説明

熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄剤

【課題】 保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体を侵すことのない専用の洗浄剤を提供する。
【解決手段】 ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油から選ばれる1又は2以上の非イオン界面活性剤と、水とからなる熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体の洗浄に特化した洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体が知られており、特開昭55−154198号公報、特開平3−2089号公報、特開平5−124360号公報、特開平6−255247号公報などが知られている。これらの記録媒体は、一時的な画像表示が行なえ、不要となったときにはその画像の消去ができるので、シート状物などに加工して繰り返し使用できる記録媒体として用いられている。
通常これらの記録媒体は、熱可逆性発色組成物層の上面に保護層を設けた構成をしている。この保護層は、水溶性高分子や疎水性高分子化合物の水性エマルジョンを主体として形成された被膜や、紫外線(硬化)性樹脂や電子線(硬化)性樹脂等の(硬化)性樹脂を主体として形成した被膜等を用いられている。
ところで、これらの記録媒体は繰り返し使用できることが特徴である一方、繰り返し使用しているうちに、前記保護層に汚れが付着する欠点があった。汚れが付着すると鮮明な記録ができなるし、特に汚れがひどくなるとサーマルヘッドなどの画像付与機器に悪影響を及ぼし、故障の原因となることがあった。
そこで、特開平07−112584の如き洗浄装置を通過させ、洗浄剤を用いて汚れを除去するのであるが、油性溶剤系の洗浄剤を用いると前記保護層を侵してしまい、前記記録媒体を使用不可能にする欠点があった。また、特開平4−80271号公報に記載があるような界面活性剤を配合した水性系洗浄剤を用いた場合でも、僅かなクラックから洗浄剤が浸入してしまうとひび割れ状に変色することがあり、前記記録媒体の寿命を著しく短縮してしまう欠点があった。
【0003】
【特許文献1】特開平4−80271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体を侵すことのない専用の洗浄剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油から選ばれる1又は2以上の非イオン界面活性剤と、水とからなる熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄剤を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗浄液は、熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体の保護層を侵すことがなく、また、前記保護層に入った微細な亀裂から本発明の洗浄剤が浸入しても、熱可逆性発色組成物自体を侵すことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の洗浄剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油から選ばれる1又は2以上の非イオン界面活性剤と、水を必須構成要件とするものである。
【0008】
本発明洗浄剤に用いられる非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油から選択される。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテルなどを例示することができ、特に、HLB=9〜20であってpH=5.8〜8.6のものが好ましく用いられる。
ポリオキシエチレンアルキルエステルとしては、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレレートなどを例示することができ、特に、HLB=9〜20であってpH=5.8〜8.6のものが好ましく用いられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、その構成脂肪酸がラウリン酸 、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸、リシノール酸などからなるショ糖モノエステル・ジエステル・トリエステルを例示することができる。本発明では、ショ糖脂肪酸モノエステル、ショ糖脂肪酸ジエステル、ショ糖脂肪酸トリエステルを単独又は混合して用いることができるが、特にモノエステル比率が90重量%以上、HLB=9〜20、pH=5.8〜8.6のものが好ましく用いられる。
アルキルグリコシド及びアルキルポリグリコシドとしては、ブチルグリコシド、ラウリルグリコシド、デシルグリコシド、オクチルグリコシド、ドデシルグリコシド、ブチルポリグリコシド、ラウリルポリグリコシド、デシルポリグリコシド、オクチルポリグリコシド、ドデシルポリグリコシドなどを例示することができ、特に、アルキル基の炭素数が4〜18、グリコシドの重合度nが1〜5であって、HLB=9〜20、pH=5.8〜8.6のものが好ましく用いられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどを例示することができ、特に、HLB=9〜20であってpH=5.8〜8.6のものが好ましく用いられる。
ポリオキシエチレン硬化ひまし油としては、重合度nが25〜80程度のポリエチレングリコールの水添ひまし油などを例示することができ、特に、HLB=9〜20であってpH=5.8〜8.6のものが好ましく用いられる。
上記の非イオン界面活性剤は、1又は2以上を選択して使用でき、洗浄剤全量に対して0.01〜20重量%程度を使用することができる。
【0009】
本発明洗浄剤に用いられる溶剤としては、水を用いる。
水は特に限定されないが、不純物を除いたものが好ましく、蒸留水、ろ過水、純水が好ましく用いられ、洗浄剤全量に対して30〜99.5重量%、好ましくは90〜99重量%程度を使用することができる。
【0010】
本発明の洗浄剤には、他に金属イオン封鎖剤を更に配合することもできる。具体的には、エチレンジアミン四酢酸塩、縮合リン酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、ニトリロ三酢酸塩、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N′,N″−トリアセテート、ジエチレントリアミンペンタ酢酸塩、トリエチレンテトラミン六酢酸塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシンなどを例示することができる。特に、エチレンジアミン四酢酸塩が好ましい。
これらの金属イオン封鎖剤は、1又は2以上を選択して使用でき、洗浄剤全量に対して0.01〜20重量%程度を使用することができる。
【0011】
本発明の洗浄剤には、他に防腐剤を更に配合することもできる。具体的には、安息香酸ナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンナトリウム塩、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンアルキルアミン塩、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール−4‘−N−ドデシルベンゾールスルフォン酸などの防腐剤などを例示することができる。
これらの防腐剤は、1又は2以上混合して用いることができ、洗浄剤全量に対して0.01〜20重量%程度を使用することができる。
【0012】
また、本発明の洗浄剤には、浸透剤としてグリセリンやプロピレングリコールを少量配合することもできる。グリセリンやプロピレングリコールは、表面張力を下げ、汚れとの親和力を向上させるために用いることができ、洗浄剤全量に対して0.01〜10重量%程度を使用することができる。但し、当該浸透剤は、本発明が対象としている熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体を侵す恐れがあるので、使用しないほうが好ましい。
【0013】
本発明の洗浄剤は、通常無色透明であるが、他の溶剤と判別しやすくするために僅かに水溶性染料などを配合してもよい。
【0014】
一般的に洗浄剤は、非イオン界面活性剤単独でなくアニオン界面活性剤等と共用することが多いが、アニオン界面活性剤等は、本発明が対象としている熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体を侵すので使用できない。
また、洗浄剤に用いられる非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン芳香族置換アルキルエーテル、高級アルコール、高級脂肪酸などが知られているが、これらの非イオン界面活性剤も本発明が対象としている熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体を侵すので使用できない。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
ポリオキシエチレンモノオレエート 1.0重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンナトリウム塩 0.5重量%
水 98.5重量%
以上の物質を混合し、保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄液を得た。
【0016】
(実施例2)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテル 1.0重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンアルキルアミン 0.5重量%
水 98.5重量%
以上の物質を混合し、保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄液を得た。
【0017】
(実施例3)
ショ糖モノデシルエステル 1.0重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンナトリウム塩 0.5重量%
水 98.5重量%
以上の物質を混合し、保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄液を得た。
【0018】
(実施例4)
デシルグリコシド 1.0重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンアルキルアミン 0.5重量%
水 98.5重量%
以上の物質を混合し、保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄液を得た。
【0019】
(比較例1)
モノエタノールアミン 15.0重量%
メタケイ酸ナトリウム 3.0重量%
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 5.0重量%
エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム 2.0重量%
第2級アルカンスルホネート 1.7重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンアルキルアミン 0.5重量%
水 73.3重量%
以上の物質を混合して、特開平4−80271号の実施例3の洗浄液を得た。
【0020】
(比較例2)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1.0重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンアルキルアミン 0.5重量%
水 98.5重量%
以上の物質を混合し、洗浄液を得た。
【0021】
(比較例3)
ソルビタンラウレート 1.0重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンナトリウム塩 0.5重量%
水 98.5重量%
以上の物質を混合し、洗浄液を得た。
【0022】
(比較例4)
オレイン酸ジエタアミド 1.0重量%
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンアルキルアミン 0.5重量%
水 98.5重量%
以上の物質を混合し、洗浄液を得た。
【0023】
(耐性試験)
特開平07−112584の如き洗浄装置の水槽に、本実施例及び比較例の洗浄液を入れ、保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体を文字形状に発色させたものを、50℃で1日浸漬した後、記録媒体の様子を観察した。
<評価> ○:変化なし。
×:発色文字が判別不能となった。
【0024】
(洗浄性試験)
特開平07−112584の如き洗浄装置の水槽に、本実施例及び比較例の洗浄液を入れ、保護層でオーバーコートされた熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体を文字形状に発色させたものを、当該洗浄装置を用いて1回通過させたときの記録媒体の様子を観察した。
<評価> ○:油汚れを含む汚れ全体が落ちた。
△:汚れは僅かに落ちたが、油汚れは落ちなかった。
×:汚れが落ちなかった。
【0025】
以下、試験結果を表にする。
(表1)
┌──────┬─────┬─────┐
│ | 耐性試験 |洗浄性試験|
├──────┼─────┼─────┤
| 実施例1 | ○ | ○ |
├──────┼─────┼─────┤
| 実施例2 | ○ | ○ |
├──────┼─────┼─────┤
| 実施例3 | ○ | ○ |
├──────┼─────┼─────┤
| 実施例4 | ○ | ○ |
├──────┼─────┼─────┤
| 比較例1 | × | × |
├──────┼─────┼─────┤
| 比較例2 | × | ○ |
├──────┼─────┼─────┤
| 比較例3 | △ | × |
├──────┼─────┼─────┤
| 比較例4 | △ | × |
└──────┴─────┴─────┘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油から選ばれる1又は2以上の非イオン界面活性剤と、水とからなる熱可逆性発色組成物を用いた記録媒体用の洗浄剤。

【公開番号】特開2007−314686(P2007−314686A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146701(P2006−146701)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】