説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】ウェルドラインの発生を抑制することができるとともに、光輝性に優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂組成物1は、熱可塑性樹脂2と、熱可塑性樹脂2中に分散された板状の光輝性粉末3とを含有する熱可塑性樹脂組成物1であって、更に、熱可塑性樹脂2中に分散された粒子状の粉末4を含有する熱可塑性樹脂組成物1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、ウェルドラインの発生を抑制することができるとともに、光輝性に優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属調(メタリック調)やパール調等の光輝性のある外観を有する成形品は、例えば、熱可塑性樹脂と板状の光輝性粉末とを含有した熱可塑性樹脂組成物を用いて製造されている。例えば、銀色の外観を有する成形品を得る場合には、板状のアルミニウム粉末を混合した熱可塑性樹脂組成物が用いられており、また、金色の外観を有する成形品を得る場合には、板状の銅粉末を混合した熱可塑性樹脂組成物が用いられている。
【0003】
このような熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形、押出成形、ブロー成形等の成形方法により金属調の成形品を製造する際において、流動中の熱可塑性樹脂組成物の先端が不完全な融合状態にあると、その熱可塑性樹脂組成物の合流ラインに、ウェルドラインとよばれる線状のマークを生じることがある。このウェルドラインは、例えば、金型内流動経路内に樹脂組成物の流れの一部を妨害するような突起や挿入物がある場合や、二以上の流れの熱可塑性樹脂組成物が合流する場合に多く発生する。
【0004】
こうしたウェルドラインの発生を抑制するための樹脂組成物として、例えば、樹脂成分と、方向性を有さない形状の金属を有する粉末からなるメタリック調樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、熱可塑性樹脂:50〜95重量%、板状顔料:0.1〜5重量%、繊維状フィラーと針状フィラーの少なくとも一方:0.1〜50重量%を含む熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平8−41284号公報
【特許文献2】特開2001−207062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示す樹脂組成物は、ウェルドラインの発生を抑制することができるものの、方向性を有さない形状の金属を有する粉末を用いているため、得られる成形品の光輝性が著しく低下してしまうという問題があった。また、特許文献2に示す樹脂組成物は、ウェルドラインの発生を抑制する効果が十分ではなく、その使用用途や成形方法が限られてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、ウェルドラインの発生を抑制することができるとともに、光輝性に優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂と、板状の光輝性粉末とを含有する熱可塑性樹脂組成物に、更に、熱可塑性樹脂中に分散された光透過性の粒子状の粉末を含有させることによって、前記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0008】
[1] 熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂中に分散された板状の光輝性粉末とを含有する熱可塑性樹脂組成物であって、更に、前記熱可塑性樹脂中に分散された光透過性の粒子状の粉末を含有する熱可塑性樹脂組成物。
【0009】
[2] 前記粒子状の粉末の形状が球状である前記[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0010】
[3] 前記粒子状の粉末の数平均粒子径が0.1〜1000μmである前記[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0011】
[4] 前記粒子状の粉末が、中空粒子からなるものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
[5] 前記粒子状の粉末が、ガラス又は有機物を含む粒子からなるものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0013】
[6] 前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記板状の光輝性粉末を0.01〜10質量部、及び前記粒子状の粉末を0.01〜10質量部含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
[7] 前記板状の光輝性粉末が、アルミニウム、銅、真鍮、ニッケル、ステンレス、鉄、チタン、金、銀、パール、及び雲母からなる群より選択される少なくとも一種の成分を含むものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0015】
[8] 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含むものである前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウェルドラインの発生を抑制することができるとともに、光輝性に優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を具体的な実施形態に基づいて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
[1]熱可塑性樹脂組成物:
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、図1に示すように、熱可塑性樹脂2と、この熱可塑性樹脂2中に分散された板状の光輝性粉末3とを含有する熱可塑性樹脂組成物1であって、更に、熱可塑性樹脂2中に分散された光透過性の粒子状の粉末4を含有する熱可塑性樹脂組成物1である。このように、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物1は、光透過性の粒子状の粉末4を更に含有することにより、板状の光輝性粉末3が配向するのを阻害することができ、ウェルドラインの発生を抑制することができるとともに、光輝性に優れた成形品を得ることができる。ここで、図1は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の構成を模式的に示す説明図である。
【0019】
例えば、図2に示すように、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物1を用いて成形品を製造する際において、金型内に二以上の流れの熱可塑性樹脂組成物1が合流するような箇所がある場合や、金型内流動経路内に熱可塑性樹脂組成物1の流れの一部を妨害するような突起(図示せず)や挿入物(図示せず)がある場合であっても、その合流ライン5において、板状の光輝性粉末3が配向することがなく、ウェルドラインの発生を抑制することができる。ここで、図2は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を製造した場合における、熱可塑性樹脂組成物中の板状の光輝性粉末の状態を模式的に示す説明図である。なお、図2中の矢印は、熱可塑性樹脂組成物の流れ方向を示している。
【0020】
なお、例えば、図3に示すように、熱可塑性樹脂12と、単なる板状の光輝性粉末13とを含有する従来の熱可塑性樹脂組成物11を用いて成形品を製造した場合には、板状の光輝性粉末13が、その合流ライン15において配向してしまい、この部分にウェルドラインが発生してしまう。ここで、図3は、従来の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を製造した場合における、熱可塑性樹脂組成物中の板状の光輝性粉末の状態を模式的に示す説明図である。
【0021】
このため、図3に示すような板状の光輝性粉末13を含有する従来の熱可塑性樹脂組成物11を用いて成形品を製造する場合には、射出成形、押出成形、ブロー成形等のような成形方法は不適切とされており、このような成形方法にて成形品を製造する場合には、主として、金属顔料等を含む塗装によって対応がなされていた。また、図示は省略するが、樹脂成分と、方向性を有さない形状の金属を有する粉末からなる樹脂組成物を用いた場合には、得られる成形品の光輝性が著しく低下してしまうという問題があった。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物1は、射出成形、押出成形、ブロー成形等の従来不適切とされている成形方法を用いたとしても、熱可塑性樹脂組成物1の合流ライン5におけるウェルドラインの発生を良好に抑制することができ、別途、金属顔料等を含む塗装等を行わずとも、光輝性に優れた成形品を得ることができる。このため、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物1は、コスト面及び環境面においても優れており、更に、熱可塑性樹脂組成物1自体が金属調の高い光輝性を有しており、塗装による塗膜の剥離等の問題が生じることもない。
【0023】
[2]熱可塑性樹脂:
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂については特に制限はなく、従来公知の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含むものを好適例として挙げることができる。
【0024】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、アミノアクリルアミド重合体、ポリオレフィン系結晶性樹脂及びその無水マレイン酸グラフト重合体、ポリオレフィン系非晶性樹脂及びその無水マレイン酸グラフト重合体、ポリイソブチレン、エチレン塩化ビニル重合体、エチレンビニルアルコール重合体及びそのアイオノマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレンアクリル酸共重合体、ポリイソブチレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、塩素化ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ACS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ビニルアルコール樹脂、ビニルアセタール樹脂、メチルメタアクリレート樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等を用いることができる。
【0025】
[3]板状の光輝性粉末:
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いられる板状の光輝性粉末は、成形品に光輝性を付与するための板状の粉末である。
【0026】
板状の光輝性粉末は、従来、金属調(メタリック調)の光輝性のある外観を有する成形品を得るために用いられている板状の光輝性粉末を用いることができる。なお、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、アルミニウム、銅、真鍮、ニッケル、ステンレス、鉄、チタン、金、銀、パール、及び雲母からなる群より選択される少なくとも一種の成分を含む板状の光輝性粉末を好適に用いることができる。このような光輝性粉末は、その材質によって成形品に付与される光沢色が異なるため、使用用途に応じて適宜選択することができる。なお、本実施形態に用いられる板状の光輝性粉末は、例えば、上記した成分のみからなる板状の粉末であってもよいし、また、ガラス、有機物、又は無機物等の表面に、上記した群のうちの金属成分がコーティングされたものであってもよい。
【0027】
板状の光輝性粉末の形状についても特に制限はないが、例えば、平均粒子径1〜500μm、アスペクト比5〜100の板状の光輝性粉末であることが好ましい。このような光輝性粉末を用いることにより、光輝性に優れた成形品を製造することができる。なお、上記した板状の光輝性粉末の平均粒子径とは、体積粒度分布における、50体積%粒子径(D50)のことである。また、アスペクト比は、板状の光輝性粉末の厚さに対する長手方向の長さの割合(長手方向の長さ/厚さ)である。
【0028】
熱可塑性樹脂中に分散させる板状の光輝性粉末の量については、得られる成形品における光輝性(光輝度)を考慮して、適宜決定することができる。なお、特に限定されることはないが、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂100質量部に対して、板状の光輝性粉末を0.01〜10質量部含有するものであることが好ましく、0.08〜8質量部含有するものであることが更に好ましく、0.1〜5質量部含有するものであることが特に好ましい。板状の光輝性粉末の含有量が0.01質量部未満であると、成形品の光輝性が低くなることがあり、一方、板状の光輝性粉末の含有量が10質量部を超えると、コスト高になることや、得られる成形品の機械的強度が低下することがある。
【0029】
[4]粒子状の粉末:
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いられる光透過性の粒子状の粉末は、熱可塑性樹脂中に分散されたものであり、板状の光輝性粉末が配向するのを阻害するためのものである。このため、この粒子状の粉末は、使用する板状の光輝性粉末よりも配向性の低い形状、例えば、球状、楕円球状(例えば、卵形、レモン形、ラグビーボール形)、柱状等の形状であることが好ましい。特に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いられる光透過性の粒子状の粉末は、配向性のない、球状であることが好ましい。
【0030】
また、この粒子状の粉末は、熱可塑性樹脂組成物の光輝性を低下させないように、光透過性の粒子であることが必要である。例えば、光透過性の粒子としては、ガラス又は有機物を含む粒子を好適例として挙げることができる。
【0031】
また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いられる光透過性の粒子状の粉末は、密実粒子からなるものであってもよいし、中空粒子からなるものであってもよい。例えば、光透過性の粒子状の粉末が、中空粒子からなるものである場合には、熱可塑性樹脂組成物の比重を小さくすることができ、成形品の物性を低下させることなく、ウェルドラインの発生を抑制することができるとともに、光輝性に優れた成形品を得ることができる。一方、光透過性の粒子状の粉末が密実粒子からなるものである場合には、耐久性の優れた成形品を得ることができる。
【0032】
また、特に限定されることはないが、粒子状の粉末の数平均粒子径が1〜1000μmであることが好ましく、5〜800μmであることが更に好ましく、20〜500μmであることが特に好ましい。数平均粒子径が1μm未満であると、ウェルドラインの発生を抑制する効果が低下することがあり、また、数平均粒子径が1000μmを超えると、成形品の物性を保持することが困難になることがある。また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂100質量部に対して、光透過性の粒子状の粉末を0.01〜10質量部含有するものであることが好ましく、0.08〜8質量部含有するものであることが更に好ましく、0.1〜5質量部含有するものであることが特に好ましい。光透過性の粒子状の粉末の含有量が0.01質量部未満であると、ウェルドラインの発生を抑制する効果が低下することがあり、一方、光透過性の粒子状の粉末の含有量が10質量部を超えると、コスト高になることや、得られる成形品の機械的強度が低下することがある。なお、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂100質量部に対して、板状の光輝性粉末を0.01〜10質量部、及び粒子状の粉末を0.01〜10質量部含有することが好ましい。
【0033】
[5]その他の添加剤:
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、その他の添加剤として、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、安定剤、酸化防止剤、硬化剤等を更に含有したものであってもよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における「部」及び「%」は特に断りのない限り質量部及び質量%を意味する。また、実施例における各評価は、下記方法により実施した。
【0035】
[ウェルドライン]:熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形品の表面におけるウェルドラインの有無を、目視にて確認し、以下のように評価した。
◎:成形品表面のウェルドラインがほとんど確認されず、外観が特に良好である。
○:成形品表面のウェルドラインが若干確認されるものの、外観は良好である。
△:成形品表面のウェルドラインが少し確認され、外観が若干不良である。
×:成形品表面のウェルドラインが確認され、外観が不良である。
【0036】
[光輝性]:熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた成形品の光輝性を、目視によって以下のように評価した。
◎:輝きが非常にある。
○:輝きがある。
△:輝きがあまりない。
×:輝きがない。
【0037】
(実施例1)
まず、ポリカーボネート(以下、「PC」ということがある)樹脂(住友ダウ社製:商品名「301−40」)100質量部に対して、板状の金属粉末(光輝性粉末)として、平均粒子径20μm、アスペクト比10のアルミ粉末(東洋アルミ社製)1質量部と、数平均粒子径が1μmの中空ガラス粒子からなる粉末(粒子状の粉末)5質量部とを加えて、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0038】
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形法によって、板状の成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
(実施例2〜4)
粒子状の粉末として、表1に示すような各数平均粒子径の中空ガラス粒子からなる粉末(粒子状の粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0041】
(実施例5〜7)
粒子状の粉末として、表1に示すような各数平均粒子径のガラスビーズ粒子(密実ガラス粒子)からなる粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
(実施例8)
板状の金属粉末(光輝性粉末)として、平均粒子径40μm、アスペクト比8のアルミ粉末(東洋アルミ社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0043】
(実施例9〜11)
粒子状の粉末として、表1に示すような各数平均粒子径の中空ガラス粒子からなる粉末(粒子状の粉末)を用いたこと以外は、実施例8と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例8と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0044】
(実施例12〜14)
粒子状の粉末として、表1に示すような各数平均粒子径のガラスビーズ粒子(密実ガラス粒子)からなる粉末を用いたこと以外は、実施例8と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例8と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0045】
(実施例15)
板状の金属粉末(光輝性粉末)として、平均粒子径60μm、アスペクト比8のアルミ粉末(東洋アルミ社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
(実施例16〜18)
粒子状の粉末として、表2に示すような各数平均粒子径の中空ガラス粒子からなる粉末(粒子状の粉末)を用いたこと以外は、実施例15と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例15と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0048】
(実施例19〜21)
粒子状の粉末として、表2に示すような各数平均粒子径のガラスビーズ粒子(密実ガラス粒子)からなる粉末を用いたこと以外は、実施例15と同様の方法によって熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、実施例15と同様の方法で成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0049】
(比較例1〜3)
PC樹脂(住友ダウ社製:商品名「301−40」)100質量部に対して、表2に示す大きさのアルミ粉末(東洋アルミ社製)をそれぞれ1質量部添加して熱可塑性樹脂組成物を製造した。なお、比較例1のアルミ粉末は、平均粒子径20μm、アスペクト比10であり、比較例2のアルミ粉末は、平均粒子径40μm、アスペクト比8であり、比較例3のアルミ粉末は、平均粒子径60μm、アスペクト比8である。
【0050】
得られた各熱可塑性樹脂組成物(比較例1〜3)を用いて、射出成形法によって、板状の成形品を製造した。得られた成形品について、上述したウェルドライン及び光輝性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0051】
(考察)
本実施例1〜21の成形品は、比較例1〜3の成形品と比較してウェルドラインの発生が抑制されていた。特に、数平均粒子径が40μmと60μmの中空ガラス粒子からなる粉末(粒子状の粉末)を用いた場合、及び数平均粒子径が100μmと500μmのガラスビーズ粒子(密実ガラス粒子)を用いた場合に、良好な結果を得ることができた。なお、実施例1、8、及び15の成形品は、ウェルドラインが少し確認されたが、使用上には問題のない程度のものであった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、金属調(メタリック調)の光輝性のある外観を有する成形品を成形するための樹脂組成物として好適に用いることができる。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ウェルドラインの発生を抑制することができるとともに、光輝性に優れた成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の熱可塑性樹脂組成物の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を製造した場合における、熱可塑性樹脂組成物中の板状の光輝性粉末の状態を模式的に示す説明図である。
【図3】従来の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を製造した場合における、熱可塑性樹脂組成物中の板状の光輝性粉末の状態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1:熱可塑性樹脂組成物、2:熱可塑性樹脂、3:板状の光輝性粉末、4:粒子状の粉末、5:合流ライン、11:熱可塑性樹脂組成物、12:熱可塑性樹脂、13:板状の光輝性粉末、15:合流ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂中に分散された板状の光輝性粉末とを含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
更に、前記熱可塑性樹脂中に分散された光透過性の粒子状の粉末を含有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記粒子状の粉末の形状が球状である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記粒子状の粉末の数平均粒子径が0.1〜1000μmである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記粒子状の粉末が、中空粒子からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記粒子状の粉末が、ガラス又は有機物を含む粒子からなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記板状の光輝性粉末を0.01〜10質量部、及び前記粒子状の粉末を0.01〜10質量部含有する請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記板状の光輝性粉末が、アルミニウム、銅、真鍮、ニッケル、ステンレス、鉄、チタン、金、銀、パール、及び雲母からなる群より選択される少なくとも一種の成分を含むものである請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含むものである請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−81554(P2008−81554A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260942(P2006−260942)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(591258587)日本カラリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】