説明

熱可塑性樹脂組成物、及びそれからなる架橋樹脂発泡体の製造方法

【課題】 架橋ポリオレフィン系樹脂を再生利用しても引張強度や伸びなどの機械特性が低下することのない樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂に、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.5〜300g/10分でゲル分率が0.1%以下のポリオレフィン系樹脂再生物を配合したことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。また、以下の工程を包含する架橋樹脂発泡体の製造方法である。
(a)請求項1に記載の樹脂組成物を電子線架橋法、紫外線架橋法、シラン架橋法、および過酸化物架橋法からなる群から選択される少なくとも1種の架橋手段により該樹脂組成物を架橋させて架橋樹脂組成物とする工程。
(b)該架橋樹脂組成物を常圧発泡、型内発泡、押出発泡および化学反応発泡からなる群から選択される少なくとも1種の発泡手段により架橋樹脂発泡体とする工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂にポリオレフィン系樹脂再生物を配合する樹脂組成物、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂廃棄物の処分に関してはそれを再利用することが社会的要請となっている。その樹脂廃棄物が過熱溶融できるものの場合には、例えば、飲料用のPETボトルやPVCフィルムなどのように、それを加熱溶融して再度成形する処置が進められている。
しかしながら架橋ポリオレフィン系樹脂はそれを加熱溶融して再度架橋ポリオレフィン系樹脂として成形することができないという問題がある。そのため、従来の架橋ポリオレフィン系樹脂を処分する手段としては、梱包用の緩衝材として使用するか、焼却することによる熱エネルギーとして再利用されるのが通例であった。しかし、前者は複数回にわたり再利用するマテリアルリサイクルではなく、後者の場合は環境汚染を引き起こす可能性もあることで、経済性や環境面からも多くの課題が残っているのが現状である。
このような課題に応えるため、架橋ポリエチレンを500μm以下まで粉砕した後、高密度ポリエチレン、もしくは直鎖状低密度ポリエチレン80〜60重量%と粉砕した架橋ポリエチレン20〜40重量%とを混合、ペレタイズし、再利用可能な樹脂組成物を得る方法が開示されているが(特許文献1参照)、該粉砕物の配合量が20重量%より少なくなると、引張強度や伸びなどの機械特性が低下し、逆に40重量%を超えると樹脂組成物の溶融粘度が高くなることで成形性が悪くなるなどの問題があり、所望の樹脂組成物を得るには配合量を規定する必要があった。
【0003】
また、低密度ポリエチレン30〜97重量%と220〜420℃の温度、及び0.37kW・h/kg以上の比エネルギーで溶融混練してゲル分率0.1重量%以下のポリエチレン組成物に再生処理したポリエチレン再生物70〜3重量%を配合した樹脂組成物も開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、ポリエチレン再生物のゲル分率が0.1%以下であっても、該ポリエチレン再生物の配合量が70重量%を超えると、得られる成形体の外観、及び高剪断条件化での成形性が低下する問題があり、所望の樹脂組成物を得るには配合量を規定する必要があった。
他にもポリプロピレン樹脂に冷凍粉砕したゲル分率が0.05〜20%の架橋ポリプロプレンをブレンドしてロールミル混錬機で混錬することでポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、ゲル分率20%より高くなると、架橋部分や高分子量の成分が多くなることで、押出機の圧力を安定させることが難しくなり、均一な樹脂組成物が得られないことがあり得る。
【特許文献1】特開平09−157467号公報
【特許文献2】特開平05−098089号公報
【特許文献3】特開2000−1599560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、架橋ポリオレフィン系樹脂を再生利用しても架橋前のポリオレフィン系樹脂と同等に扱え、かつ引張強度や伸びなどの機械特性が低下することのない樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。即ち、
(1) 熱可塑性樹脂に、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.5〜300g/10分でゲル分率が0.1%以下のポリオレフィン系樹脂再生物を配合したことを特徴とする樹脂組成物。
(2) 以下の工程を包含する架橋樹脂発泡体の製造方法。
(a)(1)に記載の樹脂組成物を電子線架橋法、紫外線架橋法、シラン架橋法、および過酸化物架橋法からなる群から選択される少なくとも1種の架橋手段により該樹脂組成物を架橋させて架橋樹脂組成物とする工程。
(b)該架橋樹脂組成物を常圧発泡、型内発泡、押出発泡および化学反応発泡からなる群から選択される少なくとも1種の発泡手段により架橋樹脂発泡体とする工程。
である。
【発明の効果】
【0006】
以上の説明で明らかなように本発明の樹脂組成物、及びその製造方法を用いると、架橋前のポリオレフィン系樹脂と同等に扱うことができ、引張強度や伸びなどの機械特性が低下する問題も無い。これによりマテリアルリサイクルが可能となり、工業的価値も大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
(工程(a)について)本発明の樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えばポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンープロピレン共重合体、エチレンーエチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレートなどのポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニルなど塩素系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、熱可塑性ウレタン等の各種エラストマーが挙げられ、この中でも、特に発泡が容易である点からポリオレフィン系樹脂が好ましく、中でもポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンは汎用性が高く、安価であるという点で好ましく使用され、これらを単独あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂再生物とは上記ポリオレフィン系樹脂、該ポリオレフィン系樹脂を電子線架橋法、紫外線架橋法、シラン架橋法、過酸化物架橋法のいずれかの架橋手段により架橋させた架橋樹脂組成物、またはその架橋樹脂組成物を常圧発泡、型内発泡、押出発泡、化学反応発泡のいずれかの発泡手段で得られる架橋樹脂発泡体を破砕もしくは減容したものを溶融混練した後、押出機から取り出される熱可塑化したポリオレフィン系樹脂再生物である。
【0008】
本発明のポリオレフィン系樹脂、架橋樹脂組成物または架橋樹脂発泡体の破砕の方法としては特に限定されず、例えば通常の破砕機もしくは粉砕機を用いることができる。減容の方法としては特に限定されず、例えばミキシングロール等により圧縮して減容する方法、押出機から押出し減容する方法、溶剤に溶かして減容する方法などが挙げられる。尚、押出機から押出し減容する際、可塑剤として、ブタンジオールやエチレングリコールなどのアルコール類、水酸化ナトリウム水溶液、アルカリ性水溶液、水等を添加することができる。
【0009】
得られる破砕体、もしくは減容体の形状、寸法は、押出機のホッパーよりシリンダー内への投入を容易にすることから規制される。架橋ポリオレフィン系破砕体もしくは減容体の寸法は、50mm程度以下、好ましくは20mm程度以下が適当で、形状は特に規定しない。尚、オフグレード品等のペレットで粒径が20mm以下のものは粉砕せずにそのまま用いることができる。
【0010】
該ポリオレフィン系樹脂再生物は分子鎖が効率的に切断され、過度の分子量低下が無く、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.5〜300g/10分でゲル分率が0.1%以下を有し、かつ架橋部分や、高分子量の成分、低分子量反応に伴って生成した二重結合のレベルを架橋前のポリオレフィン系樹脂に近いレベルに制御する必要がある。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂、架橋樹脂組成物または架橋樹脂発泡体の破砕体、もしくは減容体を溶融混練する方法としては特に限定されず、単軸押出機、2軸押出機などが挙げられ、可塑化処理中に発生する揮発成分を除去するため、必要に応じて真空ベント等の脱気設備を設置しても構わない。押出機の長さ/直径(L/D)比は特に制限はない。押出温度条件は熱可塑性樹脂によって異なり特に限定されるものではないが、好ましくは熱可塑性樹脂の融点温度以上、かつ150℃未満で行う。設定温度が融点以下の場合、剪断を十分にかけたとしてもその摩擦がシリンダー領域にて効果的に作用せず、架橋構造を破壊してゲル分率を十分に低いものにすることが困難であり、逆に分解反応を促進する目的で設定温度が150℃以上であると樹脂の架橋構造の破壊が過度に進行し、悪臭が発生するとともに低分子量成分が増加することとなる。しかし、設定温度を融点温度以上150℃未満に設定し、剪断を十分にかけたとしても完全に可塑化することができず、ゲル分率を0.1%以下に制御することはできない。かかる問題を解決するには融点以上150℃以下の適正な温度域で、かつ2回以上押し出すことが好ましく、これにより架橋樹脂組成物のゲル分率を0.1%以下に制御することが可能となり、かつ架橋部分や、高分子量の成分、低分子量反応に従って生成した二重結合のレベルを架橋前のポリオレフィン系樹脂に近いレベルに制御することが可能となる。
【0012】
なお、押出回数を2回以上行う場合の押出機の設定温度は架橋樹脂組成物の溶融温度により異なるが、2回目以降の設定温度を1回目の設定温度と同等、もしくはそれもよりも低い設定温度であることが好ましい。1回目の温度が低すぎると剪断による摩擦がシリンダー領域にて効果的に作用せず、架橋構造を破壊してゲル分率を十分に低いものにすることが困難になる。また、2回目以降の設定温度が1回目のそれと比べて高い場合、樹脂の架橋構造の破壊が過度に進行しやすくなり、低分子量反応に伴って生成した二重結合が多く生成する。
【0013】
本発明におけるゲル分率とはJIS C3005で記される架橋の程度を表す指標の一つであり、「架橋度」として求められる数値を意味する。より詳細には、得られた架橋樹脂発泡体を質量W1に裁断し、次いで130℃のテトラリン中に浸漬し、撹拌しながら3時間加熱し溶解部分を溶解せしめ、不要部分を取り出しアセトンで洗浄してテトラリンを除去後、純水で洗浄し、アセトンを除去する。次に120℃の熱風乾燥機にて水分を除去後、室温になるまで自然冷却する。この物の質量W2を測定し、以下の式に基づいて算出される数値である。
【0014】
【数1】

【0015】
本発明の樹脂組成物とは、熱可塑性樹脂にメルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.5〜300g/10分でゲル分率が0.1%以下のポリオレフィン系樹脂再生物を配合した組成物を意味している。該樹脂組成物には目的とする製品に応じ酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、架橋助剤、滑剤、帯電防止剤、発泡剤分解促進剤、金属害防止剤などの各種添加剤を単独、もしくは2種類以上併用して添加することができる。
以上を溶融混練した樹脂組成物を、電子線架橋法、紫外線架橋法、シラン架橋法、過酸化物架橋法のいずれかの架橋手段により架橋させて架橋樹脂組成物とする。
(工程(a)について)架橋手段として電子線架橋法が用いられる場合、電子線の照射においては、照射線量は、目的とする架橋度、被照射物の厚み等によって異なるが、通常10〜500kGy、好ましくは50〜300kGyである。照射線量が少なすぎると発泡成形時に気泡を保持するために十分な溶融粘度が得られず、多すぎると得られる架橋樹脂発泡体の成形加工性が低下する。
【0016】
また、該樹脂組成物単独では架橋構造を導入することが困難な場合は、架橋助剤を用いて上記の方法と併用することで架橋構造を導入することができる。架橋助剤としては特に制限は無いが、例えばアクリル基又はメタクリル基を分子構造中に持つ多官能モノマーが用いられ、例としてはジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられ、目的とする製品に応じて樹脂組成物の溶融混練して成形する以前の段階であればいつ添加してもかまわず、熱可塑性樹脂100重量部あたり、1〜7重量部の割合で用いられる。
【0017】
架橋手段として紫外線架橋法が用いられる場合、熱可塑性樹脂には、紫外線により分解して架橋を行う光架橋剤を予め添加しておく必要がある。光架橋剤としては、ラジカル発生型や、イオン発生型のいずれを用いることができ、ラジカル発生型ではベンゾフェノン、イオン発生型ではトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフィンなどが挙げられる。光架橋剤は熱可塑性樹脂100重量部あたり0.1重量部以上の割合で用いられる。
架橋手段としてシラン架橋法が用いられる場合、発泡に先立って樹脂組成物を架橋させる。熱可塑性樹脂に有機系分解型発泡剤およびビニルトリメトキシシラン等のシラン化合物を配合した樹脂組成物を混練し、発泡用母材シートを押出成形した後、ジブチルスズジラウレート等のシラノール縮合触媒および水の存在下でシロキサン縮合反応によってシラン架橋させ、次いで加熱炉に導入して架橋樹脂発泡体を製造する。通常、シラン架橋の架橋助剤は熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0018】
架橋手段として過酸化物架橋法を用いられる場合も、発泡と同時に架橋させる製造方法で、熱可塑性樹脂に有機化酸化物架橋剤を予め添加しておく必要がある。この場合、架橋剤としてはジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物が用いられ、その配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.3〜5重量部割合で用いられる。
以上の架橋手段によって得られる架橋構造が導入された架橋樹脂発泡体はゲル分率を10〜70%にすることが好ましい。架橋度が10%未満であると架橋樹脂発泡体の製造時、発泡ガスの保持力が弱いため表面より発泡ガスが逸散し所定の発泡倍率にならなかったり、表面形態の悪化を招く場合がある。一方、70%を越えると架橋が密になり発泡性や表面の平滑性の点では好ましいが、架橋が密になり過ぎて発泡ガスの保持力が過度になり部分的に気泡の破壊が生じ得る場合がある。
【0019】
(工程(b)について)本発明での発泡手段としては特に限定されず、例えば常圧発泡、型内発泡、押出発泡、化学反応発泡などの手段が挙げられる。
【0020】
発泡手段として常圧発泡を用いられる場合、横型薬液浴上発泡法、縦型熱風発泡法、横型熱風発泡法などがあり、熱分解型発泡剤と熱可塑性樹脂とを予め熱可塑性樹脂の融点以上、熱分解型発泡剤の分解温度以下で溶融混練し、長尺シート状に成形した後、架橋させて常圧化において上記の発泡法によって熱分解型発泡剤の分解温度以上まで架橋樹脂組成物を加熱することにより発泡させる。
【0021】
発泡手段として型内発泡を用いられる場合、圧力容器内の熱可塑性樹脂に高圧化の状態で発泡剤を注入し、発泡剤が溶融した後、容器内の圧力を常圧まで低下させることにより樹脂組成物を発泡させる。
発泡手段として押出発泡を用いられる場合、熱可塑性樹脂を溶融状態で高圧状態に保った押出機から押し出す際、高圧状態から常圧への圧力変化によって樹脂組成物を発泡させる方法である。
【0022】
発泡手段として化学反応発泡を用いられる場合、熱可塑性樹脂の生成反応と同時にこの反応から発生するガスにより樹脂組成物を発泡させる。
【0023】
発泡剤としては、物理型発泡剤および化学型発泡剤のいずれかを用いることができる。物理型発泡剤としては、空気、二酸化炭素などの無機ガス、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノールを始めとするアルコール類、モノクロロジフルオロメタン、モノクロロジフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素、そして水などが挙げられる。
熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、P,P'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチルニトリル、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロテレフラルアミドなどが挙げられるが、より好ましくはアゾジカルボンアミドとP,P'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である。特定配合比のアゾジカルボンアミドとP、P'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)からなる発泡剤組成物が挙げられる。
【0024】
本発明の架橋樹脂発泡体の発泡倍率は1.5〜40倍、好ましくは7〜30倍である。発泡倍率が1.5倍未満であると体積中の樹脂部分が多いため強度が増し機械的物性の点では好ましいが、架橋樹脂発泡体としての柔軟性が悪化する。一方、40倍を越えると柔軟性が増し、緩衝性の点では好ましいが、体積中の樹脂部分が減少するため機械的強度、耐熱性が低下する場合がある。
以下、本発明を以下の実施例を用いて更により詳細に説明するが、以下の実施例は例示以外の目的にのみ用いられ、限定の目的で用いられるものではない。
【実施例】
【0025】
本発明におけるゲル分率以外の評価基準、測定方法は次の通りである。
1.引張強度
JIS K−6767で規定する方法に準じて測定した。
2.伸び
JIS K−6767で規定する方法に準じて測定した。
3.メルトインデックス
JIS K 7201(1995年)に準拠し、190℃、2.16kg荷重にて測定した。
4.発泡体の外観
得られた架橋樹脂発泡体の表面の平滑性、変色の有無を目視判定し、表面が平滑で変色の無いものを合格、顕著な不備が見られるものを不合格と判定した。
次に使用するポリマーとして以下のものを準備した。
高圧法低密度ポリエチレン(LDPE):密度0.920g/cmメルトインデックス4.0g/10分となる一般的な高圧法低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):密度0.934g/cmメルトインデックス8.0g/10分となる一般的な直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製)
ポリプロピレン樹脂(PP):密度0.902g/cm メルトインデックス2.2g/10分となる一般的なエチレンプロピレンコポリマー(日本ポリプロ株式会社製)
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド(商品名:ユニホームAZ 大塚化学株式会社製)
熱安定剤:イルガノックス1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)
ポリオレフィン系樹脂再生物:(1)ポリオレフィン系樹脂に熱分解型発泡剤をミキサー混合し、単軸押出機(株式会社日本製鋼所製 40mmφ)にて溶融混練りした後、電子線架橋させることでゲル分率30%の架橋樹脂組成物とする。(2)該架橋樹脂組成物を縦型熱風発泡法にて熱分解型発泡剤の分解温度以上に熱処理することで得られる架橋樹脂発泡体を単軸押出機から押し出すことで減容体とする。(3)該減容体を単軸押出機にて溶融温度以上150℃未満の温度で剪断力をかけながら押し出したものを長さ3mmにカッティングする。(3)の作業を2回繰り返すことで得られる。
実施例1
ポリオレフィン系樹脂再生物100重量部に対し、熱分解型発泡剤10重量部をミキサー混合し、単軸押出機(株式会社日本製鋼所製 40mmφ)にて熱分解型発泡剤の分解温度以下で均一に溶融混練し、これを厚み2mmの長尺シート状に成形した後、得られたシート状の樹脂組成物に電子線を照射する電子線架橋法により架橋させて架橋シートを得る(工程(a))。次いで、この架橋シートを横型薬液浴上発泡法により加熱させることで熱分解型発泡剤の分解温度以上で熱処理し、発泡させる(工程(b))ことで架橋樹脂発泡体を得た。
実施例2
本実施例では、架橋手段として電子線架橋法に代え、紫外線架橋法により架橋を行った。すなわち、光架橋剤として2重量部のベンゾフェノン(和光純薬社製)、および架橋助剤として2重量部のトリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製)を添加した以外は実施例1と同様にしてシート状に成形し、高圧水銀灯(120W/cm)を用いて紫外線を1分間照射することで紫外線架橋した後、実施例1と同様に熱処理し発泡させること架橋樹脂発泡体を得た。
実施例3
本実施例では、架橋手段として電子線架橋法に代え、シラン架橋法により架橋を行った。すなわち、シラン架橋剤としてのビニルトリメトキシシラン(商品名:サイラエースS−210 チッソ株式会社製)、シラン架橋開始剤としての1重量部の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名:パーヘキサ25B 日本油脂株式会社製)を添加し、実施例1のポリオレフィン系樹脂再生物を50重量部に代え、高圧法低密度ポリエチレンを50重量部添加し、実施例1と同様にシート状に成形した後、90℃の熱水中に1時間浸漬することでシラン架橋させ、熱水中から取り出したシートを実施例1と同様に熱処理し発泡させることで架橋樹脂発泡体を得た。
実施例4
本実施例では、架橋手段として電子線架橋法に代え、過酸化物架橋法により架橋を行った。すなわち、4重量部の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(商品名:パーヘキシン25B−40 日本油脂株式会社製)を添加し、実施例1のポリオレフィン系樹脂再生物を2重量部に代え、高圧法低密度ポリエチレンを98重量部添加し、実施例1と同様にシート状に成形した後に熱処理し、架橋と同時に発泡させることで架橋樹脂発泡体を得た。
比較例1
架橋ポリエチレンをクラッシャーで粉砕した後、直鎖状低密度ポリエチレンをベースポリマーとして単軸押出機で押し出したものを、3mmにカッティングした樹脂組成50重量部、高圧法低密度ポリエチレン50重量部に対し、熱分解型発泡剤10重量部をミキサー混合し、実施例1と同様にシート状に成形し、電子線にて架橋した後、熱処理し発泡させることで架橋樹脂発泡体を得た。
実施例5
ポリオレフィン系樹脂再生物30重量部にポリプロピレン樹脂50重量部、直鎖状低密度ポリエチレン20重量部に対し、熱分解型発泡剤8重量部、熱安定剤3重両部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学株式会社製)2重量部をミキサー混合し、実施例1と同様にシート状に成形し、電子線にて架橋した後、加熱し発泡させることで架橋樹脂発泡体を得た。
比較例2
本比較例ではポリオレフィン系樹脂再生物に代え、冷凍粉砕した架橋ポリプロピレン樹脂30重量部を配合し、実施例5と同様にミキサー混合し、シート状に成形したが、未溶融物が発生することで均一な厚みのシート状に成形することができないため評価を中止した。
以上の実施例および比較例にて得られた架橋樹脂発泡体の諸物性を示したのが次の表1である。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1から5と比較例1を比較すると、実施例1から5はポリオレフィン系樹脂再生物の配合比、架橋手段に関わらず良好な架橋樹脂発泡体が得られたのに対し、比較例1はゲル分率が高くなり、引張強度、伸びなどの評価基準が低下した。
比較例2についてはポリプロピレン樹脂に冷凍粉砕した架橋ポリプロプレンをブレンドして単軸押出機で混練したが、架橋部分や高分子量の成分が多くなることで、押出機の圧力が安定せず、厚みが均一なシート状に成形できないことから良好な架橋樹脂発泡体は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)が0.5〜300g/10分でゲル分率が0.1%以下のポリオレフィン系樹脂再生物を配合したことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
以下の工程を包含する架橋樹脂発泡体の製造方法。
(a)請求項1に記載の樹脂組成物を電子線架橋法、紫外線架橋法、シラン架橋法、および過酸化物架橋法からなる群から選択される少なくとも1種の架橋手段により該樹脂組成物を架橋させて架橋樹脂組成物とする工程。
(b)該架橋樹脂組成物を常圧発泡、型内発泡、押出発泡および化学反応発泡からなる群から選択される少なくとも1種の発泡手段により架橋樹脂発泡体とする工程。

【公開番号】特開2006−291023(P2006−291023A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113080(P2005−113080)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】