説明

熱可逆記録媒体、熱可逆記録部材、画像処理装置及び画像処理方法

【課題】繰り返し消去印字、低温環境や高温環境下、各環境下で繰り返し消去印字を実施してもカールの発生が少なく、搬送性に優れ、一括大量発行においても搬送不良の発生が少なく、プリンタのスタッカに規定の枚数をセットできる熱可逆記録媒体等を提供する。
【解決手段】支持体10上に温度に依存して色調が可逆的に変化する感熱層12と、該感熱層12上に少なくとも1層以上の保護層11を設け、前記支持体10の感熱層12が設られた面と反対側の面に少なくとも1層以上からなるカール防止層14を設け、該カール防止層14上に帯電防止層15を設け、前記感熱層12とカール防止層14を構成する樹脂種、及び前記保護層11と帯電防止層15を構成する樹脂種とが、それぞれ同一である熱可逆記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消去・印字を繰り返して実施しても媒体のカールが少なく、低温環境や高温環境下においても媒体におけるカールの発生が少なく、また各環境下で繰り返し消去・印字を繰り返して実施してもカールの発生が少なく、低温環境下から高温環境下においても搬送性に優れ、一括大量発行の際にも搬送不良の発生が少なく、プリンタのスタッカに規定の枚数をセットできる熱可逆記録媒体、並びに該熱可逆記録媒体を用いた熱可逆記録部材、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一時的な画像形成を行うことができ、不要となったときにはその画像の消去ができる可逆性感熱記録媒体(以下、「熱可逆記録媒体」、「記録媒体」、「リライタブル媒体」と称することがある)が注目されている。その代表的なものとしては、樹脂中に長鎖脂肪族炭化水素基を持つ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物又はフェノール化合物のような顕色剤と、ロイコ染料のような発色剤とを分散させてなる熱可逆記録媒体が知られている(特許文献1及び2参照。)。
【0003】
このような熱可逆記録媒体は、磁気記録層を有するPETフィルムを支持体としているものが多く、主にポイントカードとして市場で使われている。一方において、薄手の支持体上に熱可逆性記録層を設け、その支持体の反対面に接着層を設けて、様々な基材に対して熱と圧力によりラミネートして熱可逆記録媒体として使用する方法も数多く提案されている(例えば、特許文献3〜6参照。)。
【0004】
しかし、上記の基材は、光メモリ、接触式IC、非接触式IC、磁気記録と組み合わせられ、ほとんどの基材が厚く、大きさが制限されているカードであり、用途が制限されている。そのため、入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの大きな画面・多様な表示には不向きであった。
【0005】
そこで、上記のような用途に使用するためには、カードサイズよりも大きなカンバンサイズからA4やA3程度のシートサイズの熱可逆記録媒体が必要となる。ここで、前記カンバンサイズとはカードサイズ(54mm×85mm)よりも大きなサイズでA5サイズよりも小さなサイズのものを意味し、シートサイズとは、A5以上の大きいサイズのものを意味する。
【0006】
前記熱可逆記録媒体をカンバンやシートとして使用すると、ポイントカードや厚手基材のカードと比べてサイズが大きくなるため、プリンタ搬送時に熱可逆記録媒体同士や搬送ローラ等の接触により帯電しやすくなる。また、接触面積が大きくなるため、熱可逆記録媒体に蓄積される静電気が多くなる。その結果、熱可逆記録媒体同士が静電気によって貼り付き、プリンタで搬送し難くなるため、重送という不具合が発生する。
また、熱による繰り返し印字と消去によって熱可逆記録媒体が収縮し、カールが発生するが、そのカール度合いが大きくなってスタッカから画像処理装置の搬送路に入らずに給紙不良が発生したり、カールした媒体が画像処理装置の搬送路でローラ等に引っかかり搬送不良の原因となるという問題がある。
【0007】
ここでカールとは繰り返し使用により記録層面側に記録媒体が反ってくるカール、各環境下に記録媒体を放置することで記録層面側に反るカールや、記録層面とは反対側に反るカール等があり、これらのカールの変動がスタッカへの所定の枚数がセットできない不具
合やスタッカから画像処理装置への給紙不良を発生させる。
また、これらのカンバンやシートはRF−IDとの組み合わせで好適に用いられているため、多くの繰り返し消去印字の使用に耐えることができる耐久性が要求されている。例えば以前までは100回レベルの繰り返しでも十分であったものがそれよりも多くの回数が求められてきている。
【0008】
そこで特許文献7においては、針状導電性フィラーを用いたバック層を設けた熱可逆記録媒体が提案されている。しかし、当初考えていた使用環境である5℃30%から35℃85%という環境下では特に問題は発生していなかったが、物流管理、製造工程管理といった用途では使用環境が多岐に渡るため新たな問題が発生した。すなわち、冷凍庫に保管する製品物流管理用途では、例えば5℃よりも低い低温環境領域使われることもあれば、一般の空調のない倉庫等に保管する製品物流管理用では、例えば35℃以上の高温環境領域で使われる用途もあり、使用環境が低温環境から高温環境まで様々に広がってきた。そのため、従来の想定領域を外れた低温環境下では記録層面側に大きくカールが発生し、表示内容が見難くなる問題や、所定の位置からカール部分がはみ出して運用上で不具合が発生する問題が生じた。また、低温環境領域での消去印字ではそのカールのためにプリンタスタッカで所定の量が収まらなかったり、カールのためにスタッカから搬送経路に搬送できない給紙不良が発生するという問題が新たに生じた。
【0009】
逆に従来の想定領域を外れた高温環境下では、バック層面側に大きくカールが発生し、やはり表示内容が見難くなる問題や、所定の位置からカール部分がはみ出してしまう問題、プリンタの給紙不良と搬送不良といった問題もある。
また、物流管理用途、製造工程管理用途では、1日に大量のカンバンやシートを一括大量発行する用途が多いため、複数枚の熱可逆記録媒体を重ねて発行することになる。例えば1日に生産する物に対して1枚のカンバンやシートを発行した場合は、その量に応じて
発行することになり、その量が100個であれば100枚、500個であれば500枚の熱可逆記録媒体を重ねて都度発行することになる。
そのため使用する媒体のカールが大きくなると、カールした部分の出っ張りが積み重なり規定の枚数の記録媒体がプリンタのスタッカに納まらないという問題や、カールの傾きのためにスタッカから搬送路へ上手く給紙して搬送することが出来ないという問題が発生する。
【0010】
更に、熱可逆記録媒体であるため、繰り返し使用する際には、消去時と印字時にそれぞれ熱履歴が加わることになるが、その熱履歴により記録媒体の表面側に多くの熱が加わる事になる。例えば、特許文献7の熱可逆記録媒体では、100回レベルの繰り返し使用では特にカールに起因する問題がなかったものが、それ以上の繰り返し回数にて使用していくと、記録層面側へのカール度合いが大きくなり、それが原因となってスタッカに所定の枚数が入らない問題やスタッカから画像処理装置へ給紙出来ないという不具合が発生してしまう。
【0011】
また、カールを防止する方法として特許文献8が提案されている。本方法では表裏の記録層面とカール防止面の粘弾性対数減衰率のピーク温度を規定して表裏が同等であるとしている。しかし、本方式では常温環境下や低温低湿環境下では静電気の発生により重送が発生するという問題がある。また、繰り返し回数100回程度では20mm以下のカールで留まっているが、それ以上の繰り返し回数を実施すると記録層面側の消去時の熱と印字時の熱の履歴を受けて記録層面側の樹脂が収縮して表裏のカールバランスが崩れてしまい記録層面側に大きくカールしてしまう問題がある。また、低温環境領域や高温環境領域では、カールバランスが崩れて一方の面にカールしてしまう問題もある。
【0012】
一方、熱可逆記録媒体以外でカールと帯電を防止する方法として特許文献9が提案されている。本方法では感熱記録面と反対側にカール防止層、密着防止層、更に帯電防止層を設けた形態となっている。しかし、繰り返し使用による物理的な強度を考慮していないため、2回目以降の使用では十分な強度がなく、繰り返し使用では剥がれが発生し、帯電防止による重送を防ぐ効果、搬送性を持たせる効果を維持することができないといった問題がある。
また、繰り返し熱履歴が加わることによる記録層面側の収縮を考えていないため、繰り返し使用できたとしても記録層面側へのカールが発生してしまう問題がある。更に、低温環境領域や高温環境領域で媒体のカールについても抑えることが出来ずスタッカに所定の枚数が入らない問題やスタッカから画像処理装置へ給紙出来ないという不具合が発生してしまう。つまり繰り返し使用する熱可逆記録媒体に展開しても全ての課題を同時に解決できないのである。
【0013】
したがって、上述したように繰り返し消去印字を実施しても媒体のカールが少なく、低温環境や高温環境下においても媒体のカールの発生が少なく、各環境下で繰り返し消去印字を実施してもカールの発生が少なく、低温環境下から高温環境下でも搬送性に優れ、一括大量発行においても搬送不良の発生が少なく、プリンタのスタッカに規定の枚数をセットできる熱可逆記録媒体及び関連技術については未だ提供されていないのが現状である。
【0014】
【特許文献1】特開平5−124360号公報
【特許文献2】特開平6−210954号公報
【特許文献3】特開2000−94866号公報
【特許文献4】特開2000−251042号公報
【特許文献5】特開2001−63228号公報
【特許文献6】特開2002−103654号公報
【特許文献7】特開2005−193564号公報
【特許文献8】特開2002−160453号公報
【特許文献9】特開2006−82309号公報
【特許文献10】特開2001−162936号公報
【特許文献11】特開昭55−154198号公報
【特許文献12】特開平4−224996号公報
【特許文献13】特開平4−247985号公報
【特許文献14】特開平4−267190号公報
【特許文献15】特開平3−169590号公報
【特許文献16】特開平2−188293号公報
【特許文献17】特開平2−188294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、繰り返し消去印字を実施しても媒体のカールが少なく、低温環境や高温環境下においても媒体のカールの発生が少なく、各環境下で繰り返し消去印字を実施してもカールの発生が少なく、低温環境下から高温環境下でも搬送性に優れ、一括大量発行においても搬送不良の発生が少なく、プリンタのスタッカに規定の枚数をセットできる熱可逆記録媒体、並びに、該熱可逆記録媒体を用いた熱可逆記録部材、画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
(1)支持体と、該支持体上に温度に依存して色調が可逆的に変化する感熱層と、該感熱
層上に少なくとも1層以上の保護層を設け、前記支持体の感熱層が設られた面と反対側の面に少なくとも1層以上からなるカール防止層を設け、該カール防止層上に帯電防止層を設け、前記感熱層とカール防止層を構成する樹脂種、及び前記保護層と帯電防止層を構成する樹脂種とが、それぞれ同一であることを特徴とする熱可逆記録媒体である。
(2)塗工面が表面になるようにして貼り合された二以上の支持体によって構成され、一方の支持体の塗工面上に温度に依存して色調が可逆的に変化する感熱層と、該感熱層上に少なくとも1層以上の保護層を設け、他方の支持体の塗工面に少なくとも1層以上からなるカール防止層を設け、該カール防止層上に帯電防止層を設け、前記感熱層とカール防止層を構成する樹脂種、及び前記保護層と帯電防止層を構成する樹脂種とが、それぞれ同一であることを特徴とする熱可逆記録媒体である。
【0017】
(3)前記感熱層と前記カール防止層を構成する樹脂種が、熱硬化性樹脂であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の熱可逆記録媒体である。
(4)前記熱硬化性樹脂が、イソシアネート系硬化剤にて硬化していることを特徴とする上記(3)記載の熱可逆記録媒体である。
(5)前記感熱層と前記カール防止層における塗膜Tgが100℃以上であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載された熱可逆記録媒体である。
(6)前記感熱層の塗膜Tgよりも前記カール防止層の塗膜Tgが高いことを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載された熱可逆記録媒体である。
(7)前記カール防止層の塗膜Tgが前記感熱層の塗膜Tgよりも10℃以上高いことを特徴とする上記(6)に記載された熱可逆記録媒体である。
(8)前記保護層と前記帯電防止層を構成する樹脂種が、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載された熱可逆記録媒体である。
(9)前記帯電防止層が、針状導電性フィラーを含むことを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載された熱可逆記録媒体である。
(10)前記針状導電性フィラーの長軸が、1μm以上10μm以下であり、かつ短軸が0.1μm以上0.5μm以下のサイズであることを特徴とする上記(9)記載の熱可逆記録媒体である。
(11)前記針状導電性フィラーが、針状結晶を導電剤で表面処理してなることを特徴とする上記(9)または(10)記載の熱可逆記録媒体である。
(12)前記針状導電性フィラーが、アンチモンドープ酸化スズで被覆された酸化チタンであることを特徴とする上記(9)乃至(11)のいずれかに記載された熱可逆記録媒体である。
(13)前記帯電防止層面の最表層の表面抵抗値が、1×1011Ω/□以下であることを特徴とする上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体である。
(14)情報記憶部と可逆表示部とを有し、該可逆表示部が上記(1)から(13)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体を含むことを特徴とする熱可逆記録部材である。
(15)情報記憶部と可逆表示部とが一体化された上記(14)に記載の熱可逆記録部材である。
(16)情報記録部が、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RFタグから選択される上記(14)または(15)記載の熱可逆記録部材である。
(17)印刷可能部分を有する上記(14)から(16)のいずれかに記載の熱可逆記録部材である。
【0018】
(18)熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去手段との少なくともいずれかを有してなり、該熱可逆記録媒体が上記(1)から(13)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体であることを特徴とする画像処理装置である。
(19)前記画像形成手段が、サーマルヘッドまたはレーザー照射装置のいずれかである
上記(18)に記載の画像処理装置である。
(20)前記画像消去手段が、サーマルヘッド、セラミックヒータ、ヒートロール、ホットスタンプ、ヒートブロック、ヒートバー及びレーザー照射装置から選択されるいずれかである上記(18)または(19)に記載の画像処理装置である。
(21)前記熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に画像を形成すること、及び熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去することの少なくともいずれかを含み、該熱可逆記録媒体が上記(1)から(13)のいずれかに記載の熱可逆記録媒体であることを特徴とする画像処理方法である。
(22)画像の形成が、サーマルヘッド及びレーザー照射装置のいずれかを用いて行われる上記(21)に記載の画像処理方法である。
(23)画像の消去が、サーマルヘッド、セラミックヒータ、ヒートロール、ホットスタンプ、ヒートブロック、ヒートバー及びレーザー照射装置から選択されるいずれかを用いて行われる上記(21)または(22)に記載の画像処理方法である。
(24)サーマルヘッドを用いて画像を消去しつつ新しい画像を形成する上記(21)から(23)のいずれかに記載の画像処理方法である。
【0019】
本発明の熱可逆記録媒体は、支持体と、該支持体上に温度に依存して色調が可逆的に変化する感熱層と、該感熱層上に少なくとも1層以上の保護層を設け、前記支持体の感熱層が設けられた面と反対側の面に少なくとも1層以上からなるカール防止層を設け、その上に帯電防止層を設け、感熱層とカール防止層を構成する樹脂種、及び保護層と帯電防止層を構成する樹脂種とが、それぞれ同一となる構成である。
熱可逆記録媒体は、感熱層を発熱体により加熱して発色させたり消色し、その繰り返しの熱履歴により感熱層面を構成する保護層、感熱層面が収縮する。本発明に係る熱可逆記録媒体においては、基材の反対面においてその収縮分を抑えるためにカール防止層、帯電防止層の2層が設けられ、更に物理的強度、耐熱強度が必要な保護層と帯電防止層の樹脂種、そして感熱層とカール防止層の樹脂種を同一にしたことで繰り返し100回を超えるような使用回数においてもカールしない熱可逆記録媒体となる。
【0020】
更に、従来の想定範囲を超えた低温環境領域から高温環境領域という使用環境下でも、カールせず搬送不良を起こさないようにするために、環境下での各層の伸縮収縮を考慮して上記の構成が採用された。また低湿度環境下での静電気による媒体の貼り付きによる重送という搬送不良を考慮して帯電防止層を設けることで、熱可逆記録媒体を各環境下にてプリンタを用いて印字しても搬送不良を起こさない優れた媒体となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により繰り返し消去印字を実施しても媒体のカールが少なく、低温環境や高温環境下においても媒体のカールの発生が少なく、各環境下で繰り返し消去印字を実施してもカールの発生が少なく、低温環境下から高温環境下でも搬送性に優れ、一括大量発行においても搬送不良の発生が少なく、プリンタのスタッカに規定の枚数をセットできる熱可逆記録媒体、並びに、該熱可逆記録媒体を用いた熱可逆記録部材、画像処理装置及び画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(熱可逆記録媒体)
本発明の熱可逆記録媒体は、支持体と、カール防止層と、帯電防止層と、保護層と、感熱層(以下「記録層」、「リライト層」と称することがある)とを少なくとも有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
<支持体>
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状などが挙げられ、前記
構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0023】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属等が挙げられる。前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等
のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させる目的で、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、等により表面改質してもよい。また、着色顔料やインキ等で着色してもよい。また、前記支持体には、酸化チタン等の白色顔料などを添加して白色にしてもよい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50〜2,000μmが好ましく、さらに75〜1,000μmがより好ましい。
【0025】
<カール防止層>
前記カール防止層は、前記支持体の感熱層を設ける面と反対側の面に形成されていれば特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、1層以上の複数層として形成しても
良い。
前記カール防止層の上層には、帯電防止層を設けることによって、カール防止層を最表面に出さないことが望ましい。また前記カール防止層は少なくともバインダー樹脂からなり、必要に応じて他のフィラー、滑剤、着色顔料等の成分を含有しても良い。
【0026】
本発明において、カール防止層と感熱層とが支持体を介して反対面にある必要があり、カール防止層と感熱層とを構成するバインダー樹脂種が同一であることが必須となる。これは、感熱層が熱によって消去と印字を繰り返すという機能を持っているため、常に消去時と印字時に熱履歴が加わることになることから、支持体上部にある感熱層の熱による伸縮を支持体下部にあるカール防止層で緩和する必要があるからである。
また低温環境や高温環境で収縮や伸縮する特性は、バインダーの樹脂種によって挙動が異なるため同一種にすることにより、かかる挙動を同一にすることができることから、結果的に片面に偏るようなカールが発生しなくなる。
【0027】
バインダーの樹脂種としては熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、等が挙げられるがこれらの中でも特に熱硬化性樹脂が特に好ましい。感熱層の機能を最大限引き出すためには熱硬化性樹脂が好ましいため、カール防止層も感熱層に合わせて熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。
このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が好ましく、更にはアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂が特に好ましい。
【0029】
前記アクリルポリオール樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、カルボン酸基を有する不飽和単量体、水酸基を有する不飽和単量体、及びその他のエチレン性不飽和単量体とを用い、公知の溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等に従って合成することができる。
【0030】
前記水酸基を有する不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1,4−ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などが用いられるが、第1級水酸基をもつモノマーを使用した方が塗膜のワレ抵抗性や耐久性が良いことから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく用いられる。
前記アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂は、感熱層の画像の印字・消去の繰返し耐久性を向上させる観点から、架橋剤を用いて架橋させておくことが好ましい。
【0031】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
前記イソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、又はこれらのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、又はブロック化イソシアネート類等が挙げられる。
【0032】
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量としては、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比を0.01〜2とするのが好ましい。0.01未満では熱強度が不足してしまい、また、2を超えて添加すると発色・消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。該架橋促進剤としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の3級アミン類、有機スズ化合物等の金属化合物、などが挙げられる。
【0033】
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
前記熱硬化性樹脂の水酸基価は70KOHmg/g以上が好ましく、90KOHmg/g以上がより好ましい。前記水酸基価が70KOHmg/g以上であると、耐久性、塗膜硬度、ワレ抵抗性が向上する。
【0034】
カール防止層の塗膜Tgは、100℃以上であることが望ましい。熱による繰り返し消去印字を実施する過程で、塗膜Tgが100℃未満では膜の耐久性が不十分であり、プリンタ等の搬送経路にある搬送ローラ等の繰り返し接触で膜が剥離し、カール防止層の上に塗布した膜が剥離してしまう等の問題が出やすくなる。100℃以上であれば膜としての強度も高くなり、膜の剥がれもなく、カール防止の効果も高くなる。なお塗膜Tgは120℃以上が更に好ましい。塗膜Tgが120℃以上になれば更に塗膜強度が高くなり、カール防止効果も更に高くなる。
【0035】
前記塗膜Tgとは、特許文献10にあるように剛体振り子の自由減衰振動法によって測定される対数減衰率のピーク温度と定義する。対数減衰率は塗膜の粘弾性を表す物性値で
あり、温度の印加と共に塗膜が低温域のガラス状態から高温域のゴム状態に転移する時の粘性の変化を、剛体振り子の自由減衰振動振幅を解析することで求められる。その対数減衰率がピークを示す温度は、塗膜がガラス状態からゴム状態に転移する時のガラス転移温度(Tg)を表しているからである。
【0036】
本発明においては、対数減衰率は例えば次の方法により測定される。
測定装置:(株)エー・アンド・ディ製の剛体振り子型物性試験器RPT−3000
剛体振り子:丸棒型シリンダーエッジRBP−040と剛体振り子FRB−100の組み合わせ
試料:任意の支持体上に感熱記録層を1μm以上の厚さに設けたものを、幅10mm、長さ約25mmに裁断する。
測定手順及び解析方法:測定試料を加熱・冷却ブロック上に設置し、シリンダーエッジRBP−040を試料測定表面に乗せる。
次に測定試料を5℃/分の昇温速度で30℃〜200℃まで加熱しながら、振り子の振動を開始し、この振り子の自由振動の周期及び振動の振幅を解析して、測定温度ごとの対数減衰率を求め、対数減衰率曲線をプロットする。そして対数減衰率曲線が極大値を示す温度を対数減衰率ピーク温度とする。また、この温度における対数減衰率をΔ1とする。さらに、対数減衰率ピークが出現する温度より低温域の減衰率曲線のベースラインを対数減衰率ピークが出現する温度に外挿したときの対数減衰率の値をΔ2とする。これらの条件を用いて対数減衰率ピークが出ない場合には、任意に測定条件を変更することもできる。
【0037】
以上のように対数減衰率曲線が測定されるが、測定したい塗膜面の上に他の層が積層されている場合、まずTEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)などの断面観察により熱可逆記録媒体の層構成と各層の膜厚を調べておき、狙いの塗膜面が表面に出てくるまでその他の層の膜厚分の表面を削り、狙いの塗膜面を露出させ測定を行なえばよい。この方法においては、狙いの塗膜面へのその他の層の混入を極力防ぐために、その他の層分の膜厚分を削ると共に狙いの塗膜面も少し削り測定値への影響を防ぐ必要がある。
【0038】
カール防止層の塗膜Tgは感熱層の塗膜Tgよりも高いことが望ましい。熱可逆記録媒体は記録層面側から熱を加えることにより記録と消去を実施している。このときの熱分布は熱供給源に最も近い記録層面の最表面が最も高くなり、その後感熱層に伝わり支持体へと伝わる。更に裏面のカール防止層とその他の層へと伝わることになるが、ここに熱分布の大きな傾きが生じることになる。つまり、感熱層とカール防止層へかかる熱に温度差が生じるため、この差に着目して課題を解決する必要がある。カール防止層や感熱層を構成するバインダー樹脂は繰り返し印字と消去の熱が加わることで熱収縮を起こすことになるが、加わる温度によって熱収縮の程度に差が生じることになる。熱収縮は塗膜が硬いほど収縮しやすくなるため、塗膜の硬さとして塗膜Tgに着目するとカール防止層の塗膜Tgは感熱層の塗膜Tgよりも高いことで、媒体に加わる熱の温度差があっても収縮の差を吸収することができ、繰り返し消去印字の熱が加わってもカールしない媒体となる。
【0039】
カール防止層の塗膜Tgは感熱層の塗膜Tgよりも10℃以上高いことが好ましく、更に好ましくは15℃以上高いことである。
塗膜Tgの差が10℃未満では記録層面の熱履歴による熱収縮をカール防止層側で吸収する効果が不十分となってしまい、また、環境の変化によってもカールの発生が大きくなってしまう。10℃以上であると、繰り返し消去印字の熱履歴による記録層面の収縮をカール防止層面が吸収することが可能となり、繰り返し消去印字を実施してもカールの発生がより少なく、環境の変化によるカールの発生もより少なくすることができる。
【0040】
前記カール防止層には、前記バインダー樹脂の他に、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を添加することができる。
前記他のフィラーとしては、特に制限はなく、例えば、無機フィラー、有機フィラーなどが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物、等が挙げられる。前記有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、等が挙げられる。
【0041】
フィラーの形状は特に制限はないが、板状や針状であるとカール防止層の強度を向上させるだけでなくカールに対しても強くなる傾向があるので好ましい。
前記他のフィラーの含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、更には30質量%以下が好ましい。
前記含有量が、70質量%を超えると、カール防止層のカール防止効果を弱めてしまうことがある。
【0042】
前記滑剤としては、例えば、合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類、などが挙げられる。
また、カール防止層を着色してもよい。該着色させるには染料や顔料を用いることが好ましい。
【0043】
<帯電防止層>
前記帯電防止層は支持体の記録層を設ける面と反対側の面に形成されており、カール防止層よりも外側に形成されていれば良く、1層以上の複数層に形成してもよく、露出した最表面層であることが特に好ましい。
帯電防止層には、少なくとも帯電防止剤を含有し、バインダー樹脂、更に必要に応じて他のフィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有しても良い。
帯電防止剤としては電子伝導性の帯電防止剤やイオン導電性の帯電防止剤が挙げられるが、低湿度環境でも帯電防止機能が低下しない電子伝導性の帯電防止剤を用いることが好ましい。
【0044】
電子伝導性の帯電防止剤としては、硫化亜鉛、硫化銅、硫化カドミウム、硫化ニッケルまたは硫化パラジウム等の硫化物に導電性を付与した導電性フィラーや、硫酸バリウム或いは酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムまたは酸化チタン等の金属酸化物や、導電性カーボンフィラー、ケイ素有機化合物または表面金属鍍金フィラー等の導電性フィラーが挙げられる。
【0045】
導電性フィラーの形状としては球形、不定形、板状、層状、針状などいろいろな形状のものを使用することができる。
これらの導電性フィラーの中でも特に針状導電性フィラーを用いることが好ましい。針状導電性フィラーを含むことにより、搬送時のローラとの摩擦や熱可逆記録媒体同士の擦れにより発生する静電気を熱可逆記録媒体に溜めることなくリークすることができる。これにより、熱可逆記録媒体の貼り付きが抑えられると共に、消去印字時に印字不良の原因となるチリやホコリを吸着しないという効果がある。
また、バック層内に針状導電性フィラーを含めることによって各針状導電性フィラーが絡み合うために繰り返し消去印字を行っても熱履歴によるカール発生を抑えることができる。しかも、針状導電性フィラーであるため、熱可逆記録媒体表面にフィラーの端部が現
れやすくなり、熱可逆記録媒体表面に凹凸を設けることができ、搬送性が向上する。また、針状導電性フィラーを用いることでフィラー同士が接触しやすくなるため少ない添加量で導電性を実現することが可能となる。
【0046】
(針状導電性フィラー)
前記針状導電性フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、針状結晶を導電剤で表面処理したもの、などが好適である。
前記針状結晶としては、例えば、酸化チタン、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、等が挙げられる。これらの中でも、結晶成長のコントロールし易さ、安定したサイズの結晶を得ることが可能な点から、酸化チタンが特に好ましい。また、前記酸化チタンは、塗工液を作成する際の分散時に破壊されない強度を持ち、塗膜にした時の表面を粗し、表面強度と硬さを維持できる点からも好適である。
【0047】
前記導電剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アルミドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化スズ、等が挙げられる。これらの中でも、表面電気抵抗率の安定性、金属電気伝導性、安定性、コストの点から、アンチモンドープ酸化スズが特に好ましい。該アンチモンドープ酸化スズで針状結晶を被覆することによって、水の介在が無くても記録媒体に発生した静電気をリークすることができる機能を失うことがなく、帯電防止層は湿度依存性が無い物性となる。
【0048】
前記針状導電性フィラーとしては、具体的には、アンチモンドープ酸化スズで表面が被覆されている酸化チタンが特に好ましい。前記針状導電性フィラーが酸化チタンからなるためフィラーの強度を高めることができることにより、繰り返し消去印字時のヘッドによる熱と圧力の影響、搬送ローラとの摩擦、接触、熱可逆記録媒体同士が擦れ合う時の摩擦の影響を受けずに表面に凹凸を設けることができる。
【0049】
前記針状導電性フィラーは、フィラー同士が有効に重なり合って、静電気のリーク効果を向上させることができる観点から、長軸は1μm以上10μm以下であり、かつ短軸は0.1μm以上0.5μm以下が好ましい。また長軸は2μm以上8μm以下であり、かつ短軸は0.15μm以上0.4μm以下がより好ましい。さらに長軸は3μm以上7μm以下であり、かつ短軸は0.2μm以上0.35μm以下が特に好ましい。
【0050】
前記長軸が1μm未満であると、フィラーの重なりが不十分となり静電気のリーク効果が低下してしまうことがあり、また、塗工膜の表面にフィラーが現れなくなり静電気の逃げ場がなくなると共に、表面が平滑となり、熱可逆記録媒体の密着による搬送不良が発生することがある。一方、長軸が10μmを超えると、熱可逆記録媒体の表面に大きく浮き出し、搬送の妨げとなったり、ヘッドや搬送ローラといった搬送時に接する部材を磨耗させることがある。
【0051】
また、前記短軸が0.1μm未満であると、フィラーの強度が不十分となり、特に表面に現れている部分が繰り返し消去印字を行っていく過程で摩耗が発生し、初期状態の効果を維持することが難しくなることがある。一方、0.5μmを超えると、針状導電性フィラーが太くなりすぎるため、表面に大きな凹凸が現れて搬送時の妨げとなったり、ヘッドや搬送ローラといった搬送時に接する部材を磨耗させることがある。
前記針状導電性フィラーの前記バック層中における含有量は、10〜40質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましく、17〜25質量%が更に好ましい。
【0052】
前記含有量が10質量%未満であると、針状導電性フィラーの重なり合いが不十分となり、急激に表面抵抗値が高くなり、結果として搬送不良が発生することがあり、40質量
%を超えると、表面に多くのフィラーが現れ、熱可逆記録媒体表面に大きな凹凸が現れ、熱可逆記録媒体の搬送性を低下させてしまうと共に、搬送用ローラやサーマルヘッドやその他の部材を摩耗させてしまうことがある。
【0053】
(バインダー樹脂)
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が好ましく、更に好ましくは紫外線(UV)硬化性樹脂である。
【0054】
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、繰り返し耐久性に優れた帯電防止層が得られる。また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0055】
前記多官能性モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート、グリセリルプロポキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトール・ポリアクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のポリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロピントリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート付加ウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、DPHAのε−カプロラクトン付加物、等が挙げられる。
また、前記モノマー又はオリゴマーを紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
【0056】
前記光重合開始剤としては、ラジカル反応型とイオン反応型に大別でき、更に、ラジカル反応型は光開裂型と水素引抜き型とに分けられる。
前記光重合開始剤としては、例えば、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテルベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシシカルボニル)オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン等が挙げられ、単独で又は2種以上混合して使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記光重合促進剤としては、ベンゾフェノン系やチオキサントン系などの水素引抜きタイプの光重合開始剤に対し、硬化速度を向上させる効果を有するものが好ましい。例えば、芳香族系の第3級アミンや脂肪族アミン系、などが挙げられる。具体的には、p−ジメ
チルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これら光重合促進剤は単独で又は2種以上混合して使用される。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記バック層の樹脂成分の全質量に対し0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
また、前記熱硬化性樹脂としては前記カール防止層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることが出来る。
【0058】
更に熱硬化性樹脂は架橋剤を用いて架橋することが望ましく、前記カール防止層で用いられた架橋剤と同様なものを好適に用いることが出来る。
帯電防止層のバインダ樹脂はカール防止層のバインダ樹脂よりも固いことが好ましい。これは、帯電防止層がカール防止層よりも外側にあり、最表面層となるため物理的な接触や摩擦、圧力と熱的な履歴が加わるため十分な強度を持っている必要があるからである。
【0059】
帯電防止層のバインダ樹脂は前記保護層を構成する樹脂種が同一であることが望ましい。
帯電防止層同様に保護層も記録層面の最表面層となるため物理的、熱的に強度を持っている必要がある。強度を向上させると熱履歴や環境の影響によりカールが大きくなるため帯電防止層と保護層のバインダの樹脂種は同一である必要がある。
前記帯電防止層には、前記導電性フィラー及び前記バインダー樹脂の他に、更に必要に応じて、他のフィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を添加することができる。
これらも前記カール防止層で用いられたものが好適に用いられる。
【0060】
本発明の熱可逆記録媒体において、帯電防止層(露出している最表面)の表面抵抗値は、熱可逆記録媒体が用いられる全ての使用環境下においても1×1011Ω/□以下が好ましく、更に好ましくは1×109Ω/□以下である。前記表面抵抗値が1×1011Ω/□
よりも高くなると帯電する特性を示すが、1×1011Ω/□以下では帯電するがすぐに減衰してしまい、1×109Ω/□以下ではほとんど帯電しない。
【0061】
また、表面抵抗値が1×1011Ω/□を有する塗膜を低湿環境で測定すると、抵抗値が1×1012Ω/□以上になることがある。これは、使用する帯電防止剤が湿度影響を受けないものであっても、そのバインダーとなる樹脂が帯電することにより効果が不十分となってしまうためである。このため、低温低湿環境から高温高湿環境のいずれの環境下においても、バック層の表面抵抗値が1×1011Ω/□以下の表面抵抗値を保つように設計することにより、各使用環境での静電気の帯電がなくなり、搬送不良の現象が現れない。
ここで、前記表面抵抗値は、公知の表面抵抗測定装置を用いて測定することができる。
【0062】
前記カール防止層、帯電防止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記バインダー樹脂、各種フィラー、その他の添加物を、溶媒と一緒に混合してなる混合物を均一に混合分散させて調製した塗液を用いる。
【0063】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール、ケトン、アミド、エーテル類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステルアセテート類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、ピロリドン類、等が挙げられる。これらの中でも、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール,n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、等が好適である。更に、水
、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、等が特に好適である。
なお、前記塗液の調製は、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル、等の公知の塗液分散装置を用いて行うことができる。
【0064】
塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。そして、塗布したシートは、引き続き、送風乾燥機の中に搬送され、30〜150℃にて10秒〜10分間乾燥される。
【0065】
この場合特に、無欠陥塗工を行うためには、塗布液は事前や送液中に通常の濾紙の他、ステンレスメッシュ、ナイロンメッシュ等の網、又はコットンフィルター、ファイバーカーボンフィルター等の天然又は合成繊維系フィルター、メンブランフィルター等の膜濾過を通したり、超音波を1分〜200時間、好ましくは10分〜80時間掛けることによって異物を除いたり、泡の混入、分散物の凝集を避けることができる。
また、前記塗布は、クラス10,000以下のクリーンルーム内で行うことが好ましい。
【0066】
前記乾燥には、フィルター及び除湿装置を通した空気又は窒素等の不活性ガスを熱し、これを表面から、裏面から、又は双方から吹き付けるのが好ましい。これらの中でも、コットンフィルターやメンブランフィルターによる濾過や超音波照射が好ましい。上記のような装置を適宜選択して使用することにより塗布層の均一性が向上する。
【0067】
前記カール防止層、帯電防止層が熱硬化の場合には、塗布乾燥した後、更に必要に応じてキュアを行うことが好ましい。該キュアによって、熱架橋の場合は架橋を促進することができる。それ以外の場合も残留溶剤を低減させて品質安定化を図れる。恒温槽等を用いて比較的高温で短時間でもよく、また、比較的低温で長時間かけて熱処理してもよい。前記キュア条件は10〜130℃程度の温度条件で1分〜200時間程度加温することが好ましく、15〜100℃の温度条件で2分〜180時間程度加温することがより好ましい。
【0068】
前記カール防止層、帯電防止層の製造では、生産性を重視するので、架橋が充分完了するまで時間をかけるのは困難である。したがって、40〜100℃の温度条件で2分〜120時間程度加温することが好ましい。前記キュアは温風を塗布面に直接当ててもよく、ロール状、あるいはシート状に裁断してまとめた状態で恒温槽に静置しても良い。温度をかけたくない場合は減圧乾燥法でも良い。温度を段階的に上昇又は下降させるか、あるいは上層塗布後あるいは単純に時間を分割するなど複数回に分けることによって、物性を制御したり生産工程を効率化することもできる。
前記紫外線による膜の形成は、塗布乾燥後に紫外線照射装置で光重合反応を施して行うことが好ましい。該紫外線硬化には、従来公知の照射装置を用いることができ、前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプ、などが挙げられる。
【0069】
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の紫外線吸収波長に対応した発光スペクトルを有する光源を使用すればよい。また、前記照射条件としては、樹脂を架橋させるために必要な照射エネルギーに応じて、ランプ出力、搬送速度を決めればよい。また、電子線による架
橋硬化を行う場合、電子線照射装置としては、照射面積、照射線量などの目的に応じて、走査形、非走査形いずれかを選べば良く、前記照射条件としては、樹脂を架橋するのに必要な線量に応じて、電流、照射幅、搬送速度を決めれば良い。
なお、帯電防止層の上に他の層を1層以上設けてもよいが、帯電防止層の一部が最表面層に出るようにして静電気をリークさせるような工夫を設けることが望ましい。
【0070】
<保護層>
本発明の熱可逆記録媒体には、前記感熱層を保護する目的で該感熱層上に保護層を設ける。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
【0071】
前記保護層にはバインダー樹脂、更に必要に応じてフィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有しても良い。
前記バインダー樹脂としては、熱や紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられる。これらの中でも熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂が好ましく、更に好ましくは紫外線硬化樹脂である。
【0072】
前記熱硬化性樹脂を用いる場合には、イソシアネート系化合物などを架橋剤とした前記カール防止層で用いたバインダー樹脂、架橋剤と同様なものを好適に用いることができる。
また、前記紫外線硬化樹脂を用いる場合には、帯電防止層で用いた同様なものを好適に用いることができる。
保護層は感熱層を消去印字時の熱履歴や加熱体の物理的圧力を保護する目的があるため、感熱層よりも塗膜強度があることが望ましい。
【0073】
また、保護層と帯電防止層には同種類のUV硬化性樹脂層又は熱硬化性樹脂層を設けることが望ましい。これによりカールのバランスを取ることが可能となる。即ち、繰り返し消去印字時にサーマルヘッド、ヒートローラ、イレーズバー等で加熱されるが、その際に加熱された樹脂が収縮を起こすが、前記UV硬化性樹脂では、特に収縮率が大きく、熱硬化性樹脂もUV硬化性樹脂ほどではないが収縮率が大きい。
更に、熱履歴により収縮度合いが変化する特性がある。そのため、保護層と帯電防止層に同種類のUV硬化性樹脂層又は熱硬化性樹脂層を設けることでカールのバランスを取ることが可能となる。これに対し、前記保護層と帯電防止層に異なる種類のUV硬化性樹脂層又は熱硬化性樹脂層を用いると樹脂特性の違いから、熱可逆記録媒体同士が擦れた時に帯電しやすくなり、帯電防止層の帯電防止フィラーの効果を十分に発揮することができなくなってしまう。
【0074】
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子、ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、保護層の樹脂成分全重量に対して0.01〜50質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜40質量%である。添加量はわずかでも効果を発現するが、0.01質量%未満では添加による効果を得ることができなくなり、50質量%を越えると下層との接着性に問題が生じる場合がある。
また、前記保護層中には、有機紫外線吸収剤を含有しても良く、その含有量は保護層の樹脂成分全質量に対して0.5〜10質量%の範囲が好ましい。
【0075】
更に、ヘッドマッチング性、搬送性を向上させるために無機フィラーや有機フィラーを用いてもよい。無機フィラーとしては例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、タルク、等が挙げられる
。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記無機顔料の粒径としては、例えば、0.01〜10.0μmが好ましく、0.05〜8.0μmがより好ましい。前記無機顔料の添加量としては、前記耐熱性樹脂1質量部に対し、0.001〜2質量部が好ましく、0.005〜1質量部がより好ましい。
前記有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、等が挙げられる。
【0077】
更に、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
帯電防止剤を用いる場合は、導電性フィラーを添加しても良いし、針状導電性フィラーを添加しても良い。帯電防止の観点から帯電防止層と反対面の保護層に帯電防止機能を持たせると更に静電気による帯電の影響がなくなり、低湿度環境下での媒体の貼り付きによる重送や紙詰まりなどの搬送不良をより防止することができる。
【0078】
前記針状導電性フィラーの前記保護層における含有量は、10〜40質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましく、17〜25質量%が更に好ましい。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜10.0μmが好ましい。前記保護層の厚みが0.1μm未満であると、前記感熱層の保護効果が十分でないことがあり、10.0μmを超えると、熱感度が低下することがある。
前記帯電防止層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記カール防止層、帯電防止層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0079】
本発明の熱可逆記録媒体においては、前記帯電防止層と前記保護層、前記帯電防止層同士、前記保護層同士の静摩擦係数の差が、それぞれ0.1以下が好ましい。これは、熱可逆記録媒体をプリンターにセットした時に、その表裏を間違えてセットしても熱可逆記録媒体がプリンター内で搬送不良を起こすことがないようにするためである。即ち、プリンターに熱可逆記録媒体をセットすると給紙ローラと分離パッドにより媒体を1枚ずつ搬送するが、このとき摩擦係数の差が0.1よりも大きくなると熱可逆記録媒体の間に摩擦力が生じ、1枚ずつ給紙をする際に給紙ローラと分離パッドで分離するときに熱可逆記録媒体同士の摩擦差があることによって分離できない現象が発生する。より理想的にはそれぞれの摩擦係数の差が0に近いほど良い。
【0080】
また、前記帯電防止層と前記保護層、前記帯電防止層同士、前記保護層同士の静摩擦係数の値は0.05〜0.3が好ましい。
前記静摩擦係数が0.05未満であると、重ねた熱可逆記録媒体が滑りやすくなり熱可逆記録媒体を重ねた状態で維持することが難しくなり、扱いづらいものとなる。また、熱可逆記録媒体同士が動き易いために使用する前に熱可逆記録媒体が擦れ合い表面に傷がついてしまうという問題もある。0.3よりも大きくなると熱可逆記録媒体同士の摩擦力が大きくなるため、給紙系における熱可逆記録媒体表面と給紙ローラとの摩擦力、熱可逆記録媒体裏面と分離パッドとの摩擦力との関係で分離パッドと裏面との摩擦力と熱可逆記録媒体同士の摩擦力の関係が近づく、あるいは逆転する現象が発生し、熱可逆記録媒体を搬送することができなくなってしまい、また、分離パッドの設計範囲が限られてしまう。
【0081】
<感熱層>
前記感熱層は、温度に依存して色調が可逆的に変化する材料を少なくとも含み、バイン
ダー樹脂、架橋剤、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記感熱層における「温度に依存して色調が可逆的に変化する材料」とは、温度変化によって目に見える変化を可逆的に起こす現象を意味し、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成し得ることを意味する。この場合、該目に見える変化は色の状態の変化と形状の変化に分けられるが、本発明においては、主に色の状態について変化を起こす材料を使用する。
色の状態の変化には、透過率、反射率、吸収波長、散乱度などの変化があり、実際の熱可逆記録材料はこれらの変化の組合せで表示を行っている。より具体的には、熱により透明度や色調が可逆的に変化するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後、冷却することにより第二の色の状態となるもの、等が挙げられる。これらの中でも、特に第一の特定温度と第二の特定温度で色の状態が変化するものが好適に用いられる。
【0082】
これらの例としては、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの(特許文献11)、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するもの(特許文献12,13,14等)、第一の特定温度で白濁状態となり、第二の特定温度で透明状態となるもの(特許文献15)、第一の特定温度で黒、赤、青等に発色し、第二の特定温度で消色するもの(特許文献16,17)等が挙げられる。
これらの中でも、この中で特に樹脂母材中に高級脂肪酸のような有機低分子物質を分散した系と後述する電子供与性呈色化合物(発色剤)と、電子受容性化合物(顕色剤)を用いた系が好ましい。
【0083】
−電子供与性呈色化合物−
前記電子供与性呈色化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。
該ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体であり、特に制限はなく、従来公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好ましく用いられる。これらの中で、発消色特性、色彩、保存性等の点からフルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が好ましく、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−n−メチル−N−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等の黒発色系のロイコ染料;3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)−7,8−ベンゾフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等の赤発色系のロイコ染料;クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−1−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−インドール−3−イル)フタリド等の青発色系のロイコ染料;10−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド等の赤
外域に吸収を持つロイコ染料、などが挙げられる。これらの中でも、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオランなどの2−アニリノ−3−メチル−6−二置換アミノフルオランや、クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−1−イル)−4−アザフタリドが色調、発色消色特性の点から好ましい。これらは単独で用いても混合しても良いし、異なる色調に発色する層を積層する事によってマルチカラー、フルカラーにすることもできる。
【0084】
−電子受容性化合物−
前記電子受容性化合物としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、(1)電子供与性呈色化合物(発色剤)を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基など)及び(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適である。
なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。これらの中でも特に、下記一般式(1)で表わされる炭素数8以上のアルキル鎖を有するフェノール化合物を用いることが好ましいがこれに限定されるものではない。
【0085】
【化1】

【0086】
前記一般式(1)中、nは、1〜3の整数を示す。
は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、好ましくは炭素数5以上の脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数10以上の脂肪族炭化水素基である。Rは炭素数1以上14以下の脂肪族炭化水素基を表し、Rは炭素数8以上14以下がより好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
前記脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。また、炭化水素基につく置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等がある。
【0087】
、Rの炭素数の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることが更に好ましい。
Xは、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、好ましくはアミド基、尿素基であり、更に好ましくは尿素基である。
【0088】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(2)〜(8)で表される化合物、などが好ましい。
【0089】
【化2】

【0090】
前記一般式(2)〜(8)において、R1、R2、R4は、炭素数7以上22以下の直鎖
アルキル基、分枝アルキル基、又は不飽和アルキル基を表す。R3は、炭素数1〜10の
2価の官能基を表す。R5は、炭素数4〜10の3価の官能基を表す。
前記電子供与性呈色化合物(発色剤)と、前記電子受容性化合物(顕色剤)との混合割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化し一概には規定できないが、おおむねモル比で発色剤1に対し顕色剤が0.1〜20の範囲が好ましく、0.2〜10の範囲がより好ましい。この好適範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。
また、前記消色促進剤を添加する場合は、その割合は顕色剤に対し0.1〜300質量%が好ましく、3〜100質量%がより好ましい。なお、前記発色剤と前記顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0091】
前記発色層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて発色層の塗布特性や発色消色特性を改善したり、また制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤、などが挙げられる。
【0092】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、支持体上に感熱層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、前記カール防止層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
【0093】
前記感熱層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記感熱層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
なお、前記感熱層を架橋させた場合、該感熱層のゲル分率は30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0094】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイソシアネート系硬化剤、などが好適である。該イソシアネート系硬化剤については、前記バック層で用いられた硬化剤を用いることができる。
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。すなわち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0095】
感熱層の塗膜Tgは100℃以上が望ましい。熱による繰り返し消去印字を実施する過程で、塗膜Tgが100℃未満では消去印字の熱履歴と応力により耐久性が不十分となり、結果として消し残りが発生したり発色ムラが発生したり膜が剥がれてしまう等の問題が発生してしまう。100℃以上であれば膜としての強度も高くなり、発色特性や消色特性が安定し、消し残りの発生が低減され、発色ムラの発生もなくなり、膜の剥がれもなくなる。なお塗膜Tgは120℃以上が更に好ましい。塗膜Tgが120℃以上になれば更に塗膜強度が高くなり、発色特性や消色特性が更に安定する。
【0096】
前記感熱層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の形成を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤、などが挙げられる
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、などが挙げられる。
【0097】
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、二塩基酸エステル、グリコール、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、などが挙げられる。
前記感熱層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、感熱層の塗工方法、乾燥・硬化方法等は前記カール防止層で用いられた公知の方法を用いることができる。
なお、感熱層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散しても良いし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせても良い。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させても良い。
【0098】
前記感熱層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を溶媒中に溶解乃至分散させた感熱層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を分散させた感熱層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0099】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼン、などが挙げられる。
なお、前記電子受容性化合物は、前記感熱層中では粒子状に分散して存在している。
【0100】
前記感熱層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
前記感熱層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
【0101】
前記感熱層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10分間〜1時間程度、などが挙げられる。
前記感熱層における前記樹脂を硬化させるには、加熱、紫外線照射、電子線照射などにより行うことができる。これらの手段で硬化させる方法としては、具体的には、アクリル共重合体(アクリル樹脂)とポリイソシアネート化合物とを反応させることにより硬化させる。
【0102】
前記感熱層の膜厚は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
前記感熱層の厚みが、薄すぎると発色濃度が低くなるため、画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
前記感熱層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記カール防止層、帯電防止層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0103】
本発明の熱可逆記録媒体は、前記感熱層の他に、更に必要に応じて適宜選択した、中間層、紫外線遮蔽層、アンダー層、アンカーコート層、バリアー層、光熱変換層、着色層、空気層、光反射層、接着層、中間層、保護層、接着剤層、粘着層、結着層等のその他の層を有していてもよい。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
図1は、本発明に係る熱可逆記録媒体の実施態様の例を示す断面図である。図1(a)に示すように、支持体10上に感熱層12と保護層11が設けられ、支持体10の感熱層12が設けられた面と反対側の面にカール防止層14と帯電防止層15が設けられている。
図1(b)は、他の例を示す断面図である。図1(b)に示すように、支持体10上にアンダー層17を介して感熱層12と、中間層18と、保護層11が設けられ、支持体10の感熱層12が設けられた面と反対側の面にカール防止層14と、帯電防止層15が設けられている。
図1(c)さらに他の例を示す断面図である。図1(c)に示すように二つの支持体10,20が塗工面が表面になるように、RFタグ1と貼り合わせ部材21を介して貼り合わされている。
支持体10上には、感熱層12、中間層18及び保護層11が順に積層されている。他
の支持体20には、カール防止層14と、帯電防止層15が設けられている。
【0104】
<アンダー層>
前記アンダー層は、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と感熱層の接着性の改善や支持体への感熱層材料の浸透防止を目的として、前記感熱層と前記支持体の間に設けられ、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記空隙粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製)、ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも日本ゼオン株式会社製)、SX866(JSR株式会社製)、などが挙げられる。
【0106】
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10〜80質量%が好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記カール防止層、帯電防止層と同様の樹脂を用いることができる。
また、前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどの無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
【0107】
前記アンダーの膜厚は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜50μmが好ましく、2〜30μmがより好ましく、3〜24μmが更に好ましい。
前記アンダー層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記カール防止層、帯電防止層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0108】
<中間層>
前記熱可逆記録媒体には、保護層形成液の溶剤やモノマー成分等から感熱層を保護する目的で、前記保護層と前記感熱層との間に中間層を設けることができる。
前記中間層の材料としては、カール防止層中のバインダー樹脂の材料として挙げた公知の樹脂材料を用いることができる。
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。該紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
【0109】
前記有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系、ケイ皮酸系の紫外線吸収剤が挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系である。これらの中でも、水酸基を隣接する嵩高い官能基で保護したものが特に好ましく、さらには2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が好ま
しい。アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の共重合した高分子にこのような紫外線吸収能を有する骨格のものをペンダントしても良い。
前記有機系紫外線吸収剤の含有量は、前記中間層の樹脂成分全質量に対し0.5〜10質量%が好ましい。
【0110】
前記無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径100nm以下の金属系化合物が好適であり、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニア、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムのような金属酸化物又はこれらの複合酸化物、硫化亜鉛、硫酸バリウムのような金属硫化物又は硫酸化合物、チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイドのような金属炭化物、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウムのような金属窒化物等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは金属酸化物系超微粒子であり、さらに好ましいのはシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムである。これらは、表面をシリコーン、ワックス、有機シラン、又はシリカ等で処理することもできる。
【0111】
前記無機系紫外線吸収剤の含有量は、体積分率で1〜95%の範囲が好ましい。なお、これらの有機系及び無機系紫外線吸収剤は感熱層に含有させてもよい。
前記中間層の膜厚は、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記カール防止層、帯電防止層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0112】
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることができる、前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂、等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
また、支持体と感熱層の間に、レーザー記録を可能とするため、レーザー光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する光熱変換層を設けてもよい。
【0113】
本発明の熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、シート状、ロール状などに加工される。本発明では、特にカードサイズよりも大きくA5サイズよりも小さいカンバンサイズや、A5サイズからA4やA3サイズのシートサイズに加工されていることが好ましい。
【0114】
本発明の熱可逆記録媒体は、非可逆性感熱層を併用しても構わない。この場合、それぞれの感熱層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、本発明の熱可逆記録媒体の感熱層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けても良く、さらに着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報、などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
【0115】
更に、本発明の熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0116】
前記熱可逆記録媒体に対する画像の形成及び消去は、公知の画像処理装置を用いて行うことができる。
前記画像処理装置としては、例えば、前記熱可逆記録媒体に対し、画像の形成を行うための画像形成手段と、画像の消去を行うための画像消去手段とを備えたものが好適に挙げられ、具体的には、サーマルヘッドを用い、該サーマルヘッドに印加するエネルギーを変化させることにより画像を処理可能な画像処理装置、又は、画像形成手段がサーマルヘッドやレーザーであり、画像消去手段がサーマルヘッド、セラミックヒータ(アルミナ基板上に発熱抵抗体をスクリーン印刷した発熱体)、ホットスタンプ、ヒートローラ、ヒートブロック、ヒートバー等の発熱体を接着させる接触押圧型手段、あるいは温風や赤外線、レーザーなどを用いた非接触型手段のうち一つから選択される画像処理装置などが挙げられる。
図2は、本発明に係る画像処理装置40の一実施態様を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像処理装置40は、熱可逆記録媒体を加熱して画像を形成するための画像形成手段41と、熱可逆記録媒体に形成された画像を消去するための画像形成手段42とを有している。さらにRF−IDリーダライタ46、熱可逆記録媒体44、スタッカ45を備えている。なお符号43は搬送経路である。
【0117】
−熱可逆記録部材−
熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な感熱層と情報記録部を有し、これらを一体化させてなることが好ましい。前記情報記録部の記憶情報の一部乃至全部を感熱層に表示することが可能となり、特別な装置がなくても記録部材の情報を確認することが出来る。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には熱可逆記録媒体の記録部の表示を書き換えることで、熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
なお、前記情報記憶部としては、特に制限はないが、例えば、磁気記録層や磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RFタグなどが好ましく用いられる。特に非接触にて情報を書き換えることができるRFタグが更に好ましい。
【0118】
図3に示す如く、RFタグ1はICチップ2と該ICチップに接続したアンテナ3から構成され、ICチップ2とアンテナ3が支持体等に設けられた形状となっている。ICチップ2には少なくとも記憶部、送信部、受信部、電源整流部がある。RFタグ1は電磁誘導方式と電波方式に分類され、電磁誘導方式では135kHz以下の範囲や13.56MH
zの周波数帯が用いられ、電場方式ではUHF帯やマイクロ波が用いられている。
熱可逆記録媒体とRFタグを一体化させる方法として、熱可逆記録媒体の一部にRFタグを貼り付ける方法と熱可逆記録媒体の内部に組み込む方法が挙げられる。
【0119】
FRタグを貼りつける場合は熱可逆記録媒体の一部であればどこに貼り付けても良いが、特に帯電防止層面に貼り付けることが好ましい。貼り付ける方法は一般的な粘着剤、接着剤により貼り付けることができる。
RFタグを熱記録媒体の内部に組み込む場合は少なくとも保護層と感熱層からなる一方の支持体と少なくともカール防止層と帯電防止層からなる他方の支持体にRFタグを貼り合わせ部材を介して挟みこむ構成が好ましい。この際の貼り合わせ部材とは支持体同士を貼り合わせることができれば特に限定されないが、一般的なフィルムや樹脂を用いても良いし、一般的な粘着剤や接着剤を用いて貼り合わせても良いし、一般的なホットメルト剤を用いてもよい。ホットメルト剤を用いる場合はRFタグを先の支持体にて挟み込み、圧力や熱を加えることにより加工することができる。
【0120】
様々な形態をした熱可逆記録媒体は、例えばカードサイズからそれより小さいものはアパレル用途や商品等につけるプライズタグ、小さな部材や小さなコンテナに取り付ける商品管理用途としての応用や既存に使われているポイントカードやプリペイドカード、更にはゲームや遊戯等の用途での応用が挙げられる。またカードサイズよりも大きなカンバンサイズでは、工程管理、物流管理等に好適に用いることができ、A5サイズ以上のシート
サイズでは一般文書、工程管理用の指示書等に使用することもできる。更に塵やゴミの発生がないことからクリーンルーム等で使用することもできる。
【0121】
図4に、本発明の前記熱可逆記録媒体(リライタブルシート)とRF−IDタグを組み合わせた産業用リライタブルシートの使い方の例を示す。まず、納品された原材料に対して物品名と数量などの情報をシートとRF−IDタグに記録し、通い箱等に添付し検品される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、リライタブルシートとRF−IDタグに情報が記録され加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が記録されたリライタブルシートとRF−IDタグが添付され、商品出荷後にリライタブルシートを回収し出荷情報を読み取り、再度納品書として使われる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−熱可逆記録媒体の作製−
(1)支持体
支持体として、厚み125μmの白色ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
(2)感熱層
−感熱層用塗布液の調製−
下記構造式で表される顕色剤3質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)1質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:69、分子量:30000、ガラス転移温度:80℃)9質量部、及びメチルエチルケトン70質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmまでなるように粉砕分散した。
【0123】
【化3】

【0124】
次に、この顕色剤を粉砕分散させた分散液に、2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及びイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン株式会社製、コロネート2094)1.9質量部を加え、良く撹拌させて感熱層用塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層用塗布液を前記支持体上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分で乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約11μmの感熱層を形成した。
得られた感熱層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ100℃であった。
【0125】
(3)保護層
−保護層用塗布液の調整−
紫外線吸収構造を持つポリマーの50質量%溶液(日本触媒社製、G−100、水酸基価:22)20質量部、フィラー(水澤化学社製、P−526)4質量部、シリコーンポリマー(日本油脂社製、FS700)1質量部、及びメチルエチルケトン30質量部を、ボールミルを用いて平均粒径3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
次に上記の分散液にイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)を2質量部加え、良く撹拌させて保護層用塗布液を調製した。
次に得られた保護層用塗布液を前記感熱層上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約3μmの保護層を形成した。
【0126】
(4)カール防止層
―カール防止層塗布液の調整―
ポリエステルポリオール(大日本インキ社製、バーノックD−161、水酸基価:170)5質量部をメチルエチルケトン34質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル社製、D−160N)7質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
次に前記感熱層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ110℃であった。

【0127】
(5)帯電防止層
―帯電防止層塗布液の調整―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:108、分子量:65000、ガラス転移温度:80℃)14質量部、フィラー(水澤化学社製、P−526)2質量部、及びメチルエチルケトン23質量部をボールミルを用いて平均粒径3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
【0128】
次に透明導電剤(石原産業株式会社製、SNS−10M、固形分30質量%、50%粒径=0.115±0.015μm、構成=アンチモンドープ酸化スズ、形状:球状)30質量部を加え良く撹拌させて帯電防止層塗布液を調製した。
次に前記カール防止層の上に帯電防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って約3μmの帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0129】
(実施例2)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
−感熱層用塗布液の調製−
実施例1で用いられた顕色剤6質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)2質量部、ポリエステルポリオール50質量%溶液(大日本インキ社製、バーノック11−408、水酸基価:200)10質量部、及びメチルエチルケトン200質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmまでなるように粉砕分散した。
【0130】
次に、この顕色剤を粉砕分散させた分散液に、2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン2質量部、及びイソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル社製、タケネートD−160N)8質量部を加え、良く撹拌させて感熱層用塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層用塗布液を前記支持体上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分で乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約11μmの感熱層を形成した。
得られた感熱層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ130℃であった。
【0131】
−保護層用塗布液の調整−
紫外線吸収構造を持つポリマーの40質量%溶液(大塚化学株式会社製、PUVA−60MK−40K、水酸基価:60)23質量部、フィラー(水澤化学社製、P−526)4質量部、シリコーンポリマー(日本油脂社製、FS700)1質量部、及びメチルエチルケトン30質量部を、ボールミルを用いて平均粒径3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
次に上記の分散液にイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)を2質量部を加え、良く撹拌させて保護層用塗布液を調製した。
【0132】
次に得られた保護層用塗布液を前記感熱層上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約3μmの保護層を形成した。
―カール防止層塗布液の調製―
ポリエステルポリオール(大日本インキ社製、バーノックD−161、水酸基価:170)5質量部をメチルエチルケトン34質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネート2094)4質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
次に前記感熱層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約7μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ95℃であった。
【0133】
―帯電防止層塗布液の調整―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:108、分子量:65000、ガラス転移温度:80℃)14質量部をメチルエチルケトン23質量部にて溶解し、導電性ウィスカー(大塚化学株式会社製、デントールWK−200、長軸=10〜20μm、短軸=0.4〜0.7μm、構成:K2O・nTiO2/SnO2Sb26)4質量部を加え良く撹拌させて帯電防止層塗布液を調製した。
次に前記カール防止層の上に帯電防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って約3μmの帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0134】
(実施例3)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
−感熱層用塗布液の調製−
下記構造式で表される顕色剤3.5質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)1.5質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン社製、水酸基価:69、分子量:30000、ガラス転移温度:80℃)12質量部、及びメチルエチルケトン150質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0135】
【化4】

【0136】
次に、この顕色剤を粉砕分散させた分散液に、2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1.5質量部、及びイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHX)1.5質量部を加え、良く撹拌させて感熱層用塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層用塗布液を前記支持体上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分で乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約12μmの感熱層を形成した。
得られた感熱層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ140℃であった。
【0137】
−中間層用塗布液の調製−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:108、分子量:65000、 ガラス転移温度:80℃)3質量部、酸化亜鉛微粒子30質量
%分散液(住友セメント株式会社製、ZS303)7質量部、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン7質量部を加え、良く攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、前記感熱層を塗布済み支持体上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し90℃にて1分の加熱乾燥後、60℃にて2時間加熱し、膜厚約2μmの中間層を形成した。
【0138】
−保護層用塗布液の調製−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにて良く攪拌して平均粒径が約3μmまでになるように分散し、保護層用塗布液を調製した。
【0139】
次に、前記感熱層、及び中間層を塗布済み支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し90℃にて1分の加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約4μmの保護層を形成した。
―カール防止層塗布液の調製―
ポリエステルポリオール70質量%溶液(大日本インキ社製、バーノック11−408、水酸基価:200)8.5質量部をメチルエチルケトン38質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネート2094)5.5質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
次に前記感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ120℃であった。
【0140】
―帯電防止層塗布液の調整―
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−1000、長軸=1.68μm、短軸=0.13μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにて良く攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に前記カール防止層の上に帯電防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分の加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約4μmの帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0141】
(実施例4)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
−感熱層用塗布液の調製−
実施例3で用いられた顕色剤3質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)1質量部、ポリエステルポリオール70質量%溶液(大日本インキ社製、11−408、水酸基価:200)6質量部、及びメチルエチルケトン100質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmまでなるように粉砕分散した。
【0142】
次に、この顕色剤を粉砕分散させた分散液に、2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及びイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)3質量部を加え、良く撹拌させて感熱層用塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層用塗布液を前記支持体上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分で乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約12μmの感熱層を形成した。
得られた感熱層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ140℃であった。
次に実施例3と同様に前記感熱層の上に中間層、更に保護層を設けた。
【0143】
―カール防止層塗布液の調製―
ポリエステルポリオール(日本ポリウレタン社製、ニッポラン800、水酸基価:290)7質量部をメチルエチルケトン48質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)7.2質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
次に前記感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ150℃であった。―帯電防止層塗布液の調整―
実施例3において帯電防止層塗布液の針状導電性フィラーを針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−2000、長軸=2.86μm、短軸=0.21μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部にして同様に帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0144】
(実施例5)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
−感熱層用塗布液の調製−
実施例3で用いられた顕色剤3.5質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)1質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:108、分子量:65000、 ガラス転移温度:80℃)10質量部、及
びメチルエチルケトン100質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmまでなるように粉砕分散した。
【0145】
次に、この顕色剤を粉砕分散させた分散液に、2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1.5質量部、及びイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)3質量部を加え、良く撹拌させて感熱層用塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層用塗布液を前記支持体上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分で乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約12μmの感熱層を形成した。
得られた感熱層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ145℃であった。
次に実施例3と同様に前記感熱層の上に中間層、更に保護層を設けた。
【0146】
―カール防止層塗布液の調製―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン社製、水酸基価:69、分子量:30000、ガラス転移温度:80℃)10質量部をメチルエチルケトン10質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル、D−160N)2.8質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
【0147】
次に前記感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ130℃であった。―帯電防止層塗布液の調整―
実施例3において帯電防止層塗布液の針状導電性フィラーを針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部にして同様に帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0148】
(実施例6)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
−感熱層用塗布液の調製−
実施例3で用いられた顕色剤6質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)2質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:200、分子量:109000、 ガラス転移温度:35℃)10質量部、及び
メチルエチルケトン100質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmまでなるように粉砕分散した。
【0149】
次に、この顕色剤を粉砕分散させた分散液に、2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン2質量部、及びイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)8質量部を加え、良く撹拌させて感熱層用塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層用塗布液を前記支持体上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分で乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約12μmの感熱層を形成した。
得られた感熱層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ150℃であった。
次に実施例3と同様に前記感熱層の上に中間層、更に保護層を設けた。
【0150】
―カール防止層塗布液の調製―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:200、分子量:109000、 ガラス転移温度:35℃)10質量部をメチルエチルケトン10
質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)8質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
【0151】
次に前記感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ150℃であった。
次に実施例5と同様にカール防止層の上に帯電防止層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0152】
(実施例7)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
−アンダー層の作製−
スチレン−ブタジエン系共重合体(日本エイアンドエル社製、PA−9159)30質量部、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、ポバールPVA103)12質量部、中空粒子(松本油脂株式会社製、マイクロスフェアーR−300)20質量部、及び水40質量部を添加し、均一状態になるまで約1時間撹拌して、アンダー層塗布液を調製した。
次に、得られたアンダー層塗布液を前記支持体上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃にて2分間加熱乾燥して、膜厚20μmのアンダー層を形成した。
【0153】
次に前記アンダー層の上に実施例3で使用した感熱層を設け、更にその上に実施例3と同様に中間層、保護層を設けた。
―カール防止層塗布液の調製―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:200、分子量:109000、 ガラス転移温度:35℃)11質量部をメチルエチルケトン10
質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)4質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
【0154】
次に前記アンダー層、感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ165℃であった。
次に実施例5と同様にカール防止層の上に帯電防止層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0155】
(実施例8)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
実施例7と同様に前記支持体上の上にアンダー層、記録層、中間層、保護層を設けた。―カール防止層塗布液の調製―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:200、分子量:109000、 ガラス転移温度:35℃)10.4質量部をメチルエチルケトン
30質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)8質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
【0156】
次に前記アンダー層、感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ180℃であった。
次に実施例5と同様にカール防止層の上に帯電防止層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0157】
(実施例9)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
実施例7と同様にアンダー層を設け、その上に実施例5と同様の感熱層、中間層を設けた。
【0158】
−保護層用塗布液の調整−
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:200、分子量:109000、 ガラス転移温度:35℃)10.4質量部、フィラー(水澤化学
社製、P−526)4質量部、シリコーンポリマー(日本油脂社製、FS700)1質量部、及びメチルエチルケトン30質量部を、ボールミルを用いて平均粒径3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
次に上記の分散液にイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)8質量部を加え、良く撹拌させて保護層用塗布液を調製した。
次に得られた保護層用塗布液を前記感熱層上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約3μmの保護層を形成した。
【0159】
―カール防止層塗布液の調製―
ポリエステルポリオール70質量%溶液(武田薬品工業社製、タケラックU−21、水酸基価:350)5質量部をメチルエチルケトン34質量部で溶解し、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)10質量部を加え良く撹拌させてカール防止層塗布液を調製した。
次に前記アンダー層、感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
【0160】
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ155℃であった。―帯電防止層塗布液の調整―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:200、分子量:109000、 ガラス転移温度:35℃)10.4質量部をメチルエチルケトン
23質量部にて溶解し、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)4質量部、イソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートL)8質量部を加え良く撹拌させて帯電防止層塗布液を調製した。
次に前記カール防止層の上に帯電防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って約3μmの帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0161】
(実施例10)
−熱可逆記録媒体の作製−
塗布する支持体は実施例1と同じものを使用する。
実施例7と同様にアンダー層、感熱層、中間層、保護層を設け、支持体の塗工されてい
ない面に実施例7と同様にカール防止層を設けた。
【0162】
―帯電防止層塗布液の調整―
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)2.5質量部、フィラー(水澤化学社製、P−526)2質量部、及びメチルエチルケトン23質量部をボールミルを用いて平均粒径3〜4μmまでなるように粉砕分散した。
【0163】
次に透明導電剤(石原産業株式会社製、SNS−10M、固形分30質量%、50%粒径=0.115±0.015μm、構成=アンチモンドープ酸化スズ、形状:球状)30質量部を加え良く撹拌させて帯電防止層塗布液を調製した。
次に前記カール防止層の上に帯電防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分の加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約3μmの帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0164】
(実施例11)
−熱可逆記録媒体の作製−
支持体として、厚み100μmの白色ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、ルミラーE20)を2枚用いた。
一方の支持体に実施例7と同様にアンダー層、感熱層、中間層、保護層を設けた。
他方の支持体に実施例7と同様にカール防止層、帯電防止層を設けた。
上記の2つの支持体の塗工されていない面の間にRFタグを両面から挟み込むようにホットメルトシートを重ねて1Kg/cm2、130℃、10秒加熱してラミネートして熱
可逆記録媒体を作成した。
【0165】
(実施例12)
実施例7において保護層を下記の構成からなるものを用いた以外は同様の構成にして熱可逆記録媒体を作成した。
−保護層用塗布液の調製−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−2000、長軸=2.86μm、短軸=0.21μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、良く攪拌して保護層用塗布液を調製した。
次に、前記感熱層、及び中間層を塗布済み支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し90℃にて1分の加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約3μmの保護層を形成した。
【0166】
(実施例13)
実施例7においてカール防止層を下記の構成からなるものを用いた以外は同様の構成にして熱可逆記録媒体を作成した。
―カール防止層塗布液の調製―
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:200、分子量:109000、 ガラス転移温度:35℃)11質量部をメチルエチルケトン10
質量部で溶解し、フィラー(富士タルク工業社製、LMS−300)4質量部とイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)4質量部を加え良く撹拌させ
てカール防止層塗布液を調製した。
【0167】
次に前記アンダー層、感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約6μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ165℃であった。

【0168】
(比較例1)
実施例7においてカール防止層を設けず、支持体上にアンダー層、感熱層、中間層、保護層を設け、支持体の塗工されていない面に帯電防止層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0169】
(比較例2)
実施例9において帯電防止層を設けず、支持体上にアンダー層、感熱層、中間層、保護層を設け、支持体の塗工されていない面に下記に示すカール防止層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
−カール防止層−
アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、水酸基価:108、分子量:65000、 ガラス転移温度:80℃)10質量部、フィラー(水澤化学社製、
P−526)4質量部、及びメチルエチルケトン100質量部をボールミルを用いて平均粒径4〜5μmまでなるように粉砕分散した。
【0170】
次に上記の分散液にイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX)3質量部を加え、良く撹拌させてカール防止層用塗布液を調製した。
次に前記アンダー層、感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約8μmのカール防止層を形成した。
得られたカール防止層の塗膜Tgを剛体振り子にて測定したところ145℃であった。

【0171】
(比較例3)
実施例7において帯電防止層を設けず、支持体上にアンダー層、感熱層、中間層、保護層を設け、支持体の塗工されていない面に比較例2で用いたカール防止層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0172】
(比較例4)
実施例7においてカール防止層及び帯電防止層を以下に変えた。
−カール防止層−
アクリル樹脂(三菱レイヨン社製、BR80、Tg:105℃)8.5質量部と球形PMMAフィラー(総研化学社製、平均粒径12μm)、メチルエチルケトン90質量部を良く撹拌してカール防止層液を作成した。
【0173】
次に前記アンダー層、感熱層、中間層、保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に得られたカール防止層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥して膜厚約5μmのカール防止層を形成した。
−帯電防止層−
α−エチル(トリメチルアンモニウム)アルカノイルエステル(日本純薬、SAT−5)10質量部、メチルエチルケトン90質量部を良く撹拌して帯電防止層液を作成した。
次に前記カール防止層の上にワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分乾燥後、40℃
にて24時間キュアーを行って約2μmの帯電防止層を形成し、熱可逆記録媒体を作成した。
【0174】
<評価>
作成した実施例1〜13及び比較例1〜4の熱可逆記録媒体に対して以下のようにして繰り返し消去印字テスト、低温環境及び高温環境下でのカールテスト、低温低湿環境での表面抵抗値と貼り付きテスト、低温環境及び高温環境下でのカールテスト及びスタック性テストを実施した。
シート用リライタブルプリンタを用いた繰り返し消去印字テスト
プリンタとして東芝テック社製のリライタブルシートプリンタ(SX−8)を用いた。プリンタは給紙スタッカ、給紙部、消去部、印字部からなり、消去部はヒートローラ、印字部はサーマルヘッドから成る。搬送速度は75mm/secにて実施した。
【0175】
各熱可逆記録媒体を給紙スタッカに100枚をセットし、1枚ずつ搬送して消去部にて記録画像の消去を行い、印字部にて画像の印字を行った。スタックした100枚の熱記録媒体を全て印字した後、再び使用した熱可逆記録媒体をスタックさせて消去印字を行い、これを繰り返し300回実施した。
その後常温環境下にて水平な面に置き、熱可逆記録媒体の四隅がカールしている状態を直尺にて測定し、平均した値を求めた。カール性については以下の評価基準に基づき判定した。
【0176】
〔評価基準〕
◎・・・カールが3mm以下である。
【0177】
○・・・カールが3mmより大きく5mm以下である。
【0178】
△・・・カールが5mmより大きく10mm以下である。
【0179】
×・・・カールが10mmより大きい。
環境下でのカールテスト
上記プリンタにて10回印字した熱可逆記録媒体を大型定温恒温高湿器に入れ、−10℃40%RH環境、5℃30%RH環境、50℃90%RH環境に入れ24時間放置した。その後、各環境下で水平な面に置き、熱可逆記録媒体の四隅がカールしている状態を直尺にて測定し、平均した値を求めた。環境下のカールについては繰り返し耐久性評価と同様の評価基準に基づき判定した。
【0180】
環境下での搬送性テスト
大型定温恒温高湿器にリライタブルプリンタをセットして−10℃40%RH環境、40℃90%RH環境にて搬送性テストを実施した。各熱可逆記録媒体を給紙スタッカに100枚をセットし、繰り返し耐久性300回を実施した。
各環境下にて繰り返し消去印字テストを行っている際に、熱可逆記録媒体の搬送性を確認した。搬送性については以下のようにして判定した。
【0181】
「優」・・・試験中に搬送不良や熱可逆記録媒体の重送の発生が無い。
「可」・・・重送の発生は無いが印字画像にズレが発生する。
「重送不良」・・・熱可逆記録媒体が貼り付いて重送し搬送不良が発生する。
「給紙不良」・・・熱可逆記録媒体がスタッカから搬送路へ給紙できずにつまりが発生する。
【0182】
スタック性テスト
常温環境下にて消去印字を実施していない熱可逆記録媒体をスタッカに入るだけの枚数を重ねてセットした時の枚数に対して、耐久性300回使用後常温環境、及び−10℃40%RH環境、50℃90%RH環境で熱可逆記録媒体をスタックした時の枚数を比較する。
その際のスタック性について以下のようにして判定した。
「優」・・・初期スタック枚数に対してその差が5枚以下である。
「可」・・・初期スタック枚数に対してその差が10枚以下である。
「不可」・・・初期スタック枚数に対してその差が10枚を超える。
【0183】
【表1】

【0184】
上記結果より繰り返し消去印字を300回行った実施例1〜13の熱可逆記録媒体のカールの発生が大幅に少なくなっていることが分かる。一方、比較例1〜4ではカールが大きいことが分かる。
100枚以上の大量一括給紙を実施する場合に繰り返し消去印字によりカールが変化して大きくなるとカールの影響でプリンタスタッカで熱可逆記録媒体が積み重なったときの厚みにも差が出てしまうため、プリンタでの搬送不良の原因になってしまう。しかし、実施例1〜13ではその問題が無い。
【0185】
【表2】

【0186】
上記結果より実施例1〜13は−10℃という低温環境下でのカールから50℃という環境下においてもカールの変動が少ないことが分かる。
一方、比較例1〜4では−10℃という低温環境下では感熱層面側へ大きくカール、50℃という高温環境下では感熱層面とは逆側へカールすることが分かる。
【0187】
【表3】

【0188】
上記結果より、実施例1〜13において低温低湿環境下から高温高湿環境下でのプリンタ搬送性に優れていることが分かる。
一方、比較例1〜4では搬送不良、重送不良が発生している。低温低湿環境での重送不良は繰り返し数回行ったところで熱可逆記録媒体が搬送系を通過する際に帯電し静電気が発生し、その影響で媒体が貼り付いたことで発生していた。また搬送不良は、媒体のカールが大きくなったことで給紙時にピックアップすることが出来ないことが原因で発生していた。高温高湿環境ではカールの影響による搬送不良が多く発生していた。
実施例においては上記の問題がない。
【0189】
【表4】

【0190】
上記結果より、実施例1〜13において繰り返し300回使用後、低温低湿環境下、高温高湿環境下でのプリンタへのスタック性に優れていることが分かる。
一方、比較例1〜4ではスタック時に初期に対してスタックできる熱可逆記録媒体が少なくなるためスタック性が低下していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明に係る熱可逆記録媒体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】画像処理装置の一例を示す図である。
【図3】RFタグの一例を示す概略図である。
【図4】熱可逆記録媒体の使用方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0192】
10,20 支持体
11 保護層
12 感熱層
14 カール防止層
15 帯電防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に温度に依存して色調が可逆的に変化する感熱層と、該感熱層上に少なくとも1層以上の保護層を設け、前記支持体の感熱層が設られた面と反対側の面に少なくとも1層以上からなるカール防止層を設け、該カール防止層上に帯電防止層を設け、前記感熱層とカール防止層を構成する樹脂種、及び前記保護層と帯電防止層を構成する樹脂種とが、それぞれ同一であることを特徴とする熱可逆記録媒体。
【請求項2】
塗工面が表面になるようにして貼り合された二以上の支持体によって構成され、一方の支持体の塗工面上に温度に依存して色調が可逆的に変化する感熱層と、該感熱層上に少なくとも1層以上の保護層を設け、他方の支持体の塗工面に少なくとも1層以上からなるカール防止層を設け、該カール防止層上に帯電防止層を設け、前記感熱層とカール防止層を構成する樹脂種、及び前記保護層と帯電防止層を構成する樹脂種とが、それぞれ同一であることを特徴とする熱可逆記録媒体。
【請求項3】
前記感熱層と前記カール防止層を構成する樹脂種が、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可逆記録媒体。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂が、イソシアネート系硬化剤にて硬化していることを特徴とする請求項3記載の熱可逆記録媒体。
【請求項5】
前記感熱層と前記カール防止層における塗膜Tgが100℃以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された熱可逆記録媒体。
【請求項6】
前記感熱層の塗膜Tgよりも前記カール防止層の塗膜Tgが高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載された熱可逆記録媒体。
【請求項7】
前記カール防止層の塗膜Tgが前記感熱層の塗膜Tgよりも10℃以上高いことを特徴とする請求項6に記載された熱可逆記録媒体。
【請求項8】
前記保護層と前記帯電防止層を構成する樹脂種が、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載された熱可逆記録媒体。
【請求項9】
前記帯電防止層が、針状導電性フィラーを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載された熱可逆記録媒体。
【請求項10】
前記針状導電性フィラーの長軸が、1μm以上10μm以下であり、かつ短軸が0.1μm以上0.5μm以下のサイズであることを特徴とする請求項9記載の熱可逆記録媒体。
【請求項11】
前記針状導電性フィラーが、針状結晶を導電剤で表面処理してなることを特徴とする請求項9または10記載の熱可逆記録媒体。
【請求項12】
前記針状導電性フィラーが、アンチモンドープ酸化スズで被覆された酸化チタンであることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載された熱可逆記録媒体。
【請求項13】
前記帯電防止層面の最表層の表面抵抗値が、1×1011Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載された熱可逆記録媒体。
【請求項14】
情報記憶部と可逆表示部とを有し、該可逆表示部が請求項1から13のいずれかに記載の熱可逆記録媒体を含むことを特徴とする熱可逆記録部材。
【請求項15】
情報記憶部と可逆表示部とが一体化された請求項14に記載の熱可逆記録部材。
【請求項16】
情報記録部が、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RFタグから選択される請求項14または15記載の熱可逆記録部材。
【請求項17】
印刷可能部分を有する請求項14から16のいずれかに記載の熱可逆記録部材。
【請求項18】
熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去する画像消去手段との少なくともいずれかを有してなり、該熱可逆記録媒体が請求項1から13のいずれかに記載の熱可逆記録媒体であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項19】
前記画像形成手段が、サーマルヘッドまたはレーザー照射装置のいずれかである請求項18に記載の画像処理装置。
【請求項20】
前記画像消去手段が、サーマルヘッド、セラミックヒータ、ヒートロール、ホットスタンプ、ヒートブロック、ヒートバー及びレーザー照射装置から選択されるいずれかである請求項18または19に記載の画像処理装置。
【請求項21】
前記熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に画像を形成すること、及び熱可逆記録媒体を加熱して該熱可逆記録媒体に形成された画像を消去することの少なくともいずれかを含み、該熱可逆記録媒体が請求項1から13のいずれかに記載の熱可逆記録媒体であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項22】
画像の形成が、サーマルヘッド及びレーザー照射装置のいずれかを用いて行われる請求項21に記載の画像処理方法。
【請求項23】
画像の消去が、サーマルヘッド、セラミックヒータ、ヒートロール、ホットスタンプ、ヒートブロック、ヒートバー及びレーザー照射装置から選択されるいずれかを用いて行われる請求項21または22に記載の画像処理方法。
【請求項24】
サーマルヘッドを用いて画像を消去しつつ新しい画像を形成する請求項21から23のいずれかに記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−221734(P2008−221734A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66006(P2007−66006)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】