

熱可塑性樹脂用造粒装置

【課題】側壁のない建屋に設置されたとしても、運転中のダイス表面とカッタシャフト軸心との精度が天候に影響されて変化し、溶融熱可塑性樹脂の切断に悪影響を及ぼすことのない熱可塑性樹脂用造粒装置を提供する。
【解決手段】カッタシャフト5が略円筒状のドライブハウジング4に軸受5a,5bを介して嵌挿されると共に、嵌挿された前記カッタシャフト5の先端にカッタ刃3が取付けられ、前記カッタシャフト5を介してこのカッタ刃3をダイス1に押付けるカッタ刃押付手段が備えられる一方、前記カッタシャフト5の後端に駆動モータが連結され、この駆動モータの回転運動が、前記カッタシャフト5を介して前記カッタ刃3に伝達されることにより、前記ダイス1のノズル1aから押出された溶融熱可塑性樹脂を切断してペレット化する熱可塑性樹脂用造粒装置において、前記ドライブハウジング4外周を包囲する防風フード8が取り付けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の造粒装置に関し、更に詳しくは、ダイス表面とカッタシャフト軸心との精度(直角度)向上を図り得る熱可塑性樹脂用造粒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例に係る熱可塑性樹脂の造粒装置は、通常略円筒状のドライブハウジング内の前後2箇所に軸支されたカッタシャフトの後端が、カップリングを介して駆動モータと連結される一方、前記カッタシャフトの先端にカッタ刃が取り付けられている。また、前記カッタシャフトを介して、このカッタ刃をダイスに押し付けるカッタ刃押付手段が備えられている。前記カッタ刃押付手段としては、空圧や油圧を用いた流体圧シリンダが一般的に用いられている。そして、前記駆動モータを回転させることによって、前記カッタシャフトを介して前記カッタ刃を回転し、前記ダイスのノズルより押出された溶融熱可塑性を切断してペレット化するのである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この様な熱可塑性樹脂用造粒装置においては、外形々状が良好で粒度が揃い、ヒゲ等のないペレットを製造することが要求され、その様な要求を満足するためには、前記ダイス表面とカッタシャフト軸心との精度(直角度)、即ちダイス表面とカッタ刃との精度(平行度)が最も肝要となる。そのため、前記造粒装置の運転に際しては、出来るだけ運転中と同一条件とするため、事前に前記装置を運転温度に加熱して均一な温度に達した状態で、ダイス表面とカッタシャフト軸心との直角度を測定及び修正して、目標精度に調整した後、実運転を行うことが一般的に行われている。しかしながら、この様な精度の事前調整にも拘わらず、運転条件等によっては経時的な精度変化を生じることがある。
【0004】
この様な精度変化に対し改善を図った従来例に係る樹脂造粒機につき、以下図7を参照しながら説明する。図7は従来例の実施の形態に係り、樹脂造粒機のダイプレートに、ナイフホルダに取り付けられたナイフが押し当てられている状態を示す一部断面示側面図である。
【0005】
この従来例に係る樹脂造粒機によれば、回転軸22により回転されるナイフホルダ23に、ゴムシート25を介してナイフ24が弾性支持されている。前記ゴムシート25の弾性支持によって、ダイプレート21と回転軸22との直角度が高精度でなくても、またナイフ24の全てが均一厚さでなくても、更にナイフ24の基端から先端までの厚さが均一でなくても、前記ゴムシート25の変形によってナイフ24がダイプレート21に沿うので、難しい心出し作業も行うまでもなく樹脂造粒機を組立てることができると共に、均一な粒径の樹脂ペレットを製造可能となる。
【0006】
しかしながら、大型造粒プラントでは、設置領域が防爆地域に指定され、そのプラントに設置される造粒装置は側壁のない建屋に設置されることがある。造粒装置がこの様な側壁のない建屋に設置された場合、上述の如く、運転開始前に前記装置を運転温度に加熱して均一温度に達した状態で、ダイス表面とカッタシャフト軸心との精度調整を行うものの、その日の天候状態により組立精度が変化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−218727号公報
【特許文献2】特開平11−17923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、上記知見に基づいて、従来例に係る熱可塑性樹脂用造粒装置を鋭意調査したところ、特に強風日において、溶融した熱可塑性樹脂の切断に悪影響を及ぼすことが分かった。即ち、本発明は、強風日においては、横方向の風向きによりドライブハウジングの各部位で温度差が大きくなることがあり、この温度差がダイス表面とカッタシャフト軸心との精度を変化させていることを知見してなし得たものである。
【0009】
従って、本発明の目的は、側壁のない建屋に設置されたとしても、運転中のダイス表面とカッタシャフト軸心との精度が天候に影響されて変化し、溶融熱可塑性樹脂の切断に悪影響を及ぼすことのない熱可塑性樹脂用造粒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置が採用した手段は、カッタシャフトが略円筒状のドライブハウジングに軸受を介して嵌挿されると共に、嵌挿された前記カッタシャフトの先端にカッタ刃が取付けられ、前記カッタシャフトを介してこのカッタ刃をダイスに押付けるカッタ刃押付手段が備えられる一方、前記カッタシャフトの後端に駆動モータが連結され、この駆動モータの回転運動が、前記カッタシャフトを介して前記カッタ刃に伝達されることにより、前記ダイスのノズルから押出された溶融熱可塑性樹脂を切断してペレット化する熱可塑性樹脂用造粒装置において、前記ドライブハウジング外周を包囲する防風フードが取り付けられてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項2に係る熱可塑性樹脂用造粒装置が採用した手段は、請求項1に記載の熱可塑性樹脂用造粒装置において、前記ドライブハウジング後端側の前記防風フード内のカッタシャフトに、前記ドライブハウジングの外周に送風可能なファンが取付けられてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項3に係る熱可塑性樹脂用造粒装置が採用した手段は、請求項2に記載の熱可塑性樹脂用造粒装置において、前記防風フードの前記ファン背面側に、外気取入れ用の通風孔が設けられてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置によれば、カッタシャフトが略円筒状のドライブハウジングに軸受を介して嵌挿されると共に、嵌挿された前記カッタシャフトの先端にカッタ刃が取付けられ、前記カッタシャフトを介してこのカッタ刃をダイスに押付けるカッタ刃押付手段が備えられる一方、前記カッタシャフトの後端に駆動モータが連結され、この駆動モータの回転運動が、前記カッタシャフトを介して前記カッタ刃に伝達されることにより、前記ダイスのノズルから押出された溶融熱可塑性樹脂を切断してペレット化する熱可塑性樹脂用造粒装置において、前記ドライブハウジング外周を包囲する防風フードが取り付けられてなるので、側壁のない建屋に設置されたとしても、天候状況、特に強風時の横風の影響を解消することができ、ダイス表面とカッタシャフト軸心との精度変化を防止可能となることから、安定した運転が可能な信頼性のある熱可塑性樹脂用造粒装置を提供できる。
【0014】
本発明の請求項2に係る熱可塑性樹脂用造粒装置によれば、前記ドライブハウジング後端側の前記防風フード内のカッタシャフトに、前記ドライブハウジングの外周に送風可能なファンが取付けられてなるので、前記防風フードの取り付けにより内部のドライブハウジングの上部と下部に温度差が生ずる恐れがあるが、前記ドライブハウジング全周軸方向に向かう均一な外気の流れが形成されることによって、前記温度差の発生が解消され、ダイス表面とカッタシャフト軸心との精度も保持し得る。
【0015】
本発明の請求項3に係る熱可塑性樹脂用造粒装置によれば、前記防風フードの前記ファン背面側に、外気取入れ用の通風孔が設けられてなるので、前記ドライブハウジングに対して軸方向に向かう強制的な外気の流れが形成され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置を示す立面図である。
【図2】図1の要部を拡大した立断面を示す要部立断面図である。
【図3】図1の要部を平面視した要部平面図である。
【図4】図1の矢視A−Aを示す矢視図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る熱可塑性樹脂用造粒装置を示す立面図である。
【図6】図5の矢視B−Bを示す矢視図であり、防風フードの通風孔該等箇所を二点鎖線で示す。
【図7】従来例の実施の形態に係り、樹脂増粒機のダイプレートに、ナイフホルダに取り付けられたナイフが押し当てられている状態を示す一部断面示側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置について、以下添付図1〜4を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置を示す立面図、図2は図1の要部を拡大した立断面を示す要部立断面図、図3は図1の要部を平面視した要部平面図、図4は図1の矢視A−Aを示す矢視図である。
【0018】
本発明の実施の形態1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置は、熱可塑性樹脂を図示しない混練機や押出機によって溶融・混練し、そのまま或いはギアポンプ等により加圧した後、ダイス1に設けられた多数の小径のノズル1aから溶融樹脂を水室2内に押出し、回転するカッタ刃3により間欠的に切断してペレット化した後、水室2内のペレット冷却水2aによって冷却される。前記カッタ刃3は、ドライブハウジング4内のカッタシャフト5の先端に設けられた刃物ホルダ3aに放射状に取付けられる一方、前記カッタシャフト5の後端にはカップリング7を介して駆動モータMが連結されている。
【0019】
また、前記カッタシャフト5は、前後2組の軸受5a,5bを介して円筒状のドライブハウジング4内に嵌挿された軸受ハウジング6に軸支され、前記駆動モータMによって回転可能に構成されると共に、前記カッタシャフト5を介して、前記カッタ刃3をダイス表面1bに押付ける図示しないカッタ刃押付手段が備えられている。このカッタ刃押付手段としては、空圧や油圧を用いた流体圧シリンダ等を用いることができる。
【0020】
前記流体圧シリンダに供給される流体圧力を調整することによって、カッタ刃3のダイス表面1bへの押付圧が調整可能となる。前記水室2はバネ14を、前記ドライブハウジング4はサポート15を、前記駆動モータMは台座16を介して、夫々キャリッジ13上に固定されている。前記キャリッジ13の下面には、キャスター13aが取り付けられており、ダイス1の交換やノズル1aからのストランド作業スペースの確保等を目的に、移動可能な構造としている。
【0021】
そして、前記駆動モータMの回転運動が、カッタシャフト5を介してカッタ刃3に伝達され、前記カッタ刃押付手段により前記カッタ刃3がダイス表面1bに押付けられながら、このダイス1に設けられた多数のノズル1aより押出された溶融熱可塑性樹脂を切断するのである。従って、図2に示す如く、ドライブシャフト5の軸心Cとダイス表面1bとの直角度の精度維持が、ペレットの品質を保持する上で肝要となる。
【0022】
この様な本発明の実施の形態1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置には、運転中のダイス1とカッタシャフト5との精度が天候に影響されて変化し、溶融熱可塑性樹脂の切断に悪影響を及ぼすことのない様に、前記ドライブハウジング4の外周を包囲する防風フード8が取り付けられている。この防風フード8とカップリングカバー7aとは、キャリッジ13上に直接固定されている。
【0023】
そして更に、本発明の実施の形態1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置には、運転中のペレット冷却水2a(約60℃の温水)温度による水室2の変形の影響によるダイス表面1bとカッタシャフト5との直角度の精度変化を防止するために、タイロッド機構9が設けられている。
【0024】
即ち、このタイロッド機構9は、図3に示す如く、ドライブハウジング4に取り付けられたフランジ4aと、水室2に取り付けられたフランジ10とを4本のタイロッド9aによって締結し、各タイロッド9aのネジの締付量を微調整することにより、押出機ハウジングに取り付けられているダイス1のダイス表面1bと、ドライブハウジング4に収納されているカッタシャフト5の軸心Cとの直角度を調整可能とするものである。前記フランジ10は、図示しない押出機ハウジングに取り付けられたフランジで代用しても同等の効果が得られる。
【0025】
以上の通り、本発明の実施の形態1に係る熱可塑性樹脂用造粒装置によれば、ダイス1のノズル1aから押出された溶融熱可塑性樹脂を切断してペレット化する熱可塑性樹脂用造粒装置において、ドライブハウジング4外周を包囲する防風フード8が取り付けられてなるので、側壁のない建屋に設置されたとしても、天候状況、特に強風時の横風の影響を解消することができ、ダイス1とカッタシャフト4との精度変化により、溶融熱可塑性樹脂の切断に悪影響を及ぼすことがない。
【0026】
次に、本発明の実施の形態2に係る熱可塑性樹脂用造粒装置につき、以下添付図5,6を参照しながら説明する。図5は本発明の実施の形態2に係る熱可塑性樹脂用造粒装置を示す立面図、図6は図5の矢視B−Bを示す矢視図であり、防風フードの通風孔該等箇所を二点鎖線で示す。尚、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、ファンの有無及び防風フードの構成に相違があり、その他は全く同構成であるから、ファン及び防風フードの構成についての説明に止めるものとする。
【0027】
本発明の実施の形態1においては、ドライブハウジング4外周を包囲する防風フード8が取り付けられた構成としたのに対し、本発明の実施の形態2においては、前記ドライブハウジング4外周を包囲する防風フード8が取り付けられると共に、前記ドライブハウジング4後端側の防風フード8内のカッタシャフト5に、前記ドライブハウジング4の外周に送風可能なファン11が取付けられている。
【0028】
造粒装置の運転中、カッタシャフト5は常時回転しているため、このシャフト5を軸支している軸受5a,5bが発熱する。従来例に係る熱可塑性樹脂用造粒装置においては、前記軸受5a,5bを軸支する軸受ハウジング6を介して、この軸受ハウジング6を収納するドライブハウジング4外周面からの自然放冷によって冷却されていた。本発明の実施の形態1においては、ドライブハウジング4外周を包囲する防風フード8が取り付けられることにより、この防風フード8からの熱気の放散状況や運転状況によっては、自然放冷が故に、防風フード8内のドライブハウジング4の上部と下部に温度差が生ずる恐れがある。
【0029】
しかしながら、本発明の実施の形態2に示す如く、ドライブハウジング4後端側の防風フード8内のカッタシャフト5にファン11が取付けられ、前記ドライブハウジング4の周囲に均一に送風することにより、前記ドライブハウジング4の温度を均一にできることから、ダイス1とカッタシャフト5との精度も保持し得る。
【0030】
更に、前記防風フード8の前記ファン11背面側には、外気取入れ用の通風孔12が設けられ、この通風孔12には金網12aが張り付けられるのが好ましい。前記防風フード8に通風孔12が設けられ、この通風孔12には金網12aが張り付けられたので、前記ドライブハウジング4の外周軸方向に向かう強制的な外気の均一な流れが形成され易くなり、前記ドライブハウジング4全体の温度が更に均一化される。
【0031】
以上説明した通り、本発明に係る熱可塑性樹脂用造粒装置によれば、ドライブハウジング外周を包囲する防風フードが取り付けられてなるので、側壁のない建屋に設置されたとしても、天候状況、特に強風時の横風の影響を解消することができ、ダイス表面とカッタシャフト軸心との精度変化を防止可能となることから、安定した運転が可能な信頼性のある熱可塑性樹脂用造粒装置を提供できる。
【符号の説明】
【0032】
M:駆動モータ,
C:ドライブシャフト軸心,
1:ダイス, 1a:ノズル, 1b:ダイス表面,
2:水室, 2a:ペレット冷却水,
3:カッタ刃, 3a:刃物ホルダ,
4:ドライブハウジング, 4a:フランジ,
5:カッタシャフト, 5a,5b:軸受,
6:軸受ハウジング,
7:カップリング, 7a:カップリングカバー,
8:防風フード,
9:タイロッド機構, 9a:タイロッド,
10:フランジ, 11:ファン,
12:通風孔, 12a:金網,
13:キャリッジ, 13a:キャスター,
14:バネ, 15:サポート, 16:台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタシャフトが略円筒状のドライブハウジングに軸受を介して嵌挿されると共に、嵌挿された前記カッタシャフトの先端にカッタ刃が取付けられ、前記カッタシャフトを介してこのカッタ刃をダイスに押付けるカッタ刃押付手段が備えられる一方、前記カッタシャフトの後端に駆動モータが連結され、この駆動モータの回転運動が、前記カッタシャフトを介して前記カッタ刃に伝達されることにより、前記ダイスのノズルから押出された溶融熱可塑性樹脂を切断してペレット化する熱可塑性樹脂用造粒装置において、前記ドライブハウジング外周を包囲する防風フードが取り付けられてなることを特徴とする熱可塑性樹脂用造粒装置。
【請求項2】
前記ドライブハウジング後端側の前記防風フード内のカッタシャフトに、前記ドライブハウジングの外周に送風可能なファンが取付けられてなることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂用造粒装置。
【請求項3】
前記防風フードの前記ファン背面側に、外気取入れ用の通風孔が設けられてなることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂用造粒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−162829(P2010−162829A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8844(P2009−8844)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】