説明

熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法

【課題】植物性材料を50質量%以上と多く含有しながら高い流動性が発現されるようにペレット化できる熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本組成物の製造方法は、植物性材料及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、植物性材料(ケナフコア及びケナフ繊維など)と熱可塑性樹脂(ポリプロピレン及びポリ乳酸など)とを撹拌機で混合する混合工程と、混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備える。本成形体の製造方法は、前記熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、植物性材料を50〜95質量%と多く含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケナフ等の成長が早く、二酸化炭素吸収量が多い植物性材料は、二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化等の観点から注目され、樹脂との複合用途で期待されている。
しかし、特に多量の植物性材料を樹脂に混合し、更には、得られた複合材料を成形するには大きな困難を伴う。これは複合材料に従来の樹脂と同等の十分な流動性を付与することが難しいからである。多量の植物材料を含む複合材料を扱う技術としては下記特許文献1及び2が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−105245号公報
【特許文献2】特開2000−219812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では混合にニーダーを使用し、上記特許文献2ではバンバリーミキサーを使用して、植物性材料と樹脂とを混合し、更にはペレット化を行ったことが開示されている。
しかし、上記特許文献1では、ケナフ繊維の含有量が50質量%を超える場合に、樹脂組成物の流動性が著しく低下するので射出成形において、満足する製品形状や製品形態が得られない等の問題が発生することが示されている。即ち、50質量%を超える多量の植物性材料を混合することが難しいことが示されている。
一方、上記特許文献2では、樹脂にロジンや可塑剤を加えず、植物繊維のみを配合した場合には植物繊維が均一に分散され難く、樹脂と植物繊維の間の親和性が悪いことなどから、強度等に劣り、又品質の均一性にも欠け、実用性に乏しい材料しか得られないことが示されている。即ち、50質量%以上の多量の植物性材料を混合できるものの、添加剤を要することが示されている。
このように、多量の植物性材料を樹脂と混合することは難しく、また、仮にできたとしても何らかの添加剤を要することとなる。
【0005】
また、得られた複合材料を成形するためには、通常、複合材料をペレット化することが求められる。これは成形機の機構が高度に自動化されており、成形機内へ送り込まれる樹脂量等は自動計測されるため、形状及び大きさが揃った原料を要するからである。しかし、相溶性が小さい2種の材料の混合状態を十分に維持したままペレット化を行うことは難しく、また、ペレット化を行うことで成形体を得るまでに、混合工程、ペレット化工程及び成形工程と合計3つの工程で樹脂が溶融されることとなり、樹脂に対する熱履歴の観点からも好ましくない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、植物性材料を50質量%以上と多く含有しながら高い流動性が発現されるようにペレット化できる熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
(1)植物性材料と熱可塑性樹脂とを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(2)上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と上記植物性材料とを混合する上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(3)上記植物性材料は、ケナフである上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(4)上記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン及び/又はポリ乳酸である上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(5)上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、植物性材料を50質量%以上と多く含有し、高い流動性が発現されるペレット化された熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。特に射出成形が可能な程度に優れた流動性が発揮され、射出圧力を小さく抑えることでき、成形性に優れる。また、ペレットを形成する際の形成時間を短縮して生産性よく熱可塑性樹脂組成物を製造できる。更に、ペレット化工程では熱可塑性樹脂を軟化又は溶融させるための加熱を要さず、熱可塑性樹脂組成物に対する加熱回数を抑制でき、優れた機械的特性を有する成形体を得ることができる。
上記混合工程が、混合室中で混合羽根の回転により溶融された熱可塑性樹脂と植物性材料とを混合する工程である場合は、特に短時間で混合を行うことができ、また、外部からの加熱を要することなく熱可塑性樹脂組成物を製造できる。更に、加熱を要さず別途の加熱手段等が不要であり、短時間で混合できるために低コストで熱可塑性樹脂組成物を製造できる。
植物性材料がケナフである場合、ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できる。
熱可塑性樹脂がポリプロピレン及び/又はポリ乳酸である場合は、優れた環境特性を備える熱可塑性樹脂組成物が得られる。特に、ポリプロピレンにおいてはポリプロピレンが有する優れた低環境負荷性及び優れた軽量特性を、ポリ乳酸においてはポリ乳酸が有する生合成できる非石油系樹脂であるという特性を、各々活かしながら植物性材料との複合により高い機械的特性(強度など)を得ることができる。
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法によれば、植物性材料を多量に含有するにもかかわらず、熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形により成形できる。更に、これらの成形方法においても成形性に優れ、また、生産性に優れた成形を行うことができる。更に、得られる成形体においては、高い機械的特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、
植物性材料と熱可塑性樹脂とを含有し、植物性材料及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程と、
混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を(この順に)備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【0011】
上記「混合工程」は、植物性材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する工程である。
上記「植物性材料」は、植物に由来する材料である。この植物性材料としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた植物性材料が挙げられる。この植物性材料は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフが好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
【0012】
また、上記植物性材料として用いる植物体の部位は特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。これらのなかでは、ケナフの木質部(ケナフコア)を用いることが好ましい。
ケナフは靭皮と称される外層部分とコアと称される芯材部分とからなるが、このうち靭皮は、強靱な繊維を有するために利用価値が高いのに対して、コアはケナフ全体の60体積%程をも占めるにも関わらず廃棄又は燃料化されることが多い。コアは靭皮に比べて繊維長が短く且つ見掛け比重が小さく嵩高いために、取扱い性が悪く、樹脂との混練が難しいためである。しかし、本方法によれば、上記混合工程を備えることでケナフコアであっても容易に熱可塑性樹脂と混合することができる。加えて、熱可塑性樹脂の補強効果においても優れ、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形体では優れた機械的特性が得られる。
【0013】
尚、本発明におけるケナフとは、木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、更に、通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
また、本発明におけるジュートとは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
【0014】
上記植物性材料(混合前の植物性材料)の形状は特に限定されず、チップ状(板状及び薄片状等を含む)、粉末状(粒状及び球状等を含む)、繊維状及び不定形状(粉砕物状等を含む)などの形態が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、用いる植物性材料の大きさは特に限定されないが、例えば、最大長さ(粒状である場合には最大粒径)は20mm以下(通常0.1mm以上、更には0.3〜15mm、より更には0.3〜20mm、特に0.5〜10mm)とすることができる。
尚、本方法により得られる熱可塑性樹脂組成物では、上記混合前の植物性材料の形状及び大きさはそのまま維持されてもよく、維持されなくてもよい。維持されない場合としては、混合時に更に細かく粉砕されて熱可塑性樹脂組成物内に含まれる場合が挙げられる。
【0015】
上記「熱可塑性樹脂」は、特に限定されず種々のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル樹脂{(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂)、(ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエチレン樹脂)}、ポリスチレン、ポリアクリル樹脂(メタアクリレート、アクリレート等)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、ポリオレフィン及びポリエステル樹脂のうちの少なくとも一方であることが好ましい。また、上記ポリオレフィンのなかではポリプロピレンがより好ましい。
【0016】
一方、ポリエステル樹脂のなかでは、生分解性を有するポリエステル樹脂(以下、単に「生分解性樹脂」ともいう)が好ましい。生分解性樹脂としては、(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸及び3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体、並びに、これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体、などのヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル、(2)ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体、などのカプロラクトン系脂肪族ポリエステル、(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンアジペート、などの二塩基酸ポリエステル、等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましい。
これらの生分解性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、上記乳酸にはL−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
混合工程で用いる熱可塑性樹脂の形状及び大きさは特に限定されないが、例えば、最大長さ(粒状である場合には最大粒径)は20mm以下(通常0.1mm以上、更には0.3〜15mm、より更には0.3〜20mm、特に0.5〜10mm)とすることが好ましい。
【0017】
上記「撹拌機」は、植物性材料と熱可塑性樹脂とを混合する装置である。この撹拌機としては、植物性材料と熱可塑性樹脂とを混合することができるものであればよく、その種類などは特に限定されない。即ち、例えば、押出機(一軸スクリュー押出機及び二軸混練押出機等)、ニーダー及びミキサー(高速流動式ミキサー、バドルミキサー、リボンミキサー等)等の各種撹拌機(混合機及び混練機などを含む)を用いることができるが、特に下記撹拌機が好ましい。
【0018】
上記撹拌機{以下、図4(特許庁の特許電子図書館から取得した国際公開04/076044号パンフレット図1を引用)及び図5(特許庁の特許電子図書館から取得した国際公開04/076044号パンフレット図2を引用)参照}としては、国際公開04/076044号パンフレットに記載の撹拌機1が好ましい。即ち、撹拌機1は、材料供給室13と、該材料供給室13に連接された混合室3と、該材料供給室13と該混合室3とを貫通して回転自在に設けられた回転軸5と、該材料供給室13内の該回転軸5に配設され且つ該材料供給室13に供給された混合材料(植物性材料及び熱可塑性樹脂)を該混合室3へ搬送するらせん状羽根12と、該混合室3内の該回転軸5に配設され且つ該混合材料を混合する混合羽根10a〜10fと、を備える撹拌機が好ましい。
【0019】
上記撹拌機を用い、植物性材料及び熱可塑性樹脂を撹拌機1(材料供給室13)へ投入し、撹拌機1の混合羽根10a〜10fを回転させることで、植物性材料及び熱可塑性樹脂が共に、混合室3の内壁へ向かって押し付けるように打撃し且つ押し進められ、材料同士の衝突するエネルギー(熱量)により短時間で熱可塑性樹脂が軟化又は溶融され、植物性材料と混合され、更には混練される。また、得られる混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物)には射出成形が可能な優れた流動性が発現される。
【0020】
上記混合羽根10a〜10fは、上記回転軸5の円周方向の一定角度間隔の部位における軸方向において対向すると共に、回転方向において互いの対向間隔が狭まるような取付け角で該回転軸5に配設された少なくとも2枚の混合羽根(10a〜10f)によって構成され、該混合羽根10a〜10fの該回転軸5に対する取付け角は、該回転軸5に取り付けられる該混合羽根10a〜10fの根元部から半径方向外方の先端部まで同一であることが好ましく、更には、上記混合羽根10a〜10fが矩形板状をなすことが好ましい。
また、上記混合室は、該混合室を構成する壁に冷却媒体を循環させることができる混合室冷却手段を備えることがより更に好ましい。この構成により、混合室内の過度な温度上昇を抑制でき、熱可塑性樹脂の分解及び熱劣化を抑制(更には防止)できる。
【0021】
上記「混合」における各種条件は特に限定されないが、例えば、混合時の温度は特に限定されないが、混合室外壁の温度を200℃以下(より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下)に制御することが好ましく、更には、50℃以上(より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上)に制御することが好ましい。また、この温度は10分以内(より好ましくは5分以内)に到達させることが好ましい。短時間で高温にすることで急激に水分を蒸散させると共に上記混合を行うことができ、熱可塑性樹脂の劣化をより効果的に抑制できる。更に、上記温度範囲とするのも15分以内(より好ましくは10分以内)とすることが好ましい。
また、上記温度の制御は、撹拌機の混合羽根の回転速度を制御することによって行うことが好ましい。より具体的には、混合羽根の先端の回転速度を5m/秒〜50m/秒となるように制御することが好ましい。この範囲に制御することで、効率よく熱可塑性樹脂を軟化又は溶融させつつ、植物性材料とより強力に(より均一に)混合することができる。
【0022】
更に、この混合における終点は特に限定されないが、上記回転軸に負荷されるトルクの変化により決定できる。即ち、上記回転軸に負荷されるトルクを測定し、そのトルクが最大値となった後に混合を停止することが好ましい。これにより、植物性材料と熱可塑性樹脂とを相互に分散性よく混合できる。更に上記トルクの最大値となった後にトルクが低下し始めてから混合を停止させることがより好ましい。特に最大トルクに対して40%以上(とりわけ好ましくは50〜80%)のトルク範囲で混合を停止することが特に好ましい。これにより、植物性材料と熱可塑性樹脂とを相互により分散性よく混合できると共に、混合室内部から混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物)を160℃以上の温度で取り出すことができ、混合室内に熱可塑性樹脂組成物が付着して残存されることをより確実に防止できる。
【0023】
上記混練工程で混合する植物性材料と熱可塑性樹脂との量比は、得られる混合物内において植物性材料の割合が50〜95質量%となるものであればよいが、50〜90質量%が好ましく、52〜87質量%がより好ましく、54〜85質量%が更に好ましく、56〜83質量%が特に好ましく、58〜80質量%がより特に好ましく、60〜75質量%がとりわけ好ましい。上記範囲では他のペレット化工程(ペレット化方法)を用いる場合に比べて成形時の射出圧力を維持しながらペレット作製速度をより顕著に向上させることができる。また、熱可塑性樹脂に植物性材料を混合することによる補強効果を得ることができ、曲げ弾性率を効果的に向上させることができる。また、各々の好ましい範囲ではこれらの効果を更に増強させることができる。
尚、上記植物性材料と熱可塑性樹脂との量比(含有割合)はペレット化された熱可塑性樹脂組成物においても同様である。
【0024】
上記「ペレット化工程」は、混合工程で得られた混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物)を、押し固めてペレット(ペレット化された熱可塑性樹脂組成物)を得る工程である。一般に熱可塑性樹脂組成物のペレット化は二軸押出し機で行われるが、本方法では押し固めてペレット化する。これにより理由は定かではないものの、植物性材料を50質量%以上と多量に含有する熱可塑性樹脂組成物においてはそのペレット化速度が顕著に向上されて高い生産性が得られる。例えば、二軸押出し機を用いてペレット化を行うと混合物自体に十分な流動性がなければペレット化自体が困難である。しかし、押し固めてペレット化する場合には、混合物自体の流動性の影響はほとんど無いものと考えられ、スムーズなペレット化を実現できる。
【0025】
更に、加熱せずペレット化を行うために、混合工程で得られた植物性材料と熱可塑性樹脂との分散状態が維持されやすいものと考えられ、本方法で得られたペレットを用いて成形を行うと他の方法のペレットを用いる場合に比べて射出圧力を小さく抑制でき、生産効率(成形効率)を向上させることができる場合がある。この効果は、特に繊維質の植物性材料を用いた場合や、熱可塑性樹脂としてポリ乳酸樹脂を用いた場合に顕著に得られる。
また、押し固めてペレット化することで、熱可塑性樹脂を軟化又は溶融させてペレット化するタイプの二軸押出し機等のように熱可塑性樹脂の加熱を要しない。このため得られる成形体の加熱による劣化を抑制でき、高い機械的特性を有する成形体が得られる。
【0026】
このペレット化工程は、上記混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物)を押し固めてペレット化する工程であればよくどのような装置及び手段を用いてもよいが、特に各種圧縮成形方法を用いることが好ましい。この圧縮成形方法としては、例えば、ローラー式成形方法及びエクストルーダ式成形方法などが挙げられる。ローラー式成形方法は、ローラー式成形機を用いる方法であり、ダイに接して回転されるローラーにより混合物がダイス内に圧入された後、ダイスから押し出されて成形される。ローラー式成形機には、ダイの形状が異なるディスクダイ式(ローラーディスクダイ式成形機)とリングダイ式(ローラーリングダイ式成形機)が挙げられる。一方、エクストルーダ式成形方法は、エクストルーダ式成形機を用いる方法であり、スクリューオーガの回転により混合物がダイス内に圧入された後、ダイスから押し出されて成形される。これらの圧縮成形方法のなかでは、特にローラーディスクダイ式成形方法を用いる方法が好ましい。この圧縮成形方法で用いられるローラーディスクダイ式成形機は圧縮効率が高く、本方法におけるペレット化工程に特に好適である。
【0027】
更に、本方法では下記特定のローラーディスクダイ式成形機500(図2及び主要部を図3に例示)を用いてペレット化することが特に好ましい。即ち、複数の貫通孔511が穿設されたディスクダイ51と、該ディスクダイ51上で転動されて該貫通孔511内に非圧縮物(混合物)を押し込むプレスローラ52と、該プレスローラ52を駆動する主回転軸53と、を備え、上記ディスクダイ51は、上記貫通孔511と同方向に貫通された主回転軸挿通孔512を有し、上記主回転軸53は、上記主回転軸挿通孔512に挿通され且つ該主回転軸53に垂直に設けられたプレスローラ固定軸54を有し、上記プレスローラ52は、上記プレスローラ固定軸54に回転可能に軸支されて上記主回転軸53の回転に伴って上記ディスクダイ51表面で転動されるローラーディスクダイ式成形部50を有するローラーディスクダイ式成形機(ペレット化装置)500である。
このローラーディスクダイ式成形機500では、上記構成に加えて更に、上記プレスローラ52は表面に凹凸521を備えるものであることが好ましい。また、主回転軸53の回転に伴って回転される切断用ブレード55を備えることが好ましい。
【0028】
上記ローラーディスクダイ式成形機500では、例えば、図3においては、主回転軸53の上方から投入された混合物をプレスローラ52が備える表面凹凸521が捉えて貫通孔511内に押し込み、ディスクダイ51の裏面側から押し出される。押し出された紐状の混合物は、切断用ブレード55により適宜の長さに切断されてペレット化され、下方に落下されて回収される。
ペレット化された熱可塑性樹脂組成物の形状及び大きさは特に限定されないが、柱状(その他の形状であってもよいが、円柱状が好ましい)であることが好ましい。また、その最大長さは1mm以上(通常20mm以下)とすることが好ましく、1〜10mmがより好ましく、2〜7mmが特に好ましい。
【0029】
本方法では、上記混合工程及び上記ペレット工程以外に他の工程を備えることができる。他の工程としては、混合工程前に用いる植物性材料を押し固めて原料ペレットを調製する工程が挙げられる。
即ち、植物性材料を押し固めて原料ペレットを得る原料ペレット作製工程と、
原料ペレットと熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を(この順に)備える熱可塑性樹脂組成物の製造方法とすることができる。
この原料ペレット作製工程においても上記ペレット化工程と同様に上記ローラーディスクダイ式成形機500を用いることができる。
【0030】
このように原料ペレット作製工程を備えることで、植物性材料の比重を熱可塑性樹脂に近づけることができ、植物性材料と熱可塑性樹脂との間の比重差を小さくできる。このため、混合の際の材料の偏在を抑制でき、植物性材料と熱可塑性樹脂とが相互に均一に分散された熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。更に、得られる成形体は高い機械的強度を有する。また、植物性材料の見掛け比重を大きくすることで嵩高さを小さくでき取扱い性が向上され、撹拌機への投入も容易となるなど熱可塑性樹脂組成物を製造する際の効率が向上される。
【0031】
上記原料ペレット作製工程を備える方法は、用いる植物性材料の見掛け比重が熱可塑性樹脂より小さい場合に好適であり、特に植物性材料の見掛け比重をAとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をBとした場合にA/Bが0.4以下(通常A/B≧0.05)である場合に好ましい。A/B≦0.4であるような比重の小さい植物性材料を含む場合には、特に熱可塑性樹脂との混合が難しく、また、生産効率が低下しがちである。しかし、原料ペレット作製工程を備えることで、植物性材料と熱可塑性樹脂との相互において高い分散性が得られる。即ち、熱可塑性樹脂よりも大幅に見掛け比重が小さい植物性材料であっても偏在なく熱可塑性樹脂と混合できる。また、熱可塑性樹脂組成物を製造する際の生産効率も向上される。A/B≦0.4となるような比重の小さい植物性材料としては、特に前記ケナフのコア材が挙げられる。このA/Bは、更に0.05≦A/B≦0.3である場合に特に効果的であり、0.07≦A/B≦0.25である場合にはとりわけ効果的である。
尚、発明にいう比重(見掛け比重)は、平衡水分率(10%)においてJIS Z8807(熱可塑性樹脂は液中ひょう量方法、植物性材料は体積からの測定方法、にて各々測定)に準じて測定した場合の比重値である。
【0032】
更に、原料ペレット作製工程を備える場合には、この原料ペレット作製工程における押し固めの程度は特に限定されないものの、原料ペレットの見掛け比重をCとし、熱可塑性樹脂の見掛け比重をBとした場合に、C/Bが0.5以上(より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.65以上、特に好ましくは1.0以上、通常)となるように押し固めることが好ましい。C/Bが0.5以上であれば、押し固めずに投入する場合に比べて高い分散性を得ることができ、更には、優れた生産効率を得ることができる。この原料ペレット自体の比重は特に限定されないが0.5〜1.3が好ましく、0.7〜1.25がより好ましい。
【0033】
尚、本発明の製造方法では、植物性材料及び熱可塑性樹脂以外にも他の成分を配合できる。他の成分としては、熱可塑性樹脂として前記ポリエステル樹脂を用いる場合のカルボジイミド化合物が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
カルボジイミドの含有量は特に限定されないが、用いる前記ポリエステル樹脂(特にポリ乳酸)の全体を100質量部とした場合に0.1〜5質量部(より好ましくは0.1〜2質量部、特に好ましくは0.5〜1.0質量部)が好ましい。この範囲では、カルボジイミド化合物を用いたことによるポリエステル樹脂(生分解性樹脂)の加水分解抑制作用をより効果的に得ることができる。
その他、更に、各種帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤等も配合できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これら他の成分は、どの工程で配合してもよいが、通常、混合工程で配合する。但し、本発明の方法では植物性材料と熱可塑性樹脂との混合を促進するための添加剤は何ら用いる必要がない。
【0034】
[2]成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法は、前記本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物(ペレット化された熱可塑性樹脂組成物)を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする。即ち、本成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得る成形工程を備える。
上記熱可塑性樹脂組成物は、前述のように植物性材料を多く含有しつつも、優れた流動性を発現できる。このため、成形時の計量時間(射出成形機における計量時間等)、及び射出時間などを短縮できる結果、成形サイクルが短縮されて、成形効率を向上させることができる。押出成形及び射出成形における各種成形条件及び使用する装置等は特に限定されず、目的とする成形体及び性状、使用されている熱可塑性樹脂の種類等により適宜のものとすることが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法により得られる成形体の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されない。この成形体は、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
[1]実施例1〜5の熱可塑性樹脂組成物の製造
粒径1mm以下のケナフコア(実施例1〜3及び実施例5)又は繊維長さ3mmのケナフ繊維(実施例4)である植物性材料と、表1に示すポリプロピレン(実施例1〜4)又はポリ乳酸樹脂(実施例5)のうちのいずれかのペレットと、を表1に示す質量比で、撹拌機1(株式会社エムアンドエフ・テクノロジー製、WO2004−076044号に示された器機)の材料供給室(図4の13)に投入(植物性材料と熱可塑性樹脂とで合計700gを表1の量比で投入)した後、混合室(容量5L、図4の3)内で撹拌して混練した。この混合に際して混合羽根(図2の10及び図5の10a〜10f)は回転速度2000rpmで回転させた。そして、混合羽根にかかる負荷(トルク)が上昇し、最大値に達して(100%を超えて)6秒後を終点として撹拌を停止して、得られた混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物、実施例1〜5)を撹拌機から排出した。
【0037】
尚、上記ケナフコアは、破砕機(株式会社ホーライ製、形式「Z10−420」)で破砕したものであり、その粒径は、JIS Z8801に準拠して、目開き1.0mmの円孔板篩を通過したものである。ケナフ繊維は、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。
また、上記ポリプロピレンとして、日本ポリプロ株式会社製、品名「ノバテック BC06C」(平均粒径3.0mm、見掛け比重0.9)を用い、ポリ乳酸樹脂として、トヨタ自動車株式会社製、品名「U’z S−17」、(平均粒径4mm、見掛け比重1.26)を用いた。
【0038】
得られた各混合物を破砕機(株式会社ホーライ製、形式「Z10−420」)を用いて5.0mm程度に破砕した後、ローラーディスクダイ式成形機500{株式会社菊川鉄工所製、形式「KP280」、貫通孔径(図3の511)4.2mm}に投入して各混合物を直径約4mm且つ長さ約5mmの円柱状のペレット(実施例1〜5の熱可塑性樹脂組成物)を得た。このペレットを作製する際のペレット作製速度は実施例1〜5までいずれも1時間あたり30kg(30kg/h)とした(上記ローラーディスクダイ式成形機500において調整した)。尚、得られた各ペレットはオーブンにて100℃で24時間乾燥させた。
【0039】
[2]比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物の製造
実施例1〜5と同様に上記撹拌機を用いて表1の材料及び配合の混合物(ペレット化前の熱可塑性樹脂組成物、比較例1〜5)を得た。
その後、得られた各混合物を破砕機(株式会社ホーライ製、形式「Z10−420」)を用いて5.0mm程度に破砕した後、二軸押出し機(株式会社プラスチック工学研究所製、スクリュー径30mm、L/D=42)を用いバレル温度190℃においてペレット化を行った。また、この際には二軸押出し機のスクリューに負荷されるトルクの限界値である25kgf・mを超えないようにフィーダー(原料供給用のフィーダー)による混合物の供給量を調節して押出しを行った。そして、このペレットを作製する際のペレット作製速度を計測して表1に示した。尚、得られた各ペレットはオーブンにて100℃で24時間乾燥させた。
【0040】
[3]熱可塑性樹脂成形体の成形
上記[1]及び[2]で得られた実施例1〜5及び比較例1〜5の各ペレット化された熱可塑性樹脂組成物を射出成形機(住友重機械工業株式会社製、形式「SE100DU」)に各々投入し、シリンダー温度190℃、型温度40℃の条件で射出成形して厚さ4mm、幅10mm、長さ80mmの長方形板状の試験片を得た。また、この成形を行う際の射出形成機における射出圧力(射出充填圧)を計測し、表1に併記した。
【0041】
[4]熱可塑性樹脂成形体の特性評価
上記[3]で得られた実施例1〜5及び比較例1〜5の各成形体の曲げ弾性率を測定した。この測定に際しては、厚さ4mm、幅10mm、長さ80mmの長方形板状の試験片を用い、各試験片を支点間距離(L)64mmとした2つの支点(曲率半径5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径5mm)から速度2mm/分にて荷重の負荷を行って、各試験片の曲げ弾性率をJIS K7171に従って測定した。その結果を表1に示した。
更に、上記[1]及び[2]で計測した「ペレット作製速度」と、[3]で計測した「射出圧力」と、[4]で計測した「曲げ弾性率」と、の各々について、実施例と比較例との数値比較をグラフにして図1に示した。
即ち、「射出圧力」の測定値が実施例においてAであり、比較例においてBである場合に、(A−B)/Bの値を「射出圧力の変化」として図1に各々示した。同様に「曲げ弾性率」の測定値が実施例においてAであり、比較例においてBである場合に、(A−B)/Bの値を「曲げ弾性率の変化」として図1に各々示した。更に、「ペレット作製速度」の測定値が実施例においてAであり、比較例においてBである場合に、A/Bの値を「作製速度の変化」(倍率)として図1に各々示した。
【0042】
【表1】

【0043】
[5]実施例の効果
実施例1〜5のいずれにおいても50質量%以上の植物性材料を熱可塑性樹脂と混合することができた。特に植物性材料と熱可塑性樹脂との混合を促進するための添加剤を何ら用いることなく混合することができた。
配合した材料及びその量は実施例1と比較例1とで同じであり、実施例2と比較例3とで同じであり、実施例3と比較例3とで同じであり、実施例4と比較例4とで同じであり、実施例5と比較例5とで同じである。しかし、実施例1〜5はいずれも押し固めて得られたペレットを用いて成形を行っているのに対して、比較例1〜5は押出し機を用いて得られたペレットを用いて成形を行っている。
【0044】
その結果、比較例1に対して実施例1は、射出圧力が−4.5%と低減され、加えて曲げ弾性率は+5%と強化され、更にペレット作製速度は5倍になった。また、比較例2に対して実施例2は、射出圧力が−5.5%と低減され、加えて曲げ弾性率は+4.3%と強化され、更にペレット作製速度は6倍となった。また、比較例3に対して実施例3は、射出圧力が+1.5%とほとんど変化されず、加えて曲げ弾性率は+5.6%と強化され、更にペレット作製速度は7.5倍となった。また、比較例4に対して実施例4は、射出圧力が+7.8%と増加されたものの、曲げ弾性率は+6.0%と強化され、更にペレット作製速度は5倍となった。また、比較例5に対して実施例5は、射出圧力が−4.2%と低減され、加えて曲げ弾性率は+5.2%と強化され、更にペレット作製速度は10倍となった。即ち、いずれの比較においても押し固めてペレットを得た後、このペレットを用いて成形性を行うことで射出圧力は低減又は微増に抑えつつ、曲げ弾性率に示される機械的特性は強化され、尚かつペレット作製速度は非常に早く生産効率がよいことが確かめられた。また、これらの結果から、特に植物性材料のなかでもコアを用いた場合にメリットが大きく、更に、ポリ乳酸を用いた場合にはとりわけメリットが大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、自動車関連分野及び建築関連分野などにおいて広く利用される。特に自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等に好適であり、なかでも自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等に好適である。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車用ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材にも好適である。具体的には、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】各実施例と比較例とを比べた場合の曲げ弾性率の変化、射出圧力の変化及び作製速度の変化を示すグラフである。
【図2】本熱可塑性樹脂組成物の製造方法の各工程を模式的に示す説明図である。
【図3】ローラーディスクダイ式成形機の要部の一例を示す模式的な斜視図である。
【図4】撹拌機の一例を示す模式的な断面図である。
【図5】撹拌機に配設された混合羽根の一例を示す模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1;撹拌機、3;混合室、5;回転軸、10及び10a〜10f;混合羽根、12;らせん状羽根、13;材料供給室、500;ローラーディスクダイ式成形機(ペレット化装置)、50;ローラーディスクダイ式成形部(ペレット化部)、51;ディスクダイ、511;貫通孔、512;主回転軸挿通孔、52;プレスローラ、521;凹凸部、53;主回転軸、54;プレスローラ固定軸、55;切断用ブレード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性材料と熱可塑性樹脂とを含有し、該植物性材料及び該熱可塑性樹脂の合計を100質量%とした場合に該植物性材料を50〜95質量%含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
植物性材料と熱可塑性樹脂とを撹拌機で混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、押し固めてペレットを得るペレット化工程と、を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
上記撹拌機は、上記混合を行う混合室及び該混合室内に配置された混合羽根を備え、
上記混合工程は、上記混合室中で上記混合羽根の回転により溶融された上記熱可塑性樹脂と上記植物性材料とを混合する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
上記植物性材料は、ケナフである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
上記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン及び/又はポリ乳酸である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を押出成形又は射出成形して成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−108141(P2009−108141A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279575(P2007−279575)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】