説明

熱可塑性樹脂組成物およびフィルム

【解決手段】本発明は、熱可塑性樹脂100重量部および動的光散乱法により測定される平均粒子径が10〜100nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.7の範囲にあり、スメクタイト型層状微粒子を25〜90質量%含有してなる薄片状複合シリカ微粒子5〜60質量部を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物であり、特に前記薄片状複合シリカ微粒子は、スメクタイト型層状微粒子の表面にシリカ層が形成されてなるものである。また、前記薄片状複合シリカ微粒子は、スメクタイト型層状微粒子を核粒子とし、シリカ成分により粒子成長させたものである。
【効果】本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、優れたガス不透過性及び透明性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関するものであり、特にはガス不透過性および透明性に優れるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス不透過性のフィルム材料としては、成形材料の他、分散剤、増粘剤、結合剤として、無機材料に配合しガスバリア材料として用いられている。例えば、ポリアクリル酸等の、分子中に2個以上のカルボキシル基を持つカルボキシル基含有高水素ガス結合性樹脂(A)と、澱粉類等の、分子鎖中に2個以上の水酸基を持つ水酸基含有高水素ガス結合性樹脂(B)の重量比A/B=80/20〜60/40の混合物100重量部と、粘土鉱物等の無機層状化合物1〜10重量部とで組成物を形成し、この組成物から作製した厚み0.1〜50μmの皮膜に、熱処理・電子線処理すると、その皮膜はガスバリア性を示すことが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、無機層状化合物と樹脂とを含む樹脂組成物からなる層を積層することにより、防湿性やガスバリア性に優れ、食品包装に適用可能な積層フィルムを得ることができる(特許文献2参照)。
【0004】
層状無機化合物を主要構成成分とする膜が、(1)層状無機化合物と水可溶性樹脂から構成される、(2)層状無機化合物の全固体に対する重量比が70%以上である、(3)全光線透過率が80%を超える、(4)ガスバリア性を有する、及び(5)自立膜として利用可能な機械的強度を有する、ことを特徴とする透明材が知られている(特許文献3)。
【0005】
しかし、ガス不透過性のフィルム材料においては、添加された無機化合物等により透明性が低下する場合があり、改善が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−231434号公報
【特許文献2】特開平7−251489号公報
【特許文献3】特開2007−63118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガス不透過性および透明性に優れるフィルム材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の第1の発明は、熱可塑性樹脂100重量部および動的光散乱法により測定される平均粒子径が10〜100nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.7の範囲にあり、スメクタイト型層状微粒子を25〜90質量%含有してなる薄片状複合シリカ微粒子5〜60質量部を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
【0008】
本出願の第2の発明は、前記薄片状複合シリカ微粒子が、スメクタイト型層状微粒子の表面にシリカ層が形成されてなるものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
本出願の第3の発明は、前記薄片状複合シリカ微粒子が、スメクタイト型層状微粒子を核粒子とし、シリカ成分により粒子成長させたものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
【0009】
本出願の第4の発明は、前記スメクタイト型層状微粒子が、次の(1)〜(5)に示される何れかの三八面体型スメクタイトからなるものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
(1)サポナイト[ X0.33(Mg3)(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・nH2
]、
(2)鉄サポナイト[ X0.33(Mg,Fe)3(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・nH2O ]、
(3)ヘクトライト[ X0.33(Mg2.67Li0.33)Si410(OH)2・nH2O ]

(4)ソーコナイト[ X0.33(Mg,Zn)3(Si3.67Al0.33)O10・nH2O ]、
(5)スチブンサイト[ X0.33/2(Mg2.97)Si410(OH)2・nH2O ]
(ただし、Xは、K、Na、1/2Caまたは1/2Mgである。nは、n≧0である。)
本出願の第5の発明は、前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂から選ばれるものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
【0010】
本出願の第6の発明は、前記熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、優れたガス不透過性を示すものであり、かつ、透明性に優れるものである。例えば、食品等の包装用フィルムとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、充填材としてスメクタイト型層状微粒子の表面にシリカ層が形成されなるものである薄片状複合シリカ微粒子が分散してなるものである。この薄片状複合シリカ微粒子の構造的な特徴により、この熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、実用的なガス不透過性を示し、更に薄片状複合シリカ微粒子のシリカ成分の影響により、優れた透明性を示すことが可能である。本発明に係る熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムについて以下に説明する。
【0013】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、次の(A)及び(B)を含むことを特徴とする。(A)熱可塑性樹脂100重量部
(B)動的光散乱法により測定される平均粒子径が10〜100nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.7の範囲にあり、スメクタイト型層状微粒子を25〜90質量%含有してなる薄片状複合シリカ微粒子を5〜60質量部
熱可塑性樹脂に対する薄片状複合シリカ微粒子の配合比率については、熱可塑性樹脂100質量部に対して、薄片状複合シリカ微粒子5〜60質量部の範囲が好ましい。薄片状複合シリカ微粒子が5質量部未満の場合、熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムのガス不透過性が不十分となる場合がある。薄片状複合シリカ微粒子が60質量部を超えて薄片状複合シリカ微粒子を配合する必要は必ずしもない。更に好適な薄片状複合シリカ微粒子の配合比率としては8〜55質量部の範囲を挙げることができる。
熱可塑性樹脂
前記熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。この様な熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエス
テル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの熱加工可能な熱可塑性樹脂が挙げられ、必要に応じて他の共重合またはグラフト共重合成分を適宜使用するとよい。
【0014】
薄片状複合シリカ微粒子
本発明に係る薄片状複合シリカ微粒子は、通常は、動的光散乱法により測定される平均粒子径が10〜100nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.7の範囲にあり、スメクタイト型層状微粒子を25〜90質量%含有してなる薄片状複合シリカ微粒子が分散媒に分散してなる薄片状複合シリカ微粒子分散液の状態で存在する。この薄片状複合シリカ微粒子は、スメクタイト型層状微粒子を核粒子とし、珪酸液などのシリカ源により粒子成長させたものであるので、スメクタイト型層状微粒子の表面にシリカ層が形成されたものといえる。
【0015】
1)平均粒子径
前記薄片状複合シリカ微粒子の動的光散乱法により測定される平均粒子径は、10〜100nmの範囲が望ましい。この粒子径範囲は、研磨材として使用する場合において優れた研磨特性が得られる点で好適である。また、薄片状複合シリカ微粒子分散液の製造において、核粒子としてスメクタイト型層状粒子を使用するが、スメクタイト型層状粒子として平均粒子径が10nm未満のものを得ることは容易ではない。また、平均粒子径が100nmを超える薄片状複合シリカ微粒子を調製することは可能であるが、前記薄片状複合シリカ微粒子のより好ましい平均粒子径範囲としては、15nm〜60nmの範囲が推奨される。
【0016】
2)粒子の短径/長径比
前記薄片状複合シリカ微粒子は、その原料であるスメクタイト型層状粒子の構造に類似した薄片状または略薄片状の粒子となる。薄片状複合シリカ微粒子の短径/長径比については、0.01〜0.7の範囲が好ましい。この範囲は、核粒子となるスメクタイト型層状粒子の形状や大記載に依存する。
【0017】
3)粒子組成
前記薄片状複合シリカ微粒子は、シリカとスメクタイト型層状微粒子とから形成される。薄片状複合シリカ微粒子におけるスメクタイト型層状微粒子の含有割合は通常25〜90質量%であり、
シリカの含有割合は、10〜75質量%の範囲が好ましい。スメクタイト型層状微粒子の含有割合が25質量%未満の場合、相対的にシリカ成分が過剰となり薄片状とならない場合がある。また、スメクタイト型層状微粒子の含有割合が90質量%を越える場合は、スメクタイト型層状微粒子表面にシリカ層が充分に形成されていない場合があり、その様な薄片状複合シリカ微粒子を含む分散液を研磨用途に適用した場合、良好な研磨性能を示さない場合がある。薄片状複合シリカ微粒子におけるスメクタイト型層状微粒子のより好適な含有割合は、28〜88質量%、シリカの含有割合としては12〜72質量%の範囲が推奨される。
【0018】
前記スメクタイト型層状微粒子は、以下の一般式を有する粘土鉱物からなる:
【0019】
【化1】

(式中、XはK,Na,1/2Ca及び1/2Mgの少なくとも一種であり、mは0.25〜0.6であり、Y2+はMg2+、Fe2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+及びLi+の少なく
とも一種であり、Y3+はAl3+、Fe3+、Mn3+及びCr3+の少なくとも一種であり、ZはSi及びAlの少なくとも一種であり、nH2Oは層間水である。)
なお、(Y2+,Y3+)においてY2+,Y3+は、Y2+及び/又はY3+の意である。また、上記式で、Xは層間、Yは八面体、Zは四面体の陽イオンを表す。
【0020】
これらのうち、三八面体型スメクタイトが好適に使用される。具体的には次の(1)〜(5)の何れかの三八面体型スメクタイトが好ましい。これらのスメクタイトは、平均粒子径が10〜100nm程度の粒子または粒子分散液として入手することができる。これらのスメクタイトは、薄片状構造をとるものであるので、本発明の製造方法においては、シードとして好適に使用される。
【0021】
(1)サポナイト[ X0.33(Mg3)(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・nH2
]、
(2)鉄サポナイト[ X0.33(Mg,Fe)3(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・nH2O ]、
(3)ヘクトライト[ X0.33(Mg2.67Li0.33)Si410(OH)2・nH2O ]

(4)ソーコナイト[ X0.33(Mg,Zn)3(Si3.67Al0.33)O10・nH2O ]、
(5)スチブンサイト[ X0.33/2(Mg2.97)Si410(OH)2・nH2O ]
(ただし、Xは、K、Na、1/2Caまたは1/2Mgから選ばれる)
なお、前記スメクタイト型層状微粒子の一部は、合成も可能であり、例えば、サポナイトは合成品が市販されている(「スメクトンSA」、クニミネ工業化学株式会社製)。本発明においては、天然鉱物のスメクタイト型層状微粒子または人工的に合成されたスメクタイト型層状微粒子の何れも使用可能である。
【0022】
4)比表面積
本発明に係る薄片状複合シリカ微粒子分散液の分散質である薄片状複合シリカ微粒子の比表面積については、通常は20〜400m2/gの範囲が好ましい。
本発明に係る薄片状複合シリカ微粒子分散液は、たとえば以下の製造方法により製造することができる。
【0023】
[薄片状複合シリカ微粒子分散液の製造方法]
本発明に係る薄片状複合シリカ微粒子分散液の製造方法は、スメクタイト型層状微粒子の水系分散液に、珪酸液などのシリカ成分を所定の速度にて、所定量を添加することにより、シリカ成分によりスメクタイト型層状微粒子の粒子成長を行うものである。
【0024】
本発明の製造方法では、動的光散乱法により測定される平均粒子径が10〜100nmの範囲にある薄片状の三八面体型スメクタイト型層状微粒子の水系分散液を、固形分濃度0.01〜10質量%、pH8〜12.5に調整し、60〜200℃に保持しながらこの分散液に、該三八面体型スメクタイト型粒の水和粒子100質量部に対して、下記(i)〜(iv)に示される何れかのシリカ源5〜4900質量部(シリカ換算)を、添加速度0.1〜10質量部(シリカ換算)/分で添加した後、60〜200℃にて熟成することにより前記シリカ系複合微粒子分散液を製造する。
シリカ源:
(i)珪酸液(シリカ濃度1〜10質量%)
(ii)珪酸アルカリ水溶液(シリカ濃度0.1〜5質量%)
なお、ここでアルカリとしては、ナトリウムまたはカリウムが好ましい。
(iii)珪酸液(シリカ濃度2〜6質量%)および珪酸アルカリ水溶液(シリカ濃度0.1〜5質量%)
なお、ここでアルカリとしては、ナトリウムまたはカリウムが好ましい。
(iv)前記(i)〜(iii)の何れかおよび無機塩水溶液(珪酸アルカリ水溶液を除く、固形分濃度0.1〜5質量%)
【0025】
本発明に係る製造方法に適用する三八面体型スメクタイト型層状微粒子については、動的光散乱法により測定される平均粒子径が10〜100nmの範囲にあるものが好適に使用される。平均粒子径が10nm未満の三八面体型スメクタイト型層状微粒子を得ることは容易ではない。また、平均粒子径100nmを超える三八面体型スメクタイト型層状微粒子は、必ずしも必要とされない。
【0026】
三八面体型スメクタイト型層状微粒子の水系分散液の固形分濃度としては0.01〜10質量%の範囲が好ましい。0.01質量%未満では、実用的な条件で薄片状複合シリカ微粒子分散液を調製することが容易ではない。10質量%を超える場合は、粘度が高くなり過ぎて、粒子成長時に凝集する等の問題がある。
【0027】
三八面体型スメクタイト型層状微粒子の水系分散液については、pHは8〜12.5の範囲に調整して使用することが望ましい。pHが8未満の場合は、シリカ源を添加することによりゲル化する場合がある。pHが12.5を超える場合は、シリカの溶解により凝集する等の問題が生じ易くなる。このpH範囲については、より好適には9〜12の範囲が推奨される。水系分散液のpH調整には、水酸化ナトリウム等が適宜使用される。
【0028】
三八面体型スメクタイト型層状微粒子は、短径/長径比が0.01〜0.7の範囲にあることが好ましい。短径/長径比がこの範囲内にあると、前述の要件を満たす薄片状複合シリカ微粒子を得やすい。
【0029】
シリカ源を添加時には、前記水系分散液を温度60〜200℃の範囲に保持することが好ましい。60℃未満の場合、粒子成長の進行が遅く、実用的ではない。200℃を超える温度に保持して粒子成長を進める必要はない。
【0030】
粒子成長に使用するシリカ源としては、前記(i)〜(iv)の何れかが使用される。
前記珪酸液は、アルカリ金属珪酸塩、第3級アンモニウム珪酸塩、第4級アンモニウム珪酸塩またはグアニジン珪酸塩から選ばれる水溶性珪酸塩を、脱アルカリすることにより得られるものである。珪酸液の濃度はSiO2 に換算して1〜10質量%、さらには2〜7質量%の範囲にあることが好ましい。また、珪酸液のpHは1〜5.0、さらには1.5〜4.0の範囲にあることが好ましい。特に珪酸液のpHが1.5〜4.0の範囲にあれば、酸性珪酸液中の残存カチオンが少なく安定性に優れている。
【0031】
前記珪酸アルカリ水溶液としては、ケイ酸カリウム(カリ水硝子)、ケイ酸ナトリウム(ナトリウム水硝子)などの水溶液を挙げることができる。珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度としては、0.1〜5質量%の範囲が好ましい。また、珪酸アルカリ水溶液のpHは9〜12、さらには10〜11.5の範囲にあることが好ましい。
【0032】
前記珪酸液および前記珪酸アルカリ水溶液の両方を使用する場合には、珪酸液の濃度はSiO2 に換算して2〜6質量%の範囲が好ましく、珪酸アルカリ水溶液の濃度はSiO2 に換算して0.1〜5質量%の範囲が好ましい。
【0033】
前記無機塩水溶液としては、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウムなどを使用することができる。無機塩水溶液は多孔質化や固体酸形成等の目的で、前記(i)、(ii)または(iii)とともに添加される。
【0034】
上記(iii)および(iv)のように、シリカ源として2種類以上の液体を用いるときには、これらを同時に、または順次添加することができる。
シリカ源の添加量は、三八面体型スメクタイト型層状微粒子100質量部に対して、5〜1500質量部(シリカ換算)の範囲であることが望ましい。前記添加量が5質量部未満では、核粒子に対して充分なシリカ被覆を設けることが容易ではない難い場合がある。前記添加量が1500質量部を超える場合は、粒子成長が進行しすぎる結果、薄片状に留まらず、例えば、球状微粒子となる場合がある。
【0035】
シリカ源の添加速度は、三八面体型スメクタイト型層状微粒子100質量部に対して、0.1〜10質量部/分の範囲であることが好ましい。前記添加速度が0.1質量部/分未満の場合は、成長速度が遅いために、添加に用いる珪酸液の安定性が悪くなるためゲル化が生じ易くなり、好ましくない。
【0036】
前記添加速度が10質量部/分を超える場合は、シリカの析出速度が速く、新たな核が発生しやすくなるため好ましくない。
シリカ源を添加することによって、主としてスメクタイト型層状微粒子の厚み方向にシリカが付着し、薄片状複合シリカ微粒子が形成される。
【0037】
シリカ源を添加し終わった後、形成された薄片状複合シリカ微粒子にさらにシリカを付着させることによって該微粒子を成長させるために、熟成を行う。熟成温度としては、60〜200℃の範囲が好ましく、80〜150℃の範囲がさらに好ましい。熟成温度が、60℃より低い場合には、粒子成長速度が小さく、凝集する。200℃より高い場合には、生産性が悪いので好ましくない。
【0038】
熟成時間としては、0.5〜5時間の範囲が好ましく、1〜3時間の範囲がさらに好ましい。熟成時間が、0.5時間未満の場合に、粒度分布の均一性に劣り、5時間を超える場合には、スケ-ルの量が多くなる傾向がある。
【0039】
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法については、通常、熱可塑性樹脂を水または有機溶媒に溶解させてなる溶液に、薄片状複合シリカ微粒子分散液を混合し、熱可塑性樹脂に応じた条件にて硬化させ熱可塑性樹脂組成物とする。なお、熱可塑性樹脂が有機溶剤に分散している場合は、薄片状複合シリカ微粒子分散液を溶媒置換して溶媒を有機溶媒とすることが必要である。また、必要に応じて、薄片状複合シリカ微粒子表面をシランカップリング剤などで処理し、有機溶媒への分散性を付与させる必要がある。
【0040】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムについては、熱可塑性樹脂組成物から延伸処理により製造してもよく、予め熱可塑性樹脂組成物をフィルム状に成形しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、優れたガス不透過性及び透明性を有するものであり、食品分野、農業分野、医療分野など各種方面において包装フィルムなどに適用することができる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[1]動的光散乱法による平均粒子径の測定方法
試料(微粒子分散液)を0.58%アンモニア水にて希釈して、固形分濃度1質量%に調整し、下記粒径測定装置を用いて平均粒子径を測定した。
【0043】
〔粒径測定装置〕
レーザーパーティクルアナライザー(大塚電子社製、レーザー粒径解析システム:LP−510モデルPAR−III、測定原理: 動的光散乱法、測定角度90°、受光素子 光電子倍増管2インチ、測定範囲3nm〜5μm、光源 He-Neレーザー 5mW 632.8nm、温度
調整範囲5〜90℃、温度調整方式ペルチェ素子(冷却)、セラミックヒーター(加熱)、セル
10mm角 プラスチックセル、測定対象:コロイド粒子)
【0044】
[2]短径/長径比の測定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料(微粒子分散液)を倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、それぞれその最大径である長径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)を測定し、それらの平均値を短径/長径比とした。
【0045】
[3]pH測定
シリカゾルのpH測定については、測定用サンプル約50gをポリエチレン製のサンプル瓶に採取し、これを25℃の恒温槽に30分以上浸漬した後、pH4、7および9の標準液で更正が完了した株式会社堀場製作所製のpHメータF22のガラス電極を挿入して実施した。
【0046】
[4]スメクタイト型層状粒子含有量測定
薄片状複合シリカ微粒子の組成については、アルカリ溶融法によりシリカを溶解し、重量法によりシリカ濃度を求めた。
【0047】
[5]フィルムの光透過率測定
光透過率は、分光光度計(日本分光製 U-vest560)を用い吸収ピーク波長における光透過率を測定し、同じ波長における基材のみの光透過率との差をガス不透過性フィルムの光透過率とした。
【0048】
[6]酸素透過度
ガスの透過性試験は、日本工業規格JIS K7126「プラスチックフィルム及びシ
ートの気体透過度試験方法」に基づいた差圧法によって行った。試験片にガスを透過させるための透過セル、透過したガスによる圧力変化を測定する圧力検出器、透過セルに酸素を供給するための気体供給器、真空ポンプから構成される。圧力の検出器は佐藤真空株式会社製NEWパルミル真空計PVD−9500−L21を用いて1Paの精度で測定した。透過面の直径30mm、試験片はデシケーター内でシリカゲルを用いて48時間以上乾燥したものを用いた。試験条件は室温25℃、試験温度25℃で行った。試験片によって隔てられた一方(低圧側)を真空に保ち、他方(高圧側)にガスを導入し(約1気圧)、低圧側の圧力を記録し透過曲線を得た。透過曲線の定常状態の傾きから単位時間における低圧側の圧力変化を求め、気体透過度[ml/m2/24hrs/MPa]を算出した。
なお、気体には酸素を用い、試験片の厚さは3箇所測定した平均値を用いた。
【0049】
(合成例1)
サポナイト[ Na0.33(Mg3)(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・5H2O、平
均粒子径20nm(動的光散乱法による)、短径/長径比0.3]の100gに純水と水酸化ナトリウム5質量%水溶液を加えて、サポナイト水溶液10Kg(固形分1質量%、
pH11.0)を調製した。
【0050】
このサポナイト水溶液を80℃に保持し、珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)の17.8kgを添加速度59g/分(シリカ換算)で添加した。添加終了後、更に1時間、80
℃で保持することにより熟成を行った後、ロータリーエバポレータ-にて濃縮し、固形分
濃度20質量%の薄片状複合シリカ微粒子分散液を得た。この薄片状複合シリカ微粒子分散液の製造条件の詳細を表1に、薄片状複合シリカ微粒子分散液および研磨特性を表2に記す。
【0051】
(合成例2)
合成例1と同様のサポナイト水溶液10Kg(固形分1質量%、pH11.0)を調製
した。
【0052】
このサポナイト水溶液を80℃に保持し、珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)の6kgを添加速度59g/分(シリカ換算)で添加した。添加終了後、更に1時間、80℃で保
持することにより熟成を行った後、ロータリーエバポレータ-にて濃縮し、固形分濃度2
0質量%の薄片状複合シリカ微粒子分散液を得た。この薄片状複合シリカ微粒子分散液の製造条件の詳細を表1に、薄片状複合シリカ微粒子分散液および研磨特性を表2に記す。
【0053】
(合成例3)
合成例1と同様のサポナイト水溶液10Kg(固形分1質量%、pH11.0)を調製
した。
【0054】
このサポナイト水溶液を80℃に保持し、珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)の35.6kgを添加速度59g/分(シリカ換算)で添加した。添加終了後、更に1時間、80
℃で保持することにより熟成を行った後、ロータリーエバポレータ-にて濃縮し、固形分
濃度20質量%のシリカ系複合微粒子分散液を得た。このシリカ系複合微粒子分散液の製造条件の詳細を表1に、シリカ系複合微粒子分散液および研磨特性を表2に記す。
【0055】
(実施例1)
合成例1の製造方法で得た薄片状複合シリカ微粒子分散液(平均粒子径30nm、固形分濃度20質量%)500gにポリ酢酸ビニル水溶液(固形分濃度10質量%)を100g加え、激しく振とうし、薄片状複合シリカ微粒子及びポリ酢酸ビニルを含む均一な分散液を得た。この分散液を真空脱泡装置により、脱気を行った。次に、この分散液を、表面が平坦なフッ素樹脂製トレイに塗布した。スペーサーを利用し、このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約10μmの均一なフィルムを得た。フィルムの性能を表3に示した。
【0056】
(実施例2)
合成例1の製造方法で得た薄片状複合シリカ微粒子分散液(平均粒子径30nm、固形分濃度20質量%)500gにポリ酢酸ビニル水溶液(固形分濃度10質量%)を200g加え、激しく振とうし、薄片状複合シリカ微粒子及びポリ酢酸ビニルを含む均一な分散液を得た。この分散液を真空脱泡装置により、脱気を行った。次に、この分散液を、表面が平坦なフッ素樹脂製トレイに塗布した。スペーサーを利用し、このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約10μmの均一なフィルムを得た。フィルムの性能を表3に示した。
【0057】
(実施例3)
合成例2の製造方法で得た薄片状複合シリカ微粒子分散液(平均粒子径22nm、固形分濃度20質量%)500gにポリ酢酸ビニル水溶液(固形分濃度10質量%)を300g加え、激しく振とうし、薄片状複合シリカ微粒子及びポリ酢酸ビニルを含む均一な分散液を得た。この分散液を真空脱泡装置により、脱気を行った。次に、この分散液を、表面
が平坦なフッ素樹脂製トレイに塗布した。スペーサーを利用し、このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約10μmの均一なフィルムを得た。フィルムの性能を表3に示した。
【0058】
(実施例4)
合成例2の製造方法で得た薄片状複合シリカ微粒子分散液(平均粒子径22nm、固形分濃度20質量%)500gにポリ酢酸ビニル水溶液(固形分濃度10質量%)を500g加え、激しく振とうし、薄片状複合シリカ微粒子及びポリ酢酸ビニルを含む均一な分散液を得た。この分散液を真空脱泡装置により、脱気を行った。次に、この分散液を、表面が平坦なフッ素樹脂製トレイに塗布した。スペーサーを利用し、このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約10μmの均一なフィルムを得た。フィルムの性能を表3に示した。
【0059】
(比較例1)
合成例3の製造方法で得た薄片状複合シリカ微粒子分散液(平均粒子径37nm、固形分濃度20質量%)500gにポリ酢酸ビニル水溶液(固形分濃度10質量%)を100g加え、激しく振とうし、薄片状複合シリカ微粒子及びポリ酢酸ビニルを含む均一な分散液を得た。この分散液を真空脱泡装置により、脱気を行った。次に、この分散液を、表面が平坦なフッ素樹脂製トレイに塗布した。スペーサーを利用し、このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約10μmの均一なフィルムを得た。フィルムの性能を表3に示した。
【0060】
(比較例2)
サポナイト[ Na0.33(Mg3)(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・5H2O、平
均粒子径20nm(動的光散乱法による)、短径/長径比0.3]の20質量%水溶液500gに、ポリ酢酸ビニル水溶液(固形分濃度10質量%)を100g加え、激しく振とうし、薄片状複合シリカ微粒子及びポリ酢酸ビニルを含む均一な分散液を得た。この分散液を真空脱泡装置により、脱気を行った。次に、この分散液を、表面が平坦なフッ素樹脂製トレイに塗布した。スペーサーを利用し、このトレイを強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で1時間乾燥することにより、厚さ約10μmの均一なフィルムを得た。フィルムの性能を表3に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100質量部および動的光散乱法により測定される平均粒子径が10〜100nmの範囲、短径/長径比が0.01〜0.7の範囲にあり、スメクタイト型層状微粒子を25〜90質量%含有してなる薄片状複合シリカ微粒子5〜60質量部を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記薄片状複合シリカ微粒子が、スメクタイト型層状微粒子の表面にシリカ層が形成されてなるものであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記薄片状複合シリカ微粒子が、スメクタイト型層状微粒子を核粒子とし、シリカ成分により粒子成長させたものであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記スメクタイト型層状微粒子が、次の(1)〜(5)に示される何れかの三八面体型スメクタイトからなるものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(1)サポナイト[ X0.33(Mg3)(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・nH2
]、
(2)鉄サポナイト[ X0.33(Mg,Fe)3(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・nH2O ]、
(3)ヘクトライト[ X0.33(Mg2.67Li0.33)Si410(OH)2・nH2O ]

(4)ソーコナイト[ X0.33(Mg,Zn)3(Si3.67Al0.33)O10・nH2O ]、
(5)スチブンサイト[ X0.33/2(Mg2.97)Si410(OH)2・nH2O ]
(ただし、Xは、K、Na、1/2Caまたは1/2Mgである。nは、n≧0である。)
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。

【公開番号】特開2010−155884(P2010−155884A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333962(P2008−333962)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】