説明

熱媒ボイラ

【課題】 低燃焼で熱媒油の必要温度を維持できるような場合でも、燃焼用空気が外乱の影響を受けることなく安定して供給され、低燃焼でも安定した燃焼ができる熱媒ボイラを得る。
【解決手段】 送風機8と、送風機8の回転数を変えるインバータ9と燃焼用空気を送気する送気ダクト7と、燃料と空気を混合して燃焼させるバーナ2とを有し、バーナ2で得られる燃焼ガスと熱媒油を熱交換して熱媒油を所定温度に加熱する熱媒ボイラにおいて、バーナ2に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段14を備え、低燃焼時のみに不活性ガスを燃焼用空気に混合してバーナ2に供給し、不活性ガスの供給量に応じてインバータ9の周波数を制御して送風機8の回転数を高めるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業や表面処理などで比較的高温の熱を必要とする作業において、その熱源として用いる熱媒油を加熱するボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒ボイラは、高温の熱媒油の持つ熱を間接的に利用する装置(負荷機器)と熱媒ボイラの間を循環させながら、必要な温度(250℃〜300℃)に熱媒油を加熱する装置である。熱媒ボイラは、熱媒ボイラ出口の熱媒油温度に応じて燃焼を制御しており、負荷機器での使用が減少すると熱媒油の温度があまり下がらなくなるので、熱媒油の熱媒ボイラ出入口の温度差が小さくなり、定格の燃焼量よりも少ない燃焼量(以下、低燃焼という。)で必要な温度を維持できるようになる。燃焼量を少なくすると燃焼用空気の供給量も少なくする必要がある。近年、燃焼装置の燃焼用空気供給を行う送風機はインバータによる回転数制御で燃焼量にあわせて燃焼用空気供給量を制御するようになってきている(例えば、特許文献1)。従って、燃焼量を低下させるとそれにあわせて燃焼用空気供給量を低下させるためにインバータを制御して送風機の回転数を下げて燃焼用空気供給量が調整される。このため、送風機の静圧、すなわち空気の吐出圧力が低くなり、送風機から送られる燃焼用空気が煙道の背圧の変動などの影響を受け易くなり、燃焼用空気の供給量が不安定になってしまうといった事態が発生する。
【0003】
こうした外乱に対して安定した風量を送気するために、給湯器の排気口付近に風圧スイッチを設けて、送風量が一定風量未満を検出した場合には、一定風量まで増加させるとともに、風量に対して適正な燃焼量まで増加させて、ON−OFF運転制御に切り換える方法がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−68308号公報
【特許文献2】特開平6−221553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載されている燃焼器の燃焼制御方法を熱媒ボイラが低負荷の状態に採用し、安定した送風量が得られるまで送風機の回転数を上げ、増加した燃焼用空気量にあわせて燃焼量を増加させると、熱媒油の温度は必要温度以上に上昇してしまうため、必要温度以下に維持するために燃焼運転のON−OFFが繰り返されることになる。ボイラは燃焼がOFFしたあとにはポストパージ、燃焼ONの前にはプレパージと呼ばれる送風のみを行う工程によって、着火前に可燃性ガスが存在しないようにする必要があるので、燃焼運転のON−OFFが繰り返されると、このポストパージ、プレパージが繰り返されて放散する熱が増大し(パージロス)、熱媒ボイラの運転効率が低下してしまうといった問題があり、運転効率の観点からは、低燃焼で、できる限り停止せずに燃焼を継続する方が遥かに効率がよい。
本発明者等はかかる点に鑑み、低燃焼で熱媒油の必要温度を維持できるような場合、燃焼用空気が外乱の影響を受けることなく安定して供給され、安定した燃焼を可能にすることについて試験研究を続け、本発明を為すに至った。
【0006】
本発明の目的は、低燃焼で熱媒油の必要温度を維持できるような場合でも、燃焼用空気が外乱の影響を受けることなく安定して供給され、低燃焼でも安定した燃焼ができる熱媒ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、送風機と、送風機の回転数を変えるインバータと燃焼用空気を送気する送気ダクトと、燃料と空気を混合して燃焼させるバーナとを有し、前記バーナで得られる燃焼ガスと熱媒油を熱交換して熱媒油を所定温度に加熱する熱媒ボイラにおいて、前記バーナに不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を備え、低燃焼時のみに不活性ガスを燃焼用空気に混合してバーナに供給し、不活性ガスの供給量に応じてインバータの周波数を制御して送風機の回転数を高めるようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、燃焼量を低負荷とするとき、燃焼量の低下に合わせて燃焼用空気の供給量を減少させるために送風機の回転数を下げると、送風機の出口側静圧が低下してしまい、外乱の影響を受け易くなって燃焼用空気の供給が不安定になる。このため、不活性ガスを燃焼用空気に混合してバーナに供給して送風機の回転数を高め、必要な燃焼用空気を供給しながら、送風機の出口側静圧を高めて風量を安定させることができ、低燃焼でも安定した燃焼を行うことができるとともに、不活性ガスを混合させることにより燃焼ガス温度も低下させられるので、排ガス中のNOx濃度の低減も図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記不活性ガス供給手段は、不活性ガスを前記送風機に送り込むことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、燃焼量が少ない状態に合わせた送風機の回転数で不活性ガスを混合させると、前記送風機から供給される空気量は混合させた不活性ガスの分だけ不足することになる。このため、混合させる不活性ガスの量に応じて、送風機から供給する空気量を低燃焼における必要燃焼用空気量になるようにインバータの周波数を制御して送風機の回転数を高めなければならない。これによって、必要な燃焼用空気量としながら、送風機の出口側静圧を高めて風量を安定させることができ、低燃焼でも安定した燃焼を行うことができるとともに、不活性ガスを混合させることにより燃焼ガス温度も低下させられるので、排ガス中のNOx濃度の低減も図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の、前記不活性ガスは、前記バーナから排出される排ガスであることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記不活性ガスは、前記バーナから排出される排ガスであるので、別途不活性ガスを用意する必要が無く、コストの低減を図ることができる。また、酸素濃度の低下した排ガスを燃焼用空気に混合させることにより、燃焼用空気量が減少することに対し、排ガスの混合量に応じてインバータの周波数を制御して送風機の回転数を高めるので、燃焼用空気量を増加させることができるとともに、送風機の出口側静圧が上昇するので外乱による圧力変動の影響を受け難くなり、低燃焼の場合でも燃焼用空気を安定してバーナに供給でき、低燃焼でも安定した燃焼を行うことができるとともに、不活性ガスとして排ガスを混合させるので、不活性ガス供給の設備を設ける必要がなくコストを抑えることができる。さらに、排ガスを混合させることにより燃焼ガスの温度も低下させることができるので、排ガス中のNOx濃度の低減も図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低燃焼で必要温度を維持できるような場合、燃焼用空気を送気する送風機の出口側静圧を高めることにより、低燃焼に応じた燃焼用空気をバーナに確実に供給することができ、安定した低燃焼状態を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る熱媒ボイラの一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る熱媒ボイラの実施例における送風機の風量,回転数,出口側静圧と低燃焼時の必要風量と排ガス供給量と送気系の全圧損との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る熱媒ボイラを実施するための形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係る熱媒ボイラを実施する熱媒ボイラの一例を示す概略構成図、図2は本発明に係る熱媒ボイラの実施例における送風機の風量,回転数,出口側静圧と低燃焼時の必要風量と排ガス供給量と送気系の全圧損との関係を示す説明図である。
【0016】
本例の熱媒ボイラ1は、上部にバーナ2が配置され、熱媒油が通る熱媒油加熱管3を2重のコイル状に形成した缶体4の内側に燃焼室5を形成している。バーナ2は缶体4の上部に設けられたウインドボックス6に取り付けられており、ウインドボックス6に送気ダクト7を介して燃焼用空気を送り込む送風機8を備えている。送風機8にはインバータ9が備えられており、インバータ9の周波数を制御することにより送風機8の回転数を制御して風量を調整できるようになっている。燃焼室5で燃焼した燃焼ガスは、缶体4を構成する2重のコイル状に形成に形成された熱媒油加熱管3の内列下方に設けた隙間から内列と外列の間に流入し、内列と外列の間を上昇する。缶体4の出口には排ガス路10が接続されており、熱媒油加熱管3の内列と外列の間を上昇した燃焼ガスは排ガス路10から大気へ放出される。
【0017】
また、排ガス路10と送気ダクト7とに接続するレキュペレータ11を備えており、排ガス路10を流通する排ガスと送気ダクト7を流通する燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するようになっている。
バーナ2には、燃料ガスを供給する燃料ガス供給ライン12が接続されている。燃料ガス供給ライン12には、バーナ2へ燃料ガスを供給する燃料ガス流量調整弁13が設けられている。
本例の熱媒ボイラ1は、熱媒油は負荷機器(図示省略)と缶体4との間で循環ポンプ19の運転により循環しており、負荷機器で温度が低下した熱媒油が缶体4の熱媒油加熱管3に戻り、缶体4で加熱されて、再び負荷機器に送られるようになっている。また、缶体4の熱媒油加熱管3の出口には温度センサ20が設けられている。
【0018】
本例の熱媒ボイラ1は、燃焼量を高燃焼、高燃焼よりも少ない燃焼量で燃焼する低燃焼、燃焼停止の3つの位置に切り換えることができるものである。ここで、高燃焼とは、熱媒ボイラ1の熱出力が定格出力の100%となる燃焼量で燃焼させる状態であり、低燃焼とは、熱媒ボイラ1の熱出力が定格出力の20%〜50%となる燃焼量で燃焼させる状態をいう。そして、熱媒ボイラ1は、低燃焼時のみに不活性ガスを送風機8の吸込み口に導入して燃焼用空気に混合し、バーナ2に供給する不活性ガス供給手段14を備えている。
不活性ガス供給手段14は、不活性ガスをバーナ2に供給することで送風機8の回転数を上げて送風機8の出口側静圧を高めることができるものであればよく、また不活性ガスは、窒素ガス、二酸化炭素ガスなど特に限定されない。
本例では、不活性ガス供給手段14は、不活性ガスを送風機8に送り込むように構成されており、不活性ガスが流通する不活性ガス供給路15の一端が送風機8の吸引側に接続されている。
また、本例では、不活性ガスとして、熱媒ボイラ1から排出される排ガスが使用されており、排ガスを送風機8に送り込むために、不活性ガス供給路15の他端が排ガス路10と接続し、排ガス路10を流れる排ガスの一部が不活性ガス供給路15に取り込まれ送風機8に送り込まれるようになっている。
【0019】
不活性ガス供給路15には、低燃焼になったとき開く不活性ガス供給弁16が設けられ、不活性ガス供給弁16の上流側に一定流量の排ガスを流す不活性ガス流量調整弁17が設けられている。不活性ガス供給弁16の開閉は、本例では制御手段18により行われる。
【0020】
前記制御手段18は、熱媒油加熱管3の出口の熱媒油温度に基づいて、燃焼を、高燃焼、低燃焼、または燃焼停止と判定し、この判定に基づき燃料ガス流量調整弁13を高燃焼、低燃焼または燃焼停止の位置に切り換える機能を有し、温度センサ20による熱媒油加熱管3出口の熱媒油温度の検出値から低燃焼と判定したら、燃料ガス流量調整弁13を低燃焼位置に切り換えるとともに、不活性ガス供給弁16を開き、送風機8に不活性ガス、本例では排ガスを供給する機能を有している。
このときの排ガスの供給量は、外乱によらず安定して燃焼用空気が送気できる必要な送風機8の出口側静圧を得るために、予め定めた送風機回転数で得られる風量と必要燃焼用空気量との差分である。この差分を得るための排ガスの供給量は、不活性ガス供給路15の不活性ガス供給弁16の上流側に設けた不活性ガス流量調整弁17の調整によって行う。排ガスの流量調整は、不活性ガス流量調整弁17の代わりに不活性ガス供給弁16として流量調整機能を持たせたものを用いてもよい。
そして、制御手段18は、不活性ガス供給弁16を開くと同時に、送風機8の回転数を、不活性ガス供給路15から供給される排ガス量と低燃焼の必要燃焼用空気量の総風量に対応する回転数に高めるようにインバータ9の周波数を制御する。
【0021】
これを、図2により説明する。低燃焼時の必要燃焼用空気量Q1で送風機回転数はf1であるので、送風機の運転ポイントはAである。この運転ポイントにおいて、外部の圧力がPout高くなったとき、送風機の吐出圧力(静圧)は相対的にP1−Poutまで低下する。このとき、運転ポイントはA’となるので、風量はQ1’まで低下し、空燃比が大きく変化してしまい安定した燃焼ができなくなる。
排ガスを混合させると、混合させた排ガス量分の風量を増やすために送風機の回転数を高め、必要な燃焼用空気量を確保しなければならない。排ガス量をQ2−Q1混合させると、空燃比を変えないようにするためには送風機の回転数をf2まで高めなければならなくなる。この結果、送風機の静圧はP2まで上昇する(運転ポイントはBになる。)。そして、外部の圧力がPout高くなったとき、P2−Poutとなって運転ポイントはB’まで変化するが、排ガス混合前の燃焼用空気量の変化Q1−Q1’に比べてQ2−Q2’の変化は小さくなるので、空燃比のズレが小さくなって、燃焼性に及ぼす影響は小さくなる。
【0022】
本例では、高燃焼、低燃焼、燃焼停止の3位置制御を有する熱媒ボイラ1に関する例を示したが、高燃焼、高燃焼よりも少ない燃焼量である中燃焼、さらに中燃焼よりも少ない燃焼量である低燃焼、そして燃焼停止の4つの位置で制御されるボイラにも適用できる。この場合、不活性ガス供給手段14は、低燃焼時に作動させる。また、熱媒ボイラ1は比例制御であってもよい。比例制御の場合は、例えば、燃焼量が定格燃焼量の50%以下で、不活性ガス供給手段14を作動させるようにすればよい。
【0023】
このように構成した本例の熱媒ボイラ1によれば、燃焼中に熱媒油加熱管3の出口で温度センサ20により検出された熱媒油温度の検出値から、制御手段18が低燃焼と判定した場合、燃料ガス流量調整弁13を低燃焼位置に切り換えるとともに、不活性ガス供給弁16を開く。これにより、不活性ガス供給路15を通して排ガス路10から排ガスが送風機8へ供給される。
【0024】
制御手段18は、不活性ガス供給弁16を開くと同時に、送風機8の回転数を、不活性ガス供給路15から吸引される排ガス量と低燃焼の必要燃焼用空気量の総風量に対応する回転数に高めるようにインバータ9の周波数を制御するので、送風機8の送風側から低燃焼時における必要な量の燃焼用空気と送り込んだ排ガスが混合されて吹き出すことになる。
【0025】
これによって、必要な燃焼用空気量としながら、送風機8の出口側静圧を高めて風量を安定させることができ、低燃焼でも安定した燃焼を行うことができるとともに、不活性ガスを混合させることにより燃焼ガス温度も低下させられるので、排ガス中のNOx濃度の低減も図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 熱媒ボイラ
2 バーナ
3 熱媒油加熱管
4 缶体
5 燃焼室
6 ウインドボックス
7 送気ダクト
8 送風機
9 インバータ
10 排ガス路
11 レキュペレータ
12 燃料ガス供給ライン
13 燃料ガス流量調整弁
14 不活性ガス供給手段
15 不活性ガス供給路
16 不活性ガス供給弁
17 不活性ガス流量調整弁
18 制御手段
19 循環ポンプ
20 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、送風機の回転数を変えるインバータと燃焼用空気を送気する送気ダクトと、燃料と空気を混合して燃焼させるバーナとを有し、前記バーナで得られる燃焼ガスと熱媒油を熱交換して熱媒油を所定温度に加熱する熱媒ボイラにおいて、
前記バーナに不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を備え、低燃焼時のみに不活性ガスを燃焼用空気に混合してバーナに供給し、不活性ガスの供給量に応じてインバータの周波数を制御して送風機の回転数を高めるようにしたことを特徴とする熱媒ボイラ。
【請求項2】
前記不活性ガス供給手段は、不活性ガスを前記送風機に送り込むことを特徴とする請求項1に記載の熱媒ボイラ。
【請求項3】
前記不活性ガスは、前記バーナから排出される排ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱媒ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−88024(P2013−88024A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228650(P2011−228650)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】